説明

火災を検出して特定するための方法および装置

本発明は、少なくとも1つの観測領域(R ,..,R )において火災発生場所を検出して特定するための方法および装置に関するものであって、各観測領域に対して接続されているとともに、吸引開口(4)を介することによって、各観測領域に対して連通している、吸引パイプシステム(3)と;吸引パイプシステム(3)および吸引開口(4)を使用することにより、各観測領域(R ,..,R )からエアサンプル(6)を抽出するための吸引デバイス(5)と;吸引パイプシステム(3)を通して吸引されたエアサンプル(6)内において火災パラメータを検出するためのセンサ(7)と;を具備している。本発明においては、センサ(7)がエアサンプル(6)内において火災パラメータを検出した際には、ブロワデバイス(8)が、吸引パイプシステム(3)内へと抽出されたすべてのエアサンプル(6)を追い出す。火災場所は、輸送時間に基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の観測領域内において火災をおよび/または火災の発生を検出して特定するため方法に関するものであり、また、この方法を具現するための装置に関するものである。
【0002】
本発明は、まず最初に、火災検出デバイスを具備している。この火災検出デバイスは、火災パラメータを検出するためのセンサを備えていて、部屋の容積を代理する信号が供給される、あるいは、例えばファンといったような真空吸引デバイスによって真空吸引パイプシステムを通してエアが供給される。
【0003】
『火災パラメータ』という用語は、例えば、雰囲気温度や、雰囲気エア内における固体状や液体状や気体状の内容物(煙粒子の集積、あるいは、粒状物質の集積、煙またはガスの集積)や、局所的な背景放射、といったような、火災初期において測定可能であるような変化を表す物理的変数として、理解される。
【背景技術】
【0004】
本発明と同様のタイプの方法および火災検出装置は、公知なものであって、火災の初期段階において火災の早期発見を行うよう機能する。典型的な適用領域は、例えば銀行等内においてコンピュータを含有した部屋といったような、高品質で重要な設備をを含有した部屋である。あるいは、典型的な適用領域は、コンピュータ設備自体である。この目的のために、部屋のエアに関する代表的サンプルが、あるいは、デバイス冷却エアに関する代表的サンプルが、連続的に抽出される。このようなサンプルは、以下においては、『エアサンプル』と称される。そのようなエアサンプルを抽出するとともに、抽出したエアサンプルを、火災センサと火災センサのハウジングとのそれぞれに対して供給するための適切な手段は、真空吸引パイプシステムである。この真空吸引パイプシステムは、例えば部屋の天井下に取り付けられた複数の導管からなるシステムとして構成される。導管は、火災センサのハウジングのエア取込開口に対して接続されている。エア取込開口は、真空吸引パイプシステム内に設けられたエア吸引開口を介して、エアサンプルを吸引する。最も早期の段階で火災発生を検出するに際しての重要な前提条件は、火災検出デバイスが、センサの検出チャンバに対する供給を妨害することなく、十分な量のエアを連続的に抽出することである。この場合に使用可能であるようなセンサは、例えば、センサスモークチャンバ内において粒状物質によって引き起こされた光の濁度を測定するようなポイントベースのスモークセンサであり、また、センサの中央のところにおいてスモーク粒子によって引き起こされる光の散乱を検出するような、取込経路内に一体化された散乱光センサ、である。
【0005】
1つまたは複数の観測領域内において火災源を検出して特定するための、複数の真空吸引パイプシステムを使用した方法および装置は、従来技術において公知であり、例えば大きなホールやオフィスビルやホテルや船においては消防隊員が火災源を特定することが非常に困難であるということのために、開発されてきた。国の基準に応じて、単一の火災検出ユニットを有した単一のスモーク吸引システムは、いくつかの部屋を有しているような最大で2000m という面積を観測することができる。動作可能なアラームサイトを迅速に特定させ得るよう、基準が規定されている。例えばドイツ国においては、“Guidelines for Automatic Fire Reporting Installations, Planning and
Construction”(VdS 2095)が規定されている。その場合、複数の部屋が互いに隣接している場合には、それら複数の部屋を、1つのアラーム領域へとグループ化することができる。複数の部屋に対するアクセスは、一見して容易に行うことができ、合計表面積が表面1000m を超えることがなく、火災アラーム観測ステーションには、明瞭な可視アラームインジケータが設けられる。これらは、火災アラーム時には、火災が起こった場所を表示する。
【0006】
観測対象をなす複数の領域が単一のスモーク吸引システムに対して接続されているといったような吸引原理に基づいて動作する火災検出デバイスの場合には、最も早期に火災を検出し得るという利点を有しているものの、そのような共有型のスモーク吸引システムの場合には、火災の場所を、必ずしも特定することができない。これは、それぞれが各観測領域からの部屋内エアを表しているような複数のエアサンプルが、相互接続によって共通化された吸引パイプシステム内において互いに混合された後に、火災パラメータの検出のためにセンサへと供給されるからである。よって、すべてのセンサは、複数の観測領域のうちのどこかにおいて、火災が発生したことおよび/または火災が正に起ころうとしていることを、検出することができる。さらに、複数の観測領域のうちのどの観測領域において火災が発生したかを特定し得るには、通常は、各観測領域から抽出された各エアサンプルを、個別の吸引パイプシステムの他のセンサへと供給して、火災パラメータを検出する必要がある。しかしながら、複数の観測領域を観測することは、対応した数の吸引パイプシステムを設置しなければならないという欠点を有している。このことは、吸引型の火災検出システムの具現を、構造的にもコスト的にも、非常に複雑なものとする。
【0007】
特許文献1には、分岐した吸引パイプシステム内においてスモークを吸引したジョイントを特定するよう機能するアラームボックスが開示されている。このようなアラームボックスは、入力パイプおよび出力パイプ接続するように配置されたケーブルを有したハウジング内に構築されたポイントベースのスモークセンサと、カバー状に配置されたシグナルライト、とから構成されている。しかしながら、この構成の欠点は、サイズと構成と価格とのために、それぞれ個別のエア取込開口においてそのようなアラームボックスを使用し得ないことである。
【0008】
さらに、特許文献2により、火災発生場所を特定し得るようにして、複数の観測領域内において火災を検出するための方法および装置が公知である。この方法においては、各観測領域において、2つの交差パイプからなる適切なデバイスを使用する。これらパイプ内へと、1つまたは複数のファンが、複数の観測領域からのエアを、パイプ内に配置された吸引開口を通して、連続的に吸引し、さらに、吸引したエアを、各パイプごとにそれぞれ火災パラメータを検出し得るよう、少なくとも1つのセンサに対して供給する。これにより、火災発生場所の特定は、交差パイプに対して割り当てられた2つのセンサに応答することによって、行われる。行と列とからなるマトリクスとしてそれらパイプを配置することにより、複数の観測領域が観測される。適切であれば、行と列とのそれぞれに関しての多段的なセンサが設けられる。しかしながら、この公知の装置の欠点は、複数のパイプをマトリクス状として構成することのために、実質的にコストが非常に大きくなることである。
