説明

火力発電所

【課題】タービン効率を向上させることによって、発電効率を容易に向上させることができる。
【解決手段】本発明の火力発電所は、化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して給水を加熱して、主蒸気Aを発生させるボイラ1と、ボイラ1内に設置された再熱器41,42と、タービン2と、タービン2に連結された発電機13とを備えている。このうち、タービン2は、ボイラ1からの主蒸気Aが導かれる高圧タービン8と、高圧タービン8と一軸に結合され、再熱器41,42で発生した再熱蒸気E,Fが導かれる中圧タービン9と、高圧タービン8および中圧タービン9と一軸に結合され、中圧タービン9から排出された再熱蒸気E,Fが導かれる低圧タービン11とを備えている。発電機7は、高圧タービン8、中圧タービン9および低圧タービン11と一軸に結合され、2極を超える極数を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気温度を向上させるとともにタービン効率を向上させることによって、発電効率を向上させる火力発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電所は、主として、図9に示すような再生再熱サイクルからなる蒸気タービンシステム50を有する従来型火力発電所と、図10に示すようなガスタービンシステム30と、当該ガスタービンシステム30から排出される排ガスCによって加熱される蒸気を用いて駆動される蒸気タービンシステム50とを組み合わせたコンバインド火力発電所に分けられる。
【0003】
図9に示すように、再生再熱サイクルからなる従来型火力発電所は、化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して蒸気を発生させるボイラ1と、ボイラ1から排出される蒸気A,Bを用いて回転するタービン2と、タービン2で用いられた蒸気を回収する復水器3と、復水器3から供給される水を加熱する低圧給水加熱器4と、低圧給水加熱器4で加熱された水を昇圧する給水ポンプ5と、給水ポンプ5からの水を加熱する高圧給水加熱器6と、タービン2に連結された発電機7とを備えている。
【0004】
このうち、タービン2は、図9に示すように、ボイラ1からの主蒸気Aが導かれる高圧タービン8と、高圧タービン8から排出された後、ボイラ1内の再熱器45によって再熱された再熱蒸気Bが導かれる中圧タービン9と、中圧タービン9から排出された再熱蒸気Bがクロスオーバー管(連絡管)10を経由して導かれる低圧タービン11と、を有している。
【0005】
図9において、ボイラ1で発生した主蒸気Aは、高圧タービン8に導かれて膨張した後排出され、ボイラ1内の再熱器45で再熱されて再熱蒸気Bとして中圧タービン9に入る。そして、中圧タービン9にて膨張した後に排出された再熱蒸気Bは、クロスオーバー管(連絡管)10を経由して、複数の低圧タービン11にそれぞれ低圧蒸気として導入される。導入された低圧蒸気は低圧タービン11内にて膨張し、排気蒸気として復水器3に導かれ、復水器3内にて冷却されて凝縮し水に戻る。次に、復水器3から供給された水は、低圧給水加熱器4で加熱された後、給水ポンプ5で昇圧され、その後、高圧給水加熱器6で加熱され、最後にボイラ1に戻る。
【0006】
図10に示すように、コンバインド火力発電所のガスタービンシステム30は、空気を圧縮するコンプレッサー31と、当該コンプレッサー31で圧縮された空気を用いて燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器32と、燃焼器32で生成された燃焼ガスによって駆動されるガスタービン33と、ガスタービン33に連結されたガスタービン発電機35と、を有している。また、コンバインド火力発電所の蒸気タービンシステム50は、ガスタービンシステム30から排出される排ガスCの熱によって主蒸気A、再熱蒸気B、低圧蒸気Dを発生させる排熱回収ボイラ20と、排熱回収ボイラ20から排出される蒸気A,B,Dを用いて回転するタービン2と、タービン2で用いられた蒸気を回収する復水器3と、復水器3から供給される水を昇圧する給水ポンプ5と、タービン2に連結された発電機7とを備えている。
【0007】
このうち、タービン2は、図10に示すように、排熱回収ボイラ20からの主蒸気Aが導かれる高圧タービン8と、高圧タービン8から排出された後、排熱回収ボイラ20内の再熱器45によって再熱された再熱蒸気Bが導かれる中圧タービン9と、中圧タービン9から排出された再熱蒸気Bがクロスオーバー管(連絡管)10を経由して導かれる低圧タービン11と、を有している。
【0008】
図10において、排熱回収ボイラ20から排出された主蒸気Aは、高圧タービン8を経由した後、排熱回収ボイラ20内の再熱器45で再熱され、再熱蒸気Bとして中圧タービン9に入る。そして、中圧タービン9から排出された蒸気は、低圧蒸気Dと混合され、クロスオーバー管10を経由して低圧タービン11に分配され、復水器3に至り水に戻る。復水器3から供給される水は、給水ポンプ5の前後で逐次分岐され、高圧、中圧、低圧といったようにそれぞれ圧力の異なる給水として排熱回収ボイラ20に戻される。
【0009】
ところで、火力発電所の発電効率を向上させるためには、蒸気温度を向上させることと、タービン効率を向上させることとが非常に有益である。
【0010】
蒸気温度に関しては、最近では蒸気温度600℃を超える火力発電所が営業運転を行っている。蒸気温度を上昇させることで高効率発電を実現することができるため、今後もさらなる蒸気温度の高温化が期待されている。一方、タービン効率の向上に大きな役割を果たす要因として、最終段のタービン動翼の長翼化による排気損失の低減が挙げられる。現在、最終段のタービン動翼の翼長は、2極発電機を適用した60Hzの全速機では、ステンレス鋼製で約1.0m、チタン合金製で約1.1mに達している。
【0011】
しかしながら、発電効率向上のためにこれらの、蒸気の高温化や最終段動翼の長翼化といった技術を適用するにあたっては、高度な流体および強度設計技術、冷却技術といった技術だけでなく、材料強度の高い材料などが必要になり、開発コスト並びに期間も膨大なものとなっている。
【0012】
