説明

濾過システム

【課題】濾材の劣化度を考慮して濾過システムの濾過性能を最大化すること。
【解決手段】複数台の濾過手段1A,1Bと、各濾過手段1A,1Bへの通水を選択して濾過処理を行う制御手段7とを備える濾過システムであって、各濾過手段1A,1Bの濾材の劣化度を判定するためのデータを検出する検出手段21,23,25を備え、制御手段7は、検出手段21,23,25の検出データに基づき各濾過手段1A,1Bの濾材の劣化度を判定し、この判定結果に基づき前記濾過手段1A,1Bの間で濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段1A,1Bへの通水を優先して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原水中に含まれる非溶解物などの不純物を濾材によって除去する濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原水ラインと処理水ラインとの間に接続され、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する複数台の濾過手段と、前記各濾過手段への通水を切り換えて濾過処理を行う制御手段とを備える濾過システムは、特許文献1にて知られている。特許文献1の濾過システムは、各濾過手段が目詰まりを生ずると、他の濾過手段に通水を切り換えるように構成している。
【0003】
しかしながら、この濾過システムにおいては、目詰まり,すなわち濾材で不純物を捕捉できる量を超えたことによる性能低下(再生をすることである程度回復する)により、通水を切り換えるものであって、通水や再生の繰り返しによる、濾材の劣化に起因する性能低下(再生しても回復しない性能低下)により、通水の切り換えを行っていない。その結果、濾材の劣化度を考慮して濾過性能を最大化した濾過処理ができていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、濾材の劣化度を考慮して濾過システムの濾過性能を最大化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する複数台の濾過手段と、前記各濾過手段への通水を選択して濾過処理を行う制御手段とを備える濾過システムであって、前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定するためのデータを検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段の検出データに基づき前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定し、この判定結果に基づき前記濾過手段の間で濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段への通水を優先して行うことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、濾材の劣化度が小さい濾過手段を優先的に使用して濾過処理を行うので、濾材の劣化度を考慮して濾過システム全体としての濾過性能を最大化できるという効果を奏する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記各濾過手段の再生を行う再生手段を備え、前記制御手段は、ある濾過手段の再生工程を行うとともに、他の濾過手段にて通水工程を行うように通水を切り換え、ある濾過手段の再生工程後の通水工程時における前記検出データに基づき判定された当該濾過手段の濾材の劣化度と他の濾過手段の濾材の劣化度とを比較し、ある濾過手段の濾材の劣化度が他の濾過手段の濾材の劣化度より大きいとき、他の濾過手段のうち最も濾材の劣化度の小さい濾過手段へ通水を切り換えるとともに、ある濾過手段の濾材の劣化度が他の濾過手段の濾材の劣化度より小さいとき、当該濾過手段の通水を継続することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記濾過手段の再生工程後の通水工程時に、濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度の小さい濾過手段を優先して使用するようにしているので、単に再生工程終了の濾過手段を優先して使用するものと比較して、濾過システム全体の濾過性能をより高いものとすることができるという効果を奏する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記制御手段は、ある濾過手段の再生工程終了後の通水工程初期における前記検出データに基づき当該濾過手段の濾材の劣化度を判定することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、前記濾過手段の再生工程終了後の通水工程初期の検出データに基づき濾材の劣化度を判定するようにしているので、濾材での捕捉量を超えたことによる性能低下と、濾材の劣化による性能低下とを容易に区別でき、比較的正確に濾材の劣化度を判定でき、濾材の劣化度の小さい濾過手段への切り換えを確実に行うことができるという効果を奏する。