【0009】
特許文献3により、観測対象領域内における様々な測定ポイントに対して個別的に連結された複数の吸引ラインを有した選択的なガス/スモーク検出システムであって、様々な測定ポイントにおいてエアサンプルすなわちガスを吸引し得るものとされた検出システムが公知である。この場合、ラインに対して連結されたガスセンサすなわちスモークセンサは、固定しきい値を超えた際には、サンプル内の特定のガスの存在に反応し、検出信号を放出する。これにより、インジケータ回路および/またはアラーム回路が制御される。さらに、制御ループ内において周期的にかつ定期的に励起される遮断バルブが、個々の吸引ライン上に設けられている。このようなガス/スモーク検出システムを使用した火災検出においては、検出信号が存在しない場合には、制御ユニットは、すべての吸引ラインを同時に開状態としてセンサに対して接続するようにして、遮断バルブを制御する。また、検出信号を受領した場合には、制御ユニットは、検出モードでもってそれら吸引ラインをスイッチングするようにして、制御する、すなわち、複数の吸引ラインを、順次的にあるいはグループ的に、センサに対して連通するようにして、制御する。しかしながら、火災発生場所を検出するためのこの機能は、センサを、個別的にかつ選択的に開放可能な供給ラインを介して、個々の観測領域に対して連結可能とし得ることを、前提としている。このことは、本来的に、多数のパイプからなるシステムを、そのような個別的かつ選択的な連結を行い得るようにして、設置しなければならないことを意味している。この場合にも、同様に、必要な吸引ラインの設置コストが高いことが欠点である。
【0010】
また、特許文献4により、観測対象をなす各部屋からガスを抽出するための多数のサンプリングサイトを有しつつネットワーク状でもって構成された吸引システムをベースとしたエア汚染/スモーク検出装置が公知である。このエア汚染/スモーク検出装置は、グリッド状の吸引システムに対して連結された多数の入口ポートであって、個別的に観測されるような入口ポートを備えている。正常な状況下では、検出装置がエア汚染/スモークを検出するまで、すべての入口ポートは、開放状態のままとされる。入口ポートを選択的に閉塞することにより、火災発生領域を特定して検出することができる。しかしながら、この検出装置の動作に際しては、また、火災発生場所を信頼性高く検出し得るよう、グリッド状構造を形成するために、大規模な吸引ラインを必要とする。この場合にも、この公知の装置の欠点は、パイプからなるシステムに関して、設置コストが大きいことである。
【0011】
さらに、特許文献5により、1つまたは複数の観測領域内における火災発生場所を検出して特定するための装置が、公知である。この装置は、各観測チャンバ内に設けられた取込ポートを有して配置されたラインを介して雰囲気エアサンプルを連続的に供給し得る取込ユニットを使用することにより、火災パラメータを検出するためのメインセンサを備えている。各観測領域ごとに、少なくとも1つの吸引開口のところにあるいはその近傍に、それぞれ、1つのサブセンサが設けられている。サブセンサは、メインセンサから検出信号が放出された際にコントローラから伝達された起動信号によって、起動される。このようにして起動されたサブセンサは、火災発生場所を検出するように機能する。これにより、複数の観測領域の中から火災発生場所を特定することができる。この公知の装置は、使用されるサブセンサの数が多いことのために、火災検出デバイスに関連したコストが比較的大きいことであり、さらに、デバイスを設置する際にサブセンサに関連する比較的複雑な配線を行う必要があることである。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2 670 010号明細書
【特許文献2】国際公開第00/68909号パンフレット
【特許文献3】ドイツ国特許発明第3 237 021号明細書
【特許文献4】国際公開第93/23736号パンフレット
【特許文献5】ドイツ国特許出願公開第101 25 687号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によって解決すべき1つの課題は、公知のスモークおよびガス吸引システムにおける利点すなわち動的な取込および密閉的な設置という利点と、それぞれ個別の吸引開口を開口させこれにより火災の発生場所をあるいは火災が発生した際にガス状不純物の実際の発生場所を特定し得るという利点と、を組み合わせたような、火災発生場所を単純にかつ経済的に検出し得るような、装置および方法を提供することである。本発明によって解決すべきさらなる課題は、火災の発生の検出を信頼性高く行い得るとともに複数の観測領域の中から火災発生場所を特定し得るような吸引型火災検出デバイスを備えており、さらに、火災パラメータの検出のために1つのセンサに対して個別的に複数の観測領域を連結するような複数の吸引パイプシステムを必要としないような、消火システムを提供することである。
【0013】
本発明においては、上記課題は、以下のような様々なステップを備えたタイプの方法によって解決される。すなわち、共通の吸引パイプシステムを使用することによって、好ましくは連続的な態様でもって、各観測領域から、各観測領域内における部屋内エアを代理するエアサンプルを抽出し;火災パラメータを検出し得るものとされた少なくとも1つのセンサを使用することによって、吸引パイプシステムを使用して抽出されたエアサンプルに関して少なくとも1つの火災パラメータを確立し;ブロワデバイスまたは吸引/ブロワデバイスを使用することにより、吸引パイプシステム内へと抽出されたエアサンプルを追い出し;少なくとも1つのセンサがエアサンプル内において火災パラメータを再検出するまで、吸引パイプシステムを使用して、各観測領域から複数のエアサンプルを再び抽出し;再び抽出されたエアサンプルから火災パラメータが再検出されるまでに要した時間を測定し、これにより、複数の観測領域の中から、火災が発生しているあるいは火災が発生しようとしている1つの観測領域を特定し;1つまたは複数の観測領域内において火災が進展しているおよび/または存在していることを示す信号を送出し、この場合、この信号に、1つまたは複数の観測領域内において火災が発生している正確な場所というさらなる情報を含有させる。
【0014】
本発明における解決課題は、さらに、各観測領域に対して接続されているとともに、少なくとも1つの吸引開口を介することによって、各観測領域に対して連通している、吸引パイプシステムと;吸引パイプシステムおよび吸引開口を使用することにより、各観測領域からエアサンプルを抽出するための吸引デバイスと;吸引パイプシステムを通して吸引されたエアサンプル内において少なくとも1つの火災パラメータを検出するための少なくとも1つのセンサと;を具備し、このような装置において、さらに、少なくとも1つのセンサが、抽出されたエアサンプル内において少なくとも1つの火災パラメータを検出した際には、吸引パイプシステム内へと抽出されたすべてのエアサンプルを追い出し得るものとされたブロワデバイスと;複数の観測領域の中の1つの観測領域における火災発生場所を認識し得る少なくとも1つのインジケータ部材、および/または、複数の観測領域における火災の進展および/または存在に関する情報および複数の観測領域内における火災の正確な場所に関する情報を装置から離間した位置にまで送出し得る通信デバイスと;を具備していることを特徴とする装置によって、解決される。
【0015】
技術を適用するという課題は、本発明に基づく装置を、観測領域内へと消化剤を投入し得る消火システムの中の火災検出部材として適用することにより、解決される。
【0016】
