説明

炎症障害の治療において使用するための新たな併用

(a)ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、(b)スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物とを含む併用製品を提供する。このような併用製品は、アテローム性動脈硬化症および関連状態の治療において特定の有用性を見出すものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な薬剤の併用に関する。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈性心疾患および脳卒中などの心臓血管疾患は、特に先進国において、死亡、身体障害、および健康管理の出費の主な原因である。このような疾患は、アテローム性動脈硬化症という、喫煙し、かつ/または高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、血漿中低密度リポタンパク質(LDL)およびトリグリセリドの上昇などの危険因子を示す対象において優先的に発症する多因子疾患の直接的な後遺症であることが多い。
【0003】
アテローム性動脈硬化症の病変(またはプラーク)はしばしば、数年にわたって、時には数十年にわたって発達する。動脈壁中のコレステロールの蓄積、泡沫細胞形成、炎症および細胞増殖などの病的過程が典型的には関与する。
【0004】
高密度リポタンパク質(HDL)のレベル、LDL、全体のコレステロールおよびトリグリセリドは、いずれも冠動脈疾患(例えば狭心症、心筋梗塞など)、脳卒中(脳血管発作および一過性虚血性発作を含む)および末梢動脈閉塞性疾患などの、アテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害を発症する危険を決定する際の指標である。
【0005】
全コレステロールおよび/またはトリグリセリドレベルが高い患者は、好ましいHDLレベルも有するかどうかとは無関係に、相当危険な状態にある。全体的コレステロールレベルは正常であるがHDLレベルが低い患者も、危険が増大した状態にある。近年、高レベルのアポリポタンパク質B(ApoB;超低密度リポタンパク質(VLDL)およびLDLにおいて脂質を運搬する)、および/または低レベルのアポリポタンパク質A-I(ApoA-I;HDLにおいて脂質を運搬する)を伴う心臓血管疾患の危険のレベルが非常に高いことも示されてきている。
【0006】
血清中のLDLレベルを低下させる薬剤はアテローム性動脈硬化症のプラークの蓄積を低下させることが可能であり、かつプラーク破裂および関連する血栓塞栓性合併症の危険を(長期間)低下させることが可能である。血中コレステロールレベルの低下に助力することができる幾つかの型の薬剤が存在する。最も一般的に処方されるのは、シンバスタチンおよびアトルバスタチンを含めた、ヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)レダクターゼ阻害剤(それらの一般名とは無関係に「スタチン」として本明細書では以後統一して定義する)である。これらの薬剤は肝臓中のコレステロールの形成を直接妨げ、それによって心臓血管疾患の危険を低下させる。
【0007】
他の処方薬の種類には、胆汁酸と結合し、それによって肝臓により多くの胆汁酸を生成させ、その過程でコレステロールを使い果たすことによって作用する、樹脂類(コレスチラミンおよびコレスチポールなど)がある。さらに、ビタミンB群のナイアシンは、HDLレベルを増大させることに加えて、高用量でトリグリセリドおよびLDLレベルを低下させることが報告されている。フィブレート(ゲムフィブロジルおよびフェノフィブレートなど)はトリグリセリドを低下させることが知られており、HDLレベルを増大させることが可能である。
【0008】
スタチンなどのコレステロール低下薬の導入は、冠状動脈性心疾患および脳卒中が原因の死亡率を有意に低下させている。しかしながら、これらの薬剤には、それらは全ての患者において等しく有効であるわけではないという欠点があり、幾つかの副作用(例えば、肝機能の変化、ミオパシーおよび横紋筋融解症)を有することが知られており、かつアテローム性動脈硬化症は依然として死および身体障害の主な原因である。実際、近年の総説(Briel et al、JAMA、295、2046(2006))では、急性冠症候群を有する患者の治療の最初の4カ月の間で、スタチンが重大な心臓血管事象を低減しないことが示唆される。
【0009】
したがって、特に急性冠症候群を有する患者における、アテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害のより安全および/または有効な治療が、真に臨床上必要である。
【0010】
ペミロラストは、喘息、アレルギー性鼻炎および結膜炎などの状態の治療において使用される、経口で有効な抗アレルギー薬である。例えば、米国特許第4,122,274号、欧州特許出願EP316174および欧州特許出願EP1285921、Yanagihara et al、Japanese Journal of Pharmacology、51、93(1989)およびDrugs of Today、28、29(1992)を参照されたい。この薬剤は、カリウム塩として例えば日本で現在販売されている。
【0011】
再狭窄の予防におけるペミロラストの潜在的使用に関する、幾つかの試験が報告されている(Miyazawa et al、J.Cardiovasc.Pharmacol.、30、157(1997)およびOhsawa et al、Am.Heart J、136、1081(1998) およびJ.Cardiol.42、13(2003))。ペミロラストが血管平滑筋細胞の増殖に対して阻害効果を示すことを開示する、欧州特許出願EP766693も参照されたい。
【0012】
米国特許出願US2006/0024365は、即効型の低用量活性成分と併用して放出調節型の高用量高溶解度活性成分を含む、二重抑制型の医薬剤形を開示する。本明細書で述べる幾つかの薬剤を含めた広く様々な薬剤が、低用量活性成分の可能性のある候補として挙げられる。
【0013】
米国特許出願US2007/0014733A1は、ネビボロールの代謝産物を含む心臓血管障害を治療するための医薬組成物を開示する。本明細書で述べる幾つかの化合物を含めた様々な活性化合物が、このような組成物においてこのような代謝産物と併用することが可能である多くの活性成分の中で挙げられる。
【0014】
米国特許出願US2006/0148830A1は、特に泌尿系の障害、炎症などにおいて使用するための、LPA受容体(特にEDG-2受容体)の新規なアンタゴニストを開示する。本明細書で述べる幾つかの化合物を含めた特定の活性化合物を、このような新規な化合物と併用することが可能である多くの異なる活性成分の中で別々に述べる。
【0015】
米国特許出願US2006/0084695は、例えばアテローム性動脈硬化症などの心臓血管疾患の治療において使用するための、MAPキナーゼおよび/またはHMG-CoAレダクターゼの阻害剤を開示する。
【0016】
最後に、米国特許出願US2005/0181023A1は、組織および/または臓器表面間の接着の阻害または予防において使用するための、ペミロラストを含む医薬組成物を開示する。
【0017】
特にペミロラストおよびスタチンを含む併用製品の使用は、前述の文書のいずれにおいても具体的に開示されていない。さらに、特に急性冠症候群を有する患者における、アテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害の治療中のこのような併用製品の使用は、これらの文書のいずれにおいても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,122,274号
【特許文献2】欧州特許出願EP316174
【特許文献3】欧州特許出願EP1285921
【特許文献4】欧州特許出願EP766693
【特許文献5】米国特許出願US2006/0024365
【特許文献6】米国特許出願US2007/0014733A1
【特許文献7】米国特許出願US2006/0148830A1
【特許文献8】米国特許出願US2006/0084695
【特許文献9】米国特許出願US2005/0181023A1
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Briel et al、JAMA、295、2046(2006)
【非特許文献2】Yanagihara et al、Japanese Journal of Pharmacology、51、93(1989)
【非特許文献3】Drugs of Today、28、29(1992)
【非特許文献4】Miyazawa et al、J.Cardiovasc.Pharmacol.、30、157(1997)
【非特許文献5】Ohsawa et al、Am.Heart J、136、1081(1998)
【非特許文献6】J.Cardiol.42、13(2003)
【非特許文献7】Remington The Science and Practice of Pharmacy、19th ed.、Mack Printing Company、Easton、Pennsylvania(1995)
【非特許文献8】Martindale-The Complete Drug Reference(34th Edition)
【非特許文献9】Ziegler-Heitbrock et al、Int.J.Cancer、41、456(1988)
【非特許文献10】Young et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、9175(1987)
【非特許文献11】http://www.atcc.org
【非特許文献12】Rumsaeng et al(J Immunol.158、1353(1997))
【非特許文献13】Winter et al(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、111、544(1962))
【非特許文献14】Tonelli et al(Endocrinology 77、625(1965))
【非特許文献15】Chang et al(Ear.J.Pharmacol.142、197(1987))
【非特許文献16】Hedin et al、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.、17、1977(1997)
【非特許文献17】www.bioconductor.org
【非特許文献18】Bertele et al(Eur.J Pharmacol.85、331(1982))
【非特許文献19】Rao et al(J.Pharmacol.Exp.Ther.269、917(1994))
【非特許文献20】Lanotte et al、Blood、77、1080(1991)
【非特許文献21】Steinhilber et al、Biochim.Biophys.Acta1178、1(1993)
【非特許文献22】Li et al.Circulation100、1374(1999)
【非特許文献23】Bioorganic & Medicinal Chemistry、Vol.5、No.5、pp437〜444、1997
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、
(a)ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、
(b)スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と
を含む併用製品を提供し、この併用製品は本明細書では以後「本発明による併用製品」と呼ぶ。
【0021】
用語「スタチン」は1つまたは複数のスタチンを含む。用語「スタチン」および「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤」は本発明の文脈では同義に使用し、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、グレンバスタチン、セリバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、ベルバスタチン、ダルバスタチンおよびアトルバスタチンを含む。
【0022】
述べることができる他のスタチンには、アシテメート、ベンフルオレクス、クレスチン、コレストロン、ジヒドロメビノリン、メグルトール、ローソノール、および以下のコードネームを有する化合物:ATI-16000、BAY-10-2987、BAY-x-2678、BB-476、BIO-002、BIO-003、BIO-2、BMS-180431、CP-83101、DMP-565、FR-901512、GR-95030、HBS-107、KS-01-019、L-659699、L-669262、NR-300、P-882222、PTX-023595、RP61969、S-2468、SC-32561、sc-45355、SDZ-265859、SQ-33600、U-20685、およびNO増大/放出スタチン、NCX-6560(ニトロプラバスタチン)などがある。
【0023】
より好ましいスタチンには、ピタバスタチン(例えばLivalo(登録商標)、Pitava(登録商標))、より好ましくはフルバスタチン(例えばLescol(登録商標))、シンバスタチン(例えばZocor(登録商標)、Lipex(登録商標))、ロバスタチン(例えばMevacor(登録商標)、Altocor(登録商標))、ロスバスタチン(例えばCrestor(登録商標))、プラバスタチン(例えばPravachol(登録商標)、Selektine(登録商標)、Lipostat(登録商標))およびアトルバスタチン(例えばLipitor(登録商標)、Torvast(登録商標))がある。特に好ましいスタチンにはシンバスタチン、より詳細にはロスバスタチン、特に、アトルバスタチンがある。
【0024】
述べることができる薬学的に許容される塩には、酸付加塩および塩基付加塩がある。このような塩は、従来の手段、例えば遊離酸または遊離塩基形態の活性成分と1または複数当量の適切な酸または塩基を、場合によっては溶媒中、またはその塩が溶けない培地中で反応させ、次に標準的な技法を使用して(例えば真空中で、凍結乾燥によってまたは濾過によって)前記溶媒、または前記培地を除去することによって形成され得る。塩の形態の活性成分の対イオンと他の対イオンを交換することによって、例えば適切なイオン交換樹脂を使用して、塩を調製することも可能である。
