説明

濃縮装置及びそれを有するクロマトグラフィー装置

【課題】 移動相の濃縮装置を有するクロマトグラフィー装置に用いられたときに、蒸発装置への移動相の供給が途絶えた場合でも安定した運転を実現することができる濃縮装置を提供する。
【解決手段】 無端状の流路13と、第一及び第二の排出用流路16、17とを有する擬似移動床式クロマトグラフィー装置において、蒸発装置18〜20に移動相を供給するための第一の排出用流路16に、第一の排出用流路16における移動相の流量の増減に応じて蒸発装置18〜20からの留出液を供給し、同様に、蒸発装置27〜29に移動相を供給するための第二の排出用流路17に、第二の排出用流路17における移動相の流量の増減に応じて蒸発装置27〜29からの留出液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮される溶液の供給量の変動に関わらず安定した運転が可能な濃縮装置及びそれを有するクロマトグラフィー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
混合物中から目的の物質を分離する手段としては、クロマトグラフィー装置が良く知られている。分離した目的の物質を取り出す手段としては、目的の物質を含有する溶液を濃縮する濃縮装置が良く知られている。特に、混合物中から目的の物質を分離して取り出すことによって目的の物質を製造する好ましい手段としては、カラムが直列に接続されてなる無端状の流路を有し、目的の物質を含有する試料溶液及び移動相の無端状の流路への供給と、無端状の流路からの移動相の排出とを独立して行うことができる擬似移動床式クロマトグラフィー装置が知られている。
【0003】
前記擬似移動床式クロマトグラフィー装置には、例えば目的の物質を分離するための複数のカラムが直列に接続され、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液が供給される無端状の流路と、無端状の流路に接続され、無端状の流路から移動相を排出するための排出用流路と、排出用流路に排出された移動相を濃縮するための濃縮装置と、濃縮装置から留出した留出液を移動相に再利用するために無端状の流路に供給するための再利用用流路とを有し、濃縮装置における移動相の濃縮物から目的の物質が得られる装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また前記濃縮装置には、例えば前記排出用流路に接続され、排出用流路に排出された移動相の少なくとも一部を蒸発させて留出させるための蒸発装置と、蒸発装置から留出した留出液が流れる留出液流路とを有する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
前記擬似移動床式クロマトグラフィー装置では、通常は、移動相及び試料溶液の無端状の流路への供給と、無端状の流路からの移動相の排出とは連続して行われるが、移動相や試料溶液の無端状の流路への供給や、無端状の流路からの移動相の排出が間欠的に行われることもある(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【0006】
前記擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、ラセミ体等の光学異性体の混合物から光学異性体を分離することによる光学異性体の製造に好適に用いられる。特に、医薬品の用途の光学異性体を製造する場合では、その品質を管理するために、前記濃縮装置で行われる、所望の光学異性体を含有する移動相の濃縮についても厳しい工程管理が要求されることがある。
【0007】
したがって、前記濃縮装置では、通常、生成する濃縮液に含まれる製品の濃度を一定に保つための運転が行われる。具体的には、前記蒸発装置における加熱等の条件が適宜調整され、蒸発装置から排出される濃縮液の流量や、蒸発装置内に滞留する液の液面が一定に保たれるように運転が行われる。
【0008】
無端状の流路から排出される移動相が一定の流量で連続して蒸発装置に供給される場合では、濃縮装置を安定して運転させることができる。しかしながら、無端状の流路から移動相を間欠的に排出する場合や、無端状の流路及びその周辺でトラブルが発生した場合では、無端状の流路から蒸発装置への移動相の供給の停止等、蒸発装置へ供給される移動相の流量の急激な変動が生じ、濃縮液中の製品の濃度が大きく変動することがある。
【0009】
前述した厳しい工程管理を要する光学異性体の製造では、濃縮条件による製品の品質への影響を抑えるために、蒸発装置では比較的緩やかな条件で移動相が加熱される。したがって、移動相の流量の急激な変動に対して蒸発装置の運転によって対応することは困難である。このため、蒸発装置へ供給される移動相の流量の急激な変動によって、蒸発装置での急激な液の蒸発や濃縮が生じて、濃縮液中の製品の濃度が管理範囲から逸脱するという問題が生じることがある。
【特許文献1】特開平6−239767号公報
【特許文献2】特開平4−227804号公報
【特許文献3】特公平7−46097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、蒸発装置への移動相の供給が途絶えた場合でも安定した運転を実現することができる濃縮装置を提供することを第一の課題とする。
【0011】
また、本発明は、蒸発装置への移動相の供給が途絶えた場合でも製品の品質の変動や低下を防止することができるクロマトグラフィー装置を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも前記第一の課題を解決するための手段として、排出用流路から蒸発装置への移動相の流量の減少に応じて、蒸発装置から留出した留出液を排出用流路に供給し、蒸発装置内における急激な液の濃縮を防止する技術を提供する。
【0013】
すなわち、本発明は、目的の物質を分離するためのカラムを有し、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液を前記カラムに供給して前記目的の成分を含有する移動相を生成するための分離用流路と、前記分離用流路に接続され、少なくとも前記目的の成分を含有する移動相を分離用流路から排出するための排出用流路とを有するクロマトグラフィー装置に用いられ、前記排出用流路に排出された移動相を濃縮するための濃縮装置において、前記排出用流路に接続され、排出用流路に排出された移動相の少なくとも一部を蒸発させて留出させるための蒸発装置と、前記蒸発装置から留出した留出液が流れる留出液流路と、前記留出液流路の留出液が前記蒸発装置で濃縮されるように留出液を蒸発装置に戻すための留出液戻し用流路と、前記蒸発装置から留出した留出液の流路を前記留出液流路と前記留出液戻し用流路との間で切り替えるための流路切り替え装置と、前記分離用流路から前記排出用流路に排出された移動相の流量の増減を検出するための流量検出装置と、前記分離用流路からの移動相の流量が所定の流量よりも減少したことを前記流量検出装置が検出したときに、前記蒸発装置から留出した留出液の流路が前記留出液流路から前記流出液戻し用流路に切り替わるように前記流路切り替え装置を制御する制御装置とを有する濃縮装置を提供する。
【0014】
前記構成によれば、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、蒸発装置から留出した留出液が排出用流路に供給される。このため、蒸発装置に供給される液の量の急激な低下が防止される。
【0015】
本発明の濃縮装置では、前記排出用流路の移動相又は前記留出液を収容し、収容された移動相又は留出液を排出用流路に排出するための予備槽をさらに有していても良い。この構成によれば、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、予備槽に収容されている液が排出用流路に供給される。このため、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、より一層迅速に蒸発装置へ被濃縮液が供給される。
【0016】
また、本発明の濃縮装置では、前記予備槽は、前記排出用流路の移動相を収容し、収容された移動相を排出用流路に排出するための槽であり、前記流量検出装置は、予備槽に収容された移動相の液面を検出する液面計であっても良い。この構成によれば、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、留出液が蒸発装置に供給されるまでの間にも蒸発装置には移動相が定量的に供給される。
【0017】
また、本発明の濃縮装置では、前記予備槽は、前記留出液を収容し、収容された留出液を前記排出用流路に排出するための槽であり、前記流量検出装置は流量計であり、前記制御装置は、前記流量計が前記移動相の流量の低下を検出したときに、予備槽から排出用流路への留出液の排出をさらに制御しても良い。この構成によれば、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、蒸発装置に供給される液が移動相から留出液に切り替えられ、蒸発装置における目的の物質の滞留時間が短縮される。
【0018】
また、本発明は、少なくとも前記第二の課題を解決するための手段として、目的の物質を分離するためのカラムを有し、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液を前記カラムに供給して前記目的の物質を生成するための分離用流路と、前記分離用流路に接続され、少なくとも前記目的の物質を含有する移動相を分離用流路から排出するための排出用流路と、前記排出用流路に排出された移動相を濃縮するための濃縮装置とを有し、移動相の濃縮物から前記目的の物質が得られるクロマトグラフィー装置において、前記濃縮装置は前述した本発明の濃縮装置であるクロマトグラフィー装置を提供する。
【0019】
前記構成によれば、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、蒸発装置から留出した留出液が排出用流路に供給され、蒸発装置に供給される液の量の急激な低下が防止され、蒸発装置における急激な液の蒸発や濃縮が防止される。
【0020】
また、本発明のクロマトグラフィー装置では、前記留出液の組成を、前記分離用流路に供給される移動相の組成に調整するための調整装置と、前記調整装置で調整された留出液を移動相に再利用するために前記分離用流路に向けて供給するための再利用用流路とをさらに有していても良い。この構成によれば、移動相の組成に関わらず移動相の回収と再利用とが可能となる。
【0021】
また、本発明のクロマトグラフィー装置では、前記カラムは、光学活性な多糖又は多糖誘導体を含有する分離剤を収容するカラムであり、前記目的の物質は光学異性体であっても良い。この構成によれば、厳しい工程管理を要する医薬品等の製品の用途の光学異性体を製造する観点から好ましい。
【0022】
また、本発明のクロマトグラフィー装置では、前記多糖はセルロース又はアミロースであり、前記多糖誘導体は、セルロースのエステル誘導体、セルロースのカルバメート誘導体、アミロースのエステル誘導体、及びアミロースのカルバメート誘導体から少なくとも選ばれても良い。この構成によれば、厳しい工程管理を要する医薬品等の製品の用途の光学異性体を高い生産性で製造する観点から好ましい。
