説明

炎症性及びアレルギー性疾患に対して有用な新規マクロライド

PDF4阻害活性を有する式Iのマクロライド化合物が記述されている(式中、R1は、残基−Y−X−Qであり;Yは、S、SO又はSOであり;Xは、結合、あるいは水素原子及びC、N、O及び/又はSからなる9個までの原子を有する直鎖状基であり、そのうち2個までの原子が、Nであってよく、1個の原子がO若しくはSであってよく、1個の炭素原子が、CO基として現れてもよく、その硫黄原子が、SO2基として現れてもよく、かつ2個の隣接するC原子が、−CH=CH−若しくは−C≡C−として存在してもよく、その基Xは非置換であるか又は−COO−W若しくは−CONH−Wで置換されており;Qは、残基−V−A1−L−A2−Wであるか、又はXが結合を表さない場合には、−NR6R7であってもよく;Vは、二価の芳香族又はヘテロ環基であり;Wは、アリール又はヘテロシクリルであるか;あるいは基−A−A1−L−A2−W(式中、基A1;L若しくはA2の少なくとも1つが存在する)において、一価の置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、C、N、O及び/又はSからなる5個までの原子を有し、そのうち1個の炭素が、CO基として現れてもよく、1個の硫黄原子が、SO2基として現れてもよい直鎖状基であってもよく、A1、A2は、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基であり;Lは、−O−、−S−、−SO2−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−、−NH(CO)O−であるか、あるいはA1及び/又はA2が存在する場合には、存在していなくてもよく;R2は、水素であり、R3はOR4であるか、又はR2、R3は一緒になって、C=O基を形成し;R4は、水素又は1〜6個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族基であり;R6、R7は、アリール;アラルキル;ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキルから独立に選択され;R6及びR7の一方は、基−L−Wであってもよく;は、(R)若しくは(S)体であるキラル中心を示す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なマクロライド化合物、医薬としての、特に炎症性及びアレルギー性疾患の治療又は予防のための、その化合物の使用、その化合物を含有する医薬組成物ならびにそれらの製造方法に関する。特に、本発明は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、リューマチ性関節炎、アトピー性皮膚炎又は炎症性腸疾患等の炎症性及び/又はアレルギー性疾患の治療及び/又は予防用にそれらの化合物を有用なものとする、主としてホスホジエステラーゼ4(PDE4)の阻害を通して仲介される抗炎症活性を有するマクロライド化合物に関する。
【0002】
環状アデノシンモノホスフェート(cAMP)は、細胞内で鍵となる2番目のメッセンジャーである。環状AMPの濃度が増大すると、リンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球及び肺上皮細胞を含む様々な種類の炎症細胞及び免疫細胞における細胞応答が抑制されることが知られている。cAMPの細胞内濃度は、アデニルシクラーゼ及び環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE類)により調節される。PDE類は、環状ヌクレオチドcAMP及びcGMPをAMP及びGMPへの加水分解により不活性化する一群の酵素である。cAMP特異的酵素であるPDE4は、前炎症細胞における主たる酵素である。PDE4は、炎症プロセスに関与していることが示されている(例えば、Lipworth B. J., Lancet (2005) 365, p. 167又はGiembycz M. A., Curr. Opin. Pharmacol. (2005), 5, p. 238参照)。したがって、PDE4の阻害剤は、喘息、慢性気管支炎、気腫、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹 アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、乾癬、リューマチ性関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、敗血性ショック、潰瘍性大腸炎、クローン病、成人呼吸窮迫症候群及び多発性硬化症等の疾患の治療及び/又は予防に有用であると考えられる。
【0003】
多数のPDE4阻害剤が、文献に開示されている(例えば、J. O. Odingo, Expert. Opin. Ther. Patents, 2005, 15(7), 773; M. Hendrix, C. Kallus, Methods and Principles in Medicinal Chemistry (2004), Vol. 22 (Chemogenomics in Drug Discovery), 243-288 (Wiley-VCH)参照)。公知のPDE4阻害剤の多くが、嘔吐及び頭痛等の用量を制限する副作用を示す。
【0004】
マクロラクトン環の11,12位に縮合した5員環ラクトンを有するエリスロマイシン誘導体は、例えば、WO02/16380、WO03/004509、WO03/042228、WO03/072588、WO03/024986、US2004/0038915及びWO2005067919に開示されている。文献WO02/16380、WO03/072588、WO03/024986及びUS2004/0038915は、エリスロマイシン足場(erythromycin scaffold)の3位にカルボニル基を有する、いわゆるケトライドについてのみ記述している。WO03/042228、WO03/004509及びWO2005067919は、11,12ラクトン環を持ち、クラジノース糖置換基をエリスロマイシン足場の3位に有するマクロライド誘導体を開示している。しかしながら、これらの誘導体は、以降に開示される本発明のものとは構造の点で異なるものである。
【0005】
エリスロマイシン足場の9位のカルボニル基の還元は、また、例えば、Tetrahedron, 2003, 59, p. 7033又はJ. Med. Chem. 2003, 46, p. 2706中に記載されている。
【0006】
上記の文献に記載の全てのマクロライド化合物は、細菌感染の処置に有用であると開示されている。エリスロマイシン由来のマクロライドは、抗炎症活性を有することが報告されている(例えば、Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 1998, 41, Suppl. B, 37-46)。さらに、エリスロマイシン由来のマクロライドは、炎症細胞に蓄積されることが知られている。
【0007】
驚くべきことに、エリスロマイシン足場に縮合した5員ラクトン環を有するある種のマクロライド化合物は、この種の分子についてこれまでに記載されていない新規に見出された活性である、選択的にPDE4を阻害することがここに見出された。これらのマクロライドは、したがって、炎症性及びアレルギー性疾患の治療及び/又は予防に有用である。本明細書中に記載の分子は、現在知られているPDE4阻害剤とは構造的に異なっており、したがって、上記の副作用を克服する可能性を有している。
【0008】
したがって、本発明は、式I:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、
R1は、残基−Y−X−Qであり;
Yは、S、SO又はSOであり;
Xは、結合、あるいは水素原子及びC、N、O及び/又はSからなる9個までの原子を有する線状基であり、そのうち2個までの原子が、Nであってよく、1個の原子がO若しくはSであってよく、1個の炭素原子が、CO基として現れてもよく、その硫黄原子が、SO基として現れてもよく、かつ2個の隣接するC原子が、−CH=CH−若しくは−C≡C−として存在してもよく、その基Xは非置換であるか又は−COO−W若しくは−CONH−Wで置換されており;
Qは、残基−V−A1−L−A2−Wであるか、又はXが結合を表さない場合には、−NR6R7であってもよく;
Vは、二価の芳香族又はヘテロ環基であり;
Wは、アリール又はヘテロシクリルであるか;あるいは基−V−A1−L−A2−W(式中、基A1、L若しくはA2の少なくとも1つが存在する)において、一価の置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、C、N、O及び/又はSからなる5個までの原子を有し、そのうち1個の炭素が、CO基として現れてもよく、1個の硫黄原子が、SO基として現れてもよい直鎖状基であってもよく、
A1、A2は、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基であり;
Lは、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−、−NH(CO)O−であるか、あるいはA1及び/又はA2が存在する場合には、存在していなくてもよく;
R2は、水素であり、
R3はOR4であるか、又は
R2、R3は一緒になって、C=O基を形成し;
R4は、式I中で出現ごとに独立して、水素又は1〜6個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族基であり;
R6、R7は、アリール;アラルキル;ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキルから独立に選択され;R6及びR7の一方は、基−L−Wであってもよく;
は、(R)若しくは(S)体であるキラル中心を示す)
のマクロライド化合物、
ただし、
R2、R3が一緒になって、C=O基を形成し;
R4が、メチルであり、
R1が、
【0011】
【化2】

