説明

演算増幅器

【課題】Rail to Rail動作する演算増幅器のトランスコンダクタンスを一定にする。
【解決手段】Rail to Railオペアンプ50には差動入力段1と出力段2が設けられる。差動入力段1には、第1の差動増幅部11、第2の差動増幅部12、及びバイアス切替部13が設けられる。第1の差動増幅部11には差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2が設けられ、第2の差動増幅部12には差動対をなす定電流源14とPch MOSトランジスタPT1及びPT2が設けられる。バイアス切替部13は、入力電圧Vinレベルに応じて第1の差動増幅部11のバイアス電流Ib6と第2の差動増幅部12のバイアス電流Ib1とを切り替え、第1の差動増幅部11及び第2の差動増幅部12が共に動作する領域でのバイアス電流Ib6及びバイアス電流Ib1を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器(operational amplifier オペアンプとも呼称される)に係り、特に演算増幅器の入力範囲が供給電源の最小値から最大値までの全範囲でRail to Rail動作する演算増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
演算増幅器は、入力信号を増幅して出力し、初期増幅する差動入力段と駆動機能を提供して更なる増幅も可能とする出力段とを含む。演算増幅器の差動入力段には、初期利得を提供し、増幅器に一定のバンド幅と一定な利得を与えるためにトランスコンダクタンス(gmとも呼称される)が一定なRail to Rail動作する差動増幅回路が一般的に用いられている。なお、「Rail to Rail」はモトローラ社の商標である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
近年、電子機器の低消費電力化及び多機能化の進展に伴い、差動増幅回路などをCMOSで構成されるRail to Rail動作の演算増幅器が多用されている。ところが、特許文献1などに記載される演算増幅器においては、差動入力段の差動増幅回路を構成するPch MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ及びNch MOSトランジスタが共に動作する領域では総合トランスコンダクタンスが変動し、差動対をなすPch MOSトランジスタを流れる電流及びNch MOSトランジスタを流れる電流が等しいときに、最大約41%増加(差動対をなすPch MOSトランジスタだけが“ON”、或いは差動対をなすNch MOSトランジスタだけが“ON”するときの21/2倍)するという問題点がある。
【特許文献1】特開2002−185272号公報(頁9、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、総合トランスコンダクタンスの値を一定にできるRail to Rail動作する演算増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の演算増幅器は、第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部とを具備することを特徴とする。
【0006】
更に、本発明の他態様の演算増幅器は、第1の入力電圧がゲートに入力される第1のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、総合トランスコンダクタンスの値を一定にできるRail to Rail動作する演算増幅器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、本発明の実施例1に係る演算増幅器について、図面を参照して説明する。図1は演算増幅器としてのRail to Railオペアンプを示す回路図である。本実施例では、入力電圧の全範囲でのトランスコンダクタンス(gm)の値を一定にするバイアス切替部をRail to Railオペアンプに設けている。
【0010】
図1に示すように、Rail to Railオペアンプ50には、差動入力段1と出力段2が設けられる。Rail to Railオペアンプ50は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)から構成され、入力電圧Vinが高電位側電源VDDレベルから低電位側電源VSSレベルの範囲までRail to Rail動作する演算増幅器である。
【0011】
差動入力段1には、第1の差動増幅部11、第2の差動増幅部12、及びバイアス切替部13が設けられる。差動入力段1は、+側の入力電圧Vin+と同相の−側の入力電圧Vin−が入力され、差動増幅された2つの信号を出力段2に出力する。
【0012】
第2の差動増幅部12には、定電流源14、Pch MOSトランジスタPT1、及びPch MOSトランジスタPT2が設けられる。
【0013】
ここで、Pch MOSトランジスタPT1及びPT2と、これ以降記載されるMOSトランジスタで、特にD型と表記されないMOSトランジスタはすべてE型(エンハンスメント型とも呼称される)である。D型とはディプレッション型とも呼称され、D型MOSトランジスタは、ノーマリーオントランジスタである。なお、MOSトランジスタはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とも呼称される。MISトランジスタはMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)とも呼称される。MOSトランジスタ及びMISトランジスタは絶縁ゲート型電界効果トランジスタとも呼称される。
【0014】
