説明

濃度相関関数の演算装置、濃度相関関数を導出する方法、及び濃度相関関数の演算をするプログラム、並びに、測定対象物質の体液中濃度の測定装置

【課題】測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液の赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算する演算装置、及び、該濃度相関関数に基づいて前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置を提供する。
【解決方法】生体又は生体から取り出した体液の赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得手段と、赤外線波長の組合せを選択する波長選択手段と、生体の実測体液中濃度を読み取る実測濃度取得手段と、該波長選択手段で選択した各赤外波長の赤外線強度情報と実測体液中濃度との相関を規定する濃度測定用関数演算の群を得る濃度測定用関数演算手段と、該赤外線強度情報を濃度測定用関数に適用して演算された体液中濃度の演算濃度と、体液中濃度の実測濃度との各相関係数を演算する相関係数演算手段と、相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算する演算装置、該濃度相関関数の導出方法、及び該濃度相関関数の演算をするプログラム、並びに、該濃度相関関数に基づいて前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床系における分析方法のひとつとして、体液中の成分量は重要な指標値であり、中でも生体の血液中の成分量は特に重要な指標値として用いられている。その現在の主要な測定方法は採血法であり、被験者への侵襲は大きな課題となっている。
【0003】
これに対し非侵襲的な測定方法として、被検査物質(測定対象物質)固有の近赤外線吸収特性に着目し、被験者の表皮に赤外線を照射して、被検査物質固有の波長データにおける吸光度(反射した赤外線強度)を得て、そこから被検査物質の血中濃度を予測する方法が考案されている(特許文献1)。
【0004】
また、測定した赤外線強度の解析方法として、主成分分析または単回帰の分析により目的の検査値を予測する上で影響度の大きい波長のデータを順次採用する方法(特許文献2)や、PLS(Partial Least Squares Regression)等のスペクトルデータの広範囲の情報を利用し目的の検査値を予測する方法(特許文献3)等が行なわれている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−323799号公報
【特許文献2】特開平11−64218号公報
【特許文献3】国際公開2003−079900号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、血液は一般に多数の物質が混合したものであり、複雑な生化学反応等が起きている。そのため、被検査物質固有の近赤外線吸収特性に着目する方法では、雑協な環境下における影響や、生化学反応における状態の変化によって、測定精度が低下していた。
【0007】
また、測定した赤外線強度の解析方法においても、上述した主成分分析、単回帰の分析の方法、及びPLS等で得られる結果は、必ずしも臨床系で満足が得られるような精度を保つものではなかった。
【0008】
さらに、採血法で得た血液に対しても、臨床検査試薬を用いた非可逆的変化を伴う検査方法よりも、試薬コストの点などから非可逆的変化を伴わない検査方法の確立が望まれている。
【0009】
このような現状から、未だ採血法が主流となっている。本発明は、このような課題に鑑み開発されたものであり、測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算する演算装置、該濃度相関関数を導出する方法、及び該濃度相関関数の演算するプログラム、並びに、該濃度相関関数に基づいて前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、測定対象物質の近赤外線吸収特性に依存せずに必要な波長のデータを選び出すことで、体液内の複雑な生化学反応の中であっても、高い精度で目的の検査値を測定することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算する演算装置であって、前記赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得手段と、該スペクトル読取手段が読み取った前記赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択手段と、前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得手段と、該波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算手段と、該スペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、該実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を演算する相関係数演算手段と、該濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、該相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出手段とを備えることを特徴とする、濃度相関関数の演算装置(以下、「本発明の演算装置」ということがある。)に存する(請求項1)。
【0012】
このとき、波長選択手段における赤外線波長の組合せが、8点以上の波長の組合せであることが好ましい(請求項2)。
【0013】
また、前記赤外線吸収スペクトルを読み取る第二のスペクトル取得手段と、濃度相関関数を得るのに用いた赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の一部を少なくとも含む、複数の赤外線波長の組合せを選択する第二の波長選択手段と、前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る第二の実測濃度取得手段と、該第二の波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該第二の波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る第二の濃度測定用関数演算手段と、該第二のスペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該第二の濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の第二の演算濃度と、該実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の第二の実測濃度との各相関係数を演算する第二の相関係数演算手段と、該第二の濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、該第二の相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する第二の濃度相関関数抽出手段とを備えることが好ましい(請求項3)。
【0014】
このとき、波長選択手段において、16点の赤外線波長の組合せを選択し、第二の波長選択手段において、該波長選択手段において選択された赤外線波長の組合せのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、少なくとも7点以上を含む8点以上の赤外線波長の組合せを選択することが好ましい(請求項4)。
【0015】
また、第二の波長選択手段において、該波長選択手段において選択された赤外線波長の組合せのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、少なくとも7点以上を含む14点以上の赤外線波長の組合せを選択することが好ましい(請求項5)。
【0016】
波長選択手段において、16点の赤外線波長の組合せを選択し、第二の波長選択手段において、該波長選択手段において選択された赤外線波長の組合せのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、16点以上の赤外線波長の組合せを選択することが好ましい(請求項6)。
【0017】
また、測定対象物質が、グルコース、コレステロール、中性脂肪又はHbA1cであることが好ましい(請求項7)。
【0018】
また、濃度測定用関数演算手段における演算が、非線形的手法による演算であることが好ましい(請求項8)。
【0019】
また、前記の赤外線強度情報が、前記の生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度値を微分処理した値であることが好ましい(請求項9)。
【0020】
本発明の別の要旨は、体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を、コンピュータを用いて導出する方法であって、該コンピュータに、前記赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得ステップと、該スペクトル取得ステップが読み取った前記赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択ステップと、前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得ステップと、該波長選択ステップで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得ステップで取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該波長選択ステップで選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算ステップと、該スペクトル取得ステップで読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該濃度測定用関数演算ステップで得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、該実測濃度取得ステップで読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を演算する相関係数演算ステップと、該濃度測定用関数演算ステップが演算した濃度測定用関数の群から、該相関係数演算ステップが得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出ステップとを行なわせることを特徴とする、濃度相関関数を導出する方法(以下、「本発明の濃度相関関数導出方法」ということがある。)に存する(請求項10)。
【0021】
本発明の別の要旨は、体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算するプログラムであって、コンピュータを、前記赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得手段と、該スペクトル読取手段が読み取った前記赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択手段と、前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得手段と、該波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算手段と、該スペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、該実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を得る相関係数演算手段と、濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、該相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出手段ととして機能させる濃度相関関数の演算をするプログラム(以下、「本発明のプログラム」ということがある。)に存する(請求項11)。
【0022】
本発明の別の要旨は、前記請求項1〜10に記載の演算装置で得られる濃度相関関数、請求項11に記載の濃度相関関数を導出する方法で導出される濃度相関関数、若しくは請求項12に記載のプログラムを用いて演算される濃度相関数に基づいて、前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置であって、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射する赤外線源と、該赤外線源から前記生体又は生体から取り出した体液に照射された赤外線の赤外線吸収スペクトルを測定するスペクトル測定手段と、該スペクトル測定手段が測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、前記濃度相関関数に適用して、測定対象物質の体液中濃度を演算する体液中濃度演算手段とを備えることを特徴とする、測定対象物質の体液中濃度の測定装置に存する(請求項12)。
【0023】
このとき、前記のスペクトル測定手段が、前記の赤外線源以外の光を遮光する遮光手段を備えることが好ましい(請求項13)。
【0024】
本発明の別の要旨は、前記請求項1〜8に記載の演算装置で得られる濃度相関関数、請求項11に記載の濃度相関関数を導出する方法で導出される濃度相関関数、若しくは請求項12に記載のプログラムを用いて演算される濃度相関数に基づいて、前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置であって、生体又は生体から取り出した体液に照射した赤外線の赤外線吸収スペクトルを読み込むスペクトル読込手段と、該スペクトル読込手段が読み込んだ赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報に、前記濃度相関関数を適応して、測定対象物質の体液中濃度を演算する体液中濃度演算手段とを備えることを特徴とする、測定対象物質の体液中濃度の測定装置に存する(請求項14)。
【0025】
このとき、前記の測定対象物質が、グルコース、コレステロール、中性脂肪又はHbA1cであることが好ましい(請求項15)。
【0026】
また、前記の体液中濃度演算手段における演算が、非線形的手法による演算であることが好ましい(請求項16)。
【0027】
また、前記の赤外線強度情報が、前記の生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度値を微分処理した値であることが好ましい(請求項17)。
【発明の効果】
【0028】
本発明の演算装置によれば、濃度相関関数を演算でき、この濃度相関関数を用いれば、例えば血液のように、体液中に多数の物質が混合した雑協な環境下であっても、高い測定精度で体液中の成分量を測定することができる。
【0029】
また、上記の濃度相関関数によれば、測定した赤外線強度の解析方法において、個々の波長のデータの影響度とは関係なく、高い測定精度が得られる波長の組み合わせを選択することで、より高い測定精度を得ることができる。
【0030】