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3において、前記制御手段は、前記濾過手段の濾材の劣化度が所定値を超えると、当該濾過手段への通水を停止することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3に記載の発明による効果に加えて、濾過水質が低下した処理水の供給を防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、濾材の劣化度を考慮して濾過システム全体としての濾過性能を最大化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係る濾過システムの実施例1の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】同実施例1の制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【図3】同実施例1の制御手順の他の要部を説明するフローチャート図である。
【図4】この発明に係る濾過システムの実施例2の構成を示す概略的な説明図である。
【図5】この発明に係る濾過システムの実施例3の構成を示す概略的な説明図である。
【図6】この発明の実施例4の制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【図7】同実施例4の制御手順の他の要部を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、この発明の濾過システムの実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する複数台の濾過手段を備える濾過システムに好適に実施される。
【0017】
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態は、原水ラインと処理水ラインとの間に接続され、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する複数の濾過手段を備えている。そして、前記各濾過手段へ通水を選択して濾過処理を行う制御手段と、前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定するためのデータを検出する検出手段とを備えている。前記制御手段は、前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定する劣化度判定機能と、前記劣化度
判定機能による前記各濾過手段の濾材の劣化度を比較する比較機能と、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段への通水を選択する選択機能とを有する。ここで、「判定する」は、「検出する」と言い換えることができる。
【0018】
この発明の実施の形態においては、前記制御手段は、前記検出手段により所定時期に得られたデータに基づき、前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定し、前記濾過手段の間で判定した濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段への通水を選択する。こうして、濾材の劣化度が小さい方の前記濾過手段を優先的に使用するので、濾材の劣化度を比較することなく、通水を選択するシステムと比較して、濾過システム全体の濾過性能が最大化される。
【0019】
前記所定時期とは、濾材の劣化度を判定するに適した時期であって、通水工程と再生工程とを選択して行う濾過手段においては、好ましくは、前記各濾過手段の再生工程終了後の通水工程初期であり、さらに好ましくは、前記通水工程開始後処理水水質が安定した時点から所定時間である。通水工程が進行し、再生工程が近くなればなるほど、濾材での捕捉量を超えたことによる性能低下が濾材の劣化による性能低下に対して大きくなり、濾材の劣化による性能低下の判別が困難となる。前記のように好ましい時期に得られたデータに基づき劣化度を判定すれば、濾材での捕捉量を超えたことによる性能低下と、濾材の劣化による性能低下を容易に区別して判定することができる。
