説明

炊飯器

【課題】おいしく、栄養成分も増量したご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋1と、前記鍋1の開口部1aを覆う蓋4と、前記鍋1を加熱する鍋加熱手段2と、前記鍋1の温度を測定する温度測定手段13と、前記鍋1の温度に基づいて前記鍋加熱手段2に与える加熱量を制御する制御手段12と、玄米専用の前処理工程を炊飯工程として備え、前記前処理工程において、前記制御手段12は、前記鍋1の温度を、60℃以上65℃未満の高温浸水温度で第1の所定時間維持した後、30℃以上40℃未満の低温浸水温度で、第2の所定時間維持するように、前記鍋加熱手段2を制御するもので、前処理工程において、玄米への吸水を促進させつつ、効率よく酵素活性が高まり、γ―アミノ酪酸の生成が促進され、同時に蛋白質の分解、ミネラルの遊離も促進し、γ―アミノ酪酸が増量し、旨味が高まるとともに、遊離ミネラル量も増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、玄米(胚芽米、分づき米を含む)は、各種ミネラルをはじめ栄養成分が豊富で、アミノ酸の一種であるγ―アミノ酪酸や、イノシトール、フェルラ酸、ビタミンE、フィチン酸といった抗酸化物質である機能性成分が含まれ、健康志向の高まりとともに注目されてきている。
【0003】
例えば、γ―アミノ酪酸には、血液の流れを活発にし、代謝機能を促進する働きがあることから、血圧上昇抑制効果や腎機能や肝機能を改善する効果があり、玄米などで、増量させるには、20℃〜30℃の温水に1〜2晩漬け発芽させるとよいことが知られている。これは、発芽させることにより、酵素の活性が高まり、内部に含まれるグルタミン酸が酵素により代謝されて、γ―アミノ酪酸が生成されるためであると考えられている。
【0004】
そこで、炊飯器において、このような機能性成分を増量させるため、胚芽米を所定時間、所定温度で水に浸漬して発芽させる発芽工程を設けることにより、家庭で簡単に発芽米を作り、γ―アミノ酪酸を増やして、引き続き炊飯することができるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−245786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の炊飯器の構成では、発芽工程で、胚芽米等を水に長時間浸漬させる必要があり、炊き上げるまでに時間がかかることから使い勝手が悪いという課題がある。
【0006】
また、γ―アミノ酪酸を生成する酵素は、浸漬させる水温や時間により、その活性度は異なり、生成されるγ―アミノ酪酸量も大きく異なることから、最も効率のよい水温と浸漬時間に制御することができれば、長時間浸漬させる必要がないと考えられる。
【0007】
さらに、γ―アミノ酪酸に特化した構成になっていることから、それ以外の機能性成分である抗酸化物質は、長時間浸漬させている間に酸化してしまう。また、おいしさ、栄養成分の増量といった観点には、十分に、応える構成になっていない、という課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、特に玄米炊飯において、γ―アミノ酪酸を増量させたご飯を食したいとき、長時間浸漬させる必要がなく、使い勝手がよく、さらに、機能性成分である抗酸化物質の酸化も抑制し、含まれている機能性成分の量を総合的に高めることができ、おいしく、栄養成分も増量したご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、鍋と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の温度を測定する温度測定手段と、前記鍋の温度に基づいて前記鍋加熱手段に与える加熱量を制御する制御手段と、玄米専用の前処理工程を炊飯工程として備え、前記前処理工程において、前記制御手段は、前記鍋の温度を
