説明

炊飯器

【課題】漏洩磁界の低減を図り、良好な炊飯性能が得られる炊飯器を提供する。
【解決手段】金属で構成されたボデー1と樹脂で構成され複数の排気孔2bを有する下枠2とを嵌合してなる本体15と、本体15内に設けられ加熱コイル5を配設すると共に鍋3が内挿される保護枠4と、加熱コイル5への通電を制御する制御回路ユニット9を冷却するファンモータ9aと、下枠2に設けられ外径が加熱コイル5より大なる反射板11とを備え、反射板11は、加熱コイル5と下枠2の底面に対して各々一定の間隔を有しているもので、反射板11を加熱コイル5と最適な空間距離を隔てた下方の位置に配置することができるため漏洩磁界を低減でき、また反射板11と下枠2の底面にも一定の空間距離を設けているためファンモータ9aで吸引した冷却風が下枠の排気孔2bから効果的に排出でき、加熱コイル5の温度上昇を抑制し、ひいては良好な炊飯性能を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関するもので、特に、誘導加熱式の炊飯器の誘導加熱コイルの下方に設置する反射板の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器としては、炊飯工程中に、誘導加熱コイルに通電することにより、炊飯器本体外に磁束が洩れ出ないように、誘導加熱コイルの周囲にアルミ薄板等で作られた円筒状の反射枠を配設したり、または、図3に示すように、本体下面方向への磁束洩れを防止するため、誘導加熱コイル20の下方の本体底部21に配設した係止突部22に反射板23を仮止し、誘導加熱コイル20を保持する保護枠24から押圧部25を形成し、反射板23と誘導加熱コイル20の距離を一定に保つようにしていたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたような従来の炊飯器の構成では、誘導加熱コイル20と反射板23の間に一定間隔を確保することができるが、反射板23と本体底部21の間には一定の間隔が無く、反射板23は、本体底部21にほぼ密着した状態であり、本体内部冷却のために本体底部21に冷却孔が空けられないため、誘導加熱コイル20の温度上昇を低減させるために比較的小さめの電流しか通電できず、ひいては炊飯性能が不十分となる、という課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、誘導加熱コイルの漏洩磁界を低減し、かつ誘導加熱コイルの温度上昇も抑制することで良好な炊飯性能を有する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、金属で構成されたボデーと樹脂で構成され複数の小孔を有する下枠とを嵌合してなる本体と、前記本体内に設けられ加熱コイルを配設すると共に鍋が内挿される保護枠と、前記加熱コイルへの通電を制御する制御回路と、前記制御回路を冷却するためのファンモータと、前記下枠に設けられ外径が前記加熱コイルより大なる反射板とを備え、前記反射板は、前記加熱コイルと前記下枠の底面に対して各々一定の間隔を有しているもので、反射板を加熱コイルと最適な空間距離を隔てた下方の位置に配置することができるため漏洩磁界を低減でき、また反射板と下枠の底面にも一定の空間距離を設けているためファンモータから吸引した冷却風が下枠の小孔から効果的に排出でき加熱コイルの温度上昇を抑制することとなり、加熱コイルに適正な通電が行え、ひいては良好な炊飯性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炊飯器は、反射板を加熱コイルと最適な空間距離を隔てた下方の位置に配置することができるため漏洩磁界を低減でき、また反射板と下枠の底面にも一定の空間距離を設けているためファンモータから吸引した冷却風が下枠の小孔から効果的に排出でき加熱コイルの温度上昇を抑制することができるため、加熱コイルに適正な通電が行え、ひいて
は良好な炊飯性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の下枠を外した状態の底面の斜視図
