説明

炊飯器

【課題】米を水に浸漬する時間を常に適切なものとできる炊飯器の提供を、その目的とする。
【解決手段】逆止弁73が閉じた後も、釜5内の水はサイフォン作用によってスライド管90、突出管87、縦穴57、横穴59、排水穴105、排水ホース109を通って排出される。なお、排水が行われているときには、空気流入穴75から釜5内へ空気が流入するので、排水が滞ることはない。水面がスライド管90の空気穴95にかかると、空気が空気穴95からスライド管90内へ入る。これによりサイフォン作用による排水が停止する。スライド管90の基端部を米3合に対応する「3」を示す目盛に合わせてあるので、釜5内の水位(水量)は米3合に対応する状態となる。そして、所定時間例えば、1時間米Rが水に浸漬される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に係り、米を水に浸漬する時間を適切に管理できる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、おいしい飯を得るためには、米を水に浸漬させて、水を含ませた後に炊飯すればよいことが知られており、適切な浸漬時間としては水温20℃の場合1時間程度であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−125028
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば朝食のために炊飯をする場合には、前日の夜に米を研ぎ、その米を所定量の水と共に炊飯器に入れ、翌朝の所望の時間に炊飯が完了するようにタイマーをセットしている。この場合、米は通常6時間以上も水に浸漬されたままとなり、糊化が進み過ぎるなど不味なものとなってしまうばかりか、気温によっては米が腐敗することにもなりかねない。
【0005】
現在の炊飯器は、特許文献1に示すように浸漬時間を短くして、炊飯時間を短くすることを目的とするものが主流であり、長すぎる浸漬時間を調節できるものはないというのが現実である。また、マイコン制御によって炊き上がりの状態を調整しようとするものもあるが、その調整にも限界があり、米が腐敗することについての対応は全く不可能である。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、米を水に浸漬する時間を常に適切なものとできる炊飯器の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、炊飯器本体と、前記炊飯器本体に収容される釜と、前記釜を加熱するためのヒーターと、前記炊飯器本体に設けられ前記釜の上面開口を閉鎖する状態と開放する状態とに開閉動作できる蓋とを有し、前記蓋を貫通して釜内へ入り込む給水管と、前記給水管に接続された開閉弁と、前記開閉弁を所定時間開いた後に閉じる開閉弁制御手段と、前記開閉弁制御手段が始動する時間を設定するタイマーと、前記給水管から水が釜内へ供給され洗米を行う際に釜内の水を排出する排水管と、前記給水管からの水の供給が停止した後に予め設定した水量となるまで釜内の水をサイフォン作用によって排出する排水量規定管と、前記ヒーターを所定時間作動させるヒーター制御手段を具備することを特徴とする炊飯器である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した炊飯器において、排水量規定管は釜内に釜底側を向いて突出し、且つ釜外に連通する連通管と接続された突出管と、前記突出管に対し上下方向にスライド自在に取り付けられ、且つ所望の位置で固定できるスライド管とから成ることを特徴とする炊飯器である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載した炊飯器において、突出管には炊く米の量に対応する水位を示す目盛が設けられ、前記目盛にスライド管の基端部を合わせることにより水位を設定できることを特徴とする炊飯器である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載した炊飯器において、突出管または排水管の途中には排水が釜内へ逆流するのを防止する逆止弁を設けたことを特徴とする炊飯器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器によれば、米を水に浸漬する時間を常に適切なものとできる。従って、飯が不味なものになるのを防止でき、また米が浸漬中に腐敗するおそれもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の斜視図である。
【図2】図1の炊飯器の動作を説明するための図で、釜内へ水が供給された状態を示す図である。
【図3】図1の炊飯器に備えられる突出管とスライド管の拡大正面図である
