説明

炉頂圧回収タービンの制御システム

【課題】 多大な設備費を要することなく、静翼の噴流を原因とした動翼に対する強度上の影響を排除することができ、また、第1段静翼へのダスト付着の助長を防止することができるものとする。
【解決手段】 高炉(51)から排気された排ガスにより回転駆動されて発電機(81)を回転駆動させる炉頂圧回収タービン(1)の制御システムにおいて、高炉下流のガス路(60)に内部を通過する排ガスの流量調節が可能なバイパス制御弁(54,55)をタービンと並列に配設し、バイパス制御弁の作動によりタービンの前圧を変化させてタービンの起動時及び又は停止時の回転数制御及び又は負荷制御を行う。タービンは、静翼(2,3)の流路角度を変化させる角度可変機構(31,32,39,40)を有し、静翼は、タービンの起動時及び又は停止時に流路全閉角度よりも開いた状態にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉頂圧回収タービンの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉プラントの排ガス路にタービンを設置して発電等に利用する炉頂圧回収タービンは、図4に示すように、高炉100から排気された排ガスが、ダストキャッチャ101、湿式集塵装置102、入口塞止弁103、危急遮断弁104を介してタービン105に導かれ、このタービン105を回転駆動させる。そして、このタービン105によって発電機107を回転駆動させることにより、発電の利用に供するものである。
【0003】
上述の炉頂圧回収タービンにおいて、タービン105の起動時及び停止時の制御は、起動開始から初期設定回転数(例えば15%回転数)までは静翼角度制御が、初期設定回転数から揃速開始直前設定回転数(例えば98%回転数)までの間は回転数制御が、100%回転数に到達し電力網に併入された直後に負荷がかけられ、その負荷が増加して通常運転になるまでは負荷制御が、それぞれ行われる。
【0004】
また、通常運転時に入ってからは圧力制御が行われる。一方、タービン105の停止時には、通常運転から負荷が解除されて解列直後設定回転数(例えば96.5%回転数)になるまでは負荷制御が、解列直後設定回転数から初期設定回転数までの間は回転数制御が、初期設定回転数から停止するまでは静翼角度制御が、それぞれ行われる。
【0005】
そして、タービン105の起動時には、タービン105の前圧が通常運転時の圧力に高められた状態で、角度可変機構を備えた第1段静翼106をその流路全閉角度から徐々に開けていき、ガスを翼列に導く。このとき、開閉弁であるバイパス主弁108は全閉にされている一方、図5に示すように、バイパス制御弁109が徐々に閉じられ、タービン105の前圧は常に通常運転時の圧力に維持される。
【0006】
図6に示すように、このようなタービン111の起動時及び停止時の制御を、危急遮断弁110とタービン111との間に調速弁112を設け、この調速弁112の制御と、それに続くタービン111の静翼113,114の角度制御によって行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この炉頂圧回収タービンの制御システムにおいて、タービン111の起動時及び停止時の制御は、起動開始から初期設定回転数までは調速弁112による調速弁開度制御が、初期設定回転数から揃速開始直前設定回転数までの間は回転数制御が、100%回転数に到達し電力網に併入された直後に負荷がかけられ、その負荷が増加して通常運転になるまでは負荷制御が、それぞれ行われる。
【0008】
また、通常運転時には圧力制御が行われる。一方、タービン111の停止時には、通常運転から負荷が解除されて解列直後設定回転数になるまでは負荷制御が、解列直後設定回転数から初期設定回転数までの間は回転数制御が、初期設定回転数から停止するまでは調速弁112による調速弁開度制御が、それぞれ行われる。
【0009】
そして、タービン111の起動時には、図7に示すように、タービン111の前圧が通常運転時の圧力に高められた状態で、調速弁112を徐々に開いていき、ガスを翼列に導く。調速弁112がほぼ全開となった時点で、角度可変機構を備えた静翼113,114をその流路初期設定角度から徐々に開けていき、通常運転に移行する。このとき、バイパス主弁115は全閉にされている一方、バイパス制御弁116が徐々に閉じられるので、タービン111の前圧は常に通常運転時の圧力に維持される。
【0010】