また、高効率発電のため蒸気温度を上昇させていくと、現在用いられているステンレス鋼などの合金鋼のタービンの回転軸(ロータ)では強度が満たされない状態になる。近い将来導入が予想される650℃級の蒸気条件を持つ火力発電所では、高温となる高圧タービン、中圧タービンでの回転軸の強度を確保するために、タービンの回転軸の材料として、ニッケル基合金などの超合金の適用が必須とされている。ところが、超合金の大型鋼塊は製造難易度が高く非常に高価であり、実用化までに時間を要する。
【0013】
一方、タービンの最終段のタービン動翼の長翼化に関しては、既に遠心力に耐えうる限界の翼長になりつつあるのが現状である。したがって、これ以上の動翼の長翼化による排気損失低減も限界になりつつある。
【0014】
最終段のタービン動翼の翼長を変えずに、低圧タービンの排気数を増やす、すなわち複数の低圧タービンに低圧蒸気をそれぞれ分配して導くことによって、排気損失低減を図る方策も考えられているが、このような構成の場合、1流あたりの流量が減ってしまうため、低圧タービンの前半段落の翼長が短くなり、この部分がタービンの性能低下要因となるという問題がある。また、低圧タービンの数が増えることによってコストが大きくなるという問題もある。
【0015】
従来から、低圧タービンの回転数を全速機の半分にすることによって(半速機化して)発電効率を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、当該特許文献1においては、高圧タービンと低圧タービンが別の発電機に直結する、いわゆるクロスコンパウンド型である。
【0016】
また、現在でも1000MWクラスの火力発電所においては、図11に示すように、高圧タービン(単流)8および中圧タービン(複流)9を有するタービン2aと2極発電機12とを直結したものと、2台の低圧タービン(複流)11を有するタービン2bと4極発電機13とを直結したものとが並列に設けられ、2つの回転軸からなるクロスコンパウンド型が採用されることがある。なお、図11において、図10および図9に示した部分と同一部分には同一符号を付している。
【特許文献1】特開2004-137912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述したクロスコンパウンド型の蒸気タービンシステム50では2台の発電機12,13を電気的に同期する必要があるため、複雑な制御系統が必要となり運用性が悪い。また、2軸を並列させることから、タービン建屋(図示せず)が大型化するという欠点がある。
【0018】
さらに、高温となる高圧タービン8と中圧タービン9に直結されている発電機は2極発電機12であり回転数が高くなっているため、タービン2aの回転軸の強度の関係から、回転軸の材料として従来の合金鋼を用いた場合には、将来的な蒸気の高温化が難しいという欠点がある。
【0019】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、タービン効率を向上させることによって、発電効率を容易に向上させることができる火力発電所を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して給水を加熱して、主蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラからの主蒸気が導かれるとともに、回転軸を有する高圧タービンと、前記高圧タービンから排出された前記主蒸気を再熱して、再熱蒸気を発生させる再熱器と、前記高圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、前記再熱器で発生した再熱蒸気が導かれる中圧タービンと、前記高圧タービンおよび中圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、前記中圧タービンから排出された前記再熱蒸気が導かれる低圧タービンと、前記高圧タービン、中圧タービンおよび低圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、2極を超える極数を持つ発電機と、を備えることを特徴とする火力発電所である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高圧タービン、中圧タービンおよび低圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、2極を超える極数を持つ発電機を用いることによって、タービン効率を向上させることによって、発電効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る火力発電所の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0023】
図1および図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る火力発電所の蒸気タービンシステム50は、ボイラ1と、タービン2、復水器14、および4極発電機13とを備える。ここでボイラ1は、化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して給水を加熱して、主蒸気Aを発生させるものであるが、本実施の形態においては石炭焚きや重油焚きの火炉とするのが好適である。また、ボイラ1内には、高圧タービン8から排出された主蒸気Aを再熱して、第1段再熱蒸気Eとして発生させる第1再熱器41と、第1中圧タービン9aから排出された第1段再熱蒸気Eを再熱して第2段再熱蒸気Fとして発生させる第2再熱器42が設けられている。
【0024】
タービン2は、主蒸気Aが導かれる高圧タービン8、第1中圧タービン9a、および中低圧タービン15を備え、更に中低圧タービンは、第2中圧タービン9bおよび低圧タービン11を備える。ここで、本実施の形態においては、第2中圧タービン9bと低圧タービン11はクロスオーバー管などの連絡管なしに連続的に配置されている。すなわち、本実施の形態においては、第2中圧タービン9bと低圧タービン11が単一のケーシング内に収納されている。このように単一のケーシング内に収納された第2中圧タービン9bと低圧タービン11は、単一の中低圧タービン15を構成するが、その場合であっても、第2段再熱蒸気Fが導かれるタービンが第2中圧タービン9bであり、復水器14に蒸気を排気として流出させるタービンが低圧タービン11であると定義できる。この場合、第2中圧タービン9bと低圧タービン11とを厳密に区分けする必要は必ずしもなく、区分けを行う場合であっても設計的な条件その他によって当業者が適宜決定することが可能である。なお、第2中圧タービン9bと低圧タービン11を収納する単一のケーシングは、一体として構成されていればよく、異なる種類の材料を溶接やボルトでの締結により一体化したものであってもよい。