【0012】
である、式Iの化合物を除く。
【0013】
本発明の目的のために、用語、マクロライド化合物は、化合物の分離した立体異性(stereomeric)形態及びジアステレオマー混合物を含むものと理解される。
【0014】
さらに、用語、マクロライド化合物は、本発明において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩及びN−オキシドならびにインビボで切断できるエステルを含むものと理解される。
【0015】
本発明の化合物は、ヒトホスホジエステラーゼ(PDE類)、特に、炎症プロセスに関与していることが示されているPDE4に対して相当な阻害活性を示す(例えば、Lipworth B. J., Lancet (2005) 365, p. 167又はGiembycz M. A., Curr. Opin. Pharmacol. (2005), 5, p. 238参照)。このことを実施例に示す。したがって、ヒトホスホジエステラーゼ、特にヒトホスホジエステラーゼ4の阻害により改善又は緩和し得るヒトでの疾患及び障害の処置のための本発明に係る化合物の使用は、本発明のさらなる態様である。この活性に基づいて、本化合物は、特に、炎症性疾患の予防及び/又は治療ならびにアレルギー性疾患の治療及び/又は予防に有用である。
【0016】
このような疾患の重要な例は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、リューマチ性関節炎、アトピー性皮膚炎又は炎症性腸疾患である。
【0017】
本発明の目的のために、用語「芳香族基」及び「アリール」は、1個以上の、好ましくは6員の芳香核を有し、かつ6〜14個の炭素原子を有する芳香族基を指す。例としては、特に、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリルがある。これらの基は、さらに、例えば、以下で定義するようなアルキル、低級アルキコシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ若しくはn−ブトキシのようなC〜Cアルキコシ、例えばシクロペンチルオキシ、シクロプロピルメチルオキシのようなC〜Cシクロアルキルオキシ若しくはC〜Cシクロアルキル−C〜Cアルコキシ、例えば以下に定義するハロゲン、例えばジフルオロメチル若しくはトリフルオロメチル、トリクロロエチル等のハロゲン置換アルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、オキソ基から選択される1、2、3若しくは4個の置換基で置換されていてもよい。アリール基に1個より多い置換基が結合している場合、これらの置換基は、同一でも、互いに異なっていてもよい。また本発明の範囲内に包含されものは、特定の基の異なる可能な位置異性体であり、例えば、「ジメトキシ−フェニル」は、両方のメトキシ置換基が、フェニル環の2,3位、2,4位、2,5位、2,6位、3,4位、3,5位及び3,6位に結合し得ることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「ヘテロ環基」又は「ヘテロシクリル」は、硫黄、酸素、及び/又は好ましくは窒素からなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、不飽和又は飽和の、非置換又は置換された5〜10員の(単環又は二環)ヘテロ環系を指す。代表的なヘテロ環置換基は、例えば、以下の基を含むが、これらに限定されるものではない:ピペリジニル、モルホリニル、2−、3−若しくは4−ピリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、1H−ピラゾール−1−イル、1H−イミダゾール−1−イル、1H−イミダゾール−2−イル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラゾリル、トリアジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、例は1H−[1,2,4]−トリアゾール−1−イル、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル;チエニル、フリル(2−フラニル若しくは3−フラニル)、1H−アゼピニル、テトラヒドロチオフェニル、3H−1,2,3−オキサチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジチオリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、4H−1,2,4−オキサジアジニル、1,2,5−オキサチアジニル、1,2,3,5−オキサチアジアジニル、1,3,4−チアジアゼピニル、1,2,5,6−オキサトリアゼピニル、オキサゾリジニル、テトラヒドロチエニル等、又はキノリニルのような縮合ヘテロ環系、例えばキノリン−8−イル、キノリン−5−イル、キノリン−2−イル、キノリン−6−イル、キノリン−3−イル、イソキノリニル(6−イソキノリニル)、キナゾリニル、1H−ベンズトリアゾリル、1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、5H−イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−1−イル、3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル、1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリニル、チエノ[2,3−b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル(例えば、2−ベンゾチアゾリル)、1H−ベンゾイミダゾリル、1H−インドリル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、プリニル、例えば9H−プリン−9−イル、6−アミノ−9H−プリン−9−イル、2,6−ジアミノ−9H−プリン−9−イル、1H−プリン−6−イル、1H−2,3−ジヒドロインドール−1−イル、2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イル、2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−4−イル、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、2,3−ベンゾオキサゾリニル、1,2−ジヒドロ−オキサゾロ[5,4−c]ピリジニル、6−キノキサリニル、2−ベンゾ[b]チエン−3−イル、3,4−ジヒドロ−1H−2−オキソ−キノリン−6−イル。
【0019】
ヘテロシクリル基は、さらに、1個以上の置換基で置換されていてもよい。そのような置換基は、例えば、以下に定義するようなアルキル、低級アルキコシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ若しくはn−ブトキシのようなC〜Cアルキコシ、例えばシクロペンチルオキシ、シクロプロピルメチルオキシのようなC〜Cシクロアルキルオキシ若しくはC〜Cシクロアルキル−C1〜C4アルコキシ、例えば以下に定義するハロゲン、例えばトリフルオロメチル、トリクロロエチル等のハロゲン置換アルキル基、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、オキソ基を含む。ヘテロシクリル基に1個より多い置換基が結合している場合、これらの置換基は、同一でも、互いに異なっていてもよい。また異なる位置異性体も本発明の範囲内に包含され、例えば、「ジメチルピリジル」は、両方のメチル置換基が、化学的に可能な位置にてピリジルに結合し得ることを意味する。例えば、両方のメチル置換基は、3,4位、4,5位、5,6位、3,5位、3,6位及び4,6位で2−ピリジルに結合し得る。両方のメチル置換基は、2,4位、2,5位、2,6位、4,5位、4,6位及び5,6位で3−ピリジルに結合し得る。両方のメチル置換基は、2,3位、2,5位、2,6位及び3,5位で4−ピリジルに結合し得る。
【0020】
ヘテロシクリル基の特に好ましい置換基は、アルキル、アルキコシ、オキソ、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ又はジアルキルアミノであり、ここでアルキル及びアルキコシは、上で定義したとおりである。
【0021】
置換されたヘテロ環の好ましい例は、1H−ピリミジン−2,4−ジオン、1H,3H−ピリミジン−2,4−ジオン−5−メチル、1H−ピリミジン−4−アミノ−2−オン、6−アミノ−9H−プリン、6−ジメチルアミノ−9H−プリン、2,6−ジアミノ−9H−プリン、6−アミノ−8−[(3−ピリジニルメチル)アミノ]−9H−プリン、4−アミノ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、4−メトキシ−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、1−エチル−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン、4−フェニル−1H−ピラゾール、3−(ピリジン−3−イル)−1H−ピラゾール、3−(ピリジン−4−イル)−1H−ピラゾール−1−イル、3−(ピリジン−3−イル)−1H−イミダゾール−1−イル、3−(ピリジン−4−イル)−1H−イミダゾール−1−イル、3−(ピリジン−3−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール、3−(ピリジン−4−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール及び2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリンである。
【0022】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、分岐鎖又は直鎖の飽和炭化水素基を指す。このような基は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル等である。これらのアルキル基はさらに、例えば、低級アルキコシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ若しくはn−ブトキシのようなC〜Cアルキコシ、例えばシクロペンチルオキシ、シクロプロピルメチルオキシのようなC〜Cシクロアルキルオキシ若しくはC〜Cシクロアルキル−C〜Cアルコキシ、例えば以下に定義するハロゲン、例えばジフルオロメチル若しくはトリフルオロメチル、トリクロロエチル等のハロゲン置換アルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル、又はオキソ基から選択される一つ以上の置換基で置換されていてもよい。1個より多い置換基は、同一でも、互いに異なっていてもよい。
【0023】
用語、脂肪族基は、飽和又は不飽和であり得る、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する分岐鎖又は,好ましくは直鎖の飽和炭化水素基を指す。例として、アルキル、ビニル、n−プロペニル、n−プロピニル、ブテニル基、ブタジエニル、ペンテニル基などが挙げられる。
【0024】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0025】
組み合わせにおいて、「ヘテロシクリルアルキル」及び「アラルキル」の単一構成要素、「ヘテロシクリル」、「アラ」(アリール)及び「アルキル」は、上に示した意味を有する。
【0026】
用語、C〜Cアルキル基は、例えば、メチレン、エチレン、n−プロピレン及びn−ブチレンを指す。
【0027】
R1は、式−Y−X−Qの残基である。
【0028】
この式において、Yは、S、SO又はSOであり;好ましくはS及びSO、特に、Sである。
【0029】
Xは、結合、すなわち、「不存在」であるか、あるいは水素原子及びC、N、O及び/又はSからなる9個までの原子を有する線状基であり、そのうち2個までの原子が、Nであってもよく、1個の原子がO若しくはSであってもよく、1個の炭素原子が、CO基として現れてもよく、その硫黄原子が、SO2基として現れてもよい。2個の隣接するC原子は、−CH=CH−若しくは−C≡C−として存在してもよい。その基Xは非置換であるか又は−COO−W若しくは−CONH−Wで置換されており、ここで、Wは、本明細書中で定義された意味を有する。既に示したように、9個までの原子を有するスペーサー基Xは、C原子を飽和させてメチレン基を形成するために、あるいはN原子を飽和させてアミノ基を形成するために追加の水素原子を有していてもよい。好ましくは、このスペーサーは、C、N、O及び/又はSから選択される2〜5個の原子よりなる。
【0030】
好ましい基Xは:
(CH、(CHOCH、(CHNCH(CH、CHCHNH、(CHCOO、(CHCONH又はHN(CH(式中、n及びpは1〜3であり、mは0又は好ましくは1〜3である)である。
【0031】
特に好ましいX基は、エチル及びプロピルである。
【0032】
YとXの好適な組み合わせは、例えば、以下のとおりである:
Y=Sに関しては、Xは、エチル、プロピル、CHCO、CHCOCH、CHCONR、CHCONRCH、CHCONRCHCH、CHCHCONR、CHCHCONRCH、CHCHNR、CHCHNRCO、CHCHNRSO、CHCHNRCOO、CHCHOCH、CHSONR、CHSONRCH、CHCHOCONR、CH2CH=CH又はCHC≡Cであり;ここで、Rは、水素又はメチルである。
【0033】
式I中、Qは、式−V−A1−L−A2−Wの残基である。あるいは、Xが結合を表さない場合には、式I中のQは、−NR6R7であってもよい。
【0034】
Vは、二価の芳香族基又はヘテロ環基、例えば、具体的に上記したものの一つであってもよい。
【0035】
式Iの化合物の他の好ましい基において、Vは、式:
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、
【0038】
【化4】

【0039】
は、フェニレン環、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和の二価のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)であり、R8及びR9は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキル−C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C〜Cアルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、オキソ基;又はアリール若しくはヘテロシクリル(それらは、非置換、又はアリール若しくはヘテロシクリル以外の、一つ以上の上で特定した置換基で置換されていてもよい)からなる群より独立して選択されるか、又は置換基R8及びR9の両方が、環:
【0040】
【化5】

【0041】
の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員若しくは6員の芳香族、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)を形成してもよく、ここで、Vは、全体で、R8及びR9について定義した種類の1〜4個の置換基を有していてもよく、自由原子価は、基Vの一方又は両方の環のいずれかに位置していてもよい)
の二価の基である。
【0042】
Vの特に好ましい意味として、
【0043】
【化6】

【0044】
が挙げられる。
【0045】
式IのWは、上記で説明したアリール又はヘテロシクリルであることができる。
【0046】
基−V−A1−L−A2−W(式中、基A1;L若しくはA2の少なくとも1つが存在する)において、Wは、一価の置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、C、N、O及び/若しくはSからなる5個までの原子を有し、その1個の炭素原子が、CO基として現れてもよく、1個の硫黄原子が、SO基として現れてもよい線状基であってもよい。この場合、Wは、また、基Xに関して既に上記したように、C又はN原子を飽和させるために、追加の水素原子を有していてもよい。
【0047】
式Iの好ましい実施態様において、Wは、式:
【0048】
【化7】

【0049】
(式中、
【0050】
【化8】

【0051】
は、フェニル環、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)であり、R10及びR11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキル−C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C〜Cアルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、及びオキソ基からなる群より独立して選択されるか、又は置換基R10及びR11の両方が、環:
【0052】
【化9】

【0053】
の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員若しくは6員の芳香族、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)を形成してもよく、ここで、Wは、全体で、R10及びR11について定義した種類の1〜4個の置換基を有していてもよく、自由原子価は、基Wのいずれの環に位置していてもよい)
の基である
【0054】
Wの特に好ましい例は、以下の基である:
【0055】
【化10】

【0056】
Wの他の具体例として、
【0057】
【化11】

【0058】
(式中、R12は、水素又はC〜Cアルキル、特にメチルである)
が挙げられる。
【0059】
基−V−A1−L−A2−Wにおいて、A1、A2は、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基である。Lは、一般に、そのような基中で、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−及び−NH(CO)O−から選択されるが、A1及び/又はA2が存在する場合には、存在していなくてもよい。
【0060】
本発明に係るマクロライド化合物の好ましい例において、A1及びA2は、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基を表し;Lは、−NH−、−(CO)NH−及び−NH(CO)−から選択されるか;あるいは存在しない。
【0061】
特に好ましいものは、
A1、A2が、互いに独立に、存在しないか又はC〜Cアルキレン基であり;
Lは、−NH−、−(CO)NH−又は−NH(CO)−であり;
Vが、式:
【0062】
【化12】

【0063】
の二価の基であり、
Wが、式:
【0064】
【化13】

【0065】
の基である、式(I)の化合物である。
【0066】
同じく好ましいものは、
Yが、Sであり、
Xが、−CH−CH−CH−又は、好ましくはNH基を介して残基Qに結合している−CH−CH−NH−、又は−CH−CH−、最も好ましくは−CH−CH−である、
本発明に係る化合物、特に先の段落で述べたものである。
【0067】
Xが式Iにおいて結合を表さない場合には、Qはまた、−NR6R7であってもよい。この場合、R6、R7は、アリール;アラルキル;ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキルから独立して選択され;R6及びR7の一方は、基−L−W(式中、L及びWは、上記の意味の一つを有する)であってもよい。
【0068】
本発明に係る対応するマクロライド化合物の好ましい例は、Qが、−NR6R7である、式Iの化合物であり、以下の式:
【0069】
【化14】

【0070】
の一つを有する。
【0071】
式I中のR2が水素原子を表す場合、特にR3が同時にヒドロキシル又はビニルオキシである場合がさらに好ましい。
【0072】
同様に好ましいものは、R2、R3が一緒になって、C=O基を形成している、式Iの化合物である。
【0073】
同じく好ましいものは、式I中のR4が、水素又は、より好ましくはメチルのいずれかである本発明に係る化合物である。
【0074】
本発明に係る化合物のいくつかの具体例は、以下の化合物:
【0075】
【化15】

