説明

潤滑油添加剤およびそれを含む潤滑油組成物

【課題】オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を提供する。
【解決手段】アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基を、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導する。また、(a)潤滑性粘度を有する主要量のオイルおよび(b)上記オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を含む潤滑油組成物をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云って潤滑油添加剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の合成もしくは天然化学物質が、エストロゲンもしくはアンドロゲンに対して作動物質もしくは拮抗物質として機能する可能性、および甲状腺ホルモンの機能に複数の経路で干渉する可能性を示す証拠が増加している。このような化学物質は、内分泌攪乱因子と呼ばれる。例えば、内分泌攪乱因子は(1)身体に自然に存在する化学物質に擬態するか、もしくは該化学物質を遮断して、それにより身体のホルモン生成能力に影響を与える可能性、(2)身体をホルモンが移動する経路に干渉する可能性、および(3)ホルモン受容体に到達するホルモン濃度を変更する可能性がある。
【0003】
内分泌攪乱因子と天然のエストロゲンとは、共通の作用機構を有している。通常の場合、エストロゲンの活性は、天然のエストロゲンが細胞核内のエストロゲン受容体(ER)に結合すること、および引き続いて起こるこれら結合した受容体の転写活性化によって生じる。内分泌攪乱因子が存在すると、内部攪乱因子がERに結合し、天然のエストロゲンが存在しなくともERの転写活性化が起き、通常のエストロゲン活性が置き換えられてしまう。同様に、ERに結合した内分泌攪乱因子により抗エストロゲン活性が生じる場合もある。ただし、これは、内分泌攪乱因子が天然のエストロゲンと同程度には結合したERを活性化しない場合である。最後に、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)がERに結合し、引き続き細胞応答を活性化するが、天然のエストロゲンにより活性化されるものとは異なる。一般に、ERに結合する全ての、ただし非常に少数の分子が、エストロゲンもしくはSERMとして、受容体にある程度の活性化を起こす。
【0004】
アルキルフェノール類およびそれらから製造される生成物は、内分泌攪乱性化学物質の可能性との関連で、より綿密に精査されるようになった。これは、基本的なアルキルフェノールおよびアルキルフェノール生成物の分解中間体の弱いエストロゲン活性による。アルキルフェノール類は商業的に使用されており、例えば、除草剤、ガソリン添加物、染料、ポリマー添加剤、界面活性剤、潤滑油添加剤、および抗酸化剤中に存在する。近年では、エトキシ化ノニルフェノールのようなアルコキシ化アルキルフェノール類について、フェノール部分の生物分解副産物について、生分解性が低く、水性生物に対する高い毒性を有することが批判されている。そのため、これらの化学物質が内分泌攪乱因子として機能することについての懸念が増加している。いくつかの研究において、アルキルフェノール類とヒトの男性について計測される精子数の減少との間の関連、およびアルキルフェノール類がヒトのエストロゲンおよびアンドロゲンの受容体の活性に対して有害な攪乱を起こす事実が示されている。具体的に非特許文献1では、酵母のエストロゲン誘発可能な菌株において、17β−エストラジオールの試験結果との対比により、様々なアルキルフェノール類のエストロゲン活性を比較されている。その結果によると、最も高いエストロゲン活性は、6乃至8炭素原子からなる単一の分岐アルキル基が、最も高い活性を有する4−tert−オクチルフェノール(8炭素原子、別の名称では4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)について、他には立体障害がないフェノール環のパラ位に位置する場合である。非特許文献1には、分析において様々なアルキルフェノール類を試験し、アルキル基の長さ、分岐の程度、環における位置、および異性体の不均一性の程度が結合効率に影響するが、構造的な活性に関する結果を導くことはできないことが示されている。例えば、非特許文献1には、高分解能ガスクロマトグラフィー分析で決定したp−ノニルフェノールについて22パラ同素体を同定し、活性種を解明することなく、全ての同素体が類似の活性を有していないことについての考察が示されている。興味深いことに、非特許文献2には、ヒトのエストロゲン受容体を使用すると、アルキル基の炭素原子数が9炭素原子であると、アルキルフェノール類の受容体への結合が最大になるとの知見が述べられている。非特許文献2には、分岐鎖のノニルフェノール、同素体の混合物(n−ノニルフェノールを全く含まない市販品)がn−ノニルフェノールとほぼ同様の活性であったとの知見が述べられている。
【0005】
エトキシ化ノニルフェノールおよびエトキシ化オクチルフェノールは、非イオン性界面活性剤として広く用いられている。このようなアルコキシ化アルキルフェノールによる環境および健康への影響の懸念は、ヨーロッパにおいては政府によるこれらの界面活性剤の使用制限、そして米国においては産業界による自発的な使用制限を招いている。多くの産業は、これらの好ましいアルコキシ化アルキルフェノール界面活性剤を、アルコキシ化直鎖および分岐鎖のアルキル一級および二級アルコール類に置き換えることを試みている。ただし、これらのアルコール類は、臭気、性能、処方、および費用の増加に関する諸問題に直面している。エトキシ化アルキルフェノール類とそれらの化合物(主に分解副産物)によって生じる可能性がある問題とが主に注目されているが、他の成分についても再検討し、否定的な影響を減少させると共に、類似またはさらに良い性能を有する組み合わせを選択する必要性も残っている。
【0006】
ノニルフェノールとドデシルフェノールは、以下の工程により製造できる:
プロピレンのオリゴマー化;プロピレン三量体および四量体の分離;そして
プロピレン三量体によるフェノールのアルキル化およびノニルフェノールの分離;あるいはプロピレン四量体によるフェノールのアルキル化およびドデシルフェノールの分離。
プロピレン四量体からテトラプロペニルフェノールの調製は、潤滑性添加剤の産業分野で広く採用されている。四量体は10乃至15炭素原子の高度な分岐鎖である。その高度のメチル分岐は、油溶性および他の油溶性潤滑性添加剤成分との親和性を与える。四量体は、製造コストの点でも有効なオレフィンである。プロピレン四量体から誘導されるドデシルフェノールは主に、潤滑油の添加剤、一般には硫化アルキルフェネート清浄剤の製造における中間体として使用されている。わずかではあるが、これらの分岐フェネート清浄剤は、ある程度の直鎖オレフィンを使用している。
【0007】
特許文献1は、(a)潤滑性粘度のオイル、および(b)(1)少なくとも10炭素原子を有するオレフィンであって、80モル%を超えるオレフィンが直鎖C20乃至C30n−αオレフィンであり、10モル%未満のオレフィンが20炭素原子未満の直鎖オレフィンであり、5モル%未満のオレフィンが18炭素原子以下の分岐鎖オレフィンであるオレフィンと(2)ヒドロキシ芳香族化合物との反応物の未硫化のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩を含む清浄剤を含む潤滑油組成物を開示している。特許文献1の比較例Cは、フェノールを主にプロピレン五量体から誘導される分岐C14乃至C18オレフィンでアルキル化することにより調製した分岐ペンタデシルフェノールカルシウム塩を開示している。しかし、特許文献1は、比較例Cの分岐ペンタデシルフェノールカルシウム塩が、内分泌攪乱因子の作用を防止することに無効であることを開示している。
【0008】
特許文献2は、(a)硫化モノアルキルカテコール誘導体と(b)硫化モノアルキルカテコールとを含む潤滑油添加剤を開示している。特許文献2は、さらに硫化モノアルキルカテコールが、カテコールを触媒の存在下でプロピレン五量体のようなオレフィンと反応させることにより生成させたカテコールのアルキル化生成物を硫化することにより得られることを開示している。特許文献2には、内分泌攪乱作用に関する開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0049508号明細書
【特許文献2】米国特許第5510043号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ラウトレッジ他、「エストロゲン性活性を伴うアルキルフェノール系化学物質の構造的特徴」、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、1997年2月7日、272(6):3280−8
【非特許文献2】タブリア他、「エストロゲン受容体に結合するためパラアルキルフェノール類に必要とされる構造」、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー、262、240〜245(1999年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
潤滑油組成物に使用するための内分泌攪乱作用を示さない改良された潤滑油添加剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様では、オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導される過塩基性塩を提供する。
【0013】
本発明の第二の態様では、オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩の製造方法が下記各工程を含む:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物でアルキル化してアルキルヒドロキシ芳香族化合物を得る工程;
(b)工程(a)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物を中和してアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を得る工程;
(c)工程(b)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩をオリゴマー化してオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を得る工程;そして
(d)工程(c)のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を過塩基化してオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を得る工程。
【0014】
本発明の第三の態様では、(a)潤滑性粘度を有する主要量のオイル、および(b)オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導される過塩基性塩を含む潤滑油組成物を提供する。
【0015】
本発明の第四の態様では、オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導される過塩基性塩を、潤滑性粘度を有する主要量のオイルを含む潤滑油組成物に添加することを含む、潤滑油組成物が有する哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する性質を軽減する方法を提供する。
