説明

炊飯器

【課題】被調理物である米と水の温度を高精度に検知して、炊飯性能を向上させた電磁誘導加熱式の炊飯器を提供する。
【解決手段】熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋1と、前記鍋1を着脱自在に収納する保護枠2と、前記鍋1の開口部を覆う蓋と、高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させる加熱コイル7と、前記鍋1の温度を検知する赤外線センサ8と、前記赤外線センサ8が検出した温度に基づき前記加熱コイル7による前記鍋1の発熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサ8に赤外線を放射する前記鍋1の視野部1cは熱伝導率の高い材料のみに設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサにより鍋の温度を検知して炊飯制御などを行うようにした誘導加熱式の炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱式炊飯器は、加熱コイルから発生させる高周波磁界を利用して鍋自体を誘導発熱させるもので、ヒータ加熱式炊飯器に比べてふっくらとしたおいしいご飯が炊けることから、近年、普及が進んでいる。
【0003】
図9はこのような従来の誘導加熱式炊飯器を示すもので、上面が開閉自在の蓋101に覆われている本体102の内部には非金属材料により有底円筒状の保護枠103を介して鍋104が着脱自在に収納されている。
【0004】
保護枠103の外周には鍋104を誘導加熱(発熱)する加熱コイル105が配設されている。
【0005】
106は鍋104の温度を測定する温度センサで、コンタクト104aと、圧縮コイルバネ104bと、センサケース104cで構成している。
【0006】
アルミニウム製のコンタクト104a内の上部に負特性サーミスタよりなる温度検知素子を嵌着し、前記コンタクト104aの上面が鍋104の外底面に圧接するように圧縮コイルバネ106cにより常に上方に付勢されている。
【0007】
107は加熱コイル105へ高周波電力を供給し、鍋104の発熱量を制御する加熱制御部である。この加熱制御部107には、加熱コイル105に高周波電力を供給するために高電圧、大電流を発生させるスイッチング素子や、商用電源を整流する整流ブリッジ素子などのスイッチング素子を備えている。
【0008】
そのスイッチング素子等で発生する損失熱は冷却ファン108で冷却されるようにしてある。
【0009】
また、鍋内の調理物である米と水の温度を温度センサ106へより良く伝導させるために、センサ当接部のみ鍋の肉厚を局所的に薄くしたり、発熱層を取り去り熱伝導層を露出させる方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0010】
また、鍋と温度センサの間に米粒などの異物が挟まって、両者が正しく当接しなくなることで、正しい温度検出が行われなくなることを防止するために、鍋から放射される赤外線を検出する赤外線センサで鍋の温度を非接触で検出する炊飯器も提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4)。
【特許文献1】実公平3−76516号公報
【特許文献2】特開2005−304709号公報
【特許文献3】特公平5−75407号公報
【特許文献4】特開平9−154715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の圧縮コイルバネで付勢する温度センサでは、可動部を有して
いるため、まれに異物が筒体と通孔との間にかみ込むとリミットスイッチが閉じず、温度測定が開始されず、また、ヒータと鍋の間に隙間があき、ヒータの熱が正常に鍋に伝導されない可能性があった。
【0012】
他方、赤外線センサで間接的に鍋の温度を検出するものでは、従来の接触式の温度センサと検知応答性に格段の優劣差があるものではなかった。
【0013】
また、クラッド材を鍋に成形する過程でまれに生じる熱伝導層と発熱層との剥離やしわが長期間の使用でその剥離が拡大されると、剥離が生じた部分の熱伝導が悪くなり、センサで正確な温度制御を行えなくなるという課題もあった。
【0014】