、60℃以上65℃未満の高温浸水温度で第1の所定時間維持した後、30℃以上40℃未満の低温浸水温度で、第2の所定時間維持するように、前記鍋加熱手段を制御するもので、前処理工程において、玄米への吸水を促進させつつ、効率よく酵素活性が高まり、γ―アミノ酪酸の生成が促進され、同時に蛋白質の分解、ミネラルの遊離も促進し、γ―アミノ酪酸が増量し、旨味が高まるとともに、遊離ミネラル量も増加させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、玄米を炊飯するとき、脂質や機能性成分である抗酸化物質の酸化もできるだけ抑制した状態で、効率よくγ―アミノ酪酸を生成し、同時にアミノ酸やミネラルの遊離量の増量も見込め、引き続き炊飯することによりγ―アミノ酪酸が増えたおいしい、栄養的に優れたご飯を手間なく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、鍋と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の温度を測定する温度測定手段と、前記鍋の温度に基づいて前記鍋加熱手段に与える加熱量を制御する制御手段と、玄米専用の前処理工程を炊飯工程として備え、前記前処理工程において、前記制御手段は、前記鍋の温度を、60℃以上65℃未満の高温浸水温度で第1の所定時間維持した後、30℃以上40℃未満の低温浸水温度で、第2の所定時間維持するように、前記鍋加熱手段を制御するもので、前処理工程において、玄米への吸水を促進させつつ、効率よく酵素活性が高まり、γ―アミノ酪酸の生成が促進され、同時に蛋白質の分解、ミネラルの遊離も促進し、γ―アミノ酪酸が増量し、旨味が高まるとともに、遊離ミネラル量も増加させることができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の玄米は、胚芽米、分づき米を含むもので、玄米だけでなく胚芽米、分づき米においても、玄米同様の効果を得ることがきできる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の第1の所定時間を、20分以上60分未満とし、第2の所定時間を、1分以上60分未満としたもので、高温浸水温度において、酵素の活性をほぼ維持した状態で、玄米の表層が崩れることなく、各種成分を増量することができ、その後低温浸水において、さらに効率よく各種栄養成分を増量させることができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の鍋を冷却する冷却手段を備え、前処理工程において、鍋の温度を、高温浸水温度で第1の所定時間維持した後、前記冷却手段により、30℃以上40℃未満の低温浸水温度まで冷却した後、第2の所定時間維持するようにしたもので、より短時間で、効率よく吸水を高め、酵素の活性を高めることができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の炊飯器において、蒸気を生成する蒸気発生手段と、むらし工程時に、前記蒸気発生手段により生成した蒸気を鍋内に供給する蒸気投入手段を備えたもので、むらし工程時に、蒸気を鍋内に投入することにより、さらに澱粉や蛋白質の分解が高まり、甘味、旨味が高まるとともに、糊化度も高まり、軟らかくなり、又蒸気を投入することにより、むらし工程での炊飯器内部の酸素濃度も低く維持することが可能になり、玄米の抗酸化物質や脂質の酸化をさらに抑制して、炊き上げることができる。
【0016】
第6の発明は、特に、第5の発明の蒸気の温度を100℃以上150℃以下としたもので、ご飯が乾燥したり焦げたりすることなく、官能的にも、良好な状態で、玄米の抗酸化物質が酸化されることなく、炊き上げることができる。
【0017】
第7の発明は、特に、第5又は第6発明の蒸気を、前処理工程においても、鍋内に投入するもので、前処理工程中の鍋内をより効率的に、より均一に加熱することができ、また、低温浸水と高温浸水の各温度管理を、より正確に行うことがで、より効率よく酵素が作用し、さらに栄養成分が増量したおいしい玄米ご飯を得ることができる。
【0018】
以下、本実施の形態について、図を用いて説明する。尚、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態における炊飯器は、調理物(米類や水)を収容する鍋1と、鍋4の開口部1aを覆う蓋4と、電磁加熱コイルなどからなり、この鍋1を加熱して調理物の調理を行う鍋加熱手段2と、鍋1の温度を測定する温度センサーからなる温度測定手段13と、温度測定手段13が測定した鍋1の温度に基づいて、炊飯の各工程を順次実行できるように、鍋加熱手段2に与える電力を制御する制御手段12とを備えている。蓋4には、金属材料で構成された放熱板5と加熱板6が収納されており、放熱板5と加熱板6とで蒸気加熱部9を形成している。また、鍋1とは別に、水を貯蔵しておく着脱自在に装着された金属装置である蒸気発生手段7があり、蒸気発生手段7は、蒸気発生加熱手段8である加熱コイルにて誘導加熱され、内部に収納された水を沸騰させて、蒸気を発生させるものである。
