説明

炊飯器

【課題】蓋の露付きを防止するだけの少ない電力消費量で保温して、省エネルギー性を向上した保温機能を備えた炊飯器を提供できる。
【解決手段】本体1の内壁を構成し内部が真空層6hで構成した二重構造の真空容器6と、真空容器6に収納する内釜2と、本体1と内釜2を覆う蓋体31と、内釜2を加熱する加熱手段9と、内釜2の底面の温度を検出してご飯の温度を検出する温度センサ16と、温度センサ16の検出温度に応じて加熱手段9に電力を供給する制御手段5とを備え、制御手段5は、保温動作を設定した時に、加熱手段9には電力を供給しないで、内釜2内のご飯の温度を検出して、該温度が特定温度以下になると前記保温動作を停止するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に係り、特に保温機能を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の保温機能を備えた炊飯器においては、長時間に亘り高い温度でご飯を保温するとご飯の変色やご飯の乾燥が発生するといった不具合や、高い温度を維持するために多くの電力を必要とする不具合があった。また、低い温度で保温すると腐敗菌によってご飯が悪臭を発生したり腐敗したりするという不具合があった。
【0003】
そのため近年は、このような不具合を対策した方法として特許文献1に示すように、低い温度で一定時間保温した後に高い温度で加熱する制御を繰り返して保温を行う米飯保温容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−299168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ご飯を美味しく食べる要求は強くなっており、保温したご飯でも炊きたて同様に美味しく食べられることが求められている。
【0006】
それに加えて、省エネルギーに関心が高まっている。
【0007】
上記した特許文献1に示されているものは、ご飯を保温性の良い断熱構造で覆っていないため、保温中に頻繁にご飯を加熱する必要が生じ、ご飯が少なからず乾燥したり、多くの電力が必要になったりする問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1では、本体の内壁を構成し内部が真空層で構成した二重構造の真空容器と、該真空容器に収納する内釜と、前記本体と前記内釜を覆う蓋体と、前記内釜を加熱する加熱手段と、前記内釜の底面の温度を検出してご飯の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出温度に応じて前記加熱手段に電力を供給する制御手段とを備え、該制御手段は、保温動作を設定した時に、前記加熱手段には電力を供給しないで、前記内釜内のご飯の温度を検出して、該温度が特定温度以下になると前記保温動作を停止するものとした。
【0009】
また、請求項2では、前記内釜の上方に結露を防止するヒータを設け、前記保温動作時に前記ヒータに通電するものとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炊飯後のご飯からの放熱を抑えて、保温動作中のご飯を、少ない消費電力で美味しく暖かい状態で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施例の炊飯器の断面を示す図である。
【図2】一実施例の炊飯器の操作表示部を示す図である。
【図3】一実施例の炊飯器の真空容器の断面図である。
【図4】一実施例の炊飯器の制御系の説明ブロック図である。
【図5】一実施例の炊飯器の操作表示部の保温動作時の表示を説明する動作遷移図である。
【図6】一実施例の炊飯器の特定保温動作の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例について上記した図1から図6に従って説明する。
【0013】
図1の炊飯器の断面図において、本体1の内壁は真空容器6を備える。真空容器6は図3に示すように内ケース6aと外ケース6bの二重構造の間に真空層6hを形成し、上部開口部6fと下部開口部6gを有する、略円筒状である。真空容器6の上部内側の逃部6kには側面枠体21が装着される。
【0014】
側面枠体21は、開口部が外を向いた略コの字状の断面形状のステンレス製の枠体である。その側面枠体21には、ヒータ線を巻回して構成した上部ヒータ20を備える。上部ヒータ20は、保温時などに内釜2の上部を加熱して内釜2の上部に結露が発生するのを防止するために用いられる。
【0015】
真空容器6の上部開口部6fを本体1上部に備える枠体8で支える。その枠体8には、リング状の内釜載置部8aを備える。
【0016】
真空容器6の上部開口部6fを介して本体1の真空容器6に着脱自在に収納される内釜2を備える。内釜2には、上面開口の全周にはフランジ部2aを備え、内釜載置部8aに載置して、内釜2が本体1に保持される。
【0017】
内釜2の上部開口を覆う内蓋4と内蓋4の外側を覆う外蓋3とで構成する蓋体31が、本体1の上部で開閉自在に備える。蓋体31の内部で外蓋3の下面には内蓋4を加熱する平板状の蓋ヒータ30を備える。蓋ヒータ30は、保温時などに内釜2の上部と内蓋4を加熱して結露を防止するために用いられる。蓋ヒータ30と上部ヒータ20を内釜の上方に結露を防止するヒータ50とする。