【0023】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、前記分離用流路が目的の物質を分離するための複数のカラムが直列に接続されてなる無端状の流路である擬似移動床式クロマトグラフィー装置であっても良い。この構成によれば、目的の物質の製造において、製品の品質を維持し、かつ生産性を高める観点から好ましい。
【0024】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、超臨界流体と溶剤との混合流体が前記移動相として用いられる超臨界流体クロマトグラフィー装置であっても良い。この構成によれば、通常の溶剤に比べて拡散性が高い超臨界流体を含有する流体が移動相に用いられるこ
とから、カラムでの試料中の混合成分の分離の効率が高められる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の濃縮装置は、前記蒸発装置、前記留出液流路、前記留出液戻し用流路、前記流路切り替え装置、流量検出装置、及び前記制御装置を有することから、排出用流路における移動相の流量が減少したときに蒸発装置に供給される液の量の急激な低下が防止される。したがって、蒸発装置への移動相の供給が途絶えた場合でも安定した運転を実現することができる。
【0026】
また、本発明の濃縮装置は、前記予備槽をさらに有すると、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、より一層迅速に蒸発装置へ液が供給されることから、蒸発装置の運転を安定させる観点からより一層効果的である。
【0027】
また、本発明の濃縮装置は、前記予備槽は、前記排出用流路の移動相を収容し、収容された移動相を排出用流路に排出するための槽であり、前記流量検出装置は、予備槽に収容された移動相の液面を検出する液面計であると、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、留出液が蒸発装置に供給されるまでの間にも蒸発装置に移動相が定量的に供給されることから、蒸発装置の運転を安定させる観点からより一層効果的である。
【0028】
また、本発明の濃縮装置は、前記予備槽は、前記留出液を収容し、収容された留出液を前記排出用流路に排出するための槽であり、前記流量検出装置は流量計であり、前記制御装置は、前記流量計が前記移動相の流量の低下を検出したときに、予備槽から排出用流路への留出液の排出をさらに制御する装置であると、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、蒸発装置における目的の物質の滞留時間が短縮されることから、移動相の濃縮物から得られる製品の物性の変化を抑制する観点からより一層効果的である。
【0029】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、前記分離用流路と、前記排出用流路と、前述した本発明の濃縮装置とを有することから、蒸発装置への移動相の供給が途絶えた場合でも製品の品質の変動や低下を防止することができる。
【0030】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、前記調整装置と前記再利用用流路とをさらに有すると、移動相が再利用されることから、移動相を構成する溶剤のコストや廃棄量を削減する観点からより一層効果的である。
【0031】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、前記カラムは、光学活性な多糖又は多糖誘導体を含有する分離剤を収容するカラムであり、前記目的の物質は光学異性体であると、厳しい工程管理を要する医薬品等の製品の用途の光学異性体を製造する観点からより一層効果的である。
【0032】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、前記多糖はセルロース又はアミロースであり、前記多糖誘導体は、セルロースのエステル誘導体、セルロースのカルバメート誘導体、アミロースのエステル誘導体、及びアミロースのカルバメート誘導体から少なくとも選ばれると、厳しい工程管理を要する医薬品等の製品の用途の光学異性体の生産性を高める観点からより一層効果的である。
【0033】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、前記分離用流路が目的の物質を分離するための複数のカラムが直列に接続されてなる無端状の流路である擬似移動床式クロマトグラフィー装置であると、目的の物質の製造において、製品の品質を維持し、かつ生産性を高める観点からより一層効果的である。
【0034】
また、本発明のクロマトグラフィー装置は、超臨界流体と溶剤との混合流体が前記移動相として用いられる超臨界流体クロマトグラフィー装置であると、カラムでの試料中の混合成分の分離の効率が高められることから、通常の溶剤を用いるクロマトグラフィー装置では分離することが困難な物質を高い生産性で製造する観点からより一層効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の濃縮装置は、目的の物質を分離するためのカラムを有し、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液を前記カラムに供給して前記目的の成分を含有する移動相を生成するための分離用流路と、分離用流路に接続され、少なくとも前記目的の成分を含有する移動相を分離用流路から排出するための排出用流路とを有するクロマトグラフィー装置に用いることができる装置であって、排出用流路に排出された移動相を濃縮するための装置である。
【0036】
本発明の濃縮装置は、前記排出用流路に接続され、排出用流路に排出された移動相の少なくとも一部を蒸発させて留出させるための蒸発装置と、蒸発装置から留出した留出液が流れる留出液流路と、留出液流路の留出液が蒸発装置で濃縮されるように留出液を蒸発装置に戻すための留出液戻し用流路と、蒸発装置から留出した留出液の流路を留出液流路と留出液戻し用流路との間で切り替えるための流路切り替え装置と、分離用流路から排出用流路に排出された移動相の流量の増減を検出するための流量検出装置と、分離用流路からの移動相の流量が所定の流量よりも減少したことを流量検出装置が検出したときに、蒸発装置から留出した留出液の流路が留出液流路から流出液戻し用流路に切り替わるように流路切り替え装置を制御する制御装置とを有する。
【0037】
前記蒸発装置は、排出用流路に排出された移動相を濃縮することが可能な装置であれば特に限定されない。蒸発装置の種類や数量は、移動相に含まれる溶剤や目的の物質の物性等の条件に応じて決めることができる。蒸発装置には、蒸発缶や真空蒸発缶等の公知の蒸発装置が挙げられる。
【0038】
前記留出液流路は、蒸発装置から留出液が供給されるように蒸発装置に接続されている流路である。留出液流路は、管、弁、フランジ、コンデンサ等の公知の部材によって構成することができる。
【0039】
前記留出液戻し用流路は、濃縮される液として留出液を蒸発装置に戻すための流路である。留出液戻し用流路は、留出液流路と蒸発装置とを接続する流路であっても良いし、排出用流路と留出液流路とを接続する流路であっても良い。留出液戻し用流路は、管、弁、フランジ等の公知の部材によって構成することができる。
【0040】
前記流路切り替え装置は、留出液流路を流れる留出液を、流路の切り替えによって留出液戻し用流路に供給するための装置である。流路切り替え装置は、三方弁、複数の二方弁等の公知の部材によって構成することができる。
【0041】
前記流量検出装置は、排出用流路における移動相の流量の少なくとも増減を検出することができる装置であれば特に限定されない。流量検出装置には、流量計や、後述する予備槽に設けられる液面計等が挙げられる。
【0042】
前記制御装置は、流量検出装置の検出結果に応じて流路切り替え装置を操作することができる装置であれば特に限定されない。制御装置は、CPU(中央演算装置)、送受信装置、記憶部等を含むコンピュータ等の公知の制御装置によって構成することができる。制御装置は、排出用流路における移動相の流量が所定の流量まで上昇したことが流量検出装置によって検出されたときに、留出液の流路が留出液戻し用流路から留出液流路へ切り替
わるように、流路切り替え装置をさらに制御することが好ましい。
【0043】
本発明の濃縮装置は、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していても良い。他の構成要素としては、例えば予備槽が挙げられる。
【0044】
前記予備槽は、前記排出用流路の移動相又は前記留出液を収容し、収容された移動相又は留出液を排出用流路に排出するための槽であり、排出用流路における移動相の流量が減少したときに、移動相が減少した量又はそれに相当する量の液体を蒸発装置に供給するための部材である。したがって、予備槽の容量は、蒸発装置で生成する留出液が、留出液戻し用流路を介して蒸発装置を循環するのに十分な量であれば良い。蒸発装置の容量は、蒸発装置の容量や処理能力、蒸発装置の運転条件等の種々の条件に応じて決定することができる。
【0045】
前記予備槽が移動相を収容する予備槽である場合では、予備槽は排出用流路中に設けられる。移動相を収容する予備槽には、予備槽に収容された移動相の液面を検出する液面計を流量検出装置として設けることが、移動相の流量の増減に伴う制御装置の制御を簡易化する観点から好ましい。
【0046】
前記予備槽が留出液を収容する予備槽である場合では、予備槽は留出液流路及び留出液戻し用流路の少なくともいずれかに設けられる。予備槽が留出液を収容する予備槽である場合では、流路検出装置には、排出用流路の移動相の流量を検出する流量計を用いることが好ましい。また予備槽が留出液を収容する予備槽である場合では、前記制御装置が予備槽から排出用流路への留出液の排出をさらに制御することが、蒸発装置の安定運転を効率よく行う観点から好ましい。
【0047】
予備槽に収容されている移動相又は留出液の排出用流路への供給は、例えば予備槽の底部に開口する排出口に設けられる流量制御弁や、予備槽に収容されている移動相又は留出液を排出用流路に供給するためのポンプ等の公知の流量調整装置を用いて行うことができる。また、蒸発装置に真空蒸発缶を用いる場合では、通常は蒸発装置内が減圧されていることから、排出用流路と蒸発装置との圧力差による吸い込みを利用することができる。
【0048】
本発明の濃縮装置を用いることができるクロマトグラフィー装置は、目的の物質を分離するためのカラムを有し、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液を前記カラムに供給して前記目的の成分を含有する分離用流路と、前記分離用流路に接続され、少なくとも前記目的の物質を含有する移動相を分離用流路から排出するための排出用流路とを有するクロマトグラフィー装置であれば特に限定されない。前記クロマトグラフィー装置は、高速液体クロマトグラフィー装置、前述した擬似移動床式クロマトグラフィー装置、超臨界流体クロマトグラフィー装置、及び擬似移動床式超臨界流体クロマトグラフィー装置等の公知のクロマトグラフィー装置によって構成することができる。
