説明

溶接装置

【課題】環状体の溶接を内部側から溶接開先に正対するように行い、溶接品質を向上させ得る溶接装置を提供する。
【解決手段】エンドパーツ5を形成する溶接装置1であって、真空雰囲気を形成可能な真空チャンバー23と、真空チャンバー23内に設置され、ハーフセル11、端板17、ビームパイプ19が隣接して溶接開先を形成したエンドパーツ5を保持する保持部材25と、エンドパーツ5の軸線中心Oが交差する真空チャンバー23の上端面部27に設置され、その一部を構成する窓29と、真空チャンバー23の外部に設置され、窓29を通してエンドパーツ5の内部空間にレーザ光33を照射するレーザ照射ヘッド35と、エンドパーツ5の内部空間に位置するように設置され、レーザ光33を反射した反射レーザ光55が溶接開先に正対する方向になるように調整するミラー部材37と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、超伝導加速空洞の製造に用いる溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超伝導加速空洞は、軸線方向に配列された複数の部材が接合されて形成される。従来、この接合は不純物の混入が少ないので、真空雰囲気中で電子ビーム溶接あるいはレーザ溶接によって外側から貫通溶接が行われていた。
このように外側から貫通溶接するものでは、超伝導加速空洞の内部における溶接状態に予期せぬ凹凸ができるので、後処理に時間を要する。また、超伝導加速空洞を駆動する駆動系、電子銃等が真空雰囲気中に入っているので、真空容器の容積が大きく装置が大型化し高価となる。真空容器の容積が大きいため真空雰囲気を形成するのに時間がかかるので、作業時間が長くなり作業コストが高くなる。
【0003】
したがって、超伝導加速空洞の内側から溶接を行って、内側の後処理を低減することが求められている。
これを行うものとして、たとえば、特許文献1に示されるようなアルゴン雰囲気でレーザ溶接を用いて超伝導加速空洞の接合を内側から行うものが提案されている。
しかしながら、アルゴン雰囲気中でレーザ溶接を行うものでは十分な性能がでない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3959198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超伝導加速空洞は中空の環状体であるので、レーザ溶接であれば、真空容器の外側からレーザ光を入射し、超伝導加速空洞の内部を溶接することが考えられる。
この場合、レーザ光は溶接開先の正対位置に対して傾斜して入射されるので、レーザ光の照射位置によっては、溶接開先を外れる恐れがあり、溶接の健全性を十分に担保できない。また、レーザ光の照射位置を溶接開先に対してずらせる(オフセットする)等位置決め作業が難しいという課題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、環状体の溶接を内部側から溶接開先に正対するように行い、溶接品質を向上させ得る溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、軸線方向の両端に開口部を有する複数の環状体を該軸線方向に配列し、相互の開口部同士をレーザ溶接によって接合し環状接合体を形成させる溶接装置であって、真空雰囲気を形成可能な真空室と、該真空室内に設置され、複数の前記環状体を開口部同士が隣接して溶接開先を形成した前記環状接合体を保持する保持部材と、前記環状接合体の軸線中心が交差する前記真空室の壁部に設置され、該壁部の一部を構成する窓部材と、前記真空室の外部に設置され、前記窓部材を通して前記環状接合体の内部空間にレーザ光を照射するレーザ照射部材と、前記環状接合体の内部空間に位置するように設置され、前記レーザ光を反射した反射レーザ光が前記溶接開先に正対する方向になるように調整するミラー部材と、が備えられている溶接装置である。
【0008】
本態様にかかる溶接装置によると、軸線方向の両端に開口部を有する複数の環状体を軸線方向に配列し、開口部同士が隣接して溶接開先を形成した環状接合体を形成するように真空室内の保持部材に装着する。次いで、真空吸引して真空室内を真空雰囲気とする。溶接開先の位置に対応して必要に応じミラー部材によって反射される反射レーザ光の軸線方向における位置を調整し、溶接作業に入る。すなわち、レーザ照射部材からレーザ光を照射すると、レーザ光は窓部材を通って環状接合体の内部空間に位置するように設置されたミラー部材に照射される。このレーザ光は、ミラー部材によって反射され、溶接開先に正対する方向に照射される。照射されたレーザ光によって溶接開先部が溶融され、接合される。この溶接は貫通溶接であっても、非貫通溶接であってもよい。非貫通溶接の場合には、後で外側からも溶接することになる。
