説明

炎感知ユニット

【課題】製品出荷前の検知能力検査を容易に行うことを可能とする。
【解決手段】炎の検出に要する回路が形成された回路基板30と、炎が発する所定波長光を受光する主検出受光素子50と、主検出受光素子の前面に設けられた透過カバー12と、透過カバーに試験光を投光する試験光源13と、試験光を受光する試験用受光素子14と、試験光を試験用受光素子へ導く透光素材からなる光ガイド部材40とを備え、透過カバーの透過性試験を行う炎感知ユニット100において、光ガイド部材を略環状に形成して視野角制限機能を持たせて、主検出受光素子を固定する素子サポート60と、光ガイド部材を固定するガイドサポート70とを備え、素子サポートとガイドサポートとの間で透過カバーを固定挟持すると共に、当該各サポートを回路基板に対して固着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎に固有の波長光を捉えて感知を行う炎感知ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炎感知器は、内部に回路基板などの構成を格納する筐体と、筐体の正面開口部から炎に固有な波長光を受光する受光素子と、受光素子の正面に配置された光を透過する透過板とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
そして、かかる炎感知器の筐体には、正面側中央に円錐と嵌合する形状の内斜面を有する凹部が形成され、当該凹部の底部に開口部を設けると共に凹部の内斜面を受光素子に予定された視野角と一致させることで視野角制限機能が持たせられている。また、透過板は、筐体開口部の内側に固着装備される構造となっていた。
【特許文献1】特開平8−201165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の炎感知器は、製品出荷前の検知能力検査を行う際に、実際の使用状態と同じ状態で検知が正しく行われるかを判定する必要があるため、筐体開口部による視野角を制限された状態で、受光素子の手前には透過板を配置して検査を行う必要があり、感知器を完全に組み立て上げた状態にしなければならなかった。そのため、検査結果に応じては、内部の構成や基板取り出し等の必要が生じた場合には、完全に組上がった状態から再び分解しなければならず、検査作業が煩雑となるという不都合が生じていた。
【0004】
本発明は、製品出荷前の検知能力検査を容易に行うことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、炎の検出に要する回路が形成された回路基板と、炎が発する所定波長光を受光する主検出受光素子と、前記主検出受光素子の前面に設けられ、外部からの光を透過する透過カバーと、前記透過カバーに試験光を投光する試験光源と、前記透過カバーを透過した試験光を受光する試験用受光素子と、前記透過カバーを透過した試験光を受光し、前記試験用受光素子へ導く透光素材からなる光ガイド部材と、を備え、前記透過カバーの透過性試験を行う機能を備える炎感知ユニットにおいて、前記光ガイド部材を、前記主検出受光素子前面において前記主検出受光素子を取り囲む略環状に形成して前記主検出受光素子の視野を所定範囲に制限する視野角制限機能を持たせると共に、前記回路基板に対する主検出受光素子を固定する素子サポートと、前記回路基板に対して光ガイド部材を固定するガイドサポートとを備え、前記素子サポートとガイドサポートとの間で前記透過カバーを固定挟持すると共に、当該各サポートを前記回路基板に対して固着することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記回路基板に接続され、炎感知に関連する所定の状態を外部に示すための主光源を備え、前記光ガイド部材は、前記主光源からの光を受けて内部で伝搬すると共に、前記略環状の形状に沿って形成された光放出部から放出することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記光ガイド部材の光放出部の略環状の内側全周に渡って前記主検出受光素子に向かって傾斜した内側斜面を形成し、当該内側斜面から光の放出を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記光ガイド部材は、前記略環状の光放出部からその外側に向かって延出された第一の導光部と、当該第一の導光部から垂直に前記主光源まで延出された第二の導光部とを備え、前記光ガイド部材の第一の導光部は平板状であって、前記光放出部及び第一の導光部は、光放出を行う面の逆側となる面が同一平面で連なるように形成されると共に、当該平面には、多数の微細な溝又は微細な突起からなる微細構造部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記第一の導光部の第二の導光部の端部と正対する位置に、前記第二の導光部に沿って進行する光を前記第一の導光部の平板面に沿った方向に反射する二つの反射面を形成するV字状の切り欠きを設け、前記V字状の切り欠きの開き角度を90°より大きく且つ95°以下としたことを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記光ガイド部材の光放出部の略環状の部分の断面形状が山型となるように、当該略環状の外側全周に渡って外側斜面を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項4から6のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記光ガイド部材の光放出部の略環状の部分の外周側面部にも前記微細構造部を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記主検出受光素子は赤外線検出素子であり、当該赤外線検出素子に熱源を併設し、前記熱源を加熱させて前記赤外線検出素子による検出機能の試験を行う自己診断制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、光ガイド部材を、主検出受光素子を取り囲む略環状に形成して主検出受光素子の視野角制限機能を持たせているので、角がなく直線と曲線とからなる形状であることが望ましい。なお、「略環状」とは、円形に限らず、主検出受光素子を取り囲むことができる無端連続形状であることを示す。
【0014】
さらに、請求項1記載の発明は、素子サポートとガイドサポートとで透過カバーを固定挟持し、当該各サポートは回路基板に装着可能であるため、これらの構成を回路基板上に組立ててユニット化したことで、実使用の場合と同じ環境で、光ガイド部材で視野角が制限された状態で、且つ透過カバーを透過させた状態で、所定波長の光検知を行う試験を実施することができ、開閉作業が必要な筐体を用意することなく透過性試験を可能とし、試験の作業負担を軽減することが可能となる。
なお、当該炎感知ユニットは、炎感知器の中の炎検知に要する主要な構成を連結して組み上げたものであって、実際の使用時には、筐体に格納して炎感知器として完成された形にされる。
【0015】
請求項2記載の発明は、回路基板に設けられた主光源からの光を放出する光放出部を、略環状に形成したので、炎感知ユニットを炎感知器に適用することにより、主検出受光素子を中心とする全方位から発光状態を見ることができ、視認性の向上を図ることが可能となる。