定電流源14は、高電位側電源VDDとノードN1の間に設けられ、一定なバイアス電流Ibを生成する。定電流源14は、Pch MOSトランジスタPT1及びPT2側、Pch MOSトランジスタPT5側、Pch MOSトランジスタPT3及びPT4側にそれぞれバイアス電流を適宜供給する。
【0015】
Pch MOSトランジスタPT1は、ソースがノードN1に接続され、ドレインが出力段2のノードN14に接続され、ゲートに+側の入力電圧Vin+が入力される。Pch MOSトランジスタPT2は、ソースがノードN1に接続され、ドレインが出力段2のノードN8に接続され、ゲートに−側の入力電圧Vin−が入力される。Pch MOSトランジスタPT1及びPT2は差動対を構成する。差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2にはバイアス電流Ib1が供給される。
【0016】
第1の差動増幅部11には、Nch MOSトランジスタNT1、Nch MOSトランジスタNT2、及びNch MOSトランジスタNT6が設けられる。
【0017】
Nch MOSトランジスタNT1は、ドレインが出力段2のノードN12に接続され、ソースがノードN5に接続され、ゲートに+側の入力電圧Vin+が入力される。Nch MOSトランジスタNT2は、ドレインが出力段2のノードN6に接続され、ソースがノードN5に接続され、ゲートに−側の入力電圧Vin−が入力される。差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2にはバイアス電流Ib6が供給される。
【0018】
Nch MOSトランジスタNT6は、ドレインがノードN5に接続され、ソースが接地電位である低電位側電源VSSに接続され、ゲートがノードN4に接続され、低電位側電源VSS側にバイアス電流Ib6を流す。
【0019】
バイアス切替部13には、Pch MOSトランジスタPT3乃至5とNch MOSトランジスタNT3乃至NT5が設けられる。
【0020】
Pch MOSトランジスタPT3は、ソースがノードN1に接続され、ドレインがノードN3に接続され、ゲートに+側の入力電圧Vin+が入力される。Pch MOSトランジスタPT4は、ソースがノードN1に接続され、ドレインがノードN3に接続され、ゲートに−側の入力電圧Vin−が入力される。差動対をなすPch MOSトランジスタPT3及びPT4にはバイアス電流Ib3が供給される。
【0021】
Pch MOSトランジスタPT5は、ソースがPch MOSトランジスタPT1及びPT2のソース(ノードN1)とPch MOSトランジスタPT3及びPT4のソースに接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V1が印加され、低電位側電源VSS側にバイアス電流Ib2を流す。
【0022】
Nch MOSトランジスタNT3は、ドレインがノードN2及びゲートに接続され、ソースが低電位側電源VSSに接続され、低電位側電源VSS側にバイアス電流Ib7を流す。Nch MOSトランジスタNT3及びNT6は、カレントミラー回路を構成する。Nch MOSトランジスタNT3から低電位側電源VSSに流れるバイアス電流Ib7のミラー倍された電流が、Nch MOSトランジスタNT6から低電位側電源VSSにバイアス電流Ib6として流れる。
【0023】
Nch MOSトランジスタNT4は、ドレインがノードN3及びゲートに接続され、ソースが低電位側電源VSSに接続され、低電位側電源VSS側にバイアス電流Ib4を流す。バイアス電流Ib4はバイアス電流Ib3と等しい。
【0024】
Nch MOSトランジスタNT5は、ドレインがノードN2及びN4に接続され、ゲートがNch MOSトランジスタNT4のゲートに接続され、ソースが低電位側電源VSSに接続され、低電位側電源VSS側にバイアス電流Ib5を流す。Nch MOSトランジスタNT4及びNT5は、カレントミラー回路を構成する。Nch MOSトランジスタNT4から低電位側電源VSSに流れるバイアス電流Ib4のミラー倍された電流が、Nch MOSトランジスタNT5から低電位側電源VSSにバイアス電流Ib5として流れる。
【0025】
出力段2には、Pch MOSトランジスタPT6乃至PT9とNch MOSトランジスタNT7乃至10が設けられる。出力段2は、第1の差動増幅部11から出力される信号と第2の差動増幅部12から出力される信号が入力され、2つの信号を一つに合成し、合成された信号を増幅して出力信号Soutとして出力する。
【0026】
Pch MOSトランジスタPT6は、ソースが高電位側電源VDDに接続され、ドレインがノードN6及びNch MOSトランジスタNT2のドレインに接続され、ゲートがノードN9に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V4が印加される。Pch MOSトランジスタPT7は、ソースが高電位側電源VDDに接続され、ドレインがノードN12及びNch MOSトランジスタNT1のドレインに接続され、ゲートがノードN9に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V4が印加される。
【0027】
Pch MOSトランジスタPT8は、ソースがノードN6及びNch MOSトランジスタNT2のドレインに接続され、ドレインがノードN7に接続され、ゲートがノードN10に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V3が印加される。Pch MOSトランジスタPT9は、ソースがノードN12及びNch MOSトランジスタNT1のドレインに接続され、ドレインがノードN13に接続され、ゲートがノードN10に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V3が印加される。ノードN13から出力信号Soutが出力される。
【0028】