【0025】
図1および図2に示した通り、本実施の形態の蒸気タービンシステム50のパワートレインは、4極発電機13、高圧タービン8、第1中圧タービン9a、および中低圧タービン15(第2中圧タービン9bおよび低圧タービン11)がこの順で連結されて一軸に配置されている。すなわち、高圧タービン8、第1中圧タービン9a、中低圧タービン15、および4極発電機13の回転軸は連結されて一軸として構成されており、蒸気タービンシステム50が共通かつ単一の回転軸を備える構成となっている。
【0026】
ここで、4極発電機13の回転軸は高圧タービン8の回転軸と連結されており、4極発電機13は高圧タービン8に隣接して配置されている。また、復水器14は中低圧タービン15の低圧タービン11に隣接するように配置されている。中低圧タービン15の低圧タービン11と復水器14は隣接して配置されているため、中低圧タービン15の低圧タービン11からのタービン排気は、単流のまま回転軸方向への軸流排気としてスムーズに復水器14内に導入される。
【0027】
また、本実施の形態の蒸気タービンシステム50は、復水器14から供給された水を加熱する再生熱交換器としての低圧給水加熱器4と、低圧給水加熱器4にて加熱された水を昇圧して給水とする給水ポンプ5と、給水ポンプ5にて昇圧された給水を更に加熱する再生熱交換器としての高圧給水加熱器6を備える。低圧給水加熱器4には低圧タービン11からの低圧抽気蒸気が加熱媒体として導かれ、高圧給水加熱器には高圧タービン8からの高圧抽気蒸気が加熱媒体として導かれる。
【0028】
上述の通り、本実施の形態に係る火力発電所の蒸気タービンシステム50は、共通かつ単一の回転軸とともに、発電機として4極発電機13を備えている。このため、従来の2極発電機を用いた蒸気タービンシステム(以下、「全速機」とも呼ぶ)と比較して、回転数が半分になっている(以下、本発明の蒸気タービンシステム50を「半速機」とも呼ぶ)。
【0029】
また、このように半速機の回転数は全速機の回転数の半分になっているため、全速機から半速機への相似則を適用し、莫大な労力と時間を要する新規開発を行うことなく設計することができ、低圧タービン11の最終段の翼長を容易に2倍にすることができる。
【0030】
上述した相似則とは、ガスタービンなどでよく用いられており、例えば60Hzで設計されたガスタービンの大きさを1.2倍することで50Hz用ガスタービンを得ることができる、という原則を指す。なお、相似則によって設計されたタービンは速度場および応力場が共に元となるタービンと全く同じという特徴を持っている。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0032】
まず、ボイラ1によって、給水ポンプ5から高圧給水加熱器6を経てボイラ1に供給された水(給水)が加熱され、主蒸気Aが発生する。この主蒸気Aは、高圧タービン8に導かれ、高圧タービン8内にて膨張した後排出される。高圧タービン8から排出された主蒸気Aは、ボイラ1内に設置された第1再熱器41で再熱され第1段再熱蒸気Eとして第1中圧タービン9aに入る(図1参照)。
【0033】
次に、第1中圧タービン9aにて膨張して仕事を行い排出された第1段再熱蒸気Eは、再びボイラ1に戻り、このボイラ1内に設置された第2再熱器42で再熱され、第2段再熱蒸気Fとして中低圧タービン15のうちの第2中圧タービン9bに入る(図1参照)。
【0034】
次に、第2中圧タービン9bにて膨張仕事を行い排出された第2段再熱蒸気Fは、第2中圧タービン9bに連続して設置された低圧タービン11内に流入し、更に低圧タービン11内にて膨張して仕事を行い、復水器14に導かれる(図1参照)。
【0035】
ここで、中低圧タービン15の低圧タービン11と復水器14は隣接して配置されているため、中低圧タービン15の低圧タービン11からのタービン排気は、単流のまま回転軸方向への軸流排気としてスムーズに復水器14内に導入される。
【0036】
次に、復水器14から排出された水は、低圧タービン11から抽気された抽気蒸気を用いて、低圧給水加熱器4で加熱される(図1参照)。
【0037】
次に、低圧給水加熱器4で加熱された水は、給水ポンプ5で昇圧されて給水となる。その後、給水ポンプ5で昇圧された給水は、高圧タービン8から抽気された蒸気を用いて、高圧給水加熱器6で加熱された後、ボイラ1に戻る(図1参照)。
【0038】
このように水(給水)や蒸気A,E,Fが蒸気タービンシステム50内を循環している間、4極発電機13の回転軸が回転する。そして、この4極発電機13は、2極を超える極数を持っているので、4極発電機13とこれに連結されたタービン2の回転数が従来の2極発電機を備えるタービンシステムと比較して小さくなる。具体的には、4極発電機13を用いることによって、従来のように2極発電機を用いた場合と比較して、4極発電機13とタービン2の回転数が半分となる。
【0039】
この結果、蒸気タービンシステム50を半速機とすることができ、本実施の形態によれば、以下に示すような効果を得ることができる。
【0040】
まず第1の効果として、主蒸気A、第1段再熱蒸気E、および第2段再熱蒸気Fの温度を向上させることができる。すなわち、従来のように、発電機として2極発電機を用いた場合(全速機の場合)には、蒸気の温度を上昇させすぎると、タービン動翼が破損する可能性を否定できない。これに対して、本実施の形態によれば、回転軸の回転数を全速機の半分とすることによって、タービン動翼に発生する遠心力を低下させることができるので、全速機に用いられる蒸気と比較して、主蒸気A、第1段再熱蒸気E、および第2段再熱蒸気Fの温度を上昇させることができる。
【0041】
この遠心力を低下させることによる効果は、主蒸気A、第1段再熱蒸気E、あるいは第2段再熱蒸気Fといった、温度の高い蒸気が供給される高圧タービン8、第1中圧タービン9aおよび第2中圧タービン9bにおいて特に大きくなり、主蒸気A、第1段再熱蒸気E、あるいは第2段再熱蒸気Fの温度が高くなったとしても、これらの材料として従来の材料を変更せずに用いることができる。
【0042】