上記のいずれの炉頂圧回収タービンの制御システムにおいても、タービン105,111の起動及び停止動作を主体的に制御するものは、第1段静翼106の角度可変機構、あるいは調速弁112であり、バイパス制御弁109,116はタービン105,111の前圧を通常運転時の圧力に維持するために使用される。また、このバイパス制御弁109,116の作動は、タービンの作動を制御する電気ガバナによって制御されるのではなく、電気ガバナとは別に配設されたバイパス弁制御装置によって制御される。
【特許文献1】特開昭60−32942号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来の炉頂圧回収タービンの制御システムにおいて、前者のタービンの起動開始から初期設定回転数までの制御を、第1段静翼を流路全閉角度から徐々に開けていくことによって行う方式では、第1段静翼を流路全閉角度から開けていく過程で、通常運転時の圧力に高められた排ガスが第1段静翼出口で噴流となり、この噴流が動翼に吹きつけられて、第1段動翼に強度上の影響を及ぼすという問題がある。
【0012】
また、第1段静翼についてはその背面にダストが付着する傾向があり、このダストによって負荷遮断時やタービントリップ時に第1段静翼を全閉にできなくなる等の問題を発生させたりするが、上述の第1段静翼が発生する噴流によって第1段静翼へのダスト付着が助長されるという問題がある。さらに、タービンの停止時においても、第1段静翼を通常運転の角度から流路全閉角度まで徐々に閉じる過程で噴流が発生し、上記2つと同様の問題を発生させる。
【0013】
一方、後者のタービンの起動開始から初期設定回転数までの制御を、調速弁を徐々に開けていき、ガスを翼列に導くことによって行う方式は、調速弁によってタービンに作用するガス圧が徐々に高められていくため、上述のような動翼の強度上の問題、あるいは第1段静翼に対するダスト付着の問題は発生しにくい。しかしながら、調速弁の設置に多大な設備費を要するという問題がある。
【0014】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、多大な設備費を要することなく、静翼の噴流を原因とした動翼に対する強度上の影響を排除することができ、また、同原因による第1段静翼へのダスト付着の助長を防止することができる、炉頂圧回収タービンの制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明が採用する手段は、高炉から排気された排ガスにより回転駆動されて発電機を回転駆動させる炉頂圧回収タービンの制御システムにおいて、高炉下流のガス路に内部を通過する排ガスの流量調節が可能なバイパス制御弁をタービンと並列に配設し、このバイパス制御弁の作動によりタービンの前圧を変化させてタービンの起動時及び又は停止時の回転数制御及び又は負荷制御を行うことにある。
【0016】
このように、本発明の炉頂圧回収タービンの制御システムは、タービンの起動時や停止時に、バイパス制御弁によりタービンの前圧を変化させて、例えば、タービンの前圧を徐々に増加又は減少させてその回転数制御や負荷制御を行なうから、従来のように、通常運転時の圧力に高められた排ガスが、第1段静翼をその流路全閉角度から徐々に開けていく過程あるいは閉じていく過程で噴流となり、この噴流が動翼に吹きつけられることが防止される。また、従来の調速弁も排除することができる。
【0017】
タービンは、静翼の流路角度を変化させる角度可変機構を有し、静翼は、タービンの起動時に流路全閉角度よりも開いた状態にされることが望ましい。また、タービンは、静翼の流路角度を変化させる角度可変機構を有し、静翼は、タービンの停止時に流路全閉角度よりも開いた状態にされることが望ましい。このように、タービンの起動時やタービンの停止時に、静翼をその流路全閉角度よりも開いた状態にして、静翼出口の流路面積を広げることにより、噴流の発生が確実に防止される。
【0018】
バイパス制御弁の上記作動は、電気ガバナの信号によって制御されることが望ましい。本発明の炉頂圧回収タービンの制御システムにおいて、バイパス制御弁はタービンの起動時や停止時にタービンの回転数制御や負荷制御を主体的に行なうものであるから、その制御を電気ガバナが行なうことより、タービンの起動時や停止時のタービン制御を最適に行うことができる。
【0019】
タービンの上記制御は、タービンと並列に配設された2つのバイパス制御弁によって行われることが望ましい。このように、タービンと並列に配設された2つのバイパス制御弁によってタービンの制御を行うことにより、タービンの起動時や停止時の回転数制御や負荷制御を正確に、かつ簡易な構成で行なうことができるという利点がある。
