説明

潤滑油供給装置

【課題】動力伝達装置に伝達する動力を発生する動力源の動力損失が増加することを抑制することの可能な潤滑油供給装置を提供する。
【解決手段】第1動力源により駆動される第1オイルポンプ1と、第1オイルポンプ1から吐出されたオイルに微細気泡を混入させる微細気泡発生装置25とを備え、第2動力源の動力が伝達される動力伝達装置10と、動力伝達装置10を制御する油圧回路に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプ3と、第1オイルポンプ1から吐出されたオイルを、微細気泡発生装置25または油圧回路に供給する切換機構とを備え、第2動力源が停止している際に、第1オイルポンプから吐出されたオイルを油圧回路に供給する第1オイル供給手段と、第2動力源が運転されている際に、第1オイルポンプ1から吐出されたオイルを微細気泡発生装置25を経由させて潤滑部位20に供給する第2供給手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細気泡が混入された潤滑油により潤滑部位を潤滑するように構成された潤滑油供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルポンプから吐出されたオイルに微細気泡を混入させるとともに、その微細気泡が混入されたオイルを潤滑部位に供給することにより、その潤滑部位を潤滑するように構成された潤滑油供給装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された潤滑油供給装置は、車両の内燃機関を運転する際に、内燃機関用潤滑油(エンジンオイル)を用いて、内燃機関内部に設けられた運動する部品の潤滑、動作する部品の駆動、発熱する部品の冷却をおこなうものである。この潤滑油供給装置はオイルパンと、エンジンオイルポンプと、微細気泡発生装置と、エンジンオイル循環経路とにより構成されている。前記エンジンオイルポンプはエンジンのクランクシャフトの回転力により駆動されて、オイルパンに貯溜されたオイルを加圧してエンジンオイル循環経路に供給するものである。このエンジンオイル循環経路には前記微細気泡発生装置が設けられており、微細気泡発生装置に流入したエンジンオイルに微細気泡が混入されて排出される。
【0003】
このようにして微細気泡が混入されたエンジンオイルが、内燃機関内に供給されて、内燃機関内の運動する部品の潤滑部分、動作する部品の駆動部分、発熱する部品の冷却部分に供給される。これにより、各部分がエンジンオイルにより潤滑および冷却され、各部分を潤滑および冷却したエンジンオイルはオイルパンに戻される。上記のように微細気泡が混入されたエンジンオイルは、微細気泡が混入されていないオイルと比較して流動抵抗が小さく、内燃機関におけるフリクションを低減することができる。また、特許文献1に記載された車両においては、内燃機関の動力を駆動輪に伝達する変速機が設けられており、内燃機関の動力が変速機に伝達されるように構成されている。なお、エンジンの動力によってオイルポンプが駆動されるように構成された油圧装置は、特許文献2、3にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−24011号公報
【特許文献2】特開2000−45807号公報
【特許文献3】特開2004−100795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された潤滑油供給装置においては、エンジンオイルポンプが内燃機関の動力により駆動されるように構成されているとともに、内燃機関の動力が変速機を経由して駆動輪に伝達されるように構成されているため、内燃機関の動力を変速機を経由させて駆動輪に伝達しているときに、内燃機関の動力でエンジンオイルポンプを駆動すると、内燃機関の動力損失が増加する問題があった。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、第2動力源の動力を動力伝達装置に伝達するとともに、潤滑部位にオイルを供給する際に、第2動力源の動力損失が増加することを抑制することの可能な潤滑油供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、第1動力源の動力により駆動される第1オイルポンプと、この第1オイルポンプから吐出されたオイルに微細気泡を混入させる微細気泡発生装置とを備え、微細気泡が混入されたオイルにより潤滑部位を潤滑するように構成されている潤滑油供給装置において、第2動力源の動力が伝達される動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧回路に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置または前記油圧回路のいずれか一方との間のオイル供給経路を接続し、かつ、他方のオイル供給経路を遮断する切換機構とを備え、前記第2動力源が停止し、かつ、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間のオイル供給経路が遮断され、さらに前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路が接続されている際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給する第1オイル供給手段と、前記第2動力源が運転され、かつ、前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路が遮断され、さらに、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間のオイル供給経路が接続されている際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記微細気泡発生装置を経由させて前記潤滑部位に供給する第2供給手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記第1動力源が電力により駆動される電動モータであり、前記動力伝達装置は前記第2動力源の動力が伝達されて回転する回転部材を有しており、前記潤滑部位には前記回転部材が含まれており、前記第2供給手段は、前記微細気泡が混入された潤滑油により前記回転部材を潤滑する際のエネルギ損失の低減量を求める手段と、前記エネルギ損失の低減量と、前記電動モータを駆動して前記第1オイルポンプを駆動する際の消費電力とを比較する比較手段と、前記エネルギ損失の低減量が前記消費電力を超えると判断された場合に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