本発明はこのような従来の課題を解決するもので、鍋の温度管理を高精度に行い、より美味なご飯が炊ける炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の炊飯器は、熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させる加熱コイルと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の発熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は熱伝導率の高い材料のみに設定したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、高精度で早い応答性を有した、鍋温度の測定ができるため、炊飯性能及び保温性能を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明は、熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させる加熱コイルと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の発熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は熱伝導率の高い材料のみに設定した。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明において、鍋の視野部に熱伝導率の高い材料を流し込むことにより、視野部外周の磁性材料部分と同一の平坦な鍋底面となるようにすることができる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1の発明において、鍋の視野部にカーボンをバインドした耐熱材料を塗った後、焼結して視野部外周の磁性材料部分と同一の平坦な鍋底面となるようにすることができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、視野部外周の磁性材料部に断熱層を設け、磁性材料部から視野部へ流入する熱流を小さくすることにより、より精度の良い温度測定が行える炊飯器としている。
【0021】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記鍋の視野部は、凹面形状とし、そこから放射される赤外線が、前記赤外線センサに集光されるようにすることにより、より精度の良い温度測定ができる炊飯器としている。
【0022】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、少なくとも前記鍋の視野部の熱伝導層に、傷の保護及び赤外線の放射の改善、増大のためのオーバーコートを施すことにより、より使い勝手が良く、精度の良い温度測定が行える炊飯器としている。
【0023】
第7の発明は、炭素を主体とする粉粒を圧縮または過熱して凝縮したのち切削加工する、もしくは型により成形加工した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させる加熱コイルと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の発熱量、及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は周辺部よりも厚みを薄くして鍋の温度の検知精度を高めたものである。
【0024】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記視野部に複数のリング状のスリットを入れて、有効放射表面積を上げるようにすることにより、より精度の良い温度測定ができる炊飯器としている。
【0025】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、蓋内に設けられた圧力調整手段とを備え、鍋内の圧力を調整することができる炊飯器としている。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1において、アルミニウムなどの熱伝導率の良い材料からなる熱伝導層1aに、磁性金属材料からなるフェライト系ステンレス鋼板の発熱層1bを圧接加工により張り合わせた、いわゆるクラッド材を型鍛造して得た鍋1と、この鍋1を非磁性材製の保護枠2を介して着脱自在に収納する上面が開口した炊飯器の本体3と、開閉自在にこの本体3を覆う蓋4と、この蓋4の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段5と、保護枠2の底部に設けた孔6と、鍋1を誘導発熱する加熱コイル7とを備え、前記加熱コイル7は保護枠2の外面に固定されている。
【0028】
また、本体3の下方部には鍋1の底から放射される赤外線量を検出してその温度を測定する赤外線センサ8と、加熱コイル7に高周波電流を供給するインバータ9を具備した加熱基板10とが内設してある。
【0029】
本体3の前上方部には操作キーと表示素子を有する制御基板11が配置してある。
【0030】
この制御基板11上には図示していないが、炊飯行程を記憶させたマイクロコンピュータを実装し、赤外線センサ8が測定した鍋1の底面温度と操作キー入力に基づき加熱基板10へ制御出力を出力して、加熱コイル7による鍋1の発熱量、及び一連の炊飯行程を制御する。
【0031】
ここで、赤外線センサ8に赤外線を放射する鍋1の中央底面の視野部1c(温度検知部位)は、型鍛造前に発熱層となるステンレス鋼板を打ち抜き加工してクラッド材とする、あるいは鍛造後に発熱層を切削加工することにより、熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層1aのみとしている。
