説明

演奏操作評価装置及びプログラム

【課題】楽器を用いて脳機能の測定や脳機能の活性化を図ることのできる技術を提供する。
【解決手段】課題提示装置1は、鍵盤楽器の譜面台に設置される。課題提示装置1の制御部11は、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音データを読み出して伴奏音を再生する。また、制御部11は、フレーズ音データ記憶領域122からフレーズ音データを読み出してフレーズ音を再生するとともに、鍵盤楽器の鍵盤を構成する各鍵のうち、フレーズ音データに対応する鍵に対してレーザ光を照射することによって、演奏者に対してフレーズ音を提示する。演奏者は、提示された伴奏音に対応する所定の演奏操作を行うよう教示される。制御部11は、伴奏音の再生中に、予め定められた期間において、検出される演奏者の演奏操作と予め定められた基準演奏データとの比較に基づいて演奏操作を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏操作評価装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鍵盤にLEDを設け、鍵盤を光らせて押鍵を指示する装置が提供されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、鍵盤にLEDが設けられた楽器を用いて、ゲームを行ったり動体視力の訓練をしたりする装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、近年、図形課題を提示し、脳機能を測定する装置が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。また、複数人が合奏を行う場合において、先生がマスター機で主旋律をコントロールし、生徒が子機で伴奏する技術が提案されている(特許文献6参照)。また、ファシリテーター(先生)とのテンポのずれを検出、表示する技術が提案されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−067653号公報
【特許文献2】特開平10−222160号公報
【特許文献3】特開2004−194955号公報
【特許文献4】特開2006−158421号公報
【特許文献5】特開2006−158944号公報
【特許文献6】特開2001−195060号公報
【特許文献7】特開2007−093820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、楽器を用いて脳機能の測定や脳機能の活性化を図ることができれば好適である。
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、楽器を用いて脳機能の測定や脳機能の活性化を図ることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、テンポを表すタイミングデータを含む伴奏音データを記憶する伴奏音データ記憶手段と、前記伴奏音データ記憶手段内のタイミングデータに基づいてテンポを報知するテンポ報知手段と、演奏者の演奏操作を検出する演奏操作検出手段と、前記テンポ報知手段によるテンポの報知中に、予め定められた期間において、前記演奏操作検出手段が検出する演奏操作と予め定められた基準演奏データとの比較に基づいて演奏操作を評価する評価手段とを具備することを特徴とする演奏操作評価装置を提供する。
【0006】
本発明の好ましい態様において、前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、前記伴奏音データ記憶手段は、音符配列の異なる複数の伴奏音データからなる組を記憶し、記テンポ報知手段は同一の組に属する複数の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生した後、再び前記複数の伴奏音データのうちの所定の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生し、前記評価手段は、前記テンポ報知手段が前記所定の伴奏音データに基づいて伴奏音データを再生している期間を前記予め定められた期間として前記評価を行ってもよい。
【0007】
また、本発明の別の好ましい態様において、前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、前記伴奏音データ記憶手段は、音符配列の異なる複数の伴奏音データを記憶し、前記テンポ報知手段は前記伴奏音データ記憶手段に記憶された複数の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生し、前記評価手段は、前記テンポ報知手段が前記複数の伴奏音データのうちの所定の伴奏音データに基づいて伴奏音データを再生している期間を前記予め定められた期間として前記評価を行ってもよい。
【0008】
また、本発明の別の好ましい態様において、前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、前記テンポ報知手段は、前記伴奏音データ記憶手段内の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生し、所定の音符配列を示すフレーズ音データを複数記憶するフレーズ音データ記憶手段と、前記フレーズ音データ記憶手段内のフレーズ音データを選択するフレーズ再生手段であって、選択した各フレーズ音データに基づいてフレーズ音を再生するとともに、一つのフレーズ音の再生後に当該フレーズ音の再生時間の所定倍の待機時間の後に次のフレーズ音を選択して再生を行うフレーズ音再生手段とを有し、前記評価手段は、前記フレーズ音再生手段が前記一つのフレーズ音を再生してから前記次のフレーズ音を再生するまでの前記待機時間のうちの一部の期間を前記予め定めた期間としてもよい。
【0009】
また、本発明の別の好ましい態様において、前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、前記テンポ報知手段は、前記伴奏音データ記憶手段内の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生し、演奏者に対して演奏タイミングを報知する演奏タイミング報知手段を具備し、前記評価手段は、前記演奏タイミング報知手段によって演奏タイミングが報知されている期間を前記予め定められた期間として前記評価を行ってもよい。
【0010】