Nch MOSトランジスタNT7は、ドレインがノードN7に接続され、ソースがノードN8及びPch MOSトランジスタPT2のドレインに接続され、ゲートがノードN11に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V2が印加される。Nch MOSトランジスタNT8は、ドレインがノードN13に接続され、ソースがノードN14及びPch MOSトランジスタPT1のドレインに接続され、ゲートがノードN11に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V2が印加される。
【0029】
Nch MOSトランジスタNT9は、ドレインがノードN8に接続され、ソースが低電位側電源VSSに接続され、ゲートがノードN7に接続される。Nch MOSトランジスタNT10は、ドレインがノードN14に接続され、ソースが低電位側電源VSSに接続され、ゲートがノードN7及びNch MOSトランジスタNT9のゲートに接続される。
【0030】
次に、Rail to Railオペアンプ50を構成するMOSトランジスタの静特性について説明する。MOSトランジスタは、非飽和領域(3極管領域)と飽和領域(5極管領域)がある。
【0031】
非飽和領域(3極管領域)でのドレイン電流Id1とトランスコンダクタンス(gm1)は、
Id1=k×{(Vg−Vth)×Vd−(Vd2/2)}・・・・・・・・・式(1)
k=(μ×εox×εo×Wg)/(tox×Lg)・・・・・・・・・式(2)
gm1=k|Vd|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(3)
で表される。
【0032】
飽和領域(5極管領域)でのドレイン電流Id2とトランスコンダクタンス(gm2)は、
Id2={k×(Vg−Vth)2}/2・・・・・・・・・・・・・・式(4)
gm2=k|Vg−Vth|≒(2k×Id2)1/2・・・・・・・・・・・式(5)
で表される。
【0033】
なお、Vgはゲート電圧、VthはMOSトランジスタの閾値電圧、Vdはドレイン電圧、μは移動度(Nchの場合は電子の移動度、Pchの場合はホールの移動度)、εoxはゲート絶縁膜の比誘電率、εoは誘電率、Wgはゲート幅、toxはゲート絶縁膜の膜厚、Lgはゲート長である。Rail to Railオペアンプ50では、飽和領域で動作するように設計される。
【0034】
次に、Rail to Railオペアンプの特性について、図2を参照して説明する。図2はRail to Railオペアンプの入力電圧に対するトランスコンダクタンス(gm)の関係を示す図、図中実線(a)は本実施例の特性を示し、図中破線(b)は比較例のRail to Railオペアンプの特性を示す。ここで、比較例のRail to Railオペアンプとは、Nch側の第1の差動増幅部とPch側の第2の差動増幅部を入力電圧Vinの電圧レベルに応じて切り替えるものであり、例えばPch MOSトランジスタPT3及びPT4とNch MOSトランジスタNT4及びNT5を省略してものであり、Nch側の第1の差動増幅部とPch側の第2の差動増幅部が共に動作する領域で、Nch側の第1の差動増幅部に流れるバイアス電流とPch側の差動増幅部に流れるバイアス電流を補整していないものである。
【0035】
図2に示すように、比較例及びRail to Railオペアンプ50では、入力電圧Vinのレベルに応じて3つの動作領域が存在する。3つの領域とは、Nch側の差動対だけが動作する高電位側電源VDD側のNch側動作領域(I)と、Pch側の差動対だけが動作する低電位側VSS側のPch動作領域(II)と、Nch側の差動対とPch側の差動対が共に動作するNch&Pch動作領域(III)とである。
【0036】
比較例及び本実施例を含めRail to Railオペアンプでは、Nch側の差動対だけが動作する高電位側電源VDD側のNch側動作領域(I)のトランスコンダクタンス(gmn)と、Pch側の差動対だけが動作する低電位側VSS側のPch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)とを同一になるように、MOSトランジスタの形状などが最適化される。詳細は後述する。
【0037】
Nch側の差動対とPch側の差動対が共に動作するNch&Pch動作領域(III)では、比較例において、Nch側の差動対とPch側の差動対が共に動作し、且つ入力電圧Vinがバイアス電圧V1のとき、バイアス電流を補整していない。そのため、総合トランスコンダクタンス(gmt)が他の領域よりも最大約41%増加する。一方、本実施例では、総合トランスコンダクタンス(gmt)が他の領域と同一になるようにバイアス電流が補整される。
【0038】
これ以降、本実施例での設定方法について詳細に説明する。まず、高電位側電源VDD側のNch側動作領域(I)では、切替スイッチであるPch MOSトランジスタPT5がオンし、Pch MOSトランジスタPT1乃至PT4がオフしている。
【0039】
この領域の下限値は、Pch MOSトランジスタPT5のゲート・ソース間がPch MOSPT1乃至PT4のゲート・ソース間電圧よりもPch MOSトランジスタPT5の閾値の絶対値|Vth(PT5)|分高い電圧のときである。つまり、Nch側動作領域(I)とNch&Pch動作領域(III)の境界値は、入力電圧VinがV1+|Vth(PT5)|のときである。この領域の上限値は入力電圧Vinが高電位側電源VDD電圧レベルのときである。なお、バイアス電圧V1と高電位側電源VDD電圧の関係は、
0<V1<VDD・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(6)
に設定される。
【0040】
次に、低電位側電源VSS側のPch側動作領域(II)では、切替スイッチであるPch MOSトランジスタPT5がオフし、Pch MOSトランジスタPT1乃至PT4がオンしている。