さらに、上記の濃度相関関数によれば、測定対象物質固有の赤外線吸収特性に依存した測定を行なわないため、多くの物質を測定対象物質とすることができる。従って、例えば血糖値(グルコースの値)の様に、従来から測定がされている測定対象物質以外にも適用することができる。
【0031】
さらには、採血法に代表されるように、体液に対する臨床検査薬を用いた生化学的手法を用いた従来方法では、試料の採取器具、試料を採取した後の温度管理、生化学的、分子生物学的手法による試薬など、多くのコスト及び時間がかかるが、上記の濃度相関関数によれば、赤外線を照射することで直ちに測定ができるため、コスト及び時間への負荷が軽減される。
【0032】
また、本発明の測定装置によれば、非侵襲的に測定対象物質の血中濃度が測定できるため、血液感染のリスクを軽減したり、医師等の資格を有しなくても測定が可能となったり、非侵襲性によって生体への負担が低減することができ、QOL(Quality of Life)の向上が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0034】
[1.測定の対象]
本発明の演算装置や本発明の測定装置などで測定の対象となる測定対象物質、生体の種類などについて説明する。
【0035】
[1−1.測定対象物質]
測定対象物質は、血液や尿などの体液中の成分であれば制限はない。たとえば、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、GOT、GPT、γGTP、ZTT、ALP、LDH、CPK、コリンエステラーゼ、心筋型クレアチンキナーゼ、血清鉄、総ビリルビン、尿酸、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、尿素窒素、クレアチニン、葉酸、ビタミンB12、血糖、尿糖、HbA1c、フルクトサミン、総蛋白、アルブミン、グロブリン、アルブミン/グロブリン比、TSH、FSH、LSH、プロラクチン、総トリヨードサイロニン、遊離トリヨードサイロニン、遊離サイロキシン、カルジオリピン、フェリチン、PSA、ST−439、AFPレクチン分画、DUPAN2、ヒアルロン酸、PIVKA2、KL−6、HCG、CEA、CA19−9、CA125、CA15−3、GRP前駆体、IgA、IgE、IgG、IgM、ペプシノーゲン1、ペプシノーゲン2、γ−セミノプロテイン、抗SS−A抗体、抗SS−B抗体、抗インスリン抗体3、抗Sm抗体、抗ガラクトース欠損IgG抗体、セントロメア抗体、抗SCL70抗体、HA抗体、HBe抗体、HBe抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCVコア抗原、HCV,HCVコア抗体等が挙げられる。中でも、グルコース、コレステロール、中性脂肪、HbA1cが好ましい。一般に血中濃度が高く測定が容易であるためである。また、生体に与える影響も大きく、生体の生理的な変化に応答して値が変動するため、医学的な要請も高いためである。
【0036】
[1−2.生体]
測定対象となる生体は、血液や尿などの体液を有していれば制限はなく、あらゆる生物種に適用することができる。具体的には、ヒト、サルの他、ペットや家畜として代表的なイヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ等の哺乳類、ニワトリ等の鳥類等が挙げられる。中でも、ヒトが好ましい。
【0037】
[2.本発明の演算装置]
本発明の演算装置は、体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強情報との相関を規定する濃度相関関数を演算する演算装置である。
【0038】
[2−1.第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態としての演算装置100の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、演算装置100は、赤外線吸収スペクトル取得装置1(スペクトル取得手段)、実測濃度取得装置2(実測濃度取得手段)、データ処理を行うデータ処理部3、および濃度相関関数を出力するデータ出力装置4を備えて構成されている。データ処理部3は、コンピュータの内部で演算処理される機能部位であり、各機能は個別のプログラムとして構成されている。なお、本実施形態におけるデータ処理部3は、波長選択部3a(波長選択手段)、濃度測定用関数演算部3b(濃度測定用関数演算手段)、相関係数演算部3c(相関係数演算手段)、濃度相関関数抽出部3d(濃度相関関数抽出手段)の4種類の手段として機能するものである。
【0039】
また図2は、コンピュータを利用した、演算装置100のハードウェア構成例を示した図である。このコンピュータは、赤外線吸収スペクトル取得装置1、実測濃度取得装置2、中央演算処理装置5(CPU)、記憶装置6(ROM、RAM等)、表示装置7(ディスプレイ等)、入力インターフェース8(キーボード、マウス等)、データ出力装置4を備えて構成されている。ここで、演算装置100のデータ処理部3は、記憶装置5の内部に記憶されたプログラムが中央演算処理装置5により読み込まれ、そのプログラムに従って演算を行なう中央演算処理装置5が、その機能を発揮する。
【0040】
以下、本発明の演算装置の第1の実施形態におけるデータ処理内容について、概念的に説明する。なお、本発明の演算装置は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0041】
[2−1−1.赤外線吸収スペクトル取得装置]
赤外線吸収スペクトル取得装置1は、生体の表面又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して、反射した赤外線の強度(以下、「赤外線強度」ということがある。)を測定することで、生体又は生体から取り出した体液の赤外線の吸光度を測定する装置である。
生体の表面又は生体から取り出した体液に照射する赤外線は、通常、その波長を連続的若しくは段階的に変化させたものである。これにより、照射する赤外線の波長と、該波長における吸光度との赤外線吸収スペクトルを得ることができる。
【0042】
照射する赤外線の波長の範囲は、測定対象物質、生物種、生体に照射するか又は生体から取り出した体液に照射するか、生体の照射する部位等によっても異なるが、通常500nm以上、好ましくは1000nm以上、また、通常3000nm以下、好ましくは2500nm以下である。
【0043】
赤外線吸収スペクトル取得装置1の構成の一例としては、赤外線源(図示せず)と、反射した赤外線を感受するセンサ(図示せず)を備える構成が挙げられる。また、赤外線源等を制御する手段を設けていてもよい。また、本発明の演算装置が、図2に示される構成を有する場合には、演算装置100の中央演算処理装置3によって赤外線源等を制御してもよい。
【0044】
生体の表面に赤外線を照射する場合、その場所に制限はないが、表面の色素が少ない箇所、皮膚が薄い箇所、毛細血管が表皮付近に集中している部分等が好ましい。具体的には、指、手のひら、足の裏、腕、耳等が好ましい。
【0045】
赤外線吸収スペクトル取得装置1は、赤外線吸収スペクトルを演算装置100が取得できれば制限はない。
従って、演算装置100は、上記の赤外線源等の赤外線吸収スペクトルを測定できる構成を備えていてもよいし、演算装置100の外部に赤外線吸収スペクトルを測定できる装置を設けて、その外部装置(図示せず)からデータを取得する構成を備えるものであってもよい。
【0046】
ここで、外部装置からデータを取得する構成は、演算装置100が該外部装置からデータ(ここでは赤外線吸収スペクトル)を取得できる構成であれば制限はない。例えば、演算装置100と該外部装置とを電気的に直接接続するインターフェースを設けてデータを送受信したり、演算装置100と該外部装置とを無線通信で接続するインターフェースを設けてデータを送受信したり、演算装置100と該外部装置とにそれぞれ脱着可能な記憶装置5を介してデータを受け渡したり、該外部装置に表示部(ディスプレイやプリンタ等)を設け、演算装置100の入力インターフェース8等からデータを入力する等の構成が挙げられる。
以下、これらの外部装置からデータを取得するための構成を「入力インターフェース機構」と総称する。
【0047】
(サンプル数)
演算装置100においては、サンプル数の多い方が精度の高い濃度相関関数が得られるため好ましい。具体的には、後述する波長選択部3aが選択する波長の点数の、通常3倍以上、好ましくは5倍以上のサンプル数を用いることが好ましい。また、サンプル数が多すぎても、得られる濃度相関関数の精度に割に演算負荷が高まるため、通常10倍以下である。
【0048】
[2−1−2.実測濃度取得装置]
実測濃度取得装置2は、赤外線吸収スペクトルを取得した生体における、体液中の測定対象物質の実測濃度(以下、「実測体液中濃度」ということがある。)を読み取る装置である。
【0049】
実測体液中濃度を測定する方法に制限はなく、公知の何れの方法を用いることが出来る。ただし、ここで得られた実測体液中濃度を真値としてキャリブレーションを行なうため、可能な限り正確に測定できる方法が好ましい。従って、臨床検査で確立している手法を用いることが好ましく、具体例としては、例えば血液中の測定対象物質の濃度を測定する場合には、採血法を用いて測定することが好ましい。
【0050】
実測濃度取得装置2は、実測体液中濃度を演算装置100が取得できれば制限はない。
従って、演算装置100は、実測体液中濃度を測定できる構成を備えていてもよいし、演算装置100の外部に実測体液中濃度を測定できる装置を設けて、その外部装置からデータを取得する入力インターフェース機構を備えるものであってもよい。
【0051】
なお、演算装置100においては、上述したように実測体液中濃度を真値として扱う。従って、赤外線スペクトル取得装置1で赤外線吸収スペクトルを測定したサンプルのうち、少なくとも濃度測定用関数を演算するのに用いるサンプルについては、実測体液中濃度度を取得する。
【0052】
[2−1−3.データ処理部]
データ処理部3は、図1に示すように、波長選択部3a(波長選択手段)、濃度測定用関数演算部3b(濃度測定用関数演算手段)、相関係数演算部3c(相関係数演算手段)、及び濃度相関関数抽出部3d(濃度相関関数抽出手段)を備えて構成される。
【0053】
[2−1−3−1.波長選択部]
波長選択部3aは、赤外線吸収スペクトル取得装置1で得られた赤外線吸収スペクトルから、濃度測定用関数を演算するのに用いる、部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する機能部である。演算装置100は、この波長選択部3aで選択された波長における赤外線スペクトルの赤外線強度情報を用いて濃度測定用関数を演算するようになっている。
【0054】
選択される波長に制限はない。従来は、測定対象物質が有する置換基等の吸光度が特に高い波長などを選択していたが、本発明においてはその波長に限定されるものではなく、任意の組合せを選択することができる。
【0055】
選択される波長の数に制限はないが、波長の数が多いほど相関係数の高い濃度相関関数が得られるため好ましく、通常8点以上、好ましくは12点以上、より好ましくは14点以上、さらに好ましくは16点以上である。また、あまり点数を増やしても、演算の負荷が高まる割に相関係数が向上しないため、通常100点以下、好ましくは50点以下、より好ましくは30点以下、さらに好ましくは20点以下である。
【0056】
部分的且つ複数の赤外線波長の選択は、赤外線吸収スペクトル取得装置1で得られた赤外線吸収スペクトルの波長を任意の数(以下、これを「波長分割数」という。)で分割し、そこから選択する。
波長分割数は、選択される赤外線波長の点数の通常10倍以上、好ましくは50倍以上、さらに好ましくは100倍以上、また、通常1000倍以下、好ましくは500倍以下の分割数が好ましい。波長分割数がこれを下回ると、精度が下がる可能性がある。また、波長分割数がこれを上回ると、計算負荷が高くなる可能性がある。
【0057】
赤外線吸収スペクトルには、測定時の誤差やノイズが含まれることが多い。これらの誤差やノイズを丸める(除外する)ために、赤外線吸収スペクトルの波長を波長分割数で分割する時に、波長分割数の数倍の分割数でまず分割し、それに平均化処理を行なって、波長分割数に分割することが好ましい。
【0058】
平均化処理について具体例を用いて説明する。ここでは、平均化処理にあたり、赤外線吸収スペクトル取得装置1で得られた赤外線吸収スペクトルを、所定の波長分割数のK倍の値で分割する場合を例にする。ここでKは自然数とする。
【0059】
まず、波長分割数のK倍の分割数で分割された赤外線吸収スペクトルの波長を、波長の長さの序順に従ってK点ずつのグループに分ける。そして、各グループに属する赤外線波長における吸光度の平均値を算出し、その平均値を該グループを構成する赤外線波長の範囲における吸光度として定める。このようにして、赤外線吸収スペクトルに平均化処理がなされるようになっている。
この平均化処理によって、所定の波長分割数で分割したときに、測定時の誤差やノイズが丸められた(除外された)赤外線吸収スペクトルを得ることができる。
【0060】
平均化処理をするときは、波長分割数の通常10倍以上、好ましくは50倍以上、さらに好ましく100倍以上、また、通常1000倍以下、好ましくは500倍以下の分割数で赤外線波長の分割を行なう。
【0061】
なお、赤外線吸収スペクトルは、通常、連続的若しくは段階的な波長の変化に対する反射した赤外線強度を測定したものである。この波長の連続性は、照射した赤外線の分解能や、赤外線吸収スペクトル取得装置1の分解能に依存する。
ここで、得られた赤外線吸収スペクトルが段階的な波長の変化に対するものであった場合、赤外線吸収スペクトルの波長の波長分割数は、該段階の数を最大として、該段階の数の約数であることが好ましい。
【0062】
[2−1−3−2.濃度測定用関数演算部]
濃度測定用関数演算部3bは、波長選択部3aで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る機能部である。
【0063】
ここで赤外線強度情報とは、波長選択部3aで選択した組合せの各赤外波長における赤外線の強度を表わす指標値である。具体的には、当該赤外線の強度の値そのものでもよいし、赤外線の強度の値を微分した値でもよい。微分の回数には制限はなく、1回微分値でもよいし、2回微分値でもよいし、それ以上の微分回数の微分値でもよい。赤外線の強度の値そのものを用いるより、微分値を用いた方が濃度相関関数の精度が高くなる傾向があるので好ましい。
【0064】
濃度測定用関数とは、波長選択部3aで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、実測濃度取得手段で取得した実測濃度(実測体液中濃度)との相関関数である。濃度測定用関数の導出の方法としては、線形的手法、非線形的手法等が挙げられる。中でも、非線形的手法を用いることが好ましい。高い精度の濃度相関関数が得られるためである。
【0065】
濃度相関関数の演算は、波長選択部3aで選択された波長全てにおいて演算して濃度測定用関数の群を得てもよいし、波長選択部3aで選択された波長の一部(1つ又は2つ以上の波長)について濃度測定用関数の群を得てもよい。後者の場合、得られた濃度測定用関数の群につき、後述する濃度相関関数の抽出を行ない、濃度相関関数が得られなかった場合には、残りの組合せについて再度濃度測定用関数を求めればよい。
【0066】
(線形的手法の例)
濃度測定用関数の導出方法の一例として、線形的手法の演算のひとつである下記式(1)で定められる濃度相関関数を演算する方法を具体的に説明する。
【0067】
【数1】