また、本発明の別の好ましい態様において、前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、前記伴奏音データ記憶手段は、音符配列の異なる複数の伴奏音データからなる組を記憶し、前記テンポ報知手段は同一の組に属する複数の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生し、前記複数の伴奏音データの各々に対応し、所定の音符配列を示すフレーズ音データを複数記憶するフレーズ音データ記憶手段を具備し、前記評価手段は、前記テンポ報知手段によって再生されている伴奏音データに対応するフレーズ音データを前記基準演奏データとして前記評価行ってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鍵盤楽器を用いて脳機能の測定や脳機能の活性化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】鍵盤楽器課題提示システムの構成の一例を示す図である。
【図2】課題提示装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】課題提示装置のフレーズ音の提示処理の内容の一例を示す図である。
【図4】対応関係記憶領域の記憶内容の一例を示す図である。
【図5】課題提示装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図6】課題提示処理の内容の一例を示す図である。
【図7】課題提示処理の内容の一例を示す図である。
【図8】課題提示処理の内容の一例を示す図である。
【図9】課題提示処理の内容の一例を示す図である。
【図10】電子楽器の構成の一例を示す図である。
【図11】電子楽器のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図12】電子楽器の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<A:第1実施形態>
<A−1:構成>
図1は、この発明の一実施形態である鍵盤楽器課題提示システムの構成の一例を示す図である。図において、鍵盤楽器2は、鍵盤を備えた楽器であり、例えばアコースティックピアノである。鍵盤楽器2には、譜面を設置するための譜面台21が設けられている。譜面台21には、課題提示装置1が設置されている。課題提示装置1は、鍵盤楽器2を用いて演奏者に課題を提示するための装置である。
【0014】
図2は、課題提示装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図において、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して課題提示装置1の各部を制御する。記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。表示部13は、液晶パネル等を備え、制御部11による制御の下に各種の画像を表示する。操作部14は、課題提示装置1の演奏者が操作可能な各種操作子を有し、操作に応じた信号を出力する。
【0015】
マイクロホン15は、近傍の音を収音し、収音した音を表すアナログ信号を出力する収音手段である。音声処理部16は、マイクロホン15が出力するアナログ信号をA/D変換してデジタルデータを生成する。また、音声処理部16は、制御部11の制御の下、デジタル形式の音声データをD/A変換してアナログ信号を生成し、生成した音声信号をスピーカ17に出力する。スピーカ17は、音声処理部16から供給されるアナログ信号に応じた強度で放音する放音手段である。
【0016】
なお、この実施形態では、マイクロホン15とスピーカ17とが課題提示装置1に含まれている場合について説明するが、音声処理部16に入力端子及び出力端子を設け、オーディオケーブルを介してその入力端子に外部マイクロホンを接続するとしても良く、同様に、オーディオケーブルを介してその出力端子に外部スピーカを接続するとしても良い。また、この実施形態では、マイクロホン15から音声処理部16へ入力される音声信号及び音声処理部16からスピーカ17へ出力される音声信号がアナログ音声信号である場合について説明するが、デジタル音声データを入出力するようにしても良い。このような場合には、音声処理部16にてA/D変換やD/A変換を行う必要はない。表示部13、操作部14についても同様であり、課題提示装置1に内蔵される形式であってもよく、外付けされる形式であってもよい。
【0017】
光源19は、レーザ光を照射する照射手段である。光源制御部18は、光源19を制御して、鍵盤楽器2の鍵盤に対してレーザ光を照射させる。ここで、光源19が照射するレーザ光について、図面を参照しつつ説明する。図3は、光源19が照射するレーザ光を説明するための図である。図示のように、本実施形態における課題提示装置1は、鍵盤楽器2の譜面台21に設置される。課題提示装置1において鍵盤楽器2の鍵盤22と対向する面に、光源19が設けられている。光源19は、光源制御部18の制御により、その照射方向を複数の方向に異ならせることができるようになっている。具体的には、図3に示す例では、光源19は、その照射方向を、γ1,γ2,γ3,γ4,γ5の5方向で切り替えることができるようになっている。すなわち、図3に示す例では、光源19によって、鍵盤楽器2の鍵盤22を構成する複数の鍵221,222,223,224,225のいずれかにレーザ光が照射される。また、光源制御部18は、それらの方向へのレーザ光の照射方向を微少な単位時間毎に連続的に切り替えることによって、複数の鍵を同時に示すこともできるようになっている。光源制御部18は、光源19を制御してレーザ光を照射することによって、1又は複数の鍵を演奏者に提示する。
【0018】
また、光源制御部18は、光源19が照射したレーザ光の反射光を受光し、受光した反射光の光量を示す信号を出力する。光源制御部18は、鍵盤22の複数の鍵221,222,223,224,225での直接の反射光や乱反射光を受光する。このとき、鍵盤22上に演奏者の指が置かれている場合とそれ以外の場合とで光源制御部18に到達する反射光の光量は異なってくる。そのため、光源制御部18は、反射光の光量に応じて、複数の鍵のそれぞれの位置に演奏者の指が置かれているか否かを判断することができる。また、鍵盤楽器2の演奏音の音量については、課題提示装置1内のマイクロホン15を用いて検出する。
【0019】
図2の説明に戻る。記憶部12は、図示のように、伴奏音データ記憶領域121と、フレーズ音データ記憶領域122と、対応関係記憶領域123とを有している。伴奏音データ記憶領域121には、伴奏音を表す伴奏音データが複数種類記憶されている。この伴奏音データの一部は、音符配列の異なる第1、第2の伴奏音データからなる組を有している。
【0020】
フレーズ音データ記憶領域122には、所定の音符配列を示すフレーズ音データが複数記憶されている。ここで、フレーズ音は、メロディや和音、伴奏など、音楽的なものである。本実施形態では、フレーズ音の長さは1〜2小節であることが好ましい。フレーズ音は、右手で演奏するパターンであってもよく、また、左手で演奏するパターンであってもよく、また、両手同時に演奏するパターンであってもよい。フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音データには、上述の第1、第2の伴奏音データに各々対応し、所定の音符配列を示す第1、第2のフレーズ音データが含まれている。