具体的には、図3(a)に示すように、クロム含有率が8%〜15%である従来の高クロム系合金鋼の回転軸材を使用した場合(図3(a)の「高クロム鋼」に対応している)には、従来の全速機の場合に加わる遠心応力では蒸気温度が約620℃以上となると許容応力を超えてしまう。これに対して、本実施の形態の半速機によれば、タービン動翼に働く遠心応力が小さくなっているため、蒸気温度が650℃程度となっても、未だ許容応力を超えない。
【0043】
この結果、高圧タービン8、第1中圧タービン9aおよび第2中圧タービン9bの回転軸の材料として、クロム含有率が8%〜15%である従来の高クロム系合金鋼の回転軸材を使用した場合には、ボイラ1によって発生する主蒸気Aおよび再熱器41,42によって発生する再熱蒸気E,Fは、620℃以上であることが好ましく、650℃程度であることが最も好ましい。
【0044】
なお、図3(a)は、60Hzの1000MWクラスの蒸気タービンシステムにおける高圧タービンの初段のタービン動翼に加わる遠心応力と、高クロム鋼の許容応力との関係を示したグラフ図である。
【0045】
また、図3(b)に示すように、クロム含有率が3%以下である従来の低クロム系合金鋼の回転軸材を使用した場合(図3(b)の「低クロム鋼」に対応している)には、従来の全速機の場合に加わる遠心応力では蒸気温度が約545℃以上となると許容応力を超えてしまう。これに対して、本実施の形態の半速機によれば、タービン動翼に働く遠心応力が小さくなっているため、蒸気温度が580℃程度となっても、未だ許容応力を超えない。
【0046】
この結果、高圧タービン8、第1中圧タービン9aおよび第2中圧タービン9bの回転軸の材料として、クロム含有率が3%以下である従来の低クロム系合金鋼の回転軸材を使用した場合には、ボイラ1によって発生する主蒸気Aおよび再熱器41,42によって発生する再熱蒸気E,Fは、545℃以上であることが好ましく、580℃程度であることが最も好ましい。
【0047】
なお、図3(b)は、60Hzの1000MWクラスの蒸気タービンシステムにおける高圧タービンの初段のタービン動翼に加わる遠心応力と、低クロム鋼の許容応力との関係を示したグラフ図である。
【0048】
このように、本実施の形態の蒸気タービンシステム(半速機)50によれば、従来の全速機と比較して温度の高い主蒸気A、第1段再熱蒸気Eおよび第2段再熱蒸気Fを用いることができるので、発電効率を容易に向上させることができる。
【0049】
なお、図1および図2に示すような2段再熱サイクルにおいては強度が非常に厳しくなることが一般的に知られており、本実施の形態によれば、このような2段再熱サイクルにおいても蒸気温度を向上させることができる。
【0050】
第2の効果として、タービン間の圧力損失を低減することができる。
【0051】
従来の250MW以上からなる高出力の蒸気タービンシステムの低圧タービンでは、遠心力によるタービン動翼の翼長の制限から、2流排気または4流排気が用いられている。しかしながら、このようなタービンでは、中圧タービン9と低圧タービン11の間に、クロスオーバー管(連絡管)10と呼ばれる配管が接続されており(図9乃至図11参照)、このクロスオーバー管(連絡管)10とその前後に設置される中圧タービン9の吸気室と低圧タービン11の排気室との間で圧力損失が発生してしまい、発電効率が低下してしまう。
【0052】
これに対して、本実施の形態の蒸気タービンシステム50は、全速機の半分の回転数で回転するため、低圧タービン11のタービン動翼に加わる遠心力を小さくすることができる。このため、高出力の蒸気タービンシステム50においても単流排気を用いることができ、クロスオーバー管(連絡管)10を用いる必要がなく、さらに、第2段中圧タービン9bと低圧タービン11とを単一のケーシング内に収納して中低圧タービン15とすることも可能となる。(図1および図2参照)。このため、タービン間圧力損失を無くし、発電効率を高めることができる。
【0053】
なお、低圧タービン11の最終段落のタービン動翼は、相似則を適用して形成されており、全速機における低圧タービン11の最終段落のタービン動翼と比較して、4倍の環状面積を有している。このため、単流排気を用いたとしても、全速機で4流排気を用いた場合と同等の環状面積を有している。
【0054】
第3の効果として、低圧タービン11から排出される排気を単流とすることによって、タービン効率を向上させることができる。
【0055】
従来の全速機のように、低圧タービン11で2流排気または4流排気が用いられている場合には(図9乃至図11参照)、各流路に流入する蒸気の量が分割されて減少するため、低圧タービン11の前半の段落における翼長が低くなってしまい、低圧タービン11の効率が悪くなっている。
【0056】
これに対して、本実施の形態では、低圧タービン11に流入する排気蒸気を単流とすることができるので、低圧タービン11の前半の段落における翼長を十分に高くすることができる。この結果、低圧タービン11における効率を向上させることができる。
【0057】
第4の効果として、低圧タービン11の最終段から排出される排気蒸気を、中低圧タービン15の回転軸の軸方向に排出し、軸流排気とすることによって、タービン2の排気損失を低減することができる。
【0058】
すなわち、図9乃至図11に示すように、従来の約250MW以上の高出力の蒸気タービンシステム50では、下方に設置された復水器3に向かって排気蒸気を排出する下方排気が用いられている。
【0059】
これに対して、本実施の形態によれば、上述のように低圧タービン11に流入する排気蒸気を単流とすることができるので、この低圧タービン11の最終段から排出される排気蒸気を単流とすることができる。このため、低圧タービン11の最終段から排出される排気蒸気を、中低圧タービン15の回転軸の軸方向に排出する軸流排気とすることができる。この結果、タービン2の排気損失を低減することができる。
【0060】
従って、本実施の形態の蒸気タービンシステム50を用いれば、1000MWという大出力な火力発電所であっても、低圧タービンの最終段から排出される排気蒸気を軸流排気とすることができ、発電効率を高めることができる。
【0061】
ところで、このように排気蒸気を軸流排気とすることによって、タービン建屋の高さを低減することができる。
【0062】
すなわち、従来でも、小型のタービンを用いた低出力の火力発電所では、タービンから排出される排気蒸気を軸流排気とすることによって、タービン建屋の高さを低減することができた。しかしながら、大出力の火力発電所では、タービンから排出される排気蒸気を軸流排気することができず、タービン下方に排気する形式を取らざるを得ないため、大出力の火力発電所のタービン建屋の高さは高いものになっていた。