(上記式において、Yは濃度測定用関数により求められる測定対象物質の体液中濃度の演算濃度;kは波長選択手段で選択した赤外線波長の点数;Xはスペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの、波長選択手段で選択した各波長における赤外線強度情報;bは定数項;bは係数である。)
【0068】
以下、赤外線吸収スペクトル取得装置1及び実測濃度取得装置2で取得したサンプル数をm個、波長選択手段で選択した赤外線波長の点数をk点とした場合を例に説明する。
この場合、波長選択部3aで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報を各々Xnj(但し、1≦n≦m、1≦j≦k、n,jは整数)、これらの各赤外線強度情報に対応する測定対象物質の演算体液中濃度を各々Y(但し、1≦n≦m、nは整数)と表わすことができる。
このとき、濃度測定用関数を演算することとは、m個のサンプル全てにおいて上記式(1)を満たすb(但し、0≦j≦k、jは整数)を求めることであり、則ち、m種類の下記式(2)の全てを満たすb(但し、0≦j≦k、jは整数)を求めることである。
【数2】

【0069】
上記式(2)におけるbを求める方法について説明する。上記式(2)において、目的変数が赤外線強度情報(Y)であり、説明変数が演算体液中濃度(Xnj)であるので、m個のサンプルにおける具体的な式(2)を示すと、下記表1のようになる。
【表1】

【0070】
上記の表1に記載の各サンプルに式(2)を適用させた式について、その両辺をそれぞれ足しあわせると、以下の式(3)が導出される。
【数3】

【0071】
また、上記の表1に記載の説明変数及び目的変数の各要素をXn1倍し、得られたm個のサンプルにおける具体的な式(2)について、その両辺をそれぞれ足しあわせると、以下の式(4)が導出される。
【数4】

【0072】
同様にして、上記の表1に記載の説明変数及び目的変数の各要素をXnk倍し、得られたm個のサンプルにおける具体的な式(2)について、その両辺をそれぞれ足しあわせると、以下の式(5)の群が導出される。
【数5】

【0073】
ここで、上記式(5)におけるb(b〜bの各値)は、下記式(6)の行列式を解くことにより得られる。
【数6】

【0074】
得られたb(b〜bの各値)を、上記の式(1)に代入することにより濃度測定用関数を演算することができる。
【0075】
(非線形的手法の例)
濃度測定用関数の導出方法の他の一例として、非線形的手法を用いた下記式(7)又は下記式(8)で定められる濃度相関関数を演算する方法が挙げられる。この場合、上記式(1)の代わりに下記式(7)又は下記式(8)を用いる以外は、上述した線形的手法の例と同様の操作で濃度相関関数を求めることができる。
【0076】
【数7】

(上記式(7)において、Yは濃度測定用関数により求められる測定対象物質の体液中濃度の演算濃度;kは波長選択手段で選択した赤外線波長の点数;zは赤外線波長;xは赤外線強度情報;ajj,b,c,eはフィッティングパラメータを示す。)
【0077】
【数8】

(上記式(8)において、Yは濃度測定用関数により求められる測定対象物質の体液中濃度の演算濃度;kは波長選択手段で選択した赤外線波長の点数;zは赤外線波長;zはzとは異なる赤外線波長;xは赤外線強度情報;aij、b、c及びeiはフィッティングパラメータを示す。)
【0078】
[2−1−3−3.相関係数演算部]
相関係数演算部3cは、赤外線吸収スペクトル取得装置1で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、濃度測定用関数演算部3bで得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度(演算体液中濃度)と、実測濃度取得装置2で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度(実測体液中濃度)との各相関係数を演算する機能部である。
【0079】
演算濃度とは、濃度測定用関数演算部3bで得られた濃度測定用関数に、サンプル毎の赤外線強度情報を代入して得られた、測定対象物質の体液中濃度である。従って、濃度測定用関数に代入される赤外線強度情報は、濃度測定用関数を演算するのに用いた赤外線波長の組合せにおける赤外線強度情報となる。
【0080】
相関係数は、波長選択部3aで選択された赤外線波長の組み合わせ毎に演算される濃度測定用関数毎に演算されるようになっている。
【0081】
相関係数は、演算体液中濃度と実測体液中濃度との相関を示す統計外的指標であり、その算出方法は本発明の効果を著しく損なわない限り制限はない。例えば、ピアソンの積率相関係数を用いることが好ましい。真値との偏差が正規分布と推定されるためである。
【0082】
(ピアソンの積率相関係数)
本発明に係る相関係数として、ピアソンの積率相関係数を用いる場合には、ピアソンの積率相関係数の式(下記式(9))を用いることで演算することができる。
【数9】

