説明

炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプ

【課題】
炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプを提供する。
【解決手段】
本発明の複合パイプは、熱成形された熱可塑性プラスチックからなる中空の中心管体(10)と、同軸的に重ね合わされた数個の層(22,24)を有する外側管体(20)とを備え、外側管体(20)は、中心管体(10)に直接的に接するように配置された樹脂からなる少なくとも一つの層(24)と、この樹脂からなる層(24)を覆う繊維からなる一つの層(22)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機の分野において、炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在において、航空機またはヘリコプタ等の飛翔体は、ケロシン等の炭化水素燃料であろうとオイル等の作動液であろうと、液体を給送するための多数のパイプラインを備えている。
【0003】
しかしながら、これらのパイプラインの多くは金属(ステンレス鋼、アルミニウム、真鍮)で形成されている。したがって、重く、複雑なものが多いことから製作にコストがかかり、かつやや硬いために取付けが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、実施が容易で、信頼性が高く、かつコストが安いという解決策を用いて、上述の課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の対象は、熱成形された熱可塑性プラスチックからなる中空の中心管体と、同軸的に重ね合わされた数個の層を有する外側管体とを備えた、炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプであって、この外側管体の樹脂からなる少なくとも一つの層は上記中心管体に直接的に接するように配置され、かつ繊維からなる一つの層は上記樹脂からなる層を覆っていることを特徴とする、複合パイプである。
【0006】
いくつかの好ましい実施の形態によれば、本発明による複合パイプはさらに、下記の特徴のうちの少なくとも一つを備えている。すなわち、
上記外側管体は、上記樹脂からなる層と上記繊維からなる層とが交互に配置されたものからなり、かつ樹脂からなる二つの層の間に繊維からなる層が挟まれており、
上記中心管体は、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエチルケトン(PEEK)、ポリエステル、ポリスルフォン(PSU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミド・イミド(PAI)、ならびにポリ弗化ビニリデン(PVDF)および他の弗化物からなる群から選ばれた熱可塑性樹脂から形成されており、
上記樹脂からなる層のそれぞれが、エポキシ、ポリエステル、フェノールまたはビニルエステルから形成されており、
上記繊維からなる層のそれぞれが、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー繊維、または亜麻繊維、もしくはこれらの繊維の組合せを主成分として作製されており、
上記中心管体は、特にそれに最終的形状を与えるために、所望の形状に熱成形されており、
例えば、Y字状、T字状、またはL字状の管継ぎ手が上記複合パイプの両端部に、特に上記中心管体の周りに連結されており、そして
上記外側管体の層が、上記中心管体に連結されている上記管継ぎ手の一部分を封止している。
【0007】
本発明はまた、炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプの作製方法であって、熱可塑性樹脂にて形成された中空の中心管体を、同軸的に重ね合わされた数個の層を有しかつ上記中心管体に直接的に接触するように配置された少なくとも一つの樹脂からなる層およびこの樹脂からなる層を覆う繊維からなる層を備えた外側管体を用いて封止する工程を有してなることを特徴とする。
【0008】
上記中心管体は、熱間曲げによって上記中心管体に最終的な湾曲を与えるために、この中心管体が上記外側管体にて覆われる以前に、予め熱成形されることが有利である。
【0009】
本発明はまた、特に航空機産業において、燃料用のオイルまたはケロシン等の炭化水素、あるいはオイル等の作動液を無差別に給送するための複合パイプの使用に関するものである。
【0010】
以下、説明のためにのみ提供され、かつ図面に示された特定の実施の形態を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一部を切り取った本発明によるパイプの斜視図である。
【図2】上記パイプの一端から他端までの全体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による液体給送用のパイプ1が図1に示されている。
【0013】
このパイプ1は、熱成形された熱可塑性プラスチックからなる中空の中心管体10と、その上に同軸的に重ね合わされた数個の外側管体20とから形成されている。
【0014】
より具体的には、上記外側管体20は、樹脂層と繊維層とが交互に重ね合わされたものからなり、少なくとも1層の繊維層22は2層の樹脂層24の間に挟まれており、これら2層の樹脂層24のうちの1層は中心管体10に密着している。
【0015】
材料の選択に関する限り、中心管体10は、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエチルケトン(PEEK)、ポリエステル、ポリスルフォン(PSU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミド・イミド(PAI)、ならびにポリ弗化ビニリデン(PVDF)および他の弗化物からなる群から選ばれた熱可塑性樹脂から形成されている。
