説明

炊飯器

【課題】復水器内に空気を送る送風手段、例えば乾燥用の送風ファンまたは送風ポンプを設け、この送風手段から復水器内に空気を送ることにより、復水経路または/及び復水器内での水の腐敗を防止したり、或いは通常の蒸気有り炊飯時に排出される蒸気の温度を下げる炊飯器を提供すること。
【解決手段】内鍋を収納する内ケースとの間に空間部を有する本体と、前記本体の上部開口を開閉自在に覆蓋し、且つ炊飯時に発生する蒸気を外部へ排出する蒸気排出通路を有する蓋体と、を備えた炊飯器であって、前記蒸気排出通路から分岐する蒸気導出通路と、前記蒸気導出通路に連通され、炊飯時に発生する蒸気を導入して復水する復水器と、前記復水器内に空気を送る送風手段と、を有し、前記復水器を乾燥または冷却する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気レス炊飯機能を有する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に炊飯器は、ワークコイル等の加熱手段を持ち、これら加熱手段を駆使して自動的に炊飯及び保温を行いユーザーに最適なご飯等を提供する非常に便利な器具として広く知られている。
【0003】
即ち、炊飯器は、例えばお米に充分な水を吸水させるための吸水工程、火力をあげてお米を炊き上げるための昇温工程及び昇温工程後の蒸らし工程からなる炊飯工程と、炊飯工程後の保温工程を有し、各工程では、ワークコイル等の加熱手段が内鍋の温度を検知するセンターセンサの検出信号に基づいて制御され、最適な各工程制御が行われる。
【0004】
そして、前記昇温工程では、内鍋内の水が沸騰し、沸騰した蒸気は、蓋体に設けられる蒸気排出通路を介して蓋体の上面に設けられる蒸気排出口から外部へ排出されることになる。
【0005】
ところで、炊飯器を床等の低いところにおいて使用する場合があり、そのような場合、炊飯中に蒸気排出口から排出される蒸気に例えば幼児等が触れると火傷する恐れが生じる。そのような弊害を防止するためのものとして、炊飯器内に復水器を設け、炊飯中に発生する蒸気を復水器に送り、蒸気を復水して外部に排出しないようにする所謂蒸気レス炊飯機能を有する炊飯器が提案されている。
【0006】
一例として図14に本出願人が提示したものの概略図を示す。その概略を説明すると、内鍋1内は、蓋体に形成される蒸気排出通路2を介して蓋体の上面に設けられる蒸気排出口3に連通されている。蒸気排出通路2の途中から蒸気導出通路4が分岐されており、その蒸気導出通路4の他端は、炊飯器の本体内に設けられる復水器5に連結される。この復水器5には、炊飯を制御する発熱素子等を冷却する冷却ファン6からの冷却風が送られるようになっており、復水器5を外部から冷却する。
【0007】
前記蒸気排出通路2には、開閉弁7が設けられており、この開閉弁7を切り換えることにより、通常の蒸気有り炊飯または蒸気レス炊飯が行われる。即ち、表示部でユーザーが蒸気レス炊飯を選択すると、開閉弁7が閉鎖され、炊飯中に発生する内鍋1からの蒸気Vは、矢印で示すように蒸気排出通路2及び蒸気導出通路4を通って復水器5に導入され、復水される。復水した水は、復水器5の下方に設けられる復水回収タンク8に回収される。
【0008】
そして、表示部でユーザーが蒸気有り炊飯を選択すると、開閉弁7が開放し、炊飯中に発生する内鍋1からの蒸気Vは、排気抵抗が少ない蒸気排出通路2を通って蒸気排出口3から外部に排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
ところで、上記従来のものは、炊飯器の使用頻度が低い場合、或いは例えば湿度が高い使用環境によっては復水経路または/及び復水器内に付着した水が腐敗し、衛生上問題が生じたり、或いは通常の蒸気有り炊飯を行う場合、排出される蒸気の温度が高いと上記したように例えば火傷等の問題が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−140836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、復水器内に空気を送る送風手段、例えば乾燥用の送風ファンまたは送風ポンプを設け、この送風手段から復水器内に空気を送り乾燥させることにより、復水経路または/及び復水器内での水の腐敗を防止したり、或いは通常の蒸気有り炊飯時に排出される蒸気の温度を下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0013】