【0049】
本発明のクロマトグラフィー装置は、前述した公知のクロマトグラフィー装置、すなわち前記分離用流路と、前記排出用流路とを有するクロマトグラフィー装置において、前述した本発明の濃縮装置をさらに有する装置である。本発明のクロマトグラフィー装置は、公知のクロマトグラフィー装置の排出用流路と濃縮装置の蒸発装置とを接続することによって構成することができる。
【0050】
前記分離用流路は、カラムが接続されており、またこのカラムに移動相及び試料溶液を通すことができ、前記目的の物質を含有する移動相を生成することができる流路であれば特に限定されない。分離用流路は、クロマトグラフィー装置の種類に応じて、管、弁、ポンプ、容器、気液分離装置、検出器等の公知の部材や機器によって構成することができる

【0051】
例えば前記クロマトグラフィー装置が擬似移動床式クロマトグラフィー装置であれば、前記分離用流路は、複数のカラムとこれらを直列に接続する接続用流路とからなる無端状の流路によって構成することができる。擬似移動床式クロマトグラフィー装置におけるカラムの数は複数であれば特に限定されないが、4〜12であることが好ましい。
【0052】
例えば前記クロマトグラフィー装置が超臨界流体クロマトグラフィー装置であれば、前記分離用流路は、カラムと、移動相中の成分を検出するための検出器と、移動相中の超臨界流体の超臨界状態を解除するための背圧弁等の圧力調整装置と、超臨界状態が解除された移動相から超臨界流体を構成していた成分と溶剤成分とを気液分離するためのサイクロン等の気液分離装置とを有する流路によって構成することができる。
【0053】
また分離用流路には、移動相の供給、及び試料溶液の供給又は注入等の用途に応じた公知の部材を設けることによって、移動相及び試料溶液を供給することができる。
【0054】
前記排出用流路は、分離用流路に接続されており、少なくとも、前記目的の物質を含有する移動相を分離用流路から排出することができる流路であれば特に限定されない。排出用流路も、分離用流路と同様に、管、弁、ポンプ等の公知の部材によって構成することができる。排出用流路は、目的の物質以外の物質を含有する移動相を分離用流路から排出することができる流路をさらに含むことが好ましい。排出用流路の設置数は特に限定されないが、目的の物質の種類数よりも大きい整数であることが、目的の物質を分離し取り出す観点から好ましい。
【0055】
前記排出用流路に排出される移動相は、濃縮装置によって濃縮できる流体であれば良い。具体的には、前記移動相は、移動相そのものであっても良いし、移動相中の溶剤成分等の移動相の一部の成分であっても良い。
【0056】
前記濃縮装置は、少なくとも、目的の物質を含有する移動相の溶剤成分が供給される前記排出用流路に接続されていれば、その設置数は特に限定されない。前記濃縮装置は、全ての排出用流路のそれぞれに接続されていても良い。
【0057】
前記カラムは、目的の物質を分離することができるカラムであれば特に限定されない。前記カラムには、カラム管と、カラム管に収容され、目的の物質を分離するための分離剤とを有する公知のカラムを用いることができる。前記カラムは、特に限定されないが、目的の物質の種類に応じて決めることができる。例えば、目的の物質が光学異性体である場合では、前記カラムは、光学活性な多糖又は多糖誘導体を含有する分離剤を収容するカラムであることが、効率よく光学異性体を分離する観点から好ましい。
【0058】
前記多糖は、光学活性な多糖であれば、合成多糖、天然多糖及び天然物変性多糖のいずれかであっても良い。前記多糖は、結合様式の規則性の高い多糖が好ましく、また鎖状の多糖が好ましい。前記多糖としては、種々の多糖を例示することができるが、特にセルロースやアミロースが好ましい。
【0059】
前記多糖誘導体は、光学異性体の分離に用いることができる多糖誘導体であれば特に限定されない。このような多糖誘導体としては、例えば、前記多糖を骨格として含み、この多糖が有する水酸基及びアミノ基の少なくとも一部が、試料中の光学異性体に作用する官能基で置換されている多糖誘導体が挙げられる。
【0060】
前記多糖誘導体としては、種々の多糖誘導体を例示することができるが、特にセルロー
スのエステル誘導体、セルロースのカルバメート誘導体、アミロースのエステル誘導体、及びアミロースのカルバメート誘導体から選ばれる少なくともいずれかが好ましい。具体的に前記多糖誘導体としては、例えば国際公開95/23125号パンフレットに記載されている種々の多糖誘導体が挙げられる。
【0061】
前記分離剤の形態は、分離剤が目的の物質を分離することができるようにカラムに収容される形態であれば特に限定されない。このような分離剤の形態としては、例えば、粒子状に成形された形態、粒子状の担体に物理的に担持され又は化学的に結合している形態、カラムに収容される一体型の成形体に成形された形態、及びカラムに収容される一体型の担体に物理的に担持され又は化学的に結合している形態等が挙げられる。分離剤の形態は、カラムに一体的に収容される成形物の形態であることが、目的の物質を効率よく分離し、さらに圧力損失を抑制する観点から好ましい。
【0062】
前記粒子状に成形された形態の分離剤は、例えば特許第2783819号明細書に記載されているように、分離剤としての前記多糖又は多糖誘導体を溶媒に溶解し、得られた溶液を、水等の前記分離剤が溶解しない不溶性溶媒、好ましくは陰イオン界面活性剤等の分散剤を含有する前記不溶性溶媒に、この不溶性溶媒を攪拌しながら滴下することによって製造することが可能である。
【0063】
また前記粒子状に成形された形態の分離剤は、例えば気泡又はポリジェンを前記分離剤の溶液に分散させ、分散させた溶液を前記不溶性溶媒に分散させ、分散している分離剤の溶液から溶媒を留去又は置換し、得られた分離剤の粒子を、必要に応じてポリジェンを溶解する洗浄用の溶剤で洗浄することによって製造することができる。このように製造された分離剤は、多孔質の粒子に成形されることから、目的の物質を効率よく分離する観点から好ましい。ポリジェンには、生成する分離剤の粒子に比べて、前記洗浄用の溶剤に対する溶解性の優れる樹脂や塩等の公知の粒子が用いられる。
【0064】
また前記粒子状の担体に担持されている形態の分離剤は、例えば分離剤を物理吸着や化学吸着や化学反応によって担体に担持させることによって製造することができる。分離剤の担体への担持は、分離剤及び必要に応じて他の化合物を含む溶液に担体を浸漬し、必要に応じて前記他の化合物を反応させ、溶液中の溶媒を留去するか、溶液中の溶媒を他の溶媒に置換する方法によって行うことができる。
【0065】
前記担体としては、例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、及びこれらの誘導体等の多孔質の有機担体;シリカ、アルミナ、マグネシア、ガラス、カオリン、酸化チタン、ケイ酸塩、ヒドロキシアパタイト等の多孔質の無機担体;等が挙げられる。
【0066】
また前記カラムに収容される一体型の担体に担持されている形態の分離剤は、例えば一体型の担体に分離剤を前述したような方法で担持させることによって製造することが可能である。
【0067】
また前記カラムに収容される一体型の成形物に成形された形態の分離剤は、例えば前述した粒子状の形態の分離剤の製造における分離剤の溶液を適当な形状の容器に供給し、又は分離剤の溶液をカラム管に直接供給し、その後溶媒を留去又は置換することによって製造することが可能である。
【0068】
前記移動相には、前記クロマトグラフィー装置の種類に応じて、クロマトグラフィー装置で用いられる通常の移動相を用いることができる。例えばクロマトグラフィー装置の種類が高速液体クロマトグラフィー装置や擬似移動床式クロマトグラフィー装置であれば、
前記移動相には公知の溶剤が用いられる。また例えばクロマトグラフィー装置の種類が超臨界流体クロマトグラフィー装置や擬似移動床式超臨界流体クロマトグラフィー装置であれば、前記移動相には、超臨界流体と溶剤とを含有する混合流体が用いられる。
【0069】
前記溶剤としては、例えば水、酸、アルカリ、有機溶剤、及びこれらのうちの二種以上を含有する混合溶剤等が挙げられる。移動相の組成は、目的の物質の種類、分離剤の種類、及び製品の品質管理条件(濃縮条件)等の条件に応じて決めることができる。
【0070】
前記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸メチル及びジエチルアミン等の極性の高い溶剤、クロロホルムやアセトニトリル等の極性がさほど高くない溶剤、ノルマルヘキサン等の極性の低い溶剤等の、クロマトグラフィー装置で移動相に用いられる種々の公知の有機溶剤が挙げられる。
【0071】
さらに前記有機溶剤としては、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、アセトン、トルエン、塩化メチレン、1,4−ジオキサン、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。
【0072】
前記移動相は、目的の物質の分離に用いる観点から、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールから選ばれる第一の溶剤と、ノルマルヘキサン及びアセトニトリルから選ばれる第二の溶剤とを含有することが好ましい。また前記第一の溶剤と前記第二の溶剤との体積比(第一の溶剤:第二の溶剤)が10:90〜50:50であることが好ましい。第一の溶剤の体積比が10より小さくなると、目的の物質の分離が極端に遅くなり、目的の物質を実質的に分離できない場合がある。また第一の溶剤の体積比が50よりも大きくなると、分離させたい二種以上の物質の溶出が共に早まり、目的の物質の分離に悪影響を及ぼす場合がある。
【0073】
前記移動相は、目的の物質の物性によっては、分離時における目的の物質の安定性を高める観点から、弱酸性の溶剤や弱塩基性の溶剤を含有していても良い。弱酸性の溶剤としては、例えば酢酸等のカルボン酸が挙げられ、弱塩基性の溶剤としては、例えばジエチルアミン等のアミンが挙げられる。このような弱酸性又は弱塩基性の溶剤の含有量は、目的の物質の物性や用いる溶剤の種類によって異なるが、移動相全体に対して0.01〜0.5体積%であることが好ましく、0.01〜0.2体積%であることがより好ましい。前記含有量が0.01体積%よりも小さいと、前述した溶剤による効果が得られない場合がある。また前記含有量が0.5体積%よりも大きいと、前述した溶剤が目的の物質やカラムに収容される分離剤に悪影響を及ぼす場合がある。
【0074】
前記移動相としては、具体的には、メタノール−エタノール混合溶剤、イソプロピルアルコール−ノルマルヘキサン混合溶剤、エタノール−ノルマルヘキサン混合溶剤、メタノール−アセトニトリル混合溶剤等の二成分の混合溶剤や、メタノール−アセトニトリル−酢酸混合溶剤、メタノール−アセトニトリル−ジエチルアミン混合溶剤、イソプロピルアルコール−ノルマルヘキサン−ジエチルアミン混合溶剤、エタノール−ノルマルヘキサン−ジエチルアミン混合溶剤等の三成分の混合溶剤等が挙げられる。