【0020】
タービンは、静翼の流路角度を変化させる角度可変機構を有し、タービンの起動時のバイパス制御弁による制御は、負荷制御中に静翼の流路角度の変更による制御に移行されることが望ましい。また、タービンは、静翼の流路角度を変化させる角度可変機構を有し、タービンの停止時のバイパス制御弁による制御は、負荷制御中に静翼の流路角度の変更による制御から移行されることが望ましい。このようにすることにより、通常運転時の圧力制御への移行が円滑に行われると共に、通常運転時は静翼の流路角度可変による圧力制御のみが行われるようになる。
【0021】
タービンの起動時にはバイパス制御弁の上記作動によりタービンの前圧をタービンの出口圧に略等しい圧力から増加させていくことが望ましい。また、タービンの停止時にはバイパス制御弁の上記作動によりタービンの前圧をタービンの出口圧に略等しい圧力まで低下させることが望ましい。このように、タービンの前後圧に圧力差がない状態からタービンを起動させ、あるいは、タービンの前後圧に圧力差がない状態でタービンを停止させれば、第1段静翼による噴流の発生がさらに確実に防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の炉頂圧回収タービンの制御システムは、高炉から排気された排ガスにより回転駆動されて発電機を回転駆動させる炉頂圧回収タービンの制御システムにおいて、高炉下流のガス路に内部を通過する排ガスの流量調節が可能なバイパス制御弁をタービンと並列に配設し、バイパス制御弁の作動によりタービンの前圧を変化させてタービンの起動時及び又は停止時の回転数制御及び又は負荷制御を行うから、従来のように、通常運転時の圧力に高められた排ガスが第1段静翼をその流路全閉角度から徐々に開けていく過程あるいは閉じていく過程で噴流となり、この噴流が動翼に吹きつけられることが防止される。また、従来の調速弁も排除することができる。
【0023】
したがって、本発明の炉頂圧回収タービンの制御システムは、多大な設備費を要することなく、静翼の噴流を原因とした動翼に対する強度上の影響を排除することができ、また、同原因による第1段静翼へのダスト付着の助長を防止することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る炉頂圧回収タービンの制御システムを実施するための最良の形態を、図1ないし図3を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、高炉プラントとして高炉51、ダストキャッチャ52、湿式集塵装置53、第1バイパス制御弁54、第2バイパス制御弁55、ガスホルダ56が、排ガス路60にこの順に配設される。第1バイパス制御弁54と第2バイパス制御弁55は、排ガス路60にダービン1と並列にそれぞれ配設される。これら2つのバイパス制御弁54,55は単なる開閉弁ではなく、内部を通過するガスの流量調節が可能であり、これにより、タービン1の前圧調節やタービン1を通過するガスの流量調節による各種制御を行なうことができる。
【0026】
2つのバイパス制御弁54,55の上流側で排ガス路60を分岐して、湿式集塵装置53を出た排ガスをタービン1に導くタービンガス路60aを配設する。タービンガス路60aに、入口塞止弁57、危急遮断弁58をこの順に配設する。危急遮断弁58を出たガスはタービン1に導かれ、タービン1を通った後、出口塞止弁59を介してガスホルダ56に排気される。発電機81がタービン1に軸継手80を介して連結される。このタービン1は一例としての2段翼列タービンであり、第1段静翼2及び第2段静翼3、そして図示しない第1段及び第2段動翼を有する。
【0027】
高炉プラントでは、高炉51の炉頂圧検出器61で検出した炉頂圧を炉頂圧設定器62で設定した炉頂圧に一致させるための、炉頂圧調節計63と炉頂圧調節制御装置64と電油変換器65とが配設される。
【0028】
負荷制限設定器21、負荷設定器22、回転数設定器23、バイパス制御弁開度設定器24が、電気ガバナ20にそれぞれ接続される。これにより、タービン1の回転数制御、負荷制御、圧力制御が行われる。電気ガバナ20からの制御信号は、複合演算器25を介して、それぞれ独立に第1段及び第2段静翼の角度制御を行なう第1及び第2静翼角度制御弁31,32にそれぞれ入力される。この静翼角度制御弁31,32は、例えば、単数もしくは複数のサーボアンプとサーボ弁が一体になったもの、あるいは、サーボアンプとサーボ弁及び電磁弁とロジック弁が一体になったものである。なお、サーボアンプとサーボ弁についてはそれらを個別に配設することもできる。