【0025】
ペミロラストの好ましい塩には、ペミロラストナトリウム、より好ましくはペミロラストカリウムがある。
【0026】
スタチンの好ましい塩には、ナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩、ピタバスタチンカルシウム、フルバスタチンナトリウム、プラバスタチンナトリウム、ロスバスタチンカルシウムおよびアトルバスタチンカルシウムなどがある。
【0027】
本発明による併用製品において使用する活性成分は、ジアステレオアイソマー濃縮および/またはエナンチオマー濃縮形態で使用することができる。「ジアステレオアイソマー濃縮」および「エナンチオマー濃縮」は、1つの異性体が他の異性体より多い割合で存在する活性成分のジアステレオアイソマー/エナンチオマーの任意の混合物をそれぞれ意味する。例えば、90%を超える光学純度(エナンチオマー過剰率;e.e.)を有するエナンチオマーを使用することができる。
【0028】
本発明による併用製品は、スタチンと併用する、本明細書で前記に定義したペミロラストの投与をもたらし、したがって、少なくとも1つのこれらの配合物がペミロラストを含み、かつ少なくとも1つがスタチンを含む別個の配合物として提供することもでき、または混合製剤として提供(すなわち配合)する(すなわち、ペミロラストおよびスタチンを含む単一配合物として表す)こともできる。
【0029】
したがって、
(1)ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物;スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物;および薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む医薬配合物(この配合物は本明細書では以後「混合製剤」と呼ぶ)、および
(2)以下の構成要素:
(A)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬配合物と、
(B)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬配合物と
を含むキット(kit of parts)であって、この構成要素(A)および(B)がそれぞれ、他方と併用する投与に適した形態で提供されるキット
をさらに提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、前記に定義したキットを作製する方法であって、前記に定義した構成要素(A)を前記に定義した構成要素(B)と組み合わせ、これによって2つの構成要素を互いとの併用投与に適した状態にする段階を含む方法を提供する。
【0031】
2つの構成要素を互いに「組み合わせる」ことには、キットの構成要素(A)および(B)が:
(i)別個の配合物として(すなわち、互いに独立に)提供でき、これらは後に併用療法における互いとの併用使用のために一緒にされること、または
(ii)併用療法における互いとの併用使用のために「併用パック」の別個の構成要素として一緒にパッケージおよび提供できること
が含まれる。
【0032】
したがって、
(I)本明細書で定義する構成要素(A)および(B)の一方
を、
(II)その構成要素を2つの構成要素の他方と併用して使用するための説明書
と一緒に含むキットをさらに提供する。
【0033】
本明細書に記載するキットは、反復投与をもたらすために、適切な量/用量のペミロラスト/塩/溶媒和物を含む2つ以上の配合物、および/または適切な量/用量のスタチン/塩/溶媒和物を含む2つ以上の配合物を含むことができる。(いずれかの活性化合物を含む)2つ以上の配合物が存在する場合、いずれかの化合物の用量、化学組成および/または物理的形状の点で、このような配合物は同じであってよく、または異なってよい。
【0034】
本発明による併用製品において使用するスタチンは、いわゆる「スタチンラクトン」の形態ではないことが好ましい。しかしながら、本発明による併用製品は、ピタバスタチンラクトンおよびメバスタチンラクトン、好ましくはフルバスタチンラクトン、ロスバスタチンラクトン、プラバスタチンラクトンおよびアトルバスタチンラクトン、特にロバスタチンラクトンおよびシンバスタチンラクトンを含むことができる。
【0035】
本発明による併用製品は、炎症状態の治療において有用性を見出すものである。炎症状態は典型的には免疫防御機構の活性化によって特徴付けられ、宿主に対して有益な影響より有害な影響をもたらす。このような状態は一般に、様々な程度の組織発赤または充血、膨張、高体温、痛み、かゆみ、細胞死および組織破壊、細胞増殖、および/または機能消失と関係がある。述べることができる炎症状態には、膀胱炎、前立腺炎、糖尿病性血管合併症、片頭痛、より好ましくはアレルギー(アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎を含む)、強直性脊椎炎、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患、接触性皮膚炎、痛風性関節炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、多発性硬化症、変形性関節炎、膵炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、腱炎、滑液包炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、蕁麻疹、血管炎、アテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害がある。述べることができる状態には、片頭痛、より好ましくは喘息、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、より好ましくはアテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害がある。
【0036】
用語「アテローム性動脈硬化症」が、血管、特に動脈壁中のコレステロールの蓄積、泡沫細胞形成、炎症および細胞増殖によって特徴付けられる任意の疾患を含むことは当業者によって理解されよう。アテローム性動脈硬化症と「関連がある」心臓血管障害は、大動脈瘤(腹部および/またはアテローム性動脈硬化による大動脈瘤を含む)、より好ましくはアテローム性動脈硬化症、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患(例えば狭心症、心筋梗塞、心臓発作など)、冠疾患(心臓病および心疾患、一過性心疾患などを含む)を含み、プラークまたはアテロームの破裂および/または不安定性、血管または動脈疾患、虚血性疾患/虚血および脳卒中(脳血管発作および一過性虚血性発作を含む)も含み得る。
【0037】
好ましい患者群は、急性冠症候群を有する患者群を含む。用語「急性冠症候群」は、独占的にではないが例えば胸痛の発生(例えば、心臓性)および/または異常な心電図(ECG)と関係があることが多い、任意の異常な心筋および虚血状態を含むことは当業者によって理解されよう。このような症候群は、心筋梗塞(心臓発作)の最も一般的な現れである。当業者なら、この用語が、用語「安定狭心症」(すなわち、労作中に発生し安静時に消散する狭心症)と対照的に、用語「不安定狭心症」とほぼ同義であることを理解するであろう。悪化的速度で生じる労作性狭心症(「漸増性狭心症」)は、定義「不安定」内であるとして当業者によって同様にみなされるはずである。
【0038】
本発明のさらなる態様によれば、炎症障害、特にアテローム性動脈硬化症および/または関連する心臓血管障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に本発明による併用製品を投与する段階を含む方法を提供する。
【0039】
誤解を避けるために、本発明の文脈では、用語「治療」、「療法」および「治療方法」は、療法的、または苦痛緩和的な、必要性のある患者の治療、およびアテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害などの炎症障害に罹患しやすい患者の予防的治療および/または診断を含む。
【0040】
本明細書に記載するキットに関して、「併用投与」には、ペミロラスト(またはその塩/溶媒和物)およびスタチン(またはその塩/溶媒和物)を含むそれぞれの配合物を、関連状態の治療過程にわたって順次、別々にかつ/または同時に投与することが含まれる。
【0041】
したがって、本発明による併用製品に関して、用語「併用投与」は、併用製品の2つの構成要素(ペミロラストおよびスタチン)を、一緒、または十分に接近した時間のいずれかで(場合によっては反復して)投与して、関連状態の治療過程にわたって、ペミロラストを含む配合物、またはスタチンを含む配合物のいずれかを、同じ治療過程にわたって、単独、他方の構成要素の不在下で(場合によっては反復して)投与する場合より大きな、患者に対する有益な影響を実現させることを含む。ある併用が治療過程にわたって個々の状態に関してより有益な影響をもたらすかどうかの決定は、治療または予防する状態に依存し得るが、それは当業者によって日常的に実施することができる。
【0042】
さらに、本発明によるキットの文脈では、用語「と併用して」は、2つの配合物の一方または他方を、他の構成要素の投与前、後、および/または同時期に(場合によっては反復して)投与することができることを含む。この文脈で使用するとき、用語「同時に投与する」および「と同時期に投与する」は、個々の用量のペミロラストとスタチンを互いに48時間(例えば24時間)以内に投与することを含む。
【0043】
「患者」は、(ヒトを含めた)哺乳動物患者を含む。
【0044】
本発明によれば、ペミロラストおよびスタチンは、局所または全身に、例えば経口、静脈内または動脈内(血管内ステントおよび他の血管周囲デバイス/剤形による投与を含む)、筋肉内、皮膚、皮下、経粘膜(例えば、舌下または口腔)、直腸、経皮、鼻腔、肺(例えば、気管または気管支)、局所、または任意の他の非経口経路で、薬学的に許容される剤形の化合物を含む医薬調製物の形態で投与することが好ましい。送達の好ましい形態には、(特に)経口、静脈内、皮膚または皮下、鼻腔、筋肉内、または腹腔内送達がある。
【0045】
ペミロラストとスタチンは一般に、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、1つまたは複数の医薬配合物の形態で一緒または別々に投与することができ、この投与は、目的とする投与経路および標準的な薬務を十分考慮して選択することができる。このような薬学的に許容される担体は活性化合物に対して化学的に不活性でよく、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さないものでよい。このような薬学的に許容される担体は、混合製剤またはキットの形態で一緒に投与しようと、いずれかの活性成分の即効型、または調節型の放出をもたらすこともできる。
【0046】
適切な医薬配合物は市販されている可能性があり、またはそれ以外は文献、例えばRemington The Science and Practice of Pharmacy、19th ed.、Mack Printing Company、Easton、Pennsylvania(1995)およびMartindale-The Complete Drug Reference(34th Edition)およびその中で言及されている文書中に記載されており、これらの文書の全てにおける関連開示は参照により本明細書に組み込まれている。他の場合、適切な配合物、特にペミロラストとスタチンの両方を含む混合製剤の調製は、通常の技法を使用して当業者によって非独創的に実施することができる。
【0047】
配合物中の活性成分の量は、状態の重度、および治療する患者、および使用する化合物に依存するはずであるが、当業者によって非独創的に決定することができる。
【0048】
障害、および治療する患者、および投与の経路に応じて、必要性のある患者に様々な治療有効用量で、活性成分を投与することができる。
【0049】
しかしながら、哺乳動物、特にヒトに投与する用量は、本発明の文脈では、妥当な時間枠で哺乳動物中の治療応答に影響を与えるのに十分でなければならない。当業者は、正確な用量および組成および最も適切な送達レジメンの選択も、特に配合物の薬理学的性質、治療する状態の性質および重度、ならびにレシピエントの身体状態および知力、および特定の化合物の有効性、治療する患者の年齢、状態、体重、性別および応答、疾患の段階/重度、および患者間の遺伝的差異によって影響を受け得ることを理解しているはずである。
【0050】
活性成分の投与は連続的または断続的であってよい(例えばボーラス注射による)。投与のタイミングおよび頻度によって用量を決定することも可能である。
【0051】
活性成分の適切な用量は、Martindale-The Complete Drug Reference(34th Edition)などの医学文献、およびその中で言及されている文書中で言及されている用量を含み、これらの文書の全てにおける関連開示は参照により本明細書に組み込まれている。したがって、活性成分の適切な用量は、約0.01mg/体重1kg〜約1,000mg/体重1kgの範囲内である。より好ましい範囲は、経口的に与えるとき、1日単位で約0.1mg/kg〜約20mg/kgである。
【0052】
しかしながら、ペミロラストの適切な用量は当業者に知られている。例えば、1日の用量の適切な下限は、約2mg、例えば約5mg、約10mgなど、およびより好ましくは約20mgの範囲であり、かつ1日の用量の適切な上限は、約200mg、例えば約100mg、約80mgなど、およびより好ましくは約60mgの範囲である。したがって、1日の個人当たりの用量は、約2mgと約50mgの間、約5mgと約40mgの間など、および好ましくは約10mgと約30mgの間であってよい。適切な個々の用量は、1日当たり約20mg、または約40mgであってよい。前述の用量/用量範囲はいずれも、使用する配合物が本明細書で前記に記載した混合製剤またはキットであるかどうかとは無関係である。
【0053】