また、光放出部を略環状としたことで全方位からの視認性を確保したので、正面から大きく突出させる必要がなく、前後方向について炎感知器の厚みを薄くすることができ、炎感知ユニットの小型化を図ることを可能である。
【0016】
請求項3記載の発明は、光ガイド部材の光放出部の略環状の内側全周に渡って形成された内側斜面から筐体外部への光の放出を行うので、炎感知ユニットを炎感知器に適用することにより、主検出受光素子の視野角の範囲内からは発光状態が見やすくなり、視認性の向上を図ることが可能となった。つまり、炎の発生を監視する領域内から表示灯の表示状態をより確実に確認することができるようになり、より合目的的に作動表示を行うことが可能となる。
さらに、監視領域(図13のS)以外の領域(図13のS’,S’)からでも視認性を確保することができ、主検出受光素子を中心とするほとんど全方位から発光状態を見ることができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、光放出部及び第一の導光部における光放出を行う面の逆側となる面(以下、「裏面」というものとする)に多数の微細な溝又は微細な突起からなる微細構造部が形成されているので、平面に沿って進行する光による乱反射を誘起させることができ、光放出面側において乱反射による発光効果を得ることができ、光放出面をより明るく発光させることが可能となる。
【0018】
請求項5記載の発明は、第一の導光部の第二の導光部の端部と正対する位置に、開き角度が90°より大きなV字状の切り欠きを設けたので、開き角度が丁度90°である場合よりも、裏面による微細構造部による乱反射を効果的に誘引することができ、光放出面をより明るく発光させることが可能となる。また、V字状の切り欠きの開き角度を95°より大きくすると、第二の導光部から離れた部分まで光を伝搬する効果が低くなり、また、底面から外部に透過する光量が増えて、光放出面をより明るく発光させる効果が低減する可能性があり、95°以下とすることが望ましい。
【0019】
請求項6記載の発明は、光ガイド部材の光放出部の略環状の部分の断面形状が山型となるように、当該略環状の外側全周に渡って外側斜面を形成している。仮に、略環状の外側全周に渡って外側傾斜ではなく、前後方向に沿った端面となるように形成すると、内側斜面から発光する光ガイド部材を見た場合に、内側斜面を透過して底面と前後方向に沿った端面の両方が見えるが、透過して見える前後方向に沿った端面の領域は、透過して見える底面の領域よりも明るさが暗くなり、内側斜面の発光状態を不均一としてしまう。従って、略環状の外側も傾斜面とすることにより、内側斜面から透過して見える領域をほとんど底面のみとすることができ、内側斜面の発光状態の均一化を図ることが可能となる。
【0020】
請求項7記載の発明は、光ガイド部材の光放出部の略環状の部分の外周側面部に微細構造部を形成している。仮に、略環状の外周側面部に微細構造部がない場合には、内側斜面から発光する光ガイド部材を見た場合に、内側斜面を透過して見える外周側面部が透過して見える底面の領域よりも明るさが暗くなり、内側斜面の発光状態を不均一としてしまう。従って、外周側面部にも微細構造部を形成することにより、内側斜面から透過して見える領域を均一に明るくすることができ、内側斜面の発光状態のさらなる均一化を図ることが可能となる。
【0021】
請求項8記載の発明は、赤外線検出素子に熱源を併設し、当該熱源を加熱させて赤外線検出素子による検出機能の試験を行うことができるので、素子の異常を容易に検出することができ、炎感知ユニットを炎感知器に適用することにより、検出不良の発生を効果的に低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(炎感知器の全体構成)
本発明の実施形態である炎感知器10について図1乃至図14を参照して説明する。図1は炎感知器10の斜視図、図2は分解斜視図である。
炎感知器10は、一般に背面側を上方に向けて固定設置され、正面を下方に向けた状態で正面前方(設置状態における下方)の領域の炎を検出するためのものである。かかる炎感知器10は、検知を行うブロック内の複数ある炎感知器を集中的に管理する図示しない受信機に接続され、炎を検出すると、検出信号を受信機に送信する。
なお、以下の説明では、説明の便宜上、炎感知器10の方向を以下のように定義する。即ち、炎感知器10の正面側から背面側に向かう方向に沿った方向をX軸方向とする。また、この炎感知器10では、二つの主検出受光素子50,50を備え、それらをX軸方向に直交する一定方向に並べて装備しているが、以下の説明では、これら主検出受光素子50,50の並び方向をY軸方向というものとする。さらに、X軸方向及びY軸方向のいずれにも直交する方向をZ軸方向というものとする(図1参照)。また、場合によっては炎感知器10の正面前方を「前側」、背面側は「後側」というものとする。
【0023】
炎感知器10は、筐体20と、筐体20の内部に配置され、炎を検出する回路が形成された回路基板30と、回路基板30に接続された主光源11と、筐体20の正面において発光する光放出部410を有し、主光源11からの光をその内部の伝搬により光放出部410まで導く透光素材からなる光ガイド部材40と、筐体20の正面側に設けられた開口部214から炎が発する所定波長光を受光する主検出受光素子50と、開口部214と主検出受光素子50との間に設けられ、外部からの光を透過する透過カバー12と、透過カバー12に試験光を投光する試験光源13と、透過カバー12を透過した試験光を受光する試験用受光素子14と、回路基板30に対する主検出受光素子50の向きを固定する素子サポート60と、回路基板30に対して光ガイド部材40を固定するガイドサポート70とを備えている。
【0024】
(筐体)
筐体20は、最も正面側に位置するカバー体210と、回路基板30等を格納保持する本体220と,背面側で設置箇所に固定されるベース体230とを備えており、これらはいずれも白色の樹脂により形成されている。
上記ベース体230は、X軸方向を中心とする円形の皿状に形成され、その背面側が設置場所において上方に向けて固定設置され、背面側から配線を施されて前述した受信機に接続される。
【0025】
本体220は、ほぼX軸方向を中心とする回転体形状、即ち、ベース体230よりも幾分外径が小さい有底円筒体であり、その底板の背面側をベース体230に対向させた状態で当該ベース体230の内側にはめ込まれるようにして装着される。本体220の底板の背面側には、図示しない接続端子が複数設けられ、当該各接続端子の先端部が鈎状に形成されている。つまり、各接続端子は、ベース体230側に設けられた被係合凹部に対して鈎状部が係合し、本体220をベース体230に固定する機能を有している。また、各接続端子は回路基板30と配線接続されており、ベース体230との係合により、ベース体230側からの電源供給や受信機との信号の送受信が可能となっている。
【0026】
カバー体210は、ほぼX軸方向を中心とする回転体であり、円筒形状部211と当該円筒形状部211の正面側の端部に連なる円錐台形状部212と当該円錐台形状部の正面側端部に連なる正面端面部213とから構成され、これらは一体的に成形されている。
円筒形状部211は、その外径がベース体230の外径と等しく設定されており、背面側端部は大きく開口され、当該開口端部の内側に本体220をはめ込み、ネジ止めにより連結されるようになっている。