【0021】
対応関係記憶領域123には、伴奏音とフレーズ音との対応関係が記憶されている。図4は、対応関係記憶領域123に記憶されたデータの内容の一例を示す図である。図4に示す例では、この記憶領域には「伴奏音」と「フレーズ音」との各項目が互いに関連付けて記憶されている。これらの項目のうち、「伴奏音」の項目には、伴奏音データ記憶領域121に記憶された伴奏音データを識別する伴奏音ID(伴奏音識別情報)が記憶されている。「フレーズ音」の項目には、フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音データを識別するフレーズID(フレーズ識別情報)が記憶されている。図4に示す例では、「伴奏音Aの識別情報(ID)」と「フレーズ音Xの識別情報(ID)」とが対応付けて記憶されているとともに、「伴奏音Bの識別情報」と「フレーズ音Yの識別情報(ID)」とが対応付けて記憶されている。
【0022】
フレーズ音は、演奏者に演奏を要求される音であり、概ね、1〜2小節の長さのメロディ(旋律)である。なお、要求される演奏音は、必ずしもフレーズ音と完全に一致しない場合もある。このフレーズ音は、演奏評価の際には、演奏評価の基準となる基準演奏データとなり、演奏者によって実際に演奏された音と比較される。一方、伴奏音は、演奏が要求されるフレーズ音のきっかけ(手がかり、ヒント)、伴奏として課題提示装置1より再生される音である。
【0023】
次に、課題提示装置1の機能的構成の一例について図面を参照しつつ説明する。図5は、課題提示装置1の機能的構成の一例を示す図である。図において、課題提示制御部111,フレーズ音提示部112,伴奏音再生部113,操作検出部114,演奏評価部115は、制御部11がROM又は記憶部12に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、図中の矢印はデータの流れや制御の関係を概略的に示すものである。
【0024】
図5において、課題提示制御部111は、演奏者の操作内容に応じて、課題提示処理を行う。フレーズ音提示部112は、課題提示制御部111の制御の下、フレーズ音を表す楽音を再生するとともに、鍵盤楽器2に対してレーザ光を照射させることによって、音と光によって演奏者に対してフレーズ音を提示する。すなわち、フレーズ音提示部112は、フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音データに基づいてフレーズ音を再生するフレーズ音再生手段として機能するとともに、このフレーズ音の再生に対応して、演奏者が操作する鍵盤の押鍵を指示する押鍵指示手段として機能する。
【0025】
伴奏音再生部113は、伴奏音データ記憶領域121内の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生する。より具体的には、伴奏音再生部113は、課題提示制御部111からの指示に従って、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音データを読み出して音声処理部16に供給し、スピーカ17から伴奏音を放音させる。
【0026】
操作検出部114は、演奏者の演奏操作を検出する。この実施形態では、光源制御部18から出力される信号に応じて、演奏者の演奏操作を検出する。より具体的には、操作検出部114は、光源制御部18が受光した反射光の光量が予め定められた閾値以下である場合には、レーザ光が照射されている鍵が押鍵されていると判定する一方、それ以外の場合には、レーザ光が照射されている鍵が押鍵されていないと判定する。操作検出部114は、検出した演奏操作を示すデータを演奏評価部115に供給する。
【0027】
演奏評価部115は、伴奏音再生部113による伴奏音の再生中に、予め定められた期間(以下、「評価対象期間」という)において、操作検出部114が検出する演奏操作と予め定められた基準演奏データ(フレーズ音データ)との比較に基づいて演奏者による演奏操作を評価する。この実施形態では、演奏評価部115は、演奏者の演奏結果と、フレーズ音提示部112によって演奏者に提示されたフレーズ音とを比較し、両者の整合度合いに応じて演奏者の演奏を評価する。演奏評価部115は、評価結果を表示部13に表示するとともに、評価結果を課題提示制御部111に通知する。
【0028】
<A−2:動作>
次に、この実施形態の動作について説明する。演奏者は、課題提示装置1の操作部14を用いて、課題提示処理を行う旨の操作を行う。操作部14は、操作された内容に応じた操作信号を出力する。制御部11は、操作部14から出力される信号に応じて、課題提示処理を開始する。課題提示装置1は、課題として、<1:ブランチング課題>、<2:Go/NoGo課題>、<3:ブランチング課題、Go/NoGo課題の組み合わせ(1)>、<4:ブランチング課題、Go/NoGo課題の組み合わせ(2)>、<5:葛藤課題>の5種類の課題を提示する。課題提示装置1の制御部11は、演奏者によって操作された内容に応じて、これらの5種類の課題のなかからいずれかを選択し、選択した課題を演奏者に対して提示する処理を行う。
【0029】
<A−2−1:ブランチング課題>
まず、ブランチング課題の提示処理について、図面を参照しつつ説明する。このブランチング課題は、伴奏音とフレーズ音とを組として同時に提示した後に、一方の伴奏音のみを提示して、演奏者がこの伴奏音にあわせて対応するフレーズ音を思い出しながら演奏するという課題である。この課題においては、制御部11は、伴奏音データ記憶領域121に記憶された伴奏音データのうち、同一の組に属する第1、第2の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生した後、再び第1の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生する。また、制御部11は、再び第1の伴奏音データに基づいて伴奏音信号を生成している期間を評価対象期間として評価データの生成を行う。また、制御部11は、第1、第2の伴奏音データを再生するタイミングに同期してフレーズ音データ記憶領域122内の第1、第2のフレーズ音データに基づいてフレーズ音を再生し、再び第1の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生するときはフレーズ音の再生を停止する。
【0030】