本発明の重要な見地は、吸引型の観測システムとしても公知であるような、既に広く使用されているスモーク抽出またはガス抽出システムに関する構成に基づいている。意義のある技術的アプローチは、単純であるようにかつ経済的であるように改良することである。これにより、既存の部屋の基準内において、ガス不純物の発生源を個別的に検出することができる。同時に、関連する改良が、所望の安全基準の達成に際して、実質的な構成の追加や付加的な動作コストをもたらしてしまうような状況は、避けなければならない。本発明の格別の利点は、既存の吸引型システムに関する改良と非常に実現しやすいようなしたがって非常に効率的な方法とを組み合わせることによって得られるような複数の観測領域の中の1つの観測領域から火災および/またはその兆候を検出して特定し得るという要求を満たし得るということだけではなく、火災の発生場所を特定し得るという本発明による方法が、スモーク吸引システムに関する新規な応用を開拓し得るということでもある。よって、本発明においては、例えば、多くの個別の部屋を有した建物に関して今日まで使用されてきたような多数のポイントベースの火災アラームを使用する必要がない。本発明においては、観測領域内において火災および/またはその兆候を信頼性高く検出し得るとともに、複数の観測領域の中からの1つの観測領域の特定を、ただ1つの吸引パイプシステムと、火災パラメータを検出するための1つのセンサと、1つの吸引/ブロワデバイスと、を使用することにより、行うことができる。こうすることにより、複数の吸引パイプシステムと、複数のセンサと、を組み合わせて使用する必要がない。このため、構造的複雑さを低減することができて、明らかに有利であり、そのような火災検出デバイスに関連する複数の観測領域を改良することができる。火災検出および火災特定が、吸引型の原理に基づいていることにより、本発明による方法は、極めて感度の良好なものであって、特に、個々の観測領域内における空間的高さやエア流速に対しては独立である。天井が高いことやエア流速が大きいことは、例えば空調された領域においては、スモークを大幅に希釈してしまうこととなる。本発明による火災検出および火災特定に関する方法における高い検出感度は、それらパラメータには、ほぼ無関係である。さらに、本発明による方法は
、各観測領域内におけるダストや粉塵や湿度や極端な温度といったような擾乱には無関係に、火災および/またはその兆候を、信頼性高く検出して位置決めし得るという利点をもたらす。また、本発明による方法は、ただ1つの吸引パイプシステムの使用を可能とする。このことは、建物アーキテクチャーを実質的に妨害することなく組み込むことを可能とし、これにより、美観性を最大限に向上させることができる。
【0017】
火災パラメータを検出するためのセンサが、吸引パイプシステムを使用して抽出されたエアサンプル内の少なくとも1つの火災パラメータを検出した際に、吸引パイプシステム内に残存しているすべてのエアサンプルが追い出されることのために、新鮮なエアが、すなわち火災パラメータを一切含有していないエアが、吸引パイプシステムの全体を充填することとなる。エアサンプルの追い出し後には、吸引パイプシステムは、各観測領域から、各観測領域内における部屋内エアを代理するエアサンプルを、再び抽出する。本発明による方法の重要な見地は、共通の吸引パイプシステムを使用して吸引したエアサンプル内においてセンサが火災パラメータを再検出するまでの、輸送時間、および/または、輸送時間に関する特定の値、を測定することである。この輸送時間をその後評価することにより、各観測領域がセンサから特定の距離だけ離間していることおよびそのために吸引パイプシステムに依存した特有の輸送時間を有していることに基づいて、火災場所あるいは火災が進展している場所を、特定することができる。
【0018】
上記方法の具現化に際し、本発明による装置によれば、吸引デバイスを使用することにより、吸引開口を介して各観測領域に対して連通している吸引パイプシステムによって、各観測領域から、各観測領域内における部屋内エアを代理するエアサンプルを抽出することができ、その後、エアサンプルを、センサに対して供給することができる。当然のことながら、センサの故障可能性を低減し得るよう、本発明による装置においては、火災パラメータの検出のために、複数のセンサを使用することができる。また、ある1つの火災パラメータに関して、1つのセンサを使用し、なおかつ、他の火災パラメータに関して、他のセンサを使用すること、を想定することもできる。本発明による装置は、特に、維持および管理という点において、特に好適である。観測領域の外部に位置した個別の領域内に配置し得るような、ただ1つのセンサと1つの吸引デバイスと1つのブロワデバイスとしか使用していないことにより、容易にアクセスができて、メンテナンスが容易である。これにより、明らかに全体的メンテナンスコストを低減し得るだけでなく、保守管理要員が、観測領域内に立ち入る必要がない。このことは、クリーンルームや、船舶のキャビンや、刑務所の独房、といったような場合には、特に重要な見地である。特に好ましい時においては、本発明による装置は、付加的に、通信デバイスを具備している。この通信デバイスを使用することにより、1つまたは複数の観測領域内における火災の発生や存在に関して、また、1つまたは複数の観測領域における正確な火災発生場所に関して、装置から離間した場所へと、情報を送出することができる。この意味における離間した場所とは、例えば、火災アラーム観測ステーションや、特別捜査員のためのコントロールセンター、とすることができる。よって、通信デバイスにより、例えば、火災に関連する情報を含んだ対応信号を、関連する受信者に対して、有線でもあるいは無線でも、送信することができる。通信デバイス自体は、制御可能なものであり、当然のことながら、例えば、デバイスの動作状況を変更したり検査したりすることができる。また、想定し得る通信媒体として、IR技術を適用することができる。
【0019】
本発明による方法に関連する好ましい実施形態は、請求項2〜9に記載されており、本発明による装置に関連する好ましい実施形態は、請求項11〜20に記載されている。
【0020】
例えば、本発明による方法に関して特に好ましくは、吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速が、各観測領域からそれぞれのエアサンプルを抽出する際に、決定される。この流速は、その後、吸引パイプシステム内に残存したエアサンプルを完全に追い出すのに必要な時間を計算するに際して、有用である。流速の決定または測定は、直接的なものともまた間接的なものとも、することができる。すなわち、例えば、吸引デバイスの出力や、吸引パイプシステムの実効流通断面積や、吸引パイプシステムに沿って配置された吸引開口の各直径、といったようなデバイスパラメータに基づいたものと、することができる。従来技術において公知であるような様々な流速測定方法を使用して、直接的な測定を行うことができる。例えば、ホットワイヤ式のあるいはホットフィルム式の風速計を使用することを、想定することができる。吸引パイプシステムからブロアデバイスによってエアサンプルを完全に追い出すのに必要な時間の計算は、有利には、追い出し時間を最小とするようにして実施することができ、これにより、火災発生場所の特定を、最短の時間で行うことができる。
【0021】
本発明による方法の特に有利な実施態様においては、吸引パイプシステム内に残存するエアサンプルを追い出すとともに、この追い出し時の流速を決定し、吸引パイプシステムからエアサンプルを完全に追い出すのに必要な時間を計算する。ここで、抽出と追い出しとの双方に関してたとえ同じファンが使用されたにしても、ファンが、通常は、これら2つの動作モードに関しては、互いに異なる特性曲線を示すことのために、抽出と追い出しとでは、流速が異なる場合があることに、注意されたい。追い出し時に決定された流速に基づいて、その後、吸引パイプシステムからエアサンプルを完全に追い出すのに必要な時間が計算される。よって、ここで得られた計算値は、非常に正確な値である。