【0020】
ここで、この発明の実施の形態の濾過システムを構成する構成要素を説明する。前記各濾過手段は、原水ラインと処理水ラインとの間に接続され、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する機能を有する。この濾過手段は、好ましくは、非溶解物などの不純物として原水中に含まれる鉄分を主として除去する除鉄手段であり、前記濾過システムは、除鉄システムとして構成される。この濾過手段は、好ましくは、アンスラサイト,濾過砂などの濾材(図示省略)によって濾過を行う塔式の濾過部とこの濾過部に対して通水と再生とで流れを切り換えるコントロールバルブとを含んで構成される。そして、この濾過手段は、前記濾材にマンガンゼオライトなどを使用することで、除マンガン能力を備えていてもよい。
【0021】
前記濾過手段は、前記濾材を逆浸透膜(RO膜)等の濾過膜を用いたものとすることができる。この場合、前記制御手段は、濾過膜の劣化度を判定する。
【0022】
前記2以上の複数台の濾過手段は、好ましくは、互いに並列に接続されるが、直列に接続してもよい。直列に接続する場合は、複数の濾過手段の通水が任意に選択できるように流路を形成するとともに、流れを制御する弁を設ける。また、前記濾過手段は、互いに単位時間当たりの処理容量を同じものとするが、互いに異ならせてもよい。
【0023】
この濾過システムにおいては、好ましくは、前記各濾過手段を再生する再生手段を備え、前記制御手段により、前記各濾過手段に原水を通水して濾過処理する通水工程と、前記各濾過手段の再生を行う再生工程とを行うように構成する。この構成においては、前記各濾過手段において、通水工程と再生工程とを同時に行うのではなく、切り換えて行うように構成される。この再生工程は、前記各濾過手段の性能が再生を必要とする値に低下したとき、または低下したと考えられるときに実行される。前記各濾過手段の性能が再生を必要とする状態を一般的には破過と称する。
【0024】
前記各濾過手段の性能が再生を必要とする値への低下は、水質検出手段によって濁度を検出し、前記制御手段により判定することができる。前記濾過手段が、除鉄を行うものである場合は、前記水質検出手段により、鉄濃度を検出するように構成することができる。また、前記「低下したと考えられるとき」は、前記各濾過手段の入口圧力と出口側圧力と
の差(差圧)により判定できる。また、前記「低下したと考えられるとき」は、予め実験により求めた設定通水時間を前記制御手段に内臓タイマ、または別のタイマにより計時することによっても判定することができる。
【0025】
前記再生手段としては、前記各濾過手段の濾材を逆洗することによる周知の逆洗手段とすることができる。この逆洗は、処理水により行うが、原水を用いて行うことができる。
【0026】
前記制御手段は、前記検出手段により得られたデータに基づき前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定する劣化度判定機能(劣化度判定手段と称することができる。)と、前記劣化度判定手段により判定された前記濾過手段の濾材の劣化度同士を比較する比較機能(比較手段と称することができる。)と、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段への通水を選択する選択機能(選択手段と称することができる。)とを有するものであれば、特定の構成のものに限定されない。これらの各機能(手段)は、前記制御手段に記憶した制御手順(プログラム)の一部により構成できる。
【0027】
前記劣化度判定手段は、好ましくは、前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定する(評価する)ためのデータを検出する検出手段により検出されるデータに基づき前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定するように構成する。
【0028】
前記検出手段は、好ましくは、つぎの第一〜第四検出手段のいずれかとする。前記第一検出手段は、前記各濾過手段により濾過された処理水の水質を前記データとして検出する。この第一検出手段としては、濁度センサとすることができる。そして、前記制御手段は、処理水水質を濁度とすると、所定通水時間に対する濁度により濾材の劣化度を判定する。この場合、濁度が大きいほど濾材の劣化度が大きいと判定する。