(上記式中、ρは相関係数、mはサンプルの数をそれぞれ表わす。また、m個のサンプルを任意の順序でナンバリングしたときに、Yはn個目のサンプルにおける演算体液中濃度、Y’はn個目のサンプルにおける実測体液中濃度をそれぞれ表わす。)
【0083】
[2−1−3−4.濃度相関関数抽出部]
濃度相関関数抽出部3dとは、濃度測定用関数演算部3bが演算した濃度測定用関数の群から、相関係数演算部3cが得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する機能部である。
【0084】
濃度相関関数は、相関係数が閾値以上の濃度測定用関数であればよく、1つのサンプルの母集団から得られる濃度相関は、1つとは限らず複数得られる場合がある。また、波長選択部3aが選択した赤外線波長の組合せによって得られた濃度測定用関数の中から、濃度相関関数を抽出できなかった場合には、該波長選択部3aによって別の波長の組み合せを選択し、再度濃度相関関数の抽出を試みればよい。
【0085】
閾値とは、演算装置100によって得られる濃度相関関数が有する相関係数として求められる値のことであり、閾値を高く設定するほど高い精度の濃度相関関数が得られる。一般に相関係数は高い方が好ましいが、あまり高く閾値を設定すると、濃度相関関数が得られない可能性もある。具体的には産業上の要求に対応できる精度であればよく、例えば医療機器として用いる場合で、相関係数としてピアソンの積率相関係数を用いた場合、通常0.65以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.9以上、また、通常1以下である。
【0086】
[2−1−4.データ出力装置]
データ出力装置4は、本発明の演算装置で導出された濃度相関関数を出力する装置である。
濃度相関関数の出力方法に制限はなく、公知の何れの方法で行なうことができる。例えば、演算装置100が演算装置100以外の外部装置と電気的に直接接続するためのインターフェースを設けて電磁的なデータを送受信したり、演算装置100が該外部装置と無線通信で接続するためのインターフェースを設けて電磁的なデータを送受信したり、演算装置100と該外部装置とにそれぞれ脱着可能な記憶装置6を介して電磁的なデータを受け渡したりする等の構成が挙げられる。また、演算装置100に表示部(ディスプレイやプリンタ等)を設け、可視的に表示や印刷等をして出力する構成であってもよく、ここでいう表示部は表示装置7を用いてもよい。この場合、表示装置7とデータ出力装置4とを一体とし、1つの装置で両方の機能をまかなわせることができる。
ただし本発明の測定装置にデータを送る場合には、電磁的な方法が好ましい。
以下、これらの外部装置へデータを出力するための構成を「出力インターフェース機構」と総称する。
【0087】
出力するデータは、濃度相関関数であればよいが、他の情報を含んでいてもよい。例えば、濃度相関関数に代入すべき赤外線強度情報の赤外線波長、サンプル数、サンプルの母集団の性質(生物種、性別、年齢、生体における測定部位等)、生体又は生体から取り出した体液に照射した赤外線の出力強度、日時等が挙げられる。
【0088】
[2−1−5.フローチャート]
図3に示すフローチャートを用いて、本発明の第1の実施の形態における演算装置100の動作内容を説明する。
【0089】
まず、ステップA10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)では、赤外線吸収スペクトル取得装置1によって、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルを取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、データ処理部3に入力される。
【0090】
一方で、ステップA20(実測濃度取得ステップ)では、実測濃度取得装置2によって、赤外線吸収スペクトルを取得した生体又は生体から取り出した体液における、体液中の測定対象物質の実測濃度(実測体液中濃度)を取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、データ処理部3に入力される。
【0091】
なお、このステップA10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)とステップA20(実測濃度取得ステップ)とは、何れのステップを先に行なってもよいし、同時に行なってもよい。
【0092】
ステップA30(波長選択ステップ)では、ステップA10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で得られた赤外線吸収スペクトルから、濃度測定用関数を演算するのに用いる、部分的且つ複数の赤外線波長の組み合せを選択するステップである。
【0093】
ステップA30(波長選択ステップ)で選択される赤外線波長の組み合わせの数は、組み合わせうる全ての組み合わせの数であってもよいし、そのうちの一部であってもよい。組み合わせの選択の順序は、無作為選択であってもよいし、予め定められた序順や規則に従って選択されてもよい。
【0094】
なお、ステップA30(波長選択ステップ)が、後述するステップA60(濃度相関関数抽出ステップ)の後に実行される場合には、これまでにステップA30(波長選択ステップ)によって選ばれた赤外線波長の組み合わせ以外の波長の組み合わせ(残された組み合わせ)が選択される(ステップA65)。残された組み合わせが無い場合には、濃度相関関数は得られなかったものとして演算装置100の処理は終了する。なお、このとき音声装置(図2には図示せず)や表示装置7によって、濃度相関関数が得られなかった旨の警告を出してもよい。
ステップA30(波長選択ステップ)が完了すると、ステップA40(濃度測定用関数演算ステップ)に進む。
【0095】
ステップA40(濃度測定用関数演算ステップ)では、ステップA30(波長選択ステップ)で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、ステップA20(実測濃度取得ステップ)で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、ステップA30(波長選択ステップ)で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る。なお、ステップA30(波長選択ステップ)で赤外線波長を1組だけ選択した場合、このステップで演算される濃度測定用関数は1つであるが、この場合も含めて「濃度測定用関数の群」と呼ぶ。
ステップA40(濃度測定用関数演算ステップ)が完了すると、ステップA50(相関係数演算ステップ)に進む。
【0096】
ステップA50(相関係数演算ステップ)では、ステップA10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、ステップA40(濃度測定用関数演算ステップ)で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度(演算体液中濃度)と、ステップA20(実測濃度取得ステップ)で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度(実測体液中濃度)との各相関係数を演算する。
ステップA50(相関係数演算ステップ)が完了すると、ステップA60(濃度相関関数抽出ステップ)に進む。
【0097】
ステップA60(濃度相関関数抽出ステップ)では、ステップA40(濃度測定用関数演算ステップ)が演算した濃度測定用関数の群から、ステップA50(相関係数演算ステップ)が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する。閾値以上の濃度測定用関数(則ち、濃度相関数)が得られれば、ステップA70(データ出力ステップ)に進む。得られなかった場合には、ステップA30(波長選択ステップ)に進む。
【0098】
ステップA70(データ出力ステップ)では、演算装置100で導出された濃度相関関数を出力する。
濃度相関関数の出力は、例えば出力インターフェース機構を介して出力することができる。出力された濃度相関係数は任意の目的に用いることができるが、例えば、濃度測定用関数に基づいて測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置に入力して用いることができる。
【0099】
一般に濃度相関関数の演算負荷は高く、ステップA30(波長選択ステップ)が組み合わせうる全ての組み合わせを選択して演算する場合、その負荷は非常に高くなる傾向にある。従って、ステップA30(波長選択ステップ)は組み合わせうる全ての組み合わせを選択するのではなく、そのうちの一部の組み合わせを選択して、順次ステップA60(濃度相関関数抽出ステップ)まで処理することが好ましい。組み合わせうる全ての組み合わせを演算することなく、濃度相関関数を得たところで処理を終了することができるためである。
【0100】
[2−2.第2の実施形態]
【0101】
第1の実施形態においては、ステップA30(波長選択ステップ)において選択する赤外線の波長の組み合わせを、濃度相関関数を得られる可能性の高い組み合わせから順に選択すると、演算処理の負荷を下げることができる。また、このとき、組み合わせうる全ての組み合わせを一度に選択するのではなく、まず、濃度相関関数を得られる可能性の高い組み合わせを選択して濃度相関関数を導出し、導出できなかった場合には、濃度相関関数を得られる可能性が次に高い組み合わせを選択して、順次濃度相関関数の導出を試みた方が、演算装置100の負荷を下げることができる。
【0102】
本発明の第2の実施形態は、上記の利点を得られるように、ステップA30(波長選択ステップ)が選択する赤外線の波長に一定の序順を設ける実施形態である。
【0103】
図4は本発明の第2の実施の形態の演算装置101の全体構成を示すブロック図である。図4に示すように、演算装置101は、第1の実施形態の演算装置100に加えて、第二赤外線吸収スペクトル取得装置11(第二のスペクトル取得手段)、第二実測濃度取得装置12(第二の実測濃度取得手段)、及びデータ処理を行なう第二データ処理部13を備えて構成されている。第二データ処理部13は、コンピュータ内部で演算処理される機能部位であり、各機能は個別のプログラムとして構成されている。なお、本実施形態における第二データ処理部13は、第二波長選択部13a(第二の波長選択手段)、第二濃度測定用関数演算部13b(第二の濃度測定用関数演算手段)、第二相関係数演算部13c(第二の相関係数演算手段)、第二濃度相関関数抽出部13d(第二の濃度相関関数抽出手段)の4種類の手段として機能するものである。また、図4において、第1の実施形態と同様の装置及び手段は、同じ符合を用いて表現している。
【0104】
また、図5はコンピュータを利用した、演算装置101のハードウェアの構成例を示した図である。本発明の演算装置は、同様の作用を有する装置は共通の装置を用いる構成を有していてもよい。図5は、このような構成を示す一例である。
【0105】
このコンピュータは、赤外線吸収スペクトル取得装置14、実測濃度取得装置15、中央演算処理装置5(CPU)、記憶装置6(ROM、RAM等)、表示装置7(ディスプレイ等)、入力インターフェース8(キーボード、マウス等)、データ出力装置4を備えて構成されている。
ここで、演算装置101のデータ処理部3(波長選択手段、濃度測定用関数演算手段、相関係数演算手段、濃度相関関数抽出手段)及び第二データ処理部13(第二の波長選択手段、第二の濃度測定用関数演算手段、第二の相関係数演算手段、第二の濃度相関関数抽出手段)は、記憶装置6の内部に記憶されたプログラムが中央演算処理装置5に読み込まれ、このプログラムに従って演算を行なう中央演算処理装置5が、その機能を発揮する。
【0106】
図5に示される赤外線吸収スペクトル取得装置14は、赤外線吸収スペクトル取得手段と第二の赤外線吸収スペクトル取得手段として機能する装置である。また、図5に示される実測濃度取得装置15は、実測濃度取得手段と第二の実測濃度取得手段として機能する装置である。
【0107】
ただし演算装置101では、各手段を実現する構成を各々異なるハードウェアで実現してもよい。例えば、データ処理部3と第二データ処理部13とで異なるCPUを用いたり、赤外線吸収スペクトル取得手段と第二の赤外線吸収スペクトル取得手段とで異なる赤外線吸収スペクトル取得装置を設けたり、実測濃度取得手段と第二の実測濃度取得手段とで異なる実測濃度取得装置を設けることなどが挙げられる。
【0108】
以下、演算装置101のデータ処理内容について、概念的に説明する。なお、本発明の演算装置は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0109】
[2−2−1.赤外線吸収スペクトル取得装置]
赤外線吸収スペクトル取得装置14の構成は、第1の実施形態における赤外線吸収スペクトル装置と同様の構成とすることができる。
【0110】
また、例えば、第1の実施形態と同様の構成の赤外線吸収スペクトル取得装置14を設け、それを赤外線吸収スペクトル取得手段として機能させ、該赤外線吸収スペクトル取得手段が取得した赤外線吸収スペクトルを記憶装置6等に記憶させ、第二の赤外線吸収スペクトル取得手段が該記憶された赤外線吸収スペクトルを取得する構成にしてもよい。
【0111】
赤外線吸収スペクトル取得手段及び第二の赤外線吸収スペクトル取得手段で得られた赤外線吸収スペクトルは、それぞれ後述するデータ処理部3及び第二データ処理部13における濃度相関関数の演算に用いられるようになっている。
【0112】
(サンプル数)
演算装置101においては、サンプル数の多い方が精度の高い濃度相関か数が得られるため好ましい。サンプル数の好ましい範囲の具体的な値は第1の実施形態と同様である。
【0113】
[2−2−2.実測濃度取得装置]
実測濃度取得装置15の構成は、第1の実施形態における赤実測濃度装置と同様の構成とすることができる。
【0114】
また、例えば、第1の実施形態と同様の構成の実測濃度取得装置15を設け、それを実測濃度取得手段として機能させ、該実測濃度手段が取得した実測体液中濃度を記憶装置6等に記憶させ、第二の実測濃度取得手段が該記憶された実測体液中濃度を取得する構成にしてもよい。
【0115】
実測濃度取得手段及び第二の実測濃度取得手段で得られた実測体液中濃度は、それぞれ後述するデータ処理部3及び第二データ処理部13における濃度相関関数の演算に用いられるようになっている。
【0116】
[2−2−3.データ処理部]
データ処理部3は、図4に示すように、波長選択部3a(波長選択手段)、濃度測定用関数演算部3b(濃度測定用関数演算手段)、相関係数演算部3c(相関係数演算手段)、及び濃度相関関数抽出部3d(濃度相関関数抽出手段)を備えて構成される。それぞれの機能部は、第1の実施形態と同様の構成であり、同様の処理を行なうことができるようになっている。
【0117】
[2−2−4.第二データ処理部]
第二データ処理部13は、図4に示すように、第二波長選択部13a(第二の波長選択手段)、第二濃度測定用関数演算部13b(第二の濃度測定用関数演算手段)、第二相関係数演算部13c(第二の相関係数演算手段)、及び第二濃度相関関数抽出部13d(第二の濃度相関関数抽出手段)を備えて構成される。
【0118】
以下、上記の各機能部(13a〜13d)と、波長選択部3a(波長選択手段)、濃度測定用関数演算部3b(濃度測定用関数演算手段)、相関係数演算部3c(相関係数演算手段)、及び濃度相関関数抽出部3d(濃度相関関数抽出手段)との差異を中心に説明する。
【0119】
[2−2−4−1.第二波長選択部]
第二波長選択部13aは、第二の赤外線吸収スペクトル取得手段が得た赤外線吸収スペクトルから、濃度測定用関数を演算するのに用いる、部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する機能部である。演算装置101は、この第二波長選択部13aで選択された波長における赤外線スペクトルの赤外線強度情報を用いて濃度測定用関数を演算するようになっている。
【0120】
選択される波長に制限はない。波長の選択の方法は、第1の実施形態における、波長選択部3aと同様の方法で行なうことができる。
【0121】
また、第二波長選択部13aは、波長選択部3aで選ばれた赤外線波長の組み合わせのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組み合わせを構成する各赤外線波長の中から、少なくともその一部を含む赤外線波長の組み合わせから優先的に選択することが好ましい。
【0122】
具体的には、波長選択手段において、16点の赤外線波長の組合せを選択したとすると、第二の波長選択手段において、濃度相関関数抽出手段が抽出した濃度相関関数を演算するのに用いた赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、通常7点以上、好ましくは12点以上、さらに好ましくは16点以上、また、このとき、第二波長選択手段が選択する赤外線波長の点数の総数は、上記の波長点数を含めて、通常8点以上、好ましくは14点以上、さらに好ましくは16点以上、また、通常30点以下、好ましくは20点以下である。この範囲を下回ると、精度が下がる可能性がある。また、この範囲を上回ると、計算負荷が高くなる傾向がある。
【0123】
[2−2−4−2.第二濃度測定用関数演算部]
第二濃度測定用関数演算部13bは、第二波長選択部13aで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、第二実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、第二波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る機能部である。
【0124】
第二濃度測定用関数演算部13bにおける、濃度測定用関数の演算の方法は、第1の実施形態における、濃度測定用関数演算部3bと同様の方法で行なうことができる。
【0125】
[2−2−4−3.第二相関係数演算部]
第二相関係数演算部13cは、第二の赤外線吸収スペクトル取得手段が読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、第二濃度測定用関数演算部13bで得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度(演算体液中濃度)と、第二の実測濃度取得手段が読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度(実測体液中濃度)との各相関係数を演算する機能部である。
【0126】
第二相関係数演算部13cにおける、相関係数の演算の方法は、第1の実施形態における、相関係数演算部3cと同様の方法で行なうことができる。
【0127】
[2−2−4−4.第二濃度相関関数抽出部]