記微細気泡発生装置を経由させて前記潤滑部位に供給する切換手段とを含むことを特徴とする潤滑油供給装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1の構成に加えて、前記第2供給手段は、前記第2動力源の動力により駆動され、かつ、前記第2オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給している際に、前記第2動力源を停止させることを想定し、かつ、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給することを想定し、前記油圧回路における目標オイル量を、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルにより確保できるか否かを判断する判断手段と、前記第2動力源の動力により駆動され、かつ、前記第2オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給している際に、前記第2動力源を停止させることを想定し、かつ、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給することを想定し、前記油圧回路における目標オイル量を、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルにより確保できると判断された場合は、前記第2動力源の動力で第2オイルポンプを駆動して、前記第2オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給している際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記微細気泡発生装置を経由させて前記潤滑部位に供給する切換手段とを含むことを特徴とする潤滑油供給装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1の構成に加えて、前記切換機構は、前記第2動力源が停止されており前記油圧回路の油圧が相対的に低い場合は、前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路を接続し、かつ、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間の供給経路を遮断する一方、前記第2動力源が運転されており前記油圧回路の油圧が相対的に高い場合は前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間の供給経路を接続し、かつ、前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路を遮断するように構成されていることを特徴とする潤滑油供給装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、第2動力源が停止している際は、第1オイルポンプから吐出されたオイルを油圧回路に供給することができる。一方、第2動力源が運転されており、その第2動力源の動力を動力伝達装置に伝達している場合は、第1動力源の動力により第1オイルポンプを駆動して、その第1オイルポンプから吐出されたオイルを微細気泡発生装置を経由させて潤滑部位に供給することができる。したがって、第2動力源が運転されており、その第2動力源の動力を動力伝達装置に伝達している場合に、第2動力源の動力損失が増加することを抑制できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、微細気泡が混入された潤滑油により回転部材を潤滑する際のエネルギ損失の低減量を求め、エネルギ損失の低減量と、電動モータを駆動して第1オイルポンプを駆動する際の消費電力とを比較する。そして、エネルギ損失の低減量が消費電力を超えると判断された場合に、第1オイルポンプから吐出されたオイルを微細気泡発生装置を経由させて潤滑部位に供給することができる。したがって、第2動力源の動力損失の増加を抑制できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第2動力源の動力により駆動され、かつ、第2オイルポンプから吐出されたオイルを油圧回路に供給している際に、第2動力源を停止させることを想定し、かつ、第1オイルポンプから吐出されたオイルを油圧回路に供給することを想定し、油圧回路における目標オイル量を、第1オイルポンプから吐出できるか否かを判断する。ここで、油圧回路における目標オイル量を第1オイルポンプから吐出できると判断された場合は、第2動力源の動力で第2オイルポンプを駆動して、第2オイルポンプから吐出されたオイルを油圧回路に供給している際に、第1オイルポンプから吐出されたオイルを微細気泡発生装置を経由させて潤滑部位に供給する。したがって、第1オイルポンプのオイルを潤滑部位に供給した後に、第2動力源が停止した場合でも、油圧回路における目標オイル量を、第1オイルポンプから吐出されたオイルにより確保することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第2動力源が停止されており油圧回路の油圧が相対的に低い場合は、第1オイルポンプと油圧回路とが接続され、かつ、第1オイルポンプと微細気泡発生装置とが遮断される。これに対して、第2動力源が運転されており油圧回路の油圧が相対的に高い場合は、第1オイルポンプと油圧回路とが遮断され、かつ、第1オイルポンプと微細気泡発生装置とが接続される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の潤滑油供給装置の第1具体例を示す模式図である。
【図2】この発明の潤滑油供給装置に用いられる微細気泡発生装置の構成例を示す断面図である。
【図3】この発明の潤滑油供給装置に用いられる微細気泡発生装置の他の構成例を示す断面図である。
【図4】図1に示された潤滑油供給装置でおこなわれる制御例を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートにおいて、ステップS3の判断に用いるマップである。
【図6】この発明の潤滑油供給装置の第2具体例を示す模式図である。
【図7】図6に示された潤滑油供給装置でおこなわれる制御例を示すフローチャートである。