【0029】
前記第二検出手段は、被処理水の水質および処理水の水質を前記データとして検出する。この第二検出手段としては、濁度センサとすることができる。そして、前記制御手段は、被処理水質および処理水水質を濁度とすると、所定通水時間に対する被処理水の濁度と処理水濁度との差、またはこれに基づく除去率(前記濁度の差を被処理水の濁度で除した値)を演算して、濾材の劣化度を判定する。この場合、前記濁度の差または除去率が小さいほど濾材の劣化度が大きいと判定する。
【0030】
前記第一検出手段および前記第二検出手段は、前記濾過手段が、除鉄を行うものである場合、鉄濃度センサとすることができる。
【0031】
前記第三検出手段は、前記各濾過手段の入口側(流入側)圧力と出口側(流出側)圧力との差圧を前記データとして検出する。この第三検出手段としては、差圧センサとすることができる。そして、前記制御手段は、所定通水時間に対する前記差圧により濾材の劣化度を判定する。この場合、前記差圧が大きいほど濾材の劣化度が大きいと判定する。
【0032】
前記第四検出手段は、前記各濾過手段の再生工程とつぎの再生工程との間の濾過継続時間(通水継続時間)を前記データとして検出する。そして、前記制御手段は、前記濾過継続時間により濾材の劣化度を判定する。この場合、前記濾過継続時間が短いほど濾材の劣化度が大きいと判定する。
【0033】
前記制御手段が濾材の劣化度判定のために用いるデータは、各濾過手段の最新(直近)のデータとするが、最新のデータを含む過去適数回のデータ平均とすることができる。
【0034】
この発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、互いに並列に接続される濾過手段の通水台数を増減する濾過システムにも適用される。この濾過システムにおいても、
濾材の劣化度が小さい方の濾過手段への通水を優先して行うように構成する。
【0035】
前記各検出手段は、好ましくは、システム構成を簡素化すべく、前記各濾過手段に共通の検出手段として設けるが、前記各濾過手段毎に前記各検出手段を設けることができる。
【実施例1】
【0036】
つぎに、この発明の実施1について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例1の構成を示す概略的な説明図であり、図2、3は、同実施例1の互いに異なる要部制御手順を説明するフローチャート図である。
【0037】
<実施例1の構成>
この実施例1の濾過システムは、原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する2台の互いに並列に接続される第一系統濾過手段1A,第二系統濾過手段1Bと、これら濾過手段1A,1Bを再生する再生手段2と、前記各濾過手段1A,1Bへ濾過処理のために通水する通水工程と前記再生手段による再生工程を切り換える工程切換バルブ手段3と、前記濾過手段1A,1Bにより処理された処理水を貯留する処理水タンク(処理水貯留部と称することができる。)6と、前記バルブ手段3,通水用の第一ポンプ4,再生用の第二ポンプ5等を制御する制御手段7とを主要部として備えている。前記各濾過手段1A,1Bは、互いに並列に接続される同じ構成で、同じ処理容量/単位時間当たりとしている。
【0038】
前記各濾過手段1A,1Bは、それぞれ前記第一ポンプ4を備える第一原水ライン8から分岐した各第二原水ライン9A,9Bと各第一処理水ライン10A,10Bとの間に接続されている。前記第一処理水ライン10A、10Bは、合流して第二処理水ライン11に接続されている。
【0039】
前記各濾過手段1A,1Bは、それぞれ塔式の濾過部12A,12Bとコントロールバルブ13A,13Bとを備えている。前記各濾過部12A,12Bは、原水中に含まれる鉄分を主として除去する除鉄機能に加えて除マンガン機能を持たせるべく、マンガンゼオライトとした濾材(図示省略)によって濾過を行うように構成されている。
【0040】
前記各コントロールバルブ13A,13Bは、前記各濾過部12A,12Bにおける水の流れを通水工程とする通水位置と水の流れを再生工程とする再生位置とに切り換えるように構成され、それぞれ前記第二原水ライン9A,9Bと、前記第一処理水ライン10A,10Bと、排水ライン14A,14Bが接続されている。
【0041】
前記各第一処理水ライン10A,10Bにはそれぞれ通水切り換え用の通水切換バルブ15A,15Bを備えている。
【0042】