【図4】図1の炊飯器の動作を説明するための図で、釜内で洗米が行われる状態を示す図である。
【図5】図1の炊飯器の動作を説明するための図で、釜内の水がサイフォン作用によって排出される状態を示す図である。
【図6】図1の炊飯器の動作を説明するための図で、釜内の水が所定の水位で停止した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る炊飯器1を図面にしたがって説明する。
符号3はヒーター等を具備する炊飯器本体を示し、この炊飯器本体3には釜5が収容される。また、炊飯器本体3には蓋7が設けられ、この蓋7は後述する閉鎖板8を有しており、釜5の上面開口を閉鎖する状態と開放する状態とに開閉動作できる。
【0013】
蓋7にはボス9が形成され、このボス9には雄ネジ11が形成されている。また、蓋7には貫通穴19が形成され、この貫通穴19はボス9に連続している。
符号15は開閉弁としての電磁弁を示し、この電磁弁15は雌ネジ17を有している。この雌ネジ17がボス9の雄ネジ11に螺合し、電磁弁15と貫通穴19とが連結している。電磁弁15には給水ホース21の一端が接続され、給水ホース21の他端は図示しない蛇口に接続されている。
また、電磁弁15は制御手段23に接続され、この制御手段23は電磁弁15を所定時間開いた後に閉じるように制御をおこなう。
また制御手段23にはタイマー25が接続されており、このタイマー25は制御手段23が始動する時間を設定する。
制御手段23は炊飯や保温を行う際に釜5を加熱するヒーターにも接続されている。従って、制御手段23は電磁弁15を制御する開閉弁制御手段と、ヒーターを制御するヒーター制御手段の両方の役割を果たす。
【0014】
符号27はノズル管を示し、このノズル管27の上端にはフランジ29が固定されている。ノズル管27はフランジ29を上にして貫通穴19に上下動自在に収容されている。
符号31は取付管を示し、この取付管31はフランジ33を有しており、フランジ33を境に上側部分が貫通穴19の下側開口へ挿入され固定されている。またフランジ33を境にして下側部分には雄ネジ35が形成されている。
貫通穴19に収容されたノズル管27は、貫通穴19に上下動自在に貫入されている。また、取付管31の上面とフランジ29の下面との間にはコイルスプリング37が備えられている。
【0015】
閉鎖板8は釜5の開口を閉鎖する形状に形成され、その外周部にはパッキン41が取り付けられている。また閉鎖板8の中心は中心穴43が形成されており、この中心穴43に取付管31の下側部分が嵌められている。そして、下側部分の雄ネジ35に固定ナット45が螺合されて、閉鎖板8が取付管31に取り付けられている。
また、閉鎖板8には、大径穴47が形成され、更に大径穴47より外周部へ寄った位置に小径穴49が形成されている。
【0016】
蓋7には縦穴51が形成され、この縦穴51は閉鎖板8の大径穴47に対向する位置に備えられている。縦穴51は下側が開口し、上側は閉鎖されている。また、蓋7には横穴53が形成され、この横穴53は縦穴51の途中部分に開口し、蓋7の側面に形成された嵌合凹部55に連通している。
また、蓋7には縦穴51より外周側へ寄った位置に小径の縦穴57が形成され、この縦穴57は閉鎖板8の小径穴49に対向する位置に備えられている。縦穴57は下側が開口し、上側は閉鎖されている。また、蓋7には小径の横穴59が形成され、この横穴59は縦穴57の途中部分に開口し、蓋7の側面に形成された小径の嵌合凹部61に連通している。
【0017】
符号63は取付管を示し、この取付管63はフランジ65を有しており、フランジ65を境に上側部分が縦穴51の下側開口へ挿入され固定されている。またフランジ65を境にして下側部分には雄ネジ67が形成され、この下側部分は閉鎖板8の大径穴47に嵌められている。そして、下側部分の雄ネジ67に固定ナット69が螺合されて、閉鎖板8が取付管63に取り付けられている。取付管63の下側部分にはネット71が取り付けられ、このネット71によって取付管63の下側開口が覆われている。
【0018】
符号73は球状の逆止弁を示し、この逆止弁73は取付管63の上側開口を閉鎖する状態に備えられている。取付管63には逆止弁73によって上側開口を閉鎖された状態でも、取付管63を介して釜5と横穴53とを連結させる空気流入穴75が形成されている。
【0019】
符号77は取付管を示し、この取付管77はフランジ79を有しており、フランジ79を境に上側部分が縦穴57の下側開口へ挿入され固定されている。またフランジ79を境にして下側部分には雄ネジ81が形成され、この下側部分は閉鎖板8の小径穴49に嵌められ、雄ネジ81に固定ナット83が螺合されて、閉鎖板8が取付管77に取り付けられている。
符号85は球状の逆止弁を示し、この逆止弁85は取付管77の上側開口を閉鎖する状態に備えられている。
【0020】