【0075】
前記混合流体は、超臨界流体と溶剤との混合物である。混合流体の組成比は、目的の物質の種類や超臨界流体の種類等に応じて適宜決めることができる。また、混合流体用の溶剤は、目的の物質の種類や超臨界流体の種類等に応じて、公知の種々の溶剤の中から一種又は二種以上を選ぶことができる。混合流体用の前記溶剤としては、前述した溶剤を用いることができる。
【0076】
前記超臨界流体は、臨界圧力以上及び臨界温度以上のいずれか一方又は両方の状態(すなわち超臨界状態)にある物質である。超臨界流体として用いられる物質としては、例えば二酸化炭素、アンモニア、二酸化イオウ、ハロゲン化水素、亜酸化窒素、硫化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ハロゲン化炭化水素、水等が挙げられる。
【0077】
前記混合流体の生成方法は特に限定されない。例えば、超臨界流体と溶剤とを混合して前記混合流体を生成しても良いし、液化ガスと溶剤とを混合し、この混合物に加圧及び加熱のいずれか一方又は両方を行って混合物中の液化ガスを超臨界流体とすることにより前記混合流体を生成しても良い。前記混合流体は、例えば熱交換器や高圧ポンプ等の公知の機器を用いて生成することができる。
【0078】
本発明のクロマトグラフィー装置は、クロマトグラフィー装置の種類に応じて、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していても良い。他の構成要素としては、例えば調整装置、再利用用流路、及びガス回収装置等が挙げられる。
【0079】
前記調整装置は、前記留出液の組成を、前記分離用流路に供給される移動相の組成に調整するための装置である。前記調整装置は、移動相の組成や移動相中の不純物の種類に応じて公知の装置を利用して構成することができる。例えば、移動相が一種類の溶剤であったり、前記留出液に不純物として微量成分が含まれる場合では、調整装置は、移動相中の微量成分等の不純物を移動相から除去するための蒸留装置や吸着塔等によって構成することができる。
【0080】
移動相が混合溶剤である場合では、調整装置は、例えば米国特許第6325898号明細書に示されるような、組成が調整されるべき移動相を収容する調整槽と、調整槽に収容された移動相の組成を検出するための誘電率測定装置と、調整槽に収容された移動相に補給すべき溶剤を収容する補給用槽と、誘電率測定装置の検出結果に応じて補給用槽からの溶剤の補給を制御する制御装置とを有する装置によって構成することができる。
【0081】
移動相が混合溶剤である場合では、前記誘電率測定装置に代えて近赤外分光分析装置を用いることが、より一層多彩な組み合わせの移動相や少量の成分を含有する移動相の組成を検出する観点から好ましい。なお、調整装置の設置数は特に限定されない。
【0082】
前記再利用用流路は、調整装置で調整された留出液を移動相に再利用するために、調整装置と前記分離用流路又はこれに移動相を供給するための部材や流路とを接続する流路である。再利用用流路は、管、弁、ポンプ等の公知の部材によって構成することができる。
【0083】
前記ガス回収装置は、クロマトグラフィー装置の種類が超臨界流体クロマトグラフィー装置及び擬似移動床式超臨界流体クロマトグラフィー装置である場合に設けられる。前記ガス回収装置は、前記気液分離装置で分離された気相を回収して、超臨界流体を生成するための超臨界流体生成装置に向けて供給するための装置である。ガス回収装置は、管、逆止弁や開閉弁等の弁、及びガス精製装置等の公知の部材によって構成することができる。
【0084】
前記超臨界流体生成装置は、超臨界流体となる物質を加圧加熱して超臨界流体にする装置である。超臨界流体生成装置は、管、圧力調整弁等の弁、熱交換器、及び高圧ポンプ等の公知の部材や機器によって構成することができる。
【0085】
前記ガス精製装置は、回収されたガスから溶剤成分を除去して回収されたガスを精製するための装置である。ガス精製装置には、ガス中のガス成分と溶剤成分とを分離する気液分離装置や、ガス中の溶剤成分を捕集するための吸収装置等の公知の装置が挙げられる。
【0086】
以下、本発明の実施の形態をより詳しく説明する。
【0087】
<第一の実施の形態>
本実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、図1に示されるように、12本のカラム1〜12が直列に接続されてなる無端状の流路13と、無端状の流路13に移動相を供給するための第一の流路14と、目的の物質を含有する移動相を無端状の流路13に供給するための第二の流路15と、無端状の流路13から移動相を排出するための第一及び第二の排出用流路16、17とを有する。
【0088】
本実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに、第一の排出用流路16に直列に接続されている三基の蒸発装置18〜20と、蒸発装置18〜20のそれぞれの塔頂に接続され、蒸発装置18〜20から留出した留出液が流される第一の留出液流路21と、第一の留出液流路21と第一の排出用流路16とを接続する第一の留出液戻し用流路22と、留出液の流路を第一の留出液流路21と第一の留出液戻し用流路22との間で切り替えるための第一の流路切り替え装置としての三方弁23と、第一の排出用流路16中に接続されている第一の予備槽24と、第一の予備槽24に収容されている移動相の液面を検出する第一の液面計25と、第一の液面計25による検出結果に応じて三方弁23による流路の切り替えを制御する第一の制御装置26とを有する。
【0089】
本実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに、第二の排出用流路17に直列に接続されている三基の蒸発装置27〜29と、蒸発装置27〜29のそれぞれの塔頂に接続され、蒸発装置27〜29から留出した留出液が流される第二の留出液流路30と、第二の留出液流路30と第二の排出用流路17とを接続する第二の留出液戻し用流路31と、留出液の流路を第二の留出液流路30と第二の留出液戻し用流路31との間で切り替えるための第二の流路切り替え装置としての三方弁32と、第二の排出用流路17中に接続されている第二の予備槽33と、第二の予備槽33に収容されている移動相の液面を検出する第二の液面計34と、第二の液面計34による検出結果に応じて三方弁32による流路の切り替えを制御する第二の制御装置35とを有する。
【0090】
本実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに、第一及び第二の留出液流路21、30の留出液が収容される回収槽36と、回収槽36に回収された留出液を精製するための蒸留装置37と、精製された留出液の組成を調整するための溶剤調整装置38と、溶剤調整装置38と第一の流路14とを接続する再利用用流路39とを有する。
【0091】
本実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、さらに、無端状の流路13において移動相を循環させるための循環ポンプ40と、蒸発装置20の缶出液を収容するための第一の貯留槽41と、蒸発装置29の缶出液を収容するための第二の貯留槽42とを有する。
【0092】
無端状の流路13は、カラム1〜12と、カラム1〜12のそれぞれを直列に接続する複数の接続用流路とから構成されている。第一及び第二の流路14、15、第一及び第二の排出用流路16、17のそれそれの流路は、前記接続用流路のそれぞれに接続されており、特定の接続用流路に対して開閉するように構成されている。
【0093】
蒸発装置18〜20は、蒸発装置18の缶出液が蒸発装置19に供給され、蒸発装置19の缶出液が蒸発装置20に供給されるように接続されている。同様に、蒸発装置27〜29は、蒸発装置27の缶出液が蒸発装置28に供給され、蒸発装置28の缶出液が蒸発装置29に供給されるように接続されている。
【0094】
第一の予備槽24は、第一の排出用流路16に介在するように、第一の排出用流路16に接続されている。例えば、第一の予備槽24の頂部又は上部には、無端状の流路13に接続されている第一の排出用流路16が接続され、第一の予備槽24の底部には、蒸発装置18に接続されている第一の排出用流路16が接続される。蒸発装置18に接続されている第一の排出用流路16には、第一の予備槽24に収容されている移動相の排出流量を制御する流量制御弁や定量ポンプが設けられる。
【0095】
あるいは、無端状の流路13に接続されている第一の排出用流路16は、第一の予備槽24の頂部又は上部に接続され、蒸発装置18に接続されている第一の排出用流路16は、第一の予備槽24の頂部又は上部から第一の予備槽24の底部まで延出する汲み取り管に接続される。汲み取り管には、第一の予備槽24に収容されている移動相を汲み上げる定量ポンプが設けられる。
【0096】
同様に、第二の予備槽33は、第二の排出用流路17に介在するように、第二の排出用流路17に接続されている。
【0097】
蒸留装置37の塔頂は、溶剤調整装置38に接続されている。溶剤調整装置38は、例えば米国特許第6325898号明細書に開示されている装置を利用した装置であって、誘電率測定装置に代えて、例えばブルカー・オプティクス社製のMATRIXシリーズ等の近赤外分光分析装置を設けた装置である。
【0098】
本実施の形態において、例えば、移動相は、50体積%のメタノールと50体積%のアセトニトリルとの混合溶剤に、総量で0.01体積%のジエチルアミンを混合した混合溶剤とし、カラムは、例えば特許第2783819号明細書に記載の方法によって製造されるセルロースのカルバメート誘導体からなる粒子を分離剤として収容するカラムとし、試料溶液は、ラセミ体等の光学異性体の混合物の溶液とし、目的の物質は光学異性体とする。
【0099】
第一の流路14は、例えばカラム12とカラム1との間から無端状の流路13に移動相を供給する。第二の流路15は、例えばカラム6とカラム7との間から無端状の流路13に試料溶液を供給する。第一の排出用流路16は、無端状の流路13の移動相を、例えばカラム3とカラム4との間から排出する。第二の排出用流路17は、無端状の流路13の移動相を、例えばカラム9とカラム10との間から排出する。
【0100】
第一の排出用流路16に排出された移動相は、第一の予備槽24に収容される。第一の予備槽24において、移動相の液面が所定の位置に達したら、第一の予備槽24に収容されている移動相は第一の排出用流路16に定量的に排出され、蒸発装置18に供給される。同様に、第二の排出用流路17に排出された移動相は、所定量が第二の予備槽33に収容され、その後蒸発装置27に供給される。蒸発装置18〜20及び27〜29では、供給される移動相を濃縮する運転が行われる。
【0101】
なお、初期状態として、三方弁23は、第一の留出液流路21を連通し、第一の留出液流路21に対して第一の留出液戻し用流路22を遮断しているとする。同様に、三方弁32は、第二の留出液流路30を連通し、第二の留出液流路30に対して第二の留出液戻し用流路31を遮断しているとする。