図6は、課題提示装置1によって再生される伴奏音と課題提示装置1によって提示されるフレーズ音との一例を示す図である。図において、横軸は時刻を示す。図6において、(a)は再生される伴奏音を概略的に示したものであり、(b)は提示されるフレーズ音を概略的に示したものであり、(c)は演奏者が要求される演奏音を概略的に示したものである。ブランチング課題が選択されると、制御部11は、まず、伴奏音Aを放音するとともにフレーズ音Xを提示する(図6の時刻t0〜t1参照)。より具体的には、制御部11は、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音Aを表すデータ(以下「伴奏音データDA」)を読み出してスピーカ17から音として放音させるとともに、フレーズ音データ記憶領域122からフレーズ音Xを表すデータ(以下「フレーズ音データDX」)を読み出してスピーカ17から音として放音させるとともに光源制御部18を制御してフレーズ音Xを鍵盤22上に提示する。
【0031】
次いで、制御部11は、伴奏音Bを放音するとともにフレーズ音Yを提示する(図6の時刻t1〜t2参照)。より具体的には、制御部11は、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音Bを表すデータ(以下「伴奏音データDB」)を読み出してスピーカ17から音として放音させるとともに、フレーズ音データ記憶領域122からフレーズ音Yを表すデータ(以下「フレーズ音データDY」)を読み出してスピーカ17から音として放音させるとともに光源制御部18を制御してフレーズ音Yを鍵盤22上に提示する。
【0032】
次いで、制御部11は、伴奏音Aを放音する(図6の時刻t2〜t3参照)。すなわち、制御部11は、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音データDAを読み出して音声処理部16に供給し、スピーカ17から伴奏音Aを放音させる。この期間では、制御部11は、フレーズ音の提示処理を行わない。演奏者は、課題提示装置1から放音される伴奏音Aに合わせて、鍵盤楽器2を用いてフレーズ音Xを演奏する(図6の時刻t2〜t3)よう要求される。
【0033】
制御部11は、鍵盤楽器2に照射されたレーザ光の反射光に応じて、演奏者による鍵盤楽器2の演奏操作を検出する。制御部11は、検出結果と、フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音Xとを比較し、両者の整合度合いに応じて演奏者の演奏を評価する。制御部11が行う評価の具体例としては、例えば、フレーズ音と検出結果との両者の整合度合いに応じて、予め定められたアルゴリズムに従って被験者の脳年齢を数値で算出するようにしてもよい。また、他の例として、例えば、制御部11が、予め定められたアルゴリズムに従って性格分析(おっとり、早とちり、など)を行うようにしてもよい。また、例えば、制御部11が、予め定められたアルゴリズムに従って性格分析の結果を音楽家に例えて表すようにしてもよい。
【0034】
フレーズ音と検出結果との整合度合いに応じた評価処理の具体的な態様としては、例えば、音高やタイミング(リズム)の整合度合いに応じて評価処理を行うようにしてもよい。また、音高として鍵盤楽器の指使いを評価するようにしてもよい。また、鍵盤楽器として電子楽器を用いる場合には、押鍵の強弱(ベロシティ)を電子楽器が計測し、この計測結果に応じて評価を行うようにしてもよい。このように、整合度合いとしては、計測可能な物理量であればどのようなものを用いてもよい。これにより、脳年齢(水準)や音楽的な能力を所定のアルゴリズムで評価算出する。
【0035】
また、制御部11が、音楽的な評価を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、フレーズ音の記憶力、フレーズ音の聴き分け力、コードの聴き分け力、リズム感等を、予め定められたアルゴリズムに従って数値で出力するようにしてもよい。また、複数の課題の評価結果に応じて、得意/不得意なものを表示するようにしてもよい。
【0036】
制御部11は、検出結果とフレーズ音Xとの整合度合いが予め定められた条件を満たす場合には、フレーズ音Xについて正解であると判定し、次のフレーズ音Z,Wを用いて再度課題提示処理を実行する(図6の時刻t3〜t5参照)。すなわち、制御部11は、演奏者がフレーズ音Xを弾けたかどうかの度合いが予め定められたレベル以上であった場合に、そのフレーズ音Xについて正解であると判定する。一方、不正解の場合は、制御部11は、フレーズ音A,Bを用いて再度課題提示処理を実行する。
【0037】
<A−2−2:Go/NoGo課題>
次に、課題提示装置1が提示する、Go/NoGo課題について説明する。この課題提示処理においては、伴奏音A,Bを用いるとともに、フレーズ音Xを用いて課題の提示処理を行う。ここで、伴奏音A,Bとして、音楽的な進行がつながるものを用いる。また、フレーズ音Xは音楽的に伴奏音Aに合うものを用いる。また、伴奏音A,Bとして、両者が似ていないものを用いる。
【0038】
制御部11は、伴奏音Aが再生されたときにはフレーズ音Xを弾き、伴奏音Bが再生されたときはフレーズ音Xの演奏を行わないように演奏者に教示する。この制御の態様としては、例えば、制御部11が、伴奏音Aとフレーズ音Xとを再生しながら、「伴奏音Aが流れたときにはフレーズ音Xを弾き、伴奏音Bが流れたときはフレーズ音Xの演奏を行わないでください」といったメッセージを出力するようにしてもよい。なお、制御部11がフレーズ音Xを再生せずに、フレーズ音Xを、予め譜面などによって演奏者に提示するようにしてもよい。
【0039】
次いで、制御部11は、伴奏音Aと伴奏音Bとをランダムな順番で再生する。すなわち、制御部11は、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音データDAと伴奏音データDBとをランダムな順番で読み出し、読み出したデータを音声処理部16に供給することによって、伴奏音Aと伴奏音Bとをランダムにスピーカ17から放音する。
【0040】
演奏者は、課題提示装置1から放音される伴奏音を聴きながら、伴奏音Aが再生された場合には、フレーズ音Xを演奏する。一方、演奏者は、伴奏音Bが放音された場合にはフレーズ音Xを演奏しないようにする。
【0041】
制御部11は、鍵盤楽器2に照射されたレーザ光の反射光に応じて、演奏者による鍵盤楽器2の演奏状態を検出する。制御部11は、検出結果と、フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音Xとを比較し、両者の整合度合いに応じて演奏者の演奏を評価する。なお、この評価処理は、上述したブランチング課題処理において示した評価処理の内容と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。制御部11は、検出結果とフレーズ音Xとの比較結果が、予め定められた条件を満たす場合には、フレーズ音Xについて正解であると判定し、次のフレーズ音C,Dを用いて再度課題提示処理を実行する。