【0016】
上記樹脂からなる各層24はエポキシからなり、上記繊維からなる各層22は、ガラス繊維、炭素繊維、またはケブラー繊維を主成分として作製されている。
【0017】
その最終的な形状、特に湾曲形状を与えるために、本発明はまた、パイプの製造方法にも関連しており、上記中心管体10は、それが外側管体20にて被覆される以前に熱間曲げによって所望の形状に熱成形される。
【0018】
例えば、Y字状、T字状、またはL字状の管継ぎ手30は、パイプ1の端部1aおよび1bに、特に中心管体10の外側に連結される。より具体的には、図2に示されているように、外側層、特に樹脂からなる第1層24は、中心管体10に連結される管継ぎ手30の一部分32を封止している。
【0019】
このようなパイプ1は、その構造を通じて、燃料油またはケロシン等の炭化水素あるいはオイル等の作動油を、特に航空産業において無差別に給送するのに用いられる。
【0020】
このようなパイプ1は、例えば12mmから130mmまでの寸法を有し、負圧から数千ポンド/平方インチ(約30MPa)までの圧力下で−55℃から+125℃までの温度範囲内で作動する。
【0021】
本発明の対象の詳細な説明は、単に説明のためのものに過ぎず、本発明を限定するものではなく、技術的な均等物も本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【0022】
したがって、他の用途には他の材料を用いてもよい。特に、上記樹脂からなる各層が、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、またはビニルエステル樹脂であってもよい。同様に、上記繊維からなる層が、炭素繊維、ケブラー繊維、亜麻繊維、またはこれらの繊維の組合せを主成分とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 複合パイプ
10 中心管体
20 外側管体
22 繊維層
24 樹脂層
30 管継ぎ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形された熱可塑性プラスチックから形成された中空の中心管体(10)と、同軸的に重ね合わされた数個の層(22,24)を有する外側管体(20)とを備えた、炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプ(1)であって、
前記外側管体(20)は、前記中心管体(10)に直接的に接するように配置された樹脂からなる少なくとも一つの層(24)と、該樹脂からなる層(24)を覆う繊維からなる一つの層(22)とを備え、
前記中心管体(10)は、該中心管体(10)に特定の最終的湾曲を与えるために、所望の形状に熱成形されていることを特徴とする、複合パイプ(1)。
【請求項2】
前記外側管体(20)は、樹脂からなる二つの層(24)の間に繊維からなる一つの層(22)が挟まれるように、樹脂からなる層(24)と繊維からなる層(22)とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1記載の複合パイプ。
【請求項3】
前記中心管体(10)は、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエチルケトン(PEEK)、ポリエステル、ポリスルフォン(PSU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミド・イミド(PAI)、ならびにポリ弗化ビニリデン(PVDF)および他の弗化物からなる群から選ばれた熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項2記載の複合パイプ。
【請求項4】
前記樹脂からなる各層(24)が、エポキシ、ポリエステル、フェノールまたはビニルエステルから形成されていることを特徴とする請求項2記載の複合パイプ。
【請求項5】
前記繊維からなる各層(22)が、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー繊維、または亜麻繊維、もしくはこれらの繊維の組合せを主成分として作製されていることを特徴とする請求項1記載の複合パイプ。
【請求項6】
前記複合パイプ(1)の両端部(1a,1b)の前記中心管体(10)の一部分の周りに連結された管継ぎ手(30)をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の複合パイプ。
【請求項7】
前記外側の層(22,24)が、前記中心管体(10)に連結されている前記管継ぎ手(30)の一部分(32)を封止していることを特徴とする請求項6記載の複合パイプ。
【請求項8】
熱可塑性樹脂にて形成された中空の中心管体(10)を、同軸的に重ね合わされた数個の層(22,24)を有しかつ前記中心管体(10)に直接的に接触するように配置された少なくとも一つの樹脂からなる層(24)および該樹脂からなる層(24)を覆う繊維からなる層(22)を備えた外側管体(20)を用いて封止する工程を有してなる、炭化水素燃料または作動液を無差別に給送するように構成された複合パイプ(1)の作製方法であって、
前記中心管体(10)は、熱間曲げによって該中心管体(10)に最終的な湾曲を与えるために、該中心管体(10)が前記外側管体(20)にて覆われる以前に、予め熱成形されることを特徴とする、複合パイプ(1)の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−89507(P2010−89507A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−233377(P2009−233377)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(509279734)
【氏名又は名称原語表記】AERAZUR
【Fターム(参考)】