同様に、スタチンの適切な用量は当業者に知られている。したがって経口用量は、使用する配合物が本明細書で前記に記載した混合製剤またはキットであるかどうかとは無関係に、典型的には1日当たり約2mg〜約150mg、約5mg〜約100mgなど、好ましくは約8mg〜約90mg、例えば約10mg〜約80mgの範囲である。ピタバスタチンの適切な用量は、使用する配合物が本明細書で前記に記載した混合製剤またはキットであるかどうかとは無関係に、1日当たり約0.5mg〜約10mg、約0.75mg〜約5mgなど、好ましくは約1mg〜約4mg、例えば約2mgの範囲である。
【0054】
いずれの場合も、医師、または他の当業者は、個々の患者に最適となる実際の用量を、通常通り決定することができるであろう。前述の用量は平均的な例の典型であるが、当然ながら、より高いまたは低い用量範囲に値する個々の場合が存在する可能性があり、かつこれらは本発明の範囲内にある。
【0055】
例えば活性成分の用量の文脈において、語句「約」を本明細書中で使用する場合は常に、このような変数は近似値であり、これらは本明細書で示す数値から±10%、例えば±5%および好ましくは±2%(例えば±1%)変わる可能性があることが理解されるであろう。
【0056】
本明細書に記載する併用製品/方法は、本明細書で前記に述べた状態の治療において、それらは医師および/または患者により好都合であり、より有効であり、より毒性が低く、より広範囲の活性を有し、より強力であり、より少ない副作用を生み出す可能性がある、あるいはそれは、炎症障害(アテローム性動脈硬化症および関連する心臓血管障害など)またはその他の治療において使用するための従来技術中で知られている同様の方法(治療)に優る、他の有用な薬理学的性質を有し得るという利点を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を、腹膜内注射したザイモザンA(ザイモザン)を用いた5時間の刺激によってもたらされた、腹膜炎なし(ベースライン)、および有りのマウス由来の腹膜洗浄液中の1mL当たりの多形核白血球(PMN)の平均数を示す、図(図1)を参照しながら以下の実施例によって例示する。未治療動物(未治療)、およびペミロラスト単独(Pemiro)、アトルバスタチン単独(Atorva)またはアトルバスタチンと併用したペミロラスト(Pemiro+Atorva)で治療した動物中の、ザイモザン誘導型炎症におけるPMN白血球蓄積を示す。
【実施例】
【0058】
(実施例1:MonoMac-6細胞の炎症メディエーターの放出アッセイ)
MonoMac-6(MM6)細胞(Ziegler-Heitbrock et al、Int.J.Cancer、41、456(1988))を、1mMのピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、1〜100μg/mLのインシュリン、1mMのオキサル酢酸、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%(v/v)ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640培地中で培養する(37℃/5%CO2)。分化用に、TGFβ(2ng/ml)および1,25(OH)2D3(50nM)を一般に約2〜4日間加える。
【0059】
炎症メディエーターロイコトリエンB4(LTB4)の放出を刺激するために、分化または未分化MM6細胞(1〜15×106/mLで;0.5〜1mL)を、25〜50μMのアラキドン酸および2〜10μMのカルシウムイオノフォアA23187(アラキドン酸なしでA23187を使用することもできる)と共に、5〜30分間インキュベートする(37℃、カルシウムを含むPBS中)。MM6細胞は、前述のA23187および/またはアラキドン酸有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)、および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。前述のMM6のインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のMM6:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)ヒト血小板の存在下において実施することもできる。このインキュベーション/刺激は2体積の冷メタノールで停止させ、プロスタグランジンB2(PGB2)を内標準として加える。サンプルは遠心分離にかけ、上清は水で希釈して30%の最終メタノール濃度に到達させ、pHは3〜4に調節する。上清中のアラキドン酸代謝産物は、事前に調整した(1mLのメタノール、次に1mLのH2O)C18固相カラムで抽出する(Sorbent Technology、U.K.)。代謝産物はメタノールで溶出させ、その後1体積の水を溶出液に加える。逆相HPLC用に、76μLのそれぞれのサンプルを39μLのHO2と混合させる(他の体積比を使用することもできる)。Waters RCM8×10カラムを、1.2mL/分でメタノール/アセトニトリル/H2O/酢酸(30:35:35:0.01v/v)を用いて溶出する。溶出液の吸光度は、PGB2およびLTB4の検出および定量化用に270nmでモニタリングする。LTB4の測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)キット製造者の説明書に従い使用することもできる。(複数の)製造者の説明書に従い市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を使用して、前述のMM6のインキュベーション/刺激由来の上清を、炎症メディエータープロスタグランジンE2(PGE2)および/またはトロンボキサンB2(TXB2)の含有量に関して分析することもできる。
【0060】
ペミロラストおよびスタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)のストック溶液を、超音波処理を用いてエタノール、DMSO、N-メチル-2-ピロリドン、PEG400、プロピレングリコールおよび/または脱イオン水もしくは生理食塩水溶液中で調製し、必要に応じて温めpHを調節する(他の賦形剤を使用することもできる)。細胞を、炎症メディエーターの放出のためのMM6の刺激前に((複数の)試験薬剤はMM6の刺激と同時に加えることもできる)、(複数の)試験薬剤と共に(スタチンと併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1分間〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2、カルシウムを含まないPBS中、または1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのRPMI-1640培地中)。これらの薬剤を加えて、1nM〜100μMの最終濃度に到達させる(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。
【0061】
IL-1β、IL-6、TNF、IL-8、IL-10、IL-12p70、MCP-1などの炎症性サイトカインおよびケモカインの放出を刺激するために、(1〜10×106/mLで)分化または未分化MM6細胞を、リポ多糖(LPS、最終濃度1〜100ng/mL)、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA、最終濃度1〜100ng/mL)またはLPS/PMA混合物と共に、(1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのPMI-1640培地中で)4〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2)。MM6細胞は、前述のPMAおよび/またはLPS有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸、カルシウムイオノフォアA23187および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。MM6細胞のインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のMM6:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)ヒト血小板の存在下において実施することもできる。細胞を、(複数の)試験薬剤と共に(スタチンと併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独、ストック溶液および濃度に関して前と同様に)、MM6の刺激前に、(37℃/5%CO2、1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのRPMI-1640培地中で)1分間〜24時間インキュベートする(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。(複数の)試験薬剤はMM6の刺激と同時に加えることもできる)。インキュベーション/刺激後に細胞をスピンダウンした後、上清中のヒトサイトカインおよびケモカイン濃度を、製造者の説明書に従いCytometric Bead Array(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、USA)を使用して定量化する。サイトカインおよびケモカインの測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用することもできる。マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、細胞ペレットはRLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0062】
(実施例2:ヒト末梢血単核細胞の炎症メディエーターの放出アッセイ)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)または多核細胞(PMN)を、確立したプロトコルを使用して健康なドナーの血液から、LymphoprepまたはFicoll-Paque分離(Polymorphoprep分離および/またはデキストラン沈殿有りまたはなし)によって単離する。
【0063】
炎症メディエーターロイコトリエンB4(LTB4)の放出を刺激するために、PBMCまたはPMN(1〜15×106/mLで;0.5〜1mL)を、25〜50μMのアラキドン酸および2〜10μMのカルシウムイオノフォアA23187(アラキドン酸なしでA23187を使用することもできる)と共に、5〜30分間インキュベートする(37℃、カルシウムを含むPBS中)。PBMC/PMNは、前述のA23187および/またはアラキドン酸有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)、および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。前述のPBMC/PMNのインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のPBMC/PMN:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)ヒト血小板の存在下において実施することもできる。このインキュベーション/刺激は2体積の冷メタノールで停止させ、プロスタグランジンB2(PGB2)を内標準として加える。サンプルは遠心分離にかけ、上清は水で希釈して30%の最終メタノール濃度に到達させ、pHは3〜4に調節する。上清中のアラキドン酸代謝産物は、事前に調整した(1mLのメタノール、次に1mLのH2O)C18固相カラムで抽出する(Sorbent Technology、U.K.)。代謝産物はメタノールで溶出させ、その後1体積の水を溶出液に加える。逆相HPLC用に、76μLのそれぞれのサンプルを39μLのHO2と混合させる(他の体積比を使用することもできる)。Waters RCM8×10カラムを、1.2mL/分でメタノール/アセトニトリル/H2O/酢酸(30:35:35:0.01v/v)を用いて溶出する。溶出液の吸光度は、PGB2およびLTB4の検出および定量化用に270nmでモニタリングする。LTB4の測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用することもできる。(複数の)製造者の説明書に従い市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を使用して、前述のPBMC/PMNのインキュベーション/刺激由来の上清を、炎症メディエータープロスタグランジンE2(PGE2)および/またはトロンボキサンB2(TXB2)の含有量に関して分析することもできる。細胞を、炎症メディエーターの放出のためのPBMC/PMNの刺激前に(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照、(複数の)試験薬剤はPBMC/PMNの刺激と同時に加えることもできる、)、(複数の)試験薬剤と共に(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1分間〜24時間インキュベートする(37℃で、カルシウムを含まないPBS中、または0〜10%のウシ胎児血清を含むRPMI-1640培地中)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。
【0064】