【0022】
特に好ましくは、各観測領域からそれぞれのエアサンプルを再び抽出する際に、吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速を決定する。決定された流速は、各観測領域からの各エアサンプルの再抽出時に各観測領域内における部屋内エアを代理している各エアサンプルの輸送時間を計算するに際しての根拠として機能する。本発明のこの実施形態においては、火災場所の特定に関して、特に大きな信頼性と正確さとを、得ることができる。当然のことながら、各観測領域からのそれぞれのエアサンプルの再度の抽出に関して測定された輸送時間は、例えば、各観測領域からのそれぞれのエアサンプルの連続的な抽出時に決定された流速に基づいて、あるいは、理論値に基づいて、計算することもできる。
【0023】
本発明においては、エアのサンプリングは、吸引デバイスによって行われる。このため、各観測領域からのエアサンプルのその後の再抽出は、前もって行われたエアサンプリング抽出時に使用された吸引ラインと比較して、狭められた吸引ラインを使用して行われる。特に好ましい態様においては、これにより、再抽出時の輸送時間が、より長いものとなり、相異なる吸引開口に基づく輸送時間どうしの間の相違が、大きなものとなる。その結果、各観測領域について輸送時間の測定値に関しての信頼性高い修正を行うことができる。例えば0.5〜2秒といったような、輸送時間の測定値に関する許容誤差を想定することができる。互いに隣接した2つの吸引開口に関する輸送時間が許容誤差の範囲内でオーバーラップしてしまって火災発生場所の特定が不可能となってしまうという事態を回避し得るよう、再抽出は、より狭められた吸引ラインによって行われる。これにより、この実施形態においては、有利には、輸送時間の測定精度を向上させることができる。しかしながら、当然のことながら、また、上記に加えてあるいは上記に代えて、再抽出時には、火災パラメータに対してのセンサのサンプリング速度を増大させることも、想定される。
【0024】
本発明による方法の特に好ましい態様においては、自動調節手順が提供される。この自動調節手順においては、この自動調節手順を行っている全時間中にわたって、少なくとも1つのセンサから最も遠くに位置した観測領域の吸引開口のところにおいて、意図的に火災パラメータを生成し;少なくとも1つのセンサが、抽出されたエアサンプル内において意図的に生成された火災パラメータを検出するまで、共通の吸引パイプシステムを使用して、各観測領域からエアサンプルを抽出し;ブロワデバイスまたは吸引/ブロワデバイスを使用することにより、吸引パイプシステム内へと抽出されたエアサンプルを追い出し;センサがエアサンプル内において意図的に生成された火災パラメータを再検出するまで、吸引パイプシステムを使用して、各観測領域から複数のエアサンプルを再び抽出し;再び抽出されたエアサンプルから意図的に生成された火災パラメータが再検出されるまでに要した輸送時間を測定し、これにより、吸引パイプシステムに関する最大輸送時間を決定し;この決定された最大輸送時間に基づいて、および、吸引パイプシステムの構成に基づいて、特に、複数の吸引開口の間の間隔と、吸引パイプシステムの直径と、吸引開口の直径と、に基づいて、各観測領域からの、各観測領域の部屋内エアをそれぞれが代理する複数のエアサンプルに関してそれぞれの輸送時間を計算し;各エアサンプルに関して計算された輸送時間を、表の形態で格納する。自動調節手順を使用しているというこの実施形態の利点は、特に、吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速を測定する必要がないことである。この点において、火災検出デバイスを、自己学習モードとすることができる。すなわち、最も遠い位置の吸引開口のところにスモークを形成し、抽出プロセスを行って輸送時間を測定し、追い出しを行って、再抽出を行う。最大輸送時間に基づいて、また、特定のパイプ構成に基づいて、すべての吸引開口に関する輸送時間を、計算することができる。この計算は、火災検出デバイス自体によって行うことができる、あるいは、例えばラップトップコンピュータからといったようにして外部から行うことができる。計算された輸送時間は、その後、表として格納される。
【0025】
本発明による方法の特に好ましい実施形態においては、自動調節手順を利用するに際し、表として格納された計算された輸送時間に関する修正関数を使用することによって、各観測領域に関する輸送時間を更新する。吸引パイプシステムおよび/または吸引開口が、経時的に徐々に汚染されることを考慮すれば、流速は、漸次的に変化する。よって、修正関数を使用することにより、表内に格納された輸送時間から、現在の輸送時間を計算することができる。
【0026】
再抽出したエアサンプルに関して火災パラメータを再検出するに先立って、本発明による方法における輸送時間の評価は、測定した輸送時間と、各観測領域に対して理論的に計算された輸送時間と、を比較することにより、行う。理論的な輸送時間の計算を行うに際して考慮するパラメータは、少なくとも1つのセンサと、各観測領域に関して吸引パイプシステム内に配置された吸引開口と、の間にわたっての、吸引パイプシステムの長さと;少なくとも1つのセンサと、各観測領域と、の間にわたっての、吸引パイプシステムの実行流通断面積および/または断面積と;少なくとも1つのセンサと、各観測領域の吸引開口と、の間にわたっての、吸引パイプシステム内におけるおよび/または吸引パイプシステムの断面内におけるエアサンプルの流速と;とすることができる。しかしながら、当然のことながら、他の異なるパラメータを使用して輸送時間の理論的計算を行うことも、また、想定される。
【0027】
本発明による装置に関する1つの有利な実施形態においては、装置は、少なくとも1つのセンサがエアサンプル内において少なくとも1つの火災パラメータを検出した際には、この少なくとも1つのセンサから送出される信号に応答して、吸引デバイスとブロワデバイスとを時間的に制御し得るものとされたコントローラを具備している。
【0028】
コントローラは、好ましくは、まず最初に、吸引デバイスを使用する。これにより、共通の吸引パイプシステムを介して、各観測領域内における部屋内エアを代理するエアサンプルを、各観測領域から連続的に抽出する。その場合、センサは、抽出されたエアサンプル内において少なくとも火災パラメータを検出し、コントローラに対して、対応した信号を送出する。コントローラは、対応した信号を吸引デバイスに対して送出する。これにより、吸引デバイスを停止させる。コントローラは、これと同時にあるいはこの直後に、ブロワデバイスを起動させるようなさらなる信号を送出し、これにより、ブロワデバイスを起動させる。これにより、吸引パイプシステムの中になおも残存しているすべてのエアサンプルを追い出す。本発明においては、所定時間後には、コントローラは、ブロワデバイスに対して他の信号を送出し、これにより、ブロワデバイスを停止させる。これと同時にあるいはこれの直後に、コントローラは、吸引デバイスに対して信号を送出して、吸引デバイスを再起動させ、これにより、吸引パイプシステムによって、各観測領域の部屋内エアを代理する複数のエアサンプルを、各観測領域から、再度抽出する。ブロワデバイスを起動させている所定時間は、デバイスパラメータに基づいて理論的に決定されメモリ内において格納されている時間とされる、あるいは、各観測領域からの各エアサンプルの連続的な抽出時に吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速の測定値に基づいて決定された時間とされる。