【0009】
このように、環状接合体は内部側から溶接されるので、内部側に予期しない凹凸が形成されることはなく、内部の状態を良好にすることができる。
また、レーザ光が溶接開先に対して正対する方向から照射されるので、容易に位置を決めることができるし、溶接が溶接開先を外れる恐れを抑制できる。したがって、溶接の健全性を十分に担保できるので、溶接品質を向上させることができる。
さらに、真空室内にレーザ照射部材が設置されないので、コンパクトな装置構成とでき、安価な設備とすることができる。真空雰囲気の範囲が狭いので、真空雰囲気の形成が短時間で行うことができる。このため、作業時間が短縮できるので、作業コストを安価にできる。
【0010】
前記態様では、前記ミラー部材および前記保持部材は、少なくともいずれか一方が前記軸線中心回りに回転可能とされていることが好ましい。
このようにすると、環状接合体は全周に亘ってなめらかに溶接を行うことができる。
【0011】
前記態様では、前記ミラー部材を冷却する冷却部材が設置されていることが好ましい。
【0012】
真空雰囲気中にミラー部材にレーザ光を照射すると、ミラー部材が発熱し、たとえば、変形する恐れがある。
本態様では、ミラー部材は冷却部材によって冷却されているので、発熱しても冷却することができる。これにより、たとえば、ミラー部材が変形することを抑制できるので、レーザ光の照射位置を正確にでき、溶接品質を向上させることができる。
【0013】
前記態様では、前記ミラー部材は、その反射面中心が前記軸線中心よりも前記反射レーザ光の照射方向と反対側にずれて設置されていることが好ましい。
【0014】
レーザ溶接に際し、溶接部分から金属蒸気が発生し、四方へ飛散し、ミラー部材あるいは窓部材に付着する。たとえば、ミラー部材に金属蒸気が付着すると、レーザ光の反射量が低下するので、溶接が不完全となる恐れがある。
本態様では、ミラー部材は、その反射面中心が軸線中心よりも反射レーザ光の照射方向と反対側にずれて設置されているので、溶接される部分とミラー部材との距離は環状接合体の軸線中心位置に位置するミラー部材に比較して大きくすることができる。これにより、ミラー部材への金属蒸気の付着をより抑制することができるので、溶接品質を向上させることができる。
【0015】
前記態様では、前記ミラー部材の反射面および前記窓部材の内面のそれぞれ近傍に不活性ガスを供給するガス供給部材が設置されていることが好ましい。
【0016】
レーザ溶接に際し、溶接部分から金属蒸気が発生し、四方へ飛散し、ミラー部材あるいは窓部材に付着する。たとえば、ミラー部材に金属蒸気が付着すると、レーザ光の反射量が低下する。窓部材に金属蒸気が付着すると、レーザ光の透過量が低下する。これらによって、レーザ光の強度が低下するので、溶接が不完全となる恐れがある。
本態様では、ミラー部材の反射面および窓部材の内面のそれぞれ近傍に不活性ガスを供給するガス供給部材が設置されているので、ガス供給部材から不活性ガスを供給すると、ミラー部材の反射面および窓部材の内面のそれぞれ近傍位置の圧力が少し高くなる。ミラー部材の反射面および窓部材の内面のそれぞれ近傍位置の圧力が高くなると、その圧力によって飛散する金属蒸気を押し返すことができるので、金属蒸気のミラー部材の反射面および窓部材の内面への付着を抑制することができる。
したがって、レーザ光の強度の低下を抑制できるので、溶接品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、真空雰囲気を形成可能な真空室と、真空室内に設置され、複数の環状体を開口部同士が隣接して溶接開先を形成した環状接合体を保持する保持部材と、環状接合体の軸線中心が交差する真空室の壁部に設置され、壁部の一部を構成する透明の窓部材と、真空室の外部に設置され、窓部材を通して環状接合体の内部空間にレーザ光を照射するレーザ照射部材と、環状接合体の内部空間に位置するように設置され、レーザ光を反射した反射レーザ光が溶接開先に正対する方向になるように調整するミラー部材と、が備えられているので、溶接品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる溶接装置を用いて溶接されたエンドパーツが取り付けられた超伝導加速空洞の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる溶接装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるミラーを示す部分正面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる溶接装置による溶接状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態にかかる溶接装置1について、図1〜図4を参照して説明する。