前記処理水タンク6は、濾過処理された処理水を貯留するタンクであり、前記第二処理水ライン11の反合流側端部が接続されるとともに、処理水利用設備(図示省略)へ処理水を供給する第三処理水ライン16が接続されている。この第三処理水ライン16には、処理水配給用のポンプ(図示省略)を設けている。また、前記処理水タンク6には、水位検出手段17を備えている。
【0043】
前記再生手段2は、前記各濾過手段1A,1Bの濾材を切り換えて逆洗することによる逆洗手段として構成されている。この再生手段2は、前記処理水タンク6に接続され前記第二ポンプ5を備えた第一逆洗ライン18と、前記第一逆洗ライン18から分岐した第二逆洗ライン20A,20Bと、前記コンロロールバルブ13A,13Bと、前記排水ライン14A,14Bとを含んで構成されている。
【0044】
前記工程切換バルブ手段(以下、単に「バルブ手段」と称する。)3は、この実施例1では、前記各コントロールバルブ13A,13Bと、前記各通水切換バルブ15A,15Bとを含んで構成されている。なお、この実施例1では、前記各逆洗ライン20A,20Bをそれぞれ前記コントロールバルブ13A,13Bと接続して、この各コントロールバルブ13A,13Bにより再生工程時の処理水の流れを切り換えるように構成しているが、前記各逆洗ライン20A,20Bをそれぞれ前記第二原水ライン9A,9Bと接続して、前記各逆洗ライン20A,20Bに逆洗切換バルブ(図示省略)を設けて、この逆洗切換バルブの開閉により再生工程時の処理水の流れを切り換えるように構成することができる。この場合、前記各第二原水ライン9A,9Bに処理水の流れを阻止するバルブ(図示省略)を設ける。
【0045】
前記第一ポンプ4の下流側には、鉄分および懸濁物質の除去に使用する薬剤の薬注手段として、酸化剤添加手段および凝集剤添加手段(いずれも図示しないが、特開2007−330899号公報に示されるものと同様の構成のものである。)が接続されている。この酸化剤添加手段および凝集剤添加手段は、前記各濾過手段1A,1Bの通水工程時に作動される。
【0046】
前記制御手段7は、マイクロプロセッサ,記憶手段等を含んで構成される。この制御手段7は、前記バルブ手段3を制御して流路を切り換えることにより、前記各濾過手段1A,1Bのいずれか一方に原水を通水して濾過処理する通水工程と、前記再生手段2を制御して流路を切り換えることにより、前記各濾過手段1A,1Bのうち非通水工程側の前記各濾過手段1A,1Bの逆洗による再生工程とを行うように構成されている。
【0047】
この実施例1における前記制御手段7による通水工程と再生工程との制御は、予め記憶した図2,図3に示す制御手順(プログラム)により実行される。
【0048】
この制御手順の特徴を説明する。前記再生工程は、前記各濾過手段1A,1Bの性能が再生を必要とする値に低下したときに実行される。すなわち、前記水質検出手段21の検出値が所定値以上であるとき、前記再生動作が必要であると判断する。
【0049】
また、この制御手順は、前記各濾過手段1A,1Bの濾材の劣化度を所定時期に判定する劣化度判定機能と、この劣化度判定機能により得られた前記濾過手段1A,1Bの濾材の劣化度同士を比較する比較機能と、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段1A,1Bへの通水を選択する選択機能とを有している。以下、この実施例1では、「選択」を「切り換え」と称する。
【0050】
前記劣化度判定機能は、前記各濾過手段1A,1Bによって濾過処理された処理水の濁度を検出する第一水質検出手段(本願発明の検出手段に相当する。)21により検出される濁度に基づき前記各濾過手段1A,1Bの濾材の劣化度を判定するように構成している。この濾材の劣化度は、所定通水時間(例えば、1時間半程度)に対する水質により判定するように構成している。この第一水質検出手段は、前記各濾過手段1A,1Bに共通の検出手段として、前記第二処理水ライン11に設けている。
【0051】
そして、前記制御手段7が濾材の劣化度判定のために用いるデータは、再生工程終了後の通水工程初期に(例えば、通水開始から30分経過してから)前記所定通水時間に前記第一水質検出手段21により検出されたデータとしている。
【0052】
前記第一水質検出手段21は、第一試料水導入ライン22を介して前記第二処理水ライン11と接続されて、処理水の濁度を検出するものであり、たとえば特開2007−15
5372号に記載された光学計測装置を用いる。
【0053】
<実施例1の動作>
ここで、この実施例1の動作を説明する。まず、実施例1の濾過システムの基本的な動作を説明する。
【0054】
(通水工程の動作)