第二濃度相関関数抽出部13dとは、第二濃度測定用関数演算部13bが演算した濃度測定用関数の群から、第二相関係数演算部13cが得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する機能部である。
【0128】
第二濃度相関関数抽出部13dにおける、濃度相関関数の抽出の方法は、第1の実施形態における、濃度相関関数抽出部3dと同様の方法で行なうことができる。
【0129】
なお、閾値の範囲に制限はなく、第1の実施形態における好適な範囲と同様である。
【0130】
[2−2−5.データ出力装置]
データ出力装置4は、演算装置101において、第二濃度相関関数抽出部13dで導出された濃度相関関数を出力する装置である。
濃度相関関数の出力方法に制限はなく、公知の何れの方法で行なうことができ、例えば、第1実施形態で例示したような出力インターフェース構造を備えることが挙げられる。
ただし本発明の測定装置にデータを送る場合には、電磁的な方法が好ましい。
【0131】
[2−2−6.フローチャート]
図6に示すフローチャートを用いて、本発明の第2の実施の形態における演算装置101の動作内容を説明する。
【0132】
まず、ステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)では、赤外線吸収スペクトル取得装置14によって、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルを取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、データ処理部3に入力される。なお、赤外線を照射する対象、照射部位などは、後述するステップB70(第二の赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で赤外線を照射する対象、照射部位等と同じとする。
【0133】
また、後述するステップB70(第二の赤外線吸収スペクトル取得ステップ)が、ステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)が取得した赤外線吸収スペクトルのデータをそのまま取得する場合は、例えば記憶装置6等に赤外線吸収スペクトルのデータを記憶させてもよい。
【0134】
一方、ステップB20(実測濃度取得ステップ)は、実測濃度取得装置15によって、赤外線吸収スペクトルを取得した生体又は生体から取り出した体液における、体液中の測定対象物質の実測濃度(実測体液中濃度)を取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、データ処理部3に入力される。
【0135】
また、後述するステップB80(第二の実測濃度取得ステップ)が、ステップB20(実測濃度取得ステップ)が取得した実測体液中濃度のデータをそのまま取得する場合は、例えば記憶装置6等に実測体液中濃度のデータを記憶させてもよい。
【0136】
このステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)とステップB20(実測濃度取得ステップ)とは、何れのステップを先に行なってもよいし、同時に行なってもよい。
【0137】
ステップB30(波長選択ステップ)では、ステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で得られた赤外線吸収スペクトルから、濃度測定用関数を演算するのに用いる、部分的且つ複数の赤外線波長の組み合せを選択する。
【0138】
ステップB30(波長選択ステップ)で選択される赤外線波長の組み合わせの数は、組み合わせうる全ての組み合わせの数であってもよいし、そのうちの一部であってもよい。組み合わせの選択の順序は、無作為選択であってもよいし、予め定められた序順や規則に従って選択されてもよい。
【0139】
なお、ステップB30(波長選択ステップ)が、後述するステップB60(濃度相関関数抽出ステップ)の後に実行される場合には、これまでにステップB30(波長選択ステップ)によって選ばれた赤外線波長の組み合わせ以外の波長の組み合わせ(残された組み合わせ)が選択される(ステップB65)。残された組み合わせが無い場合には、濃度相関関数は得られなかったものとして演算装置101の処理は終了する。なお、このとき音声装置(図5には図示せず)や表示装置7によって、濃度相関関数が得られなかった旨の警告を出してもよい。
ステップB30(波長選択ステップ)が完了すると、ステップB40(濃度測定用関数演算ステップ)に進む。
【0140】
ステップB40(濃度測定用関数演算ステップ)では、ステップB30(波長選択ステップ)で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、ステップB20(実測濃度取得ステップ)で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、ステップB30(波長選択ステップ)で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る。なお、ステップB30(波長選択ステップ)で赤外線波長を1組だけ選択した場合、このステップで演算される濃度測定用関数は1つであるが、この場合も含めて「濃度測定用関数の群」と呼ぶ。
ステップB40(濃度測定用関数演算ステップ)が完了すると、ステップB50(相関係数演算ステップ)に進む。
【0141】
ステップB50(相関係数演算ステップ)では、ステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、ステップB30(濃度測定用関数演算ステップ)で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度(演算体液中濃度)と、ステップB20(実測濃度取得ステップ)で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度(実測体液中濃度)との各相関係数を演算する。
ステップB50(相関係数演算ステップ)が完了すると、ステップB60(濃度相関関数抽出ステップ)に進む。
【0142】
ステップB60(濃度相関関数抽出ステップ)では、ステップB40(濃度測定用関数演算ステップ)が演算した濃度測定用関数の群から、ステップB50(相関係数演算ステップ)が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する。閾値以上の濃度測定用関数(則ち、濃度相関数)が得られれば、ステップB90(第二の波長選択ステップ)に進む。得られなかった場合には、ステップB30(波長選択ステップ)に進む。
【0143】
ステップB70(第二の赤外線吸収スペクトル取得ステップ)では、生体又は生体から取り出した体液に照射して測定した赤外線吸収スペクトルを取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、第二データ処理部13に入力される。
【0144】
この赤外線吸収スペクトルは、赤外線吸収スペクトル取得装置14から入力インターフェース機構等を介して取得してもよいし、ステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)が、赤外線吸収スペクトルのデータを記憶装置6等に記憶させた場合には、該データを読み出すことで取得してもよい。
【0145】
一方、ステップB80(第二の実測濃度取得ステップ)では、赤外線吸収スペクトルを取得した生体又は生体から取り出した体液における、体液中の測定対象物質の実測濃度(実測体液中濃度)を取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、第二データ処理部13に入力される。
【0146】
この実測体液中濃度は、実測濃度取得装置15から入力インターフェース機構等を介して取得してもよいし、ステップ20(実測濃度取得ステップ)が、実測体液中濃度のデータを記憶装置6等に記憶させた場合には、該データを読み出すことで取得してもよい。
【0147】
このステップB70(第二の赤外線吸収スペクトル取得ステップ)とステップB80(第二の実測濃度取得ステップ)とは、ステップB90(第二の波長選択ステップ)より前に行なっていればいつ行なってもよく、何れのステップを先に行なってもよいし、同時に行なってもよい。
【0148】
ステップB90(第二の波長選択ステップ)では、ステップB60(第二の赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で得られた赤外線吸収スペクトルから、濃度測定用関数を演算するのに用いる、部分的且つ複数の赤外線波長の組み合せを選択する。
【0149】
ステップB90(第二の波長選択ステップ)で選択される赤外線波長の組み合わせの数は、組み合わせうる全ての組み合わせの数であってもよいし、そのうちの一部であってもよい。組み合わせの選択の順序は、無作為選択であってもよいし、予め定められた序順や規則に従って選択されてもよい。
ただし、ステップB30(波長選択ステップ)で選択される赤外線波長の組み合わせのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組み合わせ、則ち、ステップB60(濃度相関関数抽出ステップ)で抽出された濃度相関関数を演算するのに用いられた赤外線波長の組み合わせを構成する各赤外線波長の中から、少なくともその一部を含む赤外線波長の組み合わせから優先的に選択することが好ましい。
【0150】
なお、ステップB90(第二の波長選択ステップ)が、後述するステップB120(第二の濃度相関関数抽出ステップ)の後に実行される場合には、これまでにステップB60(第二の波長選択ステップ)によって選ばれた赤外線波長の組み合わせ以外の波長の組み合わせ(残された組み合わせ)が選択される(ステップB125)。残された組み合わせが無い場合には、濃度相関関数は得られなかったものとして演算装置101の処理は終了する。なお、このとき音声装置(図5には図示せず)や表示装置7によって、濃度相関関数が得られなかった旨の警告を出してもよい。
ステップB90(第二の波長選択ステップ)が完了すると、ステップB100(第二の濃度測定用関数演算ステップ)に進む。
【0151】
ステップB100(第二の濃度測定用関数演算ステップ)では、ステップB90(第二の波長選択ステップ)で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、ステップB70(第二の実測濃度取得ステップ)で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、ステップB90(第二の波長選択ステップ)で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る。なお、ステップB90(第二の波長選択ステップ)で赤外線波長を1組だけ選択した場合、このステップで演算される濃度測定用関数は1つであるが、この場合も含めて「濃度測定用関数の群」と呼ぶ。
ステップB100(第二の濃度測定用関数演算ステップ)が完了すると、ステップB110(第二の相関係数演算ステップ)に進む。
【0152】
ステップB110(第二の相関係数演算ステップ)では、ステップB70(第二の赤外線スペクトル取得ステップ)で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、ステップB90(第二の濃度測定用関数演算ステップ)で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度(演算体液中濃度)と、ステップB80(第二の実測濃度取得ステップ)で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度(実測体液中濃度)との各相関係数を演算する。
ステップB110(第二の相関係数演算ステップ)が完了すると、ステップB120(第二の濃度相関関数抽出ステップ)に進む。
【0153】
ステップB120(第二の濃度相関関数抽出ステップ)では、ステップB100(第二の濃度測定用関数演算ステップ)が演算した濃度測定用関数の群から、ステップB110(第二の相関係数演算手段)が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する。閾値以上の濃度測定用関数(則ち、濃度相関数)が得られれば、ステップB130(データ出力ステップ)に進む。得られなかった場合には、ステップB90(第二の波長選択ステップ)に進む。
【0154】
ステップB130(データ出力ステップ)では、ステップB120(第二の濃度相関関数抽出手段)で抽出された濃度相関関数を出力する。
濃度相関関数の出力は、例えば出力インターフェース機構を介して出力することができる。出力された濃度相関係数は任意の目的に用いることができるが、例えば、濃度測定用関数に基づいて測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置に入力して用いることができる。
【0155】
一般に濃度相関関数の演算負荷は高く、ステップB30(波長選択ステップ)やステップB90(第二の波長選択ステップ)が組み合わせうる全ての組み合わせを選択して演算する場合、その負荷は非常に高くなる傾向にある。従って、ステップB30(波長選択ステップ)やステップB90(第二の波長選択ステップ)は組み合わせうる全ての組み合わせを選択するのではなく、そのうちの一部の組み合わせを選択して、順次ステップB60(濃度相関関数抽出ステップ)若しくはステップB120(第二の濃度相関関数抽出ステップ)まで処理することが好ましい。組み合わせうる全ての組み合わせを選択することなく、濃度相関関数を得たところで処理を終了することができるためである。
【0156】
また、ステップB10(赤外線吸収スペクトル取得ステップ)で取得される赤外線吸収スペクトルのデータ、ステップB20(実測濃度取得ステップ)で取得される実測体液中濃度のデータ、及びステップB60(濃度相関関数抽出ステップ)で抽出される濃度相関関数を予め記憶手段6等に記憶しておくことで、ステップB90(第二の波長選択ステップ)で選択される赤外線波長の点数を増減させたりして適宜濃度相関関数を演算する場合でも、該記憶されたデータを用いることで、濃度相関関数を得られる可能性の高い赤外線波長の組み合わせから順に演算することができるため、演算装置101の演算の負荷を下げることができる。
【0157】
[2−3.サンプルの母集団]
演算装置等100,101で濃度相関関数を演算するときに、測定の対象となる母集団の性質は、後述する測定装置の用途によって自由に設計できる。
例えば、測定装置100,101の用途を「特定の人種の血糖値」と定めた場合、濃度相関関数の演算には「当該人種を母集団とする血糖値に関する濃度相関関数」を導出すればよい。ここで一度特定の人種を母集団として濃度相関関数を導出した場合、当該母集団と同様の性質を有するサンプル(すなわち濃度相関関数の導出の母集団には入っていないが同じ人種のサンプル)ならば、当該濃度相関関数を用いることで、高い精度で血糖値を測定することができる。
【0158】
また、母集団の性質はなるべく詳細に定義された方が好ましい。測定精度が向上する傾向にあるためである。例えば、母集団として、特定の人種とした場合と、特定の人種の特性の性別の特定の年代とした場合には、後者の方が高い測定精度が得られる傾向にある。ただし、産業上の精度の要請を満たす限り、母集団は広くてもよい。多くの対象に用いることができる方が、スケールメリットをいかしてコストを低減することができるためである。
【0159】
母集団を特定の個人として濃度相関関数を求めた場合、その特定の個人専用の濃度相関関数を得ることで、より高い測定精度を得ることができる。この場合、例えば、データ出力装置4における濃度相関関数のデータの出力を、脱着可能な記録メディアに保存することで、本発明の測定装置を当該特定の個人用に使うことができる。
【0160】
このように、本発明の測定装置の用途に合わせて母集団を設計することで、測定精度の向上ができる。このような母集団の性質としては、人種、性別、年齢、体格、特定疾病の有無、居住地域等が挙げられる。
【0161】
[3.変形実施形態]
以上、本発明の演算装置の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変形することができる。
以下、これらの実施形態について説明する。
【0162】
演算装置100,101において、波長選択部3aが選択した全ての赤外線波長の組み合せの全てについて演算した場合、高い演算負荷がかかる。特に、波長選択部3aで選択される赤外線波長の点数が多くなるほど、その負荷は高くなる傾向にある。
【0163】
これに対して、該負荷を下げる方法として、濃度測定用関数演算部3bが濃度測定用関数を演算したら、逐次に相関係数演算部3cで該濃度測定用関数の相関係数を演算と、濃度相関関数抽出部3dによる濃度相関関数の抽出とを行ない、濃度相関関数が導出された時点で処理を終了することも考えられる。
【0164】
しかしながら、波長選択手段がランダムに選択した波長を、順次濃度相関関数の演算に用いることになるため、閾値以上の濃度測定用関数(濃度相関関数)が得られるまでの演算回数は、一定の確率に依拠することになる。
【0165】
そこで、波長選択部3aが、濃度相関関数が得られる可能性が高い赤外線波長の組み合せから順に選択することで、本発明の演算装置の負荷を下げることができる。
以下、この方法について、本発明の演算装置の変形実施形態として説明する。
【0166】
本発明の演算装置の変形実施形態は、上述の実施形態と比べて波長選択手段に特徴がある。第1の実施形態では波長選択手段に、第2の実施形態では波長選択手段に、本発明の変形実施例の波長選択手段を適用することが好ましい。
【0167】
以下、波長選択手段を中心に説明する。なお、その他の構成については、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、上述の実施形態と同一の構成を有していることが好ましい。
【0168】
まず、モデルとして、波長選択部3aにおいて、波長分割数dとし、そこからk点の赤外線波長を選択する場合について考える。
【0169】
このモデルにおいては、赤外線波長の全ての組合せについて濃度測定用関数等の演算を試みた場合、その演算回数は回となる。
選択された組合せを全て演算するとした場合、kが大きくなるほど演算負荷が高くなるが、高い相関係数を有する濃度測定用関数を得ることができる。則ち、高精度の濃度相関関数を得ることと、演算装置の負荷ととはトレードオフの関係に立つ。
【0170】
ここで、仮にこのモデルにおいて、赤外線波長の選択数を1点とすると、濃度測定用関数等の演算回数は回となる。回(則ちd回)の演算は、回の演算に比べれば負荷は低く、この傾向はkが大きいほど顕著になる。従って、1点の赤外線波長を選択する度に赤外線波長の全ての組合せについて濃度測定用関数等の演算し、選択された波長を除く残りの波長から再度1点の波長を選択して、濃度測定用関数の演算する処理をk回繰り返し、k点の赤外線波長の組合せを選択する場合には、その演算回数が
【数10】