【0027】
正面端面部213は、その中央部に大きく長円形状(半円弧と半円弧の互いの端部同士を直線で結んでなる形状)の開口部214が形成されており、当該長円の長手方向がY軸方向に沿っている。そして、当該開口部214を取り囲んで円形黒色の監視エリア確認マーク215が付されている。この監視エリア確認マーク215の内側において、開口部214の中心であって後方奥側に主検出受光素子50が配置されている。そして、主検出受光素子50の周囲から監視エリア確認マーク215の内側縁部に沿った各部を結ぶ直線の延長線の内側範囲が主検出受光素子50の視野角つまり監視範囲となっている。図3(A)は炎感知器10の正面から主検出受光素子50及び監視エリア確認マーク215を見たときの相互の位置関係を示し、図3(B)は監視エリア内であって正面からY軸方向に幾分ずれた位置から見たときの相互の位置関係を示し、図3(C)はさらに監視エリア外までずれた位置から見たときの相互の位置関係を示す。これらに示すように、監視エリアの中心位置から外れるにつれて、監視エリア確認マーク215の内縁部と後述する主検出受光素子50の素子サポート60の中央部との隙間が徐々に縮小し、監視エリアから外れるとその隙間が完全になくなるようになっている。つまり、天井などに炎感知器10を設置した状態において、監視エリア確認マーク215により形成される隙間の有無により立ち位置が監視エリアか否かの確認を行うことができる。なお、上述の例では、Y軸方向にずれた状態を例示したが、Z軸方向或いはY軸とZ軸の合成方向の場合も同様である。
【0028】
カバー体210と本体220との間には、炎感知器10の主要構成を格納する格納スペースが形成されている。かかる格納スペース内には、図2に示すように、本体220の底板の正面側に、回路基板30,基板カバー33,素子サポート60,主検出受光素子50,透過カバー12,ガイドサポート70,光ガイド部材40が順番に搭載されるようになっている。
【0029】
(主検出受光素子)
主検出受光素子50は赤外線センサ(例えば焦電素子)が使用される。燃焼による炎から発せられる赤外線は、CO2共鳴放射と呼ばれる現象により4.4[μm]の赤外線域の波長で急激に立ち上がるピークを示す特性があるので、当該波長光を透過するフィルタを装備した赤外線センサからなる主検出受光素子50とその前後いずれか(例えば、4.0又は5.0[μm])の波長光を透過するフィルタを装備した赤外線センサからなる主検出受光素子50との二つを用いて4.4[μm]のピークを検出できるか否かにより炎の検出を行っている。各主検出受光素子50,50は、いずれも、素子のリード線が回路基板30にハンダ付けで固定されており、また、二つの主検出受光素子50,50は近接してY軸方向に沿って並んだ状態でいずれも検出面を正面側に向けた状態で後述する素子サポート60によって支持されている。そして、これに対応して、前述したカバー体210の正面開口部214も近接して横に並んだ二つの円を同時に取り囲むことができるY軸方向に沿った長円状に形成されている。
【0030】
また、各主検出受光素子50は、センサ内において図示しない発熱素子が内蔵されており、かかる発熱素子も回路基板30に接続されている。かかる発熱素子は、主検出受光素子50の自己診断に用いるためのものである。自己診断の実行のための制御は回路基板30により行われる。回路基板30は、受信機側から診断実行指令を受信した場合、或いは、内蔵するタイマにより定期的に診断タイミングが訪れると、発熱素子に通電を行って発熱させる。そして、それにより発生する赤外線が主検出受光素子50により検出されることとなるが、その際の主検出受光素子50からの赤外線の検出信号を所定強度を得られるか否かにより回路基板30では素子が正常に機能しているか否かを診断する。そして、診断の結果、異常と判断すると、受光素子50の異常を受信機に送信するようになっている。つまり、回路基板30と発熱素子により、この炎感知器50は、主検出受光素子50の自己診断機能の実行を可能としている。
【0031】
(透過カバー)
透過カバー12は、二つの主検出受光素子50,50の正面側に配置された赤外線光を透過する透明なサファイアガラスからなる長方形状平板である。かかる透過カバー12は、各主検出受光素子50,50の受光面や光学フィルタが外部に直接露出して人手に触れたり汚れたり破損したりしないように保護するためのものである。
【0032】
(素子サポート)
図4は筐体20の内部に格納される構成からなる炎感知ユニット100を示した分解斜視図、図5は筐体20の内部に格納される構成のみを組み上げた斜視図、図6は図5の構成の平面図、図7は図6のU−U線に沿った断面図、図8は図6のV−V線に沿った断面図、図9は図6のW−W線に沿った断面図である。
図4〜9に示すように、素子サポート60は、正面視でY軸方向に沿った略長円形の台座61と、台座61の背面からX軸方向に沿って下方に延出された四本の支柱62(一乃至二本は図示略)とを備えている。かかる素子サポート60は黒色の樹脂により一体成形されている。
四本の支柱62は、台座61の四隅に設けられている。そして、各支柱62の先端面からは当該支柱62よりも小径のボス62aがさらに延出されている。そして、回路基板30には、各ボス62aの受け穴31が形成されている。
【0033】
台座61は、Y−Z平面に沿って配置され、その中央部には凹部が形成され、凹部のさらに中央にはY軸方向に沿って二つの素子格納凹部63,63が形成されている。各素子格納凹部63は、正面側が開放され、素子形状に対応して円柱体が嵌合可能な形状に形成されている。また、その底部には主検出受光素子50のリードを挿通させる四つの貫通穴が形成されている。かかる素子格納凹部63により、主検出受光素子50は、その向きが正面側を向いた状態で炎検出に適した方向に固定されるようになっている。
【0034】
また、台座61の中央の凹部内であって、各素子格納凹部63,63よりも前方には正面視長方形の枠状の透過カバー保持部64が設けられており、当該保持部64の内側には透過カバー12の背面から当接する長円形の凸条である背面支持部64aが形成されている。かかる透過カバー保持部64に嵌合して透過カバー12が保持され、また背面からは背面支持部64aにより押圧支持される。さらに、後述するが、素子サポート60はその嵌合構造によりガイドサポート70と接続可能となっており、かかる接続時に、ガイドサポート70側に設けられた、背面支持部64aと同じ大きさで同じ形状の正面支持部(図示略)により、透過カバー12の正面側が押圧支持される。これにより、透過カバー12は全方位について、ガタつきを生じることなく保持されるようになっている。
【0035】
また、図7に示すように、台座61の背面側には、各素子格納凹部63,63に隣接して、試験光源13を保持する光源保持部65が形成されている。かかる光源保持部65は、回路基板30の近接して斜め方向を向いて開口しており、回路基板30の正面側に実装された試験光源13は、そのリードを曲げるようにした状態で光源保持部65の開口から挿入され、内部に嵌合して向きを固定された状態で保持される。かかる光源保持部65は、その開口部から素子格納凹部63、63における透過カバー12の内側(背面側)となる空間内まで貫通しており、試験光源13の保持角度に応じて透過カバー12を透過させて正面側に投光させることを可能としている。なお、光源保持部65により試験光源13の保持角度については後に詳述するものとする。