【0021】
蒸気発生手段7にて生成された蒸気は、管状の通路を有する蒸気案内手段10にて蒸気加熱部9へと案内される。さらに、蒸気加熱部9で加熱された蒸気を鍋1に投入する蒸気投入手段11が加熱板6に孔形状に設けられている。
【0022】
また、図1には示していないが、炊飯器の本体3の外郭の一部に、玄米専用の前処理を炊飯工程に有した玄米炊飯コースを選択できる炊飯部を設け、炊飯ボタン(図示せず)を押すことにより、選択した炊飯コースが実施されるようになっている。
【0023】
ここで、玄米3合(444g)を炊飯する場合を例にとって、本実施の形態1における炊飯器の炊飯工程を説明する。尚、玄米は、胚芽米、分づき米を含むものとする。
【0024】
表1に、炊飯コースと工程条件を示した。
【0025】
【表1】

【0026】
表1における「実施の形態1」では、前処理工程条件として、高温浸水の温度と昇温も含めた時間、低温浸水の温度と降温も含めた時間、むらし工程に投入する蒸気の蒸気量及び蒸気温度を示した。
【0027】
また、「従来例1」では、発芽工程を炊飯工程に有した従来の炊飯器の発芽工程の浸水の温度と維持時間を示した。
【0028】
表2では、それぞれの炊飯コースで炊飯したときの、炊き上がり玄米ご飯の旨味、甘味、硬さ、γ―アミノ酪酸、遊離したミネラル、抗酸化活性を示している。旨味は、アミノ酸総量、甘味・硬さは官能評価の結果を示した。また、γ―アミノ酪酸、ミネラル、抗酸化活性については、従来例1と比較したときの比率で示した。
【0029】
【表2】

【0030】
抗酸化活性は、玄米に含まれる抗酸化物質の量に比例する。つまり、その量が多ほど抗酸化活性も高くなる。
【0031】
まず、鍋1に玄米と規定量の水を収納し、炊飯部で前処理を有した玄米炊飯コースを選択し、炊飯ボタンを押すことにより、温度測定手段13で測定した鍋1の温度に基づいて、炊飯工程が開始される。
【0032】
まず、高温浸水は、昇温も含めて、60℃以上65℃未満(本実施の形態では、60℃)で第1の所定時間(例えば、20分以上60分未満(本実施の形態では、60分))行われ、その後、温度制御させることにより、冷却し、低温浸水では、降温も含めて30℃以上40℃未満(本実施の形態では、40℃)で、第2の所定時間(例えば、1分以上60分未満(本実施の形態では、60分))で維持した後、炊き上げ、むらしの各工程が行なわれ、炊飯が終了する。そして、むらし工程では、100℃以上150℃以下(本実施の形態では、130℃)の蒸気が所定量(本実施の形態では、16g)投入される。
【0033】
ここでいう冷却は、温度制御に限定するものではなく、冷却手段を備えた炊飯器の場合は、低温浸水温度までの冷却が短時間で実現し、炊飯時間の短縮も可能になる。
【0034】
表2により、実施の形態1の炊飯コースでは、γ―アミノ酪酸量及びアミノ酸総量は、従来例1と比較して多くなった。
【0035】
これは、以下のことが原因であると考えられる。
【0036】
一般に、炊飯器において、米への吸水率は、浸水温度が高いほど上昇する。しかし、60℃以上では糊化が始まることから、精白米では、この温度帯での浸水が長くなりすぎると、米の表面部が糊化することにより、かえって吸水が妨げられることが知られている。
【0037】
一方玄米では、果皮と言われる硬い組織に覆われており、60℃以上の浸水温度であっても、ある一定の時間以内であれば、精白米のように吸水が妨げられるようなこともなく、吸水を促進することができる。
【0038】
また、一般に酵素は、65℃以上の高温ではその熱により、蛋白質で構成されている酵素そのものの変性が始まり、その活性が低下する。
【0039】
しかし、玄米では、果皮といわれる硬い組織に覆われていることから、熱によるダメージを受けにくく、高温で組織内部への吸水を促進させることにより、かえって酵素による加水分解が促進されると考えられる。
【0040】
これは、玄米を水温30℃で180分浸漬させたときのγ―アミノ酪酸量が、約20μg/乾米1gであったのに対し、水温65℃で60分浸漬させたときのγ―アミノ酪酸量が、約50μ/乾米1gと、水温30℃のときと比較して、2.5倍増量していたことからも類推できる。
【0041】