請求項1に係る発明では、内鍋を収納する内ケースとの間に空間部を有する本体と、 前記本体の上部開口を開閉自在に覆蓋し、且つ炊飯時に発生する蒸気を外部へ排出する蒸気排出通路を有する蓋体と、を備えた炊飯器であって、前記蒸気排出通路から分岐する蒸気導出通路と、前記蒸気導出通路に連通され、炊飯時に発生する蒸気を導入して復水する復水器と、前記復水器内に空気を送る送風手段と、を有し、前記復水器を乾燥する構成。
【0014】
請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明に加え、加熱手段を有し、前記送風手段からの空気を加熱する構成。
【0015】
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に係る発明に加え、前記送風手段からの空気は、前記蒸気排出通路にも送風可能である構成。
【0016】
請求項4に係る発明では、請求項1乃至請求項3に係る発明に加え、通路切替手段を有し、当該通路切替手段により前記炊飯時に発生する蒸気の切り替えと、前記送風手段からの空気の切り替えとを行う構成。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、復水器内に空気を送る送風手段を設け、この送風手段から復水器内に空気を送り復水器内を乾燥することにより、付着した水滴の腐敗を防止することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、送風手段から送られる空気を加熱して温風にすることにより、請求項1に係る発明の乾燥効果をより高めることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、送風手段からの空気を蒸気排出通路に送ることにより、蒸気排出通路内を乾燥し、蒸気排出通路内に付着した水滴の付着を防止することができる。また、通常の蒸気有り炊飯時に送風手段からの空気を蒸気排出通路に送ることにより、蒸気排出口から外部に排出される蒸気の温度を下げることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、通路切替手段により蒸気の切り替えと、送風ファンからの空気の切り替えとを行うことにより、切替構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】復水器及び乾燥用ファンをセットした状態を示す炊飯器の断面図
【図2】復水器の斜視図
【図3】復水器の概略断面図
【図4】炊飯器の表示部の正面図
【図5】制御装置の概略ブロック図
【図6】復水器の冷風乾燥時の概略図
【図7】復水器の温風乾燥時の概略図
【図8】復水器の他の冷風乾燥時の概略図
【図9】蒸気排出通路の冷風乾燥時の概略図
【図10】通路切替手段の組立前の断面図及び斜視図
【図11】通路切替手段のいろいろな時期の連通状態を示す概略図
【図12】本願発明の乾燥時の一例を示すフローチャート図
【図13】本願発明の乾燥時の他の一例を示すフローチャート図
【図14】従来の炊飯器の復水構造の概略図
【実施例】
【0022】
図1は復水器及び乾燥用ファンをセットした状態を示す炊飯器の縦断面図であり、図2、図3に復水器を示し、図4に表示部を示し、図5に制御装置のブロック図を示し、図6〜図9に乾燥等の各例を示す。なお、表示部側を前方側と呼び、その反対側のヒンジ部側を後方側と呼ぶ。
【0023】
炊飯器は、本体20と、この本体20の上部開口を開閉する蓋体21とを備え、蓋体21はヒンジ部22を介して本体20に開閉自在に支持される。
【0024】
本体20は、合成樹脂製の一体成形品からなる外ケース23を有し、この外ケース23の内部には、内部空間24を有して保護枠である内ケース25が設けられ、この内ケース25内には、陶磁器製の土鍋からなる内鍋26が着脱自在にセットされる。前記内ケース25は、例えばポリエチレンテレフタレート等の耐熱性の合成樹脂製のもので、その底部中央にはサーミスタからなるセンターセンサ27を臨ませるためのセンサ挿入孔25aを有する。なお、内鍋26は、金属製のものであってもよい。