【図3】従来の炊飯器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、金属で構成されたボデーと樹脂で構成され複数の小孔を有する下枠とを嵌合してなる本体と、前記本体内に設けられ加熱コイルを配設すると共に鍋が内挿される保護枠と、前記加熱コイルへの通電を制御する制御回路と、前記制御回路を冷却するためのファンモータと、前記下枠に設けられ外径が前記加熱コイルより大なる反射板とを備え、前記反射板は、前記加熱コイルと前記下枠の底面に対して各々一定の間隔を有しているもので、反射板を加熱コイルと最適な空間距離を隔てた下方の位置に配置することができるため漏洩磁界を低減でき、また反射板と下枠の底面にも一定の空間距離を設けているためファンモータから吸引した冷却風が下枠の小孔から効果的に排出でき加熱コイルの温度上昇を抑制することとなり、加熱コイルに適正な通電が行え、ひいては良好な炊飯性能を得ることができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の反射板は、下枠の略中央位置において少なくとも1ケ所を固定され、高さ方向で、先端と前記反射板との間に微小な隙間を有するリブを前記下枠または保護枠に備えたもので、例えば、包装落下の衝撃等によって反射板の端部が変形し、加熱コイルまたは下枠の底面との一定距離が変化することが無くなり、最適距離を確保することができるわけで良好な漏洩磁界性能、ひいては良好な炊飯性能をも確保することができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図、図2は、同炊飯器の下枠を外した状態の底面の斜視図である。
【0013】
図1、2において、本実施の形態における炊飯器の本体15は、主にステンレス鋼板等の金属で構成されたボデー1と、ボデー1と嵌合し炊飯器の本体下部を構成する下枠2の中に鍋3を内挿収納する保護枠4と、保護枠4の外表面底部に配設された加熱コイル5を備えている。
【0014】
6は、ボデー1の上面を覆うように嵌合した上枠であり、その上面を覆うように、開閉自在に取り付けられているのが蓋体7である。
【0015】
蓋体7の内側には、鍋3内で炊飯されたときに発生する蒸気を導通させる蒸気孔(図示せず)を具備する略円盤状の内蓋7aを有している。また内蓋7aの一部は、誘導加熱が可能なステンレスなどの金属で構成されており、内蓋7aの外周部の鍋3側の面には、蓋体7が閉状態にあるとき、鍋3と密接する略環状の内蓋パッキン7bが取り付けられている。内蓋パッキン7bは、シリコンゴムなどの弾性体で構成されている。
【0016】
保護枠4は、上枠6と、鍋3の形状に対応して有底円筒形状に形成され、上部開口側端部で、上枠6に一体的に組立てられた保護枠胴4aとで構成されている。また保護枠胴4aの外周面には、側面コイル4bが配設されている。
【0017】
保護枠4の外周面には、加熱コイル5を構成する底面内コイル5aと底面外コイル5bとが取り付けられている。底面内コイル5aは、保護枠胴4aを介して鍋3の底部の中央部周囲に対向するように配置されており、底面外コイル5bは、保護枠胴4aを介して鍋3の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0018】
保護枠4の底部の中央部分には開口部4cが設けられており、当該開口部4cには、鍋3の温度を測定するための鍋温度検知装置の一例である鍋温度センサ8が鍋3の底部に当接可能に配置されている。
【0019】
ボデー1内には、各部及び各装置を駆動制御して炊飯動作を行う制御回路ユニット9が設置されている。制御回路ユニット9は、例えば、蓋体7に設けられた操作スイッチ7fを使用して行った使用者の指示に応じて、各部及び各装置の駆動制御を行う。前記制御回路ユニット9の下面側には、下枠2に設けた吸気孔2aから外部の冷気を導入して、炊飯器内部を冷却するためのファンモータ9aが一体に組み込まれ、このファンモータ9aは下枠2の底面に略平行に位置するように配設されている。
【0020】
ボデー1の前壁上部(図1の左側上部)には、蓋体7のフック部7cに係合可能なフックレバー10が設けられている。フック部7cと上枠6との間には、バネ10aが設けられている。フックレバー10は、バネ10aにより常時前方(図1の左側)に付勢されている。
【0021】
蓋体7には、略前方位置に蓋温度検知装置の一例である内蓋温度センサ7dと、後方部分に、回動中心位置のヒンジ軸7eとが具備され、前記ヒンジ軸7eは、蓋体7の開閉軸であり、上枠6に両端部が回動自在に固定されている。蓋体7はヒンジ軸7eの近傍に設けた回動バネ(図示せず)により回動する。
【0022】
前記保護枠4に配設された底面内コイル5aに対向する位置の下枠2に反射板11が固定されている。反射板11は、厚さ0.3〜0.8mm程度の薄板状のアルミ板等で構成され、その外径は、底面内コイル5aの外径よりも大きく、下枠2の突起物を挿入するための穴11aや、冷却風を通過させて下枠2の排気孔2bへ導くためのスリット11bが複数個設けられている。また反射板11は、下枠2の略中央位置にネジ12によって2ケ所で締結固定されている。そして、下枠2の、反射板11の固定されていない側の先端部11cの下方には、受けリブ2cが設けられ、その受けリブ2cの先端と反射板11との間に、0.5〜1.0mmのわずかな隙間(微小隙間C)を設けている(図2参照)。
【0023】