【0102】
無端状の流路13に供給された試料溶液中の光学異性体は、まずカラム7の分離剤に吸着する。試料溶液中の光学異性体のうち、分離剤に吸着されやすい成分(以下、この成分を「エクストラクト」とも言う)は分離剤に強く吸着され、分離剤に吸着されにくい成分(以下、この成分を「ラフィネート」とも言う)は、エクストラクトに比べて弱く吸着さ
れる。ラフィネート及びエクストラクトは、共に移動相の流れによってカラム7を移動するが、ラフィネートは、エクストラクトよりも移動相が流れる方向における下流側に分布する。
【0103】
ラフィネート及びエクストラクトがカラム7を流出したら、第一及び第二の流路14、15、第一及び第二の排出用流路16、17のそれぞれを、カラム一本分下流側の位置で接続することによって流路を切り替える。すなわち、無端状の流路13において、第一の流路14はカラム1とカラム2との間に接続し、第二の流路15はカラム7とカラム8との間に接続し、第一の排出用流路16はカラム4とカラム5との間に接続し、第二の排出用流路17はカラム10とカラム11との間に接続する。ラフィネート及びエクストラクトがカラム7を通過する時間を1ピリオドとしたときに、前述したような流路の切り替えを1ピリオドごとに行う。
【0104】
前述した流路の切り替えを数ピリオド続けると、分離剤に対する吸着性に起因するエクストラクトの分布とラフィネートの分布との偏りがより顕在化する。すなわち、試料溶液の供給位置に対して、無端状の流路13における移動相の流れ方向の上流側にはエクストラクトが主に分布して濃縮され、下流側にはラフィネートが主に分布して濃縮される。偏在し濃縮されたエクストラクトは、無端状の流路13から移動相とともに第一の排出用流路16を介して排出され、偏在し濃縮されたラフィネートは、無端状の流路13から移動相とともに第二の排出用流路17を介して排出される。
【0105】
なお、エクストラクト及びラフィネートが無端状の流路から排出されるようになると、無端状の流路におけるエクストラクトとラフィネートの分布はほぼ一定となる。したがって、移動相と試料溶液の無端状の流路13への供給と、無端状の流路13からの移動相の排出とを一定に行い、前述した流路の切り替えをピリオドごとに行うと、試料溶液の供給と分離された目的の物質を含有する移動相の排出とが連続して行われる。
【0106】
第一の排出用流路16に排出された、エクストラクトを含有する移動相は、蒸発装置18〜20によって段階的に濃縮される。例えばエクストラクトを含有する移動相は、蒸発装置18によって30〜50質量%まで濃縮され、次いで蒸発装置19によって40〜70質量%まで濃縮され、次いで蒸発装置20によって60〜99質量%まで濃縮される。蒸発装置18〜20から留出した留出液は第一の留出液流路21に供給され、蒸発装置20の缶出液は第一の貯留槽41に収容される。
【0107】
同様に、第二の排出用流路17に排出された、ラフィネートを含有する移動相は、蒸発装置27〜29によって段階的に濃縮され、蒸発装置27〜29から留出した留出液は第二の留出液流路30に供給され、蒸発装置29の缶出液は第二の貯留槽42に収容される。
【0108】
なお、第一の貯留槽41に収容された缶出液は、エクストラクトを含有する移動相の濃縮物であり、第二の貯留槽42に収容された缶出液は、ラフィネートを含有する移動相の濃縮物である。これらの濃縮物は、必要に応じて再結晶や減圧蒸留等によって精製される。
【0109】
第一及び第二の留出液流路21、30の留出液は、回収槽36に収容される。回収槽36に収容された留出液は、蒸留装置37に供給される。蒸留装置37では、留出液に含まれる成分のうち、移動相を構成する溶剤又は混合溶剤の沸点よりも高い沸点を有する成分は蒸留残渣として蒸留装置37から排出される。移動相を構成する成分は、蒸留装置37の塔頂から留出して溶剤調整装置38に供給される。
【0110】
溶剤調整装置38に供給された液は、蒸発装置18〜20又は27〜29の留出物であり、さらに蒸留装置37の留出物である。このため、移動相を構成する成分のうち、沸点が低い成分の濃度が高くなることがある。
【0111】
溶剤調整装置38は、供給された液の近赤外領域(例えば0.8〜2.5μm)における反射光(又は透過光)の波長ごとの強度を検出し、例えば検出結果におけるアセトニトリルに特有の波長の強度を供給された液の温度によって必要に応じて補正し、得られた測定値を検量線と対比し、測定値が設定されている範囲を超えていたらアセトニトリル及びメタノールのいずれか一方又は両方を前記液に供給して、前記液の組成を移動相の組成に調整する。
【0112】
このように、必要に応じて組成が調整された前記液は、再利用用流路39に排出され、第一の流路14に供給され、擬似移動床式クロマトグラフィー装置における移動相に再利用される。
【0113】
無端状の流路13から第一及び第二の排出用流路16、17のそれぞれを介して安定して排出されている場合では、第一及び第二の予備槽24、33に移動相が安定して供給され、また第一及び第二の予備槽24、33から移動相が安定して排出されている。したがって、第一及び第二の予備槽24、33における移動相の液面の位置は安定しており、また蒸発装置18〜20及び27〜29の運転も安定している。
【0114】
無端状の流路13から第一の排出用流路16への移動相の排出が何らかの要因によって止められると、第一の予備槽25への移動相の供給が停止する。しかしながら、蒸発装置18には、第一の予備槽25に収容されている移動相が供給される。したがって、第一の予備槽25の移動相の液面は低下する。
【0115】
第一の予備槽25における移動相の液面の低下は、第一の液面計25によって検出される。第一の予備槽25における移動相の液面の低下が第一の液面計25によって検出されると、第一の制御装置26は、三方弁23を制御し、第一の留出液流路21を遮断するとともに蒸発装置18〜20側の第一の留出液流路21と第一の留出液戻し用流路22とを接続する。この制御により、蒸発装置18〜20から留出した留出液の流路が、第一の留出液流路21から第一の留出液戻し用流路22に切り替わる。
【0116】
蒸発装置18〜20から留出した留出液の流路が第一の留出液流路21から第一の留出液戻し用流路22に切り替わると、蒸発装置18〜20のそれぞれから留出した留出液は、第一の排出用流路16を介して蒸発装置18に供給される。このように、蒸発装置18への移動相の供給が途絶えた場合には、蒸発装置18〜20において濃縮される液として留出液が供給される。したがって、蒸発装置18への移動相の供給が途絶えても、蒸発装置18〜20において濃縮される液の蒸発装置18〜20への供給は途絶えないため、蒸発装置18〜20の運転は、引き続き安定している。
【0117】
無端状の流路13から第一の排出用流路16へ移動相が再び排出されると、移動相が第一の予備槽25に収容され、第一の予備槽25における移動相の液面が上昇する。第一の予備槽における移動相の液面が所定の位置まで上昇したことが第一の液面計25によって検出されると、第一の制御装置26は、三方弁23を制御し、第一の留出液戻し用流路22を遮断するとともに第一の留出液流路21を連通させる。この制御により、蒸発装置18〜20から留出した留出液の流路が、第一の留出液戻し用流路22から第一の留出液流路21に切り替わる。蒸発装置18〜20には、移動相が再び安定して供給される。
【0118】
同様に、無端状の流路13から第二の排出用流路17への移動相の排出が何らかの要因
によって止められると、第二の予備槽33における移動相の液面が低下し、第二の制御装置35によって三方弁32が制御され、蒸発装置27〜29から留出した留出液の流路が第二の留出液流路30から第二の留出液戻し用流路31に切り替わり、蒸発装置27〜29には、第二の留出液戻し用流路31及び第二の排出用流路17を介して留出液が供給される。
【0119】
そして、無端状の流路13から第二の排出用流路17へ移動相が再び排出されると、第二の予備槽33における移動相の液面が上昇し、第二の制御装置35によって三方弁32が制御され、蒸発装置27〜29から留出した留出液の流路が第二の留出液戻し用流路31から第二の留出液流路30に切り替わり、蒸発装置27〜29には、移動相が再び安定して供給される。
【0120】
なお、第一の留出液戻し用流路22から第一の排出用流路16を介しての蒸発装置18への留出液の供給は、第一の予備槽25に収容されている移動相が第一の予備槽25から全て排出された後に行われても良い。
【0121】
また、第一の予備槽25の移動相が全て排出される前に留出液の前記供給を行う場合では、第一の予備槽25から蒸発装置18への移動相の供給を停止しても良いし、第一の予備槽25からの移動相の供給と留出液の前記供給とを並行しても良い。第一の予備槽25からの移動相の供給と留出液の前記供給とを並行する場合では、蒸発装置18への移動相及び留出液である被濃縮液の供給量が、留出液が供給される前の第一の予備槽25から蒸発装置18への移動相の供給量と同じになるように、流量制御弁等の公知の流量制御装置によって適宜調整することが好ましい。第二の排出用流路17における移動相及び留出液の供給についても同様である。
【0122】
また、本実施の形態では、第一及び第二の排出用流路16、17の両方に留出液戻し用流路、流路切り替え装置、制御装置、及び予備槽が設けられているが、目的の物質が一種類の物質である場合は、その目的の物質が排出される排出用流路のみ(例えば第一の排出用流路16のみ)に前述した留出液戻し用流路等を設けても良い。
【0123】
また、本実施の形態では、試料溶液中の二種類の光学異性体のそれぞれが分取されているが、試料溶液に三種以上の物質が含まれている場合では、排出用流路及び留出液戻し用流路等をさらに設けても良いし、目的の物質が第一の排出用流路16に排出され、その他の物質が第二の排出用流路17に排出されるように、無端状の流路13における流路の切り替えを行っても良い。
【0124】
また、本実施の形態では、第一の排出用流路16に対して第一の制御装置26が設けられ、第二の排出用流路17に対して第二の制御装置35が設けられているが、第一及び第二の制御装置26、35に代えて一体の制御装置で三方弁23、32の制御を行っても良い。
【0125】
本実施の形態の装置は、第一及び第二の排出用流路16、17の移動相を濃縮するための蒸発装置18〜20、27〜29と、蒸発装置18〜20、27〜29からの留出液が流れる第一及び第二の留出液流路21、30と、第一及び第二の留出液流路21、30の留出液を第一及び第二の排出用流路16、17に戻すための第一及び第二の留出液戻し用流路22、31と、第一及び第二の留出液流路21、30と第一及び第二の留出液戻し用流路22、31との接続部に設けられた三方弁23、32と、第一及び第二の排出用流路16、17の流量の増減を検出する第一及び第二の液面計25、34と、第一及び第二の液面計25、34による検出結果に応じて三方弁23、32を制御する第一及び第二の制御装置26、35とを有することから、第一及び第二の排出用流路16、17における移