【0029】
電気ガバナ20からの制御信号は、上述の静翼角度制御弁31,32でそれぞれ電油変換された後、第1段及び第2段静翼作動用の油圧アクチュエータ39,40をそれぞれ作動させる。これにより、タービン1の第1段及び第2段静翼2,3の流路角度が、そのときのタービンの前圧等に応じて変更される。
【0030】
タービン1の負荷遮断信号及びタービントリップ信号は、電気ガバナ20に入力される一方、上述の第1段及び第2段静翼角度制御弁31,32にそれぞれ直接入力され、静翼角度制御弁31,32でそれぞれ電油変換された後、第1段及び第2段静翼作動用の油圧アクチュエータ39,40を作動させる。第2段静翼作動用の油圧アクチュエータ40にはリミットスイッチ43と、このリミットスイッチ43の作動によって負荷遮断信号をリセットするためのタイマ44とがそれぞれ配設される。
【0031】
タービンガス路60aに入るガス圧はタービン前圧検出器66により検知され、この ガス圧をタービン前圧設定器67で設定されたガス圧に一致させるための、タービン前圧調節計68が配設される。電気ガバナ20からの制御信号は、複合演算器25、第1及び第2高位信号選択器69,70、第1及び第2電油変換器71,72を介して、上述の第1バイパス制御弁54と第2バイパス制御弁55とにそれぞれ入力される。このように、第1及び第2バイパス制御弁54,55は、電気ガバナ20の信号によりその作動が制御される。
【0032】
一方、タービン前圧調節計68の出力信号と電気ガバナ20の出力信号は、減算器73を介してバイパス制御弁信号分配器74に入力され、第1バイパス制御弁54の制御信号と第2バイパス制御弁55の制御信号とに分配される。この信号は、上述の第1及び第2高位信号選択器69,70にそれぞれ入力される。負荷遮断時及びタービントリップ時には、この信号が第1及び第2高位信号選択器69,70によって選択され、上述の第1及び第2電油変換器71,72を介して、第1及び第2バイパス制御弁54,55にそれぞれ入力される。
【0033】
次に、本炉頂圧回収タービンの制御システムの作動を説明する。はじめに、タービン1の起動時の制御について説明する。図2に示すように、タービン1の起動前において、入口塞止弁57、危急遮断弁58、出口塞止弁59の開操作が行われる。これにより、炉頂圧検出器61、炉頂圧設定器62、炉頂圧調節計63、炉頂圧調節制御装置64、電油変換器65によって所定炉頂圧に調節された高炉51からの排ガスが、タービンガス路60aのタービン1及び排ガス路60のバイパス制御弁54,55に分かれて流れ、再び合流してガスホルダ56に導かれる。
【0034】
このとき、電気ガバナ20からの各制御信号により、第1バイパス制御弁54及び第2バイパス制御弁55はともに全開にされ、タービン1の第1段及び第2段静翼2,3はともに流路初期設定角度にされている。この流路初期設定角度は、翼列全開時流路面積を100%とした場合に約25〜40%開度に相当する角度に設定される。このとき、タービン1の前圧はタービン1の出口圧に略等しい圧力になっている。
【0035】
起動開始から図示A点の初期設定回転数(例えば15%回転数)までは、第1バイパス制御弁54による弁開度制御が行われる。電気ガバナ20から出力された制御信号は、複合演算器25、第1高位信号選択器69を介して第1電油変換器71に入力され、そこで電油変換されて第1バイパス制御弁54に入力される。これにより、第1バイパス制御弁54が徐々に閉じられ、タービン1の前圧が徐々に上昇する。
【0036】
初期設定回転数(図示A点)から100%回転数(図示C点)の間は、第1バイパス制御弁54のみが徐々に閉じられ、タービン1の前圧がさらに上昇する。このとき、初期設定回転数(図示A点)から図示B点の揃速開始直前設定回転数(例えば98%回転数)までの間は回転数制御が行われ、揃速開始直前設定回転数(図示B点)から100%回転数(図示C点)までの間は揃速及び併入が行われる。タービン1の回転数が100%に到達し電力網に併入された直後に初期負荷がかけられ、その後タービン1は負荷制御に移行する。
【0037】
タービン1の負荷制御中に第1バイパス制御弁54が全閉になると同時に、第2バイパス制御弁55が閉じ始める。第2バイパス制御弁55の作動制御は、第1バイパス制御弁54と同様に、電気ガバナ20から出力された制御信号が、複合演算器25、第2高位信号選択器70を介して第2電油変換器72に入力され、そこで電油変換されて第2バイパス制御弁55に入力されることにより行われる。