以上のように構成された本実施の形態における炊飯器について、以下その動作、作用について説明する。
【0024】
まず、鍋3内に所定の米と水をセットし炊飯工程が開始されると、加熱コイル5に通電が行われ電磁誘導現象が起こる。このとき側面コイル4bや底面外コイル5bからの磁束洩れには適正間隔を取った位置にステンレス鋼板製のボデー1が設けられていることによって防止することができている。
【0025】
底面内コイル5aからの磁束洩れは、下枠2に設けられた反射板11が底面内コイル5aより大きな外径寸法を有することにより防止できるようになっている。反射板11は、下枠2との間に一定の空間距離Aを、底面内コイル5bとの間に一定の空間距離Bをそれぞれ有している。
【0026】
空間距離Aは、ファンモータ9aが吸気穴2aから吸引した外部からの冷却風が、制御
回路ユニット9および保護枠4の表面を高効率的に冷却して、また排気孔2bから外部に排出するために必要不可欠な空間である。
【0027】
また、空間距離Bは、反射板11が底面内コイル5aに対し近づきすぎれば反射板11自身が電磁誘導によって熱エネルギーが発生し熱くなってしまい、遠すぎれば、磁束漏洩防止の効果が無くなりまた炊飯器の本体自体が無用に大きくなってしまうため、最適な距離がある。本実施の形態では、開発過程において得られた距離約13〜16mmと設定している。
【0028】
本実施の形態では、反射板11は、下枠2に1〜2ケ所ネジ締結固定されているが、それ以上増やすことは組立コストを増加させてしまうことにつながるためである。この場合、ネジ12によって固定されていない側の先端部11cが、万一落下衝撃等によって変形してしまうと各々の最適な空間距離A、Bが変化してしまい漏洩磁束性能や炊飯性能が保証できなくなる。
【0029】
しかしながら、底面内コイル5aとの距離Bは少々ばらついても漏洩磁界性能への大きな影響は無いことは知られているが、距離Aが小さくなる側に反射板11が変形すると、下枠2の排気孔2bが塞がれ、加熱コイル5の温度上昇低減ができなくなるが、本実施の形態では、図1に示すように、反射枠11と下枠2の受けリブ2cとの間に、接触しない程度の微小隙間Cを設けて、反射板11が下枠2の底面方向に変形しないようにしている。
【0030】
なお、保護枠4側から反射板11との間隔を規制する突起物を設けても、同様の効果が得られる、ことは言うまでもない。
【0031】
以上のように、本実施の形態における炊飯器は、漏洩磁束性能、温度上昇の低減を実現することによって良好な炊飯性能が得られるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、反射板を加熱コイルと最適な空間距離を隔てた下方の位置に配置することができるため漏洩磁界を低減でき、また反射板と下枠の底面にも一定の空間距離を設けているためファンモータから吸引した冷却風が下枠の小孔から効果的に排出でき加熱コイルの温度上昇を抑制することができるため加熱コイルに適正な通電が行え、ひいては良好な炊飯性能を得ることが可能となるので、炊飯器のみならず卓上型の誘導加熱調理器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 ボデー
2 下枠
2a 吸気孔(小孔)
2b 排気孔(小孔)
2c 受けリブ
3 鍋
4 保護枠
5 加熱コイル
5a 底面内コイル
9 制御回路ユニット(制御回路)
9a ファンモータ
11 反射板
15 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で構成されたボデーと樹脂で構成され複数の小孔を有する下枠とを嵌合してなる本体と、前記本体内に設けられ加熱コイルを配設すると共に鍋が内挿される保護枠と、前記加熱コイルへの通電を制御する制御回路と、前記制御回路を冷却するためのファンモータと、前記下枠に設けられ外径が前記加熱コイルより大なる反射板とを備え、前記反射板は、前記加熱コイルと前記下枠の底面に対して各々一定の間隔を有していることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
反射板は、下枠の略中央位置において少なくとも1ケ所を固定され、高さ方向で、先端と前記反射板との間に微小な隙間を有するリブを前記下枠または保護枠に備えてなる請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−218070(P2011−218070A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92840(P2010−92840)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】