【0041】
この領域の上限値は、Pch MOSトランジスタPT5のゲート・ソース間がPch MOSPT1乃至PT4のゲート・ソース間電圧よりもPch MOSトランジスタPT5の閾値の絶対値|Vth(PT5)|分低い電圧のときである。つまり、Pch側動作領域(II)とNch&Pch動作領域(III)の境界値は、入力電圧VinがV1−|Vth(PT5)|のときである。この領域の下限値は入力電圧Vinが低電位側電源VSS電圧レベルのときである。
【0042】
続いて、Nch&Pch動作領域(III)について説明する。Nch&Pch動作領域(III)では、Pch MOSトランジスタPT5、差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2、差動対をなすPch MOSトランジスタPT3及びPT4、差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2が動作している。
【0043】
ここで、差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2のベータ(ゲート幅Wg/ゲート長Lg)と、差動対をなすPch MOSトランジスタPT3及びPT4のベータ(ゲート幅Wg/ゲート長Lg)と比を(1−β)対βとする。一定なバイアス電流IbがPch MOSトランジスタPT1乃至4と、Pch MOSトランジスタPT5との電流配分をα対(1−α)とする。
【0044】
この設定により、差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2に流れるバイアス電流Ib1と、Pch MOSトランジスタPT5に流れるバイアス電流Ib2と、差動対をなすPch MOSトランジスタPT3及びPT4に流れるバイアス電流Ib3とは、
は、
Ib1=Ib×α×(1−β)・・・・・・・・・・・・式(7)
Ib2=Ib×(1−α)・・・・・・・・・・・・・・式(8)
Ib3=Ib×α×β ・・・・・・・・・・・・・・式(9)
Ib=Ib1+Ib2+Ib3 ・・・・・・・・・・・・・式(10)
と表される。
【0045】
ここで、カレントミラー回路を構成するNch MOSトランジスタNT4及びNT5において、Nch MOSトランジスタNT4と、Nch MOSトランジスタNT5との比を1対N(ミラー比N)とすると、Nch MOSトランジスタNT3に流れるバイアス電流Ib7は、
Ib7=Ib2−N×IB3=Ib×{1−α−(N×α×β)}・・・式(11)
と表される。
【0046】
次に、本実施例では、高電位側電源VDD側のNch側動作領域(I)のトランスコンダクタンス(gmn)と、低電位側VSS側のPch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)とを同一になるように以下の手順でパラメータを設定する。
【0047】
Pch動作領域(II)での差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2に流れるバイアス電流Ib1は、
Ib1=Ib×(1−β)・・・・・・・・・・・・・・・・式(12)
で表され、差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2の素子形状をWgp/Lgp、Pch MOSトランジスタの移動度をμp、MOSトランジスタのゲート絶縁膜の単位面積あたりの容量をCoxとすると、Pch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)は、
gmp={2・μp・Cox・(Wgp/Lgp)・Ib・(1−β)}1/2・・・式(13)
と表される。
【0048】
Nch側動作領域(I)では、Nch動作領域(I)のトランスコンダクタンス(gmn)を式(12)で表すPch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)と同一になるように、差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2の素子形状(Wgn/Lgn)を調整する。
【0049】
例えば、Pch MOSトランジスタの移動度μpと、Nch MOSトランジスタの移動度μnとの比率を、μp:μn=1:γとする。カレントミラー回路を構成するNch MOSトランジスタNT3のベータ(Wg/Lg)とNch MOSトランジスタNT2のベータ(Wg/Lg)との比を、1対{(1−β)/γ}に設定し、且つ差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2の素子形状(Wgp/Lgp)と差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2の素子形状(Wgn/Lgn)とを等しく設定することにより、Nch側動作領域(I)のトランスコンダクタンス(gmn)とPch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)を等しくすることができる。
【0050】
或いは、差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2の素子形状(Wgp/Lgp)と差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2の素子形状(Wgn/Lgn)との比を1対{(1−β)/γ}に設定し、且つ差動対をなすNch MOSトランジスタNT1の素子形状(Wgn/Lgn)とNch MOSトランジスタNT2の素子形状(Wgn/Lgn)を等しく設定することにより、Nch側動作領域(I)のトランスコンダクタンス(gmn)とPch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)を等しくすることができる。