【0029】
本発明による装置の特に好ましい実施形態においては、輸送時間の値を格納するためのメモリ手段を具備している。このメモリ内に格納される値は、例えば、最大輸送時間およびパイプ構成に基づいて自動調節手順時に決定された輸送時間とすることができる。
【0030】
本発明による装置において、特に好ましくは、吸引開口の近傍に配置されるとともに、装置の設定および検査を行い得るよう、火災パラメータを意図的に生成するための、少なくとも1つのスモーク生成源を具備している。よって、火災検出デバイスを自己学習モードで動作させたときには、最も遠くに位置した吸引開口のところに配置されたスモーク生成源を使用することにより生成されたスモークを測定することによって、意図的に生成されたスモークと、そのスモークの火災パラメータとの、輸送時間を測定することができる。これにより、最大輸送時間を測定することができる。そして、この最大輸送時間に基づいて、および、パイプ構成に関する既知情報に基づいて、すべての吸引開口に関する輸送時間を計算することができる。当然のことながら、この場合、スモーク生成源を他の吸引開口のところに配置することもでき、また、複数のスモーク生成源を様々な吸引開口のところに配置することもできる。
【0031】
1つの可能な実施態様においては、本発明による装置は、さらに、吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速を測定するための少なくとも1つのセンサを具備している。そのため、吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速を決定することができ、この流速に基づいて、吸引パイプシステム内に残存するすべてのエアサンプルを完全に追い出すのに必要な時間を計算することができて、有利である。センサを利用して決定された流速は、さらに、各観測領域からの各エアサンプルの再抽出時に、各観測領域内における部屋内エアを代理するエアサンプルの輸送時間を計算するに際しても、有用である。流速を測定するためのセンサの例は、従来技術において公知であり、ホットワイヤ式のあるいはホットフィルム式の風速計がある。さらに、センサを使用して流速を測定することに代えて、理論的デバイスパラメータに基づいて流速の決定を行うことが、想定される。また同様に、その起動時の自己学習モードの際にだけ流速を測定し得るようにセンサをスイッチングすることが、想定される。
【0032】
特に好ましくは、プロセッサが設けられ、このプロセッサは、少なくとも1つのセンサがエアサンプル内において火災パラメータを検出した際にセンサから送出される信号を判断するとともに、吸引デバイスに対しておよび/またはブロワデバイスに対してコントローラから送出される制御信号を判断する。よって、プロセッサは、有利には、信号に基づいて吸引パイプシステムを使用して各観測領域内から連続的な再抽出を行うことにより、各観測領域の部屋内エアを代理するエアサンプルの輸送時間を決定し得るように、構成される。これにより、火災の発生場所や火災が進展している場所を特定することができる。輸送時間の評価は、プロセッサ内において、測定した輸送時間と、各観測領域に対して理論的に計算された輸送時間と、を比較することにより、行われる。理論的に計算される輸送時間は、例えば、少なくとも1つのセンサと、各観測領域に関して吸引パイプシステム内に配置された吸引開口と、の間にわたっての、吸引パイプシステムの長さと;少なくとも1つのセンサと、各観測領域と、の間にわたっての、吸引パイプシステムの実行流通断面積および/または断面積と;少なくとも1つのセンサと、各観測領域の吸引開口と、の間にわたっての、吸引パイプシステム内におけるおよび/または吸引パイプシステムの断面内におけるエアサンプルの流速と;に依存するものとすることができる。輸送時間を分析することによって、火災発生場所を特定することができる。
【0033】
本発明による装置の有利な実施形態においては、各吸引開口の直径および/または横断面形状が、それぞれ対応する観測領域に対して各吸引開口を付設し得るものとされる。
【0034】
この場合、吸引/ブロワデバイスからより遠くに位置した観測領域に関しては、吸引/ブロワデバイスからより近くに位置した観測領域と比較して、より大きな断面積の吸引開口を使用することが、想定される。吸引/ブロワデバイスから、それぞれの観測領域までの距離は、各観測領域内の吸引開口から吸引デバイスまでにわたってエアサンプルが輸送されなければならない距離によって、規定される。各吸引開口の横断面形状または横断面積は、吸引パイプシステム内において発生する圧力降下を考慮して、構成される。吸引開口に関するこのような実施形態により、本発明による装置においては、火災検出ならびにその特定という点において、複数の観測領域の各々に関する感度は、同じである。1つの可能な態様においては、吸引パイプシステムの個々の吸引開口は、建物の吸引パイプシステムを設置した後において与えられた条件に、適合させることができる。例えば、初期的には、すべての吸引開口のサイズを同じものとしておくことが想定される。この場合には、各吸引開口は、吸引開口に対してそれぞれ対応するダイヤフラム式開口を固定することによって、事後的な調整が行われる。この場合、例えば、穴開きフィルムや穴開きクリップを適用することができる。このようなフィルムやクリップにおける穴のサイズは、与えられた空間的条件に適合したものとされる。当然のことながら、他の実施態様を想定することもできる。また、吸引パイプシステムを、吸引パイプシステムの横断面形状を設置条件に応じて変更し得るものとして、構成することができる。
【0035】
特に有利な実施態様においては、吸引デバイスおよびブロワデバイスは、1つのブロワとして互いに一緒のものとして構成される。このブロワは、コントローラからの制御信号に応答してエア搬送の向きを変更し得るように、構成される。これにより、本発明による装置においては、構成部材の数をさらに低減することができる。このことは、本発明による装置の製造コストの低減化につながり、有利である。
【0036】
本発明による火災検出と火災位置の特定とを行う装置を構成する構成部材の数をさらに低減し得るよう、吸引デバイスおよびブロワデバイスは、有利には、1つのブロワとして互いに一緒のものとして構成され、ブロワは、正逆回転可能なものとされる。
【0037】
吸引デバイスおよびブロワデバイスを1つのブロワとして互いに一緒のものとして構成したような、本発明による装置の他の実施態様においては、ブロワは、適切な換気フラップを備えたファンとされる。よって、このブロワは、エアを搬送する向きを変更することができる。当然のことながら、この場合、他の実施形態を想定することもできる。
【0038】
上述したように、本発明による装置は、複数の観測領域の中の1つの観測領域における火災発生場所を認識し得るインジケータ部材を備えている。このインジケータ部材は、観測領域の入口の近傍に配置することができる、あるいは、火災検出デバイスの近傍に配置することができる。通信手段、あるいは、火災アラームセントラルステーションに対する通信バスに対する接続のための1つの入力部材は、火災発生場所の情報をセントラルステーションに対して送出するように機能する。これにより、制御パネル上に、例えば文字でもって(例えば、『領域Xにおいて火災発生』)、情報を表示することができる。インジケータ部材に加えてあるいは代えて、本発明による装置は、さらに、通信デバイスを具備している。この通信デバイスは、複数の観測領域における火災の進展および/または存在に関する情報および複数の観測領域内における火災の正確な場所に関する情報を、装置から離間した位置にまで、例えば火災アラームセントラルステーションや特別捜査員のためのコントロールセンターといったようなところにまで、送出することができる。用途によっては、通信デバイスにより、好ましくは、必要が生じた際に、本発明による装置から離間したところに位置した少なくとも1人の受信者に対して適切な信号を、有線でもあるいは無線でも、送信することができる。当然のことながら、通信デバイス自体は、遠隔的に制御可能なものであり、例えば、デバイスの動作状況を変更したり検査したりすることができる。また、想定し得る通信媒体として、IR技術を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下においては、添付図面を参照しつつ、本発明による装置の好ましい実施形態に関して、詳細に説明する。