IL-1β、IL-6、TNF、IL-8、IL-10、IL-12p70、MCP-1などの炎症性サイトカインおよびケモカインの放出を刺激するために、(1〜10×106/mLで)PBMC/PMNを、リポ多糖(LPS、最終濃度1〜100ng/mL)、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA、最終濃度1〜100ng/mL)またはLPS/PMA混合物と共に、(1〜10%のウシ胎児血清を含むPMI-1640培地中で)4〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2)。PBMC/PMN細胞は、前述のPMAおよび/またはLPS有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸、カルシウムイオノフォアA23187および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。PBMC/PMNのインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のPBMC/PMN:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)ヒト血小板の存在下において実施することもできる。細胞を、(複数の)試験薬剤と共に(スタチンと併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独、前と同様)、PBMC/PMNの刺激前に、(37℃/5%CO2、1〜10%のウシ胎児血清を含むPMI-1640培地中で)1分間〜24時間インキュベートする(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する、(複数の)試験薬剤はPBMC/PMNの刺激と同時に加えることもできる)。インキュベーション/刺激後に細胞をスピンダウンした後、上清中のヒトサイトカインおよびケモカイン濃度を、製造者の説明書に従いCytometric Bead Array(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、USA)を使用して定量化する。サイトカインおよびケモカインの測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用することもできる。マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、細胞ペレットはRLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0065】
(実施例3:マウス肥満細胞の炎症メディエーターの放出アッセイ)
骨髄由来培養マウス肥満細胞(mMC)を、C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を培養することによって入手する。(PBSで洗浄したマウス大腿骨由来の)骨髄細胞を、10%の熱非働化ウシ胎児血清、4mMのL-グルタミン、50μMの2-メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸、10mMのHepes、および100μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、10%WEHI-3またはX-63濃縮馴化RPMI1640中で培養する(37℃/5%CO2)。(懸濁液中で増殖する)肥満細胞の発生は、細胞表面におけるKitの発現により(フローサイトメトリーにより)および/またはトルイジンブルー染色により確認する(一般に培養の少なくとも3〜5週間後)。
【0066】
結合組織型(CT型)の骨髄由来培養マウス肥満細胞を、C57BL/6マウス由来の骨髄細胞を培養することによって入手する。骨髄細胞を、10%の濾過FCS、4mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、100IU/mLのペニシリンG、100μg/mLのストレプトマイシン、0.1mMのMEMの非必須アミノ酸および50μMの2-MEを含み、50ng/mLの組換えネズミ幹細胞因子および1ng/mLのネズミ組換えIL-4を補充したRPMI1640培地中で培養する(37℃/5%CO2)。肥満細胞の発生は、細胞表面におけるKitの発現により(フローサイトメトリーにより)および/またはトルイジンブルー染色により確認する(一般に培養の少なくとも3〜5週間後)。
【0067】
マウス肥満細胞系MC/9(ATCCから入手、製品番号CRL-8306)およびC1.MC/C57.1(Young et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、9175(1987))を使用することもできる。MC/9細胞はATCCの説明書(http://www.atcc.org)に従い培養し、かつCl.MC/C57.1細胞はRumsaeng et al(J Immunol.158、1353(1997))中に記載されたように培養する。
【0068】
IgE-受容体の架橋を介した活性化/刺激用に、培養肥満細胞を、モノクローナルマウス抗TNPIgE抗体(IgEl-b4、ATCC、Rockville、MD、USA)で、37℃(5%CO2)において90分間最初に感作させ、15%ハイブリドーマ上清として使用する。N-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼ(またはヒスタミン)またはサイトカイン/ケモカイン放出アッセイ(以下参照)において使用する細胞に、次いでPBSを用いた2回の洗浄を施し、9/1のカップリング比で100ng/mLのTNP-BSA(Biosearch Technologies、サンフランシスコ、CA)の添加により(0.5〜10×106/mLで)細胞を活性化する前に、0.2%のウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)を補充したRPMI1640培地中に再懸濁させる。TNP-BSAとのインキュベーション(37℃/5%CO2)は、β-ヘキソサミニダーゼ(またはヒスタミン)の放出の分析に関して30分間、およびサイトカインおよびケモカイン放出の分析に関して6〜24時間である。細胞を、TNP-BSAの添加前に(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照、(複数の)試験薬剤はTNP-BSAの刺激と同時に加えることもできる)、(複数の)試験薬剤と共に(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1分間〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。インキュベーション/刺激後、サンプルは遠心分離にかけ、上清は以下に記載するようにβ-ヘキソサミニダーゼ(またはヒスタミン)および/またはサイトカイン/ケモカインの含有量に関して分析する。マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、細胞ペレットはRLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0069】
粒状肥満細胞の酵素β-ヘキソサミニダーゼのIgE依存的放出を検出するために、酵素比色分析アッセイを使用する。各ウエルの上清からの60μLを96ウエルプレートに移し、等体積の基質溶液(80mMクエン酸、pH4.5に溶かした7.5mMのp-ニトロフェニル-N-アセチル-b-D-グルコサミニド)と混合する。混合物は37℃において2時間ロッカープラットホーム上でインキュベートする。インキュベーション後、120μLのグリシン(0.2M、pH10.7)を各ウエルに加え、405および490nmにおける吸光度を、Emax Precision Microplate Reader(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して測定する。β-ヘキソサミニダーゼの放出は、細胞溶解後に決定した全体のβ-ヘキソサミニダーゼの割合として表す。粒状肥満細胞のヒスタミンのIgE依存的放出を検出するために、ヒスタミン測定用の市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用する。
【0070】
IL-6、IL-4、TNF、IL-1β、KC、MCP-1、IL-10、IL-12p70、IFNγなどのマウス肥満細胞のサイトカインおよびケモカインのIgE依存的放出を検出するために、製造者の説明書に従いCytometric Bead Array(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、USA)を使用する。サイトカインおよびケモカインの測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用することもできる。
【0071】
前述の肥満細胞の実験に加えて、(前述の)(複数の)試験薬剤の肥満細胞阻害効果を、(例えば、抗IgE(ラットまたはマウスIgEを用いた細胞の予備治療有りまたはなし)、コンカナバリンA、プロテインL、化合物48/80、イオノフォアA23187、PMAで)誘導される、新たに単離した腹膜ラットまたはマウス肥満細胞からのヒスタミン、β-ヘキソサミニダーゼまたはトリプターゼの放出を分析するための、十分確立され記述されている実験手法およびアッセイを使用して試験することもできる。
【0072】
(実施例4:RAW264.7細胞の炎症メディエーターの放出アッセイ)
RAW264.7細胞を、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清を補充したDMEM中で培養する(37℃/5%CO2)。
【0073】
IL-6、TNF、IL-1β、KC、MCP-1、IL-10、IL-12p70、IFNγなどの炎症性サイトカインおよびケモカインの放出を刺激するために、(1〜10×106/mLで)RAW264.7細胞を、リポ多糖(LPS、最終濃度1〜100ng/mL)、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA、最終濃度1〜100ng/mL)またはLPS/PMA混合物と共に、(1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのDMEM中で)4〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2)。RAW264.7細胞は、前述のPMAおよび/またはLPS有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸およびカルシウムイオノフォアA23187および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。RAW264.7のインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のRAW264.7:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)マウスまたはヒト血小板の存在下において実施することもできる。細胞を、サイトカイン/ケモカインの放出のためのRAW264.7の刺激前に(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照、(複数の)試験薬剤はRAW264.7の刺激と同時に加えることもできる)、(複数の)試験薬剤と共に(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1分間〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2、1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのDMEM中で)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。インキュベーション/刺激後に細胞をスピンダウンした後、上清中のマウスサイトカインおよびケモカイン濃度を、製造者の説明書に従いCytometric Bead Array(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、USA)を使用して定量化する。サイトカインおよびケモカインの測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用することもできる。マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、細胞ペレットはRLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0074】
(実施例5:カラギーナンによって誘導されたラットの足の炎症)
このアッセイは、Winter et al(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、111、544(1962))によって記載されたアッセイに本質的に従う。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、約150〜400gの重量のオスのSprague-DawleyまたはWisterラットに、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与する(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。最初の薬剤投与後1分間〜24時間、0.9%生理食塩水に溶かしたカラギーナン(TypeIV Lambda、Sigma Chemical Co.)の0.5、1.0または2.0%溶液を、麻酔ラットの1本の後足の足底下領域に注射する。事前に、カラギーナン注射後3〜24時間の表示間隔で、デジタル表示装置を有する圧力変換器と結合した変位容積計を用いて、注射した足の体積を測定する。膨張の程度は炎症浮腫の程度を示す。カラギーナン注射後3〜24時間、ラットを屠殺し、生理食塩水またはPBSで灌流させる(他の灌流培地を使用することもできる)。足底下軟質組織バイオプシーを炎症状態の足から回収し、重量測定し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol、Invitrogen、Carlsbad、CA中に-80℃で凍結させる)、かつ、以下に記載するように(実施例10および12)、1)炎症好中球白血球の蓄積を表すミエロペロキシダーゼ(MPO)の蓄積、および/または2)マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療ラットからの非炎症状態の足の組織は、ベースラインレベルのMPOおよび遺伝子発現をもたらす。従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して組織の炎症を試験することもできる。化合物48/80(48/80、1〜5μg、50〜100μlのPBSまたは生理食塩水中)(カラギーナンの代わり)の足底下注射、次に炎症状態の足の膨張の測定、および48/80注射後30分間〜8分間の(前述の)マイクロアレイおよび/またはMPO分析用の組織バイオプシーの回収によって、足の炎症を誘導することもできる。