【0076】
ならびに式:
【0077】
【化16】

【0078】
の化合物及び式:
【0079】
【化17】

【0080】
の化合物である。
【0081】
最も好ましい化合物は、以下のものである:
【0082】
【化18】

【0083】
既に上に示したように、所望であれば、式Iのマクロライド化合物は、薬学的に許容される酸付加塩として存在し、使用し得る。無機酸との塩だけでなく、有機酸との塩も考慮し得る。塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等は、そのような塩の例である。
【0084】
さらに、該化合物を、インビボで切断可能なエステル、例えば糖部分の2’−ヒドロキシ基を含むエステルに変換することができる。好適なエステルは、一般に、酢酸エステル、ピバロイルエステル、酒石酸エステル、マレイン酸エステル、コハク酸エステル等である。
【0085】
それらの薬学的に許容される酸付加塩、又はインビボで切断可能なそれらのエステルを含む本発明の化合物は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、リューマチ性関節炎、アトピー性皮膚炎又は炎症性腸疾患の予防及び/又は治療に有用である。
【0086】
本発明の化合物、及びそれらの薬学的に許容される酸付加塩、又はインビボで切断可能なそれらのエステルは、慢性気管支炎、気腫、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、乾癬、敗血性ショック、成人呼吸窮迫症候群及び多発性硬化症等の疾患の予防及び/又は治療にも有用であり得る。
【0087】
本発明に係る化合物は、医薬として使用し得る。それらは、良好な経口吸収特性を有している。したがって、本発明のさらなる実施態様は、感染性疾患の治療及び予防のための、例えば経腸(経口)投与用の医薬製剤形態の式Iの化合物、それらの薬学的に許容される酸付加塩、N−オキシド又はそれらのインビボで切断可能なエステルを含有する医薬である。本発明に係る製品は、例えば、例えば錠剤、フィルムコーティング錠剤、糖被覆錠剤、硬及び軟カプセル剤、液剤、乳剤若しくは懸濁剤の剤形として経口的に、又は例えば坐薬の剤形として直腸経由で、又は例えば注射により非経口的に、又は経鼻的に、又は吸入若しくは経皮的に、又は例えば局所投与により局所的に投与され得る。好ましくは、化合物は、局所的又は経口的に投与される。
【0088】
これら化合物を含有する医薬組成物は、当業者が精通している従来の手順を用いて、例えば成分を、適切な、無毒の、不活性な、治療的に適合性の固体又は液体担体材料、及び、所望であれば、通常の医薬アジュバントと組み合わせて剤形にすることにより調製し得る。
【0089】
化合物は、最終的に、適切な経口、非経口又は局所剤形の組成物に具体化されることが想定される。本発明の組成物は、場合による成分として、医薬製剤の製造において通常使用されている任意の様々なアジュバントを含有し得る。したがって、例えば本発明の組成物を所望の経口剤形に処方する際には、場合による成分として、例えば微晶質セルロース、リン酸カルシウム又はラクトース等の充填剤;例えば澱粉、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム又は架橋ポリビニルピロリドン等の崩壊剤;及び例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤などを使用し得る。しかしながら、本明細書に挙げた場合による成分は、例としてのみ示され、本発明は、これらの使用に限定されないことを十分理解する必要がある。本発明の実施の際には、当該技術分野にて周知の他のそのようなアジュバントを使用してもよい。
【0090】
そのような担体材料としては、無機担体材料のみでなく、有機担体材料も適切である。したがって、錠剤、フィルムコーティング錠剤、糖被覆錠剤及び硬カプセル剤のために、例えばラクトース、トウモロコシ澱粉又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩を使用し得る。軟カプセル剤のための適切な担体は、例えば植物油、ロウ、脂肪ならびに半固体及び液体ポリオール(活性物質の性質に応じて)である。液剤及びシロップ剤の調製のための適切な担体材料は、例えば水、アルコール、ポリオール、サッカロース、転化糖及びグルコースである。坐薬のための適切な担体材料は、例えば天然油又は硬化油、ロウ、脂肪及び半液体又は液体ポリオールである。
【0091】
医薬アジュバントとしては、通常の保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤、コーティング剤及び酸化防止剤が想定される。
【0092】
式Iの化合物及びそれらの酸付加塩、N−オキシド又はそれらのインビボで切断可能なエステルは、非経口投与用に使用し得、この目的のために、好ましくは、例えば水又は等張の通常の塩溶液等の慣習的な物質により希釈される凍結乾燥物(lyophilisate)又は乾燥粉末として、注射用製剤に形成される。
【0093】
式Iの化合物及びそれらの酸付加塩、N−オキシド又はそれらのインビボで切断可能なエステルは、局所投与用に使用し得、この目的のために、好ましくは、軟膏、クリーム又はジェルのような製剤に形成される。
【0094】
ヒト及びヒトではない哺乳動物の炎症性及びアレルギー性疾患の治療及び/又は予防のために、一日当たり約10mg〜約2000mg、特に約50mg〜約1000mgの用量が一般的であり、当業者は、用量が、哺乳動物の年齢及び病状、ならびに予防又は治療すべき疾患の種類に依存するであろうことを認めている。一日用量は、一回量で投与しても、又は数回の用量に分割してもよい。約10mg、100mg、250mg、500mg及び1000mgの平均一回量を想定し得る。
【0095】
式Iの化合物の調製は、以下のスキーム1〜5に従って実施される。
【0096】
【化19】

【0097】
本発明の化合物は、エリスロマイシンA、クラリスロマイシン又は任意の他の6−O−アルキル−エリスロマイシンA、6−O−アルケニル−エリスロマイシンA若しくは6−O−アルキニル−エリスロマイシンAから出発して調製し得る。Rp及びRpが、H、アセチル、ベンゾイル又は任意の他の適切なヒドロキシル保護基である式II、III及びIVの化合物の調製は、この技術分野において周知の方法で調製し得る(スキーム1)。Rp及びRpが上で定義したとおりである式IIの化合物を得るために、出発マクロライドの2’−及び4”−ヒドロキシル基を、例えば、Baker et al., J. Org. Chem. 1988, 53, 2340-2345及びKashimura et al., J. Antibiotics, 2001, 54, 664-678に記載されている適切な酸無水物又は酸塩化物との反応により、連続的に又は同時に保護し得る。次に、式IIの化合物を、例えば、Baker el al., J. Org. Chem. 1988, 53, 2340-2345に記載されている方法と同様の方法で、式IVの化合物に変換し得る。
【0098】
式IVの化合物の12位のヒドロキシ基を、2−クロロ酢酸、DCC及びDMAPで、又は例えば塩化メチレン等の塩素化溶媒中、2−クロロ酢酸無水物、ピリジン、DMAPで処理してエステル化する。次に、中間体Vを、アセトン中、例えばDBU等の塩基の存在下、適切な求核試薬R1Hで処理して、式VIの化合物を得る(ここで、R1、Rp及びRpは、上で定義したとおりである)。R1の性質に応じて、式VIの化合物は、式IVの化合物を、例えば塩化メチレン等の塩素化溶媒中、適切なカルボン酸(R1CHCOOH)、DCC及びDMAPと反応させて、式VIの化合物を得ることによっても合成し得る。式VIの化合物を、例えばDMF又はTHF等の非プロトン性溶媒中、例えばNaH又はカリウムtert−ブトキシド若しくはLDA等のアルカリ金属塩基で処理して、式VIIの化合物を、様々な比のジアステレオ異性体混合物として得る(スキーム1)。
【0099】
R1、Rp及びRpが、上で定義したとおりである式VIIの化合物を、20〜60℃の範囲の温度で、2〜5日間、メタノールにより2’位にて脱保護して、式VIIIの化合物を得る(スキーム2)。4”−ヒドロキシル基は、化合物を、還流しているメタノール中のDBUで3〜12時間処理して(J. Antibiotics, 2001, 54(8), 664)、又はメタノール/ジクロロメタン中、グアニジン/硝酸グアニジニウムで処理して(Tetrahedron Letters 1997, 38(9), 1627)、又はメタノール中の炭酸カリウムで、又はメタノール中のMeONaの混合物で、好ましくは還流しているメタノール中のDBUで、5〜7時間処理することにより脱保護されて、式Iaの化合物を得る。
【0100】
あるいは、4”−ヒドロキシル基を脱保護するための上述した方法の一つを用いて、式VIIの化合物を2’−及び4”位で同時に脱保護して、式Iaの化合物を得る(スキーム2)。
【0101】
【化20】

【0102】
R1がS−Rpであり、Rpが硫黄保護基、例えばベンジル、4−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル又は4−ニトロ−ベンジル、好ましくは4−メトキシベンジルである場合、WO03/072588に記載されている方法と同様の方法で、中間体VIIaを、モレキュラーシーブの存在下、ジスルフィド誘導体IX(ここで、Rp及びRpは、上で定義したとおりであり、Rpは、例えば3−ニトロ−2−ピリジニル又はメチルである)に変換する。
【0103】
式IXの化合物を、例えばアセトン水溶液、ジメチルホルムアミド水溶液、ジオキサン水溶液又はテトラヒドロフラン水溶液、好ましくはジメチルホルムアミド水溶液のような溶媒中、0〜60℃、好ましくは室温で、トリアルキルホスフィン(好ましくはトリブチルホスフィン)又はトリアリールホスフィン(好ましくはトリフェニルホスフィン)のような還元剤で1分間〜1時間、好ましくは15分間処理して、化合物Xを得る。化合物Xを、好ましくは単離せずに、同一の溶媒系内で、式Q−X−Lgの化合物(ここで、Q及びXは、以前に定義したとおりであり、Lgは、脱離基、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物、メタンスルホニルオキシ、p−トシルスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシであるか、又はXがカルボニル若しくはスルホニル基を表す場合、ビニル基である)で直接処理して式VIIの化合物を得る。反応は、例えば炭酸アルカリ金属若しくは炭酸水素アルカリ金属等の塩基、例えば炭酸カリウム、炭酸セシウム若しくは炭酸水素ナトリウム、又は有機塩基、例えばトリエチルアミン、N−エチルN,N−ジイソプロピルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン若しくは1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、好ましくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンの存在下で、0〜50℃間の温度、好ましくは20℃で実施することが好ましい。反応混合物に触媒量のヨウ化物塩、好ましくはヨウ化ナトリウムを加えると有利であり得る(スキーム3)。
【0104】
【化21】

【0105】
あるいは、R2、R3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4が上記の意味を有し、R1は、残基−Y−X−Q(式中、X及びQは、上記と同じ意味を有し、YはSである)である、式Iの化合物は、また、
a)式:
【0106】
【化22】

【0107】
を有するマクロライド化合物を、それ自体公知の方法で、例えば、スキーム1に関して上記したように、式IV:
【0108】
【化23】

【0109】
(式中、Rp及びRpは各々、ヒドロキシル保護基であり、R4は、上で定義したとおりである)の化合物に変換し、
b1)前記式IVの化合物を、活性化クロロ酢酸誘導体、特にジ(クロロ酢酸)無水物の存在下に、それ自体公知の方法で、、例えば、スキーム1で上記したような、式V:
【0110】
【化24】

【0111】
(式中、Rp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物に変換し、
b2)さらに、前記式Vの化合物を式:
MS−X−Q
(式中、Mは、アルカリ金属原子を表し、X及びQは、上記の意味を有する)の化合物と反応させて、式VI:
【0112】
【化25】

【0113】
(式中、R1は、−S−X−Qであり、X、Q、Rp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物を形成し、
c)前記式VIの化合物を、非プロトン性溶媒中で、アルカリ金属塩基と反応させて、式VII:
【0114】
【化26】

【0115】
(式中、R1ならびにRp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物を形成し、
ヒドロキシル保護基Rp及びRpを同時に、又は連続的に除去して、式Iの化合物を形成することにより製造することができる。
【0116】
これらの化合物は、所望により、例えばスキーム5に示したような、それ自体公知の方法で、式Iの化合物(式中、R2は水素であり、R3はヒドロキシル又は−O−(脂肪族基)から選択され、その脂肪族基は1〜6個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族基を表す)に変換することができる。
【0117】
式Icの化合物は、例えば、式Ibの化合物(Y=Sである式Iの化合物)を、2〜2.5当量の3−クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)及び4〜5当量のNaHCOで、塩化メチレンのような溶媒中、0℃〜室温の範囲の温度、好ましくは0℃で1時間〜3時間処理することにより調製することができる。反応の間に糖残基のジメチルアミノ基に形成されるN−オキシドは、後処理で、有機相をピロ亜硫酸ナトリウム水溶液で、室温で5分間〜24時間処理することにより還元され、式Icの所望の化合物をジアステレオ異性体の混合物として与える。あるいはまた、適切であれば、N−オキシドを、標準的手法に従って接触水素化することにより還元する。式Icの化合物を、上記と同様ではあるが、室温で1〜48時間の間でさらに酸化し、N−オキシドを還元した後に、式Idの化合物を得ることができる。化合物Idは、また、3.5〜10当量の酸化剤及び7〜20当量のNaHCO3を、0℃〜室温の範囲の温度で5〜48時間使用し、その後、上記の後処理を行うことにより得ることができる(スキーム4)。
【0118】
Qがアミノ基のような酸化感受性置換基でさらに置換されている場合、これらの置換基は、硫化物Iaを酸化に付す前に、保護する必要がある。この技術分野で周知の適切な保護基を、T. W. Green et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1999に記載の標準的手法に従って導入することができる。酸化の後、保護基は、同じくT. W. Green et al.に記載されている標準的手法に従って除去することができる。
【0119】
【化27】