【0038】
タービン1の負荷制御中にさらに負荷が増加すると、電気ガバナ20から出力された制御信号が、複合演算器25を介して第1段及び第2段静翼角度制御弁31,32にそれぞれ入力され、そこで電油変換されて第1段及び第2段静翼作動用の油圧アクチュエータ39,40を作動させる。これにより、第1段及び第2段静翼2,3が徐々に開方向にその流路角度を変化させる。このように、負荷制御中に静翼2,3の流路角度の変更による制御が開始されるから、通常運転における圧力制御への移行が円滑に行われる。
【0039】
第1段及び第2段静翼2,3が、高炉51から排気された排ガスの全量がタービン1に流れる流量角度になった時点で、第2バイパス制御弁55も全閉となる。その後、静翼流路角度の変更による圧力制御がなされ、通常運転が行われる。このように、タービン1と並列に配設された2つのバイパス制御弁54,55は、タービン1の起動時にすべてが全開している状態から順次全開から全閉になると共に、通常運転時にはそのすべてが全閉になる。
【0040】
図3に示すように、静翼流路角度の変化による負荷制御及び圧力制御が行われるまでの間は、第1バイパス制御弁54及び第2バイパス制御弁55による弁開度制御、回転数制御、負荷制御が行われ、第2バイパス制御弁55が全閉になる前に静翼流路角度の変更による負荷制御に移行する。図2に示すように、この間、タービンの前圧は静翼流路角度の変更による負荷制御が開始されるまで、タービン1の出口圧力に略等しい圧力から通常運転時の圧力まで上昇する。
【0041】
タービン1の停止時については、上述のタービン1の起動時の制御とほぼ逆の制御が行われる。電気ガバナ20から出力された制御信号により第1段及び第2段静翼2,3が徐々に閉方向にその流路角度を変化させる。これにより、タービン1は圧力制御から負荷制御に移行する。第1段及び第2段静翼2,3がその流路初期設定角度まで閉じられた後、静翼2,3の角度変更による負荷制御は第2バイパス制御弁55による負荷制御へ移行する。その後も第2バイパス制御弁55は開弁し、第2バイパス制御弁55が全開になった時点で、第1バイパス制御弁54が開弁し始める。
【0042】
タービン1の負荷が初期負荷に戻されて、解列される。これによりタービン1の100%回転数(図示D点)から図示E点の解列直後設定回転数(例えば96.5%回転数)になり、負荷制御から回転数制御に移行する。そして、図示F点の初期設定回転数(例えば15%回転数)になると回転数制御から弁開度制御に移行し、タービン1は停止する。第2バイパス制御弁55及び第1バイパス制御弁54が開弁している間、タービンの前圧は通常運転時の圧力からタービン1の出口圧力に略等しい圧力まで低下する。このように、タービン1と並列に配設された2つのバイパス制御弁54,55は、タービン1の通常運転時にすべてが全閉していると共に、タービン1の停止時にはすべてが全閉している状態から順次全閉から全開になる。
【0043】
次に、タービン1の負荷遮断時及びタービン1に故障等が発生した場合のタービントリップ時の制御について説明する。負荷遮断時やタービントリップ時には、負荷遮断信号又はタービントリップ信号が、第1及び第2静翼角度制御弁31,32にそれぞれ直接入力される。この第1及び第2静翼角度制御弁31,32において電油変換が行われ、油圧アクチュエータ39,40をそれぞれ独立に作動させる。
【0044】
これにより、第1段静翼2は流路初期設定角度まで閉じ、第2段静翼3は流路全閉角度まで閉じる。このため、タービン1へ流入する排ガスが瞬時に減少し、タービン1のオーバースピードが防止される。このように、タービン1の負荷遮断時及びタービントリップ時に第1段及び第2段静翼2,3の角度可変による制御を行なうのは、第1バイパス制御弁54と第2バイパス制御弁55とによる制御だけでは、タービン1へ流入する排ガスを瞬時に減少させることができないためである。
【0045】
一方、負荷遮断後やタービントリップ後の圧力制御は、バイパス制御弁信号分配器74を経由した制御信号に基づいて、バイパス制御弁54,55によって行われる。また、負荷遮断後の回転数制御や、その後の再併入と負荷制御は、電気ガバナ20の制御信号に基づいて、静翼流路角度の変更による流量調節によって行われる。
【0046】