【0025】
内ケース25の上端は外ケース23の上端と肩部材28を介して一体に結合され、外ケース23、内ケース25、及び肩部材28に囲まれた内部に前記内部空間24が形成されることになる。
【0026】
前記内ケース25の底部及び側部の外側には、内鍋26を誘導加熱する底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30が設けられる。これら底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30は、内ケース25の底部、及び底部から周側部に至る湾曲部の各位置に、内ケース25の底部中央を中心として同心円状にそれぞれ設けられる。
【0027】
これら底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30の外側には合成樹脂製のコイル支持台31が設けられ、このコイル支持台31がネジ等で内ケース25に取り付けられることにより、底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30は図示する位置に位置決め固定される。また、内ケース25の上部の外周側部には、保温ヒータ32が設けられる。
【0028】
前記内鍋26は、焼成セラミックスやガラスなどの陶磁器製のもので、底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30のそれぞれに対向する箇所には図示しない金属被膜からなる底部発熱体及び側部発熱体が設けられ、これら発熱体は、炊飯スイッチ46aが入れられると底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30により誘起される渦電流に起因したジュール熱により加熱され、内鍋26を加熱する。
【0029】
そして、本体20の内部空間24の図1に表示されない箇所には、底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30への通電制御を行うためのインバータ等を有する電源回路が搭載された図示しない電源基板及びインバータ等の発熱素子を冷却するための冷却用フアンが設けられる。
【0030】
前記蓋体21は、外カバー35及び内カバー36を有し、両カバー35、36はビス等により一体的に固定され、内部に断熱空間37が形成される。そして、内カバー36の内方には、放熱板38及び内蓋39が間を空けて取り付けられ、前記放熱板38には蓋ヒータ40が設けられ、内鍋26の内容物を上方より加熱する。
【0031】
蓋体21には、蒸気排出通路41が形成される。この蒸気排出通路41の一端は、放熱板38及び内蓋39に設けられる開口38a及び39aを介して内鍋26内に連通し、その他端は、通路途中であり、後記する分岐部41aの下流側に設けられる調圧弁42を介して外カバー35に設けられる蒸気排出口43に連通しており、内鍋26内の蒸気圧が所定以上になると調圧弁42が開放されて余分な蒸気は蒸気排出口43より外部に排出される。
【0032】
また、蓋体21の上部前方側には、表示部45が形成される。この表示部45には、図4に示すように、各種スイッチ46として炊飯スイッチ46a、保温スイッチ46b、白米、早炊き、無洗米等の各種メニューを設定するメニュースイッチ46c、時間を設定するタイマースイッチ46d、設定を取り消す取消しスイッチ46e、予約スイッチ46f、本実施例で用いられる蒸気レス炊飯と通常の蒸気有り炊飯とを切り換える蒸気レススイッチ46g、後記復水器50を乾燥する時に手動で選択される乾燥スイッチ46h、並びに液晶表示部47が設けられる。
【0033】
また、表示部45下方の蓋体21内には、基板収納室49が形成されるとともに、この基板収納室49内には、炊飯制御、保温制御、タイマ制御などを行うためのマイクロコンピュータ48a等が搭載される制御回路基板48が収容される。そして、このマイクロコンピュータ48aは、センターセンサ27、底部ワークコイル29、側部ワークコイル30、保温ヒータ32、各種スイッチ46、及び復水用冷却ファン55に電気的に接続されている。
【0034】