本実施形態にかかる溶接装置1は、超伝導加速空洞3のエンドパーツ5を形成するものである。
図1は、本発明の一実施形態にかかる溶接装置1によって製造されたエンドパーツ5が取り付けられた超伝導加速空洞3の正面図である。図2は、本発明の一実施形態にかかる溶接装置1の概略構成を示す断面図である。図3は、本発明の一実施形態にかかるミラーを示す部分正面図である。
【0020】
超伝導加速空洞3には、図1に示されるように、エンドパーツ(環状接合体)5と、空洞部7とが備えられている。
空洞部7は、中央部が膨らんだ円筒形状のセル9が組み合わされた構造体である。超伝導加速空洞3は、たとえば、超伝導材料であるニオブ材を曲げ加工、プレス成型加工して、セル9が軸線方向で2分割されたハーフセル11が形成される。ハーフセル11は、軸線方向Lにおいてセル9の最も膨らんだ部分である赤道部13と最も引っ込んだ部分であるアイリス部15との間に延在している。
空洞部7は、複数のハーフセル11が赤道部13同士あるいはアイリス部15同士が重なるよう溶接によって接合されて形成される。空洞部7の両端は、それぞれハーフセル11の赤道部13が位置している。
【0021】
エンドパーツ5は、ハーフセル(環状体)11と、端板(環状体)17と、ビームパイプ(環状体)19とで構成されている。
端板17は、液体ヘリウムが導入されるヘリウムジャケットの両端部を構成するものであり、たとえば、チタン製とされる。ビームパイプ19は、たとえば、ニオブ製の中空円筒部材であり、一端にフランジ21が設けられている。
端板17の軸線方向L一端には、全周に亘りハーフセル11のアイリス部15が係合する凹部が形成され、他端にはビームパイプ19の端部が係合する凹部が形成されている。
【0022】
エンドパーツ5は、端板17の凹部に、ハーフセル11のアイリス部15およびビームパイプ19の端部を係合させ、図4に示されるように略水平方向に延在する溶接開先18,20を形成し、この溶接開先18,20を溶接して接合することによって形成される。
空洞部7の両端部に位置するハーフセル11の赤道部13に、エンドパーツ5の一端に位置するハーフセル11の赤道部13が溶接によって接合されて、超伝導加速空洞3が形成される。
【0023】
溶接装置1には、図2に示されるように、中空円筒形状をした真空チャンバー(真空室)23と、真空チャンバー23の内部に設置され、エンドパーツ5を軸線中心Oが上下方向に延在するように保持する保持部材25と、軸線中心Oが交差する真空チャンバー23の上端面部(壁部)27に設けられた窓(窓部材)29と、真空チャンバー23の外部に設置され、窓29を通してエンドパーツ5の内部空間31にレーザ光33を照射するレーザ照射ヘッド(レーザ照射部材)35と、内部空間31に設置され、レーザ光33を反射するミラー部材37と、が備えられている。
【0024】
真空チャンバー23には、真空チャンバー23内の気体を吸引し、真空チャンバー23内を真空雰囲気とする真空吸引部材39が接続されている。
保持部材25には、エンドパーツ5の両端部を強固に保持する上保持板41および下保持板43と、上保持板41および下保持板43間を連結し、その間隔を維持する複数の拘束シャフト45と、下部が真空チャンバー23の下端面部47に固定して取り付けられ、上部が軸線中心Oの回りに回転可能とされているポジショナ49とが備えられている。
下保持板43の下部は、ポジショナ49の上部に固定して取り付けられている。
【0025】
窓29は、上端面部27の開口部を覆うように取り付けられ、上端面部27と一体となって密閉構造を形成している。
下端面部47の下部には、ポジショナ49の上部を回転させる減速機付きのモータ51が取り付けられている。
レーザ照射ヘッド35は、水平面内に移動可能に取り付けられている。レーザ照射ヘッド35は水平面内で移動することによって照射されるレーザ光33の位置を水平面内で調整することができる。