本炉頂圧回収タービンの制御システムによれば、高炉51の下流の排ガス路60に2つのバイパス制御弁54,55をタービン1に並列に配設し、これら並列に配設されたバイパス制御弁54,55により、ダービン1の前圧を徐々に増加あるいは減少させて、タービン1の起動時及び停止時の回転数制御及び負荷制御を行なう。したがって、従来のように、通常運転時の圧力に高められた排ガスが、第1段静翼をその流路全閉角度から徐々に開けていく過程又は閉じていく過程で噴流となり、この噴流が動翼に吹きつけられることが防止される。また、従来の調速弁も不要となる。
【0047】
このため、多大な設備費を要することなく、第1段静翼2の噴流を原因とした動翼に対する強度上の影響を排除することができると共に、第1段静翼2へのダスト付着を防止することができる。また、タービンの起動時やタービンの停止時には、静翼2,3が流路全閉角度よりも開いた状態(流路初期設定角度)にし、静翼出口の流路面積を広げた上でタービン1の前圧を上昇させるから、噴流の発生が確実に防止される。
【0048】
バイパス制御弁54,55は、電気ガバナ20の信号によって制御されるから、タービン1の起動時や停止時のタービン制御を最適に行うことができる。また、タービン1の回転数制御や負荷制御は、タービン1と並列に配設された2つのバイパス制御弁54,55によって行われるから、タービン1の起動時や停止時のこれらの制御を正確に、かつ簡易な構成で行なうことができる。なお、タービン1と並列に配設されるバイパス制御弁は、2つに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0049】
特に、タービン1の起動時には第1及び第2バイパス制御弁54、55によってタービン1の前圧をタービン1の出口圧に略等しい圧力から増加させていく一方、タービン1の停止時にはタービン1の前圧をタービン1の出口圧に略等しい圧力まで低下させる。このように、タービン1の前後圧に圧力差がない状態からタービン1を起動させ、また、タービン1の前後圧に圧力差がない状態でタービン1を停止させるから、静翼2,3による噴流の発生がこれによっても確実に防止される。
【0050】
なお、上述の炉頂圧回収タービンの制御システムは一例にすぎず、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0051】
例えば、タービンの起動時やタービンの停止時に、静翼を必ずしもその流路全閉角度よりも開いた状態にする必要はない。ただし、その場合には、タービンの前圧の上昇と共に、静翼の角度を徐々に開くようにすることが望ましい。また、バイパス制御弁の制御は必ずしも電気ガバナの信号によって行なう必要はない。
【0052】
タービン起動時のバイパス制御弁によるタービンの制御を、必ずしも負荷制御中に静翼の流路角度の変更による制御に移行する必要はなく、タービン停止時のバイパス制御弁によるタービンの制御を、負荷制御中に静翼の流路角度の変更による制御から移行する必要もない。また、タービンの起動時にバイパス制御弁によってタービンの前圧をタービンの出口圧に略等しい圧力から増加させていき、タービンの停止時にタービンの前圧をタービンの出口圧に略等しい圧力まで低下させる必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の炉頂圧回収タービンの制御システムを示す系統図である。
【図2】図1の制御システムの経過時間と炉頂圧回収タービンの作動との関係を示すグラフである。
【図3】図1の制御システムのガバナ出力とバイパス制御弁の開度との関係を示すグラフである。
【図4】従来の炉頂圧回収タービンの制御システムを示す系統図である。
【図5】図4の制御システムのガバナ出力とバイパス制御弁の開度との関係を示すグラフである。
【図6】従来の別の炉頂圧回収タービンの制御システムを示す系統図である。
【図7】図6の制御システムのガバナ出力とバイパス制御弁の開度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1 タービン
2 第1段静翼
3 第2段静翼
20 電気ガバナ
21 負荷制限設定器
22 負荷設定器
23 回転数設定器
24 バイパス制御弁開度設定器
25 複合演算器
31,32 静翼角度制御弁
39、40 油圧アクチュエータ
43 リミットスイッチ
44 タイマ
51 高炉
52 ダストキャッチャ
53 湿式集塵装置
54 第1バイパス制御弁
55 第2バイパス制御弁
56 ガスホルダ
57 入口塞止弁
58 危急遮断弁
59 出口塞止弁
60 排ガス路
60a タービンガス路
61 炉頂圧検出器
62 炉頂圧設定器
63 炉頂圧調節計
64 炉頂圧調節制御装置
65 電油変換器
66 タービン前圧検出器
67 タービン前圧設定器
68 タービン前圧調節計