となる。このようにして、k点の赤外線波長を選択した場合でも、演算装置の負荷が低い状態で、濃度測定用関数の相関係数を求めることができる。
【0171】
これを一般化すると、赤外線波長の選択数をh点(だたし、1≦h≦k、hは整数)としたときに、h点の赤外線波長を選択する度に濃度測定用関数等の演算し、選択された波長を除く残りの波長から再度h点の波長を選択する処理を
【数11】

繰り返せば、k点の赤外線波長を選択している場合でも、その演算回数は
【数12】

となる。このようにして、選ばれたk点の赤外線波長を用いて濃度測定用関数の相関係数を求めた場合、hがkに近づくほど相関係数は高くなる傾向にある。
従って、演算装置への負荷と、得られる相関係数とのバランスで、hの値を定めればよい。本発明の演算装置においては、相関係数が閾値以上であればよいので、hは閾値以上の相関係数が得られる点数であればよい。
【0172】
具体的に、波長選択部3aにおいて、波長分割数160とし、そこから16点の赤外線波長を選択する場合、その組合せは以下の表2のようになる。なお、hが3のとき、16の約数ではないため、3点ずつ濃度測定用関数等の演算をすると最後に1点が余る。このように余る場合には、余った点数を組み合わせとして設定する。
【表2】

【0173】
仮にhが4の時に得られる濃度相関関数の相関係数が閾値以上であるとする。このとき、波長選択部3aが、上記表2のhが4の時に選択された16点の赤外線波長の一部を少なくとも含む、赤外線波長の組み合わせを優先して選択すれば、演算装置の負荷を下げることができる。
【0174】
jの範囲は上述のように通常8点以上であるので、jが16のときhの値は、通常2以上、好ましくは3以上、また、通常10以下、好ましくは5以下である。この範囲を下回ると得られる濃度測定用関数の相関係数が低く、濃度相関関数が得づらい傾向にある。高すぎると、演算装置の負荷が高まる傾向にある。
【0175】
[4.本発明の濃度相関関数を導出する方法]
本発明の濃度相関関数を導出する方法は、測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を、コンピュータを用いて規定する濃度相関関数を導出する方法である。
【0176】
具体的には、コンピュータに、赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得ステップ;スペクトル取得ステップが読み取った赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択ステップ;体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得ステップ;波長選択ステップで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、実測濃度取得ステップで取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、波長選択ステップで選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算ステップ;スペクトル取得ステップで読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、濃度測定用関数演算ステップで得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、実測濃度取得ステップで読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を演算する相関係数演算ステップ;濃度測定用関数演算ステップが演算した濃度測定用関数の群から、相関係数演算ステップが得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出ステップ;を行なわせることで、濃度相関関数を得られる。
【0177】
上記の各ステップは、それぞれ本発明の演算装置として、コンピュータを用いた例として示した、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に行なうことができる。なお、本発明の濃度相関関数を導出する方法は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0178】
[5.本発明の濃度相関関数の演算をするプログラム]
本発明の濃度相関関数の演算をするプログラムは、体液中の測定対象物質の濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算するプログラムである。
【0179】
具体的には、コンピュータを、赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得手段;スペクトル読取手段が読み取った赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択手段;体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得手段;波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算手段;スペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を得る相関係数演算手段;濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出手段;として機能させるプログラムである。
【0180】
上記の各手段は、それぞれ本発明の演算装置として、コンピュータを用いた例として示した、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に行なうことができる。この場合、波長選択部3a、濃度測定用関数演算部3b、相関係数演算部3c、濃度相関関数抽出部3d等に例示される各機能部が個別のプログラムで構成されているが、本発明のプログラムは、それらを組み合わせから成るプログラムである。
なお、本発明のプログラムは、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0181】
[6.測定装置]
本発明の測定装置は、濃度相関関数に基づいて、測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置である。
【0182】
濃度相関関数は、本発明の演算装置、本発明の濃度相関関数を演算するプログラムを用いて導出することができる。また、本発明の濃度相関関数を導出する方法によって導出したものでもよい。
【0183】
測定対象物質は、本発明の演算装置で取り扱うことができるものであれば制限はない。中でも、グルコース、コレステロール、中性脂肪、HbA1c等が好ましい。
【0184】
[6−1.第3の実施の形態]
図7は、本発明の第3の実施の形態としての測定装置102の全体構成を示すブロック図である。図7の示すように、測定装置102は、赤外線源21、赤外線吸収スペクトル測定装置22(スペクトル測定手段)、濃度相関関数を得るデータ入力装置23、データ処理を行なうデータ処理部24、および測定対象物質の体液中濃度を出力するデータ出力装置25を備えて構成されている。データ処理部24は、コンピュータの内部で演算処理される機能部位であり、各機能は個別のプログラムとして構成されている。なお、本実施形態におけるデータ処理部24は、体液中濃度演算部24a(体液中濃度演算手段)として機能するものである。
【0185】
また図8は、コンピュータを利用した、測定装置102のハードウェア構成例を示した図である。このコンピュータは、赤外線源21、赤外線吸収スペクトル測定装置22、データ入力装置23、中央演算処理装置26(CPU)、記憶装置27(ROM、RAM等)、表示装置28(ディスプレイ等)、入力インターフェース29(キーボード、マウス等)、データ出力装置25を備えて構成されている。ここで、データ処理部24は、記憶装置27の内部に記憶されたプログラムが中央演算処理装置26に読み込まれ、このプログラムに従って演算を行なう中央演算処理装置26が、その機能を発揮する。
以下、測定装置102について、概念的に説明する。なお、本発明の測定装置は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0186】
[6−1−1.赤外線源]
赤外線源21は、測定対象物質の体液中濃度を測定する対象となる生体又は生体から取り出した体液に照射する赤外線を出力する装置である。
生体の表面又は生体から取り出した体液に照射する赤外線は、通常、その波長を連続的若しくは段階的に変化させたものである。これにより、照射する赤外線の波長と、該波長における吸光度との赤外線吸収スペクトルを得ることができる。なお、生体又は生体から取り出した体液に照射する赤外線の波長は変化させても、赤外線強度は一定であることが好ましい。
【0187】
照射する赤外線の波長の範囲は、濃度相関関数に代入する赤外線強度情報の波長が取得できればよい。具体的には、測定対象物質、生物種、生体に照射するか又は生体から取り出した体液に照射するか、生体の照射する部位等によっても異なるが、通常500nm以上、好ましくは1000nm以上、また、通常3000nm以下、好ましくは2500nm以下である。
【0188】
赤外線波長を一定の範囲で変化させながら照射するには、赤外線源21等を制御する手段を設けることが好ましい。例えば、中央演算処理装置26によって赤外線源21等を制御してもよい。
【0189】
生体に赤外線を照射する場所に制限はないが、濃度相関関数を導出する際にスペクトル取得手段や第二のスペクトル取得手段が、赤外線吸収スペクトルを取得するのに照射した場所が好ましい。
【0190】
また、赤外線源21は赤外線吸収スペクトル測定装置22で用いた赤外線源と同様の装置を用いることが好ましい。機器による公差や、波長に依存した照射される赤外線強度のぶれなどの傾向が揃うことで、測定精度が向上するためである。
【0191】
[6−1−2.実測濃度測定装置]
実測濃度測定装置は、赤外線源から生体又は生体から取り出した体液に照射された赤外線の赤外線吸収スペクトルを測定する装置である。赤外線源21から波長を変化させた赤外線を生体の表面又は生体から取り出した体液に照射して、反射した赤外線の強度(以下、「赤外線強度」ということがある。)を測定することで、生体の表面又は生体から取り出した体液の赤外線の吸光度を測定することができる。ここで得られた赤外線強度値は、データ処理部24に送られる。
【0192】
なお、スペクトル測定装置は、赤外線源21以外の光を遮光する遮光手段を備えることが好ましい。赤外線源21以外からの光源が生体又は生体から取り出した体液に照射されていると、得られる赤外線吸収スペクトルに影響を与える可能性があるためである。
【0193】
[6−1−3.データ入力装置]
データ入力装置23は、濃度相関関数を読み込む機能部である。ここでえられた濃度相関関数は、データ処理部24に入力される。
【0194】
データ入力装置23は、外部装置(例えば、第1の実施形態や第2の実施形態の演算装置;図8では図示せず。)からデータ(ここでは濃度相関関数)を得られる構成(入力インターフェース機構)を備えていればよい。
【0195】
例えば、測定装置102と該外部装置とを電気的に直接接続するインターフェースを設けてデータを送受信したり、測定装置102と該外部装置とを無線通信で接続するインターフェースを設けてデータを送受信したり、測定装置102と該外部装置とにそれぞれ脱着可能な記憶装置27を介してデータを受け渡したり、該外部装置に表示部(ディスプレイやプリンタ等)を設け、測定装置102の入力インターフェース29等からデータを入力する等の構成が挙げられる。
【0196】
[6−1−4.データ処理部]
データ処理部24は、図7に示すように、体液中濃度演算部24a(体液中濃度演算手段)を備えて構成される。
【0197】
[6−1−4−1.体液中濃度演算部]
体液中濃度演算部24aは、スペクトル測定装置が測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、前記濃度相関関数に適用して、測定対象物質の体液中濃度を演算する機能部である。
【0198】
ここで赤外線強度情報とは、スペクトル測定装置で得られた赤外線吸収スペクトルにおいて、濃度相関関数に適用される各赤外波長における赤外線強度の程度を表わす指標値である。赤外線強度情報は、赤外線強度の値そのものでもよいし、赤外線強度の値を微分した値でもよいが、濃度相関関数を導出するのに用いた形態と同様の赤外線強度情報を用いる。すなわち、濃度相関関数が赤外線強度の値そのものを用いて導出された場合には、測定装置102においても赤外線強度の値そのものを用いる。
【0199】
なお、測定装置102は、赤外線強度の値そのものを用いるより、微分値を用いた方が濃度相関関数の精度が高くなる傾向があるので好ましい。従って、測定装置102には、赤外線強度情報として赤外線強度の微分値を用いて導出された濃度相関関数を用いることが好ましい。
【0200】
濃度相関関数は、測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する関数である。この関数において、赤外線強度情報を説明変数、体液中濃度を目的変数として、測定された赤外線強度情報を濃度相関関数に代入することで、測定対象物質の体液中濃度を赤外線スペクトルから演算することができる。これにより、測定対象物質の体液中濃度(以下、「測定体液中濃度」ということがある。)の測定を、非侵襲的な方法や、臨床検査薬を用いない方法で行なうことができる。このとき、濃度相関関数は、前記の[2−1−3−2.濃度測定用関数演算部]で説明した方法と同様に求められるものであるが、このうち、非線形的手法を用いて求めたものが、精度が高く好ましい。
【0201】
[6−1−5.データ出力装置]
データ出力装置25は、測定装置102で測定された測定体液中濃度を出力する装置である。
【0202】
測定体液中濃度の出力方法に制限はなく、公知の何れの方法で行なうことができる。例えば、測定装置102に表示部(ディスプレイやプリンタ等)を設け、可視的に表示や印刷等をして出力する等の構成や、外部装置へデータ(ここでは測定体液中濃度)を出力するための構成(出力インターフェース機構)を備えていてもよい。
【0203】
出力インターフェース機構としては、例えば、測定装置102が測定装置102以外の外部装置と電気的に直接接続するためのインターフェースを設けて電磁的なデータを送受信したり、測定装置102が該外部装置と無線通信で接続するためのインターフェースを設けて電磁的なデータを送受信したり、測定装置102と該外部装置とにそれぞれ脱着可能な記憶装置27を介して電磁的なデータを受け渡したりする構成が挙げられる。
【0204】
出力するデータは、測定体液中濃度であればよいが、他の情報を含んでいてもよい。例えば、濃度相関関数、濃度相関関数に代入すべき赤外線強度情報の赤外線波長、生体又は生体から取り出した体液に照射した赤外線の出力、日時等が挙げられる。
【0205】
[6−1−6.フローチャート]
図9に示すフローチャートを用いて、本発明の第3の実施の形態における測定装置102の動作内容を説明する。
【0206】
まず、ステップC10(スペクトル測定ステップ)では、赤外線吸収スペクトル測定装置22によって、生体又は生体から取り出した体液に赤外線源21からの赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルを取得する。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、データ処理部24に入力される。
【0207】
一方、ステップC20(データ入力ステップ)では、データ入力装置23によって、本発明の演算装置等によって得られた濃度相関関数を取得する。ここで取得された濃度相関関数は、データ処理部24に入力される。
【0208】
このステップC10(スペクトル測定ステップ)とステップC20(データ入力ステップ)とは、何れのステップを先に行なってもよいし、同時に行なってもよい。
【0209】
ステップC30(体液中濃度演算ステップ)では、ステップC10(スペクトル測定ステップ)が測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、ステップC20(データ入力ステップ)で得られた濃度相関関数に適用して、測定対象物質の体液中濃度を演算する。
ステップC30(体液中濃度演算ステップ)が完了すると、ステップC40(データ出力ステップ)に進む。
【0210】
ステップC40(データ出力ステップ)では、ステップC30(体液中濃度演算ステップ)で演算された測定体液中濃度を、データ出力装置25から出力する。出力された測定体液中濃度は任意の目的に用いることができる。
【0211】
[6−2.第4の実施の形態]
本発明の第3の実施形態の測定装置102では、赤外線源21と赤外線吸収スペクトル測定装置22とを備え、赤外線吸収スペクトルを測定することができたが、該測定を外部装置に行なわせ、測定装置は赤外線吸収スペクトルのデータを取得する赤外線吸収スペクトル読込装置31(スペクトル読込手段)を備える構成とすることもできる。
【0212】
図10は第4の実施の形態の測定装置103の全体構成を示すブロック図、図11はコンピュータを利用した測定装置103のハードウェア構成例を示した図である。第3の実施の形態と同様の構成については同じ符合を付したので、第3の実施の形態と異なる部分に説明する。なお、本発明の測定装置は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0213】
測定装置103は、測定装置102と比べて、赤外線源21、赤外線吸収スペクトル測定装置22(スペクトル測定手段)の代わりに赤外線吸収スペクトル読込装置31(スペクトル読込手段)を有している。
【0214】
赤外線吸収スペクトル読込装置31は、生体又は生体から取り出した体液に照射した赤外線の赤外線吸収スペクトルを読み込む機能部であり、該赤外線吸収スペクトルを測定する機能を有する外部装置からデータ(ここでは赤外線吸収スペクトル)を得られる構成(入力インターフェース機構)を備えていればよい。
【0215】
例えば、測定装置103と該外部装置とを電気的に直接接続するインターフェースを設けてデータを送受信したり、測定装置103と該外部装置とを無線通信で接続するインターフェースを設けてデータを送受信したり、測定装置103と該外部装置とにそれぞれ脱着可能な記憶装置27を介してデータを受け渡したり、該外部装置に表示部(ディスプレイやプリンタ等)を設け、測定装置103の入力インターフェース29等からデータを入力する等の構成が挙げられる。
【0216】
また、図12は、本発明の第4の実施の形態における測定装置103の動作内容を示すフローチャートである。第3の実施の形態と同様の制御をしている部分については同じ符合を付したので、第3の実施の形態と異なる部分につき説明する。
【0217】
ステップC15(スペクトル取得ステップ)では、赤外線吸収スペクトル読込装置31によって、外部装置等によって測定された生体又は生体から取り出した体液に照射した赤外線の赤外線吸収スペクトルを読み込む。ここで取得された赤外線吸収スペクトルは、データ処理部24に入力される。
【0218】
なお、ステップC15(スペクトル取得ステップ)とステップC20(データ入力ステップ)とは、何れのステップを先に行なってもよいし、同時に行なってもよい。
【0219】
本発明の第4の実施の形態の測定装置における、測定の対象となる測定対象物質の種類や、データ処理部24における演算の手法については、本発明の第3の実施の形態の測定装置と同様である。
【実施例】
【0220】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの用途に限定することを意図したものではない。
【0221】
[実施例1]
6名の被験者(67サンプル分)に対して、赤外線分光器として日本分光製VIR−9600を用いて、右手又は左手の中指に、照射赤外線の幅8mmφの条件で波長1.0〜2.5μmの範囲で赤外線を照射し、その赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0222】
各サンプルの赤外線吸収スペクトルは、それぞれ900点の赤外線強度値の集団として測定されている。これらの赤外線強度値に対し平均化処理を行い、150点のデータに変換したあと、150点のデータを赤外線波長に対し、2回微分処理を行って、赤外線強度情報を得た。
【0223】
得られた赤外線強度情報を下記式(10)に適用して、6点の赤外線波長の組合せにおける濃度相関関数を求め、これを用いて血中のグルコースの演算濃度を測定した。
【数13】