【0032】
図2において、赤外線センサ8は、防水機能を備えた光学フィルター8aと、鏡筒8bと、赤外線検出素子を収納したセンサケース8cと、取付足12と、リード線13とで構
成している。
【0033】
なお、先のインバータは、加熱コイル7に周波数20〜30kHz程度あるいは50kHz以上の高周波電流を供給しており、例えば一石式のインバータ回路であれば、商用電源を整流器により整流し、その出力端にはコンデンサとチョークコイルのフィルター回路が接続されている。フィルター回路の負荷側には高周波発生回路が接続されている。
【0034】
高周波発生回路は、平滑コンデンサと、加熱コイルと並列接続した共振コンデンサと、逆並列接続したスイッチング素子とダイオード、発振回路と、電流検知・保護回路と、冷却ファンとで構成することができる。
【0035】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
米とその米量に対応する水を鍋1に入れて保護枠2に収納し、蓋4を閉じたところで操作部の炊飯キー(図示せず)を使用者が操作すると、制御基板11上のマイクロコンピュータがこのキー入力を受け、炊飯工程の実行を開始する。
【0037】
マイクロコンピュータ内のROMには、浸水、炊き上げ、蒸らし、保温の各工程における鍋1内部の水と米の調節温度の目標値と加熱時間が記憶されている。
【0038】
この温度目標値と加熱時間、及び、赤外線センサ8が出力する鍋1の視野部1cの検知温度に基づき加熱基板10を駆動する。
【0039】
温度目標値より検知温度が低い時は、加熱基板10より加熱コイル7へ高周波電流が供給されることにより高周波磁界が発生し、鍋1の発熱層1bを通過して、これに渦電流が流れる。
【0040】
この渦電流と発熱層1bの表皮電気抵抗値によるジュール熱で、発熱層1bが誘導発熱されて、その熱が熱伝導層1aを通して被調理物である米と水へ均一に伝導されることで、効率よく加熱調理される。
【0041】
炊飯中の鍋1の視野部1cは熱伝導層1aの一部であるため、その温度は炊飯初期は内容物である米を含んだ水温に依存することになり、一般的には−5℃〜30℃である。
【0042】
また、炊き上げ行程では約134℃〜145℃で炊飯終了を検知して加熱が停止されるので、その間の最高温度は約150℃である。保温行程では約70℃〜73℃に温度調節される。
【0043】
従って、鍋1の底面の温度範囲は−5℃〜150℃となるため、その視野部1cから放射される赤外線の波長はウィーンの変位則及びシュテファン・ボルツマン則より、図3(a)の赤外線の放射エネルギー強度を示すグラフに示すように、約2μm以上の遠赤外線領域となる。
【0044】
本実施の形態においては、水薄膜の吸収波長帯域(図3b)の影響を避けるため、約3.3μm〜7μmの波長の赤外線のみを透過させる光学フィルター8aを装着している。
【0045】
ステファン=ボルツマンの法則によれば、この光学フィルター8aを透過した赤外線をセンサケース8cに収納した赤外線検出素子で検出した赤外線エネルギー値も、鍋1の視野部1cの表面温度の4乗に比例する。
【0046】
従って、赤外線検出素子で検知した赤外線エネルギー値から鍋1の視野部1cの表面温度を算出することが可能となる。
【0047】
なお、水(厚膜)では約1.9μmと約2.9μmに−OH基の吸収が現れる。
【0048】
さらに、約7ミクロン以上では、水の分子が共振し選択的に強く吸収されるので、膜厚の厚い水滴が光学フィルターへ付着した場合、赤外線センサへ届く前に、鍋の視野部から放射される赤外線の殆どが吸収されてしまう。
【0049】
他方、視野部へ付着した膜厚の厚い水滴は、その波長域での水の放射率が約0.93と高いため、対流・伝導による遅延が生じるが、鍋の加熱が進むにつれて乾燥して消失するので影響は少ない。
【0050】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線センサ8に赤外線を放射する鍋1の視野部1cを熱伝導率の高いアルミニウムなどの熱伝導層1aのみとしているので、鍋1内に入れた米と水の温度の温度変化を正確に検出することができる。
【0051】
従って、鍋1内容物の温度を制御基板11により約0℃〜150℃まで高精度に温度検知して、加熱調理することにより、良食味のご飯を得ることができる。
【0052】
なお、赤外線エネルギー値と鍋1の視野部1cの表面温度との相関を記述したテーブルデータをマイクロコンピュータ内のROMに記憶させておき、このテーブルデータを参照する方法で、鍋1の視野部1cの表面温度を求めても良い。
【0053】
また、赤外線検出素子は約3μm〜4.3μmの帯域で感度を持つサーモパイルや、サーミスタ・ボロメータ(一対のサーミスタ素子の片方にのみ赤外線が受光される構成とした簡易型も含む)、焦電素子、あるいは、InSb、HgCdTe、PbS等の半導体化合物による光検出器が適している。
【0054】