【0016】
本発明の第五の態様では、潤滑油組成物が有する哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する性質を軽減することを目的とする過塩基性塩の潤滑性粘度を有する主要量のオイルを含む潤滑油組成物中の添加剤としてのオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩の使用であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導されるものを提供する。
【0017】
本発明の第六の態様では、潤滑油組成物が有する哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する性質を軽減することを目的とする過塩基性塩の潤滑性粘度を有する主要量のオイルを含む潤滑油組成物中の添加剤としてのオリゴマー化したアルキルフェノールの過塩基性塩の使用であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレン五量体を含むオレフィン混合物から誘導されるものを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩は、処女の若い雌のラットにおいて効果を定量したところ、内分泌攪乱性の化学物質を実質的に含まないことが確定された。従って、本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩は、哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する作用が避けられない組成物に有利に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導される過塩基性塩を対象とする。
【0020】
本発明をより詳細に議論する前に、以下の用語を定義しておく。
【0021】
[定義]
ここで使用する場合、異なる旨が明確に記述される場合を除き、以下の用語は以下の意味を有する。
【0022】
ここで使用する「内分泌攪乱因子」は、内分泌系、特に生殖過程を調節する内分泌系の通常の調節を攪乱する化合物を意味する。
【0023】
ここで使用する「石灰」は、消石灰もしくは水和石灰としても知られる水酸化カルシウムを意味する。
【0024】
ここで使用する「全塩基数」もしくは「TBN」は、1グラムのサンプル中、ミリグラム単位の水酸化カリウムに対して当量の塩基の量を意味する。従って、より高いTBN数は、より塩基性が高い生成物を反映し、そのため、より高いアルカリ度が留保される。サンプルのTBNは、ASTMの試験番号D2896もしくは他の同等の方法により決定することができる。
【0025】
本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩は以下のように得られる:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物でアルキル化してアルキルヒドロキシ芳香族化合物を得る工程;
(b)工程(a)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物を中和してアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を得る工程;
(c)工程(b)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩をオリゴマー化してオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を得る工程;そして
(d)工程(c)のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を過塩基化してオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を得る工程。
【0026】
一般に、オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩の製造方法は、高初留点プロピレンオリゴマーの使用を除き、良く知られており、ここでは、公知の過塩基性のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族塩の製造方法を採用できる。例えば、そのような塩の代表的な製造方法は、過塩基性硫化アルキルフェネートを開示する米国特許第3178368号および同第3801507号の各明細書、過塩基性アルキルフェノール/ホルムアルデヒド/ジアミノアルカン縮合生成物を開示する米国特許第3429812号明細書、および過塩基性であってもよい中和されたアルキルフェノール−グリオキシル酸オリゴマーを開示する米国特許第5281346号および同第5458793号の各明細書に記載されている。従って、本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩の製造方法で採用する工程は、当業者が予測できる範囲にある。
【0027】
工程(a)では、ヒドロキシ芳香族化合物を、少なくともプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物でアルキル化する。アルキル化が可能な有用なヒドロキシ芳香族化合物は、1乃至4ヒドロキシ基、好ましくは1乃至3ヒドロキシ基を有する単核でモノヒドロキシおよびポリヒドロキシC乃至C30芳香族炭化水素を含む。適切なヒドロキシ芳香族化合物は、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール、その他およびそれらの混合物を含む。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0028】
ヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に使用するオレフィン混合物は、少なくともASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含む。ある態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約200℃の初留点を有する。別の態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約210℃の初留点を有する。また別の態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約220℃の初留点を有する。さらに別の態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約225℃の初留点を有する。さらにまた別の態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約230℃の初留点を有する。
【0029】
ある態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約300℃以下の終留点を有する。別の態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約290℃以下の終留点を有する。また別の態様では、プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約280℃以下の終留点を有する。ここでは、プロピレンオリゴマーについて、前述した初留点と終留点との任意の全ての組み合わせが意図されている。
【0030】
プロピレンオリゴマーは、シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー社およびエクソンモービル社のような供給元から商業的に入手できるか、あるいは公知の方法で製造することができる。特に好ましい態様において、本発明で用いることができるプロピレンオリゴマーの製造方法では、液状リン酸オリゴマー化触媒を用いる(例えば、米国特許第2592428号、同第2814655号および同第3887634号の各明細書に記載の液状リン酸−触媒によるプロピレンオリゴマー化法を参照)。ここで使用するプロピレンオリゴマーは、C14またはそれ以下の炭素原子数のプロピレンオリゴマーの含有量が典型的な場合では約20質量%以下、好ましくは約15質量%以下であり、C12未満のプロピレンオリゴマーを本質的に有意な量で含むことはない。ここで使用するプロピレンオリゴマーは、プロピレンオリゴマーの混合物の初留点が少なくとも約195℃である限り、プロピレン三量体もしくは四量体のような低分子量プロピレンオリゴマーを任意の量で含むことができる。
【0031】
一般に、オレフィン混合物は、上記に述べた主要量のプロピレンオリゴマーを含む。ただし、当業者が容易に理解できるように、オレフィン混合物は他のオレフィンを含むことができる。例えば、オレフィン混合物中に使用できる他のオレフィンは、直鎖オレフィン、環状オレフィン、分岐鎖オレフィン、ブチレンもしくはイソブチレンオリゴマーのようなプロピレン以外のオリゴマー、アリールアルキレン、その他およびそれらの混合物を含む。適切な直鎖オレフィンは、1−ヘキセン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、その他およびそれらの混合物を含む。特に適した直鎖オレフィンは、C16〜C30n−αオレフィンのような高分子量n−αオレフィンである。これらの直鎖オレフィンは、エチレンのオリゴマー化やワックスのクラッキングのような方法で得ることができる。適切な環状オレフィンは、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテン、その他およびそれらの混合物を含む。適切な分岐鎖オレフィンは、ブチレン二量体もしくは三量体、もしくはより高分子量のイソブチレンオリゴマー、その他およびそれらの混合物を含む。適切なアリールアルキレンは、スチレン、メチルスチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン、その他およびそれらの混合物を含む。
【0032】
オレフィン混合物によるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化は、一般にアルキル化触媒の存在下で実施する。有用なアルキル化触媒は、ルイス酸、固体酸、トリフルオロメタンスルホン酸、および酸性分子篩触媒を含む。適切なルイス酸は、トリ塩化アルミニウム、トリフッ化ホウ素、およびトリフッ化ホウ素複合体(例えば、トリフッ化ホウ素エーテル、トリフッ化ホウ素−フェノール、およびトリフッ化ホウ素−リン酸)を含む。適切な固体酸は、アンバーライト36TM(ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース社より入手可能)のようなスルホン酸化酸性イオン交換樹脂型触媒を含む。
【0033】
アルキル化の反応条件は、使用する触媒の種類による。許容できない量のクラッキングを生じることなく、高い変換効率でアルキルヒドロキシ芳香族化合物を生じる反応条件の適切な組み合わせが採用できる。本発明の好ましい態様では、アルキル化の生成物であるアルキルヒドロキシ芳香族化合物は、アルキル基がC12またはそれ未満であるアルキルヒドロキシ芳香族の含有率が約10%以下であり、好ましくは約5%以下である。典型的な場合ではアルキル化反応の反応温度は、約25℃乃至約200℃の範囲内であり、好ましくは約85℃乃至約135℃である。反応時の圧力は一般に大気圧であるが、より高いもしくはより低い圧力を採用できる。アルキル化処理は、バッチ式、連続式、もしくは準連続式で実施できる。オレフィン混合物に対するヒドロキシ芳香族化合物のモル比は、通常は約10:1乃至約0.5:1の範囲内であり、好ましくは約5:1乃至約3:1の範囲内である。