【0018】
真空容器6の内部で下部には、皿状の底面容器7を備える。底面容器7の下面には、内釜2を加熱する加熱手段9と、その内釜2の底面の温度を検出してご飯の温度を検出する温度センサ16とが設けられている。尚、加熱手段9は内釜2を加熱できれば良いので、加熱源としてシーズヒータを用いても良いし、内釜2を誘導加熱する加熱コイルを用いても良い。本実施例では、加熱手段9に加熱コイルを用いた例を説明する。
【0019】
本体1には、温度センサ16の情報等に基づいて上部ヒータ20と蓋ヒータ30と加熱手段9に供給する電力を制御する制御手段である制御部5を備える。
【0020】
底面容器7の下面に配置した加熱手段9と制御部5を冷却する冷却ファン15を備える。
【0021】
蓋体31の上面には、保温の動作を選択する保温ボタン38(図2)と選択内容を表示する選択表示部32a(図2)とを設けた操作表示部37とを備える。
【0022】
図2に示す操作表示部37には、炊飯の開始や、保温中のご飯の温度を食するに適した温度に再加熱する制御手段に実行させる炊飯ボタン11と、複数の保温動作を押すごとに順送りに選んで選択する保温ボタン38を備える。
【0023】
また、設定のとりけしや保温を切る場合に操作する切ボタン51と、炊飯の終了時刻や、保温中のご飯の温度を食するに適した温度に再加熱するのが終了する時刻を入力する予約入力手段48と、お米の種類やメニューや炊き方を選択して入力する機能入力手段49を備える。
【0024】
そして、操作表示部37の表示部32は液晶で7セグメントやキャラクタにより表示する液晶表示部32bと、LEDなどの点灯によって使用者に液晶表示32bよりも強く知らせるものとして点灯表示部32cで構成される。
【0025】
その液晶表示部32bには保温するときに「保温」の文字を表示する保温表示41と、2つの保温動作番号について、数字の「1」または「2」を表示する保温番号表示41aを備える。
【0026】
また、点灯表示部32cには、保温ボタン38で選択する特定保温動作であることを報知する選択表示部32aを備える。本実施例では、選択表示部32aは「節電保温」の文字が表示されている。
【0027】
図4を用いて制御系のブロック図について説明する。
【0028】
制御部5に入力される条件は、内釜2の温度を検出して制御部5に検出した温度情報を入力する温度検出手段である温度センサ16と、前述したように、操作表示部37に備える炊飯ボタン11と保温ボタン38と切ボタン51と予約入力手段48と機能入力手段49がある。
【0029】
また、前記入力に対して制御部5から制御されるのは、加熱手段9と上部ヒータ20と蓋ヒータ30と冷却ファン15と、前記したように操作表示部37に備える表示部32がある。
【0030】
さらに、制御部5には、保温ボタン38で複数の保温動作から特定保温動作を選択すると、特定保温動作であることを報知する選択表示部32aを表示させ、内釜2のご飯を加熱せずに蓋体31の露付きを防止するために、上部ヒータ20と蓋ヒータ30にだけ電力を供給して温度センサ16で内釜2の温度が特定温度を下回ったことを検出すると特定保温動作を停止し、上部ヒータ20と蓋ヒータ30への電力の供給を停止する、特定保温動作手段91を設けている。
【0031】
尚、制御部5はマイコンを主体とした電子的な制御装置であって、ソフトウエアで各種の制御機能を実行するものであり、当然本実施例で提案された再加熱開始手段と再加熱終了手段もソフトウエア等で実行されるアプリケーションとしてその機能が制御部5に与えられている。
【0032】
次に、図5により、操作表示部37の保温ボタン38による保温動作の選択方法と表示部32の状態遷移について説明する。保温動作は3種類である。保温1動作、保温2動作、特定保温動作である。
【0033】
保温1動作、保温2動作は、背景技術で述べたものである。保温1動作は、保温中にご飯が腐敗しない74℃程度に一定に保つ保温期間と、これより低い50〜60℃の低い温度で保温する保温期間と、腐敗菌の増殖を防ぐ80℃程度の高い温度で保温する保温期間とを周期的に繰り返すことによってご飯に発生する雑菌の繁殖を防ぎながら長時間の保温を可能とする保温動作である。
【0034】
保温2動作は、保温中にご飯が腐敗しない74℃程度に一定に保つ保温動作である。保温1動作では保温温度が低いと使用者が感じたときに設定するためのものである。
【0035】
本実施例の特定保温動作は、内釜2のご飯を加熱手段9によって加熱することなく保温し、ご飯が腐敗することなく、そこそこ暖かくご飯が食べられる範囲で動作するものである。そのため、前記範囲よりご飯の温度が低下した場合は特定保温動作を停止する。本実施例では前記範囲を50℃までとし50℃以下になった場合は特定保温動作を停止する内容で以下説明する(以下では、50℃を特定温度と言う)。但し、前記50℃は特に限定されるものではなく、前述したように内釜2のご飯を加熱手段9によって加熱することなく保温し、ご飯が腐敗することなく、そこそこ暖かくご飯が食べられる範囲なら何度でも良い。
【0036】
また、特定保温動作中は、内釜2の上部で発生する結露を防止するためにヒータ50への電力の供給を行う。
【0037】
初期設定は保温1動作で第1状態である。液晶表示部32bでは、保温表示41は「保温」を表示し、保温番号表示41aは「1」を表示する。点灯表示部32cの選択表示部32aは表示しない。