【0040】
図1は、複数の観測領域(R ,R ,..,R )の中から、1つの観測領域(R ,R ,..,R )における火災発生を特定して検出するための、本発明による装置の好ましい実施形態を概略的に示している。本発明による装置は、図1に示すように、火災発生場所を正確に特定し得るような、中央に配置された吸引型の火災検出デバイスを備えている。図示の実施形態においては、このデバイスを使用することにより、4つの個別の観測領域(R ,R ,R ,R )を観測することができる。ここで、それぞれの観測領域(R ,..,R )の部屋内エアを代理する各エアサンプル(6)を、共通の吸引パイプシステム(3)を使用して、それぞれの観測領域(R ,..,R )から、連続的に抽出することができる。この目的のために、ブロワとして構成された吸引デバイス(5)が、吸引パイプシステム(3)の端部に、設置されている。吸引デバイス(5)によって共通の吸引パイプシステム(3)を通して抽出されたエアサンプル(6)は、1つのセンサあるいは複数のセンサ(7)に対して、供給される。これにより、1つまたは複数の火災パラメータを検出することができる。この場合、吸引デバイス(5)とセンサ(7)とを一緒に、1つの共通のハウジング(2)内に収容することが想定される。
【0041】
センサ(7)は、吸引パイプシステム(3)を介してエアサンプルが吸引されたときには、観測対象をなす観測領域(R ,..,R )内の部屋内エアを各々が代理する複数のエアサンプル(6)を分析するように機能する。ここで、センサ(7)として、従来技術において公知であるような任意のデバイスを使用し得ることは、明らかである。観測領域(R ,..,R )のどれかにおいて火災が発生した場合には、あるいは、観測領域(R ,..,R )の部屋内エアの中に火災パラメータが含有されている場合には、センサ(7)が、抽出された複数のエアサンプル(6)の中から火災パラメータを検出するとともに、対応する信号をコントローラ(9)に対して送出する。
【0042】
この信号に応答して、コントローラ(9)は、適切な制御信号を、吸引デバイス(5)に向けて送出し、その吸引デバイス(5)を停止させる。これと同時にあるいはこの直後に、コントローラ(9)は、ブロワデバイスを起動させるようなさらなる信号を送出し、これにより、ブロワデバイスを起動させる。ブロワデバイス(8)は、有利には、動作時には、既に抽出されたすべてのエアサンプル(6)と、吸引パイプシステム(3)の中になおも残存しているすべてのエアサンプル(6)と、を排出し得るようなものとして、構成される。図示の実施形態に関し、特に有利な態様においては、吸引デバイス(5)およびブロワデバイス(8)は、1つのブロワ(11)として構成される。このブロワ(11)は、コントローラ(9)から送出された信号に応答して、エア搬送方向を変更する。例示するならば、ブロワは、正逆回転可能なファンとすることができる。しかしながら、ブロワ(11)は、換気フラップを備えたファンとすることもできる。吸引パイプシステムからの排気を行った時点で、ブロワデバイス(8)は、新鮮なエアすなわち外部エアを、各観測領域(R ..,R )の個々の吸引開口(4)に対して供給する。これにより、新鮮なエアが、吸引パイプシステム(3)内に残存しているすべてのエアサンプル(6)を追い出す。残存エアサンプルは、例えば、各吸引開口(5)を通して、観測領域(R ,..,R )内へと注入される。
【0043】
本発明においては、コントローラ(9)は、吸引パイプシステム(3)からすべてのエアサンプル(6)が追い出された後に、ブロワデバイス(8)に対してさらなる信号を送出し、これにより、ブロワデバイス(8)を停止させる。これと同時にあるいはこれの直後に、コントローラ(9)は、吸引デバイス(5)を、再度起動する。これにより、吸引パイプシステム(3)によって、各観測領域(R ,..,R )の部屋内エアを代理する複数のエアサンプル(6)を、各観測領域(R ,..,R )から、再度抽出することができる。そして、センサ(7)に対して供給することができる。センサ(7)は、吸引デバイス(5)の再起動後におけるある時間の後に、抽出された複数のエアサンプル(6)内において、火災パラメータの存在を検出する。吸引デバイス(5)の再起動と、再抽出されたエアサンプル(6)内における火災パラメータの初期的検出と、の間の経過時間は、いわゆる輸送時間を規定するものであって、火災発生場所の特定に関する根拠として機能する。
【0044】
決定された輸送時間と理論的に計算された輸送時間とを例えば比較することによって輸送時間を評価し得るよう、プロセッサ(10)が設けられている。理論的に計算された輸送時間は、センサ(7)と、個々の観測領域(R ,..,R )の吸引開口(4)と、の間の距離に対して直接的に関連するものである。なぜなら、輸送時間が、以下のパラメータのうちの少なくとも1つに依存するからである。すなわち、センサ(7)と各観測領域(R ,..,R )の吸引開口(4)との間にわたっての吸引パイプシステム(3)の長さ;センサ(7)と各観測領域(R ,..,R )の吸引開口(4)との間にわたっての吸引パイプシステム(3)の実効的流通断面積;および、吸引パイプシステム(3)内におけるエアサンプル(6)の流速。したがって、センサ(7)と各観測領域(R ,..,R )の吸引開口(4)との間にわたっての吸引パイプシステム(3)の各長さおよび各断面積と、吸引パイプシステム(3)内におけるエアサンプル(6)の流速とを、少なくとも知ることにより、測定された輸送時間に基づいて、火災発生場所を特定することができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態は、さらに、吸引パイプシステム(3)内におけるエアサンプル(6)の流速を測定するためのセンサ(12)を備えている。プロセッサ(10)は、測定された流速を使用することによって、測定された輸送時間を評価することができる。しかしながら、流速を測定するためのセンサ(12)を設けないこともできる。その場合には、流速は、デバイスパラメータに基づいて決定される。例えば、吸引パイプシステム(3)の実効的流通断面積や、吸引デバイス(5)の吸引容量や、吸引開口(4)に対する断面形状および断面開口、に基づいて決定される。
【0046】
また、火災検出デバイスは、自己学習モードにおいて輸送時間を決定することができ、メモリ内に格納した表に基づいてすべての輸送時間を計算することができる。
【0047】