【0075】
(実施例6:クロトン油によって誘導されたマウスの耳の炎症)
このアッセイは、Tonelli et al(Endocrinology 77、625(1965))によって記載されたアッセイに本質的に従う(他の系統のマウスを使用することもできる)。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与する(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。最初の薬剤投与後1分間〜24時間、アセトンまたはエタノールに溶かしたクロトン油の10〜30μLの2.0または4.0%溶液を、片方または両方の耳に局所施用する。クロトン油の施用後4〜12時間の表示間隔で、動物を屠殺し、耳のパンチバイオプシーを重量測定して耳の炎症膨張を決定する(耳の厚さを測定して膨張を決定することもできる)。バイオプシーを炎症状態の耳から回収し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol中に-80℃で凍結させる)、かつ、以下に記載するように(実施例10および12)、1)炎症好中球白血球の蓄積を表すミエロペロキシダーゼ(MPO)の蓄積、および/または2)マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療マウスからの非炎症状態の耳のバイオプシーは、ベースラインレベルの膨張、MPOおよび遺伝子発現をもたらす。従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して組織の炎症を試験することもできる。
【0076】
(実施例7:ホルボールエステルまたはアラキドン酸によって誘導されたマウスの耳の炎症)
これらのアッセイは、Chang et al(Ear.J.Pharmacol.142、197(1987))によって記載されたアッセイに本質的に従う(ただし他の系統のマウスを使用することもできる)。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、オスまたはメスのマウスに、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与する(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。最初の薬剤投与後1分間〜24時間、10〜30μlのアセトンまたはエタノールに溶かした1〜10μgのホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)、テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)、または1〜5mgのアラキドン酸を、片方または両方の耳に局所施用する。PMAまたはTPA施用後4〜12時間、およびアラキドン酸施用後30分間〜6時間で、動物を屠殺し、耳のパンチバイオプシーを重量測定して耳の炎症膨張を決定する(耳の厚さを測定して膨張を決定することもできる)。バイオプシーを炎症状態の耳から回収し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol中に-80℃で凍結させる)、かつ、以下に記載するように(実施例10および12)、1)炎症好中球白血球の蓄積を表すミエロペロキシダーゼ(MPO)の蓄積、および/または2)マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療マウスからの非炎症状態の耳のバイオプシーは、ベースラインレベルの膨張、MPOおよび遺伝子発現をもたらす。従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して組織の炎症を試験することもできる。
【0077】
(実施例8:マウスおよびラットにおける障害に応答する急性組織反応および炎症)
約15〜30gの重量のオスのCBAまたはNMRIマウス、または約150〜400gの重量のオスのWisterまたはSprague-Dawleyラットを使用する(他の系統のマウスおよびラットを使用することもできる)。急性組織障害および急性炎症は、無菌条件下で外科用メスを使用して尾の末端部または耳の片方において得る。1、2または3個の並列の、約5〜15mm長の縦切片を皮膚の全ての層中に作製する。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与し、組織障害前に1分間〜24時間最初の用量を与える(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。障害後2〜48時間で、動物を屠殺し、障害を受けた組織断片を除去し、重量測定し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol中に-80℃で凍結させる)、かつ、以下に記載するように(実施例10および12)、1)炎症好中球白血球の蓄積を表すミエロペロキシダーゼ(MPO)の蓄積、および/または2)マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療動物からの対応する非障害/非炎症組織は、ベースラインレベルのMPOおよび遺伝子発現をもたらす。障害に応答する組織反応および炎症は、従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して試験することもできる。
【0078】
(実施例9:ラットにおける障害に応答する急性組織反応および炎症)
350〜500gの重量のオスのSprague-Dawleyラットを使用する(ただし他の系統のラットを使用することもできる)。動物は酸素中でイソフルランを用いて麻酔をかけ、急性組織障害および急性炎症は、左総頸動脈において以下のように得る:左総、外および内頸動脈の外科的露出および一時的結さつによる局部血流の一時停止の後、バルーンカテーテル(2-French Fogarty)を、外動脈を介して大動脈に通す。次に、バルーンを十分な水で膨らませて総頸動脈を拡張させ、次いで外動脈に引き戻す。この手順を3回繰り返し、次いでカテーテルを除去し、外動脈を結さつし、傷口を縫合する。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与し、組織障害前に1分間〜24時間最初の用量を与える(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。障害後2〜48時間で、動物は酸素中でイソフルランを用いて麻酔をかけ、それらの左総頸動脈を露出させる。クランプをそれぞれ総頸動脈および内頸動脈の非常に近位に置き、次いでクランプ間の血管を滅菌生理食塩水および/またはTRIzolで軽く洗浄し、除去し、重量測定し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol中に-80℃で凍結させる)、かつ、以下に記載するように(実施例10および12)、1)炎症好中球白血球の蓄積を表すミエロペロキシダーゼ(MPO)の蓄積、および/または2)マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療ラットからの対応する非障害/非炎症組織は、ベースラインレベルのMPOおよび遺伝子発現をもたらす。障害に応答する組織反応および炎症は、従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して試験することもできる。
【0079】
(実施例10:炎症による組織のミエロペロキシダーゼの蓄積)
酵素ミエロペロキシダーゼ(MPO)は好中球白血球において豊富に存在し、炎症組織中の好中球蓄積の検出用のマーカーとして使用することが多い。(前の実施例5〜9に記載したように)炎症マウスおよびラットの組織における炎症によるミエロペロキシダーゼの蓄積を決定するために、0.5%ヘキサデシルトリメチル-アンモニウムブロミド中で組織を均質化し、凍結-解凍する。MPOによって触媒されるH2O2-テトラメチルベンジジンの酸化還元反応において生じた650nm(25℃)での吸光度の変化として、上清のMPO活性を分光光学的に決定する。値はMPO単位/組織1mgとして表す。
【0080】
(実施例11:平滑筋細胞のアッセイ)
ラット大動脈平滑筋細胞(RASMC)を、以前記に記載されたのと同様に単離する(Hedin et al、Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.、17、1977(1997))。10%のウシ胎児血清、50μg/mLのL-アスコルビン酸、50μg/mLのストレプトマイシン、50IU/mLのペニシリンを補充したハムの培地F-12(F-12/10%のウシ胎児血清)中で細胞を培養し(37℃/5%CO2)、集合状態まで増殖させ、トリプシン処理によって連続的に継代し、2〜6継代後に実験中で使用した。RASMCは、F-12/10%のウシ胎児血清中にウエル当たり約4×104個の細胞の密度で24ウエルプレートに接種する(プレート当たりより多数のウエルを有するプレートおよび適切なウエル当たりのより少数の細胞を使用することもできる)。24時間後、0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)、50μg/mLのL-アスコルビン酸、50μg/mLのストレプトマイシンおよび50IU/mLのペニシリンを補充したハムの培地F-12(F-12/0.1%BSA)中での24〜48時間の飢餓状態によって、細胞はG0/G1期に同調する。DNA合成を予測するために、飢餓状態のRASMCを10ng/mlのIGF-1または10%のウシ胎児血清のいずれかで12〜48時間刺激する(PDGFなどの他の十分確立したマイトジェンを使用することもできる)。(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、刺激の1分間〜24時間前に加える(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照、(複数の)試験薬剤は刺激と同時に加えることもできる)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。細胞は刺激期の末期前に8時間1μCiの[3H]-チミジンで標識する。次いでプレートを氷冷PBSで洗浄し、氷冷10%(w/v)トリクロロ酢酸と共に一晩インキュベートし、0.2M水酸化ナトリウムに溶かし、放射能は液体シンチレーションカウンターで測定する。刺激したRASMCの増殖は、市販のブロモデオキシウリジン(BrdU)細胞増殖アッセイ(例えばRoche Applied Scienceからの細胞増殖ELISA、BrdU)、細胞増殖試薬WST-1(Roche Diagnostics Scandinavia AB、Bromma、スウェーデン)を(いずれも製造者の説明書に従い)使用して、または細胞計数によって分析することもできる。(遺伝子発現を試験するための)別の実験では、より多数の飢餓状態のRASMC(ウエル当たり1〜5×106個の細胞)を、前述の10ng/mlのIGF-1または10%のウシ胎児血清(またはPDGF)で、またはLPS(1〜100ng/mL)で、1〜10%のウシ胎児血清で4〜48時間刺激する(いずれの刺激も前述の(複数の)試験薬剤有りまたはなしで)。次いで細胞を回収し、マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、RLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0081】
ヒト気管支平滑筋細胞(HBSMC、Promocell、ハイデルベルグ、ドイツ)を、10%のFBS、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.12IU/mLのインシュリンを補充したDMEM中、かつ2μg/mLのアンホテリシンB有りまたはなしで培養する。実験前に、低FBS(0.3〜5%)、無インシュリン培地中で24時間、細胞を増殖停止状態にすることが可能である。IL-8およびエオタキシンなどの炎症性サイトカインおよびケモカインの形成および放出を刺激するために、HBSMC(80%の集合状態で、約8×105/25cm2フラスコに相当)を、IL-1βとTNF-αの異なる併用(いずれも1〜50ng/mL)で(1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのDMEM中において)、24〜48時間インキュベートする(37℃/5%CO2)。細胞を、HBSMCの刺激前に(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照、(複数の)試験薬剤はHBSMCの刺激と同時に加えることもできる)、(複数の)試験薬剤と共に(前述のようにスタチンと併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1分間〜24時間インキュベートする(37℃/5%CO2で、0.3〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのDMEM中)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。インキュベーション/刺激後、上清中のヒトサイトカインおよびケモカイン濃度を、(複数の)製造者の説明書に従い市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を使用して定量化する。次いで細胞を回収し、マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、RLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0082】
(実施例12:遺伝子発現の分析)