【0036】
さらに、図8に示すように、台座61の背面側における各素子格納凹部63,63を挟んだ対角位置には、回路基板30側に向かって垂下された回路基板30への装着アーム66,66が二本形成されている。これら装着アーム66,66はX軸方向に沿って延出された板状体であり、その先端部には互いに逆方向に突出した係合突起66a,66aが形成されている。一方、回路基板30には、板面を貫通したスリット状の係合穴32,32が形成されており、各装着アーム66,66の先端部を装着可能としている。即ち、素子サポート60を回路基板30に装着する際には、各装着アーム66,66の先端部を各係合穴32,32に挿入することとなるが、その際、各装着アーム66,66は係合突起66a,66aの突出方向と逆方向に撓み、係合突起66a,66aが回路基板30の背面側に達すると、装着アーム66,66はその弾性によりに復帰する。これにより、係合突起66a,66aが係合穴32,32の縁部に係止される。このとき、各係合突起66a,66aは互いに逆方向に突出しているので、相互に係止し合う方向に弾性力が働き、係合突起66aを後退方向に人為的に操作しない限り抜脱しないようになっている。また、このとき、前述した各支柱62はその端面が回路基板30の正面に丁度当接した状態となるので、素子サポート60のガタつきが抑止される。
【0037】
さらに、図7に示すように、台座61の正面の側縁部における各素子格納凹部63,63を挟んだ対角位置には、正面前方に向かって立ち上げられたガイドサポート70への装着アーム67が片側に二つ、もう片側に一つ形成されている。これら各装着アーム67はX軸方向に沿って延出された板状体であり、その先端部には互いに対向する方向に突出した係合突起67aが形成されている。一方、ガイドサポート70には、その平面部を貫通したスリット状の係合穴714が対応する三カ所に形成されており、各装着アーム67の先端部を装着可能としている。即ち、素子サポート60とガイドサポート70とを連結する際には、各装着アーム67の先端部をガイドサポート70の背面側から各係合穴714に挿入することとなるが、その際、各装着アーム67は係合突起67aの突出方向と逆方向に撓み、係合突起67aがガイドサポート70の正面側に達すると、装着アーム67はその弾性によりに復帰する。これにより、係合突起67aが係合穴714の縁部に係止される。このとき、各係合突起67aは互いに対向方向に突出しているので、相互に係止し合う方向に弾性力が働き、係合突起67aを後退方向に人為的に操作しない限り抜脱しないようになっている。また、このとき、素子サポート60の台座61の上面とガイドサポート70の背面とが密接した状態となるので、サポート60、70の相互のガタつきが抑止される。
【0038】
(主光源)
主光源11は、正面前方に向けて発光を行うように回路基板30に固定実装されたLEDであり、二つ設けられている。かかる主光源11は、種々の用途に用いられる。例えば、平時には消灯状態とされ、炎感知時には点灯状態となり、周囲に報知を行ったり、複数の炎感知器10が受信機に接続されている場合において、その一つを対象とする応答要求があった場合に、当該応答の対象となる炎感知器10の主光源が点滅状態に切り替わって応答を行ったりする。
【0039】
(光ガイド部材)
図10は光ガイド部材40の全体を示す斜視図、図11は光ガイド部材40の正面図、図12は光ガイド部材40の部分拡大図である。
光ガイド部材40は、後述するガイドサポート70により筐体20の内部に固定保持される。従って、以下に説明する光ガイド部材40の各部と光ガイド部材40以外の他の構成との相対的な位置関係については、光ガイド部材40がガイドサポート70を介して定位置に固定された状態を前提とするものとする。
【0040】
光ガイド部材40は、正面視で略環状である長円状であって筐体20の正面において発光する発光面としての第一及び第二の内側斜面411,412を有する光放出部410と、当該光放出部410からその外側に向かって延出された二つの第一の導光部420と、各第一の導光部420から垂直にX軸方向に沿って回路基板30側に垂下された二つの第二の導光部430と、試験光源13から出射された試験光を試験用受光素子14に導くための第三の導光部440とを備えており、これらは透光性のある樹脂により一体的に成形されている。つまり、光ガイド部材40は、その内部で光を伝搬させることが可能となっている。
【0041】
光放出部410は、その正面視形状が、前述した筐体20のカバー体211の開口部214と相似形の長円状に形成されており、当該開口部214からは光放出部410の第一及び第二の内側斜面411,412が外部に臨むように配置される。
そして、長円形状の光放出部410の外周面(外側の端縁部)における対角位置において外側に突出するように二つの第一の導光部420が形成されている。これら各第一の導光部420と光放出部410とは、その背面がY−Z平面に沿った同一平面で連なっている。そして、かかる光放出部410及び第一の導光部420の背面には、そのほぼ全域に渡って無数の筋状突起からなる部材構造部(図10において隠れ線で図示)が形成されている。かかる微細構造部はその凹凸により、背面側に向かう光を反射させ、正面側の発光面としての第一及び第二の内側斜面411,412側から放出させる効果を有している。
【0042】
また、各第一の導光部420は、X軸方向について均一な厚さの板状に形成されており、その背面側にはそれぞれ円柱状の第二の導光部430がX軸方向に沿って垂下状態で形成されている。
各第二の導光部430は、その背面側の端面がY−Z平面に沿った平滑面であり、図9に示すように、回路基板30の正面に実装された主光源11に近接対向した状態で配設される。つまり、かかる端面が主光源11の出射光の入射面となっている。
【0043】
図12に示すように、各第一の導光部420における第二の導光部430の正面側端部との対向位置には、断面V字状となる切り欠き部421が形成されている。切り欠き部421は、その開き角度(内角)が92°に設定されており、当該切り欠き部421により、X軸方向に対して46°の傾斜をなす二つの対向平面が形成される。これら二つの対向面により、第二の導光部430内を進行してきた光を当該第二の導光部430の両側に第一の導光部420の平板面にほぼ並行に反射させることができるようになっている。
なお、上述のように切り欠き部421の開き角度(内角)を92°とし、第二の導光部430に沿った方向に対して二平面が対称となるようにすることにより、反射光は第一の導光部420の平板面よりも若干背面側に向かう方向に反射させることとなる。そして、第一の導光部420の背面と光放出部410の背面には前述した微細構造部が形成されているので、第二の導光部430から第一の導光部420及び光放出部410に伝搬される過程で効果的に正面側に反射させて第一及び第二の内側斜面411,412全体を効果的に発光させることができる。なお、切り欠き部421の開き角度は、第二の導光部430からより遠方に光を伝達させることとのバランスから92°が望ましいが、90°より大きく95°以下の範囲であっても良い。
【0044】