また、鏡筒8bは赤外線検出素子の視野を絞り込み、鍋1の視野部1cとの距離を確保するために用いているが、炊飯行程中の赤外線検出素子の温度が、その素子の耐熱温度以内であれば、敢えて使用する必要はない。
【0055】
また、取付足12は本体3への固定機能以外に、冷却ファンの振動や、誘導発熱される鍋1の振動、加熱コイル7の低周波のうなり振動が、赤外線検出素子へ伝達されないように防振する機能も併せ持つ。
【0056】
また、加熱コイル7は保護枠2に固定されていても、一体に埋め込まれていても良いものである。
【0057】
(実施の形態2)
図4は実施の形態2を示し、先の図2と同作用をするところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0058】
実施の形態1との相違点は、充填材4を視野部1cに充填したところである。
【0059】
この充填材14は熱伝導率が高く、且つ、放射率の高い材料を溶融状態で流し込んだ後に冷却することで、視野部1c外周の発熱層1bと面一な平面を得ている。
【0060】
なお、充填材4は、高い熱伝導率を有する材料に表面処理を施して、高い放射率として
も良い。例えば、銅(底表面処理:光沢無)、アルミニウム(底表面処理:黒色アルマイト)などが挙げられよう。
【0061】
(実施の形態3)
図5は実施の形態3を示し、先の図2と同作用をするところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0062】
実施の形態1との相違点は、鍋1の視野部1cに、カーボンを混合して、バインド材となる耐熱材料15に練り込んでものを充填、あるいは塗布した後、焼結して成形したものである。
【0063】
これによれば、熱伝導率、及び放射率が高いので、鍋1内の米を含んだ水温の4乗に比例した赤外線を効率よく放射することができる。
【0064】
さらに、視野部1cはその外周の発熱層1bと同一の平坦な鍋底面としている。
【0065】
なお、耐熱材料15は200℃超での使用に耐える材料なら良く、大別すると金属系材料とセラミック系材料がある。
【0066】
(実施の形態4)
図6は実施の形態4を示し、先の図5と同作用をするところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態3のものを援用する。
【0067】
実施の形態3との相違点は、鍋1の底面の耐熱材料15に接する発熱層1bの内側、すなわち視野部1cの外周部に断熱層16を設け、発熱層1bから視野部1cへ流入する熱流を小さくすることにより、さらに精度の良い温度測定が行える炊飯器としている。
【0068】
なお、断熱材料15は200℃超での使用に耐える材料なら良く、フッ素樹脂系材料やセラミック系材料がある。
【0069】
また、セラミックスのナノ多孔体構造およびセラミックス・ポリマー複合化構造等からなるマルチセラミックス膜新断熱材料を用いれば、コストはやや上がるが熱を伝える三要素(格子振動、対流、輻射)のいずれも抑えることができる。
【0070】
また、断熱層16より効果が低下するが、安価にするために発熱層1bの内側、すなわち耐熱材料15の外周部の表面を放射率が0.05以下になる表面処理加工を施しても良い。
【0071】
表面処理加工としては、鏡面加工や、めっき加工(例えば、1〜3μmの黒色のクロム系薄膜を皮膜形成する)がある。
【0072】
(実施の形態5)
図7は実施の形態5を示し、先の図2と同作用をするところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0073】
実施の形態1との相違点は、鍋1の視野部1cを凹面形状とし、そこから放射される赤外線が赤外線センサ8に集束されるようにすることにより、より精度の良い温度測定ができるようにしたものである。
【0074】
ところで、前述の実施の形態1〜5のいずれか1つにおいて、少なくとも前記鍋1の視
野部1cの熱伝導層1aに、傷の保護及び赤外線の放射の改善、増大のためのオーバーコートを施すことにより、より使い勝手が良く、精度の良い温度測定が行える炊飯器とすることができる。
【0075】
オーバーコート材料としては、有機樹脂塗料はもとより、他の無機系塗料・セラミック系塗料などが使用できる。
【0076】
例えば、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成されたと膜表面に撥水基を固定させた無機系塗料では、長期間安定した塗膜外観を維持できる。
【0077】
なお、クラッド材を型鍛造した鍋の底面の視野部を凹面形状にするかわりに、炭素を主体とする粉粒を圧縮または過熱して凝縮したのち切削加工する、もしくは型により成形加工して鍋形状とし、その加工時に視野部の厚みを周辺部よりも厚みを薄くすることにより、被調理物である米と水の温度をより精度良く検知できる炊飯器とすることができる。
【0078】
(実施の形態6)
図8は実施の形態6を示し、先の図2と同作用をするところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0079】