予め設定された時間になったとき、または前記水位検出手段17により、前記処理水タンク6内の水位が所定の給水開始水位以下となったことが検出されたとき、前記制御手段7によって、通水工程を開始する。通水工程は、再生工程が終了している系統の濾過手段に切り換えることにより行う。
【0055】
前記第一系統濾過手段1Aにて通水を行うには、前記制御手段7により、前記コントロールバルブ13Aを通水位置へ切り換え、前記通水切換バルブ15Aを開き、前記通水切換バルブ15Bを閉じ、前記第二ポンプ5を停止して、前記第一ポンプ4を駆動する。すると、前記濾過手段1Aへ原水を供給し通水が開始される。そして、前記酸化剤添加手段により生じた水酸化第二鉄および前記凝集剤添加手段により生じた凝集物を含む原水が、前記濾過部手段1Aへ流入すると、前記濾過部12Aの濾材(図示省略)によって水酸化第二鉄および凝集物が捕捉されて除去され、この水が第一前記処理水ライン10Aへ流出する。前記第一処理水ライン10Aへ流出した処理水は、前記処理水タンク6に貯留される。
【0056】
前記第二系統濾過手段1Bの通水工程は、前記コントロールバルブ13Bを通水位置へ切り換え、前記通水切換バルブ15Bを開き、前記通水切換バルブ15Aを閉じ、前記第二ポンプ5を停止して、前記第一ポンプ4を駆動することにより、前記第一系統濾過手段1Aと同様に行われる。
【0057】
(再生工程の動作)
この通水工程時、前記水質検出手段21によって所定の検出サイクル(たとえば、数時間ごと)で処理水の濁度の検出を行う。前記制御手段7は、前記水質検出手段21の検出値に基づいて、前記水質検出手段21の検出値が所定値以上となると、前記再生動作が必要であると判断する。そして、前記制御手段7は、通水工程を行っていない方の前記各濾過手段1A,1Bに通水を切り換えて前記通水動作を行わせ、通水工程を行っている方の前記各濾過手段1A,1Bにおいて再生工程を開始する。
【0058】
前記第一系統濾過手段1Aの再生は、つぎのようにして行われる。前記制御手段7により、前記コントロールバルブ13Aを再生位置へ切り換え、前記通水切換バルブ15A,15Bを閉じ、前記第一ポンプ4を停止して、前記第二ポンプ5を駆動する。これにより、前記第二ポンプ5によって前記処理水タンク6内の処理水が前記濾過手段1Aの上流側へ供給され、公知の逆洗による前記濾過手段1A再生が行われ、排水は前記排水ライン14Aを通して排出される。
【0059】
前記第二系統濾過手段1Bの再生は、つぎのようにして行われる。前記制御手段7により、前記コントロールバルブ13Bを再生位置へ切り換え、前記通水切換バルブ15A,15Bを閉じ、前記第一ポンプ4を停止して、前記第二ポンプ5を駆動することにより、前記第一系統濾過手段1Aの再生動作と同様に行われる。
【0060】
(濾材の劣化度の小さい濾過手段を優先して通水する制御)
つぎに、この発明の特徴とする濾材の劣化度の小さい濾過手段を優先して通水工程を切り換える制御について、図2、図3に基づき説明する。
【0061】
図2を参照して、通水工程指示によりS1にて第一系統濾過手段1Aの通水工程が行われているとする。S2へ移行して、前述の再生工程が必要かどうかの判定を行い、再生工程が必要と判定されると、S3へ移行して、前記第一系統濾過手段1Aの再生工程を開始すると同時に、前記第二系統濾過手段1Bへ通水工程の指示を出す。
【0062】
この第一系統濾過手段1Aの再生工程が終了すると、S4へ移行して、運転待機(通水待機と称することができる。)に入る。そして、S5にて、通水工程開始の指示があるかどうかを判定する。前記第二系統濾過手段1Bの再生工程要の判定により、前記第一系統濾過手段1Aへ通水工程の指示が出されると、S5にてYESが判定され、S6にて通水工程を開始する。
【0063】
この通水工程開始直後にS7の処理が行われる。S7では、前記第一系統濾過手段1Aの濾材の劣化度判定と、この濾材の劣化度判定により得られた第一系統濾過手段1Aの第一劣化度QAと前記予め記憶している前記第二系統濾過手段1Bの第二劣化度QBとの比較処理が行われる。
【0064】
第一系統濾過手段1Aの第一劣化度QAは、つぎのようにして求められる。まず、所定時期となる,すなわち再生工程終了後の開始から通水工程所定時間(30分)が経過すると、所定通水時間(1時間半)において前記第一水質検出手段21により検出された濁度値を平均する。そして、その平均値を前記所定通水時間の通水量で除した値を第一濾過手段性能値QAとし、図示省略の記憶手段に記憶する。
【0065】
前記第二系統濾過手段1Bにおける前記濾材の劣化度判定および比較処理は、前記第二系統濾過手段1Bにおいても前記第一系統濾過手段1Aと同様に行われるので、その説明を省略する。
【0066】