【0026】
ミラー部材37の上面(反射面)53はレーザ光33を反射して反射レーザ光55とする。ミラー部材の下部には空間57が備えられている。空間57と上面53とは複数の貫通孔59で連通されている。貫通孔59は上面53の周縁部のレーザ光33が照射されない位置に設けられている。
【0027】
上下方向に延在し、冷却水が通る内部空間を有する冷却配管(冷却部材)61が、下端面部47に固定して取り付けられている。冷却配管61の上端は閉鎖され、かつ、傾斜している。ミラー部材37は、下面が冷却配管61の上端に取り付けているので、上端の傾斜に沿って傾斜している。
冷却配管61は曲折され、上端部の軸線中心O1は、軸線中心Oに対して一致しないようにされている。ミラー部材37は、軸線中心O1が上面53の面内中心を通って、軸線中心O側が下側に位置するように取り付けられている。
これにより、ミラー部材37は、その上面中心(軸線中心O1)が軸線中心Oよりも反射レーザ光55の照射方向と反対側にずれて設置されていることになる。
【0028】
ミラー部材37の下面には、空間57に真空チャンバー23の外部から不活性ガス、たとえば、アルゴンガスを供給するガス配管(ガス供給部材)63が接続されている。
窓29の内面近傍に真空チャンバー23の外部から不活性ガス、たとえば、アルゴンガスを供給するガス配管(ガス供給部材)65が接続されている。
【0029】
以上の構成を有する本実施形態にかかる溶接装置1の動作について説明する。
まず、端板17の軸線方向L両端部に加工された凹部にそれぞれハーフセル11およびビームパイプ19を係合させ、ハーフセル11、端板17およびビームパイプ19が軸線方向Lに配列された状態で保持部25に保持させる。
次いで、真空吸引部材39が作動し、真空チャンバー23内の気体を吸引し、真空チャンバー23内を真空雰囲気とする。
反射レーザ光55の軸線方向L位置が溶接開先20に一致するようにレーザ光照射ヘッド35の水平方向位置を調整する。
【0030】
冷却配管61に冷却水を供給する。ガス配管63で空間57へ不活性ガスを供給し、貫通孔59を介して上面53から不活性ガスが出るようにする。ガス配管65で窓29の内面近傍へ不活性ガスを供給する。
この状態で、レーザ照射ヘッド35からレーザ光33を出射すると、レーザ光33はミラー部材37の上面53に当たって反射され、略水平方向に進む反射レーザ光55となる。この反射レーザ光55が、溶接開先20に照射され、溶接開先18部を溶融し、接合される。
モータ51を作動させ、ポジショナ49の上部を軸線中心Oの回りに回転させることによって、溶接開先20の全周に亘り溶接することができる。
【0031】
本実施形態では、エンドパーツ5が軸線中心Oの回りに回転するようにされているが、エンドパーツ5は固定し、レーザ照射ヘッド35およびミラー部材37が軸線中心Oの回りに回転するようにしてもよい。また、エンドパーツ5ならびにレーザ照射ヘッド35およびミラー部材37それぞれが軸線中心Oの回りに回転するようにしてもよい。
【0032】
溶接開先20の溶接が終了すると、レーザ照射ヘッド35の水平方向位置を調整して、反射レーザ光55の軸線方向L位置が溶接開先18に一致するようにし、溶接開先20と同様に溶接開先18を溶接する。
本実施形態では、レーザ照射ヘッド35の水平方向位置を調整して反射レーザ光55の軸線方向L位置を調整するようにしているが、レーザ照射ヘッド35の水平位置は変化させずに、ミラー部材37の軸線方向L位置を調節するようにしてもよい。
【0033】
このとき、真空雰囲気中にあるミラー部材37にレーザ光33が照射されるので、ミラー部材37が発熱し、たとえば、変形する恐れがある。本実施形態では、ミラー部材37は冷却配管61に供給される冷却水によって冷却されているので、発熱しても冷却することができる。これにより、たとえば、ミラー部材37が変形することを抑制できるので、反射レーザ光55の照射位置を正確にでき、溶接品質を向上させることができる。
【0034】
また、溶接部分から発生する金属蒸気が飛散するが、本実施形態では、ミラー部材37の上面53および窓29の内面の近傍に不活性ガスが供給されているので、ミラー部材37の上面53および窓29の内面のそれぞれ近傍位置の圧力が少し高くなる。ミラー部材37の上面53および窓29の内面のそれぞれ近傍位置の圧力が高くなると、その圧力によって飛散する金属蒸気を押し返すことができるので、金属蒸気がミラー部材37の上面53および窓29の内面へ付着することを抑制できる。