実施の形態1との相違点は、鍋1の視野部1cに対応する熱伝導層1aに複数のリング状スリット17を入れたところである。
【0080】
前記リング状スリット17を入れることで、視野部1cの表面積を拡大し、より多くの赤外線が放射されるようにしてある。これにより、精度の良く、鍋1の内部の米と水の温度の測定ができる。
【0081】
なお、このリング状スリット17に埃や水垢が蓄積されないように、オーバーコートを施すこともできる。
【0082】
以上述べた炊飯器は基本的には炊飯を常圧下で行うものであるが、場合によっては、蓋に設けた蒸気排出系に蒸気排出の抵抗となる手段を付加するなどして炊飯領域に圧力をかけて、より一層ご飯の食味を高めることも考えられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように本発明にかかる炊飯器は、高精度で早い応答性を有した鍋温度の測定ができるため、炊飯性能及び保温性能を大幅に向上させることができるもので、他の調理器への応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1を示す炊飯器の全体断面図
【図2】同炊飯器の要部拡大断面図
【図3】(a)は赤外線の放射エネルギー強度を示すグラフ、(b)は水の吸収スペクトルを示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態2を示す炊飯器の要部断面図
【図5】本発明の実施の形態3を示す炊飯器の要部断面図
【図6】本発明の実施の形態4を示す炊飯器の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態5を示す炊飯器の要部断面図
【図8】本発明の実施の形態6を示す炊飯器の要部断面図
【図9】従来の炊飯器の全体断面図
【符号の説明】
【0085】
1 鍋
1a 熱伝導層
1b 発熱層
1c 視野部
2 保護枠
4 蓋
7 加熱コイル
8 赤外線センサ
14 充填材
15 耐熱材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させる加熱コイルと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の発熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は熱伝導率の高い材料のみに設定した炊飯器。
【請求項2】
鍋の視野部に熱伝導率が高く、且つ、放射率の高い材料を流し込み、前記視野部外周の磁性材料部分と同一の平坦な鍋底面となるようにした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
鍋の視野部にカーボンをバインドした耐熱材料を塗った後、焼結して、前記視野部外周の磁性材料部分と同一の平坦な鍋底面となるようにした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
鍋の視野部外周の磁性材料部に断熱層を設け、磁性材料部から前記視野部へ流入する熱流を小さくするようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
鍋の視野部を凹面形状とし、そこから放射される赤外線が前記赤外線センサに集束されるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
少なくとも鍋における視野部の熱伝導層に、傷の保護、及び赤外線の放射の改善、増大のためのオーバーコートを施した請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
炭素を主体とする粉粒を圧縮または過熱して凝縮したのち切削加工する、もしくは型により成形加工した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させる加熱コイルと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の発熱量、及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は周辺部よりも厚みを薄くした炊飯器。
【請求項8】
視野部に複数のリング状のスリットを入れて、有効放射表面積を上げるようにした請求項1〜7のいずれか1項記載の炊飯器。
【請求項9】
蓋内に設けられた圧力調整手段で鍋内の圧力を調整するようにした請求項1〜8のいずれか1項記載の炊飯器。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−110486(P2010−110486A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286088(P2008−286088)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】