また、玄米を水温30℃で180分浸漬させたときのグルタミン酸量が、約5μg/乾米1gであったのに対し、水温65℃で1時間浸漬させたときのグルタミン酸量は、約7μ/乾米1gと、水温30℃のときと比較して、1.4倍増量しており、水温を高温に上げることでγ―アミノ酪酸の生成に必要なグルタミン酸の増量も見込めることが推定される。さらに、玄米は、果皮や種皮や外胚乳といったいわゆる糠の部分にもさまざまな酵素を含み、浸水させることにより、それぞれの酵素が、蛋白質だけでなく、機能性成分にも作用する。
【0042】
機能性成分の一つであるフィチン酸は、炊飯前にはミネラルと結合した形で存在してお
り、そのまま体内に摂取しても、せっかくの栄養成分のミネラルが吸収されにくくなっている。しかし、酵素の働きでフィチン酸が分解されることにより、ミネラルとの結合も切れ、体内で吸収されやすくなる。
【0043】
前処理工程において、まず玄米を糊化温度以上の60℃以上65℃未満の高温浸水温度で加熱することにより、果皮が熱により損傷を受け、亀裂を生じ、玄米内部への吸水が促進され、その結果、酵素が効率よく作用し、γ―アミノ酪酸の生成が促進される。
【0044】
また、この高温浸水温度では、蛋白質の加水分解も促進され、炊き上がりご飯の旨みのもととなるアミノ酸の生成量が多くなり、その中でもグルタミン酸の生成量も多くなることから、その分解物であるγ―アミノ酪酸の生成量がさらに増加する。
【0045】
一方、機能性成分であるフィチン酸の酵素分解も促進され、ミネラルの結合が切れ、遊離した状態になるので、栄養成分であるミネラルの体内での吸収を高めることが可能となる。
【0046】
その後、玄米内部の吸水を促進させた状態で、酵素が、熱による変性を受けず活性が長時間維持される温度帯である30℃以上40℃未満の低温浸水温度で一定時間維持するため、浸水温度を下げる。
【0047】
この温度を下げる過程でも、浸透圧の影響でさらに玄米内部への吸水が促進され、その後の低温浸水温度で、さらに酵素がよく作用し、さらに高温浸水温度で生成されたグルタミン酸からもγ―アミノ酪酸が生成され、効率よくγ―アミノ酪酸を生成することができる。この低温浸水温度は、長時間維持しても、γ―アミノ酪酸のもととなるグルタミン酸が消費されてしまえば、それ以上の増量は望めず、一定時間あれば十分であり、長時間維持するのは効率的ではない。
【0048】
さらに、この低温浸水温度でも、当然酵素による蛋白質の加水分解は生じることから、アミノ酸の生成も望め、機能性成分であるフィチン酸の酵素分解も同時に生じ、ミネラルの遊離も望めることから、より旨みや遊離ミネラルの増量が見込める。
【0049】
高温浸水温度の維持時間については、その加熱時間が長時間に及ぶと熱による酵素の変性で、その活性が低下してくることから、60分以下に留める必要がある。
【0050】
水温30℃180分より、水温65℃60分浸水の方が、生成されるγ―アミノ酪酸量が多かったことからも、60分以下であれば、酵素の活性はほとんど低下していないと考えられる。
【0051】
さらに、60分以下であれば、浸水時に、表層が崩れるほどの熱による損傷は受けず、炊き上げたときの外観や食感が損なわれることはない。
【0052】
また、20分以上あれば、玄米の含水率は30%以上に達し、発芽工程をもつ従来の炊飯器における玄米が到達する含水率と同等となり、酵素による加水分解が問題なく行われると考えられ、高温温度の維持時間は、20分以上60分以下で制御することが最も効果的である。
【0053】
さらに、引き続き低温浸水の維持時間は、1分以上60分以下とすることにより、前処理工程において、さらに効率よくγ―アミノ酪酸を増量させることができ、長時間浸漬させる必要がないことから、機能性成分や脂質の酸化も抑制できる。
【0054】
また、表2に示す官能評価においても、実施の形態1の炊飯コースでは、従来例1と比較して、甘くなり、軟らかくなった。これは、実施の形態1では、酵素や投入された蒸気により、澱粉の分解が促進されていることから、炊き上がりのご飯の糊化度も高まり、軟らかく食べやすく、甘くなったと考えられる。
【0055】
さらに、実施の形態1では、機能性成分であるフィチン酸への酵素作用も効率よく促進され、遊離されるミネラル量が、従来例1より増加するという結果が得られた。
【0056】
また、実施の形態1では、従来例1と比較して、抗酸化活性も向上した。これは、実施の形態1では、むらし工程において、蒸気を鍋1内に投入しているので、鍋1内の酸度濃度が低濃度で維持され、含まれる抗酸化物質の酸化を抑制することが可能となり、抗酸化活性が高まったと考えられる。