【図8】この発明の潤滑油供給装置の第3具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の潤滑油供給装置を用いることができる車両には、第2動力源としてエンジンが搭載されている。このエンジンは、燃料を燃焼させて動力を発生する動力装置であり、エンジンとしては内燃機関、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。このエンジンから駆動輪に至る動力の伝達経路には、動力伝達装置、例えば、クラッチ、変速機などが設けられている。前記クラッチは摩擦式クラッチまたは流体式クラッチのいずれでもよい。さらに、変速機は有段変速機または無段変速機のいずれでもよく、変速機が無段変速機である場合は、前後進切換装置が設けられる。また、この発明において、第2動力源はエンジンに代えてフライホイールが設けられていてもよい。さらに、第2動力源がエンジンである場合、第1動力源がフライホイールであってもよい。
【0017】
これらのクラッチ、変速機、前後進切換装置に対応させてそれぞれ油圧室(図示せず)が設けられており、各油圧室の油圧またはオイル量を制御することにより、クラッチ、変速機、前後進切換装置における動力伝達状態、例えば変速比または伝達トルクが制御されるように構成されている。また、前記動力伝達装置の一部を構成する要素、例えば、歯車同士の噛み合い部分、ベルトとプーリとの接触部分、摩擦係合装置、回転部材を支持する軸受などにおいては、動力伝達にともない発熱、摩耗、焼き付きなどが生じるために、これらの潤滑部位の少なくとも一部が、潤滑用のオイル溜まり浸漬されており、そのオイル溜まりで潤滑部位を潤滑するように構成されている。ここで、潤滑部位の潤滑には、潤滑のみならず冷却が含まれる。
【0018】
さらに、この発明における潤滑油供給装置は、上記の動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室、および動力伝達装置の回転部材を含む潤滑部位に、オイルを供給して潤滑する装置である。この発明におけるオイルポンプは回転式オイルポンプまたは往復式オイルポンプのいずれでもよい。ここで、回転式オイルポンプには、歯車ポンプ、ねじポンプ、ギヤポンプなどが含まれる。また、往復式オイルポンプには、アキシャルプランジャポンプ、ラジアルプランジャポンプなどが含まれる。以下、この発明における潤滑油供給装置の具体例を順次説明する。
【0019】
(第1具体例)
この発明における潤滑油供給装置の第1具体例を図1に基づいて説明する。図1に示された潤滑油供給装置は、複数のオイルポンプ、より具体的には、独立して設けられた2つのオイルポンプを有している。2つのオイルポンプのうち、オイルポンプ1は、エンジン2の動力により駆動されるように構成されており、他方のオイルポンプ3は電動モータ4の動力により駆動されるように構成されている。つまり、オイルポンプ1およびオイルポンプ3は、それぞれ別個に回転または停止させることが可能である。
【0020】
前記オイルポンプ1の吸入口5には油路6が接続されており、その油路6がオイル保持部7に接続されている。このオイル保持部7には、ケーシング(図示せず)の底部に形成されたオイルパン、またはケーシングの底部よりも上方に設けられたキャッチタンクなどが含まれる。これらのオイルパンまたはキャッチタンクには、作動油または潤滑油として用いられるオイルが溜められている。また、オイルポンプ1の吐出口8には油路9が接続されており、オイルポンプ1に吸入されたオイルが吐出口8から油路9に吐出されるように構成されている。また、油路9の油圧(ライン圧)を制御する圧力制御弁(図示せず)が設けられている。この油路9に吐出されたオイルが、動力伝達装置10に対応して設けられた油圧室11に供給されるように構成されている。この油圧室11におけるオイルの目標供給量もしくは目標油圧に基づいて、油路9の油圧が制御される。
【0021】
一方、前記電動モータ4の駆動および停止、さらには電動モータ4を駆動する際の回転数およびトルクを制御する駆動装置(オイルポンプ・モータ・ドライバー)12が設けられている。これら、オイルポンプ3および電動モータ4ならびに駆動装置12により、電動オイルポンプ(EOP)13が構成されている。なお、電動モータ4はオイルポンプ3を駆動する動力を発生するために専用に設けられたものであり、電動モータ4と駆動輪14との間で動力伝達をおこなうことはできないように構成されている。さらに、電動モータ4に電力を供給する蓄電装置(図示せず)が設けられている。この蓄電装置はバッテリまたはキャパシタのいずれでもよい。
【0022】
前記オイルポンプ3は吸入口15を有しており、その吸入口15が前記油路6に接続されている。また、オイルポンプ3には吐出口16が設けられており、その吐出口16には油路17が接続されている。さらに、この油路17と前記油路9とを接続する油路18が設けられており、その油路18にはチェック弁(逆止弁)19が設けられている。このチェック弁19は、オイルポンプ3から油路17に吐出されたオイルが油路9に供給されることを許容(開く)し、油路9のオイルが油路17に向けて流れることを阻止する(閉じる)ように構成されている。
【0023】
さらに、オイルポンプ3から油路17に吐出されたオイルを潤滑部位20に導く経路には切換弁21が設けられている。この切換弁21は例えばソレノイドバルブにより構成されており、通電と非通電とを切り替えることにより、2つのポート22,23同士の接続および遮断が制御されるように構成されている。このうちポート22は油路17に接続され、ポート23には油路24が接続されている。また、この油路24には微細気泡(マイクロバブル)発生装置25の入口が接続されている。この微細気泡発生装置25は、オイル中で微細気泡を発生させる装置である。
【0024】
この微細気泡発生装置25は、μmオーダー、より詳しくは10〜80μm程度の超微細で均一な気泡(いわゆるマイクロバブル)あるいはそれより更に小さい気泡を発生させる装置である。この具体例では、例えば、図2に示すような旋回流式の微細気泡発生装置25を用いることができる。具体的には、ノズル26が設けられており、そのノズル26にはオイル導入管27が設けられている。このオイル導入管27に油路24が接続されている。このオイル導入管27を経由してノズル26内に供給されるオイルに、ノズル26内で螺旋流を発生させる案内壁(図示せず)が設けられている。さらに、ノズル26に取り付けられた空気導入管28が設けられている。
【0025】
そして、オイル導入管27を経由してノズル26内にオイルが供給されて高速の螺旋流を形成すると、ノズル26内が負圧となって空気がノズル26内に吸入され、オイルの回転せん断により空気がせん断されて微細気泡が生成される。さらに、ノズル26の軸線方向における一端には吐出口29が形成されており、その吐出口29からオイルが油路30へ吐出される。この微細気泡発生装置25で発生した微細気泡は、その粒径が小さいことによりオイル中での浮上速度が遅い。また、微細気泡はコロイドのような性質があって、微細気泡同士が相互に合体したり吸収したりしないので、オイル中で微細気泡が分離もしくは分散した状態を維持できる。