【0063】
これに対して、本実施の形態によれば、上述のように排気蒸気を軸流排気することができるので、大出力の火力発電所であってもタービン建屋の高さを低減することができる。
【0064】
第5の効果として、凝縮水滴によって低圧タービン11の最終段のタービン動翼が浸食されることを防止することができる。最終段のタービン動翼が著しく浸食されると、タービン動翼飛散事故にも発展する可能性があり、浸食防止は信頼性の面で重要な意味を持つ。
【0065】
一般的に、浸食速度はタービン動翼の先端の回転速度が早いほど進行しやすい。本実施の形態では、タービン動翼が相似則を用いて設計されているため、タービン動翼の先端の回転速度は従来の全速機と同じになり、浸食速度は同じとなる。しかしながら、許容しうる浸食量はタービン動翼の大きさに比例し、大きさが大きいほど浸食耐久性がある。
【0066】
具体的には、本実施の形態のタービン動翼の大きさは、従来の全速機のタービン動翼の大きさの2倍となっているため、耐久性は全速機のタービン動翼の2倍となっている。このため、凝縮水滴によって低圧タービン11の最終段のタービン動翼の浸食による影響を半減することができる。
【0067】
第6の効果として、各タービン8,9a,9b,11で許容しうる最大の段落数を増加することができ、タービン効率を向上させることができる。
【0068】
タービン効率は、基本的には、タービン8,9a,9b,11の段落数が多いほど高くなるが、段落数を増加させると、タービン8,9a,9b,11の回転軸の軸長を増大させる必要があるため、回転体としての安定性が低下する。このため、タービン8,9a,9b,11に設置される段落の数は、安定性を考慮した許容しうる段落数以下となっている。
【0069】
この点、本実施の形態によれば、タービン8,9a,9b,11の回転数は全速機の半分であるため、同じ軸長とした場合にはタービン8,9a,9b,11の安定性が向上する。タービン8,9a,9b,11の回転軸の軸長を長くしても、全速機と同じ程度の安定性を実現することができる。この結果、許容しうる段落の数を大きくすることができ、タービン効率を向上させることができる。
【0070】
第7の効果として、蒸気タービンシステム50の全長を短くすることによって、タービン建屋の大きさを小型化することができる。
【0071】
従来、蒸気タービンシステムを1000MWクラスのものにするには、蒸気タービンシステム50を、図11に示すようなクロスコンパウンド型とするか、図9に示すようなタンデムコンパウンド型とする必要があった。
【0072】
図11に示すように、蒸気タービンシステム50をクロスコンパウンド型とすると、高圧タービン(単流)8、中圧タービン(複流)9および2極発電機12を直結させ、かつ、2台の低圧タービン(複流)11および4極発電機13を直結させるため、4車室タービン8,9,11と2台の発電機12,13が必要となる。
【0073】
また、図9に示すように、蒸気タービンシステム50をタンデムコンパウンド型とすると、高圧タービン(単流)8、中圧タービン(複流)9、2台の低圧タービン(複流)11および発電機7を直結させるため、4車室タービン8,9,11と1台の発電機7が必要となる。
【0074】
ここで、低圧タービン11が合計4流になるのは、上述のようにタービン動翼に加わる遠心力によって最終段の大きさが制限されるためであり、中圧タービン9が複流になるのは、同じく遠心力による制限が厳しいからである。
【0075】
これに対して、本実施の形態では、上述のようにタービン2に加わる遠心力を低減することができるので、図1および図2に示すように、2段再熱を用いた場合であっても、高圧タービン(単流)8と、第1中圧タービン(単流)9aと、中低圧タービン(単流)15と、4極発電機13とを同軸に配置することができ、3車室タービン8,9a,15と1台の4極発電機13が配置される。このため、蒸気タービンシステム50の設置スペースを低減することができ、かつ保守性を向上させることもできる。
【0076】
ところで、図9および図11に示した従来の蒸気タービンシステム50は、1段再熱式であるのに対して、本実施の形態による図1および図2に示した蒸気タービンシステム50は、2段再熱式である点には留意すべきである。
【0077】
なお、上述した本実施の形態において、主蒸気A、第1段再熱蒸気E、および第2段再熱蒸気Fは650℃からなっているが、このような温度の蒸気A,E,Fを用いた蒸気タービンシステム50では45%の送電端効率が見込め、現状の再熱再生火力発電所に対して相対比で約10%の発電効率向上が得られる。
【0078】
また、図1および図2においては、本実施の形態に係る蒸気タービンシステム50を、ボイラ1内に第1段再熱器41と第2段再熱器42を設けるとともに、これらから第1段中圧タービン9a、第2段中圧タービン9bに第1段再熱蒸気Eと第2段再熱蒸気Fがそれぞれ導かれるような2段再熱式のシステムとして示したが、再熱器および中圧タービンを更に多数設け、多数段の再熱蒸気がそれぞれ別の中圧タービンに導かれるような多段再熱式のシステムとすることも可能である。
【0079】
このような場合、少なくとも最終段の再熱蒸気が導かれる最終段の中圧タービンと復水器へ蒸気を排気させる低圧タービンを連絡管なしに連続的に配置させることが可能である。
【0080】
ところで、上記では、2極を超える極数を持つ発電機として4極発電機13を用いて説明したが、2極を超える極数を持つ発電機であれば良く、これに限るものではない。
【0081】
また、上記では、低圧タービン11が軸流排気である態様を用いて説明したが、これに限るものではなく、例えば、図4に示すように、低圧タービン11からの排気蒸気を下方に排出するものでもよい。
【0082】
なお、図4に示す火力発電所の蒸気タービンシステム50も、図1および図2にて示した蒸気タービンシステム50と同様、ボイラ1と、タービン2、復水器14、および4極発電機13とを備える。図4に示すように、ボイラ1には、高圧タービン8から排出された主蒸気Aを再熱して再熱蒸気Bを発生させる再熱器45が1つだけ備えられている。タービン2は、高圧タービン8、中圧タービン9、および低圧タービン11を備える。ここで、図4では、中圧タービン9から排出された蒸気を低圧タービン11に導くためのクロスオーバー管(連絡管)10を備えている。
