説明

火災報知設備の支援システム

【課題】 火災報知設備の情報を必要に応じて参照すること。
【解決手段】 防火対象物に設置された自動火災報知設備の情報を、ネットワークを介して受信して蓄える情報サーバとしての外部サーバSV1であって、外部サーバSV1は、顧客側のアクセス承認となるパスワードの設定を受けて、業者側の端末の前記パスワードを伴う接続要求を許可するとともに、該接続が終了するときに前記パスワードを消去し接続を不可とするものである。したがって、アクセスする権利が1回のみであることから、事後にアクセスする権利は消去され、業者に常時情報を閲覧させるような体制にはならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災報知設備の情報を簡便に利用するための情報サーバに関し、この情報サーバを含む支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
防火対象物としての建物等に設置された自動火災報知設備(以下、自火報と称す)において、火災監視に関する情報や設備の状態に関する情報などについて、インターネットを介して遠隔的に情報を収集したり制御したりしようとするシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−126880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自火報の情報を外部から閲覧しその情報に対する制御を遠隔で行うことは問題がある。すなわち、自火報関係の業者が常時その設備の状態を監視できると、本来その建物を管理すべき監視員が業者に対応を頼ってしまうおそれがある。例えば、火災の発生時に、その建物に常駐する監視員が自ら迅速に必要な行動を取れなければならないが、情報を業者に流すことで、業者からの指示を期待してしまい、その結果、監視員の管理能力が弱体化してしまう。
【0005】
なお、遠隔でも専門家の指示がもらえれば良いと考えることは、通信手段の安全性、確実性の問題で、とくに災害時には遮断されてしまう可能性から危険であり、一義的にまず現場で対応できることが重要である。
【0006】
本発明は、火災報知設備の情報を必要に応じて参照することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、防火対象物に設置された火災報知設備の情報を、ネットワークを介して受信して蓄える情報サーバであって、該情報サーバは、顧客側のアクセス承認となるパスワードの設定を受けて、業者側の端末の前記パスワードを伴う接続要求を許可するとともに、該接続が終了するときに前記パスワードを消去し接続を不可とすることを特徴とする火災報知設備の情報サーバである。
【0008】
さらに、情報サーバは、パスワードの設定を所定時間の経過で消去することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明では、情報サーバにワンタイムパスワード付きでアクセス承認を行うので、自火報の利用者が業者に自火報の状態を見せたい場合に、アクセス承認を行うことで、設備の状態確認を業者に行わせることが可能であり、アクセスする権利が1回のみであることから、事後にアクセスする権利は消去され、業者に常時情報を閲覧させるような体制にはならない。
【0010】
とくにタイムアウトを設けてパスワードを消去し、所定時間にアクセスを制限すれば、常時接続の可能性は全くなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る支援システムの構成を示す図である。
【図2】図1における支援システムの常時監視時のフローチャートである。
【図3】図2と同様、業者に閲覧させる場合のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施する一実施の形態として、自火報の情報を利用する支援システムについて説明する。
【0013】
図1は、支援システムの構成を示す図であり、火災受信機REは、詳細に説明しない自火報設備の全体を監視制御するセンタ装置であり、その火災受信機REと例えばRS−232C接続で、その火災受信機REが発生した事項(以下、イベントという)の移報を受けるとともに、無線LANを利用してそのイベント情報をモバイルルータMRに送信する通信PCを備えている。そして、モバイルルータMRから3G等の携帯通信によって携帯基地局B1を経由してインターネットITに接続されている。ここで、通信PCからのイベント送信先は有線のイントラネットであってもよく、外部からのアクセスがプロテクトされていればよい。そして、イントラネット経由でインターネットITに接続されてもよい。
【0014】
また、インターネットITには、外部サーバSV1が接続されていて、火災受信機REから移報されたイベント情報を受信して保管する、いわゆるイベントログ機能を実施する。この外部サーバSV1は、イベントログ機能に加え、受信したイベント情報に基づいて火災受信機REの状態を示す閲覧ページをHTML等で自動作成して公開するページ作成機能を有している。また、イベント情報を受信する火災受信機REが設置される防火対象物となる建物等の設備図面のデータを用い、火災発生場所や故障の端末機器の場所を示すCRTシステムの機能を備えている。この設備図面のデータは、外部サーバSV1内に格納されていてもよいが、必要に応じて現場となる火災受信機RE側から、または、別途設備導入した業者のデータサーバから、インターネットIT経由で受信してもよい。