【0042】
また、このGo/NoGo課題においては、逆転の課題(すなわち伴奏音Aが再生された場合にはフレーズ音Xを演奏しないようにする一方、伴奏音Bが再生された場合にフレーズ音Xを演奏する)についても行うようにしてもよい。また、上述の課題(伴奏音Aが再生された場合にフレーズ音Xを演奏する一方、伴奏音Bが再生された場合にはフレーズ音Xを演奏しない)を実行している途中で逆転の課題に切り換えるようにしてもよい。また、上述の課題と逆転の課題とを混在させて提示するようにしてもよい。
【0043】
<A−2−3:ブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ(1)>
次に、ブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ課題(1)について、図7を参照しつつ説明する。この課題においては、制御部11は、フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音データを選択し、選択した各フレーズ音データに基づいてフレーズ音を再生するとともに、一つのフレーズ音の再生後に当該フレーズ音の再生時間の所定倍(この実施形態では2倍)の待機時間の後に次のフレーズ音を選択して再生を行う。また、制御部11は、一つのフレーズ音を再生してから次のフレーズ音を再生するまでの待機時間のうちの一部の期間(この実施形態では後半の期間)を評価対象期間とする。
【0044】
図7は、この課題において、課題提示装置1によって再生される伴奏音と課題提示装置1によって提示されるフレーズ音の一例を示す図である。図において、(a)は再生される伴奏音を概略的に示したものであり、(b)は提示されるフレーズ音を概略的に示したものであり、(c)は演奏者が要求される演奏音を概略的に示したものである。まず、制御部11は、伴奏音を再生するとともに、伴奏音の再生に合わせて、フレーズ音を音と光で提示する(図7の時刻t0〜t1参照)。
【0045】
次いで、制御部11は、伴奏音を再生した状態のまま、フレーズ音の時間長と同じ長さの待ち時間を設ける(図7の時刻t1〜t2参照)。このとき、フレーズ音を弾かない指示として、制御部11は、光源制御部18を制御して、全ての鍵を光らせる。
【0046】
待ち時間が終わると、演奏者は、時刻t0〜t1において提示されたフレーズ音を思い出しながら、伴奏音に合わせて演奏を行う(図7の時刻t2〜t3参照)。
【0047】
制御部11は、提示するフレーズ音を異ならせて、時刻t0〜t3の処理を繰り返し実行する(図7、t3以降)。このとき(時刻t0〜t3の間)、再生する伴奏音は全て同じものを用いる(つまり、t0〜t1、t1〜t2、t2〜t3の各期間で同じ伴奏音を繰り返して再生する。)。また、フレーズ音は複数のテストのそれぞれで異なるものを提示してもよい。
【0048】
制御部11は、鍵盤楽器2に照射されたレーザ光の反射光に応じて、演奏者による鍵盤楽器2の演奏状態を検出する。制御部11は、検出結果と、提示したフレーズ音とを比較し、比較結果に応じて演奏者の演奏を評価する。なお、この評価処理は、上述した他の課題における評価処理と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。制御部11は、検出結果とフレーズ音との整合度合いが予め定められた条件を満たす場合には、そのフレーズ音について正解であると判定する。
【0049】
<A−2−4:ブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ(2)>
次に、ブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ課題(2)について、図8を参照しつつ説明する。図8において、(a)は再生される伴奏音を概略的に示したものであり、(b)は提示されるフレーズ音を概略的に示したものであり、(c)は演奏者が要求される演奏音を概略的に示したものである。
【0050】
この課題を提示するに先立って、演奏者に予めひとつのフレーズ音を覚えてもらっておく。このフレーズ音の提示の態様は、例えば、伴奏音の再生を開始する前に「これから提示するフレーズ音を覚えてください」といったメッセージとともにフレーズ音を提示するようにしてもよい。なお、制御部11が演奏者に覚えてもらうフレーズ音Xを再生せずに、フレーズ音を譜面などによって予め演奏者に提示しておくようにしてもよい。
【0051】
まず、制御部11は、伴奏音を再生する。また、制御部11は、演奏者にフレーズ音を弾いてほしくないところでは鍵盤全てを光らせる一方、フレーズ音を弾いてほしくないところでは鍵盤を光らさない。すなわち、制御部11は、評価対象期間(予め定められた期間)を演奏者に告知するタイミング告知手段として機能する。
【0052】
演奏者は、鍵盤が光っていないときに、覚えていたフレーズ音を弾く。具体的には、例えば、図8に示す例においては、演奏者は、時刻t0〜t1,時刻t2〜t3においてはフレーズ音を演奏せずに、時刻t1〜t2,時刻t3〜t4においてはフレーズ音を演奏する。
【0053】
制御部11は、鍵盤楽器2に照射されたレーザ光の反射光に応じて、演奏者による鍵盤楽器2の演奏状態を検出する。制御部11は、検出結果と、提示したフレーズ音とを比較し、比較結果に応じて演奏者の演奏を評価する。制御部11は、検出結果とフレーズ音との比較結果が予め定められた条件を満たす場合には、そのフレーズ音について正解であると判定する。
【0054】
<A−2−5:葛藤課題>
次に、課題提示装置1が提示する葛藤課題について、図9を参照しつつ説明する。図9において、(a)は再生される伴奏音を表し、(b)は提示されるフレーズ音を表し、(c)は演奏者が要求される演奏音を概略的に示したものである。この課題提示処理においては、伴奏音A,Bとフレーズ音X,Yとを用いる。伴奏音A,Bは連続的につながるものが好ましい。また、フレーズ音X,Yは、前述の場合と同様に、伴奏音の和音になじむ音で構成され伴奏音のコード進行に調和するメロディ進行となることが好ましい。
【0055】
まず、制御部11は、課題提示処理を行うに先立って、伴奏音Aが流れたときにフレーズ音Xを弾き、伴奏音Bが流れたときにフレーズ音Yを弾くように演奏者に教示する。この指示の態様としては、例えば、制御部11が、伴奏音Aとフレーズ音Xとを再生しながら、「この伴奏音が流れたときはこのフレーズ音を弾いてください」といったメッセージを出力するようにしてもよい。なお、制御部11がフレーズ音Xとフレーズ音Yを再生せずに、フレーズ音Xとフレーズ音Yを、予め譜面などで演奏者に提示しておくようにしてもよい。
【0056】
制御部11は、伴奏音Aと伴奏音Bとをランダムな順番で再生する。すなわち、制御部11は、伴奏音データ記憶領域121から伴奏音データDAと伴奏音データDBとをランダムな順番で読み出し、読み出したデータを音声処理部16に供給することによって、伴奏音Aと伴奏音Bとをランダムにスピーカ17から放音させる。図9に示す例では、制御部11は、伴奏音A、伴奏音B、伴奏音B、伴奏音Aの順番に再生する(図9の時刻t0〜t4参照)。