【0083】
また、図4に示すように、蒸気タービンシステム50のパワートレインは、高圧タービン8、中圧タービン9、複数の低圧タービン11および4極発電機13がこの順で連結されて一軸に配置されている。すなわち、高圧タービン8、中圧タービン9、複数の低圧タービン11、4極発電機13の回転軸は連結されて一軸として構成されており、蒸気タービンシステム50が共通かつ単一の回転軸を備える構成となっている。
【0084】
ここで、4極発電機13の回転軸は低圧タービン11の回転軸と連結されており、4極発電機13は高圧タービン11に隣接して配置されている。
【0085】
また、図4に示すように、復水器14は複数の低圧タービン11の下方に設けられている。復水器14からの水は、図1に示した蒸気タービンシステム50と同様に、低圧給水加熱器4、給水ポンプ5、高圧給水加熱器6に順番に導かれて給水としてボイラ1に戻される。
【0086】
第2の実施の形態
次に、図5および図6により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5および図6に示す第2の実施の形態は、図1として示した第1の実施の形態に係る蒸気タービンシステム50に、ガスタービンシステム30を組み合せた、所謂複合サイクルプラントである。ガスタービンシステム30は、空気を圧縮するコンプレッサー31と、当該コンプレッサー31で圧縮された空気を用い、例えば天然ガスなどの化石燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器32と、燃焼器32で生成された燃焼ガスによって駆動されるガスタービン33と、ガスタービン33に連結されたガスタービン発電機35と、を備える。また、本実施の形態に係る火力発電所の蒸気タービンシステム50においては、化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して給水を加熱して主蒸気を発生させるボイラとして、図1に示した第1の実施の形態におけるボイラ1の代わりに、ガスタービンシステム30から排出される排ガスCを熱源として給水を加熱して主蒸気Aを発生させる排熱回収ボイラ20を備えている。なお、図5および図6に示した本実施の形態においては、高圧給水加熱器6および低圧給水加熱器4は設けられていない。その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0087】
図5および図6に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0088】
まず、ガスタービン33の排ガスCの熱により、給水ポンプ5から供給される水(給水)の一部が排熱回収ボイラ20で加熱されて、主蒸気Aが生成される(図5参照)。
【0089】
次に、この主蒸気Aは、高圧タービン8にて膨張して仕事を行う。高圧タービン8から排出された排気蒸気は、排熱回収ボイラ20内の第1再熱器41へと導かれる(図5参照)。
【0090】
また、給水ポンプ5から供給される給水の別の一部は、ボイラ1へ供給されて加熱されて蒸気となり、その後高圧タービン8から排出された排気蒸気と混合されて排熱回収ボイラ20内の第1再熱器41内に入り、これらの混合蒸気がガスタービン33の排ガスCの熱により再熱されて第1段再熱蒸気Eとなる(図5参照)。
【0091】
次に、この第1段再熱蒸気Eは、第1中圧タービン9aに入り更に膨張仕事を行う。第1中圧タービン9aから排出された第1段再熱蒸気Eは、再び排熱回収ボイラ20に戻り、排熱回収ボイラ20内の第2再熱器42でガスタービン33の排ガスCの熱によって再熱され、第2段再熱蒸気Fとなる(図5参照)。
【0092】
次に、この第2段再熱蒸気Fは、第2中圧タービン9bに導かれて膨張して更に仕事を発生する。その後、第2中圧タービン9bを出た第2段再熱蒸気Fは、第2中圧タービン9bと低圧タービン11の接続位置に導かれた低圧蒸気Dと混合して低圧タービン11に入り再び膨張して仕事を行う。なお、この低圧蒸気Dは、給水ポンプ5の手前で分岐されて供給された低圧給水がボイラ1で加熱されることによって生成される(図5参照)。
【0093】
次に、低圧タービンにて仕事を終えた蒸気は、復水器14に導かれて冷却され凝縮して水になる(図5参照)。
【0094】
その後、復水器14からの水は、給水ポンプ5の前後で逐次分岐され、高圧、中圧、低圧のそれぞれ圧力の異なる給水として排熱回収ボイラ20に戻される(図5参照)。
【0095】
本実施の形態のガスタービンシステム30と蒸気タービンシステム50とを組み合わせたコンバインド火力発電所においても、4極発電機(2極を超える極数を持つ発電機)13を用いているため、第1の実施の形態と同様、蒸気タービンシステム50の回転数を全速機の半分にすることができる(半速機とすることができる)。このため、本実施の形態によっても、第1の実施の形態で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【0096】
すなわち、相似則を適用して、従来の全速機と比較して、最終段のタービン動翼の翼長を2倍にすることができる。
【0097】
また、低圧タービン11から排出される排気を単流の軸流排気とし、第2中圧タービン9bと低圧タービン11をクロスオーバー管(連絡管)10(図9乃至図11参照)のような連絡管なしに連続配置して中低圧タービン15を構成することができ、第2中圧タービン9bと低圧タービン11との間の圧力損失を無くすことができる。
【0098】
また、蒸気タービンシステム50が半速機となり、タービン動翼に加わる遠心力を小さくすることができることから、一般的に強度が非常に厳しくなる2段再熱サイクルにおいても蒸気温度を向上させることができ、容易に熱効率を高めることができる。
【0099】
また、蒸気タービンシステム50が半速機となるので、タービン動翼を長翼化することができ、十分な環状面積を有した最終段のタービン動翼と軸流排気を併用することでタービンの排気損失を低減することができる。
【0100】
さらに、蒸気タービンシステム50を半速機とすることによって、安定性が増加した分、タービン8,9a,9b,15に設置される段落数を増加することができ、タービン効率を向上させることができる。
【0101】