【0026】
つぎに、微細気泡発生装置25の他の構成例を図3に基づいて説明する。この図3に示された微細気泡発生装置25は、パイプ31を有している。パイプ31内には、油路24に接続された油路32が形成されており、その油路32の内周面に縮径部33が接続されている。この縮径部33には、内径が次第に小さくなるような勾配もしくはテーパが形成されている。その縮径部33の下流にはくびれ部34が形成されている。また、くびれ部34の下流には拡径部35が設けられている。つまり、くびれ部34は、オイルの流れ方向で上流または下流よりも断面積が狭い。このくびれ部34は、オリフィスまたはチョークで構成することもできる。さらに、拡径部35は油路30に接続されている。そして、縮径部33からくびれ部34に至る過程でオイルの流速が高まり、減圧されて気泡(バブル)が発生し、その後、拡径部35内でバブルが圧壊して微細気泡が生成される。この図3に示された微細気泡発生装置25を用いた場合でも、前述と同様の作用効果を得られる。また、図3の微細気泡発生装置25では、オイルに溶解した空気が析出して、もしくはオイルが沸騰することで、微細気泡が発生する。つまり、キャビテーションにより微細気泡が発生する。
【0027】
図2または図3に示す微細気泡発生装置25の出口には油路30が接続されており、その油路30に吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されるように構成されている。この潤滑部位20には、前述した動力伝達装置10を構成する回転要素が含まれる。この潤滑部位20の少なくとも一部は潤滑油溜まりに浸漬されている。その潤滑油溜まりから溢れたオイルをオイル保持部7に戻すための経路が形成されている。この経路には、ケーシングの壁面、ケーシングに穴を開けて設けた油路あるいは窪みが含まれる。
【0028】
さらに、前記エンジン2、電動モータ4、駆動装置12、動力伝達装置10を制御する電子制御装置(図示せず)が設けられており、その電子制御装置には、車速、加速要求、制動要求、エンジン回転数、電動モータ4の回転数、変速機の入力回転数および出力回転数、シフトポジション、蓄電装置の充電量(SOC)などを検知するセンサやスイッチの信号が入力される。この電子制御装置に入力される信号、および電子制御装置に記憶されているマップ、データ、演算式などを用いて、エンジン出力、変速機の変速比および伝達トルク、クラッチの伝達トルク、電動モータ4の駆動および停止、切換弁21への通電または非通電などが制御されるように構成されている。
【0029】
つぎに、図1に示された潤滑油供給装置の制御および作用を説明する。前記エンジン2が運転されて、そのエンジン2の動力が動力伝達装置10を経由して駆動輪14に伝達されて、駆動力が発生する。また、エンジン2の動力によりオイルポンプ1が駆動され、オイル保持部7のオイルがオイルポンプ1により吸入されて油路9に吐出される。この油路9に吐出されたオイルは油圧室11に供給される。
【0030】
また、図1に示された潤滑油供給装置において、潤滑部位20にオイルを供給する制御および作用を説明する。前記電動モータ4が駆動されてオイルポンプ3が駆動されると、オイル保持部7のオイルがオイルポンプ3により吸い込まれて油路17に吐出される。ここで、油路9の油圧の方が油路17の油圧よりも高い場合は、チェック弁19が閉じられる。そして、切換弁21が制御されて油路17と油路24とが接続されると、オイルポンプ3から油路17に吐出されたオイルが、切換弁21および油路24を経由して微細気泡発生装置25に供給される。この微細気泡発生装置25においては、前述のようにしてオイル中に微細気泡が混入され、微細気泡が混入されたオイルが油路30を経由して、潤滑部位20に供給される。より具体的には、潤滑部位20が浸漬されている潤滑油溜まりに、微細気泡が混入された潤滑油が供給される。
【0031】
上記のようにして、微細気泡を含む潤滑油が潤滑油溜まりに供給されると、潤滑部位20が微細気泡を含む潤滑油により潤滑される。また、微細気泡が混入されたオイルは、オイルの流体抵抗(流動抵抗または摩擦抵抗)が相対的に低くなっているため、潤滑油溜まり内で潤滑部位20に含まれる回転部材が回転して潤滑油が撹拌されたときに、回転部材の動力損失が増加することを抑制できる。さらに、電動モータ4を停止させればオイルポンプ3からはオイルが吐出されなくなり、潤滑部位20には潤滑油が供給されなくなる。なお、電動モータ4が停止されて油路17の油圧が低下すると、油路9の油圧の方が油路17の油圧よりも高くチェック弁19が閉じられるため、オイルポンプ1から油路9に吐出されたオイルが、油路17に供給されることはない。
【0032】
このように、第1具体例においては、オイルポンプ3から吐出された潤滑油を潤滑部位20に供給することは可能であるが、オイルポンプ1から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されることはない。また、エンジン2の動力がオイルポンプ3の駆動に消費されることはない。したがって、エンジン2の動力が駆動輪14に伝達されて車両が走行しているときに、エンジン2の動力の一部が、潤滑部位20に潤滑油を供給するオイルポンプ3の駆動に消費されることを防止できる。したがって、エンジン2の燃料消費率(燃費)が増加することを回避できる。
【0033】
つぎに、第1具体例において実行可能な制御例を、図4のフローチャートに基づいて説明する。まず、エコラン中であるか否かが判断される(ステップS1)。エコラン中とは、「車両が停止し、かつ、エンジンを停止する条件が成立している」ことを意味する。このように、エンジン2が停止されている場合においては、車両の発進に備えて油圧室11に作動油を供給しておく待機制御がおこなわれる。この待機制御には、車両が停止している時でもクラッチを完全に解放させずに、予め定められたトルク容量で係合させておく制御が含まれる。そこで、ステップS1で肯定的に判断された場合は、切換弁21を制御して油路17と油路24とを遮断するとともに、電動モータ4の動力でオイルポンプ3を駆動して、そのオイルポンプ3から吐出されたオイルを油圧室11に供給し(ステップS9)、図4の制御ルーチンを終了する。
【0034】
前記のように、エンジン2が停止されており、オイルポンプ1からはオイルが吐出されていないため、オイルポンプ3からオイルが吐出されると、油路17の油圧の方が油路9の油圧よりも高くなる。すると、チェック弁19が開放されて、オイルポンプ3から油路17に吐出されたオイルが、油路9を経由して油圧室11に供給される。このステップS9の制御により油圧室11に供給する目標オイル量は、実験またはシミュレーションにより予め求められており、そのデータが電子制御装置に記憶されている。そして、オイルポンプ3から吐出される実際のオイル量を、目標オイル量に近づけるように、電動モータ4の出力が制御される。