マウスおよびラット組織由来の全RNA(実施例5〜9、15および16参照)を、製造者のプロトコルに従いTRIzol(Invitrogen、Carlsbad、CA)次にRNeasyクリーンアップ(QIAGEN、バレンシア、CA)を使用して単離する。前および後の実施例中に記載する細胞(マウス肥満細胞、MonoMac-6、PBMC、PMN、RAW264.7、RASMC、HBSMC、NB4、HL-60)のインキュベーション/刺激由来の全RNAを、(複数の)製造者のプロトコルに従い、RNase-Free DNaseセット(QIAGEN)有りまたはなしで、RNeasyミニキット(QIAGEN)を使用して単離する。異なる組織および細胞が由来する種に応じて、マイクロアレイ分析を、製造者のプロトコルに従い、GeneChip(登録商標)ヒトゲノムU133Plus2.0アレイ、GeneChip(登録商標)マウスゲノム4302.0アレイまたはGeneChip(登録商標)ラットゲノム2302.0アレイ、またはこれらのチップの対応するさらに新しいバージョンを使用して実施する(全てのアレイはAffymetrix、Santa Clara、CAから)。マイクロアレイの発現データは、例えばGeneChipオペレーティングソフトウェア(Affymetrix)およびBioconductor/R(www.bioconductor.org)を使用して分析する。他の関連ソフトウェアを使用することもできる。
【0083】
異なる種からの遺伝子発現は、製造者Applied Biosystems(Foster City、CA)からのプロトコルに従い、ヒトゲノム調査用マイクロアレイV2.0、マウスゲノム調査用マイクロアレイV2.0またはラットゲノム調査用マイクロアレイ(またはこれらのアレイの対応するさらに新しいバージョン)を使用して分析することもできる。これらのマイクロアレイの発現データは、例えばOracle(登録商標)注釈データベースによって供給される1700化学発光マイクロアレイアナライザー(Applied Biosystems、Foster City、CA)、GeneSpring7.2(Agilent Technologies、Inc.、Palo Alto、CA)およびマイクロアレイスイートバージョン5.0ソフトウェア(MAS5.0、Affymetrix)を使用して分析する。他の関連ソフトウェアを使用することもできる。
【0084】
遺伝子発現(mRNAレベル)は、定量または半定量PCRを使用して分析することもできる。タンパク質レベルでの遺伝子発現の分析は、((複数の)製造者の説明書に従い)市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)、または従来のウエスタンブロットおよび/または免疫組織化学的手法を使用して分析することができる。
【0085】
(実施例13:細胞増殖アッセイ)
前および後の実施例中に記載する刺激および無刺激マウス肥満細胞、MonoMac-6細胞、RAW264.7細胞、NB4細胞、HL-60細胞およびHBSMCの増殖を(それぞれの試験薬剤の添加および/または24〜72時間の前および後の実施例中に記載する刺激前に、0.1〜5%のウシ胎児血清中での24〜48時間の増殖停止有りまたはなし)、製造者の説明書に従い、細胞増殖試薬WST-1(Roche Diagnostics Scandinavia AB、Bromma、スウェーデン)または市販のブロモデオキシウリジン(BrdU)細胞増殖アッセイ(例えばRoche Applied Scienceからの細胞増殖ELISA、BrdU)を使用して測定する。他の従来の細胞増殖試験を使用することもできる。
【0086】
(実施例14:血小板凝集試験)
アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸、コラーゲンまたはトロンボキサン類似体U-46619によって誘導される、(血小板が豊富な血漿または全血中の)ウサギまたはヒト血小板の凝集を、例えばBertele et al(Eur.J Pharmacol.85、331(1982))によって記載されたのと同様に凝集能測定を使用して分析する。(前述のように)誘導した血小板凝集は、洗浄したヒトまたはウサギ血小板を使用して、および/または他の確立した凝集能測定または血小板凝集を測定するための他の対応する方法を用いて分析することもできる。(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、血小板凝集の誘導前に1〜120分加える(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照、(複数の)試験薬剤は血小板凝集の誘導と同時に加えることもできる)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。
【0087】
(実施例15:ザイモザンおよび他の刺激によって誘導されるマウス腹膜の炎症)
このアッセイは、Rao et al(J.Pharmacol.Exp.Ther.269、917(1994))によって記載されたアッセイに本質的に従う(他の系統のマウスを使用することもできる)。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与する(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。最初の薬剤投与後1分間〜24時間、(超音波処理し十分混合した)0.5〜1mLの滅菌PBSに溶かした0.5〜2mgのザイモザンA(Sigma、カタログ番号Z4250)を、腹膜内注射する(ザイモザンAを使用する代わりに、抗マウスIgE(1〜3日間のマウスIgEを用いた腹膜内予備治療有りまたはなし)、コンカナバリンA、カラギーナン、プロテオースペプトン、LPS、PMA、チオグリコレート、アラキドン酸、fMLP、TNF、IL-1βなどの前炎症性濃度の他の十分確立した前炎症性刺激の腹膜内注射によって、腹膜炎症を誘導することもできる)((複数の)試験薬剤をザイモザンまたは他の前炎症性刺激の腹膜内注射と同時に投与することもできる)。ザイモザン(または1つまたは複数の他の前炎症性刺激)の注射後2〜24時間で、動物を屠殺する。次いで腹膜腔を、1〜3mLの洗浄バッファー(氷冷PBS、3〜5mMのEDTAまたは5〜10単位/ヘパリン1ml有りまたはなし)で洗浄する。洗浄液中の全体および分化白血球の計数は、血球計、次にTurkの溶液を用いた染色によって、および/またはそれぞれMay-Grunwald Giemsaまたは改変型Wrightの(Diff-Quik)染色液で染色したサイトスピン調製物において、標準的な形態学的基準を使用した光学顕微鏡検査によって行う。全体および分化白血球数を決定するための他の確立した方法を使用することもできる。残りの洗浄液を遠心分離にかけ(300〜3000×g、4℃、3〜10分)、前の実施例1および4中に記載した、炎症メディエーターLTB4、PGE2、TXB2の含有量、および/またはマウスサイトカイン/ケモカイン(例えばIL-4、IL-6、TNF、IL-1β、KC、MCP-1、IL-10、IL-12p70、IFNγ)の含有量を分析するまで、無細胞洗浄液の上清を凍結保存する(-20℃〜-80℃)。洗浄液の上清中のヒスタミン含有量を、(複数の)製造者の説明書に従い、市販のヒスタミン酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を使用することによって決定する。炎症腹膜細胞の活性化は、実施例3中に記載したβ-ヘキソサミニダーゼアッセイを使用して、洗浄液中のβ-ヘキソサミニダーゼ活性を測定することによって試験することもできる。洗浄液の細胞ペレットは0.1〜1.0mLの0.05MKHPO4pH6.0および0.5%HTAB中に再懸濁させ、Rao et al(J.Pharmacol.Exp.Ther.269、917(1994))によって記載されたのと同様のミエロペロキシダーゼ(MPO)含有量の分析まで凍結保存する(-20℃〜-80℃)。別の動物由来の同一細胞ペレットは、マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、RLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。洗浄バッファーでの腹膜腔の洗浄時に、炎症腹膜腔由来の組織(腹膜壁、腸および/または他の腹膜内または腹膜後臓器/組織)バイオプシーを回収し、重量測定し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol、Invitrogen、Carlsbad、CA中に-80℃で凍結させる)、かつ、実施例12中に記載するように、マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療動物由来の非炎症腹膜腔は、ベースラインレベルのMPO、炎症メディエーター、サイトカイン/ケモカインおよび遺伝子発現をもたらす。組織の炎症は、従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して試験することもできる。
【0088】
(実施例16:ザイモザンおよび他の刺激によって誘導されるラット腹膜の炎症)
約150〜450gの重量のオスのWisterラットまたはスプラグダウレイラットを使用する。0.03〜50mg/kgの用量の(複数の)試験薬剤(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)を、2〜24時間毎に皮下、静脈内、腹腔内または経口投与する(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する)。投与前に、薬剤のストック溶液(前の実施例1参照)を、例えば0.5%または1%のメチルセルロース水溶液(経口治療用)または生理食塩水(非経口投与用)に必要に応じて希釈する。他の賦形剤を使用することもできる。最初の薬剤投与後1分間〜24時間、(超音波処理し十分混合した)1〜10mLの滅菌PBSに溶かした1〜100mgのザイモザンA(Sigma、カタログ番号Z4250)を、腹膜内注射する(ザイモザンAを使用する代わりに、抗ラットIgE(1〜3日間のラットIgEを用いた腹膜内予備治療有りまたはなし)、コンカナバリンA、プロテインL、化合物48/80、カラギーナン、プロテオースペプトン、LPS、PMA、チオグリコレート、アラキドン酸、fMLP、TNF、IL-1βなどの前炎症性濃度の他の十分確立した前炎症性刺激の腹膜内注射によって、腹膜炎症を誘導することもできる。(複数の)試験薬剤をザイモザンまたは他の前炎症性刺激の腹膜内注射と同時に投与することもできる)。ザイモザン(または1つまたは複数の他の刺激)の注射後2〜24時間で、動物を屠殺する。次いで腹膜腔を、10〜20mLの洗浄バッファー(例えば氷冷PBS、3〜5mMのEDTAまたは5〜10単位/ヘパリン1ml有りまたはなし)で洗浄する。洗浄液中の全体および分化白血球の計数は、血球計、次にTurkの溶液を用いた染色によって、および/またはそれぞれMay-Grunwald Giemsaまたは改変型Wrightの(Diff-Quik)染色液で染色したサイトスピン調製物において、標準的な形態学的基準を使用した光学顕微鏡検査によって行う。全体および分化白血球数を決定するための他の確立した方法を使用することもできる。残りの洗浄液を遠心分離にかけ(300〜3000×g、4℃、3〜10分)、ほぼ前の実施例1および4中に記載したように、炎症メディエーターLTB4、PGE2、TXB2の含有量、および/またはラットサイトカイン/ケモカイン(例えばIL-4、IL-6、TNF、IL-1β、KC、MCP-1、IL-10、IL-12p70、IFNγ)の含有量を分析するまで、無細胞洗浄液の上清を凍結保存する(-20℃〜-80℃)。洗浄液の上清中のヒスタミン含有量を、(複数の)製造者の説明書に従い、市販のヒスタミン酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を使用することによって決定する。炎症腹膜細胞の活性化は、実施例3中に記載したβ-ヘキソサミニダーゼアッセイを使用して、洗浄液中のβ-ヘキソサミニダーゼ活性を測定することによって試験することもできる。洗浄液の細胞ペレットは0.1〜1.0mLの0.05MKHPO4pH6.0および0.5%HTAB中に再懸濁させ、基本的にRao et al(J.Pharmacol.Exp.Ther.269、917(1994))によって記載されたのと同様のミエロペロキシダーゼ(MPO)含有量の分析まで凍結保存する(-20℃〜-80℃)。別の動物由来の同一細胞ペレットは、マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、RLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。洗浄バッファーでの腹膜腔の洗浄時に、炎症腹膜腔由来の組織(腹膜壁、腸および/または他の腹膜内または腹膜後臓器/組織)バイオプシーを回収し、重量測定し、凍結保存し(マイクロアレイ分析用のサンプルはTRIzol、Invitrogen、Carlsbad、CA中に-80℃で凍結させる)、かつ、実施例12中に記載するように、マイクロアレイ技術を使用した組織の遺伝子発現に関して後に分析する。未治療動物由来の非炎症腹膜腔は、ベースラインレベルのMPO、炎症メディエーター、サイトカイン/ケモカインおよび遺伝子発現をもたらす。組織の炎症は、従来の組織学的および免疫組織化学的技法を使用して試験することもできる。
【0089】
(実施例17:NB4およびHL-60細胞の炎症メディエーターの放出アッセイ)
ヒトNB4細胞(Lanotte et al、Blood、77、1080(1991))を、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%(v/v)ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640培地中で培養する(37℃/5%CO2)。分化用に、1〜5μMの全トランスレチノイン酸(ATRA)を一般に3日に1度加える。
【0090】
ヒトHL-60細胞(Steinhilber et al、Biochim.Biophys.Acta1178、1(1993))を、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンおよび10〜20%(v/v)ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640培地中で培養する(37℃/5%CO2)。分化用に、ATRA(1〜5μM)、DMSO(1〜2%)、PMA(100〜500ng/mL)またはビタミンD3(1〜15μM)を5日間加える。
【0091】