【0057】
演奏者は、課題提示装置1から放音される伴奏音を聴きながら、伴奏音Aが再生された場合にはフレーズ音Xを演奏する一方、伴奏音Bが放音された場合にはフレーズ音Yを演奏する。
【0058】
制御部11は、鍵盤楽器2に照射されたレーザ光の反射光に応じて、演奏者による鍵盤楽器2の演奏状態を検出する。制御部11は、検出結果と、フレーズ音データ記憶領域122に記憶されたフレーズ音Xとを比較し、比較結果に応じて、演奏者の演奏を評価する。評価としては、被験者が伴奏音A,Bに対して反応していたか、反応の有無や、反応の正誤、フレーズ音X,Yのリズム・音が正確か、伴奏音と合っていたか、等を評価する。制御部11は、検出結果とフレーズ音Xとの比較結果が、予め定められた条件を満たす場合には、フレーズ音Xについて正解であると判定し、次のフレーズ音C,Dを用いて再度課題提示処理を実行する。
【0059】
また、この葛藤課題においては、逆転の課題(すなわち伴奏音Aが再生されている場合にはフレーズ音Yを演奏する一方、伴奏音Bが再生された場合にフレーズ音Xを演奏する)についても行うようにしてもよい。
【0060】
以上説明したように本実施形態によれば、鍵盤楽器を用いて脳機能の活性化や、性格分析、音楽トレーニングなどを行うことができる。具体的には、例えば、課題提示装置1を一人で用いる場合には、脳機能の活性化を図ることができるともに、性格分析や、音楽トレーニングを行うことができる。また、課題提示装置1を複数人で用いる場合には、同じ場所またはネットを介して、競争しながら楽しむことができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、鍵盤が光らない電子楽器や生楽器を用いる場合であっても、鍵盤に対してレーザ光を照射して押鍵する鍵を報知するから、どこを押さえたらよいかをリアルタイムで利用者に提示することができる。
【0062】
<B:第2実施形態>
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。図10は、この発明の第2の実施形態である電子楽器3の外観の一例を示す図である。図において、電子楽器3は、鍵盤を備えた楽器であり、例えば電子ピアノである。電子楽器3の鍵盤32を構成する各鍵321,322,…には、それぞれ光源391,392,…が設けられている。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、光源391,392,…を各々区別する必要がない場合には、これらを「光源39」と称して説明する。
【0063】
図11は、電子楽器3のハードウェア構成の一例を示す図である。図11において、制御部31は、CPUやROM、RAMを備え、ROM又は記憶部32に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して電子楽器3の各部を制御する。記憶部32は、制御部31によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。操作部14は、電子楽器3の演奏者による操作に応じた信号を出力する。
【0064】
マイクロホン35は、収音し、収音した音を表すアナログ信号を出力する収音手段である。音声処理部36は、マイクロホン35が出力するアナログ信号をA/D変換してデジタルデータを生成する。また、音声処理部36は、制御部31の制御の下、デジタル形式の音声データをD/A変換してアナログ信号を生成し、生成した音声信号をスピーカ37に出力する。スピーカ37は、音声処理部36から供給されるアナログ信号に応じた強度で放音する放音手段である。
【0065】
光源39は、例えばLEDであり、電子楽器3の鍵盤を構成する各鍵にそれぞれ設けられている。光源制御部38は、光源39を点灯させる。電子楽器3の制御部31は、光源制御部38を制御して、各鍵に設けられた光源を点灯する。押鍵検出部40は、演奏者による押鍵動作を検出し、検出結果を示す信号を出力する。
【0066】
記憶部32は、図示のように、伴奏音データ記憶領域321と、フレーズ音データ記憶領域322と、対応関係記憶領域323とを有している。伴奏音データ記憶領域321、フレーズ音データ記憶領域322、対応関係記憶領域323のそれぞれの記憶内容は、上述した第1実施形態における課題提示装置1の伴奏音データ記憶領域121、フレーズ音データ記憶領域122、対応関係記憶領域123のそれぞれの記憶内容と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0067】
次に、電子楽器3の機能的構成の一例について図面を参照しつつ説明する。図12は、電子楽器3の機能的構成の一例を示す図である。図において、課題提示制御部311,フレーズ音提示部312,伴奏音再生部313,演奏評価部315は、制御部31がROM又は記憶部32に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、図中の矢印はデータの流れを概略的に示すものである。図12において、課題提示制御部311,伴奏音再生部313,演奏評価部315の各々が行う処理は、上述した第1の実施形態において示した課題提示制御部111,伴奏音再生部113,演奏評価部115の各々が行う処理と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0068】
フレーズ音提示部312は、課題提示制御部311の制御の下、フレーズ音を表す楽音を再生するとともに、光源制御部38を制御して光源を点灯させることによって、音と光によって演奏者に対してフレーズ音を提示する。
【0069】
次に、この実施形態の動作について説明する。電子楽器3の演奏者は、電子楽器3の操作部34を用いて、課題提示処理を行う旨の操作を行う。操作部34は、操作された内容に応じた操作信号を出力する。制御部31は、操作部34から出力される信号に応じて、課題提示処理を開始する。電子楽器3は、課題として、<1:ブランチング課題>、<2:Go/NoGo課題>、<3:ブランチング課題、Go/NoGo課題の組み合わせ(1)>、<4:ブランチング課題、Go/NoGo課題の組み合わせ(2)>、<5:葛藤課題>の5種類の課題を提示する。電子楽器3は、演奏者によって操作された内容に応じて、これらの5種類の課題のなかからいずれかを選択し、選択した課題を演奏者に対して提示する処理を行う。これらの5種類の課題の内容は、上述した第1の実施形態で示したそれと同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0070】