【0034】
アルキル化反応は、簡単な条件、もしくはヒドロキシ芳香族化合物とオレフィン混合物との反応に対して不活性な溶媒の存在中で実施することができる。使用する場合における典型的な溶媒は、ヘキサンである。
【0035】
反応の終了後に、従来からの技術により、必要なアルキルヒドロキシ芳香族化合物を分離する。典型的な場合では、ヒドロキシ芳香族化合物を反応生成物から蒸留する。
【0036】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基は、典型的な例では、ヒドロキシ芳香族化合物のオルトおよびパラ位に優先的に結合する。
【0037】
このように得られたアルキルヒドロキシ芳香族化合物は、次に反応条件下、好ましくは不活性かつ適合性の液体炭化水素希釈剤中で、金属塩基と接触させてアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を生成させる。反応は、好ましくは不活性気体中、典型的には窒素中で実施する。金属塩基の添加は、一回の添加でも、反応の中間点における複数回の添加でもよい。
【0038】
適切な金属塩基性化合物は、金属の水酸化物、酸化物もしくはアルコキシドを含む。それらの例は、(1)アルカリ水酸化物、アルカリ酸化物もしくはアルカリアルコキシドから選ばれる金属塩基から誘導されるアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、または(2)アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物もしくはアルカリ土類金属のアルコキシドから選ばれる金属塩基から誘導されるアルカリ土類金属塩である。水酸化物としての機能を伴う金属塩基性化合物の代表的な例は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、および水酸化アルミニウムである。酸化物としての機能を伴う金属塩基性化合物の代表的な例は、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、および酸化バリウムである。好ましく使用される金属塩基は、取り扱いの容易さやコストを(例えば、酸化カルシウムと比較して)理由にすると、水酸化カルシウムである。
【0039】
金属塩基とアルキルヒドロキシ芳香族化合物との間の中和反応は、典型的な場合では、室温(25℃)よりも高い温度で実施する。中和反応は、エチレングリコール、ギ酸、酢酸、その他、およびそれらの混合物のような促進剤の存在下で実施する。
【0040】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩は、次にオリゴマー化してオリゴマー化アルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を生成させる。理論的には中和をオリゴマー化の前に分離された工程として実施できるが、中和とオリゴマー化とを単一の処理工程において同時に実施することができる。中和を分離した工程として実施する場合、中和と引き続いて実施するオリゴマー化の工程とを上記と同じ条件で実施する。
【0041】
ある態様では、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を、任意にオリゴマー化促進剤の存在下で、硫黄源と接触させることにより、オリゴマー化を実施する。オリゴマー化の工程では、任意の適した硫黄源を使用できる。硫黄源の例は、硫黄単体、硫化水素、二酸化硫黄、および硫化ナトリウム水和物を含む。硫黄は、溶融硫黄、固体(例、粉体もしくは微粒子)、あるいは適合性のある液体炭化水素中の固体懸濁液のいずれであっても用いることができる。オリゴマー化促進剤として適しているのはポリオールであり、典型的にはアルキレンジオール(例、エチレングリコール)である。アルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩1モルに対して、典型的には約0.5乃至約4、好ましくは約2乃至約3モルの硫黄を用いる。
【0042】
上記促進剤もしくは促進剤の混合物に関連して、高分子量アルカノールを補助溶剤として用いることができる。高分子量アルカノール類は、8乃至約16炭素原子、好ましくは9乃至約15炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを有する。適切なアルカノールの代表的な例は、1−オクタノール、1−デカノール(デシルアルコール)、2−エチルヘキサノール、その他である。特に好ましくは、2−エチルヘキサノールである。反応における高分子量アルカノールの使用は有益である。その理由は、高分子量アルカノールが溶媒として作用し、同時に水と共沸混合物を形成し、その結果、中和により生じた水もしくはその他の系内に生じた水を、反応後もしくは(好ましくは)反応中に、共沸蒸留による簡便な方法で除去することが可能になるからである。高分子量アルカノールは、反応中の副産物である水の除去に寄与し、それにより反応を反応平衡の進行方向に進めるとの観点でも、化学反応機構における一定の役割を有している。
【0043】
他の態様では、オリゴマー化は、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩をアルデヒドと接触させて、例えば、メチレン架橋したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を生成させることにより実施することができる。適切なアルデヒドは、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環アルデヒド、その他、およびそれらの混合物を含む。そのようなアルデヒドの代表的な例は、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリコキサール、フルアルデヒド、2−メチルプロピオンアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、2,3−ジメチルブチルアルデヒド、3,3−ジメチルブチルアルデヒド、ペンタナール、メチル置換ペンタナール、ベンズアルデヒド、フルフラール、その他、およびそれらの混合物を含む。アルデヒドは、ヒドロキシル、ハロゲン原子、窒素原子、その他のような置換基を、置換基が反応に大きく関与しない限り、含むことができる。好ましいアルデヒドは、グリオキシル酸もしくはホルムアルデヒド成分である。ホルムアルデヒドは、例えば、固体、液体もしくは気体のような多くの形態で利用できる。特に好ましいのは、パラホルムアルデヒド(個体、典型的には、約91%乃至約93%当量のホルムアルデヒドを含む粉末またはフレーク状の製品)である。結晶状固体であるトリオキサン(トリオキサンはホルムアルデヒドの環状三量体である)も用いることができる。ただし、ホルマリン溶液(一般に使用する形態は、ホルムアルデヒドの水溶液、場合によってはメタノール中であって、37%、44%、もしくは50%のホルムアルデヒド濃度である)もしくは水溶液中のホルムアルデヒドのような液状のホルムアルデヒド溶液も使用できる。加えて、ホルムアルデヒドは気体としても利用可能である。
【0044】
別の態様では、オリゴマー化は、良く知られているマンニッヒ反応において、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩をアルデヒドおよびアミン源と接触させることによって実施できる。適切なアルデヒドは、上記のアルデヒドを含む。ある態様において、ここで意図しているアミン源は、少なくとも一つの活性水素原子の存在を特徴とするアミノ基を含むアミンである。そのようなアミンは、一級アミノ基のみ、二級アミノ基のみ、もしくは一級および二級アミノ基の双方を含むことができる。アミンは、モノアミンでも、ポリアミンであってもよい。有用なアミン化合物の代表的な例は、N−メチルアミン、N−エチルアミン、N−n−プロピルアミン、N−イソプロピルアミン、N−n−ブチルアミン、N−イソブチルアミン、N−sec−ブチルアミン、N−tert−ブチルアミン、N−n−ペンチルアミン、N−シクロペンチルアミン、N−n−ヘキシルアミン、N−シクロヘキシルアミン、N−オクチルアミン、N−デシルアミン、N−ドデシルアミン、N−オクタデシルアミン、N−ベンジルアミン、N−(2−フェニルエチル)アミン、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−(2−メトキシエチル)アミン、N−(2−エトキシエチル)アミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジ−n−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、N,N−ジ−n−ブチルアミン、N,N−ジ−sec−ブチルアミン、N,N−ジ−n−ペンチルアミン、N,N−ジ−n−ヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N−エチル−N−メチルアミン、N−メチル−N−n−プロピルアミン、N−n−ブチル−N−メチルアミン、N−メチル−N−オクチルアミン、N−エチル−N−イソプロピルアミン、N−エチル−N−オクチルアミン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジ(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジ(エトキシエチル)アミン、N,N−ジ(プロポキシエチル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、およびペンタエチレンヘキサアミン、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン類、N−アセチルテトラエチレンペンタアミン、および対応するホルミル−、プロピオニル−、ブチリル−、およびその他のN−置換化合物、モルホリン、チオモルホリン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、インドール、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピペリジン、フェノキサジン、フェノチアジン、それらの置換類似体およびその他を含む。
【0045】
第2の態様では、アミン源はアミノ酸もしくはその塩である。「アミノ酸」とは、少なくとも一つの一級、二級、もしくは三級アミン(−N<)基と、少なくとも一つの酸性カルボキシル(−COOH)基とを有する全ての有機酸を意味する。様々なアミノ酸の混合物も使用できる。アミノ酸の代表的な例は、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、6−アミノヘキサン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、トリプトファン、ヒスチジン、リシン、ヒドロキシリシン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、シスチン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、および他の1乃至5カルボキシル基を含むαアミノ酸を含む。特に好ましいアミノ酸は、容易に商業的に多量に利用できるグリシン、β−アラニン、ニトリロ三酢酸などである。
【0046】
典型的なマンニッヒ反応は、この分野で良く知られており、例えば、米国特許第3368972号、同3649229号、同4157309号、および同5370805号の各明細書に開示されており、それらの内容は参照のために本明細書の記載とする。
【0047】