【0015】
さらに、インターネットITには、業者からのインターネット端末としてのサービスセンターに設置されたサービスサーバSV2が接続されている。業者とは、火災受信機REをはじめ自火報に用いる設備機器を製造している業者であったり、その建物等の施工や設備の設置を行った業者、さらに、設備の保守点検を行う業者であったりする。このような業者側のインターネット端末は、火災受信機RE側や外部サーバSV1から第三者の関係となっていて、通信PCやモバイルルータMRを含めて、常時はアクセスできない。なお、業者側の端末としてはサービスサーバSV2に限らず、個人で持ち歩ける作業用PCやスマートフォン等の携帯端末、携帯端末と同様にモバイル端末であるタブレット等であってもよい。
【0016】
また、この実施の形態の構成として、外部サーバSV1につき、インターネットIT経由で、いわゆるレンタルサーバのような系統で構成したが、情報サーバとして、火災受信機REが設置される防災センタ等にあってもよく、図1のシステム内の通信PCを兼用させてもよい。
【0017】
つぎに、上記支援システムの動作について説明する。
【0018】
図2および図3は、上記支援システムの動作を示すフローチャートであり、図2は、常時監視時に関するフローチャートであって、図3は、火災時や故障時において業者に閲覧させる場合のフローチャートである。
【0019】
図2において、自火報に火災信号等のイベントが発生すると、監視制御するセンタ装置としての火災受信機REがそのイベントを認識する(S01)。
【0020】
イベント発生を認識した火災受信機REは、図示しない移報手段から通信PCにイベント情報を移報出力し、通信PCはモバイルルータMRを介して、さらにインターネットITを介して外部サーバSV1にそのイベント情報を送信する(S02)。
【0021】
このとき、イベント情報として、火災受信機REが出力した情報がベースとなり、火災信号であれば、火災を検出した火災感知器のアドレスや種別、さらには位置情報を示すテキスト、発生した日時などで構成される。このイベント情報に必要な情報はイベントの種類によって異なり、故障の場合には、故障の種別などが用いられる。
【0022】
つぎに、イベント情報を受信した外部サーバSV1は(S03)、イベントログ機能として、そのイベント情報を履歴として格納し、同時に、現在の火災受信機REの状態としてイベントを保持し、インターネット経由で閲覧できる閲覧ページのデータを更新する(S04)。すなわち、火災発生であれば、現在火災受信機REの盤面に表示されている火災発生の端末情報と同様に、閲覧ページのデータに端末情報を掲載するように更新する。この結果、外部からインターネットITを介して外部サーバSV1にアクセスしたタブレット等のモバイル端末で、火災受信機REの現在の状態を確認することが可能であり、火災発生の位置に関する情報を取得することができ、火災受信機REが設置されている防災センタ等を離れて防火対象物内を巡回している監視員や、直接防火対象物にいない所有者や管理者などの関係者も、インターネットITを介して火災受信機REの情報を確認することができ、設備の状況が確認できる。この関係者による外部サーバSV1の閲覧は、いわゆるIDとパスワードを組合せて用い、認証を外部サーバSV1が行えばよく、関係者は各自でIDとパスワードとを保有し管理しなければならない。
【0023】
このような常時の監視時は、自火報にイベントが発生する度に外部サーバSV1にイベント情報を送信し、そのイベント情報をイベントログ機能として格納していくと共に、そのイベント情報に基づいて外部サーバSV1の閲覧ページが更新されていく。
【0024】
なお、火災発生時など、現場確認を行い非火災の場合、または、簡単に鎮火でき、イベントへの対応が終了したとき、自火報は復旧動作が行われ、この復旧もイベント情報として送信され、閲覧のページにおいては、復旧後に正常監視中となる。
【0025】
つぎに、火災発生時の対応の不具合や機器の故障や復旧操作の不備など、火災受信機REに関する顧客側で設備管理が十分にできない場合、業者に連絡することになる。このとき、顧客側として例えば監視員が設備の状況を正確に伝えられれば、業者側も簡単に対応できるが、その状況説明が当を得ない場合には、業者も対応に困ってしまう。このような場合、業者に設備の状況を確認してもらうことが好ましく、この実施の形態では、図2に示すような手順で、業者に設備の状況を閲覧させることができる。
【0026】
まず、図3においても、はじめに自火報に火災信号等のイベントが発生し、火災受信機REがそのイベントを認識すること(S01)、火災受信機REは、インターネットIT等を介して外部サーバSV1にそのイベント情報を送信し、イベント情報を受信した外部サーバSV1は(S03)、そのイベント情報を格納し、同時に、現在の火災受信機REの状態としてイベントを保持し、インターネット経由で閲覧される閲覧ページのデータを更新することに変わりはない。そして、自火報を管理する監視員が対応に困るとき、業者に外部サーバSV1を閲覧させることになる。
【0027】