【0051】
続いて、Nch&Pch動作領域(III)のトランスコンダクタンス(gmt)をNch側動作領域(I)のトランスコンダクタンス(gmn)及びPch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)と略同一になるように以下の手順でパラメータを設定する。
【0052】
Nch&Pch動作領域(III)で最もトランスコンダクタンス(gmp)及び(gmn)が変化し、入力電圧VinがバイアスV1の点(α=1/2の点)での差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2のトランスコンダクタンスと差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2のトランスコンダクタンスとの和(トランスコンダクタンス(gmt))が、Pch動作領域(II)のトランスコンダクタンス(gmp)と同一になるように設定する。トランスコンダクタンスはドレイン電流の1/2乗に比例するので、
{Ib(1-β)}1/2={Ib(1-β)/2}1/2+[Ib(1-β){1-(1/2)-N(β/2)}]1/2・・・式(14)
と設定する。式(14)を簡略化すると、
(1/2)−1=(1−N・β) 1/2・・・・・・・・・式(15)
β≒0.828/N・・・・・・・・・・・・・・・式(16)
と表される。
【0053】
ここで、βの値は0(ゼロ)<β<1の範囲にあり、Rail to Railオペアンプ50の低消費電力化、入力オフセットの低減化、チップ面積の増加の抑制(バイアス切り替え部13による増加分の抑制)を考慮すると、Nの値は1以上に設定するのが好ましい。この点を考慮し、例えばNを4に設定するとβは0.207という値に設定される。
【0054】
このような設定をすることにより、図2に示すように、Rail to Railオペアンプ50のNch&Pch動作領域(III)での総合トランスコンダクタンス(gmt)を、他の領域であるNch側動作領域(I)でのトランスコンダクタンス(gmn)及びPch側動作領域(II)でのトランスコンダクタンス(gmp)と略同一な値にすることができる。つまり、入力電圧Vinの全範囲においてRail to Railオペアンプ50のトランスコンダクタンスを略一定化することができる。
【0055】
ここでいう、略一定とは、入力電圧VinがV1−|Vth(PT5)|よりも大きく、且つV1よりも小さな領域ではRail to Railオペアンプ50の総合トランスコンダクタンス(gmt)が若干変動し、入力電圧VinがV1よりも大きく、且つV1+|Vth(PT5)|よりも小さな領域ではRail to Railオペアンプ50の総合トランスコンダクタンス(gmt)が若干変動することをさす。ただし、比較例と比較するとその変動量を非常に少さくすることができる。
【0056】
上述したように、本実施例の演算増幅器では、差動入力段1と出力段2が設けられる。差動入力段1には、第1の差動増幅部11、第2の差動増幅部12、及びバイアス切替部13が設けられる。第1の差動増幅部11には差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2が設けられ、第2の差動増幅部12には差動対をなすPch MOSトランジスタPT1及びPT2が設けられる。バイアス切替部13には、Pch MOSトランジスタPT3乃至5とNch MOSトランジスタNT3乃至NT5が設けられる。バイアス切替部13のPch MOSトランジスタPT5は、入力電圧Vinレベルに応じて第1の差動増幅部11のバイアス電流Ib6と第2の差動増幅部12のバイアス電流Ib1を切り替え、バイアス切替部13の差動対をなすPch MOSトランジスタPT3及びPT4とカレントミラー回路を構成するNch MOSトランジスタNT4及びNT5により、第1の差動増幅部11及び第2の差動増幅部12が共に動作する領域でのバイアス電流Ib6及びバイアス電流Ib1を補正する。
【0057】
このため、入力電圧Vinの全領域において、Rail to Railオペアンプ50のトランスコンダクタンスを略一定にすることができる。
【0058】
なお、本実施例では、Rail to Railオペアンプ50をMOSトランジスタで構成しているが、代わりにMISトランジスタで構成してもよい。
【実施例2】
【0059】
次に、本発明の実施例2に係る演算増幅器について、図面を参照して説明する。図3は演算増幅器としてのRail to Railオペアンプを示す回路図である。本実施例では、Rail to Railオペアンプの第1の差動増幅部の構成を変更している。
【0060】
以下、実施例1と同一構成部分には、同一符号を付してその部分の説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0061】
図3に示すように、Rail to Railオペアンプ50aには、差動入力段1aと出力段2aが設けられる。Rail to Railオペアンプ50aは、CMOSから構成され、入力電圧Vinが高電位側電源VDDレベルから低電位側電源VSSレベルの範囲までRail to Rail動作する演算増幅器である。
【0062】
差動入力段1aには、第1の差動増幅部11a、第2の差動増幅部12、バイアス切替部13a、及び短絡防止部15が設けられる。差動入力段1aは、+側の入力電圧Vin+と同相の−側の入力電圧Vin−が入力され、差動増幅された2つの信号を出力段2aに出力する。
【0063】