(上記式において、Yは濃度測定用関数により求められるグルコースの血中濃度の演算濃度;Xは各赤外線波長における赤外線強度情報、bは定数項、bは係数である。)
【0224】
次に、当該被験者に対して、採血法を用いて血中のグルコースの実測濃度を測定した。
【0225】
血中のグルコースの演算濃度と、血中のグルコースの実測濃度との相関係数を求めたところ、0.742であった。図13に、血中のグルコースの演算濃度(縦軸)と、血中のグルコースの実測濃度(横軸)との関係を示す。
【0226】
[比較例1]
実施例1で用いたサンプルに対して、特開2005−323799号公報に記載の方法に従って、右手又は左手の中指に赤外線を照射して、血中のグルコースの演算濃度を測定した。
【0227】
次に、当該被験者に対して、採血法を用いて血中のグルコースの実測濃度を測定した。
【0228】
血中のグルコースの演算濃度と、血中のグルコースの実測濃度との相関係数を求めたところ、0.566であった。図14に、血中のグルコースの演算濃度(縦軸)と、血中のグルコースの実測濃度(横軸)との関係を示す。
【0229】
実施例1と比較例1とから、実施例1の方が高い相関係数が得られていることがわかる。
【0230】
[実施例2]
16名の男性被験者(54サンプル分)、及び14名の女性被験者(37サンプル分)に対して、実施例1と同様の方法によって、右手又は左手の中指に赤外線を照射し、赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0231】
各サンプルの赤外線吸収スペクトルに対して、実施例1と同様の方法で平均化処理及び2回微分処理を行って、赤外線強度情報を得た。
【0232】
得られた赤外線強度情報を下記式(11)に適用して、2点、4点、6点、8点、10点、12点、14点、及び16点といったそれぞれの波長の組合せに対する濃度相関関数を求め、これを用いてそれぞれのサンプルに対する血中のグルコースの演算濃度を測定した。
【数14】

(上記式において、Yは濃度測定用関数により求められるグルコースの血中濃度の演算濃度;kは赤外線波長の組合せの点数;Xは各赤外線波長における赤外線強度情報、bは定数項、bは係数である。)
【0233】
次に、当該被験者に対して、採血法を用いて血中のグルコースの実測濃度を測定した。
【0234】
血中のグルコースの演算濃度と、血中のグルコースの実測濃度との相関係数を求め、波長組合せ点数と相関係数との関係を調べた。表3に16点の波長を選択した場合の各波長(μm)を示す。また図15に、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【表3】

【0235】
[実施例3]
測定対象物質を血中のグルコースから、血中のHbA1cにした以外は、実施例2と同様にして、血中のHbA1cの演算濃度と、血中のHbA1cの実測濃度との相関係数を求め、波長組合せ点数と相関係数との関係を調べた。表3に16点の波長を選択した場合の各波長(μm)を示す。また図16に、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【0236】
[実施例4]
測定対象物質を血中のグルコースから、血中の総コレステロールにした以外は、実施例2と同様にして、血中の総コレステロールの演算濃度と、血中の総コレステロールの実測濃度との相関係数を求め、波長組合せ点数と相関係数との関係を調べた。表3に16点の波長を選択した場合の各波長(μm)を示す。また図17に、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【0237】
[実施例5]
測定対象物質を血中のグルコースから、血中の中性脂肪にした以外は、実施例2と同様にして、血中の中性脂肪の演算濃度と、血中の中性脂肪の実測濃度との相関係数を求め、波長組合せ点数と相関係数との関係を調べた。表3に16点の波長を選択した場合の各波長(μm)を示す。また図18に、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【0238】
実施例2〜5の結果から、波長の組合せ点数が多くなるほど、相関係数が高くなるが、8点以上選択している場合には、各グラフの傾きが小さくなり、12点以上の場合にはさらにその傾きが小さくなるため、高い相関係数を得るためには、好ましくは8点以上、さらに好ましくは12点以上の点の組合せを用いるがよいことがわかる。
【0239】
[実施例6]
実施例2で得られた測定スペクトルを用いて、8点の波長の組合せたケースに関して、赤外線強度情報を得るにあたり、赤外線強度値を微分処理していなかった以外は、実施例2と同様にして濃度相関関数を求め、血中のグルコースの演算濃度を演算した。
【0240】
該血中のグルコースの演算濃度と実施例2で測定してある血中のグルコースの実測濃度との相関係数は0.619であった。
【0241】
[実施例7]
実施例2で得られた測定スペクトルを用いて、8点の波長の組合せたケースに関して、赤外線強度情報を得るにあたり、1階微分処理を行った以外は、実施例2と同様にして濃度相関関数を求め、血中のグルコースの演算濃度を演算した。
【0242】
該血中のグルコースの演算濃度と実施例2で測定してある血中のグルコースの実測濃度との相関係数は0.641であった。
【0243】
ここで実施例2の2階微分を行った場合の相関係数が0.708であった。これに対して、実施例7の1階微分処理を行った場合の相関係数が0.641、実施例6の微分処理を行わなかった場合の相関関数が0.619であり、微分処理を多く行なう方が高い相関係数が得られることが分かる。
【0244】
[実施例8]
実施例2で得られた測定スペクトルを用いて、8点の波長の組合せたケースに関し、上記式(11)を用いて濃度相関関数を求める代わりに、非線形手法である下記式(12)用いて濃度相関関数を求める以外は実施例2と同様にして、血中のグルコースの演算濃度を演算した。
【数15】

(上記式(7)において、Yは濃度測定用関数により求められる測定対象物質の体液中濃度の演算濃度;kは波長選択手段で選択した赤外線波長の点数;zは赤外線波長;xは赤外線強度情報;ajj、b、c及びeはフィッティングパラメータを示す。)
【0245】
該血中のグルコースの演算濃度と実施例2で測定してある血中のグルコースの実測濃度との相関係数は0.722であった。
【0246】
[実施例9]
実施例2で得られた測定スペクトルを用いて、8点の波長の組合せたケースに関し、上記式(11)を用いて濃度相関関数を求める代わりに、非線形手法である下記式(13)用いて濃度相関関数を求める以外は実施例2と同様にして、血中のグルコースの演算濃度を演算した。
【数16】