【0038】
次に、保温ボタン38を押下すると、保温2動作が選択され、第2状態となる。液晶表示部32bでは、保温表示41は「保温」を表示し、保温番号表示41aは「2」を表示する。点灯表示部32cの選択表示部32aは表示しない。
【0039】
次に、保温ボタン38を押下すると、特定保温動作が選択され、第3状態となる。液晶表示部32bでは、保温表示41は「保温」を表示し、保温番号表示41aは表示しない。点灯表示部32cの選択表示部32aは表示する。
【0040】
次に、保温ボタン38を押下すると、保温1動作を選択され第1状態に戻る。液晶表示部32bでは、保温表示41は「保温」を表示し、保温番号表示41aは「1」を表示する。点灯表示部32cの選択表示部32aは表示しない。
【0041】
以上の構成において、次にその動作を説明する。
【0042】
図6は、炊飯後の保温動作を、特定保温動作を選択して設定した場合である。炊飯が終了し保温に移行すると、加熱手段9への電力の供給を停止し、上部ヒータ20と蓋ヒータ30にのみ電力を供給する。すると内釜2内のご飯の温度は、炊飯終了直後の略100℃から真空容器6による高断熱の構造により内釜2の熱容量と内釜2内部のご飯の熱容量とによって徐々に温度が下がっていく。そして、温度センサ16が約50℃を下回ったことを検出するまで継続される。
【0043】
ここでは、加熱手段9への電力の供給をして内釜2を誘導加熱することにより、ご飯の温度を所定の温度に保つ動作はしていない。そのため、内釜2を積極的に加熱しないことにより、ご飯から水蒸気が積極的に出ない状態となっている。そのことにより、上部ヒータ20と蓋ヒータ30には、炊飯中よりも少量の電力を供給することによって、蓋体31の露が付かない状態に保つものである。
【0044】
炊飯の後に、特定保温動作を実行すると、温度センサ16が約50℃を下回ったことを検出するまでの時間は、次のような場合に違いがある。まず、炊飯するご飯の量が多い場合は、少量を炊いた場合に比べてご飯の熱容量が多く、長い時間経過後に温度センサ16が約50℃を下回ったことを検出する。5.5合炊飯の製品の場合3合で約5時間である。また、室温が約20℃の常温に比べて約5℃では放熱量が増えるので、熱容量の少ない1合を炊飯した場合に約1時間30分である。また、炊飯直後にふっくらとご飯をかき混ぜてその後特定保温動作を実行した場合は、ご飯が炊き上がりよりも室内空気と混ざることで温度が下がるので、3合を炊飯した場合に約1時間である。
【0045】
以上のことから、特定保温動作している間は、ご飯が腐敗することなく、そこそこ暖かくご飯が食べられる範囲で動作し、温度センサ16によって内釜2のご飯の温度が特定温度(約50℃)を下回ったことを検出すると、保温中のご飯を加熱手段9によって加熱せずに特定保温動作を停止する。
【0046】
そして、選択表示部32aを消灯し、保温標示41の表示を消灯する。このLEDを点灯するなどして、使用者に強く報知していた選択表示部32aを消灯することで、使用者は保温が終了したことを知ることができるだけでなく、内釜2内のご飯を食べようとした場合に、温度が低くなっていても、使用者の設定した特定保温動作による正常動作であることが認識できる。
【0047】
以上のように本実施例では、高断熱の真空容器を備えることで、炊飯後のご飯からの放熱を抑えて、保温動作中は、少ない消費電力で炊いたご飯を美味しくそこそこ暖かい状態で保持することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 本体
2 内釜
3 外蓋
4 内蓋
5 制御部
6 真空容器
6a 内ケース
6b 外ケース
6f 上部開口部
6g 下部開口部
6h 真空層
7 底面容器
9 加熱手段
11 炊飯ボタン
16 温度センサ
20 上部ヒータ
21 側面枠体
30 蓋ヒータ
31 蓋体
32a 選択表示部
37 操作表示部
38 保温ボタン
50 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の内壁を構成し内部が真空層で構成した二重構造の真空容器と、該真空容器に収納する内釜と、前記本体と前記内釜を覆う蓋体と、前記内釜を加熱する加熱手段と、前記内釜の底面の温度を検出してご飯の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出温度に応じて前記加熱手段に電力を供給する制御手段とを備え、該制御手段は、保温動作を設定した時に、前記加熱手段には電力を供給しないで、前記内釜内のご飯の温度を検出して、該温度が特定温度以下になると前記保温動作を停止することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記内釜の上方に結露を防止するヒータを設け、前記保温動作時に前記ヒータに通電することを特徴とする請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22334(P2013−22334A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161549(P2011−161549)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】