第1の差動増幅部11aには、Pch MOSトランジスタPT11、D型Pch MOSトランジスタDPT1、及びD型Pch MOSトランジスタDPT2が設けられる。D型とはディプレッション型とも呼称され、D型MOSトランジスタは、ノーマリーオントランジスタである。なお、Pch MOSトランジスタPT11と、これ以降記載されるMOSトランジスタで、特にD型と表記されないMOSトランジスタはすべてE型(エンハンスメント型とも呼称される)である。
【0064】
Pch MOSトランジスタPT11は、ソースが高電位側電源VDDに接続され、ドレインがノードN21に接続され、ノードN21側にバイアス電流Ib8を供給する。
【0065】
D型Pch MOSトランジスタDPT1は、ソースがノードN21に接続され、ゲートがPch MOSトランジスタPT1及びPT3のゲートに接続され、ゲートに+側の入力電圧Vin+が入力される。D型Pch MOSトランジスタDPT2は、ソースがノードN21に接続され、ゲートがPch MOSトランジスタPT2及びPT4のゲートに接続され、ゲートに−側の入力電圧Vin−が入力される。D型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2は、差動対を構成する。差動対をなすD型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2には、バイアス電流Ib8が供給される。
【0066】
短絡防止部15には、Pch MOSトランジスタPT15とPch MOSトランジスタPT16が設けられる。
【0067】
Pch MOSトランジスタPT15は、ソースがD型Pch MOSトランジスタDPT1のドレインに接続され、ドレインがPch MOSトランジスタPT1のドレイン及び出力段2aのノードN33に接続される。Pch MOSトランジスタPT16は、ソースがD型Pch MOSトランジスタDPT2のドレインに接続され、ドレインがPch MOSトランジスタPT2のドレイン及び出力段2aのノードN29に接続される。Pch MOSトランジスタPT15及びPT16のゲートはノードN22に接続され、ノードN22は接地電位である低電位側電源VSSに接続される。
【0068】
ここで、第1の差動増幅部11aがオフ、第2の差動増幅部12がオンしているとき、Pch MOSトランジスタPT1のドレインからD型Pch MOSトランジスタDPT1のドレイン側に電流が流れ込み、Pch MOSトランジスタPT2のドレインからD型Pch MOSトランジスタDPT2のドレイン側に電流が流れ込む。D型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2は、E型(エンハンスメント型)MOSトランジスタよりもインピーダンスが非常に低い。このため、短絡防止部15が無い場合、Pch MOSトランジスタPT1のドレインとPch MOSトランジスタPT2のドレインの間が短絡する。
【0069】
つまり、短絡防止部15は、Pch MOSトランジスタPT1のドレインからD型Pch MOSトランジスタDPT1のドレイン側に電流が流れ込むのをカットし、Pch MOSトランジスタPT2のドレインからD型Pch MOSトランジスタDPT2のドレイン側に電流が流れ込むのをカットする。その結果、短絡防止部15はPch MOSトランジスタPT1のドレインとPch MOSトランジスタPT2のドレインの間の短絡を防止する。
【0070】
バイアス切替部13aには、Pch MOSトランジスタPT3乃至5、Pch MOSトランジスタPT12、及びNch MOSトランジスタ3乃至6が設けられる。
【0071】
Pch MOSトランジスタPT12は、ソースが高電位側電源VDDに接続され、ドレインが、ゲート、ノードN23、及びNch MOSトランジスタNT6のドレインに接続され、低電位側電源VSS側にバイアス電流Ib6を流す。Pch MOSトランジスタPT11及びPT12は、カレントミラー回路を構成する。Pch MOSトランジスタPT11からノードN21側に流れるバイアス電流Ib8は、Pch MOSトランジスタPT12から低電位側電源VSS側に流れるバイアス電流Ib6と同じ電流が流れる(ミラー比1に設定)。
【0072】
出力段2aには、Pch MOSトランジスタPT13、Pch MOSトランジスタPT14、Nch MOSトランジスタNT12、Nch MOSトランジスタNT13、抵抗R1、及び抵抗R2が設けられる。出力段2aは、第1の差動増幅部11aから出力される信号と第2の差動増幅部12から出力される信号が入力され、2つの信号を一つに合成し、合成された信号を増幅して出力信号Soutとして出力する。
【0073】
Pch MOSトランジスタPT13は、ソースが高電位側電源VDDに接続され、ゲートがドレイン、ノードN28、及びノードN30に接続される。Pch MOSトランジスタPT14は、ソースが高電位側電源VDDに接続され、ゲートがノードN30及びPch MOSトランジスタPT13のゲートに接続され、ドレインがN31に接続される。Pch MOSトランジスタPT13及びPT14は、カレントミラー回路を構成する。ノードN31から出力信号Soutが出力される。
【0074】
Nch MOSトランジスタNT11は、ドレインがノード28に接続され、ソースがノードN29及びPch MOSトランジスタPT16のドレインに接続され、ゲートがノードN32に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V2が印加される。Nch MOSトランジスタNT12は、ドレインがノード31に接続され、ソースがノードN33及びPch MOSトランジスタPT15のドレインに接続され、ゲートがノードN32に接続され、ゲートに一定なバイアス電圧V2が印加される。
【0075】
抵抗R1は、一端がノードN29に接続され、他端が低電位側電源VSSに接続される。抵抗R2は、一端がノードN33に接続され、他端が低電位側電源VSSに接続される。
【0076】