図5にそのブロック図を示す。即ち、制御装置であるマイクロコンピュータ48aには、乾燥スイッチ46h及び蒸気レススイッチ46g等の各種スイッチ46からの操作信号及びセンターセンサ27や後記の温度センサ56で検出される検出信号が入力され、マイクロコンピュータ48aは、これら入力信号に基づいて底部ワークコイル29、側部ワークコイル30、乾燥用ファン58等の通電を制御するとともに、液晶表示部47の表示内容を切換える。
【0035】
本願発明の復水器50等について説明する。前記本体20の後方側の内部空間24には、復水器50が設けられる。復水器50は、その斜視図を図2に示すように外周に複数のフィン51を有する縦長の部材で、図3に示すようにその内部にジクザク状通路52が形成されるとともに、その上方には導入用パイプ53が、その下方には排出用パイプ54が連結され、導入用パイプ53から蒸気Sが導入され、内部で復水され、復水された水Wは、排出用パイプ54より下方に配置される復水回収タンク59に排出される。
【0036】
復水器50には、必要に応じて温度センサ56が設けられる。また、復水器50の外側の側面近傍には、復水器50を外部から冷却するための復水用冷却ファン55が設けられ、例えば復水器50の温度を温度センサ56により検知し、復水器50の温度が所定温度より高い時、復水用冷却ファン55により復水器50に風を送り、復水器50を外部から冷却してその復水効率を向上させる。なお、この復水用冷却ファン55は、上記した発熱素子等を冷却する冷却ファンの風を導くことにより省略することもできる。また、この復水用冷却ファン55は、温度センサ56の検知信号に基づくことなく、例えば蒸気レス炊飯が開始されると同時、或いは昇温工程が開始されると回動するようにしてもよい。
【0037】
前記復水器50の導入用パイプ53には、蒸気導出通路57の一端が連結されるとともに、蒸気導出通路57の他端は、上記した蒸気排出通路41の分岐部41aに連通される。また、蒸気導出通路57は、本体20内に位置する部分と、蓋体21内に位置する部分とからなり、蓋体21を開放すると、両部分は分離部57aで分離されるが、蓋体21を閉じると両部分は分離部57aで連通される。
【0038】
前記蒸気導出通路57の分岐部41aと分離部57aとの間の通路には、送風手段である乾燥用ファン或いは乾燥用ポンプ58(以下においては乾燥用ファン58として説明する。)が連結され、乾燥用空気を蒸気導出通路57より復水器50内に導入する。この乾燥用ファン58は、空気を送る送風ファンであり、場合によっては送風ポンプとも呼ばれるものである。この乾燥用ファン58により復水器50内に空気を送ることにより、蒸気導出通路57及び復水器50内に付着した水滴を乾燥することができ、更には蒸気導出通路57及び復水器50自体を冷却する。
【0039】
前記復水器50の下方には、復水回収タンク59が設けられ、復水器50内で復水された水は、排出用パイプ54よりこの復水回収タンク59内に回収される。また、復水器50内を乾燥した空気は、排出用パイプ54より復水回収タンク59に送られ、復水回収タンク59内に溜まった水を冷却した後、本体20に設けられる図示しない排出口より外部に排出される。
【0040】
図1の構造の概略を図6に示す。図6は復水器50の冷風乾燥時の例を示し、各通路に設けた通路切替手段である弁、例えば蒸気排出通路41上の弁V1を閉、蒸気導出通路57上の弁V2を閉、送風通路61上の弁V3を開にすることにより、乾燥用ファン58からの冷風を送風通路61及び蒸気導出通路57を介して復水器50内に送り、内部に付着した水滴を乾燥する。
【0041】
なお、図6に示すように、乾燥用ファン58の冷風を基板収納室49に送ってもよい。このようにすることにより、表示部45の曇りを防止することができ、また、制御回路基板48が冷却されるため制御がより正確になり、検知精度が向上する。この乾燥用ファン58の冷風を基板収納室49に送る構成は、以下の全ての例に適用可能である。
【0042】
図7に復水器50の温風乾燥時の例を示す。この例は、乾燥用ファン58と蒸気導出通路57との間の送風通路61にヒータ60を設け、復水器50に温風を送るものである。このような構成にすることにより復水器50の乾燥効率をより高めることができる。この例の場合は、図6のものと同様に各通路に設けた弁、例えば蒸気排出通路41上の弁V1を閉、蒸気導出通路57上の弁V2を閉、送風通路61上の弁V3を開にすることになる。
【0043】