符号87は突出管を示し、この突出管87の上端部側は取付管77に挿入された状態で固定され、釜5の底側を向いて突出している。
図3に拡大して示すように、突出管87には目盛89が形成されており、この目盛89は後述するように米Rの量を示すものである。
突出管87の外周面にはOリング91、93が取り付けられ、更に突出管87の下端部側にはスライド管90が上下方向へスライド自在に外嵌めされて取り付けられている。Oリング91、93は突出管87の外周面とスライド管90の内周面との間に介在して、スライド管90は所望の位置で固定することができる。また、スライド管90の下端部には複数の空気穴95が形成されている。
【0021】
スライド管90の長さ寸法は、その基端部を目盛89に合わせると、その合わせた目盛89の米の量に対応する水位の高さに空気穴95が来るように設定されている。
突出管87とスライド管90とによって排水量規定管が構成されている。
【0022】
符号97は排水穴ベースを示し、この排水穴ベース97には嵌合凸部99、101が形成されている。排水穴ベース97には排水穴103、105が形成されている。排水穴103は嵌合凹部55の先端面と排水穴ベース97の背面に開口し、排水穴105は嵌合凹部61の先端面と排水穴ベース97の背面に開口している。排水穴ベース97には排水穴103、105にそれぞれ連通する排水ホース107、109が取り付けられている。
排水穴ベース97の嵌合凸部99、101を蓋7の嵌合凹部55、61に嵌合させると、横穴53と排水穴103、横穴59と排水穴105とがそれぞれ連通する。
なお、排水穴ベース97は蓋7に対し着脱自在であるため、取り外して洗浄することが可能である。
【0023】
次に、この炊飯器1の使用方法について説明する。
まず、例えば米R3合を洗わないで釜5に入れ、スライド管90をスライドさせて目盛89の米3合に対応する「3」を示す目盛にスライド管90の基端部を合わせる。突出管87の外周面とスライド管90の内周面との間には、Oリング91、93が介在しているので、スライド管90は不用意に動かない状態に固定される(図3参照)。
そして、蓋7を閉じて閉鎖板8が釜5の開口を閉鎖する。閉鎖板8に取り付けられたパッキン41が釜5の縁に密着して、釜5内は密閉された状態となる。
また、タイマー25を操作して、飯を炊き上げる日時、例えば翌朝6時に設定する。この状態では電磁弁15は閉じられた状態となっている。
【0024】
図2に示すように、翌朝、午前4時27分になると制御手段23からの指令により電磁弁15が開くように動作して、水が給水ホース21、電磁弁15を介して貫通穴19へ供給される。貫通穴19へ供給された水の圧力がフランジ29に加わり、コイルスプリング37を圧縮して、フランジ29と共にノズル管27が下降する。そして、ノズル管27から矢印で示すように水が噴射される。
【0025】
図4に示すように、ノズル管27から噴射された水によって釜5内は満たされ、水流によって水と共に米Rが撹拌されて洗米が行われる。ノズル管27は上記のように下降するので、水流は釜5の底まで十分に届くことになり、効率よく完全に洗米を行うことができる。
上記のように釜5内は密閉されているので、水が釜5の開口から漏れるのを完全に防止することができる。
【0026】
また、釜5内の水は取付管63、縦穴51、横穴53、排水穴103、排水ホース107を通って排出されて、釜5内の水が連続的に置換される。排水時においては、逆止弁73は水圧で押し上げられて、縦穴51の上端の内壁に圧接した状態となっている。従って、取付管63の上側開口は開放されている。
ネット71によって取付管63の下側開口が覆われているので、釜5内の米Rが水と一緒に排出されるのを防止できる。
なお、釜5内の水は、スライド管90、突出管87、縦穴57、横穴59、排水穴105、排水ホース109を通っても、排出される。このとき逆止弁85も逆止弁73と同様に開いている。
【0027】
電磁弁15が開いてから所定時間、例えば3分経過して午前4時30分になると、制御手段23からの指令によって電磁弁15が閉じられて、釜5内への水の供給が停止して、コイルスプリング37の圧縮が解除され、ノズル管27が上昇する。
釜5内への水の供給が停止すると釜5内の水圧が無くなるので、図5に示すように逆止弁73が閉じて、取付管63の上側開口を閉鎖する。
同図に示すように逆止弁73が閉じた後も、釜5内の水はサイフォン作用によってスライド管90、突出管87、縦穴57、横穴59、排水穴105、排水ホース109を通って排出される。なお、排水が行われているときには、空気流入穴75から釜5内へ空気が流入するので、排水が滞ることはない。
【0028】
上記のように排水は行われて水位が下がり、図6に示すように水面がスライド管90の空気穴95にかかると、空気が空気穴95からスライド管90内へ入る。これによりサイフォン作用による排水が停止する。排水が停止すると、逆止弁85が閉じられ、横穴59等に残った水が釜5へ逆流するのを阻止する。