さらに、各第一の導光部420は、正面視において、切り欠き部421により二方向に反射される光をそれぞれ光放出部410の長円形の接線方向に沿うように反射させるX軸方向に平行な二つの反射面422,423を備えている。かかる反射面422,423により、反射光は正面視で光放出部410の長円形に沿って進行し、より遠方まで光が届くこととなり、光放出部410全体を効果的に発光させることが可能となっている。
【0045】
また、各第一の導光部420及び第二の導光部430は、いずれも筐体20のカバー体210に覆われる配置となっており、開口部214からも外部に見えないようになっている。第一の導光部420と第二の導光部430との接合構造により、第二の導光部430を直進してそのまま光が第一の導光部420を透過してしまう場合があるが、これらの導光部420,430はカバー体210で覆い隠されるので、前記透過光により外部から見て光ガイド部材40が部分的に明るくなるなどの不均一な発光を回避することができる。
【0046】
光放出部410は、中央部が大きく開口してなる長円形となる略環状であり、環状の一部を切断してなる断面形状は、正面前方に凸となる山型となっている。つまり、光放出部410は、当該山型の尾根に相当する部分413が長円に沿って連なっている。そして、尾根部413のすぐ内側に、第一の内側斜面411が全周に渡って形成され、さらにその内側に第二の内側斜面412が全周に渡って形成されている。また、尾根部413の外側には、全周に渡って外側斜面414が形成されている。
光ガイド部材40の尾根部413は筐体20のカバー体210の開口部214の内縁部と同じ大きさであり、光ガイド部材40はその尾根部413が開口部214に合致するように配置される。従って、開口部214からは、第一の内側斜面411と第二の内側斜面412のみが視認でき、外側斜面414は見えないようになっている。
【0047】
そして、第一の内側斜面411は、主検出受光素子50,50側に向かって下降勾配を生じるように傾斜しており、かかる下降勾配が全周に渡って形成されているため、第一の内側斜面411は全体が長円形のすり鉢形状を形成している。また、第一の内側斜面411の内側の第二の内側斜面412も同様にすり鉢形状を形成している。但し、図8に示すように、第二の内側斜面412の下降勾配は、第一の内側斜面411の下降勾配に比べて急傾斜となっている。
即ち、第一の内側斜面411は、その内側中央に位置する各主検出受光素子50に対する視野角制限を行う配置となっている。かかる炎感知器10に使用される主検出受光素子50については、視野角がその中心線方向(X軸方向に沿って配置されている)に対して全方位について傾斜角度を50°とすることが望ましい。つまり、この視野角の範囲内であれば、全方位についてほぼ均一の赤外線検出精度を維持することが可能となっている。従って、第一の内側斜面411は、全周に渡ってX軸方向に対する傾斜角度が50°となるように設定されている。そして、第一の内側斜面411は、各主検出受光素子50,50に対して、中心線に対する先端角度が50°となる円錐を逆さにして、その頂点が各主検出受光素子50,50の位置となるように配置した場合のそれぞれの円錐面に面接触するように位置設定がなされている。従って、第一の内側斜面411により、各主検出受光素子50,50の視野角制限機能が実現されている。
【0048】
一方、第二の内側斜面412は、第一の内側斜面411よりも急勾配であることから各主検出受光素子50,50の視野角の範囲外となっている。かかる第二の内側斜面412は、全周の内の一部の範囲が前述した試験光源13からの試験光の入射部416となっている。つまり、試験光源13は前述した素子サポート60により第二の内側斜面412の所定位置となる入射部416に向けて試験光を出射するようにその向きが保持されている。一方、第二の内側斜面412の傾斜角度は、一様に入射部416と等しく設定されている。かかる入射部416の傾斜角度は、試験光源13からの試験光が反射を生じない角度とすると共にZ軸方向に対して傾斜している試験光源13からの試験光の光軸方向が入射部416による屈折によりZ軸方向に平行になるような傾斜角度に設定されている。
なお、入射部416のみを上記条件を満たす傾斜角度とし、第二の内側斜面412の入射部416を除く全域は異なる傾斜角度に設定しても良いが、その場合、入射部416とそれ以外の部分との境界で内斜面上に凹部が生じ、汚れが溜まりやすくなる上に汚れの除去も困難となる不都合がある。このため、凹部が生じないように第二の内側斜面412の全周を入射角416に等しい傾斜角度に設定している。
【0049】
また、第一及び第二の内側斜面411,412は、その表面に反射を抑止するための加工としてシボ加工を施している。上述のように、第一の内側斜面411は、各主検出受光素子50の視野角制限機能を有している。かかる視野角制限は、主検出受光素子50がその正面側で光軸を中心とする全方位について所定の検出精度を維持することが可能な範囲に制限するために行われているが、第一及び第二の内側斜面411,412が反射を生じやすいと、これらの内側斜面411,412に反射した光まで受光面に入射して、各方位ごとの検出精度にバラツキが発生してしまう。従って、第一及び第二の内側斜面411,412にシボ加工を施すことで全方位の検出精度のバラツキを抑制している。
なお、前述した試験光の入射部416については、その部分だけシボ加工を施さずに透明な状態を維持して、試験の検出精度を確保している。
【0050】
前述したように、光放出部410は、その尾根部413がカバー体210の開口部214の内縁部と一致するように配置されるので、第一及び第二の内側斜面411,412のみが開口部214から外部に発光を行うこととなる。
このように環状体の第一及び第二の内側斜面411,412を発光させる場合と外側斜面414を発光させる場合とを比較すると、図13に示すように、外側斜面414には、主検出受光素子50の視野角の範囲S内において、斜線で示すB1,B2のように、片側の外側斜面414が見えない領域が発生し、これらの領域B1,B2の重複する領域に至っては両側の外側斜面414のいずれも見えないこととなる。
しかしながら、この炎感知器10のように、第一及び第二の内側斜面411,412を発光させる場合には、視野角の範囲S内において、このような視覚は生じない。
つまり、炎感知器10の監視領域内にいる人間に対して表示光をより確実に認識させることができ、視認性の向上を可能としている。
さらに、監視領域(図13のS)以外の領域(図13のS’,S’)からでも視認性を確保することができ、主検出受光素子を中心とするほとんど全方位から発光状態を見ることができる。
【0051】
ところで、光ガイド部材40は、透明樹脂を型に流し込んで一体成形で形成されるが、その場合、各部の厚さは薄くする方が形成しやすいのが一般的である。つまり、成形の有利性からは、図14(A)に示すように、光放出部410の尾根部413の外側は段差414Xを設けて肉薄構造にすることが望ましい。しかしながら、その場合、各内側斜面411,412から発光状態を観察すると、図示のように、段差414Xが微細構造部を設けた背面側の散乱光を遮ってしまうこととなり、背面を遮る段差部分は発光状態が暗くなってしまう(図14(A)の符号dの領域)。
一方、光放出部410の尾根部413の外側に外側斜面414を設けると、図14(B)に示すように、微細構造部を設けた背面側の散乱光は妨げられず、良好な発光状態を確保することが可能となる。
【0052】