生成するオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩は、次に二酸化炭素もしくはホウ酸のような酸性過塩基化化合物との反応によって、過塩基性になる。特に好ましい過塩基化方法は、二酸化炭素との反応のような炭酸塩化である。そのような炭酸塩化は、ポリオール、特にアルキレンジオール(例、エチレングリコール)および二酸化炭素をオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩に添加することにより簡便に実施できる。反応は、二酸化炭素ガスの気泡が反応混合物を通過するとの簡単な手段で簡便に実施できる。過剰の希釈剤と過塩基化反応において形成された全ての水は、反応中もしくは反応後に簡便に除去できる。
【0048】
本発明の別の態様は、少なくとも(a)潤滑性粘度を有する主要量のオイルおよび(b)潤滑油添加剤として有用な本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を含む潤滑油組成物に関する。潤滑油組成物は、一般的な方法で、適切な量の本発明の潤滑油添加剤を、潤滑油粘度を有するベースオイルと混合することにより調製できる。特定のベースオイルは、潤滑剤が意図する用途と他の添加剤の存在とによって選択する。一般に、本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩は、潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全質量に対して約0.01乃至約40質量%、好ましくは約0.1乃至約20質量%の量で存在する。
【0049】
本発明の潤滑油組成物における使用に適した潤滑性粘度を有するベースオイルは、組成物の全質量に対して、一般に多量に存在し、具体的には50質量%より多く、好ましくは約70質量よりも多く、さらに好ましくは約80乃至約99.5質量%であり、最も好ましくは約85乃至約98質量%である。ここで使用する「ベースオイル(基油)」との表現は、一つのベースストックまたは複数のベースストックを調合したものを意味すると理解すべきである。このベースストックは、単一の製造者によって(原材料供給地や製造地は問わない)同じ仕様書に基づき生産され;同じ製造者の仕様書に適合し、さらに;固有の処方、製品特定番号またはそれらの双方により同定される潤滑性成分である。ここで使用されるベースオイルとは、既に知られているものに加えて、今後発見されるベースオイルであってもよい。このベースオイルは、エンジンオイル、船舶用シリンダオイル、機能性液体(例、作動オイル、ギアオイル、変速機液)等のような、いくつかまたは全ての用途において潤滑油組成物の処方に用いられる潤滑性粘度を有している。加えて、ここで使用されるベースオイルは、メタクリル酸アルキル重合体、オレフィン共重合体(例、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体)、その他、およびそれらの混合物のような粘度指数向上剤を任意に含むことができる。
【0050】
ベースオイルの粘度は、用途に依存する。このことは、当業者であれば、容易に認識できるであろう。よって、ここで使用されるベースオイルの粘度は、100℃において通常は約2乃至約2000センチストロークス(cSt)の範囲である。エンジンオイルとして使用する個々のベースオイルは、100℃において一般に約2cSt乃至約30cSt、好ましくは約3cSt乃至約16cSt、最も好ましくは約4cSt乃至約12cStの範囲に動粘度を有する。また、ベースオイルは、エンジンオイルに求められる等級を与えるように、要求される最終用途とオイルに最終的に含まれる添加剤とに対応して、選択および配合される。エンジンオイルの等級とは、例えば、潤滑油組成物は、SAE粘度等級で0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30、または15W−40を有する。ギアオイルとして使用するオイルは、100℃において約2cSt乃至約2000cStの粘度を有することができる。
【0051】
ベースストックは、様々に異なる方法を用いて製造することができる。それらの方法は、限定される訳ではないが、蒸留法、溶剤精製法、水素処理法、オリゴマー化法、エステル化法、および再精製法を含む。再精製されたストックからは、製造、汚染、あるいは以前の使用において加えられた物質が実質的に除かれている必要がある。本発明の潤滑油組成物のベースオイルは、天然または合成による潤滑性のベースオイルである。適当な炭化水素合成オイルは、限定される訳ではないが、ポリアルファオレフィン(PAO)オイルのようなポリマーを生じるエチレンの重合反応または1−オレフィンの重合反応、あるいは一酸化炭素と水素ガスとを用いる炭化水素合成法(例、フィッシャー−トロプシュ法)により合成されるオイルを含む。適当なベースオイルの例では、重い分画が仮に存在しても極めてわずかしか含まれていない。例えば、100℃における粘度が20cSt以上である潤滑油分画は、仮に存在しても極めてわずかである。
【0052】
ベースオイルは、天然の潤滑性オイル、合成潤滑性オイル、またはそれらの混合物から得ることができる。適当なベースオイルは、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化により得られるベースストックに加えて、粗製物中の芳香性かつ極性成分を(溶媒抽出よりも)水素化分解することにより製造される水素化分解ベースストックを含む。適当なベースオイルは、API公報1509(14版、補遺I、12月、1998年)で定義されるAPIカテゴリーI、II、III、IV、およびVの全てに属するものを含む。グループIVのベースオイルは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースオイルは、グループI、II、III、およびIVに含まれない他の全てのベースオイルを含む。この発明ではグループII、III、およびIVのベースオイルが好ましく用いられるが、ベースオイルを、グループI、II、III、IV、およびVの一つ以上に属するベースストックまたはベースオイルを組み合わせて製造することもできる。
【0053】
有用な天然オイルは、鉱物性潤滑油(例、液状石油起源オイル、パラフィン型、ナフサ型またはパラフィン−ナフサ混合型の溶剤処理または酸処理鉱物性潤滑油、石炭またはシェール油から得られるオイル)、動物または植物油(例、菜種油、ひまし油、ラード油)その他を含む。
【0054】
有用な合成潤滑油は、限定される訳ではないが、重合化または内部重合化オレフィン類(例、ポリブチレン類、ポリプロピレン類、プロピレン−イソブチレン共重合体類、塩素化ポリブチレン類、ポリ1−ヘキセン類、ポリ1−オクテン類、ポリ1−デセン類)のような炭化水素オイルおよびハロゲン置換炭化水素オイルその他、およびそれらの混合物;ドデシルベンゼン類、テトラデシルベンゼン類、ジノニルベンゼン類、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン類その他のようなアルキルベンゼン類:ビフェニル類、ターフェニル類、アルキル化ポリフェニル類その他のようなポリフェニル類;アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類およびそれらの誘導体、類似体、および同族体その他を含む。
【0055】
他の有用な合成潤滑油は、限定される訳ではないが、炭素原子5未満のオレフィン(例、エチレン、プロピレン、ブチレン類、イソブテン、ペンテン、およびそれらの混合物)を重合させることにより得られるオイルを含む。そのようなポリマーオイルの製造方法は、当業者に良く知られている。
【0056】
別の有用な合成炭化水素オイルは、適度の粘度を有するアルファオレフィンの液状ポリマーを含む。特に有用な合成炭化水素オイルは、C〜C12アルファオレフィン類の水素化液体オリゴマー(例、1−デセントリマー)である。
【0057】
有用な合成潤滑油の別の分類には、限定される訳ではないが、アルキレンオキシドポリマー類、すなわち、ホモポリマー、内部重合体、およびそれらの誘導体が含まれる。これらの末端のヒドロキシル基は、例えばエステル化やエーテル化によって、修飾されていてもよい。これらのオイルの例は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合化により製造されるオイル、これらポリオキシアルキレンポリマーのアルキルまたはフェニルエーテル(例、平均分子量が1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量が500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、あるいはそれらのモノ−またはポリカルボン酸エステル(例、酢酸エステル、混合C〜C脂肪酸エステル)、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルを含む。
【0058】
さらに別の有用な合成潤滑油の分類には、限定される訳ではないが、ジカルボン酸(例、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸類、アルケニルコハク酸類、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸類、アルケニルマロン酸類等)と様々なアルコール(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例は、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、セバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルとを反応させて形成する複合エステル、およびその他を含む。
【0059】
合成オイルとして有用な別のエステルは、限定される訳ではないが、約5乃至約12の炭素原子を有するカルボン酸とアルコール(例、メタノール、エタノール等)、ポリオールおよびポリオールエーテル(例、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール)、およびその他を含む。
【0060】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサンオイルおよびシリケートオイルのようなシリコーンを基材とするオイルは、合成潤滑油の他の有用な分類を構成する。これらの具体例は、限定される訳ではないが、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン類、ポリ(メチルフェニル)シロキサン類、それらの類似物を含む。さらに別の有用な合成潤滑油は、限定される訳ではないが、リンを含む酸の液状エステル(例、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デカンホスフィン酸のジエチルエステルなど、テトラヒドロフランの重合体、それらの類似物を含む。
【0061】
潤滑油は、未精製、精製および再精製オイルから得ることができる。これらのオイルは、天然、合成あるいは以上に開示した2以上の分類に属するものの混合物のいずれであってもよい。未精製オイルは、天然または合成原料(例、石炭、シェール、またはタールサンドビチューメン)から精製や処理なしで得られるものである。未精製オイルの例は、限定される訳ではないが、乾留操作により直接得られるシェールオイル、蒸留により直接得られる石油系オイル、またはエステル化方法により直接得られるエステルオイルを含む。これらの例は、いずれも、さらに処理を実施することなく使用される。精製オイルは、未精製オイルに類似するが、さらに一つ以上の性質を改善するため一つ以上の精製工程により処理されている点で異なる。このような精製技術は、当業者に知られており、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸またはアルカリ抽出、濾過、パーコレーション、水素化処理、脱蝋などを含む。再精製オイルは、精製オイルを得るために使用される方法と類似の方法で使用済みオイルを処理することにより得られる。そのような再精製オイルは、再生オイルまたは再処理オイルとしても知られ、多くの場合、消耗した添加剤やオイル分解産物を除去するための手法によって追加処理されている。