前述のようにスライド管90の基端部を米3合に対応する「3」を示す目盛に合わせてあるので、釜5内の水位(水量)は米3合に対応する状態となる。前記したように逆止弁85によって水の逆流が阻止されるので、水位が変わってしまうのを防止することができる。
【0029】
そして、所定時間例えば、電磁弁15が閉じられてから40分後すなわち午前5時10分になると、制御手段23によって図示しないヒーターが所定時間作動させられ、炊飯が例えば50分間行われて、タイマー25によって設定した日時である翌朝、午前6時に飯を炊き上げることができる。なお、ヒーターが作動して釜5内の圧力がある程度上昇するまでは、逆止弁73は閉じられているので、米Rに圧力が加わり、飯をおいしく炊くことができる。
このように炊飯器1によれば、米Rを水に浸漬する時間を常に適切なものとでき、飯が不味なものなるのを防止でき、また米Rが浸漬中に腐敗するおそれもなくなる
【0030】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、翌朝6時に飯が炊き上がるように設定する場合を示したが、ウイークリータイマーを備えて、翌日に限らず数日後の所定時刻、例えば帰宅日時に飯が炊き上がるように設定してもよく、このような場合でも米を水に浸漬する時間を適切なものとできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は炊飯器の製造業において利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…炊飯器 3…炊飯器本体 5…釜 7…蓋
8…閉鎖板 9…ボス 11…雄ネジ
15…電磁弁 17…雌ネジ 19…貫通穴
21…給水ホース 23…制御手段
25…タイマー 27…ノズル管 29…フランジ
31…取付管 33…フランジ 35…雄ネジ
37…コイルスプリング 41…パッキン 43…中心穴
45…固定ナット 47…大径穴 49…小径穴
51…縦穴 53…横穴 55…嵌合凹部
57…縦穴 59…横穴 61…嵌合凹部
63…取付管 65…フランジ 67…雄ネジ
69…固定ナット 71…ネット 73…逆止弁
75…空気流入穴 77…取付管 79…フランジ
81…雄ネジ 83…固定ナット 85…逆止弁
90…スライド管 87…突出管 89…目盛
91、93…Oリング 95…空気穴
97…排水穴ベース 99、101…嵌合凸部
103、105…排水穴 R…米

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体と、前記炊飯器本体に収容される釜と、前記釜を加熱するためのヒーターと、前記炊飯器本体に設けられ前記釜の上面開口を閉鎖する状態と開放する状態とに開閉動作できる蓋とを有し、前記蓋を貫通して釜内へ入り込む給水管と、前記給水管に接続された開閉弁と、前記開閉弁を所定時間開いた後に閉じる開閉弁制御手段と、前記開閉弁制御手段が始動する時間を設定するタイマーと、前記給水管から水が釜内へ供給され洗米を行う際に釜内の水を排出する排水管と、前記給水管からの水の供給が停止した後に予め設定した水量となるまで釜内の水をサイフォン作用によって排出する排水量規定管と、前記ヒーターを所定時間作動させるヒーター制御手段を具備することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載した炊飯器において、排水量規定管は釜内に釜底側を向いて突出し、且つ釜外に連通する連通管と接続された突出管と、前記突出管に対し上下方向にスライド自在に取り付けられ、且つ所望の位置で固定できるスライド管とから成ることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項2に記載した炊飯器において、突出管には炊く米の量に対応する水位を示す目盛が設けられ、前記目盛にスライド管の基端部を合わせることにより水位を設定できることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項2または3に記載した炊飯器において、突出管または排水管の途中には排水が釜内へ逆流するのを防止する逆止弁を設けたことを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130614(P2012−130614A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287312(P2010−287312)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(301040062)東静調理機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】