動相の供給が途絶えても、蒸発装置18〜20、27〜29の運転を安定して行うことができる。このため、蒸発装置18〜20、27〜29における突沸等の急激な蒸発や急激な液の濃縮が防止され、一定の組成の濃縮物を得ることができる。
【0126】
また、本実施の形態の装置は、第一及び第二の排出用流路16、17の移動相が収容され、収容された移動相を第一及び第二の排出用流路16、17に排出する第一及び第二の予備槽24、33をさらに有することから、第一及び第二の排出用流路16、17における移動相の供給が途絶えても、第一及び第二の予備槽24、33に収容されている移動相を定量的に蒸発装置18〜20、27〜29に供給することができる。
【0127】
また、本実施の形態の装置は、第一及び第二の予備槽24、33を有することから、留出液が定量的に蒸発装置に供給されるまでの間も、第一及び第二の予備槽24、33に収容されている移動相を第一及び第二の排出用流路16、17供給することができることから、蒸発装置18〜20、27〜29に供給される被濃縮液の流量を一定の流量に保つことができる。
【0128】
また、本実施の形態の装置は、第一及び第二の予備槽24、33と第一及び第二の液面計25、34とを有することから、第一及び第二の排出用流路16、17における移動相の流量の増減を第一及び第二の予備槽24、33における移動相の液面の位置によって検出することができる。このため、第一及び第二の制御装置26、35は、第一及び第二の予備槽24、33において設定されている液面の位置に対して、実際の液面が下がったときに蒸発装置18〜20、27〜29への留出液の供給が開始され、実際の液面が設定位置まで上がったときに蒸発装置18〜20、27〜29への留出液の供給が停止されるように、三方弁23、32を制御すれば良い。したがって、移動相の流量の増減に伴う蒸発装置18〜20、27〜29への留出液の供給の制御を簡潔に行うことができる。
【0129】
また、本実施の形態の装置は、無端状の流路13と、第一及び第二の流路14、15及び第一及び第二の排出用流路16、17とを有することから、無端状の流路13に対するその他の流路の切り替えを適切に行うことによって、試料溶液を連続して供給し、目的の物質を連続して排出することが可能であり、又は試料溶液の供給や目的の物質の排出を間欠的に行って特定の成分のみを取り出すことが可能である。このため、試料溶液から目的の物質を分離することによる目的の物質の製造に好適に用いることができる。
【0130】
また、本実施の形態の装置は、無端状の流路13に供給される移動相の組成に留出液の組成を調整するための蒸留装置37及び溶剤調整装置38と、溶剤調整装置38と第一の流路14とを接続する再利用用流路39とを有することから、留出液を移動相に再利用することができる。このため、留出液を廃棄する場合に比べて、移動相の生成に要する溶剤のコストや廃液の量を削減することができる。
【0131】
また、本実施の形態の装置は、蒸留装置37を有することから、目的の物質の副生物や変性物等の、移動相を構成する溶剤又は混合溶剤の沸点よりも高い沸点を有する物質を留出液から除去することができる。このため、目的の物質の分離や移動相の濃縮に対する移動相の組成の変化による影響を抑制することができる。
【0132】
また、本実施の形態の装置は、溶剤調整装置38を有することから、移動相に混合溶剤を用いる場合に、低い沸点の溶剤の濃度が高まった液を移動相の組成に調整することができる。このため、目的の物質の分離や移動相の濃縮に対する移動相の組成の変化による影響を抑制することができる。
【0133】
<第二の実施の形態>
本実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置は、図2に示されるように、第一及び第二の予備槽24、33に代えて第一及び第二の予備槽51、54を有し、第一及び第二の液面計25、34に代えて第一及び第二の流量計52、55を有し、第一及び第二の留出液戻し用流路22、31における留出液の流量を制御するための第一及び第二の流量制御弁53、56をさらに有する以外は、前述した第一の実施の形態の擬似移動床式クロマトグラフィー装置と同様に構成されている。
【0134】
第一の予備槽51は、第一の留出液戻し用流路22に介在するように、第一の留出液戻し用流路22に接続されている。例えば第一の予備槽51の頂部又は上部には、三方弁23に接続されている第一の留出液戻し用流路22が接続され、第一の予備槽51の底部には、第一の排出用流路16に接続されている第一の留出液戻し用流路22が接続される。同様に、第二の予備槽54は、第二の留出液戻し用流路31に介在するように、第二の留出液戻し用流路31に接続されている。第一及び第二の予備槽51、54には、初期状態としてそれぞれ所定量の留出液が収容されている。
【0135】
第一の流量計52は、第一の留出液戻し用流路22と第一の排出用流路16との接続位置よりも、第一の排出用流路16における移動相の流れ方向における上流側の第一の排出用流路16に設けられている。同様に、第二の流量計55は、第二の留出液戻し用流路31と第二の排出用流路17との接続位置よりも、第二の排出用流路17における移動相の流れ方向における上流側の第二の排出用流路17に設けられている。
【0136】
第一の流量制御弁53は、第一の予備槽51と第一の排出用流路16とを接続する第一の留出液戻し用流路22に設けられている。同様に、第二の流量制御弁56は、第二の予備槽54と第二の排出用流路17とを接続する第二の留出液戻し用流路31に設けられている。第一及び第二の流量制御弁53、56は、初期状態として、それぞれ第一及び第二の留出液戻し用流路22、31を閉じている。
【0137】
三方弁23、第一の流量計52、及び第一の流量制御弁53は、それぞれ第一の制御装置26に接続されており、三方弁32、第二の流量計55、及び第二の流量制御弁56は、それぞれ第二の制御装置35に接続されている。
【0138】
第一及び第二の排出用流路16、17に移動相が定量的に供給されている場合では、本実施の形態の装置は、前述した第一の実施の形態の装置と同様に作動する。
【0139】
無端状の流路13から第一の排出用流路16への移動相の排出が何らかの要因によって止められると、第一の排出用流路16における移動相の流量が減少する。第一の排出用流路16における移動相の流量の減少は、第一の流量計52によって検出される。
【0140】
第一の排出用流路16における移動相の流量の減少が第一の流量計52によって検出されると、第一の制御装置26は、第一の流量制御弁53を制御し、第一の留出液戻し用流路22を開いて第一の予備槽51と第一の排出用流路16とを接続する。また、第一の制御装置26は、前述した第一の実施の形態と同様に三方弁23を制御して、蒸発装置18〜20から留出した留出液の流路を第一の留出液流路21から第一の留出液戻し用流路22に切り替える。
【0141】
蒸発装置18〜20から留出した留出液の流路が第一の留出液流路21から第一の留出液戻し用流路22に切り替わると、蒸発装置18〜20のそれぞれから留出した留出液は、第一の留出液戻し用流路22を介して第一の予備槽51に収容される。第一の予備槽51に収容された留出液は、第一の留出液戻し用流路22及び第一の排出用流路16を介して蒸発装置18に供給される。したがって、前述した第一の実施の形態の装置と同様に、
蒸発装置18〜20の安定した運転が維持される。
【0142】
無端状の流路13から第一の排出用流路16へ移動相が再び排出されると、第一の排出用流路16に移動相が再び流れる。第一の排出用流路16における移動相の流量が所定の流量に達したことが第一の流量計52によって検出されると、第一の制御装置26は、第一の流量制御弁53を制御し、第一の予備槽51と第一の排出用流路16との間の第一の留出液戻し用流路22を閉じる。また第一の制御装置は、前述した第一の実施の形態と同様に三方弁23を制御して、第一の留出液戻し用流路22を遮断するとともに第一の留出液流路21を連通させる。こうして蒸発装置18〜20には、移動相が再び安定して供給される。
【0143】
同様に、無端状の流路13から第二の排出用流路17への移動相の排出が何らかの要因によって止められると、第二の排出用流路17における移動相の流量が減少し、第二の制御装置35によって第二の流量制御弁56及び三方弁32が制御され、蒸発装置27〜29のそれぞれから留出した留出液は、第二の留出液戻し用流路31、第二の予備槽54、及び第二の排出用流路17を介して蒸発装置27に供給される。
【0144】
そして、無端状の流路13から第二の排出用流路17へ移動相が再び排出されると、第二の排出用流路17に移動相が再び流れ、第二の制御装置35によって第二の流量制御弁56及び三方弁32が制御され、蒸発装置27〜29から留出した留出液の流路が第二の留出液戻し用流路31から第二の留出液流路30に切り替わり、蒸発装置27〜29には、移動相が再び安定して供給される。
【0145】
なお、本実施の形態では、第一の流量計52は、第一の留出液戻し用流路22と第一の排出用流路16との接続位置よりも上流側の第一の排出用流路16に設けられているが、前記接続位置よりも下流側の第一の排出用流路16に設けられても良い。第一の流量計52を前記接続位置よりも下流側の第一の排出用流路16に設ける場合では、第一の流量計52によって検出される第一の排出用流路16における被濃縮液の流量が所定の流量となるように、第一の制御装置26が第一の流量制御弁53及び三方弁23を制御しても良い。このような構成及び制御によれば、第一の実施の形態と同様に、蒸発装置18へ供給される被濃縮液の流量が一定に保たれる。第二の流量計55及び第二の制御装置35についても同様である。
【0146】
本実施の形態の装置は、第一及び第二の液面計25、34に代えて第一及び第二の流量計52、55を有し、第一及び第二の流量制御弁53、56をさらに有する以外は前述した第一の実施の形態の装置と同様に構成されていることから、前述した第一の実施の形態の装置と同様に、第一及び第二の排出用流路16、17における移動相の供給が途絶えても、蒸発装置18〜20、27〜29の運転を安定して行うことができる。このため、蒸発装置18〜20、27〜29における突沸等の急激な蒸発や急激な液の濃縮が防止され、一定の組成の濃縮物を得ることができる。
【0147】
また、本実施の形態の装置は、第一及び第二の予備槽24、33に代えて第一及び第二の予備槽51、54を有する以外は前述した第一の実施の形態の装置と同様に構成されていることから、前述した第一の実施の形態の装置と同様に、留出液が定量的に蒸発装置に供給されるまでの間も、第一及び第二の予備槽51、54に収容されている留出液を第一及び第二の排出用流路16、17に供給することができることから、蒸発装置18〜20、27〜29に供給される被濃縮液の流量を一定の流量に保つことができる。
【0148】
また、本実施の形態の装置は、前述した第一の実施の形態の装置と同様に、試料溶液から目的の物質を分離することによる目的の物質の製造に好適に用いることができ、留出液
を廃棄する場合に比べて、移動相の生成に要する溶剤のコストや廃液の量を削減することができ、また、目的の物質の分離や移動相の濃縮に対する移動相の組成の変化による影響を抑制することができる。
【0149】
<第三の実施の形態>