【0035】
一方、ステップS1の判断時点でエンジン2が運転されていると、そのステップS1で否定的に判断される。このようにエンジン2が運転されており、エンジン2の動力でオイルポンプ1が駆動されると、油路9の油圧の方が油路17の油圧よりも高くなり、チェック弁19が閉じられる。このように、ステップS1で否定的に判断された場合は、微細気泡を混入したオイルを潤滑部位20に供給したとき、動力伝達装置10における流体抵抗の低減量を算出する(ステップS2)。ここでは、電動モータ4が停止され、かつ、オイルポンプ3が停止している場合を例として、ステップS2の制御を説明する。つまり、オイルポンプ3を電動モータ4の動力で駆動して、オイルポンプ3から吐出されたオイルを微細気泡発生装置25を経由させて潤滑部位20に供給することを仮定(想定)して、「動力伝達装置10における流体抵抗の低減量」を推定する。
【0036】
また、「動力伝達装置10における流体抵抗の低減量」とは、微細気泡が混入されていない潤滑油により潤滑部位20を潤滑した場合と、微細気泡が混入された潤滑油により潤滑部位20を潤滑した場合とを比較して求められる「オイルの流体抵抗の低減量」である。さらに、ステップS2においては、「動力伝達装置10における流体抵抗の低減量」を「動力伝達装置10におけるエネルギ損失の低減量(ワット)」に換算する処理がおこなわれる。このステップS2の制御をおこなうために、車速、変速機の変速比、潤滑油の温度などをパラメータとして、予め動力伝達装置10における流体抵抗の低減量を求め、そのデータを電子制御装置に記憶してある。また、動力伝達装置10における流体抵抗の低減量を、「動力伝達装置10におけるエネルギ損失の低減量(ワット)」に換算するマップもしくは演算式が、予め電子制御装置に記憶されている。
【0037】
このステップS2についで、「動力伝達装置10におけるエネルギ損失の低減量」が、「電動オイルポンプ(EOP)13を駆動するときの消費電力(ワット)」を超えるか否かを推定する(ステップS3)。このステップS3の判断は、例えば図5のマップを用いておこなうことができる。この図5のマップには、横軸に車速が示され、縦軸にはエネルギが示されている。ここで、潤滑装置20に供給する目標オイル量が同じであると仮定すると、電動オイルポンプ13を駆動するときの消費電力は、車速に拘わらず一定である。これに対して、「動力伝達装置10におけるエネルギ損失の低減量」は、車速の変化により変化する。具体的には、車速V1以下では、エネルギ損失の低減量は、消費電力よりも少ない。
【0038】
また、車速V1を超え、かつ、車速V2以下では、エネルギ損失の低減量は、消費電力よりも多い。さらに、車速V1を超えると、エネルギ損失の低減量は、消費電力よりも少ない。このような違いが生じる理由は、車速V1以下では回転部材の回転数が相対的に低く潤滑油が層流状態であり、流体抵抗を低減する効果が相対的に少なく、車速V1を超えかつ、車速V2以下では、潤滑油が微細気泡によって乱流から層流になる領域であるために流体抵抗を低減する効果が相対的に大きくなり、車速V2を超えると潤滑油に微細気泡が混入して乱流状態であり、流体抵抗を低減する効果が相対的に少なくなるからである。このステップS3は、電動モータ4を駆動してオイルポンプ2から吐出されたオイルを潤滑部位20に供給すると、車両全体としての動力損失が増加するか否かを間接的に判断しているのである。
【0039】
そして、ステップS3の判断時点で検知される車速が、図5のマップに示された車速V1を超え、かつ、車速V2以下であれば、このステップS3で肯定的に判断される。このステップS3で肯定的に判断された場合は、電気モータ4に電力を供給する蓄電装置の充電量SOCが、所定値を超えているか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4の判断を具体的に説明する。現時点では、電動モータ4が停止されているが、電動モータ4の動力によりオイルポンプ3を駆動することを想定し、そのオイルポンプ3から潤滑部位20の目標オイル量を吐出した後に、前記のようにエンジン2が停止され、かつ、オイルポンプ3から吐出されたオイルを油圧室11に供給することを想定する。このエンジン2の停止中に、オイルポンプ3からオイルを吐出することにより、油圧室11における目標オイル量を確保することができれば、エコラン制御を実行可能であることになる。
【0040】
このように、エンジン2の停止中に、オイルポンプ3からオイルを吐出することにより、油圧室11の目標オイル量を確保することができるように、オイルポンプ3の実際のオイル吐出量を確保することができるように、電動モータ4に供給する電力が、ステップS4の判断に用いる所定値の意味である。なお、潤滑部位20の目標オイル量と、電動モータ4に供給する電力との関係が、車速、変速機の変速比、エンジントルクなどをパラメータとして予め実験的に求められており、そのデータが電子制御装置に記憶されている。つまり、ステップS4は、エンジン2を停止することを想定して、油圧室11の目標オイル量を、オイルポンプ3から吐出することができるか否かを、蓄電装置の電力から間接的に判断するステップである。
【0041】
そして、ステップS4で肯定的に判断された場合は、ステップS5,S6の制御をおこない、図4に示す制御ルーチンを終了する。このステップS5においては、切換弁21を操作することにより、電動オイルポンプ(EOP)13と微細気泡発生装置25とを接続する油路が連通される。具体的には、切換弁21を制御して油路17と油路24とを接続する。また、ステップS6においては、電動オイルポンプ(EOP)13が起動される。つまり、電動モータ4の動力によりオイルポンプ3が駆動され、そのオイルポンプ3から吐出された潤滑油が、微細気泡発生装置25を経由して潤滑部位20に供給される。
【0042】
一方、ステップS3の判断時点で検知される車速が、図5のマップに示された車速V1以下または車速V2を超えている場合は、前記ステップS3で否定的に判断される。このステップS3で否定的に判断された場合、または、前記ステップS4で否定的に判断された場合は、ステップS7,S8の制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。このステップS7においては、電動オイルポンプ(EOP)13が停止される。つまり、電動モータ4が停止してオイルポンプ3からはオイルが吐出されなくなり、潤滑部位20に潤滑油が供給されない。また、ステップS8においては、切換弁21を操作することにより、電動オイルポンプ(EPO)13と微細気泡発生装置25とを接続する油路が非連通となる。つまり、切換弁21が制御されて油路17と油路24とが遮断される。なお、ステップS3で否定的に判断された場合、またはステップS4で否定的に判断された場合は、微細気泡が混入された潤滑油は潤滑部位20に供給されないが、潤滑部位20の少なくとも一部は潤滑油溜まりに浸漬されており、潤滑部位20を潤滑することができる。