【0120】
【化28】

【0121】
式XIの化合物は、例えば、式VIIの化合物を、NaBH等の還元剤で、溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、THF、THF/水又はジエチルエーテル中、0℃〜室温の範囲の温度、好ましくは0℃で、1時間〜24時間処理することにより調製することができる。次いで、式XIの化合物を、上記と同様に脱保護して、式Ieの化合物を得る。あるいは、式Ieの化合物は、また、式VIIの化合物の還元について記述された方法に従って、式Iaの化合物を出発して調製することができる。RPがアセチルである場合には、保護基は、メタノール等の溶媒中での還元の間に部分的に除去される可能性があり、新たに生成したヒドロキシ基のアルキル化の前に、2’−ヒドロキシ基の再保護が必要となる。
【0122】
式XIの化合物のヒドロキシル基は、ヒドロキシル基のアルキル化について公知の標準的手法に従ってアルキル化され、式XIIの化合物を与える。Qが、XIをXIIに変換するために使用される条件下でアルキル化される置換基でさらに置換されている場合には、これらの置換基は、化合物XIをアルキル化に付す前に、保護する必要がある。この分野で一般に知られている好適な保護基は、T. W. Green et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1999に記載の標準的手法に従って導入することができる。アルキル化の後、保護基は、同じくT. W. Green et al.に記載されている標準的手法に従って除去することができる。式XIIの化合物を、上記の手法に従って脱保護すると、式Ifの化合物が得られる。
【0123】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供され、本発明の範囲をどのようにも限定するものとして解釈するべきではない。
【0124】
A.実施例
【0125】
一般的な注釈:MSスペクトルは、(A)Masslynxソフトウエアを伴うMicromass Waters ZQシステム、及び(B)Waters Cap−LCを搭載したQ−Tof−Ultima(Waters AG)を用いて測定した。正確な質量測定のために、ナノロックマス(nano lock mass)ESI源を使用した。正確な質量は、4桁の十進数字で提供される。分析用HPLC:システムAa:機器:Varian Prostar210;カラム:InertsilODS−3V、5μm、250x4mm;流速:1.0mL/分;検出:254nm;移動相A:水;移動相B:アセトニトリル;勾配:0〜5分は一定の5%アセトニトリル;5〜25分は直線的に5〜95%アセトニトリル。システムBa:機器:Varian Prostar210;カラム:InertsilODS−3V、5μm、250x4mm;流速:1.0mL/分;検出:254nm;カラム温度:35℃;移動相A:水+0.1%HCOOH;移動相B:アセトニトリル+0.1%HCOOH;勾配:0〜5分は一定の5%B;5〜20分は直線的に5〜95%B。最終生成物のHPLC精製は、以下のシステムを用いて行った:システムAp:カラム:YMC ODS−AQ、120A、5μm、50x20mm;プレカラム:YMC ODS−AQ、120A、5μm、10x20mm;流速:30ml/分;注入:500μl;検出:ELSD;移動相A:水+0.1%HCOOH;移動相B:アセトニトリル;勾配:直線的に10〜95%アセトニトリル、4分にて。システムBp:カラム:Purospher STAR RP18e、5μm、125x25mm 流速:25mL/分;検出:254nm;移動相A:水 25mMギ酸アンモニウム;移動相B:メタノール;勾配:直線的に60〜90%メタノール、10分にて。システムCp:カラム:Purospher STAR RP18e、5μm、125x25mm 流速:25mL/分;検出:254nm;移動相A:水 25mMギ酸アンモニウム;移動相B:アセトニトリル;勾配:直線的に20〜50%アセトニトリル、10分にて。略語:HPLCは、高速液体クロマトグラフィー;DMSOは、ジメチルスルホキシド;DBUは、ジアザビシクロウンデカン;DCMは、ジクロロメタン;DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミン(Huenig塩基);DMFは、ジメチルホルムアミド;THFは、テトラヒドロフラン;DCCは、ジシクロヘキシルカルボジイミド;DMAPは、4−ジメチルアミノピリジン;EDC・HClは、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩;HOBtは、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール;HATUは、2−(1H−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;mCPBAは、m−クロロ過安息香酸;KOtBuは、カリウムtert−ブチラート;TBDMSClは、tert−ブチル−ジメチル−シリルクロリド、TBAFは、テトラブチルアンモニウムフルオリド、MSは、質量分析;NMRは、核磁気共鳴;ESIは、エレクトロスプレーイオン化。
【0126】
【表1】




星印()は、R1の、分子の残余部分への結合点を示す。
R2及びR3についての融合されたボックス中の「=O」は、R2及びR3が一緒になって、それらが結合している炭素と共にカルボニル基を形成していることを意味する。
【0127】
実施例1
I−1、R1が[2−[6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0128】
A]2−(6−アミノ−8−ブロモ−プリン−9−イル)エタノールの調製
0.5M AcONa/AcOH緩衝液(pH4)200ml中の2−(6−アミノ−プリン−9−イル)エタノール10gの溶液に、Br 4mlを加えた。得られた混合物を室温で8時間撹拌した。析出生成物を単離して、水で洗浄し、エタノールから結晶化させて、所望の生成物6.13g(43%)を得た。
【0129】
B]2−(6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチニル)−プリン−9−イル)エタノールの調製
EtN及びDMFの混合物中の2−(6−アミノ−8−ブロモ−プリン−9−イル)エタノール258mgの溶液に、Pd(PPh)Cl 35mg、CuI 19mg及び3−エチニルピリジン150mgを、アルゴン雰囲気下で加えた。混合物をアルゴン下に60℃で3時間、室温で一晩撹拌した。析出物を単離し、水及び熱エタノールで洗浄し、乾燥して、所望の生成物150mg(53%)を得た。
【0130】
C]2−(6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリン−9−イル)エタノールの調製
メタノール400ml中の2−(6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチニル)−プリン−9−イル)エタノール1.1gの懸濁液に、ラネーニッケル2.0gを加え、混合物を80℃で6時間水素化した(4気圧)。反応の完了後、触媒を除去し、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(CHCl:MeOH 9:1)で精製して、所望の生成物0.45g(41%)を得た。
【0131】
D]6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリンの調製
2−(6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリン−9−イル)エタノール0.45gを−20℃に冷却し、SOCl 6mlを加えた。温度を50℃まで徐々に上げ、混合物をこの温度で12時間撹拌した。過剰のSOClを蒸発し、残渣をジクロロメタン中に入れ、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:MeOH 50:1)で精製して、所望の生成物40mg(8%)を得た。
【表2】

【0132】
E]Rp及びRpがアセチルであり、R4がメチルである、式IIの化合物の調製(II−1)
DCM50ml中のクラリスロマイシン25g(33.4mmol)及びDMAP1.63g(13.4mmol)の溶液に、無水酢酸11ml(117mmol)を一回で加え、混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を、十分な0.2N NaOH中に注いで、pH値8〜9を得た後、抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。粗生成物を熱酢酸エチルから結晶化させて、無色結晶24.3g(87%)を得た。MS(ESI):832.5[MH]
【0133】
F]Rp及びRpがアセチルであり、R4がメチルである、式IIIの化合物の調製(III−1)
2’,4”−ジ−O−アセチル−6−O−メチルエリスロマイシンA(II−1) 24.3g(29.2mmol)をアルゴン下に−45℃でTHF500mlに溶解し、テトラヒドロフラン中のナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの1M溶液29.2ml(29.2mmol)で、15分間かけて滴下処理した。20分後、−45℃にて、カルボニルジイミダゾール16.24g(100.1mmol)を3回で5分間かけて加えた。反応混合物を−45℃で30分間撹拌した後、15分間で0℃に温め、0℃で2.5時間保持した。
【0134】
反応混合物を、NaHCO3の飽和水溶液及び水(1:1)で処理し、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を10%アンモニア水溶液で2回洗浄し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発させて、無色固体23.57g(94%)を得た。MS(ESI):858.6[MH]
【0135】
G]Rp及びRpがアセチルであり、R4がメチルである、式IVの化合物(IV−1)の調製
トルエン500mlに溶解した、化合物III−1 23.5g(27.47mmol)及びDBU10.25ml(68.7mmol)を、還流温度で1.5時間加熱し、室温に冷却し、0.5M NaHPO水溶液中に注いだ。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機抽出物を0.5M NaHPO、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮して、無色固体18.43g(86%)を得た。MS(ESI):814.5[MH]
【0136】
H]Rp及びRpがアセチルであり、R4がメチルである、式Vの化合物(V−I)の調製
ジクロロメタン600ml中の化合物IV−1 64.0g(78.6mmol)、4−ジメチルアミノピリジン3.84g(31.4mmol)及びピリジン12.5gの溶液に、ジクロロメタン250ml中のクロロ酢酸無水物26.9g(157.3mmol)の溶液を、窒素下で2時間かけて滴下した。溶液を室温で3.5時間撹拌した。反応混合物を0.2N NaOH中に注いで、pH値8〜9を得、ジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を、水で、0.5N NaHPOで2回、水で、及びブラインで2回、連続して洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させて、粗生成物を得た。粗生成物に石油エーテルを加え、混合物を室温で3時間撹拌し、濾過して、表題の化合物(57.5g、82%)を薄褐色固体として得た。MS(ESI):890.3。
【0137】
I]R1が[(4−メトキシフェニル)メチル]チオであり、Rp及びRpがアセチルであり、R4がメチルである、式VIの化合物(VI−1)の調製
化合物V−1 10.5gをアルゴン下でアセトン180mlに溶解し、DBU2.42g、ヨウ化ナトリウム20mg及び(4−メトキシフェニル)メタンチオール2.20gを1回で加えた。反応混合物をアルゴン下にて室温で2.5時間撹拌した。DCM250mlを反応混合物に加えた。有機層を5%NaHCOで3回洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させて、薄褐色泡状体11.7g(98.4%)を得た。MS(ESI):1008.4。
【0138】
K]R1が[(4−メトキシフェニル)メチル]チオであり、Rp及びRpがアセチルであり、R4がメチルである、式VIIの化合物(VII−1)の調製
VI−1の化合物6.00gを、窒素下でDMF60mlに溶解し、氷浴で冷却した。水素化ナトリウムの油分散体(60%)0.39gを加え、混合物を0〜5℃で3時間撹拌した。そこで、0.5N KHPO水溶液を加え、混合物をジエチルエーテル100mlで抽出した。有機層を、3%NaHCO3水溶液60mlで3回、ブライン80mlで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させて、粗生成物4.65gを得た。MS(ESI):1008.4[MH]
【0139】
L]R1が[(4−メトキシフェニル)メチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
粗化合物VII−1 21.8g(21.6mmol)をメタノール290mlに溶解し、DBU16.2ml(108.3mmol)を加えた。混合物をアルゴン下で5時間加熱還流した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をDCM580ml中に入れた。有機層を水で2回及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物を、石油エーテル/ジエチルエーテル5/1で洗浄した。残渣をメタノール150mlに溶解し、水55mlを加えた。混合物を2時間撹拌し、生成物を濾過により単離して、表題の化合物11.1g(41%)を固体として得た。MS(ESI):924.4。
【0140】
M]Rpが(4−メトキシフェニル)メチルであり、Rpがアセチルであり、Rpが水素であり、R4がメチルである式VIIaの化合物(VIIa−1)の調製
実施例1の工程Lの生成物2.0g(2.16mmol)をDCM50mlに溶解し、無水酢酸0.22ml(2.4mmol)を加えた。混合物を室温で48時間撹拌した。溶液をNaHCO3水溶液(5%)及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、薄褐色泡状体2.17gを得た。粗生成物を精製せずに、次の工程に使用した。MS(MSI):967.3[MH]
【0141】
N]Rpがメチルであり、Rpがアセチルであり、Rpが水素であり、R4がメチルである、式IXの化合物(IX−1)の調製
VIIa−1 2.17g(2.25mmol)を、DCM50mlに溶解し、モレキュラーシーブを加えた。混合物にジメチル(メチルチオ)スルホニウムテトラフルオロボレート880mg(4.49mmol)を加え、反応物を室温で5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、NaHCO水溶液(5%)20ml及びブラインで2回洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、薄褐色泡状体1.62gを得た。粗生成物を精製せずに、次の工程で使用した。MS(MSI):893.1[MH]
【0142】
O]R1が[2−[6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリン−9−イル]エチル]チオであり、Rpがアセチルであり、Rpが水素であり、R4がメチルである、式VIIの化合物(VII−1)の調製
DMF4ml及び水1滴に溶解した実施例1の工程Nの生成物0.120g(0.13mmol)の溶液に、トリブチルホスフィン66.4μl(0.27mmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。次に、溶液に、6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリン44.8mg(0.15mmol)及びDBU40.2μl(0.27mmol)を加えた。反応物を室温で一晩撹拌し、真空中で濃縮し、残渣をDCM中に入れた。有機層をNaHCO水溶液(5%)及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NH 99:1:0.01→95:5:0.01)で精製して、所望の生成物57mg(38%)を得た。MS(ESI):1112.6([MH])、577.0([MH++)。
【0143】
P]R1が[2−[6−アミノ−8−(2−ピリジン−3−イル−エチル)−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−1)の調製
実施例1の工程Oの生成物(54mg)を、メタノール2mlに溶解し、室温で96時間撹拌した。次に、反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をHPLCで精製して、所望の生成物を白色固体として得た。
MS:正確な質量(ESI):1069.5792Da。
【0144】
実施例2
I−2、R1が[2−[6−アミノ−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0145】
A]6−アミノ−8−ブロモ−9−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−エチル]−プリンの調製
DMF30ml中の2−(6−アミノ−8−ブロモ−プリン−9−イル)エタノール(実施例1、工程A)3.0gの溶液に、TBDMSCl 2.8g及びイミダゾール1.1gを加え、混合物をアルゴン下に20℃で24時間撹拌した。析出物を濾取し、水で洗浄し、乾燥して、所望の生成物3.6g(84%)を得た。
【0146】
B]6−アミノ−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−9−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−エチル]−プリンの調製
トルエン10ml中の実施例2、工程Aの生成物0.372g及び3−アミノピリジン0.23gの溶液に、Pd(dba) 0.091g、t−BuONa0.14g及び9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン(キサントホス)0.087gを加えた。混合物をアルゴン雰囲気下に100℃で16時間撹拌した。反応の完了後、混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。有機層を濃縮し、粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:MeOH 20:1)で精製して、所望の生成物0.1g(26%)を得た。
【0147】
C]2−(6−アミノ−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−プリン−9−イル)エタノールの調製
THF10ml中の実施例2、工程Bの生成物0.46gの溶液に、TBAF3HO0.12gを加え、混合物を20℃で16時間撹拌した。その後、反応混合物を濃縮し、粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール 20:1)で精製して、所望の生成物0.19g(59%)を得た。
【0148】
D]6−アミノ−9−(2-クロロエチル)−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−プリンの調製
2−(6−アミノ−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−プリン−9−イル)エタノール0.11gを−20℃に冷却し、SOCl 2mlを加えた。温度を徐々に50℃まで上げ、混合物をこの温度で12時間撹拌した。過剰のSOClを蒸発させ、残渣にアンモニア水を加えた。混合物を酢酸エチルで精製した。有機層を分離し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:MeOH 20:1)で精製して、所望の生成物30mg(27%)を得た。
【表3】