上述の第1の実施形態における課題提示装置1が行う動作とこの実施形態における電子楽器3の動作とが異なる点は、フレーズ音の提示処理と押鍵検出処理の内容が異なる点であり、他の処理については上述の実施形態の内容と同様である。フレーズ音の提示処理については、電子楽器3の制御部31は、上述したように、鍵盤32を構成する各鍵に設けられた光源39を点灯させることによって、フレーズ音を光によって演奏者に提示する。押鍵検出処理については、電子楽器3の制御部31は、押鍵検出部40から出力される信号に応じて、演奏者による押鍵の有無や強度(ベロシティ)を検出する。
【0071】
この実施形態では、上述した第1の実施形態と同様に、鍵盤楽器を用いて脳機能の活性化や性格分析、音楽トレーニングなどを行うことができる。具体的には、例えば、電子楽器3を一人で用いる場合には、脳機能の活性化を図ることができるとともに、性格分析や、音楽トレーニングを行うことができる。また、電子楽器3を複数人で用いる場合には、同じ場所またはネットを介して、競争しながら楽しむことができる。
【0072】
<C:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
(1)上述の第1の実施形態において、課題提示装置1が、鍵盤の配置を自動的に検出するようにしてもよい。この場合は、制御部11は、課題提示装置1から照射されるレーザ光の反射光に応じて、鍵盤上の凹凸を検出し、その検出結果に基づいて鍵の配置を特定する。制御部11は、特定した鍵の配置に基づいてレーザ光の照射方向を制御する。
また、鍵の配置の検出の態様はこれに限らず、例えば、課題提示装置1が画像を撮影する撮影部を備える構成とし、制御部11が、撮影部によって撮影された画像を画像認識することによって鍵の配置を検出するようにしてもよい。この場合は、撮影部は課題提示装置1に内蔵されていてもよく、また、課題提示装置1に撮像部を外付けする構成であってもよい。
【0073】
(2)上述の第1又は第2の実施形態において、制御部11が、指番号を表せて表示するようにしてもよい。この場合は、例えば、レーザ光を鍵盤に照射する場合には、制御部11が、照射するレーザ光を制御して鍵盤上に指番号を表す画像を表示するようにしてもよく、また、例えば、鍵にLED等の光源を備える電子楽器を用いる場合には、各鍵に指番号を表示するための光源を設ける構成とし、各光源を制御して指番号を表示するようにしてもよい。このようにすることで、演奏者は、演奏の指使いも把握することができる。
【0074】
(3)上述の第1の実施形態において、課題提示装置1は、専用の装置であってもよく、また、例えば、携帯電話端末や、携帯型ゲーム機等であってもよい。また、上述の第1の実施形態では、鍵盤楽器2としてアコースティックピアノを用いてが、鍵盤楽器2はこれに限らず、例えば、電子ピアノを用いてもよい。
【0075】
(4)上述の第1の実施形態では、ひとつの光源を用いてレーザ光を複数の鍵に対して照射方向を異ならせることによって複数の鍵に対してレーザ光を照射するようにしたが、これに限らず、課題提示装置1が各鍵毎にそれぞれ光源を備える構成であってもよい。
【0076】
(5)上述の第1及び第2の実施形態では、ブランチング課題、Go/NoGo課題、及びブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ課題(1)においては、複数の異なる伴奏音を再生することによって、演奏を行うべきタイミングや演奏を行わないタイミングを演奏者に報知した。また、ブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ課題(2)においては、鍵盤へのレーザ光の照射態様によって、演奏を行うべきタイミングや演奏を行わないタイミングを演奏者に報知した。演奏のタイミングの報知の態様はこれに限らず、例えば、表示ディスプレイに映像を表示し、その映像を時系列に変化させることによって、演奏のタイミングを報知するようにしてもよい。また、例えば、課題提示装置1が自装置を振動させる機構を備える構成とし、振動の態様を時系列に変化させることによって演奏タイミングを報知するようにしてもよい。要は、課題提示装置1の制御部11が、音、光、映像及び振動の少なくともいずれかひとつを時系列に変化させることによって、演奏のタイミングを報知するようにすればよい。
【0077】
(6)上述の第1の実施形態では、光源制御部18が受光する反射光の光量に応じて、複数の鍵のそれぞれの位置に演奏者の指が置かれているか否かを判定した。押鍵されたか否かを判定する方法はこれに限らず、他の方法で押鍵を検出するようにしてもよい。例えば、押鍵を検出する押鍵センサを備えた電子ピアノを用いる場合には、押鍵センサの出力信号に応じて、押鍵の有無を検出するようにしてもよい。
【0078】
また、演奏音をマイクロホン(収音手段)で収音し、収音された演奏音を制御部11が解析することによって演奏操作を検出するようにしてもよい。この場合は、例えば、制御部11が、マイクロホンから出力される音声信号からピッチを検出し、検出されるピッチに基づいてどの鍵が押されたかを判定するようにしてもよい。
【0079】
(7)上述の第1の実施形態では、課題提示装置1が伴奏音を再生するようにしたが、課題提示装置1が、伴奏音を提示するに代えて、例えば、光源を点灯させることによってテンポを報知するようにしてもよい。また、例えば、課題提示装置1に自装置を振動させる機構を設ける構成とし、その機構によって自装置を所定タイミング毎に振動させることによってテンポを報知するようにしてもよい。要は、課題提示装置1が、テンポを表すタイミングデータを所定の記憶領域に予め記憶しておき、課題提示装置1の制御部11が、記憶されたタイミングデータに基づいて、音、光、振動、映像などによってテンポを演奏者に報知するようにすればよい。
【0080】
このように、テンポを表すタイミングデータとして用いるデータは、伴奏音を表す伴奏音データであってもよく、また、例えば、打楽器によって演奏される単なるリズムを表すデータであってもよく、音、光、振動、映像などによってテンポを演奏者に報知するために用いられるデータであればどのようなものであってもよい。また、対応する(演奏者が回答すべき)フレーズ音も同様であり、リズムを表すフレーズ音を用いるようにしてもよい。
【0081】
(8)上述の第1の実施形態では、Go/NoGo課題において、伴奏音A,Bとして、両者が似ていないものを用いるようにしたが、これに限らず、レベルに応じて似ている伴奏音、似ていない伴奏音を用いるようにしてもよい。すなわち、レベルに応じて伴奏音A,Bの類似度を異ならせるようにしてもよい。この場合、伴奏音が似ているほど課題の難易度が高くなる。
【0082】
(9)上述の第1実施形態では、ブランチング課題とGo/NoGo課題の組み合わせ課題において、一つのフレーズ音の再生後に当該フレーズ音の再生時間の2倍の待機時間をもたせるようにしたが、待機時間の時間長はこれに限らず、例えば、レベルに応じて待機時間の時間長を異ならせるようにしてもよい。具体的には、例えば、難易度が低い場合には待機時間をなしとし、一方、難易度が中程度の場合には待機時間を短くし、難易度が高い場合には待機時間を長くとるようにしてもよい。