図2aは、吸引デバイス(5)およびブロワデバイス(8)の制御のために、センサ(7)から出力される信号を概略的に示すグラフであり、図2bは、吸引デバイス(5)およびブロワデバイス(8)の制御のために、コントローラ(9)から出力される信号を概略的に示すグラフである。ここで、x−軸は、時間を示している。一方、y−軸は、センサ(7)からの信号、あるいは、コントローラ(10)からの制御信号、を示している。t 〜 t という時間区間においては、吸引デバイス(5)は、コントローラ(10)によって、連続的に動作するようにして、すなわち、観測領域(R ,..,R )からエアサンプル(6)を連続的に抽出するようにして、制御される。このプロセスは、図2bにおいては、一点鎖線を使用して示されている。時刻t においては、センサ(7)が、抽出されたエアサンプル(6)内において、火災パラメータの発生を検出している。この時刻t においてセンサ(7)から送出された信号に応答して、吸引デバイス(5)が停止され、また、それと同時に、ブロワデバイス(8)が起動される。ブロワ稼働時間は、t 〜t という時間区間に対応している。この時間区間は、ブロワデバイス(8)の出力に依存し、また、吸引パイプシステム(3)の特定のパラメータに依存する。
【0048】
時刻t においては、吸引パイプシステム(3)の内部のすべてのエアサンプル(6)が追い出される。この時点で、コントローラ(9)は、ブロワデバイス(8)を停止させ、これと同時に、吸引デバイス(5)を再度起動させる。これにより、センサ(7)に対して、エアサンプル(6)が再度供給される。この場合、火災場所の特定には、輸送時間Δt 〜Δt が使用される。輸送時間(Δt ,..,Δt )は、時刻t から、抽出したエアサンプル(6)内においてセンサ(7)が再び火災パラメータを検出する時刻t 〜t までの、時間間隔である。輸送時間(Δt ,..,Δt )は、個々の観測領域(R ,..,R )に特有のものであり、分析によって火災発生場所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】複数の観測領域の中の1つの観測領域内において火災を検出して特定し得るような、本発明による装置の一実施形態を概略的に示す図である。
【図2】図2aおよび図2bは、信号の発生状況を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
3 吸引パイプシステム
4 吸引開口
5 吸引デバイス
6 エアサンプル
7 センサ
8 ブロワデバイス
9 コントローラ
10 プロセッサ
11 ブロワ
12 センサ
観測領域
観測領域
観測領域
観測領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の観測領域(R ,R ,R ,..,R )において火災および/またはその兆候を検出して特定するための方法であって、
a)各観測領域(R ,..,R )の部屋内エアをそれぞれが代理する複数のエアサンプル(6)を、共通の吸引パイプシステム(3)を使用することによって、前記各観測領域(R ,..,R )から抽出し;
b)火災パラメータを検出し得る少なくとも1つのセンサ(7)を使用することにより、前記共通の吸引パイプシステム(3)を使用して抽出された前記エアサンプル(6)内において、少なくとも1つの火災パラメータを検出し;
このような方法において、さらに、
c)ブロワデバイス(8)または吸引/ブロワデバイスを使用することにより、前記吸引パイプシステム(3)内へと抽出された前記エアサンプル(6)を追い出し;
d)前記少なくとも1つのセンサ(7)がエアサンプル(6)内において火災パラメータを再検出するまで、前記吸引パイプシステム(3)を使用して、前記各観測領域(R ,..,R )から複数のエアサンプル(6)を再び抽出し;
e)前記ステップd)において再び抽出されたエアサンプルから火災パラメータが再検出されるまでに要した時間を測定し、これにより、前記複数の観測領域(R ,..,R )の中から、火災が発生しているあるいは火災が発生しようとしている1つの観測領域を特定し;
f)1つまたは複数の観測領域(R ,..,R )内において火災が進展しているおよび/または存在していることを示す信号を送出し、この場合、この信号に、1つまたは複数の観測領域(R ,..,R )内において火災が発生している正確な場所というさらなる情報を含有させる;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記ステップa)の後に、
a1)前記各観測領域(R ,..,R )からの各エアサンプル(6)の連続的な抽出時に、前記吸引パイプシステム(3)内におけるエアサンプル(6)の流速を決定し;
a2)前記吸引パイプシステム(3)内のすべてのエアサンプル(6)を完全に追い出すのに必要な時間を計算する;
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
前記ステップc)の際に、追い出し時の流速を決定し、これにより、前記吸引パイプシステム(3)内のすべてのエアサンプル(6)を完全に追い出すのに必要な時間を計算することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、
前記ステップd)の後に、
d1)前記各観測領域(R ,..,R )からそれぞれ対応するエアサンプル(6)を再び抽出する際に、前記吸引パイプシステム(3)内におけるエアサンプル(6)の流速を決定し;
d2)前記各観測領域(R ,..,R )からそれぞれ対応するエアサンプル(6)を再び抽出する際に、前記各観測領域(R ,..,R )の部屋内エアそれぞれが代理している各エアサンプル(6)の輸送時間を計算する;
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記ステップa)および前記ステップd)におけるエアサンプルの抽出を、吸引デバイス(5)を使用して行い、
前記ステップd)において行うエアサンプルの前記再抽出を、前記ステップa)において使用する吸引ラインと比較して、狭められた吸引ラインを使用して行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
さらに、自動調節手順を行い、この自動調節手順においては、
i)この自動調節手順を行っている全時間中にわたって、前記少なくとも1つのセンサ(7)から最も遠くに位置した観測領域(R )の吸引開口(4)のところにおいて、意図的に火災パラメータを生成し;
ii)前記少なくとも1つのセンサ(7)が、抽出されたエアサンプル(6)内において前記意図的に生成された火災パラメータを検出するまで、前記共通の吸引パイプシステム(3)を使用して、前記各観測領域(R ,..,R )からエアサンプル(6)を抽出し;
iii)ブロワデバイス(8)または吸引/ブロワデバイスを使用することにより、前記吸引パイプシステム(3)内へと抽出された前記エアサンプル(6)を追い出し;
iv)前記センサ(7)がエアサンプル(6)内において意図的に生成された火災パラメータを再検出するまで、前記吸引パイプシステム(3)を使用して、前記各観測領域(R ,..,R )から複数のエアサンプル(6)を再び抽出し;
v)前記ステップiv)において再び抽出されたエアサンプルから意図的に生成された火災パラメータが再検出されるまでに要した輸送時間を測定し、これにより、前記吸引パイプシステムに関する最大輸送時間を決定し;
vi)前記ステップv)において決定された前記最大輸送時間に基づいて、および、前記吸引パイプシステム(3)の構成に基づいて、特に、複数の吸引開口(4)の間の間隔と、前記吸引パイプシステムの直径と、前記吸引開口(4)の直径と、に基づいて、前記各観測領域(R ,..,R )からの、前記各観測領域(R ,..,R )の部屋内エアをそれぞれが代理する複数のエアサンプル(6)に関してそれぞれの輸送時間を計算し;
vii)各エアサンプル(6)に関して計算された輸送時間を、表の形態で格納する;
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