69 第1高位信号選択器
70 第2高位信号選択器
71 第1電油変換器
72 第2電油変換器
73 減算器
74 バイパス制御弁信号分配器
80 軸継手
81 発電機
100 高炉
101 ダストキャッチャ
102 湿式集塵装置
103 入口塞止弁
104 危急遮断弁
105 タービン
106 第1段静翼
107 発電機
108 バイパス主弁
109 バイパス制御弁
110 危急遮断弁
111 タービン
112 調速弁
113,114 静翼
115 バイパス主弁
116 バイパス制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉(51)から排気された排ガスにより回転駆動されて発電機(81)を回転駆動させる炉頂圧回収タービン(1)の制御システムにおいて、前記高炉下流のガス路(60)に内部を通過する排ガスの流量調節が可能なバイパス制御弁(54,55)を前記タービンと並列に配設し、前記バイパス制御弁の作動により前記タービンの前圧を変化させて前記タービンの起動時及び又は停止時の回転数制御及び又は負荷制御を行うことを特徴とする炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項2】
前記タービン(1)は、静翼(2,3)の流路角度を変化させる角度可変機構(31,32,39,40)を有し、前記静翼は、前記タービンの起動時に流路全閉角度よりも開いた状態にされることを特徴とする請求項1に記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項3】
前記タービン(1)は、静翼(2,3)の流路角度を変化させる角度可変機構(31,32,39,40)を有し、前記静翼は、前記タービンの停止時に流路全閉角度よりも開いた状態にされることを特徴とする請求項1又は2に記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項4】
前記バイパス制御弁(54,55)の前記作動は、電気ガバナ(20)の信号によって制御されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項5】
前記タービン(1)の前記制御は、前記タービンと並列に配設された2つの前記バイパス制御弁(54,55)によって行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項6】
前記タービン(1)は、静翼(2,3)の流路角度を変化させる角度可変機構(31,32,39,40)を有し、前記タービンの起動時の前記バイパス制御弁(54,55)による前記制御は、負荷制御中に前記静翼の前記流路角度の変更による制御に移行されることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一つに記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項7】
前記タービン(1)は、静翼(2,3)の流路角度を変化させる角度可変機構(31,32,39,40)を有し、前記タービンの停止時の前記バイパス制御弁(54,55)による前記制御は、負荷制御中に前記静翼の前記流路角度の変更による制御から移行されることを特徴とする請求項1ないし6いずれか一つに記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項8】
前記タービン(1)の起動時には前記バイパス制御弁(54,55)の前記作動により前記タービンの前圧を前記タービンの出口圧に略等しい圧力から増加させていくことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。
【請求項9】
前記タービン(1)の停止時には前記バイパス制御弁(54,55)の前記作動により前記タービンの前圧を前記タービンの出口圧に略等しい圧力まで低下させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の炉頂圧回収タービンの制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−283563(P2006−283563A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100398(P2005−100398)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】