本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、図3に示されるように、カラム1から第二の流路15に代えて、カラム61と、カラム61を含む分離用流路62と、カラム61に向けて移動相を送るためのポンプ63と、ポンプ63によって送られる移動相の温度を調整する熱交換器64と、温度が調整された移動相に試料溶液を注入する注入器65と、カラム61を通過した移動相中の成分を検出する検出器66と、検出器66を通過した移動相が流れる分離用流路62と第一の排出用流路16とを連通遮断するための弁67と、検出器66を通過した移動相が流れる分離用流路62と第二の排出用流路17とを連通遮断するための弁68とを有し、分離用流路62と再利用用流路39とがポンプ63を介して接続されている以外は、前述した第一の実施の形態の装置と同様に構成されている。
【0150】
初期状態として、溶剤調整装置38には新規の移動相が収容されており、弁67、68のうちの一方の弁、例えば弁67は開かれており、弁68は閉じられている。カラム61に収容されている分離剤、試料溶液、及び移動相の組成は、前述した第一の実施の形態と同様とする。
【0151】
分離用流路62には、目的の物質を分離するための条件で移動相が供給される。分離用流路62に供給された移動相は、第一の排出用流路16に供給される。
【0152】
第一の排出用流路16に移動相が供給されたら、目的の物質を含有する移動相を濃縮する条件で蒸発装置18〜20を運転させる。蒸発装置18〜20の運転が安定したら、弁67を閉じて弁68を開き、同様に蒸発装置27〜29を運転させる。弁67を閉じることによって蒸発装置18への移動相の供給が途絶えると、第一の制御装置26は三方弁23を制御する。これによって、第一の留出液戻し用流路22を介して留出液が蒸発装置18に供給され、蒸発装置18〜20の運転は安定して継続される。
【0153】
蒸発装置27〜29、18〜20の運転がそれぞれ安定したら、注入器65から試料溶液を分離用流路62に注入する。試料溶液中の成分はカラム61においてラフィネートとエクストラクトとに分離される。
【0154】
ラフィネートを含有する移動相は、第二の排出用流路17に供給され、蒸発装置27〜29によって濃縮される。
【0155】
カラム61からのラフィネートの排出が終了し、検出器65によってエクストラクトが検出されると弁68は閉じられ、弁67が開かれる。弁68が閉じられて蒸発装置27への移動相の供給が途絶えると、第二の制御装置35は三方弁32を制御する。これによって、第二の留出液戻し用流路31を介して留出液が蒸発装置27に供給され、蒸発装置27〜29の運転は安定して継続される。
【0156】
エクストラクトを含有する移動相は、第一の排出用流路16に供給され、蒸発装置18〜20によって濃縮される。
【0157】
カラム61からのエクストラクトの排出が終了したら、弁67を閉じて弁68を開き、試料溶液を注入器65から再び注入する。
【0158】
本実施の形態の装置は、前述した第一の実施の形態と同様に、第一及び第二の排出用流
路16、17における移動相の供給が途絶えても、蒸発装置18〜20、27〜29における突沸等の急激な蒸発や急激な液の濃縮が防止され、一定の組成の濃縮物を得ることができ、第一及び第二の予備槽24、33に収容されている移動相を定量的に蒸発装置18〜20、27〜29に供給することができ、また蒸発装置18〜20、27〜29に供給される被濃縮液の流量を一定の流量に保つことができる。
【0159】
また、本実施の形態の装置は、前述した第一の実施の形態と同様に、移動相の流量の増減に伴う蒸発装置18〜20、27〜29への留出液の供給の制御を簡潔に行うことができる。
【0160】
また、本実施の形態の装置は、前述した第一の実施の形態と同様に、留出液を廃棄する場合に比べて移動相の生成に要する溶剤のコストや廃液の量を削減することができ、また目的の物質の分離や移動相の濃縮に対する移動相の組成の変化による影響を抑制することができる。
【0161】
<第四の実施の形態>
本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、図4に示されるように、従来の超臨界流体クロマトグラフィー装置に第一の実施の形態における濃縮装置を適用した装置である。
【0162】
本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、高圧の二酸化炭素が充填されているボンベ71と、ボンベ71から供給される二酸化炭素を冷却して液化ガスとするための熱交換器72と、熱交換器72で生成した液化ガスを定量的に圧送する高圧ポンプ73と、溶剤を収容する溶剤タンク74と、高圧ポンプ73で送られる液化ガスに溶剤タンク74から溶剤を定量的に供給するための高圧ポンプ75と、液化ガスと溶剤との混合物を加熱して混合物中の液化ガスを超臨界流体にするための熱交換器76とを有する。
【0163】
また本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、生成した移動相に目的の物質(例えば光学異性体)を含有する試料を注入するための注入器77と、注入された試料中の目的の物質を分離するためのカラム78と、カラム78を通った移動相中の物質を検出する検出器79と、高圧ポンプ73から検出器79までの系内の圧力を所定の圧力に保つための背圧弁80とを有する。
【0164】
さらに本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、背圧弁80を通過した移動相を気液分離するための二台の気液分離装置81a、81bと、気液分離装置81a、81bで分離された液相を収容する第一の槽82a、82bと、第一の槽82a、82bを開閉する弁83a、83bとを有する。カラム78から弁83a、83bまでの流路は前記分離用流路に相当する。
【0165】
さらに本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、気液分離装置81a、81bと熱交換器72とを接続するガス回収管84と、ガス回収管84を流れる回収ガスから液体を分離するための気液分離装置85と、気液分離装置85で分離された液相を収容する第二の槽86と、第二の槽86に接続されている第三の槽87とを有する。
【0166】
ボンベ71には、ボンベ71から所定の圧力で二酸化炭素のガスを供給するためのレギュレータ88が設けられている。レギュレータ88と熱交換器72との間には、熱交換器72からボンベ71へのガスの逆流を防止するための逆止弁89が設けられている。熱交換器72と高圧ポンプ73との間には、熱交換器72で生成した液化ガスを収容するバッファタンク90が設けられている。
【0167】
また、背圧弁80と気液分離装置81a、81bとの間には、弁91a、91bが設け
られており、気液分離装置81a、81bと気液分離装置85との間のガス回収管84には、気液分離装置85から気液分離装置81a、81bへのガスの逆流を防止するための逆止弁92a、92bが設けられている。
【0168】
第一の排出用流路16は、気液分離装置81aに対応する弁83aと第一の予備槽24とを接続しており、第二の排出用流路17は、気液分離装置81bに対応する弁83bと第二の予備槽33とを接続している。また、再利用用流路39は、溶剤調整装置38と溶剤タンク74とを接続している。
【0169】
なお、本実施の形態のクロマトグラフィー装置では、初期状態として、弁83a、83bは閉じられている。カラム78に収容されている分離剤、及び試料溶液は、前述した第一の実施の形態と同様とする。また、溶剤タンク74に収容されている溶剤の組成は、前述した第一の実施の形態における移動相の組成と同様とする。
【0170】
また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置では、前記分離用流路から第一及び第二の排出用流路16、17へ目的の物質を含有する移動相が供給される前に、蒸発装置18〜20、27〜29による溶剤の濃縮運転を安定させる。この濃縮運転の安定化は、第一の実施の形態と同様に、移動相である混合流体を気液分離装置81a、81bに供給して混合流体を気液分離し、分離した溶剤を蒸発装置18〜20、27〜29に供給し、蒸発装置18〜20、27〜29から留出する留出液をそれぞれの排出用流路において循環させることによって行うことができる。
【0171】
また、本実施の形態では、前記濃縮運転の安定化は、第一及び第二の予備槽24、33のそれぞれに、溶剤タンク74に収容される組成の溶剤を収容しておき、クロマトグラフィー装置での目的の物質の分離とは独立して蒸発装置18〜20、27〜29を運転させ、蒸発装置18〜20、27〜29から留出する留出液をそれぞれの排出用流路において循環させることによって行うことができる。このような濃縮運転の安定化は、超臨界流体と溶剤とを含有する混合流体の気液分離を要さないことから、前記混合流体を移動相として用いるクロマトグラフィー装置の場合、運転操作の簡略化やランニングコストの削減の観点から好ましい。
【0172】
本実施の形態のクロマトグラフィー装置では、ボンベ71から適当な初期圧力で二酸化炭素が熱交換器72に供給されると、供給された二酸化炭素は熱交換器72で冷却されて液化ガスとなる。この液化ガスはバッファタンク90に収容される。バッファタンク90に収容された液化ガスは、高圧ポンプ73によって定量的に圧送され、背圧弁80で規定される所定の圧力(例えば臨界圧力)まで加圧されながら熱交換器76に供給される。
【0173】
一方で溶剤タンク74からは、溶剤が前記液化ガスに向けて高圧ポンプ75によって定量的に圧送される。前記溶剤は熱交換器76に供給される前に液化ガスと合流し、混合される。液化ガスと溶剤との混合物は、熱交換器76に供給されて所定の温度(例えば臨界温度又はカラム78の設定温度)まで加熱される。この加熱により、混合物中の液化ガスが超臨界流体となり、超臨界流体と溶剤とを含有する移動相が生成される。
【0174】
生成した移動相には、目的の物質(例えば光学異性体)を含有する試料が注入器77から注入される。試料が注入された移動相は、目的の物質に応じた分離剤(例えば多糖誘導体)を収容するカラム78に送られる。カラム78では試料中から目的の物質が分離される。目的の物質は検出器79で検出される。検出器79で目的の物質が検出されると、例えば第一の排出用流路16に対応する弁91aが開き、弁91bは閉じる。目的の物質を含有する移動相は、背圧弁80に送られる。
【0175】
背圧弁80を通過した移動相は、背圧弁80による圧力調整から解除され、減圧され、気液分離装置81aに供給される。気液分離装置81aに送られた移動相は、気液分離される。超臨界流体を形成していた二酸化炭素は気相として移動相から分離され、目的の物質及び溶剤は液相として移動相から分離される。気液分離装置81aで分離された二酸化炭素は、逆止弁92aを通って気液分離装置85に送られる。気液分離装置81aで分離された液相は、第一の槽82aに収容される。
【0176】
気液分離装置85に送られた二酸化炭素(回収ガス)は、気液分離装置85によって気液分離される。回収ガスに含まれていた微量の液相(溶剤)は、第二の槽86に収容され、次いで第三の槽87に収容され、廃棄される。