但し、図14(B)のように、光放出部410の外周側に外側斜面414を形成すると、見る角度によっては、内側斜面411,412からは光放出部410の外周の側端面415まで透過して見える場合がある。そこで、光放出部410の外周側端面(及び第一の導光部420の反射面422,423を除く側端面)には、背面部と同様に筋状突起からなる微細構造部を形成している。これにより、内側斜面411,412から側端面415が透過して見える場合でも、背面と同様に散乱光を生じさせ、図14(A)の符号eの領域が背面と比して暗くなることはない。
【0053】
なお、図10において、光放出部410の側端面415に図示された符号45は、後述するガイドサポート70に光ガイド部材40を取り付ける際に、ガイドサポート70側の凹部に嵌合する係合突起である。
【0054】
第三の導光部440は、前述した試験光の入射部416から入射した試験光を回路基板30上の試験用受光素子14まで案内するためのものであり、入射部416からZ軸方向に沿って投影した配置で光放出部410から外側にZ軸方向に沿って延出された第一の伝達部441と、第一の伝達部441内をZ軸方向に進行する光をX軸方向に反射する反射面442と、反射面442からX軸方向に沿って回路基板30側に延出された第二の伝達部443とを備えている。
第一の伝達部441は断面正方形でZ軸方向に沿って延出された柱状体であり、第二の伝達部443は断面正方形でX軸方向に沿って延出された柱状体である。また、反射面442は、第一の伝達部441と第二の伝達部443との交差位置において、Y−Z平面をY軸方向を軸に45°傾斜させた平滑面により形成されている。
さらに、第二の伝達部443の背面側端面は回路基板試験用受光素子14に正対するように位置設定されており且つ近接するように回路基板30側まで延出されている。そして、第二の伝達部443の延出先端部は試験用受光素子14の光軸に垂直な平坦面に形成されており、かかる平坦面が試験光の出射部444となっている。
【0055】
(試験光源及び試験用受光素子)
試験光源13はLED、試験用受光素子14はフォトダイオードであり、試験光源13の発する波長光を受光帯域としている。これら試験光源13及び試験用受光素子14は、いずれも、その回路基板30に対してソケットなどを介することなくそのリードが直接接続されている。
そして、試験光源13と試験用受光素子14は、いずれも回路基板30上に近接配置されているため、透過カバー12よりも背面側に位置するが、上記第二の伝達部443が透過カバー12の正面側から背面側まで延びているので、試験光源13と試験用受光素子14とを透過カバー12を挟んで対向する配置とする必要がない。
【0056】
(ガイドサポート)
ガイドサポート70は、図4及び図7に示すように、筐体2の内部においてY−Z平面に沿って配置される略円板状の台座71と、台座71の外周縁部から背面側に向かって立ち上げられた周壁部72とを備えている。そして、側壁部72は筒状をなすと共にその内径は素子サポート60の台座61の外径よりも若干大きく設定されており、ガイドサポート70は素子サポート60を内部に収容した状態で相互に連結することが可能となっている。
【0057】
台座71の正面中央部には、長円状の凹部711が形成されており、凹部711の底には長円状の開口部712が形成されている。かかる開口部712は、各主検出受光素子50に通じている。
台座71の正面側には、光ガイド部材40の正面視形状に応じた嵌合部713が形成されている。かかる嵌合部713は、台座71の正面上に立設された突条により形成されており、当該突条の嵌合部713で囲まれた領域に光ガイド部材40を嵌合させることで固定することができる。また、かかる嵌合部713の内側には、光ガイド部材40の係合突起45が嵌合する図示しない凹部が形成されており、これによって光ガイド部材40は固定される。さらに、嵌合部713の内側には図4に示すように、開口部712側に向かって突出した係止突起713aが開口部712を挟んで二カ所ずつ形成されており、これにより、固定された光ガイド部材40のガタつきを抑止している。
【0058】
そして、嵌合部713に光ガイド部材40が固定された状態において、凹部711は、光ガイド部材40の二つの内側斜面411,412と共に全体的に略すり鉢形状を形成する内側斜面711a,711bを備えている。主検出受光素子50側となる一方の内側斜面711bは、前述した光ガイド部材40の第一の内側斜面411と同一の略円錐面を形成するようになっている。また、他方の内側斜面711aは一方の内側斜面711bよりも傾斜が緩やかに設定されており、光ガイド部材40の第一の内側斜面411及び内側斜面711bにより規定される視野角に干渉しないようになっている。
また、光ガイド部材40の第二の内側斜面412の内周端縁部と凹部711の内側斜面711aの外周縁部とは同一大で同一形状の長円となるように設定されている。これらの内側斜面412と711aとは傾斜角度は異なるが上記のように寸法を一致させることで、これらの間の段差をなくすことができ、汚れが溜まり難くなり、またその清掃除去も容易となる。
また、凹部711の開口部712のすぐ背面側には、前述した素子サポート60の背面支持部64aに対応して設けられた正面支持部(図示略)が形成されており、素子サポート60とガイドサポート70とを連結することにより、これらの支持部によって透過カバー12を挟持することを可能としている。
【0059】
台座711の開口部712を挟んだ対角位置には、図2及び図7に示すように、素子サポート60の三つの装着アーム67の先端部が挿入されるスリット状の係合穴714が穿設されている。ガイドサポート70と素子サポート60とを連結する際には、素子サポート60の台座61をガイドサポート70の周壁部72内に背面側から挿入し、各装着アーム67を係合穴714に挿入し、各係合突起67aを係合穴714の正面側に係止させることで行われる。
【0060】
台座71の背面には、光ガイド部材40の二つの第二の導光部430が挿通される二つの筒状構造715と、光ガイド部材40の第二の伝達部443が挿通される四角形の筒状構造716とが回路基板30側に向かって延設されている。
光ガイド部材40は、各第二の導光部430と第二の伝達部443の表面(端面部を除く)が白色樹脂からなる筒状構造715,716により被覆されるので、光伝達の際には表面から光ガイド部材40の外部に透過しようとする光を内部に反射することができる。
また、光ガイド部材40の背面は全て台座71の正面に接しており、光ガイド部材40の側端面は全て嵌合部713に接している。このため、光ガイド部材40の背面と側端面から光ガイド部材40の外部に透過しようとする光を内部に反射することができる。
そして、ガイドサポート70が筐体内部に組み込まれた状態において、光ガイド部材40の外側傾斜面414と第一の導光部420の正面とは、いずれも筐体20のカバー体210の内面が接するような内部形状が形成されている。
つまり、光ガイド部材40は、主光源11からの光を外部に逃がすことなく各内側斜面411,412まで伝搬することができ、効率良く発光させることが可能となっている。
同様に、光ガイド部材40は、試験光源13からの光を効率良く試験用受光素子14まで伝搬することが可能となっている。
【0061】