【0062】
ワックスの水添異性化により得られる潤滑油のベースストックを、単独あるいは上記天然および/または合成ベースストックと組み合わせて使用することもできる。そのようなワックス異性化オイルは、天然または合成ワックスあるいはそれらの混合物を水添異性化触媒の存在下で水添異性化処理することにより製造される。
【0063】
天然のワックスとして代表的なものは、鉱物オイルの溶媒脱蝋によって回収されるスラックワックスである。合成ワックスとして代表的なものは、フィッシャー−トロプシュ法により製造されるワックスである。
【0064】
本発明の潤滑油組成物は、さらに補助的な機能を付加するために周知の添加剤を含むことができ、これによりそれらの添加剤が分散または溶解している最終的な潤滑油組成物が得られる。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、摩耗防止剤、清浄剤(例、金属含有清浄剤)、錆止め剤、曇り止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶剤、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、無灰性分散剤、染料、極圧剤、それらの類似物、およびそれらの混合物と混合することができる。様々な添加剤が知られており、商業的に入手できる。添加剤およびそれらの類似化合物は、一般的な混合方法によって、本発明の潤滑油組成物の製造に用いることができる。
【0065】
酸化防止剤の例は、限定される訳ではないが、アミン型(例、ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(アルキルフェニル)アミン類;アルキル化フェニレンジアミン類);フェノール型(例、BHT、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2−オクチル−3−プロパン酸)フェノールのような立体障害があるアルキルフェノール類);およびそれらの混合物を含む。
【0066】
無灰性分散剤の例は、限定される訳ではないが、無水ポリアルキレンコハク酸;無水ポリアルキレンコハク酸の窒素原子を含まない誘導体;スクシンイミド類、カルボン酸アミド類、ヒドロカルビルモノアミン類、ヒドロカルビルポリアミン類、マンニッヒ塩基、ホスホノアミド類、およびホスホルアミド類からなる群より選ばれる塩基性窒素化合物;トリアゾール類(例、アルキルトリアゾール類、およびベンゾトリアゾール類);カルボン酸エステルを一つ以上の他の極性官能基(例、アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシル、カルボキシル、それらの類似物)と共に含む共重合体(例えば、アクリル酸またはメタクリル酸長鎖アルキルと上記官能基を有するモノマーとの共重合により得られる生成物);それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。これらの分散剤の誘導体(例、ホウ素化スクシンイミド類のようなホウ素化分散剤)も用いることができる。
【0067】
錆止め剤の例は、限定される訳ではないが、ノニオン性ポリオキシアルキレン剤(例、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリエチレングリコール);ステアリン酸および他の脂肪酸類;ジカルボン酸類;金属石鹸;脂肪酸アミン塩;強スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸類;それらの部分エステルおよびそれらの含窒素誘導体;合成アルキルアリールスルホン酸類(例、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩類);その他、およびそれらの混合物を含む。
【0068】
摩擦緩和剤の例は、限定される訳ではないが、アルコキシ化脂肪族アミン;ホウ素化脂肪族エポキシド;脂肪族亜リン酸、脂肪族エポシキド、脂肪族アミン、ホウ素化アルコキシ化脂肪族アミン、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ素化グリセロールエステル、ホウ素化脂肪族エステル;および米国特許第6372696号明細書に開示されている脂肪族イミダゾリン(同明細書に記載されている内容は、参照のためここに組み込まれる);C〜C75、好ましくはC〜C24、最も好ましくはC〜C20脂肪酸エステルと、アンモニアおよびアルカノールアミンからなる群より選ばれる含窒素化合物との反応生成物から得られる摩擦緩和剤;その他、およびそれらの混合物を含む。
【0069】
消泡剤の例は、限定される訳ではないが、メタクリル酸アルキルの重合体;ジメチルシリコーンの重合体;その他、およびそれらの混合物を含む。
【0070】
以上述べた添加剤を使用する場合、機能的に有効な量を使用して、必要とされる性質を潤滑剤に与えるようにする。そのため、例えば、仮に添加剤が摩擦緩和剤である場合、摩擦緩和剤の機能的な有効量は、潤滑剤に必要とされる摩擦緩和性を付与するために充分な量である。これらの添加剤の使用における個々の濃度は、潤滑油組成物全質量に対して、一般に約0.001質量%乃至約20質量%であり、ある態様においては約0.01質量%乃至約10質量%である。
【0071】
本発明の潤滑油組成物の最終的な適用分野としては、例えば、クロスヘッドディーゼルエンジンに用いる舶用シリンダ潤滑油、自動車および鉄道のクランクケース潤滑油その他、重機械(例えば製鉄所)の潤滑油その他、あるいはベアリングのグリースその他が可能である。潤滑油組成物が液体であるか、あるいは固体であるかは、一般に増粘剤の有無による。代表的な増粘剤には、酢酸ポリウレア、ステアリン酸リチウム、およびその他が含まれる。
【0072】
本発明の他の態様では、本発明の潤滑油添加剤を、添加剤のパッケージまたは濃縮物として提供できる。添加剤濃縮物では、添加剤が、実質的に不活性で通常は液体である有機希釈剤(例、鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエン、あるいはキシレン)に加えられて、添加剤濃縮物を形成する。これらの濃縮物は、通常、約20質量%乃至約80質量%の上記希釈剤を含む。一般には100℃において約4乃至約8.5cSt、好ましくは100℃において約4乃至約6cStの粘度を有する中性オイルが希釈剤として用いられるが、添加剤および最終的に生産される潤滑油に対して適合性がある合成オイルや他の有機液体を使用することもできる。添加剤パッケージも、上記のような様々な他の添加剤を、必要とされる量かつ必要量のオイルと直接組み合わせることが容易な比率で含むことができる。
【0073】
以下に記載する本発明を限定する意図のない実施例において、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
(プロピレン五量体アルキルフェノールの調製)
30ガロンのステンレス製反応器に、溶融(約45℃)フェノール40.66kg(432.5モル)を入れ、引き続き積極的な窒素雰囲気下で市販(シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー社)のプロピレン五量体オリゴマー30.28kg(144.2モル)を加えた。次に、スルホン酸イオン交換樹脂(アンバーライト36TM)3.55kgを反応器に加えて、機械的攪拌機を375rpmで回転させ、蒸気口ラインの温度が70℃(熱水)で反応器の圧力を15.18psiaに設定した。反応器を1時間50分間かけて約101℃まで加熱し、この温度を8時間維持した。攪拌を停止し、反応器を15時間35分間かけて放置して79℃まで冷却し、触媒を除去した。反応器の内容物は、未反応のフェノールを除去するまで蒸留させ、その後、室温に冷却されるまで放置した。最終的な蒸留後の生成物は、反応器の底から排出した。最終生成物の性質は以下の通りであった:粘度=1249cSt(40℃)、ヒドロキシル数=167mg/KOH/g(サンプル)、および臭素数=38.0gmBr/100g(サンプル)。
【0075】
[実施例2]
(プロピレン5量体アルキルフェノールから過塩基性硫化フェネートの調製)
機械式攪拌機、10質量%NaOH水溶液を含むガス清浄器を通過する通気口を設けた蒸留ヘッド、およびガス導入チューブを取り付けた3リットルのガラス製反応器に、実施例1の生成物718.8g、エクソン100Nオイル1450.0g、デシルアルコール461.3g、およびアモコ9221(スルホン酸LOB)72.0gを加えた。混合物を攪拌し、71℃まで加熱し、この温度で石灰337.5gを加え、さらに固体硫黄112.5gを加えた。反応器の温度を127℃に上昇させ、その温度でエチレングリコール116.4gの添加を45分間かけて実施した。添加後、反応器温度を149℃まで上昇させ、エチレングリコール158.4gを25分間かけて混合物に加えた。グリコール添加が完了後、温度を25分間かけて177℃まで上昇させた。この温度で120gのCOの添加を開始し、添加速度を0.564g/分とした。CO添加を開始して110分後、エチレングリコール74.4gを15分間かけて添加した。CO添加が完了(その開始から210分)後、反応器を減圧下、約212℃まで加熱し、アルコール溶媒を蒸留し、0.7容積%粗製沈殿物として粗製生成物を生成した。この粗製生成物の濾過により、以下の性質を有する最終産物を生成した:TBN=289、S(質量%)=3.58、Ca(質量%)=10.7、CO(質量%)=6.65。250TBNに達するまでエクソン100Nオイルで希釈した最終産物の粘度は、175cSt(100℃)であった。
【0076】
[実施例3]
(プロピレン5量体アルキルフェノールから過塩基性硫化フェネートの調製)
実質的に実施例2と同様に過塩基性硫化フェネートを調製し、以下の成分による319TBNの過塩基性硫化Caフェネート濃縮物を生成した:
【0077】
実施例1の生成物 467.2g
エクソン100中性オイル: 373.4g
デシルアルコール: 477.2g
アモコ9221: 59.8g
石灰: 280.7g
固体硫黄: 93.5g
1回目のエチレングリコール添加:131.7g
2回目のエチレングリコール添加: 62.0gおよび
二酸化炭素添加: 96.0g(0.47g/分)。
【0078】
粗製生成物は0.8容積%の粗製沈殿を含み、粗製生成物を濾過したものは以下の性質を有していた:TBN=319、S(質量%)=3.64、Ca(質量%)=11.8、CO(質量%)=7.37。300TBNに達するまでエクソン100Nオイルで希釈した最終産物の粘度は、574.2cSt(100℃)であった。
【0079】
[実施例4]
(プロピレン5量体アルキルフェノールの調製)
市販(シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー社)のプロピレン五量体でフェノールをアルキル化することによりアルキルフェノールを製造した。プロピレン五量体は、多量の液体リン酸触媒を用いるオリゴマー化処理によって得られるプロピレンオリゴマーの蒸留における最下層産物として得られた。プロピレン五量体は、236.5℃の初留点と295.2℃の終留点とを有し、下記第1表に示す炭素原子数分布を有していた。
【0080】
第1表