【0149】
E]R1が[2−[6−アミノ−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−2)の調製
表題化合物I−2は、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、6−アミノ−9−(2-クロロエチル)−8−(ピリジン−3−イルアミノ)−プリン及びIX−1を出発して調製した。
MS:正確な質量(ESI):1056.5548Da。
【0150】
実施例3
R1が[2−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−4−イル−カルボニル)−アミノ]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0151】
A]N−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−イソニコチンアミドの調製
3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニルアミン(Garcia et al., JOC, 2005, 70, p1050)7.0g(33.8mmol)をDCM150mlに溶解した。溶液を0℃に冷却し、DCM50ml中の塩化イソニコチノイル5.74g(40.5mmol)をその溶液に加えた。析出物が生成した。その後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。水100ml中のNaOH2.7gの溶液を、赤みを帯びた反応混合物に加えた。有機層を分離し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 2:1)で精製して、所望の生成物7.2g(62%)を得た。MS(ESI):313.1。
【0152】
B]N−(2−クロロエチル)−N−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−イソニコチンアミドの調製
実施例3の工程Aの生成物3.0g(9.6mmol)を1−ブロモ−2−クロロエタン50mlに溶解し、水酸化カリウム5.33g(95mmol)を溶液に加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、60℃に4時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水50mlを加えた。混合物をDCM50で抽出した。有機層を水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:1)で精製して、所望の生成物1.3g(43%)を黄色油状体として得た。
【表4】

【0153】
C]R1が[2−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−4−イル−カルボニル)−アミノ]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−3)の調製
表題化合物I−3は、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、N−(2−クロロエチル)−N−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−イソニコチンアミド及びIX−1を出発して調製した。
MS:正確な質量(ESI):1141.6073Da。
【0154】
実施例4
I−4、R1が[2−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0155】
A](3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−4−イルメチル)−アミンの調製
実施例3の工程Aの生成物0.5g(1.6mmol)を乾燥THF20mlに溶解し、水素化リチウムアルミニウム0.24g(6.4mmol)を室温で加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、0℃に冷却し、水2mlを加えた。混合物を酢酸エチル3x20mlで抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させて、粗生成物を油状体として得た。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:1)で精製して、所望の生成物0.4g(84%)を油状体として得た。MS(ESI):299.2([MH])。
【0156】
B](2−クロロエチル)−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−4−イルメチル)−アミンの調製
実施例4の工程Aの生成物3.85g(12.9mmol)を25℃でメタノール50mlに溶解し、クロロアセトアルデヒド(水中40%;77.4mmol、6eq)の溶液5.1ml、シアノホウ水素化ナトリウム4.86g(77.4mmol、6eq)及び酢酸0.74g(12.9mmol)を加えた。混合物を25℃で16時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下に除去し、残渣をジクロロメタン100mlに入れた。混合物をブライン3x50mlで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:4)で精製して、所望の生成物1.66g(35%)を油状体として得た。
MS(ESI):361.2、363.1([MH])。
【表5】

【0157】
C]Rpがメチルであり、Rp及びRpが水素であり、R4がメチルである、式IXの化合物(IX−4)の調製
実施例1の工程Lの生成物3.1g(3.35mmol)を、DCM80mlに溶解し、モレキュラーシーブを加えた。混合物にジメチル(メチルチオ)スルホニウムテトラフルオロボレート1.0g(4.94mmol)を加え、反応物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を濾過し、NaHCO水溶液(5%)80ml、水80ml及びブライン80mlで2回洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、薄褐色泡状体3.04gを得た。粗生成物を精製せずに、次の工程で使用した。
MS(ESI):850.2[MH]
【0158】
D]R1が[2−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−4)の調製
【0159】
DMF7.5ml及び水35μlに溶解した実施例4の工程Cの生成物0.136g(0.16mmol)の溶液に、トリブチルホスフィン80μl(0.32mmol)を加え、出発原料が残らなくなるまで(3時間)、混合物を室温で撹拌した。次に、溶液に実施例4の工程Bの生成物45mg(0.24mmol)及びDBU36μl(0.24mmol)を加えた。反応物を室温で13時間撹拌し、次いで、水15mlを加え、混合物を酢酸エチル3x20mlで抽出した。合わせた有機層を濃縮し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、粗生成物を黄色油状体として得た。生成物の最初の精製を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン 5/1)で行った。化合物を、分取用HPLC(カラム:XterraC18(5μm)100mmx10mm;移動相A:水+0.02%NHOH、移動相B:MeOH;流速:10ml/分;検出:254nm;勾配:0分/90%A/10%B、10分/40%A/60%B、10.1分/0%A/100%B)でさらに精製した。
MS:正確な質量(ESI):1128.6423Da。
保持時間:10.8分(カラム:Prontosil 120−3−C18 SH 3μm、74x4.6mm;流速1.0mL/分;検出:254nm;カラム温度:rt;移動相A:水+0.1%TFA、移動相B:メタノール;勾配:0〜5分 一定の30%B;5〜25分 直線的に30%〜95%B)。
【0160】
実施例5
I−5、R1が[2−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0161】
A]N−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−ニコチンアミドの調製
3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニルアミン(Garcia et al., JOC, 2005, 70, p1050)3.2g(14.3mmol)をDCM120mlに溶解した。溶液を0℃に冷却し、DCM50ml中のトリエチルアミン15ml(107.6mmol,7.5eq)と塩化ニコチノイル3.7g(26.1mmol;1.8eq)を反応混合物に加えた。反応混合物を2時間撹拌し、水50ml中のNaOH1.3gの溶液を混合物に加えた。有機層を分離し、水とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:1)で精製して、所望の生成物4g(85%)を白色固体として得た。
MS(ESI):313.0([MH])。
【表6】

【0162】
B](3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−3−イルメチル)−アミンの調製
実施例5の工程Aの生成物0.5g(1.6mmol)を窒素下に乾燥THF20mlに溶解し、水素化リチウムアルミニウム0.24g(6.4mmol)を0℃で加えた。反応混合物を15℃で2時間撹拌し、次いで、0℃に冷却し、水2mlを加えた。混合物を酢酸エチル3x20mlで抽出した。合わせた有機層を水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させて、粗生成物を油状体として得た。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:1)で精製して、所望の生成物180mg(38%)を薄黄色油状体として得た。MS(ESI):299.1([MH])。
【表7】

【0163】
C](2−クロロ−エチル)−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−3−イルメチル)−アミンの調製
実施例5の工程Bの生成物150mg(0.51mmol)を25℃でメタノール10mlに溶解し、クロロアセトアルデヒド(水中40%;7.74mmol、15eq)の溶液0.5ml、シアノホウ水素化ナトリウム0.25g(3.98mmol、7.8eq)及び酢酸0.05ml(0.87mmol)を加えた。混合物を15℃で4時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下に除去し、残渣をジクロロメタン100mlに入れた。混合物をブライン3x50mlで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:4)で精製して、所望の生成物140mg(35%)を薄黄色油状体として得た。MS(ESI):361.2、363.1([MH])。
【表8】

【0164】
D]R1が[2−[(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−5)の調製
表題化合物I−5は、実施例4の工程Dに記載の手順に従って、(2−クロロ−エチル)−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシ−フェニル)−(ピリジン−3−イルメチル)−アミン(実施例5工程C)及びIX−4を出発して調製した。
生成物を、システムBpでの分取用HPLCでまず精製した。単離した生成物を、DCMに溶解し、希NaOH水溶液で洗浄した。有機層を乾燥し、蒸発した。この生成物を、HPLC(システムAp)でさらに精製した。
MS:正確な質量(ESI):1128.6434Da。
保持時間(システムAa):16.7分
【0165】
実施例6
I−6、R1が[2−[(5−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0166】
A]4−(2−クロロ−エチルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸エチルエステルの調製
4−クロロ−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(J. Med. Chem. 2001, 44, 1025)2.54g(10mmol)及び2−クロロ−エチルアミン塩酸塩1.28g(11mmol)を、無水エタノール40mlに加えた。次いで、トリエチルアミン7ml(50mmol)を加えた。混合物を、反応が完了するまで(4時間)、加熱還流した。反応混合物を減圧下で濃縮し、飽和炭酸ナトリウム水溶液20mlを加えた。混合物を酢酸エチル3x20mlで抽出した。合わせた有機層を水15ml及びブライン15mlで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物(2.88g)を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル 5:1)でまず精製し、次いで、ヘキサン/酢酸エチル=1/1 20mlから結晶化させて、所望の生成物1.24g(42%)を白色結晶性固体として得た。
MS(ESI):297.1([M+H])。
【表9】

【0167】
B]4−(2−クロロ−エチルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸の調製
エタノール15ml中の実施例6の工程Aの生成物1.17g(4.0mmol)の溶液を、水2ml中のNaOH0.64g(16.0mmol)の溶液に加えた。得られた混合物を3時間加熱還流した。エタノールを減圧下で除去し、水10mlを残渣に加えた。溶液を2NHClでpH5に酸性化し、生成物を析出させた。析出物を濾過で単離し、乾燥して、所望の生成物0.5g(44%)を白色固体として得た。
MS(ESI):269.1([M+H])。
【表10】

【0168】
C]4−(2−クロロ−エチルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−アミドの調製
実施例6の工程Bの生成物0.8g(3.0mmol)、HOBt0.8g(3.0mmol)及びEDC・HCl 1.14g(6mmol)をTHF25mlに懸濁させ、トリエチルアミン2.1g(21mmol)を加えた。混合物を、全ての出発原料が消失するまで(24時間)、15℃で撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル 4:1)で精製して、白色固体0.64gを得た。NaH(60%、5.7mmol)131mgをTHF15mlに懸濁させ、THF5ml中の3,5−ジクロロ−4−アミノピリジンの溶液を、この懸濁液に15℃で滴下した。1時間後、THF5ml中の上記の白色固体570mg(1.42mmol)の溶液を、ゆっくりこの混合物に加え、さらに30分間撹拌した。水0.1mlを反応混合物に加え、溶媒を蒸発させた。残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル 4:1)で精製して、所望の生成物92mgを得た。この生成物を、アセトン/ヘキサン 1/2から再結晶して、所望の生成物68mg(11.6%)を淡黄色固体として得た。
MS(ESI):413.0([M+H])。
【表11】