炎症メディエーターロイコトリエンB4(LTB4)の形成および放出を刺激するために、分化または未分化NB4またはHL-60細胞を(1〜15×106/mLで)、10〜40μMのアラキドン酸および/または2〜10μMのカルシウムイオノフォアA23187と共に、5〜30分間インキュベートする(37℃、カルシウムを含むPBS中)。NB4およびHL-60細胞は、前述のA23187および/またはアラキドン酸有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)、fMLP、および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。NB4およびHL-60のインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のNB4/HL-60:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)ヒト血小板の存在下において実施することもできる。このインキュベーション/刺激は1mLの冷メタノールで停止させ、プロスタグランジンB2(PGB2)を内標準として加える。サンプルは遠心分離にかけ、上清は水で希釈して30%の最終メタノール濃度に到達させ、pHは3〜4に調節する。上清中のアラキドン酸代謝産物は、事前に調整した(1mLのメタノール、次に1mLのH2O)C18固相カラムで抽出する(Sorbent Technology、U.K.)。代謝産物はメタノールで溶出させ、その後1体積の水を溶出液に加える。逆相HPLC用に、76μLのそれぞれのサンプルを39μLのHO2と混合させる(他の体積比を使用することもできる)。Waters RCM8×10カラムを、1.2mL/分でメタノール/アセトニトリル/H2O/酢酸(30:35:35:0.01v/v)を用いて溶出する。溶出液の吸光度は、PGB2およびLTB4の検出および定量化用に270nmでモニタリングする。LTB4の測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)キット製造者の説明書に従い使用することもできる。(複数の)製造者の説明書に従い市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を使用して、前述のNB4/HL-60のインキュベーション/刺激由来の上清を、炎症メディエータープロスタグランジンE2(PGE2)および/またはトロンボキサンB2(TXB2)の含有量に関して分析することもできる。細胞を、炎症メディエーターの放出のためのNB4またはHL-60の刺激前に(薬剤ストック溶液および濃度に関する詳細に関しては前の実施例1を参照)((複数の)試験薬剤はNB4/HL-60の刺激と同時に加えることもできる)(複数の)試験薬剤と共に(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1分間〜24時間インキュベートする(37℃で、カルシウムを含まないPBS中、または1〜20%のウシ胎児血清を含むPMI-1640培地中)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。
【0092】
IL-1β、IL-6、TNF、IL-8、IL-10、IL-12p70、MCP-1、PAF、C5aなどの炎症性サイトカイン、ケモカインおよびメディエーターの形成および放出を刺激するために、(1〜10×106/mLで)分化または未分化NB4またはHL-60細胞を、リポ多糖(LPS、1〜100ng/mL)、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA、1〜100ng/mL)またはカルシウムイオノフォアA23187(1〜10μM)、またはこれらの刺激の併用と共に、(1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのRPMI-1640培地中で)4〜24分間インキュベートする(37℃、/5%CO2)。NB4およびHL-60細胞は、前述のLPS、PMAおよび/またはA23187有りまたはなしで、記述されている生物活性濃度のアデノシン二リン酸(ADP)および/またはトロンボキサン類似体U-46619を用いて刺激することもできる。NB4およびHL-60のインキュベーション/刺激は、1:10〜1:10000のNB4/HL-60:血小板の比で、(健康なドナーの血液由来の)ヒト血小板の存在下において実施することもできる。細胞を、(複数の)試験薬剤と共に(スタチンと併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独、前と同様に)、サイトカイン/ケモカイン/炎症メディエーターの放出のためのNB4またはHL-60の刺激前に、(37℃、5%CO2、1〜10%のウシ胎児血清を含み、補充物有りまたはなしのRPMI-1640培地中で)1分間〜24時間インキュベートする(比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。(複数の)試験薬剤はNB4/HL-60の刺激と同時に加えることもできる)。細胞をスピンダウンした後、上清中のヒトサイトカイン/ケモカインおよびメディエーター濃度を、製造者の説明書に従いCytometric Bead Array(BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、USA)を使用して定量化する。サイトカイン/ケモカインおよびメディエーターの測定用に市販の酵素イムノアッセイキット(EIA/ELISAキット)を、(複数の)製造者の説明書に従い使用することもできる。マイクロアレイ実験(以下の実施例12を参照)用のさらなる処理まで、細胞ペレットはRLTバッファー(QIAGEN、バレンシア、CA)中に凍結保存する(-80℃)。
【0093】
好中球様NB4およびHL-60細胞からのメディエーターおよびケモカイン/サイトカインの放出に対する前述の薬剤の影響を試験することに加えて、これらの細胞の自然または刺激接着および/または移動に対する薬剤の影響を分析することもできる(標準的なプロトコルに従い単離した新たに単離したヒト血液多核細胞(PMN)を使用することもできる)。(fMLP、IL-8、PAF、LTB4または他の関連PMN活性化因子による)PMNまたは好中球様細胞と、例えば培養内皮細胞またはタンパク質コーティング人工表面の自然または刺激接着は、十分確立し記述されている実験手法およびアッセイを使用して試験する。(fMLP、IL-8、PAF、LTB4または他の関連PMN化学走化性因子で刺激される)PMNまたは好中球様細胞の移動、例えばこのような移動試験用に設計された市販のタンパク質コーティング膜を介した移動は、十分確立し記述されている実験手法およびアッセイを使用して試験する。
【0094】
(実施例18:ヒト全血中の血小板および白血球活性化)
1/10体積の129mMのクエン酸三ナトリウムを含むシリコン加工採血管(Becton Dickinson、Meylan、フランス)を使用して、鬱血なしで静脈穿刺によって静脈血を回収する。全血の(血小板活性を表す)血小板P-セレクチンの発現、(白血球活性を表す)白血球CD11bの発現、単体血小板および血小板-血小板微少凝集塊の数、および血小板-白血球凝集(PLA)は、以前記に記載されたのとほぼ同様に(参照に関しては、例えばLi et al.Circulation100、1374(1999)を参照)、フローサイトメトリーアッセイを使用して測定する。簡単に言うと、全血の5μLのアリコートを、アデノシン二リン酸(ADP)、U-46619、U-44069、血小板活性化因子(PAF)、アラキドン酸、コラーゲンまたはトロンビンなどの血小板活性化刺激、および/またはN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)、アラキドン酸、PAF、LPS、A23187またはLTB4などの白血球活性化刺激の存在または不在下で適切に希釈した抗体(以下参照)を含む45μLのHepes緩衝生理食塩水(150mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgSO4、10mMのHepes、pH7.4)に加える。血小板および/または白血球活性化刺激+抗体に血液を曝す前に、血液サンプル(0.1〜1ml)を、(複数の)試験薬剤と共に(スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)と併用したペミロラスト、ペミロラスト単独およびスタチン単独)、1〜60分間インキュベートする((複数の)試験薬剤を前述の刺激と同時に加えることもできる)。比較用に、幾つかの血液サンプルは(複数の)薬剤に曝さずに前述のように刺激する。血小板P-セレクチンの発現は、R-フィコエリスリン(RPE)-CD62Pモノクローナル抗体(MAb)AC1.2(Becton Dickinson、San Jose、CA、USA)によって決定する。白血球CD11bの発現は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-結合MAbBEAR1(Immunotech、Marseille、フランス)によって決定する。FITCおよびRPE結合同型MAbは陰性対照として使用する。血小板計数に使用する蛍光ビーズ(SPHERO(商標)Rainbow粒子、1.8〜2.2μm)は、PharMingen(サンディエゴ、CA、USA)のものである。血小板はFITC結合抗CD42a(GPIX)MAbBeb1(Becton Dickinson)で確認し、かつ白血球はRPE結合抗CD45MAbJ33(Immunotech)で確認する。サンプル(前述のように、薬剤治療または未治療血液+抗体、刺激有りまたはなし)は、20分間暗所において室温でインキュベートする。その後、サンプルを希釈し、0.5%(v/v)ホルムアルデヒド生理食塩水で適度に固定し、Beckman-Coulter EPICS XL-MCLフローサイトメーター(Beckman-Coulter Corp.、Hialeah、FL)を用いて、様々な血小板および白血球のパラメーターに関して分析する。血小板P-セレクチンの発現のデータは、血小板集団内のP-セレクチン陽性細胞の割合として、およびP-セレクチン陽性血小板の絶対数として報告する。白血球CD11bの発現は、全白血球集団および白血球亜集団の平均蛍光強度(MFI)として報告する。血小板-白血球凝集(PLA)は、全白血球集団中、およびリンパ球、単球、および好中球間の血小板と結合した白血球の絶対数と割合の両方として表す。ヒト全血中の対応する血小板および白血球の活性化を分析するために、他の関連試薬、実験条件/手法、分析の装置および形態を使用することもできる。
【0095】
(実施例19:ペミロラストおよびロスバスタチンによる肥満細胞インターフェロン-γ形成の阻害)
骨髄由来培養マウス肥満細胞(mMC)を、メスC57BL/6マウス由来の骨髄細胞を培養することによって入手した。(PBSで洗浄したマウス大腿骨由来の)骨髄細胞を、10%の熱非働化ウシ胎児血清、4mMのL-グルタミン、50μMの2-メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸、10mMのHepes、100単位/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補充した、10%X-63濃縮馴化RPMI1640中で培養した(37℃/5%CO2)。肥満細胞の発生は、トルイジンブルー染色により確認した。実験は培養後6〜8週間実施した。細胞表面IgE-受容体の架橋によってmMCを活性化するために、培養mMCを、モノクローナルマウス抗TNPIgE抗体(IgEl-b4、ATCC、Rockville、MD、USA)で、37℃(5%CO2)において90分間最初に感作させ、15%ハイブリドーマ上清として使用した。次いで細胞に、PBSを用いた2回の洗浄を施し、9/1のカップリング比でのTNP-BSA(Biosearch Technologies、サンフランシスコ、CA)の添加により(1mL当たり1×106個の細胞を含む0.5mLの培地の)細胞を活性化する前に、0.2%のウシ血清アルブミン(BSA)を補充したRPMI-1640培地中に再懸濁させた(最終TNP-BSA濃度は100ng/mLであった)。TNP-BSAとのインキュベーション37℃(5%CO2)は24時間であった。TNP-BSAとのインキュベーション前に、幾つかの細胞を、試験薬剤ペミロラスト(American Custom Chemicals Corporation、サンディエゴ、CA、USAから購入したカリウム塩)および/またはロスバスタチン(Bioorganic & Medicinal Chemistry、Vol.5、No.5、pp437〜444、1997中に記載されたのと同様にCaCl2を加えることによって、市販のCrestor(登録商標)錠剤から抽出および精製し、カルシウム塩として単離した)で、TNP-BSAの添加前に30分間治療/インキュベートした37℃(5%CO2)(薬剤のストック溶液は滅菌生理食塩水中に作製した)。比較用に、幾つかの実験はこれらの薬剤なしで実施する。TNP-BSAとのインキュベーション後、サンプルは4℃で遠心分離にかけて細胞をスピンダウンし、BD Biosciences Pharmingen、サンディエゴ、USAのBD(商標)Cytometric Bead Array(CBA)マウス炎症用キットを使用して、マウスIFN-γの含有量に関して上清を分析した(キットは製造者の説明書に従い使用した)。
【0096】
(前述のように)24時間TNP-BSAで刺激した未治療mMCからの上清中のIFN-γの濃度は、1.80±0.24pg/mL(平均±標準誤差、n=8)であった。3μMのペミロラスト、30μMのペミロラスト、3μMのロスバスタチンまたは30μMのロスバスタチンで治療した細胞(それぞれの治療に関してn=2)に関する対応する平均IFN-γ値は、それぞれ2.00pg/mL、1.74pg/mL、2.26pg/mLおよび1.88pg/mLであった。したがって、これらの濃度のペミロラストまたはロスバスタチン単独を用いた治療は、IFN-γのレベルを阻害しなかった(すなわち、未治療細胞と比較して、30μMのペミロラストはIFN-γを約3%減少させ、一方他の3つの治療はIFN-γをわずかに増大させた)。ペミロラスト+ロスバスタチンの併用は、用量依存的かつ相乗的にIFN-γのレベルを低下させた。したがって、3μMのペミロラスト+3μMのロスバスタチンまたは30μMのペミロラスト+30μMのロスバスタチンの併用で治療したmMC(それぞれの治療に関してn=2)に関する平均IFN-γ濃度は、それぞれ1.58pg/mLおよび0.55pg/mLであった(すなわち、未治療対照と比較してそれぞれ12.3%および69.4%の阻害)。