上記ヒータ60を用いる場合、復水器50の温度が上昇するため、上記温度センサ56により復水器50の温度を監視し、乾燥開始後に復水器50の温度が所定温度、例えば80℃に達したら、その後の乾燥用ファン58の動作を所定時間、例えば10分にして所定時間が経過したら乾燥用ファン58を停止するとよい。このように乾燥用ファン58を所定温度後においては所定時間のみ動作させることにより、不必要な電力の消費をなくすことができる。
【0044】
また、上記ヒータ60を用いる場合、復水器50の温度が上昇するため、上記温度センサ56により復水器50の温度を監視し、復水器50の温度が高い場合には、ヒータ60への通電率を下げたり、或いは乾燥用ファン58の回転数を上げたり、或いはヒータ60への通電率を下げるとともに、乾燥用ファン58の回転数を上げたりし、復水器50の温度が低い場合には、ヒータ60への通電率を上げたり、或いは乾燥用ファン58の回転数を下げたり、或いはヒータ60への通電率を上げるとともに、乾燥用ファン58の回転数を下げたりするとよい。このようにすることにより、不必要な電力の消費をなくすことができる。
【0045】
蒸気レス炊飯を行う場合、1回の炊飯で略100ccもの水がでるため、乾燥用ファン58による乾燥時期は、主として蒸気レス炊飯を選択した場合の炊飯工程の終了後の例えば保温工程中に行うとよい。その動作は、図4において蒸気レススイッチ46gが押されると、例えば図12及び図13のフローチャートに示すように、蒸気レス炊飯工程の終了後の保温工程中に自動的に行われるようにプログラムすればよい。このような自動乾燥機能を備えることにより、確実に乾燥を行うことができる。
【0046】
また、図4で示す乾燥スイッチ46hを設けることにより、ユーザーの好みのタイミングで行うようにしてもよいし、1回ごとの乾燥ではなく、例えば図13のフローチャートに示すように、複数回、例えば5回蒸気レス炊飯が行われると自動的に行うようにしてもよい。
【0047】
また、復水器50を乾燥させる時間を、例えば、乾燥用ファン58の動作時間を乾燥開始後所定時間、例えば図12のフローチャートに示すように、30分のみ行うように設定するとよい。このように乾燥用ファン58を所定時間のみ動作させることにより、不必要な電力の消費をなくすことができる。
【0048】
ところで、蒸気レス炊飯を行うと復水器50の温度は高くなり、復水器50の温度が高い状態で続けて蒸気レス炊飯を行うと復水器50で十分な復水が行われなくなる。このように復水器50の温度が所定値以上の蒸気レス炊飯の場合には、蒸気レス炊飯が開始された時の吸水工程で乾燥用ファン58を駆動し、復水器50に冷風を送って復水器50を冷却するように設定するとよい。このように設定することにより、例え復水器50の温度が高い場合であっても、適正な復水を効率よく行うことができるようになる。
【0049】
また、蒸気レス炊飯中に乾燥用ファン58を動作させてもよい。この場合、復水用冷却ファン55も作動している。このような両ファン駆動にすることにより、復水器50での復水効率を向上することができるとともに、復水の温度をも下げることができる。
【0050】
そして、乾燥用ファン58による復水器50内の乾燥時に、同時に復水用冷却ファン55を作動させ、復水器50の外部からも風を送ることにより復水器50の乾燥効率をより向上することができる。また、復水用冷却ファン55を乾燥用としても用いることにより、例えば乾燥用ファン58を小型化したり、或いは省略することができるようになり、それだけコストを低減することができる。
【0051】
図8及び図9に図6の変形例を示す。この例は、乾燥用ファン58からの送風通路61を分岐部41aより内鍋26側である上流側に連通ものであり、図8は、復水器の冷風乾燥時の例を示し、図9は、蒸気排出通路41の冷風乾燥時の例を示す。
【0052】
そして、図8の場合には、各通路に設けた弁、例えば蒸気排出通路41上の弁V1を閉、蒸気導出通路57上の弁V2を開、送風通路61上の弁V3を開にすることにより、乾燥用ファン58からの冷風を蒸気排出通路41及び蒸気導出通路57を介して復水器50内に導入して、復水器50内に付着した水滴を乾燥する。
【0053】