業者の閲覧のため、まず、監視員が通信PCまたは図示しないモバイル端末によって外部サーバSV1にアクセスし、外部サーバSV1にワンタイムパスワードを発行させる。外部サーバSV1では、パスワード要求に基づいて(S11)、乱数的にパスワードを生成し(S12)、そのパスワードを有効とし(S13)、監視員側にワンタイムパスワードとして発行する。
【0028】
例えば、通信PCを用いて、ワンタイムパスワードを取得した監視員は、外部サーバSV1の閲覧するページにアクセスするためのURLと、アクセス承認を受けるためのワンタイムパスワードとを、電子メールで業者に送信する(S14)。このアクセス先およびワンタイムパスワードの連絡は必ずしも電子メールでなくてもよく、電話連絡やファックス送信、データ通信等であってもよい。
【0029】
業者のサービスサーバSV2等でアクセス承認の電子メールを受けた業者は(S15)、インターネットITを介して記載されているURLに接続し、ワンタイムパスワードを用いてアクセスする(S16)。アクセス要求を受けた外部サーバSV1は、ワンタイムパスワードが有効なものと一致していることを確認し、アクセスを承認する(S17)。当然、外部サーバSV1は、ワンタイムパスワードが有効でなければ、アクセスを遮断し、閲覧させないことになる。
【0030】
アクセス承認を受けたサービスサーバSV2は、必要な情報を取得するため、外部サーバSV1の情報について、閲覧ページを介して情報を収集する作業を行う(S18)。また、外部サーバSV1は、サービスサーバSV2からの要求に従い、情報となるデータを送信する(S19)。そして、業者側が必要な情報を入手して、顧客側の監視員の要望に対応できれば、サービスサーバSV2による閲覧作業を停止する(S20)。
【0031】
外部サーバSV1は、このサービスサーバSV2のアクセス終了に基づいて(S21)、使用したパスワードを消去し(S22)、パスワードとして無効にする。この結果、ワンタイムパスワードとして受け取ったサービスサーバSV2は、改めて外部サーバSV1にアクセスしようとしても、一度の接続でパスワードが無効になっているので、閲覧ページやイベント情報等に再度アクセスすることができない。したがって、業者側としては、必要な場合にのみワンタイムパスワードを使用してアクセス可能とされることになる。
【0032】
また、外部サーバSV1は、ワンタイムパスワードとしてのパスワードの発効時に(S13)、所定時間(例えば12時間)のタイマを起動し、そのタイマのタイムアウト時にもパスワードを消去して(S31、S32)、閲覧するページやイベント情報等へのアクセスを遮断することができる。この動作によって、例えば、業者側がワンタイムパスワードを取得したが使用しなかった場合に、事後の勝手な閲覧を防止することができ、また、アクセスが終了されずに、長期に渡り閲覧状態が継続されることも防止される。このため、上記タイマの所定時間は、なるべく制限できる時間とされるが、業者が作業するのに必要な時間を鑑みて設定される必要がある。
【0033】
なお、業者が使用するインターネット端末はサービスサーバSV2でなくてもよく、通常の業務で使うパソコン、外出時等のスマートフォン等のモバイル端末であってもよい。
【0034】
以上のように、本実施の形態では、防火対象物に設置された自火報の情報を、ネットワークを介して受信して蓄える情報サーバとしての外部サーバSV1であって、外部サーバSV1は、顧客側のアクセス承認となるパスワードの設定を受けて、業者側の前記パスワードを伴う接続要求を許可するとともに、該接続が終了するときに前記パスワードを消去し接続を不可とするものである。
【0035】
したがって、外部サーバSV1にワンタイムパスワード付きでアクセス承認を行うので、自火報の利用者が業者に自火報の状態を見せたい場合に、アクセス承認を行うことで、設備の状態確認を業者に行わせることが可能であるとともに、アクセスする権利が1回のみであることから、事後にアクセスする権利は消去され、業者に常時情報を閲覧させるような体制にはならない。
【0036】
さらに、外部サーバSV1は、パスワードの設定を所定時間の経過で消去するもので、タイムアウトを設けてパスワードを消去し、所定時間にアクセスを制限すれば、常時接続の可能性は全くなくなる。
【符号の説明】
【0037】
IT インターネット、RE 火災受信機、SV1 外部サーバ、SV2 サービスサーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火対象物に設置された火災報知設備の情報を、ネットワークを介して受信して蓄える情報サーバであって、
該情報サーバは、顧客側のアクセス承認となるパスワードの設定を受けて、業者側の端末からの前記パスワードを伴う接続要求を許可するとともに、該接続が終了するときに前記パスワードを消去し前記端末からの接続を不可とすることを特徴とする火災報知設備の情報サーバ。
【請求項2】
情報サーバは、設定されたパスワードを所定時間の経過で消去する請求項1の火災報知設備の情報サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−89077(P2013−89077A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229814(P2011−229814)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】