【0043】
このように、図4の制御例においては、ステップS4で肯定的に判断された場合、つまり、エコラン制御を実行可能な電力が蓄電装置に充電されている場合に、電動オイルポンプ13に電力を供給し、オイルポンプ3から吐出されたオイルに微細気泡を混入させて潤滑部位20に供給する制御をおこなう。したがって、エンジン2により駆動されるオイルポンプ1から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されることを防止でき、オイルポンプ1の吐出損失を防止できる。これに対して、ステップS4で否定的に判断された場合、つまり、エコラン制御を実行可能な電力が蓄電装置に充電されていない場合は、電動オイルポンプ13には電力が供給されない。したがって、エコラン制御の実行時において、オイルポンプ3から吐出されたオイルを油路9に供給するという本来の機能を損なうことがなく、微細気泡の発生とエコラン制御(アイドリングストップ制御)とを両立することができる。
【0044】
また、図4の制御例においては、ステップS3で肯定的に判断された場合、つまり、微細気泡を含む潤滑油を潤滑部位20に供給することにより得られるエネルギ損失の低減量が、電動オイルポンプ13を駆動する消費電力を超えている場合は、電動オイルポンプ13に電力を供給し、オイルポンプ3から吐出されたオイルに微細気泡を混入させて潤滑部位20に供給する制御をおこなう。これに対して、ステップS3で否定的に判断された場合、つまり、微細気泡を含む潤滑油を潤滑部位20に供給することにより得られるエネルギ損失の低減量が、電動オイルポンプ13を駆動する消費電力以下である場合は、電動オイルポンプ13には電力を供給しない。したがって、エンジン2における燃料消費率が相対的に少ない方の制御を実行することができる。
【0045】
なお、図4の制御例の一部を変更することもできる。例えば、ステップS4の判断を先におこない、そのステップS4で肯定的に判断された場合はステップS3に進み、そのステップS3で肯定的に判断された場合にステップS5に進む一方、ステップS4またはステップS3で否定的に判断された場合は、ステップS7に進むルーチンを採用することもできる。また、ステップS4を省略し、かつ、ステップS3で肯定的に判断された場合はステップS5に進み、ステップS3で否定的に判断された場合はステップS7に進むルーチンを採用することもできる。また、ステップS1についで、ステップS2,S3を省略してステップS4に進むルーチンを採用することもできる。
【0046】
(第2具体例)
この発明における潤滑油供給装置の第2具体例を図1に基づいて説明する。図6に示された潤滑油供給装置と、図1に示された潤滑油供給装置とを比べると、図6に示された切換弁36の構成が、図1に示された切換弁21の構成とは異なる。この切換弁36は、スプール38、およびスプール38を押圧するバネ39、スプール38に対してバネ39とは逆向きの押圧力を与えるフィードバックポート40とを有しており、フィードバックポート40には油路9の油圧が作用するように構成されている。また、切換弁36はスプール38により開閉されるポート41,42を有しており、ポート41が油路17に接続され、ポート42が油路24に接続されている。
【0047】
この図6に示された潤滑油供給装置においては、油路9の油圧変化に基づいて切換弁36が動作する。具体的には、油路9の油圧が相対的に低く、フィードバックポート40の油圧によりスプール38に加わる押圧力が、バネ39からスプール38に加えられる押圧力よりも小さい場合は、油路17と油路24とが遮断される。これに対して、油路9の油圧が上昇して、フィードバックポート40の油圧によりスプール38に加わる押圧力が、バネ39からスプール38に加えられる押圧力よりも大きくなると、スプール38が移動して油路17と油路24とが接続される。また、図6に示された潤滑油供給装置においては、油路9の油圧を検知する油圧センサの信号、切換弁36の動作を検知するセンサの信号が電子制御装置に入力される。図6に示された潤滑油供給装置において、その他の構成部分は図1に示された潤滑油供給装置と同じであり、図1に示された潤滑油供給装置と同様の作用が生じる。
【0048】
この第2具体例においても、切換弁36の動作により油路17と油路24とが接続されている場合は、オイルポンプ3から吐出されたオイルを潤滑部位20に供給することは可能であるが、オイルポンプ1から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されることはない。また、第2具体例においても、エンジン2の動力がオイルポンプ2の駆動に消費されることはない。したがって、エンジン2の動力が駆動輪14に伝達されて車両が走行しているときに、エンジン2の動力の一部が、潤滑部位20にオイルを供給するオイルポンプ3の駆動に消費されることを防止できる。したがって、エンジン2の燃料消費率(燃費)が増加することを回避できる。
【0049】
つぎに、この第2具体例において実行可能な制御例を、図7のフローチャートに基づいて説明する。この図7のフローチャートにおいて、ステップS1,S2,S3,S4の制御は、図4のステップS1,S2,S3,S4と同じである。また、図7のフローチャートにおいて、ステップS4で肯定的に判断された場合は、ステップS6の制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。このステップS6の制御は、図4のステップS6の制御とほぼ同じであるが、図7のステップS6においては、油路9の油圧が上昇して切換弁36が動作し、かつ、油路17と油路24とが接続されたことが電子制御装置で検知されてから、電動オイルポンプ(EPO)13が起動されて、オイルポンプ3から吐出された潤滑油が、潤滑部位20に供給される点が、図4のステップS6の制御とは異なる。
【0050】
これに対して、ステップS3またはステップS4で否定的に判断された場合は、ステップS7の制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。このステップS7の制御は、図4のステップS7の制御と同じである。
【0051】