周壁部72の背面側端部には、図4に示すように、半径方向外側に向かって四方に延出された張り出し部721(一つは図示略)が形成されている。かかる各張り出し部721は、筐体20のカバー体210の背面側に形成された図示しない凹部に嵌合するようになっている。これにより、ガイドサポート70及びこれに連結される素子サポート60,各主検出受光素子50の回転方向のガタつきを良くすることを可能としている。
【0062】
(回路基板)
回路基板30は、前述した主光源11、試験光源13及び試験用受光素子14が板面近くに実装され、主検出受光素子50,50は素子サポートを介して実装されている。
さらに、回路基板30には、炎感知器10に所定の作動を実行させるための各種の電子部品及びマイコンが実装されている。
回路基板30による主要な処理を以下に説明する。
まず、回路基板30は、炎検出の処理を実行する。かかる処理では、各主検出受光素子50により二波長(例えば、4.0[μm]と4.4[μm])の赤外線検出を周期的に行い、各受光素子50,50の検出強度が求められる。そして、各波長の検出強度が炎の燃焼に固有の強度である設定値の範囲内と判定した場合に、回路基板30は、受信機に対して検出信号を出力する。そして、受信機で炎の検出であるとの判定が行われて報知信号が送信されると、回路基板30は、それまで消灯させていた二つの主光源11を点灯状態に切り替え、点滅発光により炎感知器10の周囲に炎の発生を報知する。
【0063】
また、回路基板30は、透過カバー12の汚れ検出のための透過性試験を行う処理を実行する。かかる処理では、例えば、定期的に、試験光源13を発光させ、試験用受光素子14による試験光の検出強度が汚れ判定のために設定された閾値以上であるか判定を行う。そして、閾値未満の場合には、透過カバー12の汚れの検出信号を受信機に出力する。
【0064】
また、回路基板30は、各主検出受光素子50,50が正常か否かの自己診断の処理を実行する。かかる処理では、例えば、定期的に、各主検出受光素子50に内蔵された発熱素子を加熱させ、各主検出受光素子50の焦電素子の検出強度が異常判定のための閾値以上であるか判定を行う。そして、いずれかの主検出受光素子について閾値未満となった場合には、主検出受光素子の異常発生信号を受信機に出力する。かかる処理により、回路基板30は、自己診断制御手段として機能する。
【0065】
(発明の実施形態の作用効果)
上記構成からなる炎感知器10では、光ガイド部材40が長円状の光放出部410を備えるので、全方位から発光状態を視認可能とすると共に、発光部を突出させる必要がないのでX軸方向について炎感知器の小型化を図ることを可能とする。
また、光ガイド部材40の第一の内側斜面411が各主検出受光素子50の視野角制限機能を備えている。つまり、主検出受光素子50の視野角を規定することにより、全方位について予定された検出精度を満たすことができ、各方位における精度のバラツキの発生を抑制することが可能となる。
さらに、光ガイド部材40は、試験光の入射部416及び第三の導光部440を備え、透過カバー12よりも前方で受光した試験光を透過カバー12の後方まで伝搬するので、回路基板30に試験光源13及び試験用受光素子14の両方を直接実装することができ、いずれか一方を透過カバー12よりも前方に配置するための部材や構造を不要とし、かかる点から部品点数の軽減を図ることを可能とする。
さらに、光ガイド部材40は、上記のように、全方位からの発光状態の確認機能、主検出受光素子50の視野角制限機能及び試験光の伝搬機能を全て一つの部材で実現していることから、かかる観点からも効果的な部品点数の低減を実現している。
【0066】
また、光ガイド部材40は、光放出部410の各内側斜面411,412から筐体外部への光の放出を行うので、外側傾斜面を発光させる場合のように、主検出受光素子50の視野角の範囲内において発光状態の視認ができない領域や環状の一部が見えない範囲が生じるなどの問題を回避することができ、視野角範囲内においていずれの位置からも環状の発光状態を確認可能であり、視認性の向上を図ることが可能である。
さらに、監視領域(図13のS)以外の領域(図13のS’,S’)からでも視認性を確保することができ、主検出受光素子を中心とするほとんど全方位から発光状態を見ることができる。
【0067】
また、光ガイド部材40は、筐体外部への発光を行う第一及び第二の内側斜面411,412の外側に外側斜面414を設け、背面及び側端面には微細構造を設けたので、各内側斜面411,412からの発光状態を均一に維持することができ、良好な発光を行わせることが可能となる。
さらに、光ガイド部材40では、第一の導光部420と第二の導光部430の接合部が筐体20のカバー体210により内側に隠れる配置となっているので、他の部位よりも明るく発光しやすい上記接合部を外部から隠すことができ、光放出部420の全体を均一に発光させることが可能となる。
また、光ガイド部材40は、第二の導光部430の正面側端部との対向位置に、断面V字状となる切り欠き部421を形成し、その開き角度を92°に設定しているため、第一の導光部420を通じて光を光放出部410におけるより遠方まで伝搬することを可能としつつも背面の微細構造部による散乱光の発生を誘起し、各内側斜面411,412をより均一且つより明るく発光させることが可能となる。
【0068】
また、炎感知器10は、光ガイド部材40はガイドサポート70が保持し、ガイドサポート70は素子サポート60と連結可能であり、素子サポート60は回路基板30に装着可能である。さらに、素子サポート60とガイドサポート70とで透過カバー12を固定挟持することが可能である。このため、図5に示すように、光ガイド部材40,ガイドサポート70,透過カバー12,主検出受光素子50,素子サポート60の構成を回路基板30上に組立てることができ、これらにより炎感知ユニット100を構成している。そして、かかる炎感知ユニット100の組立状態で主検出受光素子50を炎感知器10の完成状態と同じ受光環境とすることができる(例えば、光ガイド部材40で視野角が制限され、且つ、受透過カバー12を介して外部光の受光を行う)。
従って、炎感知器10の製造工程において、最終的な動作試験を図5の組立状態で行うことができ、検査結果に応じて再検査の必要などが生じても、筐体20の分解作業を不要とし、製造工程の迅速化及び生産性の向上を図ることが可能となる。
【0069】
また、炎感知器10は、主検出受光素子50に熱源を併設し、当該熱源を加熱させて主検出受光素子50による検出機能の試験を行うことができるので、素子の異常を容易に検出することができ、検出不良の発生を効果的に回避することが可能となる。
【0070】
(紫外線検出素子による他の例)
なお、炎感知器10の主検出受光素子としては、上述した赤外線検出を行うものに限られるものではなく、例えば、図15に示すように、紫外線検出素子からなる主検出受光素子50Aを用いても良い。
その場合、回路基板30Aは、紫外線検出素子からなる主検出受光素子50Aにより炎の検出が可能な回路を形成する必要がある。但し、回路基板30Aにおける筐体20内への嵌合構造及び固定構造を回路基板30と同じ構造とし、主光源11,11と試験用受光素子14については、回路基板30と同じ配置とすることが望ましい。
さらに、紫外線検出を行う主検出受光素子50Aは、それ単一で炎検出を行い、また、縦長管状のものをY軸方向に沿うように寝かせて使用するので、素子サポート60Aの素子格納凹部63Aは、側方から主検出受光素子50Aを挿入可能な嵌合構造を有するものを一つのみ形成する。そして、素子サポート60Aの素子嵌合凹部63A及び回路基板30Aとの接続構造(支柱62A等)以外の構造及び寸法は素子サポート60と等しく設計することが望ましい。