S7において、QA≦QBのYESが判定されると、前記第一系統濾過手段1Aの通水工程を継続する。NOが判定されると、S9へ移行して濾材の劣化度が小さい側の前記第二系統濾過手段1Bへ通水工程指示を出すとともに、濾材の劣化度が大きい側の前記第一系統濾過手段1Aに対しては、S4の待機工程への移行を指示する。
【0067】
前記第二系統濾過手段1Bにおいても図3に示す制御手順により、前記第一系統濾過手段1Aと同様に通水工程,再生工程の制御が行われる。図3のS11〜S19は、それぞれ図2のS1〜S9に対応して、同じ処理であるので、その説明を省略する。
【0068】
この実施例1においては、前記制御手段7は、前記各濾過手段1A,1Bの濾材の劣化度を判定し、判定した前記濾過手段1A,1Bの間で濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段1A,1Bへ通水を切り換える。その結果、濾材の劣化度が小さく濾過性能が高い前記濾過手段1A,1Bを優先的に使用することになるので、濾材の劣化度を比較することなく、通水を切り換える従来システムと比較して、濾過システム全体の濾過性能を最大化することができる。
【0069】
また、再生工程後の通水工程時に、濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度が小さい濾過手段を優先して使用するようにしているので、単に再生工程終了の濾過手段を優先して使用するものと比較して、濾過システム全体の濾過性能より高いものとすることができる。
【0070】
さらに、再生工程終了後の通水工程初期に、前記第一水質検出手段21の再生工程終了
後の通水工程初期に得た検出値に基づき濾材の劣化度を判定し、濾材の劣化度を比較するようにしているので、比較的正確に濾材の劣化度を判定でき、濾材の劣化度が小さい濾過性能の高い濾過手段への切り換えを確実に行うことができる。
【実施例2】
【0071】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、つぎの実施例2を含むものである。この実施例2は、前記実施例1の第一水質検出手段21を第二水質検出手段23に代えたもので、その他の構成は、前記実施例1と同様であり、前記実施例1の図2,3,に示す制御手順で制御される。以下に、同実施例2を図4に基づき説明する。以下の説明では、前記実施例1と異なる構成を中心に説明し、前記実施例1と同じ構成についてはその説明を省略する。
【0072】
前記第二水質検出手段23は、前記第一試料水導入ライン22を介して前記第二処理水ライン11と接続され、第三試料水導入ライン24を介して前記第一原水ライン8と接続されて、被処理水の水質および処理水の水質を濾材の劣化度を判定のための前記データとして検出する。この第二水質検出手段23としては、濁度センサとしている。その他の構成は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
この実施例2においては、前記制御手段7は、再生工程終了後の通水工程初期における所定通水時間に対する被処理水の濁度と処理水濁度との差を演算(前記差を通水時間で割る)して、濾材の劣化度を判定する。この場合、前記濁度の差が小さいほど濾材の劣化度が大きいと判定する。この実施例2のその他の動作は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例3】
【0074】
この発明は、前記実施例1,2に限定されるものではなく、つぎの実施例3においても実施される。この実施例3は、この発明の検出手段として、前記実施例1の第一水質検出手段21を差圧検出手段25に代えたもので、その他の構成は、前記実施例1と同様であり、前記実施例1の図2,3,に示す制御手順で制御される。以下に、同実施例3を図5に基づき説明する。以下の説明では、前記実施例1と異なる構成を中心に説明し、前記実施例1と同じ構成についてはその説明を省略する。
【0075】
前記差圧検出手段25は、前記第三試料水導入ライン26を介して前記第二処理水ライン11と接続され、第四試料水導入ライン27を介して前記第一原水ライン8と接続されて、前記各濾過手段1A,1Bの入口側(流入側)圧力と出口側(流出側)圧力との差圧を前記データとして検出する。その他の構成は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
この実施例3においては、前記制御手段7は、再生工程終了後の通水工程初期における所定通水時間に対する前記差圧に基づき、濾材の劣化度を判定する。この場合、前記差圧が大きいほど濾材の劣化度が大きいと判定する。この実施例3のその他の動作は、前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例4】