このように、図7の制御例においても、ステップS4で肯定的に判断された場合は、電動オイルポンプ13に電力を供給し、オイルポンプ3から吐出されたオイルに微細気泡を混入させて潤滑部位20に供給する制御をおこなう。したがって、エンジン2により駆動されるオイルポンプ1から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されることを防止でき、オイルポンプ1の吐出損失を防止できる。これに対して、ステップS4で否定的に判断された場合は、電動オイルポンプ13には電力が供給されない。したがって、エコラン制御の実行時には、オイルポンプ3から吐出されたオイルを油路9に供給するという本来の機能を損なうことがなく、微細気泡の発生とエコラン制御(アイドリングストップ制御)とを両立することができる。
【0052】
また、図7の制御例においても、ステップS3で肯定的に判断された場合は、電動オイルポンプ13に電力を供給し、オイルポンプ3から吐出されたオイルに微細気泡を混入させて潤滑部位20に供給する制御をおこなう。これに対して、ステップS3で否定的に判断された場合は、電動オイルポンプ13には電力を供給しない。したがって、エンジン2における燃料消費率が相対的に少ない方の制御を実行することができる。
【0053】
なお、図7の制御例の一部を変更することもできる。例えば、ステップS4の判断を先におこない、そのステップS4で肯定的に判断された場合はステップS3に進み、そのステップS3で肯定的に判断された場合にステップS6に進む一方、ステップS4またはステップS3で否定的に判断された場合は、ステップS7に進むルーチンを採用することもできる。また、ステップS4を省略し、かつ、ステップS3で肯定的に判断された場合はステップS6に進み、ステップS3で否定的に判断された場合はステップS7に進むルーチンを採用することもできる。また、ステップS1についで、ステップS2,S3を省略してステップS4に進むルーチンを採用することもできる。
【0054】
(第3具体例)
この発明における潤滑油供給装置の第3具体例を図8に基づいて説明する。図8に示された潤滑油供給装置と、図1に示された潤滑油供給装置とを比べると、図8に示された切換弁43の構成が、図1に示された切換弁21の構成とは異なる。この切換弁43は、スプール44、およびスプール44を押圧するバネ45、スプール44に対してバネ45とは逆向きの押圧力を与えるフィードバックポート46とを有しており、フィードバックポート46には油路9の油圧が作用するように構成されている。また、切換弁43はスプール44の移動により開閉されるポート47,48,49を有しており、ポート47が油路17に接続され、ポート49が油路24に接続されている。さらに、ポート48と油路9との間にはチェック弁50が設けられている。このチェック弁50は、ポート48から油路9に向けてオイルが流れる場合は開放され、油路9からポート48に向けてオイルが流れる向きでは閉じられるように構成されている。なお、図8においては油路18および逆止弁19は設けられていない。
【0055】
この図8に示された潤滑油供給装置においては、油路9の油圧変化に基づいて切換弁43が動作する。具体的には、油路9の油圧が相対的に低く、フィードバックポート46の油圧によりスプール44に加わる押圧力が、バネ45からスプール44に加えられる押圧力よりも小さい場合は、油路17と油路24とが遮断されるとともに、油路17と油路9とが接続される。これに対して、油路9の油圧が上昇して、フィードバックポート46の油圧によりスプール44に加わる押圧力が、バネ45からスプール44に加えられる押圧力よりも大きくなると、スプール44が移動して油路17と油路24とが接続され、かつ、ポート48が閉じられる。また、図8に示された潤滑油供給装置においては、油路9の油圧を検知する油圧センサの信号、切換弁43の動作を検知するセンサの信号が電子制御装置に入力される。図8に示された潤滑油供給装置において、その他の構成部分は図1に示された潤滑油供給装置と同じであり、図1に示された潤滑油供給装置と同様の作用が生じる。
【0056】
この第3具体例においても、切換弁43の動作により油路17と油路24とが接続されている場合は、オイルポンプ3から吐出された潤滑油を潤滑部位20に供給することは可能であるが、オイルポンプ1から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されることはない。また、第3具体例においても、エンジン2の動力がオイルポンプ2の駆動に消費されることはない。したがって、エンジン2の動力が駆動輪14に伝達されて車両が走行しているときに、エンジン2の動力の一部が、潤滑部位20にオイルを供給するオイルポンプ3の駆動に消費されることを防止できる。したがって、エンジン2の燃料消費率(燃費)が増加することを回避できる。
【0057】
また、この第3具体例においても、図7の制御例を実行することができる。この図7の制御例を実行して、ステップS6に進んだ場合は、油路9の油圧が上昇して切換弁43が動作して油路17と油路24とが接続されると、電動オイルポンプ13が起動されて、オイルポンプ3から吐出された潤滑油が潤滑部位20に供給される。なお、第3具体例において図7の制御例を実行してステップS7に進むと、切換弁43の動作に関わりなく電動オイルポンプ13が停止されて、潤滑部位20には潤滑油が供給されない。この第3具体例において図7の制御例を実行すると、第2具体例において図7の制御例を実行した場合と同じ効果を得られる。
【0058】
なお、上記の説明においては、エンジン2が運転され、かつ、電動オイルポンプ13が停止している場合に、図4および図7のステップS3,S4の判断をおこない、ステップS5,S6に進んだ場合は、停止している電動オイルポンプ13を起動させる一方、ステップS7,S8に進んだ場合は、電動オイルポンプ13の停止を継続させる例を述べている。これに対して、図4および図7の制御例は、エンジンが運転され、かつ、電動オイルポンプ13が既に起動されており、オイルポンプ3から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されている場合に、図4および図7のステップS3,S4の判断をおこない、ステップS6に進んだ場合は、電動オイルポンプ13の起動を継続する一方、ステップS7に進んだ場合は、起動している電動オイルポンプ13を停止させる制御にも適用できる。このように、エンジンが運転され、かつ、電動オイルポンプ13が起動して既にオイルポンプ3から吐出されたオイルが潤滑部位20に供給されている場合に、図4および図7の制御例を実行するときは、ステップS2およびステップS3で求められる値は想定値ではない。
【0059】