質量%


C13 0.19
C14 13.57
C15 67.39
C16 6.61
C17 4.61
C18+ 7.64

【0081】
4リットルの丸底フラスコに、プロピレン五量体(サンプル51187)632.4g(3モル)およびフェノール1128g(12モル)を加えた。反応体を混合し、90℃まで加熱した。この温度でアンバーライトTM36触媒(ローム・アンド・ハース社)75.9gを加え、反応混合物の温度を110℃まで上昇させた。この温度で大気圧下、窒素中、反応を4時間進行させた。反応混合物を100℃まで冷却し、濾過により触媒を除去した。次に反応混合物を30mmHgの真空下で230℃まで加熱し、この条件を10分間維持して過剰のフェノールを蒸留した。アルキル化はフェノールに対して本質的に定量的であって、モノアルキルが95%を超え、パラ位が85%を超えていた。
【0082】
[実施例5]
実施例4と実質的に同様な方法により、同じ成分と量でアルキルフェノールを調製した。
【0083】
[実施例6]
(プロピレン五量体アルキルフェノールの調製)
市販(シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー社)のプロピレン五量体でフェノールをアルキル化することによりアルキルフェノールを製造した。プロピレン五量体は、多量の液体リン酸触媒を用いるオリゴマー化処理によって得られるプロピレンオリゴマーの蒸留における最下層産物として得られた。プロピレン五量体は、下記第2表および第3表に示す炭素原子数分布と沸点とを有していた。
【0084】
第2表


質量%


C12− 2.09
C13 1.22
C14 8.77
C15 77.07
C16 4.69
C17 0.43
C18+ 5.74

【0085】
第3表


ASTM D86の蒸留 ℃


初留点(BP) 230.6
5%BP 234.7
10%BP 235.4
50%BP 240.0
90%BP 255.9
95%BP 265.4
終留点 281.9

【0086】
4リットルの丸底フラスコに、プロピレン五量体(サンプル51187)632.4g(3モル)およびフェノール1128g(12モル)を加えた。反応体を混合し、90℃まで加熱した。この温度でアンバーライトTM36触媒(ローム・アンド・ハース社)75.9gを加え、反応混合物の温度を110℃まで上昇させた。この温度で大気圧下、窒素中、反応を4時間進行させた。反応混合物を100℃まで冷却し、濾過により触媒を除去した。次に反応混合物を30mmHgの真空下で230℃まで加熱し、この条件を10分間維持して過剰のフェノールを蒸留した。アルキル化はフェノールに対して本質的に定量的であって、モノアルキルが95%を超え、パラ位が85%を超えていた。
【0087】
[実施例7]
実施例6と実質的に同様な方法により、同じ成分と量でアルキルフェノールを調製した。
【0088】
[実施例8]
実施例4〜7のアルキルフェノールを、1:1:1:1の質量比で配合し、アルキルフェノール混合物を生成した。アルキルフェノール混合物は、以下のように硫化および過塩基化した。4リットルの丸底フラスコ中で、アルキルフェノール混合物800gを希釈オイル670.7g、油溶性アルキルアリールスルホン酸触媒、および消泡剤数滴と混合した。混合物を110℃の温度まで30分間をかけて加熱した。この間において、混合物の温度が70℃に到達した時、石灰380gを加えた。
【0089】
110℃で硫黄112.7gを加え、680mmHgの減圧下、混合物の温度を20分間かけて150℃まで上昇させた。減圧を利用して放出されたHSを除去した。温度が150℃に到達後、エチレングリコール153.7gおよび2−エチルヘキサノール328gを徐々に反応器に加えた。反応器の温度を1時間かけて170℃までさらに上昇させ、さらに20分間維持した。次に二酸化炭素を0.3g/分導入し、15分間の炭酸塩化後、エチレングリコール79.2gを1時間かけて導入した。30分後、二酸化炭素供給速度を0.8g/分に増加させた。二酸化炭素の全添加量は120gであった。次に反応混合物を215℃に加熱し、圧力を徐々に20mmHgまで低下させ、溶媒とエチレングリコールとを除去した。窒素ストリッピングを80mmHgで1時間かけて行った。珪藻土濾過助剤を用いて反応混合物を160℃まで冷却した。
【0090】
この実施例におけるオリゴマー化アルキルフェネートの過塩基性塩のオイル濃縮物の特性を下記第4表に示す。
【0091】
第4表


特性 結果


Ca(質量%) 9.76
S(質量%) 3.22
二酸化炭素(質量%) 5.99
塩基数(mgKOH/g) 263
粘度(@100℃、mm/秒) 274

【0092】
[比較例A]
プロピレン五量体起源、CO過塩基性硫化Caアルキルフェネートオイル濃縮物は下記第5表に示す特性を有する市販品である。
【0093】
第5表