したがって、レーザ光33および反射レーザ光55の強度の低下を抑制できるので、溶接品質を向上させることができる。
【0035】
従来のようにレーザ光33Jを、たとえば、図4に一転鎖線で示すように直接溶接開先18に向けて照射するようにすると、エンドパーツ5が溶接開先18よりも上方に延在しているので、レーザ光33Jはどうしても溶接開先18の延在方向に対して傾斜して入射される。このため、溶接開先18とレーザ光33Jによる溶融範囲とが交差する関係となるので、レーザ光33の照射位置によっては、溶融する部分が溶接開先18を外れる恐れがあり、溶接の健全性を十分に担保できない。また、レーザ光33Jの照射位置を溶接開先18に対して距離L1だけずらせる(オフセットする)等が必要になり位置決め作業が難しい。
【0036】
これに対し、本実施形態では、反射レーザ光55は溶接開先20の延在方向に一致している、言い換えると、溶接開先20に正対する方向に照射されているので、容易に位置を決めることができるし、溶融部分が溶接開先20を外れる恐れを抑制できる。したがって、溶接の健全性を十分に担保できるので、溶接品質を向上させることができる。
【0037】
また、エンドパーツ5は内部側から溶接されるので、内部側に予期しない凹凸が形成されることはなく、内部の状態を良好にすることができる。
さらに、レーザ照射ヘッド35は真空チャンバー23の外部に設置されているので、真空チャンバー23をコンパクトな装置構成とでき、安価な設備とすることができる。真空チャンバー23をコンパクトにできると、真空雰囲気の形成が短時間で行うことができるので、溶接作業時間が短縮でき、作業コストを安価にできる。
【0038】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 溶接装置
5 エンドパーツ
11 ハーフセル
17 端板
18 溶接開先
19 ビームパイプ
20 溶接開先
23 真空チャンバー
25 保持部材
29 窓
33 レーザ光
35 レーザ照射ヘッド
53 上面
55 反射レーザ光
61 冷却配管
63 ガス配管
65 ガス配管
L 軸線方向
O,O1 軸線中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の両端に開口部を有する複数の環状体を該軸線方向に配列し、相互の開口部同士をレーザ溶接によって接合し環状接合体を形成させる溶接装置であって、
真空雰囲気を形成可能な真空室と、
該真空室内に設置され、複数の前記環状体を開口部同士が隣接して溶接開先を形成した前記環状接合体を保持する保持部材と、
前記環状接合体の軸線中心が交差する前記真空室の壁部に設置され、該壁部の一部を構成する窓部材と、
前記真空室の外部に設置され、前記窓部材を通して前記環状接合体の内部空間にレーザ光を照射するレーザ照射部材と、
前記環状接合体の内部空間に位置するように設置され、前記レーザ光を反射した反射レーザ光が前記溶接開先に正対する方向になるように調整するミラー部材と、が備えられていることを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記ミラー部材および前記保持部材は、少なくともいずれか一方が前記軸線中心回りに回転可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記ミラー部材を冷却する冷却部材が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記ミラー部材は、その反射面中心が前記軸線中心よりも前記反射レーザ光の照射方向と反対側にずれて設置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の溶接装置。
【請求項5】
前記ミラー部材の反射面および前記窓部材の内面のそれぞれ近傍に不活性ガスを供給するガス供給部材が設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の溶接装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240348(P2011−240348A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111952(P2010−111952)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】