【0169】
D]R1が[2−[(5−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−4−イルアミノ]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−6)の調製
表題化合物I−6を、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、4−(2−クロロ−エチルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−5−カルボン酸(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−アミド(実施例6の工程Cの生成物)及びIX−1を出発して調製した。生成物を、HPLC(システムAp)で精製した。
MS:正確な質量(ESI):1180.5134Da。
【0170】
実施例7
I−7、R1が[3−[2,3−ジメトキシ−6−(ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)フェニル]−プロピル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0171】
A]1−(3−ベンジルオキシ−プロピル)−2,3−ジメトキシ−ベンゼンの調製
NaH(油中60%)2.50g(62.5mmol)を窒素下で乾燥THF70mlに懸濁させ、THF50ml中の3−(2,3−ジメトキシ−フェニル)−プロパン−1−オール(J. Org. Chem., 1987, 52, 1072)7.1g(36.2mmol)の溶液を18℃で滴下した。得られた混合物を30分間撹拌し、次いで、THF30ml中の臭化ベンジル6.81g(39.8mmol)を滴下し、混合物を18℃で一晩撹拌した。反応を水10mlで停止させ、有機溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を酢酸エチル200mlに溶解し、有機層を水及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:40)で精製して、所望の生成物8g(77%)を無色油状体として得た。
【表12】

【0172】
B]1−(3−ベンジルオキシ−プロピル)−6−ブロモ−2,3−ジメトキシ−ベンゼンの調製
実施例7の工程Aの生成物8.0g(27.9mmol)を、窒素下でDCM120mlに溶解し、N−ブロモコハク酸イミド5.47g(30.7mmol)及び0.48g(2.8mmol)を加えた。混合物を18℃で一晩撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン 1:40)で精製して、所望の生成物9.7g(95%)を無色油状体として得た。
【表13】

【0173】
C]2−(3−ベンジルオキシ−プロピル)−3,4−ジメトキシ−安息香酸の調製
実施例7の工程Bの生成物9.7g(26.7mmol)を、窒素下で乾燥THF40mlに溶解した。溶液を−78℃に冷却し、ブチルリチウム(ヘキサン中2.2M)の溶液18mlを加えた。30分後、固体CO 400gを加え、反応混合物をゆっくり室温まで温めた。反応混合物を水に注ぎ、混合物をヘキサンで抽出した。3M HCl水溶液20mlを水層に加え、酢酸エチル2x100mlで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させて、粗生成物9gを白色固体として得た。
【表14】

【0174】
D]2−(3−ベンジルオキシ−プロピル)−N−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−3,4−ジメトキシ−ベンズアミドの調製
DCC10.8g(52.4mmol)及びHOBt5.0g(37mmol)を、窒素雰囲気下にDCM150ml中の実施例7の工程Cの生成物8.7g(26.3mmol)の溶液に加え、混合物を40℃で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾液を真空中で濃縮した。得られた生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 8:1)で精製して、白色固体8.5gを得た。乾燥THF40ml中のこの白色固体4g(8.9mmol)の溶液を、THF中の4−アミノ−3,5−ジクロロ−ピリジン1.6g(9.8mmol)及びNaH(油中60%)822mg(35.8mmol)の懸濁液に滴下し、室温で1.5時間撹拌した。得られた混合物を30℃で2時間撹拌し、その後、水でクエンチした。混合物を酢酸エチル2x100mlで抽出した。合わせた有機層を、水とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物4.1g(96%)を白色固体として得た。
【表15】

【0175】
E]2−(3−ヒドロキシ−プロピル)−3,4−ジメトキシ−N−ピリジン−4−イル−ベンズアミドの調製
実施例7の工程Dの生成物1.0g(2.1mmol)を、エタノール200mlに溶解し、Pd/C(10%)230mgを加えた。混合物を、水素ガス(40psi)の雰囲気下に室温で36時間撹拌した。触媒を濾過で除去し、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物280mgを白色固体として得た。
MS(ESI):317.1([MH])。
【表16】

【0176】
F]2−(3−クロロ−プロピル)−3,4−ジメトキシ−N−ピリジン−4−イル−ベンズアミドの調製
実施例7の工程Eの生成物200mg(0.63mmol)及びPCl 163mg(0.76mmol)を、DCM4mlに溶解し、得られた混合物を20℃で30分間撹拌した。混合物を濃縮し、粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 10:1)で精製して、所望の生成物160mg(75%)を白色固体として得た。
MS(ESI):355.1([MH])。
【表17】

【0177】
G]R1が[3−[2,3−ジメトキシ−6−(ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)フェニル]−プロピル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−7)の調製
表題化合物I−7を、実施例4の工程Dに記載の手順に従って、2−(3−クロロ−プロピル)−3,4−ジメトキシ−N−ピリジン−4−イル−ベンズアミド(実施例7工程F)及びIX−4を出発して調製した。この生成物を、分取用HPLC(システムAp)で精製して、白色固体を得た。
MS:正確な質量(ESI):1102.5927Da。
【0178】
実施例8
I−8、R1が[3−[4−アミノ−7−(ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−プロピル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0179】
A]4,6−ジヒドロキシ−ニコチン酸エチルエステルの調製
1,3−アセトンジカルボン酸ジエチル5.0g(24.73mmol)、無水酢酸5.05g(49.45mmol)及びオルトギ酸エチル3.7g(24.73mmol)の混合物を120℃で2時間加熱した。揮発性成分を減圧下に除去し、残った混合物をアンモニア水(25%)10mlで処理した。混合物を室温で30分間撹拌した。その後、混合物のpHをHCl(2N)水溶液でpH2に調整した。固体を濾取し、冷水で洗浄し、乾燥した。トルエン8mlを粗生成物に加え、混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、濾過し、乾燥して、赤色固体2.26g(50%)を得た。
【表18】

【0180】
B]4,6−ジヒドロキシ−5−ニトロ−ニコチン酸エチルエステルの調製
酢酸9ml中の実施例8の工程Aの生成物2.34g(12.78mmol)の溶液に、硝酸1.24g(65%;12.78mmol)を60℃で滴下した。混合物を90℃で20時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、濾過し、濾過ケーキを冷水で洗浄した。固体を乾燥して、所望の生成物2.2g(75%)を薄黄色結晶として得た。
MS(ESI):229.0([MH])。
【0181】
C]4,6−ジクロロ−5−ニトロ−ニコチン酸エチルエステルの調製
オキシ塩化リン8.0ml(86mmol)中の実施例8の工程Bの生成物2.0g(8.77mmol)を80℃で74時間撹拌した。次いで、オキシ塩化リンの約半分を真空中で除去し、残った混合物を氷の上に注いだ。混合物を酢酸エチル3x30mlで抽出した。合わせた有機相を炭酸ナトリウム水溶液(10%)30ml、水2x30ml及びブライン30mlで洗浄し、NaSOで乾燥し、真空中で蒸発させて、粗生成物を褐色油状体として得、これをシリカゲルでのクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン 1:20)で精製して、所望の生成物1.67g(72%)を薄黄色固体として得た。
【表19】

【0182】
D]3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−プロピルアミンの調製
THF10ml中の3−アミノプロパノール7.4g(98mmol)の溶液を、THF140ml中の水素化ナトリウム(60%;103.2mmol)4.12の懸濁液に室温で加えた。混合物を1時間撹拌し、次いで、塩化tert−ブチル−ジメチルシリル16.28g(108mmol)を加え、激しい撹拌を1時間続けた。混合物をジエチルエーテル300mlで希釈し、KCO水溶液(10%)100ml、水100ml及びブライン100mlで続けて洗浄し、MgSOで乾燥し、蒸発させて、薄黄色粗生成物17gを得た。この生成物を酢酸エチル/ヘキサン 1/10に溶解し、シリカゲルのパッドを通して濾過した。濾液を真空中で濃縮して、所望の生成物13g(70%)を無色油状体として得た。
【表20】

【0183】
E]4−[3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−プロピルアミノ]−6−クロロ−5−ニトロ−ニコチン酸エチルエステルの調製
エタノール75ml中の実施例8の工程Cの生成物6.0g(22.6mmol)及びトリエチルアミン2.3g(22.6mmol)の溶液を加熱還流した。実施例8の工程Dの生成物4.0g(22.6mmol)をこの溶液に加え、混合物をさらに1時間還流撹拌した。溶媒を減圧下に除去し、得られた残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル 80:1)で精製して、所望の生成物9g(95%)を黄色油状物として得た。
【表21】

【0184】
F]5−アミノ−4−[3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−プロピルアミノ]−6−クロロ−ニコチン酸エチルエステルの調製
実施例8の工程Eの生成物8.5g(26.5mmol)をエタノール100mlに溶解し、ラネーニッケル2.5gを加えた。反応混合物を、室温にて水素ガス(1気圧)の雰囲気下で16時間撹拌した。触媒をシリカゲルのパッドを通して濾過して除去し、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 20:1)で精製して、所望の生成物5.6g(58%)を褐色油状体として得た。
MS(ESI):388.1;390.1([MH])。
【0185】
G]1−[3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−プロピル]−4−クロロ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステルの調製
実施例8の工程Fの生成物5.6g(15.5mmol)をオルトギ酸トリエチル45mlに溶解し、混合物を44時間加熱還流した。混合物を減圧下で濃縮し、さらにオルトギ酸トリエチル45mlを加え、混合物をさらに24時間加熱還流した。混合物を減圧下に濃縮し、残渣を、ヘキサン/酢酸エチル(20/1→5/1)で留出するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物2.7g(40%;純度〜62%)を薄黄色固体として得た。
【表22】

【0186】
H]4−アミノ−1−[3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステルの調製
100mlのオートクレーブ中で、アンモニアガス約20gをエタノール40mlに溶解し、実施例8の工程Gの生成物2.7g(6.28mmol;純度〜62%)を加えた。混合物を100℃で20時間撹拌した。反応物を冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 100:1、次いで50:1)で精製して、暗褐色固体1.5g(83%)を得た。
【0187】
I]4−アミノ−1−[3−ヒドロキシ−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステルの調製
実施例8の工程Hの生成物1.5g(3.4mmol)を乾燥THF30mlに溶解し、フッ化テトラブチルアンモニウム・HO 1.17g(〜4.5mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィー(酢酸エチル、次いで酢酸エチル/MeOH 50:1、その後酢酸エチル/MeOH 20:1)で精製して、所望の生成物750mg(69%)を白色固体として得た。
【表23】

【0188】
K]4−アミノ−1−[3−クロロ−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステルの調製
塩化チオニル22ml中の実施例8の工程Iの生成物750mg(2.36mmol)の懸濁液を50℃で0.5時間撹拌した。トリエチルアミン0.275mlを加え、50℃で11時間撹拌を続けた。反応の完了後、ジエチルエーテル30mlを、冷却した反応混合物に加えて、析出物を生成させた。固体を濾過により単離して、所望の生成物640mg(91%)を薄黄色粉末として得た。
MS(ESI):283.0([MH])。
【表24】

【0189】
L]4−アミノ−1−[3−クロロ−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸の調製
実施例8の工程Kの生成物100mg(0.35mmol)及びLiOHの2M水溶液0.7mlの混合物に、THF2ml及びMeOH4mlを加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、LiOHの2M水溶液0.7mlをさらに加え、混合物を45℃で一晩撹拌した。混合物のpHを2NのHCl水溶液でpH=7に調整し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を分取用HPLC(カラム:Purospher STAR RP18e、5μm、125x25mm 流速:25mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル;勾配:直線的に20%〜60%アセトニトリル、10分で)で精製して、所望の生成物30mg(33%)を白色固体として得た。
【0190】
M]4−アミノ−1−[3−クロロ−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸ピリジン−4−イルアミドの調製
DMF4.5ml中の実施例8の工程Lの生成物60mg(0.24mmol)、HATU108mg(0.28mmol)、4−アミノ−ピリジン72mg(0.77mmol)及びDIPEA0.048ml(0.28mmol)の懸濁液を30℃で3時間撹拌した。反応混合物は透明になった。さらに、HATU90mg(0.24mmol)、4−アミノ−ピリジン22mg(0.24mmol)及びDIPEA0.040ml(0.24mmol)を反応混合物に加え、撹拌をさらに21時間続けた。混合物を濃縮し、粗生成物を分取用HPLCで精製して、所望の生成物(いくらかのギ酸塩を含む)を白色固体として得た。
MS(ESI):331.1、333.1([MH])。
【表25】

【0191】
N]R1が[3−[4−アミノ−7−(ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−プロピル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−8)の調製
表題化合物I−8を、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、4−アミノ−1−[3−クロロ−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸ピリジン−4−イルアミド(実施例8の工程Mの生成物)及びIX−1を出発して調製した。この生成物I−8を、HPLC(システムAp)で精製した。
【表26】