ところで、ガスタービンシステム30のガスタービン発電機35と、蒸気タービンシステム50の4極発電機13とは、別のシステムに設けられた発電機であるので、同期させる必要はない。また、ガスタービンシステム30の回転数については、全速、半速など、適宜選定することができる。ガスタービンシステム30のガスタービン発電機35を4極発電機とする場合、4極発電機13を共通の発電機として用い、ガスタービンシステム30と蒸気タービンシステム50との回転軸を連結して1軸に構成とした火力発電所とすることもできる。
【0102】
なお、上記では、低圧タービン11が軸流排気である態様を用いて説明したが、これに限るものではなく、例えば、図6に示すように、低圧タービン11からの排気蒸気を下方に排出するものでもよい。
【0103】
この火力発電所の蒸気タービンシステム50は、図6に示すように、ガスタービンシステム30から排出される排ガスCを熱源として給水ポンプ5から供給される水(給水)の一部を加熱して、主蒸気Aを発生させる排熱回収ボイラ20と、排熱回収ボイラ20からの主蒸気Aが導かれるとともに、回転軸を有する高圧タービン8と、高圧タービン8から排出された主蒸気Aと給水ポンプ5から供給される給水の別の一部を排熱回収ボイラ20にて加熱して発生させた蒸気とを混合して再熱し再熱蒸気Bを発生させる再熱器45と、、再熱器45で再熱された再熱蒸気Bが導かれる中圧タービン9と、中圧タービン9から排出された蒸気がクロスオーバー管(連絡管)10を介して導かれる低圧タービン11と、を備えている。なお、クロスオーバー管(連絡管)10に流入する中圧タービン9から排出される蒸気は、排熱回収ボイラ20からの低圧蒸気Dと混合される。
【0104】
また、図6に示すように、低圧タービン11の回転軸には、高圧タービン8、中圧タービン9および低圧タービン11の回転軸と一軸に結合された回転軸を有する4極発電機13が設けられている。そして、図6の例においても、蒸気タービンシステム50のパワートレインは、高圧タービン8、中圧タービン9、複数の低圧タービン11および4極発電機13がこの順で連結されて一軸に配置されている。すなわち、高圧タービン8、中圧タービン9、複数の低圧タービン11、4極発電機13の回転軸は連結されて一軸として構成されており、蒸気タービンシステム50が共通かつ単一の回転軸を備える構成となっている。
【0105】
また、図6に示すように、低圧タービン11の下方には復水器14が設けられている。復水器14にて凝縮した水は配管を介して接続されている給水ポンプ5に導かれて給水となり、この給水ポンプ5にて昇圧された給水は排熱回収ボイラ20に戻される。
【0106】
第3の実施の形態
次に、図7および図8により、本発明の第3の実施の形態について説明する。図7および図8に示す第3の実施の形態は、蒸気タービンシステム50が、第1中圧タービン9aを備えず、1段再熱式になったものであり、その他の構成は図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、本実施の形態の中圧タービン9は、第1の実施の形態における第2中圧タービン9bに相当している。またボイラ1は、再熱器45を1つ備えている。
【0107】
さらに、図7および図8において、中圧タービン9と低圧タービン11は、単一のケーシング内に収納された中低圧タービン15とされているが、再熱蒸気が導かれるタービンが中圧タービン9であり、復水器14に蒸気を排気として流出させるタービンが低圧タービン11であると定義される。この場合、第1の実施の形態と同様、中圧タービン9と低圧タービン11とを厳密に区分けする必要は必ずしもない。
【0108】
図7および図8に示す第3の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0109】
まず、ボイラ1によって、給水ポンプ5からボイラ1に供給された水(給水)が加熱され、主蒸気Aが発生する。この主蒸気Aは、高圧タービン8を経由した後、ボイラ1内に設置された再熱器45で再熱され再熱蒸気Bとして中圧タービン9に入る(図7参照)。
【0110】
次に、中圧タービン9から排出された再熱蒸気Bは、中圧タービン9に連続して設置された低圧タービン11内に流入し、復水器14に至って水になる(図7参照)。
【0111】
次に、復水器14から供給される水は、低圧タービン11から抽気された蒸気を用いて、低圧給水加熱器4で加熱される。その後、低圧給水加熱器4で加熱された水は、給水ポンプ5で昇圧される。そして、給水ポンプ5で昇圧された水は、高圧タービン8から抽気された蒸気を用いて、高圧給水加熱器6で加熱された後、ボイラ1に戻る(図7参照)。
【0112】
本実施の形態の火力発電所においても、4極発電機(2極を超える極数を持つ発電機)13を用いているため、第1の実施の形態と同様、蒸気タービンシステム50の回転数を全速機の半分にすることができる(半速機とすることができる)。このため、本実施の形態によっても、第1の実施の形態で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【0113】
すなわち、相似則を適用して、従来の全速機と比較して、最終段のタービン動翼の翼長を2倍にすることができる。
【0114】
また、低圧タービン11から排出される排気を単流の軸流排気とし、中圧タービン9と低圧タービン11をクロスオーバー管(連絡管)10(図9乃至図11参照)のような連絡管なしに連続に配置して中低圧タービン15を構成することができ、中圧タービンと低圧タービン11との間の圧力損失を無くすことができる。
【0115】
また、蒸気タービンシステム50が半速機となり、タービン動翼に加わる遠心力を小さくすることができることから、蒸気温度を向上させることができ、容易に熱効率を高めることができる。
【0116】
また、蒸気タービンシステム50が半速機となるので、タービン動翼を長翼化することができ、十分な環状面積を有した最終段のタービン動翼と軸流排気を併用することでタービンの排気損失を低減することができる。
【0117】
また、蒸気タービンシステム50を半速機とすることによって、安定性が増加した分、高圧タービン8、中圧タービン9、あるいは低圧タービン15に設置される段落数を増加することができ、タービン効率を向上させることができる。
【0118】