【0083】
(10)上述の実施形態では、演奏者が演奏する楽器として、アコースティックピアノや電子ピアノを用いたが、演奏者が演奏する楽器はこれらに限らず、例えば、エレクトーンやオルガン等の他の鍵盤楽器であってもよい。また、演奏者が演奏する楽器は鍵盤楽器に限らず、他の楽器であってもよい。要は、課題提示装置1が、楽器の操作子等に設けられたセンサからの出力信号等に応じて、演奏者の演奏操作を検出する機構を備えていればよい。
【0084】
(11)上述の第1の実施形態では、レーザ光を鍵盤に照射することによって、演奏者が操作する鍵盤の押鍵を指示するようにしたが、演奏者が操作する鍵盤の押鍵の指示の態様はこれに限らず、他の態様であってもよい。例えば、制御部11が、課題提示装置1の表示部13に鍵盤の押鍵を指示する旨を表す映像を表示するようにしてもよく、要は、制御部11が、フレーズ音の再生に伴って、演奏者が操作する鍵盤の押鍵を指示するものであればよい。
【符号の説明】
【0085】
1…課題提示装置、2…鍵盤楽器、21…譜面台、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…操作部、15…マイクロホン、16…音声処理部、17…スピーカ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンポを表すタイミングデータを含む伴奏音データを記憶する伴奏音データ記憶手段と、
前記伴奏音データ記憶手段内のタイミングデータに基づいてテンポを報知するテンポ報知手段と、
演奏者の演奏操作を検出する演奏操作検出手段と、
前記テンポ報知手段によるテンポの報知中に、予め定められた期間において、前記演奏操作検出手段が検出する演奏操作と予め定められた基準演奏データとの比較に基づいて演奏操作を評価する評価手段と
を具備することを特徴とする演奏操作評価装置。
【請求項2】
前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、
前記伴奏音データ記憶手段は、音符配列の異なる複数の伴奏音データからなる組を記憶し、
前記テンポ報知手段は同一の組に属する複数の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生した後、再び前記複数の伴奏音データのうちの所定の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生し、
前記評価手段は、前記テンポ報知手段が前記所定の伴奏音データに基づいて伴奏音データを再生している期間を前記予め定められた期間として前記評価を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の演奏操作評価装置。
【請求項3】
前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、
前記伴奏音データ記憶手段は、音符配列の異なる複数の伴奏音データを記憶し、
前記テンポ報知手段は前記伴奏音データ記憶手段に記憶された複数の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生し、
前記評価手段は、前記テンポ報知手段が前記複数の伴奏音データのうちの所定の伴奏音データに基づいて伴奏音データを再生している期間を前記予め定められた期間として前記評価を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の演奏操作評価装置。
【請求項4】
前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、
前記テンポ報知手段は、前記伴奏音データ記憶手段内の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生し、
所定の音符配列を示すフレーズ音データを複数記憶するフレーズ音データ記憶手段と、
前記フレーズ音データ記憶手段内のフレーズ音データを選択するフレーズ再生手段であって、選択した各フレーズ音データに基づいてフレーズ音を再生するとともに、一つのフレーズ音の再生後に当該フレーズ音の再生時間の所定倍の待機時間の後に次のフレーズ音を選択して再生を行うフレーズ音再生手段と
を有し、
前記評価手段は、前記フレーズ音再生手段が前記一つのフレーズ音を再生してから前記次のフレーズ音を再生するまでの前記待機時間のうちの一部の期間を前記予め定めた期間とする
ことを特徴とする請求項1に記載の演奏操作評価装置。
【請求項5】
前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、
前記テンポ報知手段は、前記伴奏音データ記憶手段内の伴奏音データに基づいて伴奏音を再生し、
演奏者に対して演奏タイミングを報知する演奏タイミング報知手段
を具備し、
前記評価手段は、前記演奏タイミング報知手段によって演奏タイミングが報知されている期間を前記予め定められた期間として前記評価を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の演奏操作評価装置。
【請求項6】
前記タイミングデータは、伴奏音を表す伴奏音データであり、
前記伴奏音データ記憶手段は、音符配列の異なる複数の伴奏音データからなる組を記憶し、
前記テンポ報知手段は同一の組に属する複数の伴奏音データに基づいて順次伴奏音を再生し、
前記複数の伴奏音データの各々に対応し、所定の音符配列を示すフレーズ音データを複数記憶するフレーズ音データ記憶手段
を具備し、
前記評価手段は、前記テンポ報知手段によって再生されている伴奏音データに対応するフレーズ音データを前記基準演奏データとして前記評価を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の演奏操作評価装置。
【請求項7】
テンポを表すタイミングデータを含む伴奏音データを記憶する伴奏音データ記憶手段を具備するコンピュータに、
前記伴奏音データ記憶手段内のタイミングデータに基づいてテンポを報知するステップと、
演奏者の演奏操作を検出するステップと、
前記テンポの報知中に、予め定められた期間において、前記検出する演奏操作と予め定められた基準演奏データとの比較に基づいて演奏操作を評価するステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−276878(P2010−276878A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129590(P2009−129590)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】