【0177】
気液分離装置85によって精製された回収ガスは、ガス回収管84を通って熱交換器72へ送られる。回収ガスの圧力がレギュレータ88で規定されている前記初期圧力よりも高い場合は、回収ガスが熱交換器72に供給され、液化される。回収ガスの圧力がレギュレータ88で規定されている前記初期圧力よりも低い場合は、ボンベ71からの新規の二酸化炭素のガスが熱交換器72に供給され、液化される。
【0178】
一方、第一の槽82aに収容された液相は、弁83aを通って第一の排出用流路16に供給される。第一の排出用流路16に供給された液相は、第一の実施の形態における移動相と同様に濃縮される。目的の物質は濃縮された溶剤成分とともに第一の貯留槽41に収容され、液相中の溶剤は液相から蒸発、凝縮して回収槽36に収容される。回収槽36に収容された溶剤は、第一の実施の形態と同様に溶剤調整装置38でその組成が調整される。調整された溶剤は、再利用用流路39を通って溶剤タンク74に収容される。
【0179】
目的の物質以外の他の物質が検出器79によって検出されると、気液分離装置81aに対応する弁91aが閉じ、気液分離装置81bに対応する弁91bが開く。気液分離装置81bでは、前述した気液分離装置81aと同様に、移動相中の二酸化炭素が気相として逆止弁92bを通って気液分離装置85に送られ、移動相中の溶剤成分が液相として第一の槽82bに収容される。気液分離装置85に送られた二酸化炭素は、前述したように精製され、熱交換器72に向けて供給される。
【0180】
第一の槽82bに収容された液相は、弁83bを通って第二の排出用流路17に供給される。第二の排出用流路17に供給された液相は、第一の実施の形態における移動相と同様に濃縮される。濃縮された溶剤成分は第二の貯留槽42に収容され、液相中の溶剤は液相から蒸発、凝縮して回収槽36に収容される。回収槽36に収容された溶剤は、第一の実施の形態と同様に溶剤調整装置38でその組成が調整される。調整された溶剤は、再利用用流路39を通って溶剤タンク74に収容される。
【0181】
本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、前述した第一の実施の形態と同様に、第一及び第二の排出用流路16、17における移動相の供給が途絶えても、蒸発装置18〜20、27〜29における突沸等の急激な蒸発や急激な液の濃縮が防止され、一定の組成の濃縮物を得ることができ、第一及び第二の予備槽24、33に収容されている移動相を定量的に蒸発装置18〜20、27〜29に供給することができ、また蒸発装置18〜20、27〜29に供給される被濃縮液の流量を一定の流量に保つことができる。
【0182】
また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、前述した第一の実施の形態と同様に、移動相の流量の増減に伴う蒸発装置18〜20、27〜29への留出液の供給の制御を簡潔に行うことができる。
【0183】
また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、前述した第一の実施の形態と同様に
、留出液を廃棄する場合に比べて移動相の生成に要する溶剤のコストや廃液の量を削減することができ、また目的の物質の分離や移動相の濃縮に対する移動相の組成の変化による影響を抑制することができる。
【0184】
また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、超臨界流体と溶剤とを含有する混合流体を移動相とすることから、カラム内における流動性や拡散性が通常の溶剤に比べて高く、通常の溶剤を用いるクロマトグラフィー装置に比べて、目的の物質を迅速且つ明確に分離することができる。また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、通常の溶剤を用いるクロマトグラフィー装置では分離が困難な物質を分離することも可能である。
【0185】
また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置は、混合流体中の超臨界流体を構成する成分がガスとして回収され、移動相に再利用されることから、超臨界流体の成分を回収しない場合に比べて、移動相の原料コストを削減することができる。また、本実施の形態のクロマトグラフィー装置では、回収されたガスの圧力とレギュレータ88で設定されている初期圧力との差に応じて超臨界流体用のガスが供給されることから、回収ガスの再利用を含めた原料ガスの供給が簡単な構造で容易に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の構成を概略的に示す図である。
【図3】本発明の他の実施の形態の構成を概略的に示す図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0187】
1〜12、61、78 カラム
13 無端状の流路
14 第一の流路
15 第二の流路
16 第一の排出用流路
17 第二の排出用流路
18〜20、27〜29 蒸発装置
21 第一の留出液流路
22 第一の留出液戻し用流路
23、32 三方弁
24、51 第一の予備槽
25 第一の液面計
26 第一の制御装置
30 第二の留出液流路
31 第二の留出液戻し用流路
33、54 第二の予備槽
34 第二の液面計
35 第二の制御装置
36 回収槽
37 蒸留装置
38 溶剤調整装置
39 再利用用流路
40 循環ポンプ
41 第一の貯留槽
42 第二の貯留槽
52 第一の流量計
53 第一の流量制御弁
55 第二の流量計
56 第二の流量制御弁
62 分離用流路
63 ポンプ
64、72、76 熱交換器
65、77 注入器
66、79 検出器
67、68、83a、83b、91a、91b 弁
71 ボンベ
73、75 高圧ポンプ
74 溶剤タンク
80 背圧弁
81a、81b、85 気液分離装置
82a、82b 第一の槽
84 ガス回収管
86 第二の槽
87 第三の槽
88 レギュレータ
89、92a、92b 逆止弁
90 バッファタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の物質を分離するためのカラムを有し、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液を前記カラムに供給して前記目的の成分を含有する移動相を生成するための分離用流路と、前記分離用流路に接続され、少なくとも前記目的の成分を含有する移動相を分離用流路から排出するための排出用流路とを有するクロマトグラフィー装置に用いられ、前記排出用流路に排出された移動相を濃縮するための濃縮装置において、
前記排出用流路に接続され、排出用流路に排出された移動相の少なくとも一部を蒸発させて留出させるための蒸発装置と、
前記蒸発装置から留出した留出液が流れる留出液流路と、
前記留出液流路の留出液が前記蒸発装置で濃縮されるように留出液を蒸発装置に戻すための留出液戻し用流路と、
前記蒸発装置から留出した留出液の流路を前記留出液流路と前記留出液戻し用流路との間で切り替えるための流路切り替え装置と、
前記分離用流路から前記排出用流路に排出された移動相の流量の増減を検出するための流量検出装置と、
前記分離用流路からの移動相の流量が所定の流量よりも減少したことを前記流量検出装置が検出したときに、前記蒸発装置から留出した留出液の流路が前記留出液流路から前記流出液戻し用流路に切り替わるように前記流路切り替え装置を制御する制御装置とを有することを特徴とする濃縮装置。
【請求項2】
前記排出用流路の移動相又は前記留出液を収容し、収容された移動相又は留出液を排出用流路に排出するための予備槽をさらに有することを特徴とする請求項1記載の濃縮装置。
【請求項3】
前記予備槽は、前記排出用流路の移動相を収容し、収容された移動相を排出用流路に排出するための槽であり、
前記流量検出装置は、予備槽に収容された移動相の液面を検出する液面計であることを特徴とする請求項2に記載の濃縮装置。
【請求項4】
前記予備槽は、前記留出液を収容し、収容された留出液を前記排出用流路に排出するための槽であり、
前記流量検出装置は流量計であり、
前記制御装置は、前記流量計が前記移動相の流量の低下を検出したときに、予備槽から排出用流路への留出液の排出をさらに制御することを特徴とする請求項2に記載の濃縮装置。
【請求項5】
目的の物質を分離するためのカラムを有し、移動相及び目的の物質を含有する試料溶液を前記カラムに供給して前記目的の物質を含有する移動相を生成するための分離用流路と、前記分離用流路に接続され、少なくとも前記目的の物質を含有する移動相を分離用流路から排出するための排出用流路と、前記排出用流路に排出された移動相を濃縮するための濃縮装置とを有し、移動相の濃縮物から前記目的の物質が得られるクロマトグラフィー装置において、
前記濃縮装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の濃縮装置であることを特徴とするクロマトグラフィー装置。
【請求項6】
前記留出液の組成を、前記分離用流路に供給される移動相の組成に調整するための調整装置と、前記調整装置で調整された留出液を移動相に再利用するために前記分離用流路に向けて供給するための再利用用流路とをさらに有することを特徴とする請求項5に記載のクロマトグラフィー装置。
【請求項7】
前記カラムは、光学活性な多糖又は多糖誘導体を含有する分離剤を収容するカラムであり、前記目的の物質は光学異性体であることを特徴とする請求項5又は6に記載のクロマトグラフィー装置。
【請求項8】
前記多糖はセルロース又はアミロースであり、前記多糖誘導体は、セルロースのエステル誘導体、セルロースのカルバメート誘導体、アミロースのエステル誘導体、及びアミロースのカルバメート誘導体から少なくとも選ばれることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー装置。
【請求項9】
前記クロマトグラフィー装置は、前記分離用流路が目的の物質を分離するための複数のカラムが直列に接続されてなる無端状の流路である擬似移動床式クロマトグラフィー装置であることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー装置。
【請求項10】
前記クロマトグラフィー装置は、超臨界流体と溶剤との混合流体が前記移動相として用いられる超臨界流体クロマトグラフィー装置であることを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載のクロマトグラフィー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−85830(P2007−85830A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273695(P2005−273695)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】