ここで、図4のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS9が、この発明の第1オイル供給手段に相当し、ステップS3ないしステップS6が、この発明の第2供給手段に相当する。また、図7のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS9が、この発明の第1オイル供給手段に相当し、ステップS3,S4,S6が、この発明の第2供給手段に相当し、ステップS3が、この発明の比較手段に相当し、ステップS5,S6が、この発明の切換手段に相当し、ステップS4が、この発明の判断手段に相当する。また、図1に示された構成と、この発明の構成との関係を説明すると、電動モータ4が、この発明の第1動力源に相当し、エンジン2が、この発明の第2動力源に相当し、オイルポンプ3が、この発明の第1オイルポンプに相当し、オイルポンプ1がこの発明の第1オイルポンプに相当し、油路9および油圧室11が、この発明の油圧回路に相当し、動力伝達装置10が、この発明の動力伝達装置に相当し、潤滑部位20が、この発明の潤滑部位に相当し、切換弁21,36,43および逆止弁19,50が、この発明の切換機構に相当する。
【符号の説明】
【0060】
1,3…オイルポンプ、 2…エンジン、 4…電動モータ、 9…油路、 10…動力伝達装置、 11…油圧室、 19,50…逆止弁、 20…潤滑部位、 21,36,43…切換弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1動力源の動力により駆動される第1オイルポンプと、この第1オイルポンプから吐出されたオイルに微細気泡を混入させる微細気泡発生装置とを備え、微細気泡が混入されたオイルにより潤滑部位を潤滑するように構成されている潤滑油供給装置において、
第2動力源の動力が伝達される動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧回路に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置または前記油圧回路のいずれか一方との間のオイル供給経路を接続し、かつ、他方のオイル供給経路を遮断する切換機構とを備え、
前記第2動力源が停止し、かつ、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間のオイル供給経路が遮断され、さらに前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路が接続されている際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給する第1オイル供給手段と、
前記第2動力源が運転され、かつ、前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路が遮断され、さらに、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間のオイル供給経路が接続されている際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記微細気泡発生装置を経由させて前記潤滑部位に供給する第2供給手段と
を備えていることを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記第1動力源が電力により駆動される電動モータであり、前記動力伝達装置は前記第2動力源の動力が伝達されて回転する回転部材を有しており、前記潤滑部位には前記回転部材が含まれており、
前記第2供給手段は、
前記微細気泡が混入された潤滑油により前記回転部材を潤滑する際のエネルギ損失の低減量を求める手段と、前記エネルギ損失の低減量と、前記電動モータを駆動して前記第1オイルポンプを駆動する際の消費電力とを比較する比較手段と、
前記エネルギ損失の低減量が前記消費電力を超えると判断された場合に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記微細気泡発生装置を経由させて前記潤滑部位に供給する切換手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記第2供給手段は、
前記第2動力源の動力により駆動され、かつ、前記第2オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給している際に、前記第2動力源を停止させることを想定し、かつ、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給することを想定し、前記油圧回路における目標オイル量を、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルにより確保できるか否かを判断する判断手段と、
前記第2動力源の動力により駆動され、かつ、前記第2オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給している際に、前記第2動力源を停止させることを想定し、かつ、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給することを想定し、前記油圧回路における目標オイル量を、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルにより確保できると判断された場合は、前記第2動力源の動力で第2オイルポンプを駆動して、前記第2オイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧回路に供給している際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記微細気泡発生装置を経由させて前記潤滑部位に供給する切換手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項4】
前記切換機構は、前記第2動力源が停止されており前記油圧回路の油圧が相対的に低い場合は、前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路を接続し、かつ、前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間の供給経路を遮断する一方、前記第2動力源が運転されており前記油圧回路の油圧が相対的に高い場合は前記第1オイルポンプと前記微細気泡発生装置との間の供給経路を接続し、かつ、前記第1オイルポンプと前記油圧回路との間のオイル供給経路を遮断するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−106317(P2011−106317A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261009(P2009−261009)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】