ここで、 本実施例では、D型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2の飽和領域(5極管領域)でのトランスコンダクタンス(gm2a)とPch MOSトランジスタPT1及びPT2の飽和領域(5極管領域)でのトランスコンダクタンス(gm2b)を同一になるように設定している。
【0077】
その方法は、E型Pch MOSトランジスタの閾値電圧に対してD型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2の閾値電圧の変化分による|Vd−Vth|の増加をβを減少させることにより補整し、gm2aとgm2bを同一にしている。E型Pch MOSトランジスタの移動度(μ)とD型Pch MOSトランジスタの移動度(μ)はほぼ同一の値を有する。
【0078】
βの補整として、例えば、D型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2のゲート幅(Wg)を変更することにより対応している。即ち、パラメータを1項目変更させることにより容易にgm2aとgm2bを同一にすることができる。
【0079】
このような設定を行うことにより、差動対をなすD型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2は、実施例1の差動対をなすNch MOSトランジスタNT1及びNT2と同様な動作をすることができる。
【0080】
上述したように、本実施例の演算増幅器では、差動入力段1aと出力段2aが設けられる。差動入力段1aには、第1の差動増幅部11a、第2の差動増幅部12、バイアス切替部13a、及び短絡防止部15が設けられる。第1の差動増幅部11aには差動対をなすD型Pch MOSトランジスタDPT1及びDPT2とPch MOSトランジスタPT11が設けられ、第2の差動増幅部12には差動対をなす定電流源14とPch MOSトランジスタPT1及びPT2が設けられる。バイアス切替部13aには、Pch MOSトランジスタPT3乃至5、Pch MOSトランジスタPT12、及びNch MOSトランジスタNT3乃至NT6が設けられる。
【0081】
バイアス切替部13aのPch MOSトランジスタPT5は、入力電圧Vinレベルに応じて第1の差動増幅部11aのバイアス電流Ib8と第2の差動増幅部12のバイアス電流Ib1を切り替え、バイアス切替部13aの差動対をなすPch MOSトランジスタPT3及びPT4、カレントミラー回路を構成するNch MOSトランジスタNT4及びNT5、及びカレントミラー回路を構成するNch MOSトランジスタNT3及びNT6により、第1の差動増幅部11a及び第2の差動増幅部12が共に動作する領域でのバイアス電流Ib8及びバイアス電流Ib1を補正する。
【0082】
このため、入力電圧Vinの全領域において、Rail to Railオペアンプ50aのトランスコンダクタンスを一定にすることができる。
【0083】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々、変更してもよい。
【0084】
例えば、実施例2では、Rail to Railオペアンプ50aをMOSトランジスタで構成しているが、代わりにMISトランジスタで構成してもよい。また、実施例2では、第1の差動増幅部11aの差動対をD型(ディプレッション型)Pch MOSトランジスタで構成し、第2の差動増幅部12の差動対をE型(エンハンスメント型)Pch MOSトランジスタで構成しているが、代わりに第1の差動増幅部11aの差動対をE型(エンハンスメント型)Nch MOSトランジスタで構成し、第2の差動増幅部12の差動対をD型(ディプレッション型)Nch MOSトランジスタで構成してもよい。この場合、他のMOSトランジスタもPchからNchへ変更し、NchからPchへ変更するのがよい。
【0085】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のディプレッション型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のディプレッション型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部とを具備する演算増幅器。
【0086】
(付記2) 第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部と、前記第1の差動増幅部から出力される第1の信号と前記第2の差動増幅部から出力される第2の信号が入力され、前記第1及び第2の信号を合成した出力信号を出力する出力段とを具備する演算増幅器。
【0087】
(付記3) 第1の入力電圧がゲートに入力される第1のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部と、前記第1の差動増幅部から出力される第1の信号と前記第2の差動増幅部から出力される第2の信号が入力され、前記第1及び第2の信号を合成した出力信号を出力する出力段とを具備する演算増幅器。
【0088】
(付記4) 前記第1の動作領域、前記第1の差動増幅部のみ動作する領域、及び前記第2の差動増幅部のみ動作する領域からなる前記入力電圧の全動作領域で、トランスコンダクタンスが一定である付記1乃至3のいずれかに記載の演算増幅器。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施例1に係るRail to Railオペアンプを示す回路図。
【図2】本発明の実施例1に係るRail to Railオペアンプの入力電圧に対するトランスコンダクタンス(gm)の関係を示す図。
【図3】本発明の実施例2に係るRail to Railオペアンプを示す回路図。
【符号の説明】
【0090】
1、1a 差動入力段
2、2a 出力段
11、11a 第1の差動増幅部
12、12a 第2の差動増幅部