【0057】
また、前処理工程において、蒸気を鍋1内に投入できる構成にすることにより、前処理工程での浸水の温度調整をさらに正確に行なうことが可能になり、γ―アミノ酪酸や旨味を効率よく増加させることができ、ミネラル量も効率よく高めることができる。
【0058】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態1における炊飯器は、鍋1と、鍋1の開口部を覆う蓋4と、鍋1を加熱する鍋加熱手段2と、鍋1の温度を測定する温度測定手段13と、鍋1の温度に基づいて鍋加熱手段2に与える加熱量を制御する制御手段12と、蒸気を生成する蒸気発生手段7と、前記蒸気発生手段7で生成した蒸気を鍋1内に供給する蒸気投入手段11と、玄米専用の前処理工程を炊飯工程として備え、玄米専用の前処理工程を有した炊飯コースを選択し、炊飯することにより、前処理工程において、60℃以上65℃未満の高温浸水温度で20分以上60分以下維持した後、30℃以上40℃未満の低温浸水温度で1分以上60分以下維持し、さらに、むらし工程において、100℃以上150℃以下の蒸気を投入することにより、γ―アミノ酪酸が増量し、機能性成分である抗酸化物質の酸化も抑制することができることから、玄米に含まれている機能性成分を総合的に高めることが可能となり、さらに栄養成分も増加し、甘味、旨味も増加した、軟らかく、おいしい玄米ご飯を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、おいしく、栄養成分も増量したご飯を炊き上げることができるもので、家庭用、業務用の各種炊飯器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0061】
1 鍋
1a 開口部
2 鍋加熱手段
3 本体
4 蓋
5 放熱板
6 加熱板
7 蒸気発生手段
8 蒸気発生加熱手段
9 蒸気加熱部
10 蒸気案内手段
11 蒸気投入手段
12 制御手段
13 温度測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記鍋の温度を測定する温度測定手段と、前記鍋の温度に基づいて前記鍋加熱手段に与える加熱量を制御する制御手段と、玄米専用の前処理工程を炊飯工程として備え、前記前処理工程において、前記制御手段は、前記鍋の温度を、60℃以上65℃未満の高温浸水温度で第1の所定時間維持した後、30℃以上40℃未満の低温浸水温度で、第2の所定時間維持するように、前記鍋加熱手段を制御することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
玄米は、胚芽米、分づき米を含むことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
第1の所定時間を、20分以上60分未満とし、第2の所定時間を、1分以上60分未満としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
鍋を冷却する冷却手段を備え、前処理工程において、鍋の温度を、高温浸水温度で第1の所定時間維持した後、前記冷却手段により、30℃以上40℃未満の低温浸水温度まで冷却した後、第2の所定時間維持するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
蒸気を生成する蒸気発生手段と、むらし工程時に、前記蒸気発生手段により生成した蒸気を鍋内に供給する蒸気投入手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
蒸気の温度を100℃以上150℃以下としたことを特徴とする請求項5に記載の炊飯器。
【請求項7】
蒸気を、前処理工程においても、鍋内に投入することを特徴とする請求項5又は6に記載の炊飯器。

【図1】
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【公開番号】特開2010−178948(P2010−178948A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25753(P2009−25753)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】