【0097】
(実施例20:ペミロラストおよびロスバスタチンによるマクロファージ増殖の阻害)
ヒトマクロファージ細胞系MonoMac-6(MM6)由来の細胞(Ziegler-Heitbrock et al、Int.J.Cancer、41、456(1988))を、1mMのピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、1〜100μg/mLのインシュリン、1mMのオキサル酢酸、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%(v/v)ウシ胎児血清を補充したRPMI-1640培地中で培養した(37℃/5%CO2)。実験の開始時に、MM6細胞は96ウエルプレート中に1×105個の細胞/1mLの密度(ウエル当たり100μl)で接種した。MM6細胞の増殖は、細胞増殖試薬WST-1(Roche Diagnostics Scandinavia AB、Bromma、スウェーデン)を使用して、または顕微鏡を使用した細胞計数によって測定した。WST-1試薬は例えば増殖アッセイにおける細胞増殖の分光測光定量化に使用するために設計し、製造者の説明書に従い使用した。吸光度測定に関する波長は450nmであり、WST-1試薬に曝した全未治療対照細胞の吸光度は1.0と2.5の間であった。ペミロラスト(カリウム塩;前の実施例19参照)およびロスバスタチン(ナトリウム塩;前の実施例19参照)のストック溶液は滅菌生理食塩水中に作製した。
【0098】
未治療MM6細胞は、実験開始時の1×105個の細胞/1mLから、それぞれ24時間および48時間後に1.4×105±0.06×105個の細胞/1mLおよび2.3×105±0.10×105個の細胞/1mLまで増大した(平均値±標準誤差、3つの時間地点のそれぞれに関してn=4)。
【0099】
(実験開始時に加えた)ペミロラストおよび/またはロスバスタチンのMM6細胞増殖に対する影響は、前記に記載したWST-1試薬を使用した実験の開始後48時間で試験した。
【0100】
10μM、30μMまたは100μMの最終濃度でのロスバスタチンを用いたMM6細胞の治療は、用量依存的なそれぞれ16.6%、22.7%および66.9%のMM6増殖の阻害をもたらした(平均値、それぞれの濃度に関してn=5)。対照的に、100μMの最終濃度でのペミロラストを用いたMM6細胞の治療は、無視できる程度の平均9.4%の増殖阻害をもたらした(n=5)(10μMのペミロラストは、100μMのペミロラストのそれと非常に類似した影響を有していた、n=5、データ示さず)。10μM、30μMまたは100μMのロスバスタチンの存在下において100μMのペミロラストでMM6細胞を治療したとき、100μMのペミロラストは、それぞれ10μM、30μMおよび100μMのロスバスタチンのみを用いた治療と比較して、相乗的なそれぞれ17.4%、26.3%および44.9%のMM6増殖の阻害を引き起こした(平均値、3つの併用のそれぞれに関してn=5)。
【0101】
(実施例21:ペミロラストおよびアトルバスタチンによるマクロファージ増殖の阻害)
実施例20中に記載した手順をアトルバスタチンに関して繰り返した(ナトリウム塩;Biocon、Ltd.、Bangalore、インドからギフトとしてアトルバスタチンカルシウムとして入手し、最初に水性塩酸の添加によってカルシウム塩を遊離酸に変換し、次いで抽出による単離の後、1当量の水性NaOHを加えることによって、ナトリウム塩に変換した)。
【0102】
10μM、30μMまたは100μMの最終濃度でのアトルバスタチンを用いたMM6細胞の治療は、用量依存的なそれぞれ19.9%、27,0%および54,4%のMM6増殖の阻害をもたらした(平均値、それぞれの濃度に関してn=5)。対照的に、100μMの最終濃度でのペミロラスト(カリウム塩)を用いたMM6細胞の治療は、無視できる程度の平均9.4%の増殖阻害をもたらした(n=5)(10μMのペミロラストは、100μMのペミロラストのそれと非常に類似した影響を有していた、n=5、データ示さず)。100μMのアトルバスタチンの存在下において100μMのペミロラストでMM6細胞を治療したとき、100μMのペミロラストは、100μMのアトルバスタチンのみを用いた治療と比較して、相乗的な30.2%のMM6増殖の阻害を引き起こした(平均値、n=5)。30μMのアトルバスタチンの存在下において、100μMのペミロラストは7.6%増殖を阻害し(平均値、n=5)、および10μMのアトルバスタチンの存在下において、100μMのペミロラストは増殖を阻害しなかった(n=5、データ示さず)。
【0103】
(実施例22:ペミロラストおよびアトルバスタチンによるマウスにおけるザイモザン誘導型腹膜炎の阻害)
32〜37gの重量の5〜7匹の非近交系オスNMRIマウス(Scanbur AB、Sollentuna、スウェーデン)の5群を使用して、(超音波処理し十分混合した)0.5mLの滅菌PBSに溶かした1mgのザイモザンA(ザイモザン、Sigma-Aldrich)の腹膜内(i.p.)注射によって引き起こした腹膜の炎症(腹膜炎)を試験した。腹膜内ザイモザン注射の24時間前および90分前に、2群の動物を0.35mgのアトルバスタチンナトリウム(前の実施例21参照)で治療した。アトルバスタチン注射はザイモザンを腹膜内投与する24時間前に与え、かつアトルバスタチン注射はザイモザンを皮下投与する90分前に与えた。注射前に、アトルバスタチンは超音波処理を使用して滅菌PBS中に1mg/mLで溶かし、必要に応じて温めた。2群の動物(その1群は前述のようにアトルバスタチンで予備治療してある)を0.5mgのペミロラスト(American Custom Chemicals Corporation、サンディエゴ、CA、USAから購入したカリウム塩)で治療し、ザイモザンと一緒に腹膜内投与した(すなわち、ペミロラストはPBSに溶かした2mg/mLのザイモザン溶液中に1mg/mLで溶かした)。
【0104】
ザイモザンの注射後5時間で、動物を屠殺し、炎症腹膜腔は1.5mLの氷冷PBSおよび3mMのEDTAで洗浄した(洗浄液の腹膜内注射後、腹腔の開口および約1mLの洗浄液の回収前に、腹部を30秒間軽くマッサージした)。洗浄液1mL当たりの多形核(PMN)白血球の数を、(標準的な形態学的基準を使用した)光学顕微鏡検査、次にTurkの溶液を用いた核の染色によって計数した。未治療動物由来の非炎症腹膜腔からの洗浄液は、ベースラインレベルのPMN白血球を与えた。
【0105】
図1中に示すように(平均値±標準誤差)、ザイモザンで腹膜内刺激しなかった動物(ベースライン、n=5)中では腹膜PMN白血球はほとんど存在しなかった。他方で、ザイモザンの腹膜内注射後5時間では、ペミロラストまたはアトルバスタチンで治療しなかった動物(未治療、n=7)の腹膜腔中のPMN白血球の顕著な炎症蓄積があった。
【0106】
ペミロラスト単独で治療した動物(Pemiro、n=6)では、ザイモザン誘導型のPMN白血球蓄積が、わずかに減少した(10.1%減少;この群中のNB、1匹の動物は非リスポンダーとしてみなし分析から除外した。この動物では、ザイモザン注射後5時間のPMN白血球蓄積は、ザイモザンで腹膜内刺激した他の6匹のペミロラスト治療動物の平均PMN白血球蓄積のわずか8.4%であった。分析中のこの非リスポンダー動物の包含または排除が、以下の結論を変えることはない)。
【0107】
アトルバスタチン単独で治療した動物(Atorva、n=5)では、PMN白血球蓄積はある程度さらに減少した(25.9%減少)。
【0108】
しかしながら、ペミロラストとアトルバスタチンの両方で治療した動物(Pemiro+Atorva、n=5)では、ザイモザン誘導型のPMN白血球蓄積は相乗的に61.5%減少した。したがって、ペミロラスト単独での治療は、未治療動物と比較してザイモザン誘導型のPMN白血球蓄積をわずか10.1%減少させたが、アトルバスタチン治療の存在下においてペミロラストで治療した動物中のザイモザン誘導型のPMN白血球蓄積は、アトルバスタチン単独での治療と比較して48.0%減少した。
【0109】
1つまたは複数の前記に記載した実施例は、ペミロラストと関連スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンまたは、好ましくは、シンバスタチン、ロスバスタチンまたはアトルバスタチン)の併用に関する明らかな相乗効果を実証する。したがってこのような併用は、アテローム性動脈硬化症または関連状態を含めた、炎症障害の治療において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、
(b)スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と
を含む併用製品。
【請求項2】
スタチンがピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチンおよびアトルバスタチンから選択される、請求項1に記載の併用製品。
【請求項3】
スタチンがシンバスタチン、ロスバスタチンおよびアトルバスタチンから選択される、請求項2に記載の併用製品。
【請求項4】
スタチンがロスバスタチンおよびアトルバスタチンから選択される、請求項3に記載の併用製品。
【請求項5】
ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物;スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物;および薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含む医薬配合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の併用製品。
【請求項6】
以下の構成要素:
(A)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、ペミロラスト、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬配合物と、
(B)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合した、スタチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬配合物と
を含むキットを含み、
前記構成要素(A)および(B)がそれぞれ、他方と併用する投与に適した形態で提供されるキットを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の併用製品。
【請求項7】
請求項6に定義のキットを作製する方法であって、構成要素(A)を構成要素(B)と組み合わせ、これによって2つの構成要素を互いとの併用投与に適した状態にする段階を含む方法。
【請求項8】
(I)請求項6に定義の構成要素(A)および(B)の一方、
を、
(II)前記構成要素を2つの構成要素のもう1つと併用して使用するための説明書
と一緒に含むキット。
【請求項9】
スタチンをスタチンラクトンの形態で使用しない、請求項1から6または8のいずれか一項に記載の併用製品。
【請求項10】
使用するスタチンがロバスタチンラクトンまたはシンバスタチンラクトンである、請求項1から6または8のいずれか一項に記載の併用製品。
【請求項11】
構成要素(A)および(B)が炎症障害の治療で順次、別々にかつ/または同時に使用するのに適している、請求項6、請求項8、または請求項9または(請求項6または請求項8に従属する)請求項10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
炎症障害の治療用の医薬品を製造するための、請求項1から6、または8から11のいずれか一項に記載の併用製品の使用。
【請求項13】
炎症障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者への請求項1から6、または8から11のいずれか一項に記載の併用製品の投与を含む方法。
【請求項14】
障害が片頭痛、喘息、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスまたは潰瘍性大腸炎から選択される、請求項11に記載のキット、請求項12に記載の使用、または請求項13に記載の方法。
【請求項15】
障害がアテローム性動脈硬化症または関連する心臓血管障害である、請求項11に記載のキット、請求項12に記載の使用、または請求項13に記載の方法。
【請求項16】
障害がアテローム性動脈硬化症である、請求項15に記載のキット、使用または方法。
【請求項17】
アテローム性動脈硬化症と関連がある心臓血管障害が、大動脈瘤、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患、冠疾患、プラークの破裂、アテロームの破裂および/または不安定性、血管疾患、動脈疾患、虚血性疾患、虚血および脳卒中から選択される、請求項15に記載のキット、使用または方法。
【請求項18】
冠動脈疾患が狭心症、心筋梗塞および心臓発作から選択される、請求項17に記載のキット、使用または方法。
【請求項19】
冠疾患が心臓病および心疾患から選択される、請求項17に記載のキット、使用または方法。
【請求項20】
脳卒中が脳血管発作および一過性虚血性発作から選択される、請求項17に記載のキット、使用または方法。
【請求項21】
患者が急性冠症候群を有する、請求項11から20のいずれか一項に記載のキット、使用または方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513430(P2010−513430A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542179(P2009−542179)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004408
【国際公開番号】WO2008/074975
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509171232)カルドズ・アーベー (4)
【Fターム(参考)】