13、13a バイアス切替部
14 定電流源
15 短絡防止部
50、50a Rail to Railオペアンプ
DPT1、DPT2 D型Pch MOSトランジスタ
Ib、Ib1〜8 バイアス電流
N1〜14、N21〜23、N28〜33 ノード
NT1〜12 Nch MOSトランジスタ
PT1〜9、PT11〜16 Pch MOSトランジスタ
R1、R2 抵抗
Sout 出力信号
V1〜4 バイアス電圧
Vin+ +側の入力電圧
Vin− −側の入力電圧
VDD 高電位側電源
VSS 低電位側電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Nch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、
前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、
前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部と、
を具備することを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
前記バイアス切替部は、前記第1の入力電圧がゲートに入力される第3のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、前記第2の入力電圧がゲートに入力され、前記第3のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとは差動対をなす第4のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、ソースが前記第1乃至4のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのソースに接続され、ゲートに一定なバイアス電圧が印加され、前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替える第5のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとを有し、差動対をなす前記第3及び第4のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタに流れる第3のバイアス電流に基づいて、前記第1の動作領域において前記第1及び第2のバイアス電流を補整することを特徴とする請求項1に記載の演算増幅器。
【請求項3】
第1の入力電圧がゲートに入力される第1のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第1の入力電圧とは同相の第2の入力電圧がゲートに入力される第2のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第1の差動増幅部と、
前記第1の入力電圧がゲートに入力される第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと前記第2の入力電圧がゲートに入力される第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとが差動対をなす第2の差動増幅部と、
前記入力電圧レベルに応じて前記第1の差動増幅部に流れる第1のバイアス電流と前記第2の差動増幅部に流れる第2のバイアス電流とを切替え、前記第1及び第2の差動増幅部が共に動作する前記入力電圧の第1の動作領域において、前記第1及び第2のバイアス電流を補整するバイアス切替部と、
を具備することを特徴とする演算増幅器。
【請求項4】
ソースが前記第1のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインが第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ゲートが低電位側電源に接続される第6のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、ソースが前記第2のディプレッション型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ドレインが第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインに接続され、ゲートが前記低電位側電源に接続される第7のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタとを有し、前記第1のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインと前記第2のエンハンスメント型Pch絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインの間の短絡を防止する短絡防止部を具備することを特徴とする請求項3に記載の演算増幅器。
【請求項5】
前記第1の動作領域、前記第1の差動増幅部のみ動作する領域、及び前記第2の差動増幅部のみ動作する領域からなる前記入力電圧の全動作領域で、トランスコンダクタンスが一定であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の演算増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−41131(P2010−41131A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198776(P2008−198776)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504136878)東芝ディスクリートテクノロジー株式会社 (95)
【Fターム(参考)】