(上記式(8)において、Yは濃度測定用関数により求められる測定対象物質の体液中濃度の演算濃度;kは波長選択手段で選択した赤外線波長の点数;zは赤外線波長;zはzとは異なる赤外線波長;xは赤外線強度情報;aij、b、c及びeiはフィッティングパラメータを示す。)
【0247】
該血中のグルコースの演算濃度と実施例2で測定してある血中のグルコースの実測濃度との相関係数は0.739であった。
【0248】
ここで実施例2の線形的手法を行った場合の相関係数が0.708であった。これに対して、実施例8の非線形的手法を行った場合の相関係数が0.722、実施例9の非線形的手法を行った場合の相関係数が0.739であり、非線形的手法を用いる方が高い相関係数が得られることが分かる。図19に、血中のグルコースの実測濃度(横軸)と血中のグルコースの演算濃度(縦軸)との関係を示す。
【0249】
[実施例10]
実施例4で得られた測定スペクトルを用いて、8点の波長の組合せたケースに関し、上記式(11)を用いて濃度相関関数を求める代わりに、非線形手法である上記式(12)用いて濃度相関関数を求める以外は実施例4と同様にして、血中の総コレステロールの演算濃度を演算した。
【0250】
該血中のグルコースの演算濃度と実施例2で測定してある血中の総コレステロールの実測濃度との相関係数は0.866であった。
【0251】
[実施例11]
実施例4で得られた測定スペクトルを用いて、8点の波長の組合せたケースに関し、上記式(11)を用いて濃度相関関数を求める代わりに、非線形手法である上記式(13)用いて濃度相関関数を求める以外は実施例4と同様にして、血中の総コレステロールの演算濃度を演算した。
【0252】
該血中のグルコースの演算濃度と実施例2で測定してある血中の総コレステロールの実測濃度との相関係数は0.886であった。
【0253】
ここで実施例4の線形的手法を行った場合の相関係数が0.825であった。これに対して、実施例10の非線形的手法を行った場合の相関係数が0.866、実施例11の非線形的手法を行った場合の相関係数が0.886であり、非線形的手法を用いる方が高い相関係数が得られることが分かる。図20に、血中の総コレステロールの実測濃度(横軸)と血中の総コレステロールの演算濃度(縦軸)との関係を示す。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明の演算装置、本発明の濃度相関関数導出方法、本発明のプログラム、並びに、本発明の測定装置の用途は特に限定されず、測定対象物質の体液中濃度を測定する用途に好適に使用することができる。例えば、医療、獣医療、等の分野で広く用いることができる。さらには、生体分析以外にも、例えば食品分析などの化合物分析の分野にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての演算装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】コンピュータを利用した、演算装置100のハードウェア構成例を示した図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における演算装置100の動作内容を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態としての演算装置101の全体構成を示すブロック図である。
【図5】コンピュータを利用した、演算装置101のハードウェア構成例を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における演算装置101の動作内容を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態としての測定装置102の全体構成を示すブロック図である。
【図8】コンピュータを利用した、測定装置102のハードウェア構成例を示した図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における測定装置102の動作内容を示すフローチャート図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態としての測定装置103の全体構成を示すブロック図である。
【図11】コンピュータを利用した、測定装置103のハードウェア構成例を示した図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における測定装置103の動作内容を示すフローチャート図である。
【図13】実施例1の結果を表わすグラフであり、血中のグルコースの演算濃度(縦軸)と、血中のグルコースの実測濃度(横軸)との関係を示す。
【図14】比較例1の結果を表わすグラフであり、血中のグルコースの演算濃度(縦軸)と、血中のグルコースの実測濃度(横軸)との関係を示す。
【図15】実施例2の結果を表わすグラフであり、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【図16】実施例3の結果を表わすグラフであり、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【図17】実施例4の結果を表わすグラフであり、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【図18】実施例5の結果を表わすグラフであり、波長組合せ点数(横軸)と相関係数(縦軸)との関係を示す。
【図19】実施例2、実施例8、実施例9の結果を表わすグラフであり、血中のグルコースの実測濃度(横軸)と血中のグルコースの演算濃度(縦軸)との関係を示す。
【図20】実施例4、実施例10、実施例11の結果を表わすグラフであり、血中の総コレステロールの実測濃度(横軸)と総コレステロールの演算濃度(縦軸)との関係を示す。
【符号の説明】
【0256】
1 赤外線吸収スペクトル取得装置(スペクトル取得手段)
2 実測濃度取得装置(実測濃度取得手段)
3 データ処理部
3a 波長選択部(波長選択手段)
3b 濃度測定用関数演算部(濃度測定用関数演算手段)
3c 相関係数演算部(相関係数演算手段)
3d 濃度相関関数抽出部(濃度相関関数抽出手段)
4 データ出力装置
5 中央演算処理装置(CPU)
6 記憶装置
7 表示装置
8 入力インターフェース
11 第二赤外線吸収スペクトル取得装置(第二のスペクトル取得手段)
12 第二実測濃度取得装置(第二の実測濃度取得手段)
13 第二データ処理部
13a 第二波長選択部(第二の波長選択手段)
13b 第二濃度測定用関数演算部(第二の濃度測定用関数演算手段)
13c 第二相関係数演算部(第二の相関係数演算手段)
13d 第二濃度相関関数抽出部(第二の濃度相関関数抽出手段)
14 赤外線吸収スペクトル取得装置
15 実測濃度取得装置
21 赤外線源
22 赤外線吸収スペクトル測定装置
23 データ入力装置
24 データ処理部
24a 体液中濃度演算部(体液中濃度演算手段)
25 データ出力装置
26 中央演算処理装置(CPU)
27 記憶装置
28 表示装置
29 入力インターフェース
31 赤外線吸収スペクトル読込装置
100 演算装置
101 演算装置
102 測定装置
103 測定装置
A10 赤外線吸収スペクトル取得ステップ
A20 実測濃度取得ステップ
A30 波長選択ステップ
A40 濃度測定用関数演算ステップ
A50 相関係数演算ステップ
A60 濃度相関関数抽出ステップ
A65 残された波長の組み合わせの有無による判断
A70 データ出力ステップ
B10 赤外線吸収スペクトル取得ステップ
B20 実測濃度取得ステップ
B30 波長選択ステップ
B40 濃度測定用関数演算ステップ
B50 相関係数演算ステップ
B60 濃度相関関数抽出ステップ
B65 残された波長の組み合わせの有無による判断
B70 第二の赤外線吸収スペクトル取得ステップ
B80 第二の実測濃度取得ステップ
B90 第二の波長選択ステップ
B100 第二の濃度測定用関数演算ステップ
B110 第二の相関係数演算ステップ
B120 第二の濃度相関関数抽出ステップ
B125 残された波長の組み合わせの有無による判断
B130 データ出力ステップ
C10 スペクトル測定ステップ
C15 スペクトル読込ステップ
C20 データ入力ステップ
C30 体液中濃度演算ステップ
C40 データ出力ステップ
C10 スペクトル測定ステップ
C20 データ入力ステップ
C30 体液中濃度演算ステップ
C40 データ出力ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算する演算装置であって、
前記赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得手段と、
該スペクトル読取手段が読み取った前記赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択手段と、
前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得手段と、
該波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算手段と、
該スペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、該実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を演算する相関係数演算手段と、
該濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、該相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出手段とを備える
ことを特徴とする、濃度相関関数の演算装置。
【請求項2】
波長選択手段における赤外線波長の組合せが、8点以上の波長の組合せである
ことを特徴とする、請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記赤外線吸収スペクトルを読み取る第二のスペクトル取得手段と、
濃度相関関数を得るのに用いた赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の一部を少なくとも含む、複数の赤外線波長の組合せを選択する第二の波長選択手段と、
前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る第二の実測濃度取得手段と、
該第二の波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該第二の波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る第二の濃度測定用関数演算手段と、
該第二のスペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該第二の濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の第二の演算濃度と、該実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の第二の実測濃度との各相関係数を演算する第二の相関係数演算手段と、
該第二の濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、該第二の相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する第二の濃度相関関数抽出手段とを備える
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の濃度相関関数の演算装置。
【請求項4】
波長選択手段において、16点の赤外線波長の組合せを選択し、
第二の波長選択手段において、該波長選択手段において選択された赤外線波長の組合せのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、少なくとも7点以上を含む8点以上の赤外線波長の組合せを選択する
ことを特徴とする、請求項3に記載の演算装置。
【請求項5】
第二の波長選択手段において、該波長選択手段において選択された赤外線波長の組合せのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、少なくとも7点以上を含む14点以上の赤外線波長の組合せを選択する
ことを特徴とする、請求項4に記載の演算装置。
【請求項6】
波長選択手段において、16点の赤外線波長の組合せを選択し、
第二の波長選択手段において、該波長選択手段において選択された赤外線波長の組合せのうち、濃度相関関数を演算しうる赤外線波長の組合せを構成する各赤外線波長の中から、16点以上の赤外線波長の組合せを選択する
ことを特徴とする、請求項3に記載の演算装置。
【請求項7】
測定対象物質が、グルコース、コレステロール、中性脂肪又はHbA1cである
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の演算装置。
【請求項8】
濃度測定用関数演算手段における演算が、非線形的手法による演算である
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の演算装置。
【請求項9】
前記の赤外線強度情報が、前記の生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度値を微分処理した値である
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の演算装置。
【請求項10】
体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を、コンピュータを用いて導出する方法であって、該コンピュータに、
前記赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得ステップと、
該スペクトル取得ステップが読み取った前記赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択ステップと、
前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得ステップと、
該波長選択ステップで選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得ステップで取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該波長選択ステップで選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算ステップと、
該スペクトル取得ステップで読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該濃度測定用関数演算ステップで得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、該実測濃度取得ステップで読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を演算する相関係数演算ステップと、
該濃度測定用関数演算ステップが演算した濃度測定用関数の群から、該相関係数演算ステップが得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出ステップとを行なわせる
ことを特徴とする、濃度相関関数を導出する方法。
【請求項11】
体液中における測定対象物質の体液中濃度と、生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報との相関を規定する濃度相関関数を演算するプログラムであって、コンピュータを、
前記赤外線吸収スペクトルを読み取るスペクトル取得手段と、
該スペクトル読取手段が読み取った前記赤外線吸収スペクトルの部分的且つ複数の赤外線波長の組合せを選択する波長選択手段と、
前記体液中の測定対象物質の実測濃度を読み取る実測濃度取得手段と、
該波長選択手段で選択した組合せにおける各赤外波長の赤外線強度情報と、該実測濃度取得手段で取得した実測濃度との相関を規定する濃度測定用関数を、該波長選択手段で選択した各組合せについて演算して、濃度測定用関数の群を得る濃度測定用関数演算手段と、
該スペクトル取得手段で読み取った赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、該濃度測定用関数演算手段で得られた各濃度測定用関数に適用して演算された、測定対象物質の体液中濃度の演算濃度と、該実測濃度取得手段で読み取った測定対象物質の体液中濃度の実測濃度との各相関係数を得る相関係数演算手段と、
濃度測定用関数演算手段が演算した濃度測定用関数の群から、該相関係数演算手段が得た相関係数が閾値以上である濃度相関関数を抽出する濃度相関関数抽出手段と
として機能させる濃度相関関数の演算をするプログラム。
【請求項12】
前記請求項1〜10に記載の演算装置で得られる濃度相関関数、請求項11に記載の濃度相関関数を導出する方法で導出される濃度相関関数、若しくは請求項12に記載のプログラムを用いて演算される濃度相関数に基づいて、前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置であって、
生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射する赤外線源と、
該赤外線源から前記生体又は生体から取り出した体液に照射された赤外線の赤外線吸収スペクトルを測定するスペクトル測定手段と、
該スペクトル測定手段が測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報を、前記濃度相関関数に適用して、測定対象物質の体液中濃度を演算する体液中濃度演算手段とを備える
ことを特徴とする、測定対象物質の体液中濃度の測定装置。
【請求項13】
前記のスペクトル測定手段が、前記の赤外線源以外の光を遮光する遮光手段を備える
ことを特徴とする、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記請求項1〜8に記載の演算装置で得られる濃度相関関数、請求項11に記載の濃度相関関数を導出する方法で導出される濃度相関関数、若しくは請求項12に記載のプログラムを用いて演算される濃度相関数に基づいて、前記測定対象物質の体液中濃度を測定する測定装置であって、
生体又は生体から取り出した体液に照射した赤外線の赤外線吸収スペクトルを読み込むスペクトル読込手段と、
該スペクトル読込手段が読み込んだ赤外線吸収スペクトルの赤外線強度情報に、前記濃度相関関数を適応して、測定対象物質の体液中濃度を演算する体液中濃度演算手段とを備える
ことを特徴とする、測定対象物質の体液中濃度の測定装置。
【請求項15】
前記の測定対象物質が、グルコース、コレステロール、中性脂肪又はHbA1cである
ことを特徴とする、請求項12〜14の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項16】
前記の体液中濃度演算手段における演算が、非線形的手法による演算である
ことを特徴とする、請求項12〜15の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項17】
前記の赤外線強度情報が、前記の生体又は生体から取り出した体液に赤外線を照射して測定した赤外線吸収スペクトルの赤外線強度値を微分処理した値である
ことを特徴とする、請求項12〜16の何れか一項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−43942(P2010−43942A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208084(P2008−208084)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】