そして、図9の場合には、各通路に設けた弁、例えば蒸気排出通路41上の弁V1を開、蒸気導出通路57上の弁V2を閉、送風通路61上の弁V3を開にすることにより、乾燥用ファン58からの冷風を蒸気排出通路41に送り、蒸気排出通路41内に付着した水滴を乾燥する。なお、図9の場合には、通常の蒸気有り炊飯中に乾燥用ファン58を駆動し、蒸気排出通路41内に冷風を送ることにより、蒸気排出通路41を介して蒸気排出口43から外部に排出される蒸気を冷却することができ、その結果、通常の蒸気有り炊飯での安全性を高めることができる。
【0054】
このように、図8及び図9の場合は、各弁を切り換えることにより、復水器50及び蒸気排出通路41の乾燥と、通常の蒸気有り炊飯時に外部に排出される蒸気の冷却を行うことができるようになる。また、図8及び図9の例のものにも図7のヒータ60を適用してもよく、更には、同時に復水用冷却ファン55を作動させ、復水器50の外部からも風を送ることにより復水器50の乾燥効率をより向上させるようにしてもよい。
【0055】
ところで、上記図6乃至図9のものは各通路にそれぞれ弁V1〜V3を設けるものとして説明したが、それら弁V1〜V3を1つにまとめた通路切替手段であるスプール弁70を用いた例を図10及び図11に示す。図10は、組み立てる前のスプール弁70の断面図及び斜視図であり、図11は、スプール弁70の各機能選択時の各孔の連通状態を示す概略図である。
【0056】
スプール弁70は、外筒部71及び内筒部72を有する。外筒部71は、一端部が閉鎖された閉鎖端71aと、他端部が開放された開放端71bを有し、内部に筒状の内空間71cを有する筒状の部材であり、その円周上には、図10(B)に示すように、それぞれ孔を有する4個の筒状体73・・・が軸方向に沿って一体に形成される。なお、それら4個の筒状体73及び孔は、全て同一形状が好ましいが同一形状でなくてもよい。図には同一形状のものを示し、各孔を閉鎖端71aから開放端71bに向かって孔P、孔Q、孔R、孔Sと呼ぶ。
【0057】
前記内筒部72は、内部に筒状の閉鎖空間72aを有する筒状の部材であり、一方の端部の近傍部分の外周上と、他方の端部より内側の部分の外周上にはそれぞれ環状のシール材74、74が設けられ、前記他方の端部側のシール材74より外側の部分はつまみ部75とされる。
【0058】
内筒部72の円周上は、軸方向に見て外周が5等分、即ち72度ずつに区分され、外周上にそれぞれ軸方向に沿う第1領域乃至第5領域を形成しており、図11に示すように、最初の72度の外周範囲である第1領域には、孔qと孔sとが軸方向に所定距離離れて設けられ、次の72〜144度の外周範囲である第2領域には、孔qと孔rとが軸方向に所定距離離れて設けられ、次の144〜216度の外周範囲である第3領域には、孔pと孔sとが軸方向に所定距離離れて設けられ、次の216〜288度の外周範囲である第4領域には、孔pと孔rとが軸方向に所定距離離れて設けられ、最後の288〜360度の外周範囲である第5領域には、孔が設けられていない。
【0059】
そして、内筒部72は、矢印で示すように外筒部71内に挿入される。内筒部72が外筒部71内に挿入されると2つのシール材74は外筒部71内に挿入されるとともに、つまみ部75は外筒部71外に出る形態になり、つまみ部75を例えばモータにより、5段階に回動自在に設定する。その選択は、例えば図4の蒸気レススイッチ46g、乾燥スイッチ46hが選択された時に行うようにすればよい。
【0060】
図10のものは第3領域の場合の組合せを示す。なお、図10(A)のものは外筒部71と内筒部72とのそれぞれの孔の位置が90度ずれているが、見やすいように表記したものであり、組み立てられた後では実際には孔Pと孔pとが一致し、孔Sと孔sとが一致する図10(B)のような組合せである。そして、図11のものも同様で、実際には外筒部71と内筒部72とのそれぞれの孔の位置は90度ずれて表記しており、組み立てられた後では実際には、例えば図11(A)では、孔Qと孔qとが一致し、孔Sと孔sとが一致して、斜線の領域で矢印で示すように蒸気が流れることになる。そして、図11(B)〜(E)においても同様である。
【0061】
図11のものを説明する。図11(A)は、復水器50へ蒸気を送る蒸気レス炊飯時のスプール弁70の各孔の位置であり、この内筒部72の第1領域の場合には、外筒部71の孔Qと孔Sとが内筒部72の孔qと孔sとに連通し、図10に示すように内鍋26からの蒸気は復水器50に向かう。