【0077】
この発明は、図6および図7の処理手順を実行する実施例4を含む。
この処理手順は、前記実施例1〜3の濾過システムにおいて実行され、前記濾過手段の濾材の劣化度が所定値を超えると、当該濾過手段への通水を停止することを特徴とするものである。
【0078】
以下に、この実施例4について、前記実施例1と異なる部分を中心に説明し、同じ構成
は、同じ符号を付して省略する。
【0079】
図6において、図2と異なるのは、S6とS7との間に、前記濾過手段12Aの濾材の第一劣化度QAが所定値以上かどうかを判定する処理S20を加えた点である。このS20で、所定値以上が判定されると、S9へ移行して、前記濾過手段12Aの通水を停止して待機させるとともに、前記濾過手段12Bの通水工程を開始する。S20で、NOが判定されると、処理がS7へ移行する。
【0080】
また、図7において、図3と異なるのは、S16とS17との間に、前記濾過手段12Bの濾材の第二劣化度QBが所定値以上かどうかを判定する処理S21を加えた点である。このS21で、所定値以上が判定されると、S19へ移行して、前記濾過手段12Bの通水を停止して待機させるとともに、前記濾過手段12Aの通水工程を開始する。S21で、NOが判定されると、処理がS17へ移行する。
【0081】
この実施例5によれば、処理水の水質低下を抑制することができ、所定値以上の濾過水質の処理水を供給することができる。
【0082】
さらに、この発明は、前記実施例1〜3では、処理水を用いた逆洗により濾材の再生を行うように構成しているが、これに限定されるものではなく、原水(被処理水)を用いた逆洗により再生を行うように構成することができる。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B 濾過手段
2 再生手段
7 制御手段
21 第一水質検出手段
23 第二水質検出手段
25 差圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水中に含まれる不純物を濾材によって除去する複数台の濾過手段と、前記各濾過手段への通水を選択して濾過処理を行う制御手段とを備える濾過システムであって、
前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定するためのデータを検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段の検出データに基づき前記各濾過手段の濾材の劣化度を判定し、この判定結果に基づき前記濾過手段の間で濾材の劣化度を比較して、濾材の劣化度が小さい方の濾過手段への通水を優先して行うことを特徴とする濾過システム。
【請求項2】
前記各濾過手段の再生を行う再生手段を備え、
前記制御手段は、ある濾過手段の再生工程を行うとともに、他の濾過手段にて通水工程を行うように通水を切り換え、
ある濾過手段の再生工程後の通水工程時における前記検出データに基づき判定された当該濾過手段の濾材の劣化度と他の濾過手段の濾材の劣化度とを比較し、ある濾過手段の濾材の劣化度が他の濾過手段の濾材の劣化度より大きいとき、他の濾過手段のうち最も濾材の劣化度の小さい濾過手段へ通水を切り換えるとともに、ある濾過手段の濾材の劣化度が他の濾過手段の濾材の劣化度より小さいとき、当該濾過手段の通水を継続する
ことを特徴とする請求項1に記載の濾過システム。
【請求項3】
前記制御手段は、ある濾過手段の再生工程終了後の通水工程初期における前記検出データに基づき当該濾過手段の濾材の劣化度を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の濾過システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記濾過手段の濾材の劣化度が所定値を超えると、当該濾過手段への通水を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の濾過システム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−184232(P2010−184232A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2506(P2010−2506)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】