【0192】
実施例9
I−9、R1が[3−[4−アミノ−7−([メトキシカルボニルメチル]アミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−プロピル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0193】
A]{[4−アミノ−1−(3−クロロ−プロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボニル]−アミノ}−酢酸メチルエステルの調製
DMF6ml中の実施例8の工程Lの生成物60mg(0.24mmol)、EDC54mg(0.28mmol)、HOBt38mg(0.28mmol)及びグリシンメチルエステル塩酸塩89mg(0.71mmol)の混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を濃縮し、粗生成物を分取用HPLCで精製して、所望の生成物72mgを白色固体として得た。
【表27】

【0194】
B]R1が[3−[4−アミノ−7−([メトキシカルボニルメチル]−アミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−プロピル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−9)の調製
表題化合物I−9を、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、{[4−アミノ−1−(3−クロロ−プロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボニル]−アミノ}−酢酸メチルエステル(実施例9の工程Aの生成物)及びIX−1を出発して調製した。生成物I−8を、HPLC(システムAp)で精製して、所望の生成物を白色固体として得た。
MS:正確な質量(ESI):1093.5698Da。
【0195】
実施例10
I−10、R1が[2−[4−アミノ−7−(ピリジン−4−イル−アミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0196】
A]4−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−エチルアミノ]−6−クロロ−5−ニトロ−ニコチン酸エチルエステルの調製
エタノール4ml中の実施例8の工程Cの生成物362mg(1.37mmol)及びトリエチルアミン138mg(1.37mmol)の溶液を加熱還流した。2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−エチルアミン240mg(1.37mmol)をこの溶液に滴下し、混合物をさらに1時間還流撹拌した。溶媒を減圧下に除去し、得られた残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル 80:1)で精製して、所望の生成物430mg(79%)を黄色油状物として得た。
【表28】

【0197】
B]4−アミノ−1−[2−クロロ−エチル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステルの調製
4−アミノ−1−[2−クロロ−エチル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステルを、実施例8の工程F〜Kに記載の手順に従って、実施例10の工程Aの生成物を出発して調製した。所望の生成物を、薄黄色粉末として単離した。
【表29】

【0198】
C]4−アミノ−1−[2−クロロ−エチル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸の調製
4−アミノ−1−[2−クロロ−エチル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸エチルエステル(実施例10の工程Bの生成物)50mg(0.19mmol)及びNaOHの2M水溶液1.1mlの混合物に、THF0.3ml及びMeOH0.8mlを加えた。混合物を室温で2.5時間撹拌した。MeOH及びTHFを減圧下で蒸発させ、残った混合物のpHを2NのHCl水溶液でpH=2に調整した。生成物が析出し、濾過により単離した。トルエンを生成物に加え、溶媒を蒸発させた。このプロセスを3回繰り返した。最終的に、所望の生成物24mg(53%)を薄灰色固体として単離した。
MS(ESI):241.0([MH])。
【表30】

【0199】
D]4−アミノ−1−[2−クロロ−エチル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸ピリジン−4−イルアミドの調製
DMF15ml中の実施例10の工程Cの生成物48mg(0.20mmol)、HATU 114mg(0.30mmol)、4−アミノ−ピリジン61mg(0.65mmol)及びDIPEA0.051ml(0.30mmol)の混合物を30℃で一晩撹拌した。生成物を分取用HPLCで直接精製して、所望の生成物47mg(74%)を白色固体として得た。
【表31】

【0200】
E]R1が[2−[4−アミノ−7−(ピリジン−4−イル−アミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−10)の調製
表題化合物I−10を、実施例4の工程Dに記載の手順に従って、4−アミノ−1−[2−クロロ−プロピル]−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−7−カルボン酸ピリジン−4−イルアミド(実施例10の工程D)及びIX−4を出発して調製した。この生成物を、分取用HPLC(システムCp)で精製して、白色固体を得た。
MS:正確な質量(ESI):1084.5637Da。
【0201】
実施例11
I−11、R1が[2−[4−アミノ−7−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0202】
A]R1が[2−[4−アミノ−7−エトキシカルボニル−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]−エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
DMF40ml中の実施例4の工程Cの生成物(IX−4)1.6g(1.9mmol)の溶液に、トリブチルホスフィン765mg(3.8mmol)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。実施例10の工程Bの生成物400mg(1.39mmol)及びDBU290mg(1.9mmol)を加え、混合物を20℃で20時間撹拌した。次いで、水60mlを反応物に加え、混合物を酢酸エチル3x80mlで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を真空中で蒸発させた。粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 40/1,20/1、10/1)で精製して、所望の生成物895mg(46%)を薄黄色粉末として得た。
MS(ESI):518.8([M+2H]++/2)。
【0203】
B]R1が[2−[4−アミノ−7−カルボキシル−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
実施例11の工程Aの生成物300mg(0.3mmol)、LiOH水溶液(2N)3ml、THF8ml及びMeOH6mlの混合物を18℃で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をDCM3x50mlで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を真空中で蒸発させて、粗生成物0.172gを得た。粗生成物を分取用HPLC(カラム:Purospher STAR RP18e、5μm、125x25mm 流速:25mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル;勾配:直線的に10%〜40%アセトニトリル、8分で;その後、100%アセトニトリル)で精製して、白色固体を得た。
MS(ESI):504.8([M+2H]++/2)。
保持時間(システムBa):12.9分。
【0204】
C]R1が[2−[4−アミノ−7−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イルアミノ−カルボニル)−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−11)の調製
NaH(油中60%)153mg(4.46mmol)をDMF1mlに懸濁させ、DMF2ml中の4−アミノ−3,5−ジクロロピリジン873mg(5.3mmol)の溶液を加えた。懸濁液を25℃で3時間撹拌した。並行して、DMF5ml中の実施例11の工程Bの生成物260mg(0.26mmol)、EDC153mg(0.8mmol)及びHOBt78mg(0.58mmol)の溶液を25℃で1時間撹拌した。次に、この溶液を−5〜0℃で、上で調製した4−アミノ−3,5−ジクロロピリジンの溶液に加えた。混合物をこの温度で10分間撹拌し、反応を水1mlで停止させ、混合物のpHを、2N HCl水溶液でpH7〜8に調整した。混合物を濃縮し、残渣を分取用HPLC(カラム:Purospher STAR RP18e、5μm、125x25mm 流速:25mL/分;検出:254nm;移動相A:水+0.01%ギ酸;移動相B:アセトニトリル;勾配:直線的に20%〜60%アセトニトリル、10分で;5分、60%アセトニトリルで)で精製して、所望の生成物210mg(70%)を白色固体として得た。
【表32】


MS:正確な質量(ESI):1152.4906Da。
【0205】
実施例12
I−12、R1が[2−[6−アミノ−2−[[(3−ピリジル)メチル]アミノ]−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0206】
A]9−(2−クロロエチル)−2,6−ジアミノ−プリンの調製
2,6−ジアミノプリン10g(66.6mmol)をアルゴン下、DMF300mlに懸濁し、炭酸カリウム21.6g(156.5mmol)及び1−ブロモ−2−クロロエタン24mlを加えた。混合物を室温で64時間撹拌した。薄黄色の懸濁液を濾過し、固体をDMF30mlで洗浄し、次いで、水100mlと共に30分間磨砕(triturated)した。混合物を濾過し、固体を水50mlで洗浄し、真空中で乾燥して、所望の生成物10.15g(72%)を白色固体として得た。
【表33】

【0207】
B]6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−2−[(3−ピリジル)メチル]アミノ]−プリンの調製
9−(2−クロロエチル)−2,6−ジアミノ−プリン(実施例12の工程A)100mg(0.47mmol)をMeOH10mlに溶解し、モレキュラーシーブ(4Å)3g、3−ピリジンカルボキシアルデヒド0.044ml(0.47mmol)及び酢酸0.135ml(2.35mmol)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。シアノホウ水素化ナトリウム23.6mg(0.38mmol)を加え、撹拌を4時間続けた。3−ピリジンカルボキシアルデヒド0.044ml(0.47mmol)を追加して加え、シアノホウ水素化ナトリウム72mgを、室温で3日間にわたって3回で加えた。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル50mlに入れた。有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、溶媒を真空中で蒸発させて、粗生成物0.254gを黄色油状体として得た。粗生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99.5/0.5→80:20)で精製して、所望の生成物88mgを白色固体として得た。
【表34】

【0208】
C]R1が[2−[6−アミノ−2−[[(3−ピリジル)メチル]アミノ]−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−12)の調製
表題化合物I−12を、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−2−[(3−ピリジル)メチル]アミノ]−プリン(実施例12の工程Bの生成物)及びIX−1を出発して調製した。粗生成物を、HPLC(システムAp)で精製して、所望の化合物を白色固体として得た。
MS:正確な質量(ESI):1071.5826Da。
【0209】
実施例13
I−13、R1が[2−[6−アミノ−2−[[(4−ピリジル)メチル]アミノ]−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物の調製
【0210】
A]6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−2−[(4−ピリジルメチル)アミノ]−プリンの調製
6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−2−[(4−ピリジルメチル)アミノ]−プリンは、実施例12の工程Bに記載の手順に従って、4−ピリジンカルボキシアルデヒド及び9−(2−クロロエチル)−2,6−ジアミノ−プリンから調製した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99.5/0.5→80:20)で精製して、所望の生成物を白色固体として得た。
【表35】

【0211】
B]R1が[2−[6−アミノ−2−[[(4−ピリジル)メチル]アミノ]−プリン−9−イル]エチル]チオであり、R2及びR3が一緒になって、C=O基を形成しており、R4がメチルである、式Iの化合物(I−13)の調製
表題化合物I−12を、実施例1の工程O〜Pに記載の手順に従って、6−アミノ−9−(2−クロロエチル)−2−[(4−ピリジルメチル)アミノ]−プリン(実施例13の工程Aの生成物)及びIX−1を出発して調製した。粗生成物を、HPLC(システムAp)で精製して、所望の化合物を白色固体として得た。
MS:正確な質量(ESI):1071.5826Da。
【0212】
B.生物活性
本発明の化合物は、ヒトホスホジエステラーゼ(PDE類)、特にPDE4に対して相当の阻害活性を示す。以下のアッセイは、化合物の阻害活性を決定するために使用した。
【0213】
アッセイ
PDE4はcAMPを特異的に加水分解し、生成物であるAMPを放出する。当該薬剤によるPDE阻害の潜在能力は、インビトロ酵素的アッセイで決定した。アッセイは、市販されており(IMAP(商標)FPアッセイ Molecular Devices Corp.)、ヒトPDE4の使用のために最適化された。蛍光標識cAMPがPDE4により加水分解され、第二段階で、標識生成物が大きな結合相手と結合することにより、蛍光偏光(FP)測定による生成物の検出が可能となる。
【0214】
PDE4は、Thorpy et al. 1992(J. Pharmacol. Exp. Ther. 263: 1195)に従って、未分化ヒト単球細胞(U−937)から部分的に精製した。最終調製物は、cAMPに特異的であり、アッセイの検出限界より上には、cGMPを加水分解しなかった。さらに、PDE4調製物は、PDE4特異的及び非特異的PDE阻害剤での阻害実験により有効性が確認された。
【0215】
試験化合物の原液はDMSO中で作製され、所望の濃度に、アッセイ緩衝液(10mMトリス−HCl、10mM MgCl、0.1%BSA 0.05%NaN、pH7.2)で希釈した。アッセイで使用した溶液は、2%DMSOを含むアッセイ緩衝液中に試験化合物を含んでいた。
【0216】
基質10μl(製造者の推奨する濃度で)を、適切に希釈されたPDE5μl及び試験化合物溶液5μlと混合した。2%DMSOを含む反応緩衝液5μlを対照反応物として使用した。アッセイでのDMSOの最終濃度は0.5%であり、これは、PDE活性を有意には変えなかった。室温で90分のインキュベーション後、製造者が指定したとおりに、結合試薬60μlを加えた。結合を30分間進行させ、蛍光偏光を測定した。PDE阻害の用量依存性は、試験化合物の希釈系列を二重にアッセイすることにより測定した。IC50値は、曲線当てはめ(カーブフィッティング)により、測定した活性から決定した。
【0217】
【表36】

【0218】
実施例で示した本発明の化合物について見出されたPDE阻害活性は、以下の式:
【0219】
【化29】

【0220】
を有する例示化合物の基本マクロライドが、実施例で使用したアッセイにおいて、50μMの濃度までPDE4阻害活性を全く示しておらず、また、たとえ、本発明の化合物の一つにおいてその基本マクロライドに結合している置換基が、遊離形で使用された場合、例えば3.6μMのIC50(PDE4)を有する以下の化合物:
【0221】
【化30】