また、透過カバー12Aは、サファイアガラスではなく、紫外線を透過しやすい素材で形成することが望ましい。
紫外線により炎検出を行う炎感知器については上述のように主検出受光素子50A、素子サポート60A、回路基板30A及び透過カバー12Aを構成することで、それ以外の構成を全て炎感知器10と共通化することが可能となる。具体的には筐体20,光ガイド部材40,ガイドサポート70については共通化を図ることができ、赤外線検出を行う炎感知器と紫外線検出を行う炎感知器の両方を生産する場合にそれらの生産性の向上を図ることが可能となる。
【0071】
(その他)
上述した炎感知器10における試験光源13と試験用受光素子14の配置は逆の配置としても良い。その場合、試験光源13からの試験光は光ガイド部材40の第二の伝達部443の延出先端部の出射部444から入射し、入射部416から出射して透過カバー12を透過して試験用受光素子14に受光されることとなる。
なお、その場合、試験用受光素子14が素子サポート60に嵌合可能となるように回路基板30から幾分リードを延ばして実装する必要がある。また、素子サポート60の光源保持部65を試験用受光素子14が嵌合可能な構造の素子保持部に改造する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】発明の実施形態たる炎感知器の斜視図である。
【図2】炎感知器の分解斜視図である。
【図3】監視エリア確認マークの機能説明図であって、図3(A)は炎感知器の正面から主検出受光素子及び監視エリア確認マークを見たときの相互の位置関係を示し、図3(B)は監視エリア内であって正面からY軸方向に幾分ずれた位置から見たときの相互の位置関係を示し、図3(C)はさらに監視エリア外までずれた位置から見たときの相互の位置関係を示す。
【図4】筐体の内部に格納される構成からなる炎感知ユニットを示した分解斜視図である。
【図5】炎感知ユニットを組み上げた斜視図である。
【図6】図5の構成の平面図である。
【図7】図6のU−U線に沿った断面図である。
【図8】図6のV−V線に沿った断面図である。
【図9】図6のW−W線に沿った断面図である。
【図10】光ガイド部材の全体を示す斜視図である。
【図11】光ガイド部材の正面図である。
【図12】光ガイド部材の部分拡大図である。
【図13】光ガイド部材の内側斜面を発光させる場合の視認可能範囲と監視領域との関係を示す説明図である。
【図14】図14(A)は光ガイド部材に背部斜面を形成しない場合の内側斜面による発光状態を示し、図14(B)は光ガイド部材に背部斜面を形成した場合の内側斜面による発光状態を示す説明図である。
【図15】主検出受光素子として紫外線検出素子を使用した場合の炎感知器の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
10 炎感知器
11 主光源
12 透過カバー
13 試験光源
14 試験用受光素子
20 筐体
214 開口部
30 回路基板
40 光ガイド部材
410 光放出部
411 第一の内側斜面
412 第二の内側斜面
414 外側斜面
416 入射部
420 第一の導光部
421 V字状の切り欠き
430 第二の導光部
444 出射部
50 主検出受光素子
60 素子サポート
70 ガイドサポート
100 炎感知ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎の検出に要する回路が形成された回路基板と、
炎が発する所定波長光を受光する主検出受光素子と、
前記主検出受光素子の前面に設けられ、外部からの光を透過する透過カバーと、
前記透過カバーに試験光を投光する試験光源と、
前記透過カバーを透過した試験光を受光する試験用受光素子と、
前記透過カバーを透過した試験光を受光し、前記試験用受光素子へ導く透光素材からなる光ガイド部材と、を備え、
前記透過カバーの透過性試験を行う機能を備える炎感知ユニットにおいて、
前記光ガイド部材を、前記主検出受光素子前面において前記主検出受光素子を取り囲む略環状に形成して前記主検出受光素子の視野を所定範囲に制限する視野角制限機能を持たせると共に、
前記回路基板に対する主検出受光素子を固定する素子サポートと、
前記回路基板に対して光ガイド部材を固定するガイドサポートとを備え、
前記素子サポートとガイドサポートとの間で前記透過カバーを固定挟持すると共に、当該各サポートを前記回路基板に対して固着することを特徴とする炎感知ユニット。
【請求項2】
前記回路基板に接続され、炎感知に関連する所定の状態を外部に示すための主光源を備え、
前記光ガイド部材は、前記主光源からの光を受けて内部で伝搬すると共に、前記略環状の形状に沿って形成された光放出部から放出することを特徴とする請求項1記載の炎感知ユニット。
【請求項3】
前記光ガイド部材の光放出部の略環状の内側全周に渡って前記主検出受光素子に向かって傾斜した内側斜面を形成し、当該内側斜面から光の放出を行うことを特徴とする請求項2記載の炎感知ユニット。
【請求項4】
前記光ガイド部材は、前記略環状の光放出部からその外側に向かって延出された第一の導光部と、当該第一の導光部から垂直に前記主光源まで延出された第二の導光部とを備え、
前記光ガイド部材の第一の導光部は平板状であって、
前記光放出部及び第一の導光部は、光放出を行う面の逆側となる面が同一平面で連なるように形成されると共に、当該平面には、多数の微細な溝又は微細な突起からなる微細構造部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の炎感知ユニット。
【請求項5】
前記第一の導光部の第二の導光部の端部と正対する位置に、前記第二の導光部に沿って進行する光を前記第一の導光部の平板面に沿った方向に反射する二つの反射面を形成するV字状の切り欠きを設け、
前記V字状の切り欠きの開き角度を90°より大きく且つ95°以下としたことを特徴とする請求項4記載の炎感知ユニット。
【請求項6】
前記光ガイド部材の光放出部の略環状の部分の断面形状が山型となるように、当該略環状の外側全周に渡って外側斜面を形成したことを特徴とする請求項4又は5記載の炎感知ユニット。
【請求項7】
前記光ガイド部材の光放出部の略環状の部分の外周側面部に前記微細構造部を形成したことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の炎感知ユニット。
【請求項8】
前記主検出受光素子は赤外線検出素子であり、当該赤外線検出素子に熱源を併設し、
前記熱源を加熱させて前記赤外線検出素子による検出機能の試験を行う自己診断制御手段を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の炎感知ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−73025(P2010−73025A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241124(P2008−241124)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000111074)ニッタン株式会社 (93)
【Fターム(参考)】