【0062】
図11(B)は、蒸気排出口43へ蒸気を送る蒸気有り炊飯時のスプール弁70の各孔の位置であり、この内筒部72の第2領域の場合には、外筒部71の孔Qと孔Rとが内筒部72の孔qと孔rとに連通し、図10に示すように内鍋26からの蒸気は蒸気排出口43に向かう。
【0063】
図11(C)は、復水器50へ乾燥用ファン58からの風を送る復水器乾燥時のスプール弁70の各孔の位置であり、この内筒部72の第3領域の場合には、外筒部71の孔Pと孔Sとが内筒部72の孔pと孔sとに連通し、図10に示すように乾燥用ファン58からの風は復水器50に向かう。
【0064】
図11(D)は、蒸気排出口43へ乾燥用ファン58からの風を送る蒸気排出通路41乾燥時のスプール弁70の各孔の位置であり、この内筒部72の第4領域の場合には、外筒部71の孔Pと孔Rとが内筒部72の孔pと孔rとが連通し、図10に示すように乾燥用ファン58からの風は蒸気排出口43に向かう。
【0065】
図11(E)は、スプール弁70全閉時の各孔の位置、即ち内筒部72の第5領域の位置であり、いずれの孔も連通しない。
【0066】
なお、図10及び図11に示すスプール弁70は、図8及び図9に対応するものであり、図6及び図7の場合には、図11(D)の第4領域が不要になる。また、図9のものにおいて、上記したように、蒸気有り炊飯中に乾燥用ファン58を動作し、蒸気排出通路41内に冷風を送って蒸気を冷却する場合には、図11(B)の第2領域の孔は、孔p、孔q、孔rになり、更に、蒸気レス炊飯中に乾燥用ファン58を動作させて復水器50での復水効率を向上させる場合には、図11(A)の第1領域の孔は、孔p、孔q、孔sになる。
【0067】
このように1個のスプール弁で各通路を切替可能にすることにより、通路切替手段の構成を簡略且つコンパクトにすることができる。
【0068】
次に、蒸気レス炊飯後の保温工程中に所定時間乾燥用ファン58を作動して乾燥を行う例の制御を図12のフローチャートで説明する。蒸気レス炊飯工程では、ステップS1で吸水工程が、ステップS2で昇温工程が、ステップS3で炊き上げ工程が、ステップS4でむらし工程がそれぞれ実行され、炊飯が終了するとステップS5でブザーで報知する。
【0069】
炊飯工程が終了すると、保温工程が開始され、ステップS1で乾燥タイマーがスタートし、次いでステップS2で乾燥用ファン58がオンする。乾燥用ファン58がオンするとステップS3で内鍋26の温度が70℃以上かが判定され、70℃未満の場合には、ステップS4で底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30を60%の出力で且つデューティー比1/16によるON制御で制御し、ステップS5で蓋ヒータ40をデューティー比3/16によるON制御で制御し、ステップS6で保温ヒータ32をデューティー比6/16によるON制御で制御し、70℃以上の場合には、ステップS7で底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30をオフし、ステップS8で蓋ヒータ40をデューティー比2/16によるON制御で制御し、ステップS9で保温ヒータ32をデューティー比4/16によるON制御で制御する。
【0070】
その後、ステップS10で乾燥時間が30分経過したかが判定され、30分が経過していなければステップS2に戻り、30分が経過していればステップS11で乾燥用ファン58をオフして保温を続行することになる。
【0071】
次に、蒸気レス炊飯を所定回数行った後に乾燥用ファン58を作動して乾燥を行う制御の例を、図13のフローチャートで説明する。蒸気レス炊飯工程では、炊飯工程が開始されるとステップS1で炊飯回数が1プラスされ、ステップS2で吸水工程が、ステップS3で昇温工程が、ステップS4で炊き上げ工程が、ステップS5でむらし工程がそれぞれ実行され、炊飯が終了するとステップS6でブザーで報知する。
【0072】