特性 結果


Ca(質量%) 9.89
S(質量%) 3.25
二酸化炭素(質量%) 5.44
塩基数(mgKOH/g) 262
粘度(@100℃、mm/秒) 353

【0094】
[試験]
(生殖毒性スクリーニング試験)
本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を採用する利点を、OECD試験ガイドライン421に従い実施した生殖毒性試験の結果により説明する。これらの試験では、ラットに実施例8の生成物および比較例Aの生成物を投与した。
【0095】
親(F0)世代の性が異なる12匹のラットからなる4群に、実施例8のCO過塩基性Caオリゴマー化アルキルフェネートを、毎日の経口(胃管栄養)投与レベルとして0、60、250、1000mg/kg/日で投与した。別の親(F0)世代の性が異なる12匹のラットからなる4群に、比較例Aのプロピレン五量体起源、CO過塩基性硫化Caアルキルフェネートを毎日の経口(胃管栄養)投与レベルとして0、50、200、1000mg/kg/日で投与した。投与容量は、5ml/kg/日であった。対照動物は賦形剤のみを受容した。賦形剤は、ピーナッツオイルの投与溶液を毎週調製した。試験物質の濃度、均一性、および安定性は、化学分析によって確認した。雌雄の親動物には、未成熟(28日)、交配(15日以下)、妊娠(25日以下)、および授乳(4日)の期間中、死亡に至るまで毎日投与した。
【0096】
F0動物は、交配のため1:1を基本に各群でつがいにした。雌は、交配期間中の毎日、膣内の膣プラグと精液の存在を確認した。10日間で交配の証拠が検出されない場合、雌を5日間までそれ以前に交配している同じ群の他の雄と一緒に住ませた。分娩終了後、同腹子の生存力について調べた。出生率(妊娠した雌の数/交配した雌の数)、平均同腹子数((生産および死産)/同腹子の平均数)、および生産した平均同腹子数(同腹子当たりの生産児の数)に関するデータを記録した。それを第6表に示す。
【0097】
第6表


試験物質 投与レベル 出生率 生産した
(mg/kg/日) (%) 平均同腹子数


比較例A 1000 91.7(11/12) 7.7
200 91.7(11/12) 11.5
50 91.7(11/12) 12.9
0 100 (12/12) 12.8


実施例8 1000 83.3(10/12) 13.4
250 100 (12/12) 14.0
60 100 (12/12) 13.7
0 91.7(11/12) 13.5

【0098】
示されるデータによると、比較例Aの生成物と実施例8の生成物とのいずれも、出生率に対して悪影響を与えなかった。重要な点は、実施例8の生成物が、対照群のラットが生産した同腹子の平均数と比較して、実施例8の生成物で1000mg/kg/日処理したラットが生産した同腹子の平均数に対して悪影響を与えなかったことである。一方、比較例Aの生成物で1000mg/kg/日処理したラットが生産した同腹子の平均数は、対照群のラットが生産した同腹子の平均数よりも明示的に少なかった。さらに、比較例Aの生成物で200mg/kg/日処理したラットが生産した同腹子の平均数は、対照群のラットが生産した同腹子の平均数よりも少ない方向性を示した。この結果は、本発明のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩について、有益な性質を示している。
【0099】
(船舶用シリンダ潤滑性能試験)
本発明の過塩基性オリゴマー化アルキルヒドロキシ芳香族塩の有効性を、これらの塩から処方した様々な船舶用シリンダ潤滑油を試験することにより明らかにした。以下の実施例9〜14および比較例B〜Dの調製により生成された船舶用シリンダ潤滑油は、いずれも70.5乃至71.8mgKOH/g(オイル)のTBN、17.83乃至18.79mm/秒の粘度(@100℃)、および2.5乃至2.7質量%のCa含量を有していた。
【0100】
[実施例9]
フェノールをプロピレン五量体(シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー社より入手可能)でアルキル化することにより得られた260TBNのCO過塩基性硫化Caアルキルフェネートオイル濃縮物を、船舶用シリンダベースオイルに28質量%加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0101】
[実施例10]
フェノールをプロピレン五量体(シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー社より入手可能)でアルキル化することにより得られた300TBNのCO過塩基性硫化Caアルキルフェネートオイル濃縮物を、船舶用シリンダベースオイルに23.03質量%加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0102】
[比較例B]
フェノールをプロピレン四量体でアルキル化することにより得られた250TBNのCO過塩基性硫化Caアルキルフェネートオイル濃縮物を、船舶用シリンダベースオイルに27.77質量%加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0103】
[実施例11]
実施例9に記載したCaアルキルフェネートオイル濃縮物を14質量%および420TBNのCaスルホネート清浄剤濃縮物(約50%活性)を8.47質量%、船舶用シリンダベースオイルに加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0104】
[実施例12]
実施例10に記載したCaアルキルフェネートオイル濃縮物を11.52質量%および実施例11に記載したCaスルホネート清浄剤濃縮物を8.47質量%、船舶用シリンダベースオイルに加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0105】
[比較例C]
比較例Bに記載したCaアルキルフェネートオイル濃縮物を13.88質量%および実施例11に記載したCaスルホネート清浄剤濃縮物を8.47質量%、船舶用シリンダベースオイルに加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0106】
[実施例13]
実施例9に記載したCaアルキルフェネートオイル濃縮物を14質量%、実施例11に記載したCaスルホネート清浄剤濃縮物を8.47質量%、およびポリブテンスクシンイミドオイル濃縮物(約50%活性)を1質量%、船舶用シリンダベースオイルに加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑油を調製した。
【0107】
[実施例14]
実施例10に記載したCaアルキルフェネートオイル濃縮物を11.52質量%、実施例11に記載したCaスルホネート清浄剤濃縮物を8.47質量%、および実施例13に記載したポリブテンスクシンイミドオイル濃縮物を1質量%、船舶用シリンダベースオイルに加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑剤を調製した。
【0108】
[比較例D]
比較例Bに記載したCaアルキルフェネートオイル濃縮物を13.88質量%、実施例11に記載したCaスルホネート清浄剤濃縮物を8.47質量%、および実施例13に記載したポリブテンスクシンイミドオイル濃縮物を1質量%、船舶用シリンダベースオイルに加えることにより、上記の船舶用シリンダ潤滑剤を調製した。
【0109】
[性能試験の詳細]
(ファレックス3N腐食耐久性試験)
この方法は、船舶用シリンダ潤滑剤の腐食耐久性保護性能を評価するために使用する。オイル中に浸漬した二つの静止V字ブロックの間で鉄製のピンを回転させ、特定の温度と負荷プログラムにおいて、V字ブロック上に負荷をかけて試験した。試験中、希釈硫酸を継続的に試験オイルに加えた。試験は原則として繰り返した。試験の前後でピンを秤量し、ピンの摩耗を決定し;mg単位の損失を摩耗として記録した。
【0110】
(インディアナ攪拌酸化試験(ISOT))
この試験は、内燃機関その他に用いる潤滑油のバルク酸化および熱安定性を評価するために用いる。二枚の触媒プレート(銅および鉄)とガラス製ワニス棒を試験オイル中に浸漬し、試験オイルを加熱し、試験期間中攪拌して空気を送り込む。加熱期間の終了時、試験オイルの40℃粘度を測定し、試験オイルの粘度上昇を、新鮮な試験オイルの粘度に対する試験オイルの粘度の比として表現した。
【0111】
(コマツ熱管(KHT)試験)
潤滑油組成物を、適切な空気流を用い一定の期間で温度調節したガラス管を通過させる。次に、ガラス管を冷却および洗浄し、ガラス管の内部表面に残るラッカー沈着物の色を、0〜10(0=黒、10=清浄)の範囲で評価するカラーメリットを用いて決定する。ガラス管が沈着物により完全に塞がれた場合には、試験結果を「閉塞」と記録する。
【0112】
(MAO64マイクロコーカー)
この試験は、陸上および船舶用潤滑油の高温における沈着物/ラッカー形成傾向を評価するために用いる。多量の試験オイルを傾斜したアルミニウムパネルの浅い桶に入れた。浅い桶内で均一に分布した試験オイルと共に、アルミニウムパネルに温度傾斜を適用した。パネルを一定期間加熱し、沈着物/ラッカー形成を開始する温度を、試験終了時のパネルの外観から決定した。
【0113】
(石油48修正法(MIP48)試験)
潤滑油組成物の二つのサンプルを一定時間加熱した。一つの試験サンプルに窒素を通し、他のサンプルに空気を通した。その後、二つのサンプルを冷却し、サンプルの粘度を決定した。各潤滑油組成物について、酸化による粘度増加を、空気を通したサンプルの100℃における動粘度から、窒素を通したサンプルの100℃における動粘度を引き、さらにそれらの差を、窒素を通したサンプルの100℃における動粘度で割ることにより計算した。
【0114】
(パネルコーカー試験)
この試験は、船舶用エンジンシリンダおよびピストンにおける沈着物形成を刺激することによる加熱した金属表面における船舶用エンジンオイルの沈着物形成もしくはラッカー傾向を評価するために用いる。潤滑油を、制御した条件下で予め規定した時間をかけて加熱した試験パネルに散布する。試験後、試験パネル上に累積した固体沈着物の質量を決定し、mg単位の沈着量として表す。
【0115】
(加圧示差走査熱量計(PDSC))
この試験は、試験オイルの薄膜酸化安定性を評価するために用いる。酸素に接する試験カップ内の試験オイルの熱流の出入りを、酸素に接する空の参照カップの熱流の出入りと比較した。同時に、双方のカップは予め決定しておいた温度分布に従い加熱した。酸化反応の結果は、熱流の増加により示される発熱反応である。酸化導入時間(OIT)は、試験オイルの酸化が開始された時間(分)である。
【0116】
性能試験を3種類の異なる処方について示した:フェネートのみ(第7表)、フェネート−スルホネート(第8表)、および分散剤を加えたフェネート−スルホネート(第9表)。示されるデータの通り、本発明の過塩基性オリゴマー化フェネートは、プロピレン四量体から得られる清浄剤と相対的に同等の清浄剤機能を実現する。
【0117】
第7表(フェネートのみのMCL)