【0222】
のように、いくらかのPDE4阻害活性をそのアッセイで示したとしても、全く同じ化合物が一緒に結合して式(I)の分子を形成する本発明に係る対応する化合物のPDE4阻害活性は、一般に、その部分構成成分の対応する活性ならびに当該部分構成成分の混合物に対して合理的に予期される活性よりもはるかに改善されたPDE4阻害活性を示しているので、特に驚くべきことである。本ケースにおいて、例えば、式:
【0223】
【化31】

【0224】
を有する実施例11の化合物について、0.008μMのIC50(PDE4)が見出されており、これは、遊離形のマクロライド置換基についてのIC50(PDE4)の約500分の1に過ぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化32】


(式中、
R1は、残基−Y−X−Qであり;
Yは、S、SO又はSOであり;
Xは、結合、あるいは水素原子及びC、N、O及び/又はSからなる9個までの原子を有する線状基であり、そのうち2個までの原子が、Nであってよく、1個の原子がO若しくはSであってよく、1個の炭素原子が、CO基として現れてもよく、硫黄原子が、SO基として現れてもよく、かつ2個の隣接するC原子が、−CH=CH−若しくは−C≡C−として存在してもよく、基Xは非置換であるか又は−COO−W若しくは−CONH−Wで置換されており;
Qは、残基−V−A1−L−A2−Wであるか、又はXが結合を表さない場合には、−NR6R7であってもよく;
Vは、二価の芳香族又はヘテロ環基であり;
Wは、アリール又はヘテロシクリルであるか;あるいは基−V−A1−L−A2−W(式中、基A1;L若しくはA2の少なくとも1つが存在する)において、一価の置換若しくは非置換の、飽和若しくは不飽和の、C、N、O及び/又はSからなる5個までの原子を有し、そのうち1個の炭素が、CO基として現れてもよく、1個の硫黄原子が、SO基として現れてもよい線状基であってもよく、
A1、A2は、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基であり;
Lは、−O−、−S−、−SO−、−NH−、−CO−、−(CO)O−、O(OC)−、−(CO)NH−、−NH(CO)−、−(SO)NH−、−HN(SO)−、−HN(CO)NH−、−O(CO)NH−、−NH(CO)O−であるか、あるいはA1及び/又はA2が存在する場合には、存在していなくてもよく;
R2は、水素であり、
R3はOR4であるか、又は
R2、R3は一緒になって、C=O基を形成し;
R4は、式I中で出現ごとに独立して、水素又は1〜6個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族基であり;
R6、R7は、アリール;アラルキル;ヘテロシクリル及びヘテロシクリルアルキルから独立に選択され;R6及びR7の一方は、基−L−Wであってもよく;
は、(R)若しくは(S)体であるキラル中心を示す)
のマクロライド化合物、
ただし、
R2、R3が一緒になって、C=O基を形成し;
R4が、メチルであり、
R1が、
【化33】


である、式Iの化合物を除く。
【請求項2】
Yが、SO又は、好ましくはSである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、ヒドロキシル若しくはアリルオキシであるか、又は、好ましくは
R2、R3が一緒になって、C=O基を形成している、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
特にマクロライド環の6位のRが、水素又は、好ましくはメチルである、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
Qが、残基−V−A1−L−A2−Wである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
Qが、−NR6R7である、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
Wが、アリール又は、好ましくはヘテロシクリルである、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
Vが、式
【化34】


(式中、
【化35】


は、フェニレン環、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和の二価のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)であり、R8及びR9は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキル−C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C〜Cアルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、オキソ基;又はアリール若しくはヘテロシクリル(それらは、非置換、又はアリール若しくはヘテロシクリル以外の、一つ以上の上で特定した置換基で置換されていてもよい)からなる群より独立して選択されるか、又は置換基R8及びR9の両方が、環:
【化36】


の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員若しくは6員の芳香族、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)を形成してもよく、ここで、Vは、全体で、R8及びR9について定義した種類の1〜4個の置換基を有していてもよく、自由原子価は、基Vの一方又は両方の環のいずれかに位置していてもよい)
の二価の基である、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
Vが、式
【化37】


の二価の基である、請求項1〜5又は7〜8のいずれか一項、特に請求項5記載の化合物。
【請求項10】
Wが、式
【化38】


(式中、
【化39】


は、フェニル環、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)であり、R10及びR11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキル−C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ハロゲン置換C〜Cアルキル基、シアノ、ニトロ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルキルチオ、メルカプト、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシル基、及びオキソ基からなる群より独立して選択されるか、又は置換基R10及びR11の両方が、環:
【化40】


の隣接する炭素原子に位置する場合、これら2個の置換基は、前記隣接する炭素原子と一緒になって、5員若しくは6員の芳香族、又は2〜(x−1)個の炭素原子と、硫黄及び、好ましくは酸素と窒素からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを含む、x員の飽和若しくは不飽和のヘテロ脂環式若しくはヘテロ芳香族環(ここでxは、5〜8、好ましくは5又は6である)を形成してもよく、ここで、Wは、全体で、R10及びR11について定義した種類の1〜4個の置換基を有していてもよく、自由原子価は、基Wのいずれの環に位置していてもよい)
の基である、請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
Wは、式:
【化41】


の一つの基であるか、又は
式:
【化42】


(式中、R12は、水素又はC〜Cアルキルである)
の基である、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
A1、A2が、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基であり;
Lは、−NH−、−(CO)NH−又は−NH(CO)−であるか、あるいは存在しない、請求項1〜5又は7〜11のいずれか一項、特に請求項5記載の化合物。
【請求項13】
A1、A2が、互いに独立して、存在しないか又はC〜Cアルキレン基であり;
Lは、−NH−、−(CO)NH−又は−NH(CO)−であり;
Vが、式:
【化43】


の二価の基であり、
Wが、式:
【化44】


の基である、請求項9、11又は12記載の化合物。
【請求項14】
Yが、Sであり、
Xが、NH基を介して残基Qに結合している−CH−CH−NH−又は、好ましくは−CH−CH−である、請求項1〜13のいずれか一項、特に請求項13記載の化合物。
【請求項15】
−NR6R7が、以下の式:
【化45】


の一つの基である、請求項6記載の化合物。
【請求項16】
R2、R3が一緒になって、C=O基を形成し;
マクロライド環の6位のR4が、メチルである、請求項1〜15のいずれか一項、特に請求項9、11、12、13,14又は15記載の化合物。
【請求項17】
式:
【化46】


を有する、請求項1〜16のいずれか一項記載の化合物。
【請求項18】
式:
【化47】


を有する、請求項1〜16のいずれか一項記載の化合物。
【請求項19】
式:
【化48】


を有する、請求項1〜16のいずれか一項記載の化合物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬。
【請求項21】
主としてヒトホスホジエステラーゼ、特にヒトホスホジエステラーゼ4の阻害による障害を処置するための、請求項20記載の医薬。
【請求項22】
炎症性及びアレルギー性疾患の予防及び/又は治療のための、請求項20又は21記載の医薬。
【請求項23】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、リューマチ性関節炎、アトピー性皮膚炎又は炎症性腸疾患の予防及び/又は治療のための、請求項20又は21記載の医薬。
【請求項24】
医学的治療における使用、特に炎症性及び/又はアレルギー性疾患の予防又は治療のための、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物。
【請求項25】
治療を必要とする対象の炎症性又はアレルギー性疾患の治療又は予防方法であって、前記炎症性及び/又はアレルギー性疾患の予防又は治療に有効な量の、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物を、前記対象に投与する、方法。
【請求項26】
対象における慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、リューマチ性関節炎、アトピー性皮膚炎又は炎症性腸疾患の治療又は予防のための、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ヒトホスホジエステラーゼ、特にヒトホスホジエステラーゼ4の阻害により改善し得る障害又は疾患に罹患したヒトの治療方法であって、前記障害又は疾患の改善に有効な量の、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物を、前記ヒトに投与する、方法。
【請求項28】
前記疾患又は障害が、炎症性又はアレルギー性疾患又は障害である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
炎症性又はアレルギー性疾患の予防及び治療用の医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項30】
ヒトホスホジエステラーゼ、特にヒトホスホジエステラーゼ4の阻害により改善し得る障害又は疾患の処置用の医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項31】
請求項1〜19のいずれか一項記載の式Iの化合物の製造方法であって、
a)式:
【化49】


(式中、R4は、請求項1に定義したとおりである)
を有するマクロライド化合物を、それ自体公知の方法で、式IV:
【化50】


(式中、Rp及びRpは各々、ヒドロキシル保護基であり、R4は、上で定義したとおりである)の化合物に変換し、
b)前記式IVの化合物を、それ自体公知の方法で、式VI:
【化51】


(式中、R1は、請求項1に定義したとおりであるか、又は式−S−Rp基であり、ここでRpは、硫黄保護基であり、かつRp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)で示される化合物に変換し、
c)前記式VIの化合物を、非プロトン性溶媒中で、アルカリ金属塩基と反応させて、式VII:
【化52】


(式中、R1ならびにRp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物を形成し、
ヒドロキシル保護基Rp及びRpを同時に、又は連続的に除去して、式Iの化合物(式中、R2、R3は一緒になって、C=O基を形成する)を形成し、
所望により、その化合物を、それ自体公知の方法で、式Iの化合物(式中、R2は水素であり、R3はヒドロキシル又は−O−(脂肪族基)から選択され、その脂肪族基は1〜6個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族基を表す)に変換することを含み;
ただし、R1がS−Rpである場合、ヒドロキシル保護基Rp及びRpを除去する前に、式VIIの化合物を、モレキュラーシーブの存在下、
式IX:
【化53】


(式中、Rpは、C1〜C4アルキル、特にメチルであるか、又は3−ニトロ−2−ピリジニルである)のジスルフィド誘導体に変換し、
この化合物を、溶媒、特にアセトン、DMF、ジオキサン又はTHFの水溶液中、還元剤、特にトリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンで処理し、
式X:
【化54】


(式中、Rp及びRpは、上記の意味を有する)の化合物を得、
次に、この化合物を、式Q−X−Lg(式中、Q及びXは、請求項1に定義したとおりであり、Lgは、脱離基であるか、又はXがカルボニル若しくはスルホニル基を表す場合、ビニル基である)の化合物と反応させて、式VII(式中、R1は、請求項1に定義したとおりである)の化合物を得ることを条件とする、方法。
【請求項32】
請求項1〜19のいずれか一項記載の式Iの化合物(式中、R1は、残基−Y−X−Qであり、ここで、X及びQは、請求項1と同じ意味を有し、YはSである)の製造方法であって、
a)式:
【化55】


(式中、R4は、請求項1に定義したとおりである)
を有するマクロライド化合物を、それ自体公知の方法で、式IV:
【化56】


(式中、Rp及びRpは各々、ヒドロキシル保護基であり、R4は、上で定義したとおりである)の化合物に変換し、
b1)前記式IVの化合物を、活性化クロロ酢酸誘導体、特にジ(クロロ酢酸)無水物の存在下に、それ自体公知の方法で、式V:
【化57】


(式中、Rp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物に変換し、
b2)さらに、前記式Vの化合物を式:
MS−X−Q
(式中、Mは、アルカリ金属原子を表す)の化合物と反応させて、式VI:
【化58】


(式中、R1は、−S−X−Qであり、X、Q、Rp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物を形成し、
c)前記式VIの化合物を、非プロトン性溶媒中で、アルカリ金属塩基と反応させて、式VII:
【化59】


(式中、R1ならびにRp及びRpならびにR4は、上記の意味を有する)の化合物を形成し、
ヒドロキシル保護基Rp及びRpを同時に、又は連続的に除去して、式Iの化合物(式中、R2、R3は一緒になって、C=O基を形成する)を形成し、
所望により、その化合物を、それ自体公知の方法で、式Iの化合物(式中、R2は水素であり、R3はヒドロキシル又は−O−(脂肪族基)から選択され、その脂肪族基は1〜6個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族基を表す)に変換することを含む、方法。

【公表番号】特表2010−500329(P2010−500329A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523292(P2009−523292)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058247
【国際公開番号】WO2008/017696
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(501241380)バジリア ファルマスーチカ アーゲー (24)
【氏名又は名称原語表記】Basilea Pharmaceutica AG
【Fターム(参考)】