炊飯工程が終了すると、保温工程が開始され、ステップS1で炊飯回数が5回かが判定され、5回未満の場合にはステップS4に進み、5回以上の場合にはステップS2で乾燥タイマーがスタートし、次いでステップS3で乾燥用ファン58がオンする。乾燥用ファン58がオンするとステップS4で内鍋26の温度が70℃以上かが判定され、70℃未満の場合には、ステップS5で底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30を60%の出力で且つデューティー比1/16によるON制御で制御し、ステップS6で蓋ヒータ40をデューティー比3/16によるON制御で制御し、ステップS7で保温ヒータ32をデューティー比6/16によるON制御で制御し、70℃以上の場合には、ステップS8で底部ワークコイル29及び側部ワークコイル30をオフし、ステップS9で蓋ヒータ40をデューティー比2/16によるON制御で制御し、ステップS10で保温ヒータ32をデューティー比4/16によるON制御で制御する。
【0073】
その後、ステップS11で炊飯回数が5回かが判定され、5回未満の場合にはステップS4に進み、5回以上の場合にはステップS12で乾燥時間が30分経過したかが判定され、30分が経過していなければステップS3に戻り、30分が経過していればステップS13で炊飯回数をリセットし、ステップS14で乾燥用ファン58をオフして保温を続行することになる。
【0074】
本願発明は、上記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であり、例えばワークコイルはヒータ式であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
20…本体 21…蓋体
22…ヒンジ部 23…外ケース
24…内部空間 25…内ケース
25a…センサ挿入孔 26…内鍋
27…センターセンサ 28…肩部材
29…底部ワークコイル 30…側部ワークコイル
31…コイル支持台 32…保温ヒータ
35…外カバー 36…内カバー
37…断熱空間 38…放熱板
38a、39a…開口 39…内蓋
40…蓋ヒータ 41…蒸気排出通路
41a…分岐部 42…調圧弁
43…蒸気排出口 45…表示部
46…各種スイッチ 46a…炊飯スイッチ
46b…保温スイッチ 46c…メニュースイッチ
46d…タイマースイッチ 46e…取消しスイッチ
46f…予約スイッチ 46g…蒸気レススイッチ
46h…乾燥スイッチ 47…液晶表示部
48…制御回路基板 48a…マイクロコンピュータ
49…基板収納室 50…復水器
51…フィン 52…ジクザク状通路
53…導入用パイプ 54…排出用パイプ
55…復水用冷却ファン 56…温度センサ
57…蒸気導出通路 57a…分離部
58…乾燥用ファン 59…復水回収タンク
60…ヒータ 61…送風通路
70…スプール弁 71…外筒部
71a…閉鎖端 71b…開放端
71c…内空間 72…内筒部
72a…閉鎖空間 73…筒状体
74…シール材 75…つまみ部
P,Q,R,ステップS…孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋を収納する内ケースとの間に空間部を有する本体と、
前記本体の上部開口を開閉自在に覆蓋し、且つ炊飯時に発生する蒸気を外部へ排出する蒸気排出通路を有する蓋体と、を備えた炊飯器であって、
前記蒸気排出通路から分岐する蒸気導出通路と、
前記蒸気導出通路に連通され、炊飯時に発生する蒸気を導入して復水する復水器と、
前記復水器内に空気を送る送風手段と、を有し、前記復水器を乾燥することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
加熱手段を有し、前記送風手段からの空気を加熱することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記送風手段からの空気は、前記蒸気排出通路にも送風可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
通路切替手段を有し、当該通路切替手段により炊飯時に発生する蒸気の切り替えと、前記送風手段からの空気の切り替えとを行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−143341(P2012−143341A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2991(P2011−2991)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】