性能試験 実施例9 実施例10 比較例B


ファレックス3N
腐食耐久性試験、
ピン質量損失(mg) 130/94 126/95 102/108
ISOT粘度上昇
(40℃)比 1.18 1.14 1.24
コマツ熱管試験
(10=清浄)
ラッカー@310℃ 7.00 6.50 7.00
ラッカー@320℃ 6.50 閉塞 6.50
MAO64マイクロ
コーカー沈着物
形成温度(℃) 246/251 258/264 238/245
MIP48酸化
(%粘度増加) 45.6 40.6 59.8
パネルコーカー
(mg沈着物) 217 276 284
PDSC
OIT(分) 134.0 107.0 142.0

【0118】
第8表(フェネート−スルホネートのMCL)


性能試験 実施例11 実施例12 比較例C


ファレックス3N
腐食耐久性試験、
ピン質量損失(mg) 149/108 113/132 118/130
ISOT粘度上昇
(40℃)比 1.09 1.07 1.09
コマツ熱管試験
(10=清浄)
ラッカー@310℃ 7.50 7.00 7.00
ラッカー@320℃ 閉塞 閉塞 6.5〜7.0
MAO64マイクロ
コーカー沈着物
形成温度(℃) 260/259 253/254 261/263
MIP48酸化
(%粘度増加) 54.3 91.3 40.7
パネルコーカー
(mg沈着物) 180 226 246
PDSC
OIT(分) 82.0 64.6 80.0

【0119】
第9表(フェネート−スルホネート−分散剤のMCL)


性能試験 実施例13 実施例14 比較例D


ファレックス3N
腐食耐久性試験、
ピン質量損失(mg) 5/71/66 96/35/34 16/29
ISOT粘度上昇
(40℃)比 1.06 1.05 1.07
コマツ熱管試験
(10=清浄)
ラッカー@310℃ 8.00 7.00 7.00
ラッカー@320℃ 7.00 閉塞 5.50
MAO64マイクロ
コーカー沈着物
形成温度(℃) 261/262 252/259 261/260
MIP48酸化
(%粘度増加) 測定せず 89.2 37.2
パネルコーカー
(mg沈着物) 271 242 222
PDSC
OIT(分) 65.0 38.0 85.8

【0120】
ここに開示される態様について、さまざま変更が可能である。従って、以上の説明は限定的に解釈されるべきではなく、好ましい態様の例示にすぎないとすべきである。例えば、上記および本発明を実施するための最良の態様として実行される機能は、説明のみを目的としている。その他の変更や方式も、本発明の範囲や精神を逸脱することなく、当業者は実施できるであろう。さらに当業者は、ここに書き添えられている請求項の範囲と精神の中で他の変更を行なうことも可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導される過塩基性塩。
【請求項2】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約200℃の初留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項3】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約210℃の初留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項4】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約225℃の初留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項5】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約230℃の初留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項6】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約300℃以下の終留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項7】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約290℃以下の終留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項8】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約280℃以下の終留点を有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項9】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約230℃の初留点と約280℃以下の終留点とを有する請求項1の過塩基性塩。
【請求項10】
上記の塩がアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩である請求項1の過塩基性塩。
【請求項11】
アルカリ金属塩がアルカリ酸化物もしくはアルカリ水酸化物から選ばれる金属塩基より誘導される請求項10の過塩基性塩。
【請求項12】
アルカリ土類金属塩がアルカリ土類金属酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる金属塩基より誘導される請求項10の過塩基性塩。
【請求項13】
金属塩基が酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項10の過塩基性塩。
【請求項14】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールである請求項1の過塩基性塩。
【請求項15】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、かつオレフィン混合物がプロピレン五量体を含む請求項1の過塩基性塩。
【請求項16】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、かつオレフィン混合物がプロピレン五量体を含む請求項9の過塩基性塩。
【請求項17】
オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物が、硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物である請求項1の過塩基性塩。
【請求項18】
下記の工程を含む、オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩の製造方法:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物でアルキル化してアルキルヒドロキシ芳香族化合物を得る工程;
(b)工程(a)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物を中和してアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を得る工程;
(c)工程(b)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩をオリゴマー化してオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を得る工程;そして
(d)工程(c)のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を過塩基化してオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を得る工程。
【請求項19】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約230℃の初留点と約280℃以下の終留点とを有する請求項18の方法。
【請求項20】
中和する工程において、工程(a)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩と接触させる請求項18の方法。
【請求項21】
中和する工程において、工程(a)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物を酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる金属塩基と接触させる請求項18の方法。
【請求項22】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールである請求項18の方法。
【請求項23】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、かつオレフィン混合物がプロピレン五量体を含む請求項18の方法。
【請求項24】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、かつオレフィン混合物がプロピレン五量体を含む請求項19の方法。
【請求項25】
オリゴマー化する工程において、工程(b)のアルキルヒドロキシ芳香族化合物の塩を硫化する請求項18の方法。
【請求項26】
(a)潤滑性粘度を有する主要量のオイルおよび(b)オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩であって、該アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基が、ASTM D86で測定される少なくとも約195℃の初留点と約325℃以下の終留点とを有するプロピレンオリゴマーを含むオレフィン混合物から誘導される過塩基性塩を含む潤滑油組成物。
【請求項27】
潤滑性粘度を有するベースオイルが鉱物ベースオイルである請求項26の潤滑油組成物。
【請求項28】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約200℃の初留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項29】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約210℃の初留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項30】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約225℃の初留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項31】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約230℃の初留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項32】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約300℃以下の終留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項33】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約290℃以下の終留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項34】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される約280℃以下の終留点を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項35】
プロピレンオリゴマーがASTM D86で測定される少なくとも約230℃の初留点と約280℃以下の終留点とを有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項36】
過塩基性塩が、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる金属塩基から誘導される請求項26の潤滑油組成物。
【請求項37】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールである請求項26の潤滑油組成物。
【請求項38】
ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、かつオレフィン混合物がプロピレン五量体を含む請求項26の潤滑油組成物。
【請求項39】
オリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物が、硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物である請求項26の潤滑油組成物。
【請求項40】
潤滑油組成物中に過塩基性塩が、潤滑油組成物の全質量に対して、約0.01質量%乃至約40質量%の量で存在している請求項26の潤滑油組成物。
【請求項41】
金属清浄剤、無灰性分散剤、摩擦緩和剤、極圧剤、粘度指数向上剤、および流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも一つの添加剤をさらに含む請求項26の潤滑油組成物。
【請求項42】
組成物の全質量に対して、0.05質量%を超えることがないリン含有量を有する請求項26の潤滑油組成物。
【請求項43】
潤滑油組成物が有する哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する性質を軽減する方法であって、請求項1のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を、潤滑性粘度を有する主要量のオイルを含む潤滑油組成物に添加することを含む方法。
【請求項44】
潤滑油組成物が有する哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する性質を軽減する方法であって、請求項16のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を、潤滑性粘度を有する主要量のオイルを含む潤滑油組成物に添加することを含む方法。
【請求項45】
潤滑油組成物が有する哺乳類に対する影響としての内分泌系を攪乱する性質を軽減する方法であって、請求項17のオリゴマー化したアルキルヒドロキシ芳香族化合物の過塩基性塩を、潤滑性粘度を有する主要量のオイルを含む潤滑油組成物に添加することを含む方法。

【公表番号】特表2011−529905(P2011−529905A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521332(P2011−521332)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/052281
【国際公開番号】WO2010/014829
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】