前記ステップvii)に関する自動調節手順においては、
前記表として格納された前記計算された前記輸送時間に関する修正関数を使用することによって、前記各観測領域(R ,..,R )に関する輸送時間を更新することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の方法において、
火災発生時における前記輸送時間の分析を、測定した輸送時間と、前記自動調節手順において前記表として格納された輸送時間に関する前記計算値と、を比較することにより、行うことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
前記輸送時間の分析を、測定した輸送時間と、前記各観測領域(R ,..,R )に関して理論的に計算された輸送時間と、を比較することにより、行い、
その際、前記理論的な輸送時間の計算を、
少なくとも1つのセンサ(7)と、前記各観測領域(R ,..,R )に関して前記吸引パイプシステム(3)内に配置された吸引開口(4)と、の間にわたっての、前記吸引パイプシステム(3)の長さと;
少なくとも1つのセンサ(7)と、前記各観測領域(R ,..,R )と、の間にわたっての、前記吸引パイプシステム(3)の実行流通断面積および/または断面積と;
少なくとも1つのセンサ(7)と、前記各観測領域(R ,..,R )の吸引開口(4)と、の間にわたっての、前記吸引パイプシステム(3)内におけるおよび/または前記吸引パイプシステム(3)の断面内におけるエアサンプル(6)の流速と;
の中の少なくとも1つのパラメータに基づいて行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
1つまたは複数の観測領域(R ,..,R )において火災および/またはその兆候を検出して特定するための火災検出装置であって、
前記各観測領域(R ,..,R )に対して接続されているとともに、少なくとも1つの吸引開口(4)を介することによって、前記各観測領域(R ,..,R )に対して連通している、吸引パイプシステム(3)と;
前記吸引パイプシステム(3)および前記吸引開口(4)を使用することにより、前記各観測領域(R ,..,R )からエアサンプル(6)を抽出するための吸引デバイス(5)と;
前記吸引パイプシステム(3)を通して吸引されたエアサンプル(6)内において少なくとも1つの火災パラメータを検出するための少なくとも1つのセンサ(7)と;
を具備し、
このような装置において、さらに、
前記少なくとも1つのセンサ(7)が、前記抽出されたエアサンプル(6)内において少なくとも1つの火災パラメータを検出した際には、前記吸引パイプシステム(3)内へと抽出されたすべてのエアサンプル(6)を追い出し得るものとされたブロワデバイス(8)と;
前記複数の観測領域(R ,..,R )の中の1つの観測領域における火災発生場所を認識し得る少なくとも1つのインジケータ部材、および/または、前記複数の観測領域(R ,..,R )における火災の進展および/または存在に関する情報および前記複数の観測領域内における火災の正確な場所に関する情報を前記装置から離間した位置にまで送出し得る通信デバイスと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記少なくとも1つのセンサ(7)がエアサンプル(6)内において少なくとも1つの火災パラメータを検出した際には、この少なくとも1つのセンサ(7)から送出される信号に応答して、前記吸引デバイス(5)と前記ブロワデバイス(8)とを時間的に制御し得るものとされたコントローラ(9)を具備していることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10または11記載の装置において、
輸送時間の値を格納するためのメモリ手段を具備していることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の装置において、
前記吸引開口(4)の近傍に配置されるとともに、前記装置の設定および検査を行い得るよう、火災パラメータを意図的に生成するための、少なくとも1つのスモーク生成源を具備していることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の装置において、
前記吸引パイプシステム内におけるエアサンプルの流速を測定するための少なくとも1つのセンサ(12)を具備していることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の装置において、
前記少なくとも1つのセンサ(7)がエアサンプル(6)内において火災パラメータを検出した際に前記センサ(7)から送出される信号を判断するとともに、前記吸引デバイス(5)に対しておよび/または前記ブロワデバイス(8)に対して前記コントローラ(9)から送出される制御信号を判断するための、プロセッサ(10)を具備していることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の装置において、
前記各吸引開口(4)の直径および/または横断面形状が、それぞれ対応する前記観測領域(R ,..,R )に対して前記各吸引開口を付設し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1項に記載の装置において、
前記少なくとも1つのセンサ(7)と、前記各観測領域(R ,..,R )と、の間にわたっての、前記吸引パイプシステム(3)の直径および/または横断面形状が、それぞれ対応する前記観測領域(R ,..,R )に対して前記吸引パイプシステムを付設し得るものとされていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項に記載の装置において、
前記吸引デバイス(5)および前記ブロワデバイス(8)が、1つのブロワ(11)として互いに一緒のものとして構成され、
このブロワ(11)が、前記コントローラ(9)からの制御信号に応答してエア搬送の向きを変更するものとされていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、
前記ブロワ(11)が、正逆回転可能なファンとされていることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項18記載の装置において、
前記ブロワ(11)が、換気フラップを備えたファンとされていることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれか1項に記載された装置の適用であって、
前記観測領域(R ,..,R )内へと消化剤を投入し得る消火システムの中の火災検出部材として適用することを特徴とする適用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−509390(P2007−509390A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534603(P2006−534603)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009450
【国際公開番号】WO2005/048207
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506065873)ヴァグナー・アラーム−ウント・ジッヒェルングスジェステーメ・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】