さらに、本実施の形態の蒸気タービンシステム50は、図7および図8に示すように、1段再熱式の蒸気タービンシステム50であり、同軸に配置された、高圧タービン(単流)8と、中低圧タービン(単流)15と、4極発電機13とからなっている。このため、蒸気タービンシステム50は、2車室タービン8,15と1台の4極発電機13とからなり、蒸気タービンシステム50の設置スペースをさらに低減することができ、かつ保守性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1の実施の形態による火力発電所の概略図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による火力発電所の側方断面図。
【図3】高圧タービンの初段のタービン動翼に加わる遠心応力と、クロム鋼の許容応力との関係を示したグラフ図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の変形例による火力発電所の概略図。
【図5】本発明の第2の実施の形態による火力発電所の概略図。
【図6】本発明の第1の実施の形態の別の変形例による火力発電所の概略図。
【図7】本発明の第3の実施の形態による火力発電所の概略図。
【図8】本発明の第3の実施の形態による火力発電所の側方断面図。
【図9】従来の再生再熱サイクルからなる蒸気タービンシステムを有する火力発電所の概略図。
【図10】従来のガスタービンシステムと蒸気タービンシステムとを組み合わせたコンバインド火力発電所の概略図。
【図11】従来のクロスコンパウンド型火力発電所の概略図。
【符号の説明】
【0120】
1 ボイラ
2 タービン
3 復水器
4 低圧給水加熱器
5 給水ポンプ
6 高圧給水加熱器
7 発電機
8 高圧タービン
9 中圧タービン
9a 第1中圧タービン
9b 第2中圧タービン
10 クロスオーバー管(連絡管)
11 低圧タービン
12 2極発電機
13 4極発電機
14 復水器
15 中低圧タービン
20 排熱回収ボイラ
30 ガスタービンシステム
31 コンプレッサー
32 燃焼器
33 ガスタービン
35 ガスタービン発電機
41 第1再熱器
42 第2再熱器
45 再熱器
A 主蒸気
B 再熱蒸気
C 排ガス
D 低圧蒸気
E 第1段再熱蒸気
F 第2段再熱蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して給水を加熱して、主蒸気を発生させるボイラと、
前記ボイラからの主蒸気が導かれるとともに、回転軸を有する高圧タービンと、
前記高圧タービンから排出された前記主蒸気を再熱して、再熱蒸気を発生させる再熱器と、
前記高圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、前記再熱器で発生した再熱蒸気が導かれる中圧タービンと、
前記高圧タービンおよび中圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、前記中圧タービンから排出された前記再熱蒸気が導かれる低圧タービンと、
前記高圧タービン、中圧タービンおよび低圧タービンの回転軸と一軸に結合された回転軸を有し、2極を超える極数を持つ発電機と、
を備えることを特徴とする火力発電所。
【請求項2】
高圧タービン、中圧タービンおよび低圧タービンのうち少なくとも一つから抽気された蒸気を用いてボイラに導かれる給水を加熱する再生熱交換器、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の火力発電所。
【請求項3】
空気を圧縮するコンプレッサーと、当該コンプレッサーで圧縮された空気を用いて燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼器で生成された燃焼ガスによって駆動されるガスタービンと、ガスタービンに連結されたガスタービン発電機と、を有するガスタービンシステムをさらに備え、
ボイラは、前記ガスタービンシステムから排出される排ガスを熱源として給水を加熱して、主蒸気を発生させる排熱回収ボイラであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の火力発電所。
【請求項4】
低圧タービンの最終段から排出される排気蒸気は、単流で排出されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の火力発電所。
【請求項5】
低圧タービンの最終段から排出される排気蒸気は、低圧タービンの回転軸の軸方向に排出されることを特徴とする請求項4に記載の火力発電所。
【請求項6】
発電機は4極発電機であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の火力発電所。
【請求項7】
複数の再熱器と、複数の中圧タービンとを備え、
前記複数の再熱器の各々にて発生される再熱蒸気は、対応する中圧タービンに導かれることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の火力発電所。
【請求項8】
中圧タービンと低圧タービンは、連絡管なしに連続的に配置される中低圧タービンであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の火力発電所。
【請求項9】
ボイラによって発生する主蒸気および再熱器によって発生する再熱蒸気の少なくともいずれか一方は620℃以上であり、当該620℃以上の蒸気が導かれる高圧タービンおよび中圧タービンの少なくともいずれか一方の回転軸は、クロム含有率が8%〜15%の材料からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の火力発電所。
【請求項10】
ボイラによって発生する主蒸気および再熱器によって発生する再熱蒸気の少なくともいずれか一方は545℃以上であり、当該545℃以上の蒸気が導かれる高圧タービンおよび中圧タービンの少なくともいずれか一方の回転軸は、クロム含有率が3%以下の材料からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の火力発電所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−248822(P2008−248822A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92286(P2007−92286)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】