説明

炭化珪素半導体装置の製造方法

【課題】不純物領域に3C−SiC欠陥が混入しないようにすると共に、選択マスクを着実に除去できるようにする。
【解決手段】トレンチ5内に形成される不純物領域7の成長上面が選択マスクとなるカーボン膜2の下面よりも下方となるようにする。すなわち、カーボン膜2の下面までにトレンチ5内に形成される不純物領域7の成長上面を抑える。これにより、不純物領域7の横方向の拡大を抑制することができ、横方向成長した場合に発生する3C−SiC膜8の多形混入を防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素基板にトレンチを形成した後、その内部にエピタキシャル(以下、単にエピという)層を埋め込むことによって形成した不純物領域を有する炭化珪素半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、炭化珪素における選択埋め込みエピ技術が開示されている。具体的には、酸化膜等をマスクとしたドライエッチングにより、炭化珪素基板の表面にトレンチを形成したのち、そのマスクをそのまま選択成長マスクとして用いてエピ領域を選択的に成長させるエピ技術が開示されている。このエピ技術により、従来のイオン注入法で不純物領域を形成した場合に発生していた問題点、すなわち、低い活性化率、イオン注入残留欠陥の存在、漏れ電流の増加、不純物層の深さ制限等の問題点が解消できるとしている。
【0003】
また、本発明者らは、先に、特願2003−102831において、オフ角を有する炭化珪素半導体にトレンチを形成し、そのトレンチをエピで埋め込む場合、選択成長マスクであるカーボン膜をトレンチ領域以外に形成するという技術を提案している。これにより、オフ角に起因する(0001)ファセット面の形成を防止できることが記載されている。
【特許文献1】特開平11−16840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、トレンチエッチング用マスクと選択成長用マスクを兼ねるマスクとしてSiO2の使用が記載されているが、4H等のα型炭化珪素のエピタキシャル成長には1500度程度の基板加熱が必要であり、埋め込み成長前の基板昇温時にSiO2が融解してマスクパターンがなくなり易いという課題があった。
【0005】
また、特願2003−102831の技術では、選択成長用マスクとしてカーボン膜の使用が記載されているが、通常の方法でエピタキシャル成長を実施した場合、トレンチの開口部端部にβ型炭化珪素(3C−SiC欠陥)が発生し、埋め込み領域に3C−SiC欠陥が混入するという課題があった。また、成長条件によっては、選択成長後の選択マスクが、熱酸化で簡単には除去できないという課題があった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、炭化珪素基板にトレンチを形成し、そのトレンチを埋め込んで不純物領域を形成する炭化珪素半導体装置の製造方法に関して、不純物領域に3C−SiC欠陥が混入しないようにすると共に、選択マスクを着実に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、不純物領域形成工程において、トレンチ(5)内に形成される不純物領域(7)の上面が、選択成長マスク(2)の上面より、下方となるように成長することを特徴としている。
【0008】
例えば、トレンチ内の成長層上面が、選択成長マスクの上面を越えた場合を図9に示す。このような場合、炭化珪素基板(1)のオフ角に起因して炭化珪素基板(1)のステップ情報がない成長領域では3C−SiC欠陥が発生していることが本発明者らの実験により確認された。
【0009】
このため、選択成長マスク(2)の上面よりも下方となるように、トレンチ(5)内に形成される不純物領域(7)の上面を抑えることにより、不純物領域(7)の横方向の拡大を抑制することができ、横方向成長した場合に発生する3C−SiCの多形混入を防止できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、選択成長マスクをカーボン膜(2)とした場合、エピタキシャル成長温度まで昇温するガス雰囲気を不活性ガス雰囲気とすることを特徴としている。
【0011】
このように、エピタキシャル成長温度まで昇温する昇温工程を不活性ガス雰囲気とすることで、カーボン膜(2)のエッチングがなくなり、トレンチ(5)の開口端からのカーボン膜(2)の後退を無くすことができる。その結果、3C−SiC欠陥の発生を防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、不活性ガスをHeとすることを特徴としている。Heは、熱伝導性が高いため、原料ガスを効率的に分解することができる。また、Heは、炭化珪素のエピタキシャル成長に用いることも可能であるガスであり、高温でも選択成長用マスク(2)と反応しない。そのため、トレンチ(5)の開口端からの選択成長用マスク(2)の後退も防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、不活性ガスをArとすることを特徴としている。Arは、熱伝導性がHeに劣るものの、Heに比べコスト的に有利なガスである。Arは、高温で選択成長用マスク(2)と反応しないため、昇温時のトレンチ(5)の開口端からの選択成長用マスク(2)の後退を防止することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、不純物領域形成工程において、トレンチ(7)内に形成される不純物領域(7)と選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−SiC膜(8)が接続しないように不純物領域(7)を成長させることを特徴としている。
【0015】
このようにすれば、不純物領域(7)と選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−Siが接続していないため、酸化種の酸素原子が、露出した選択成長用マスク(2)を起点として、選択成長用マスク(2)の全域に侵入するため、容易に選択成長用マスク(2)を酸化させることができ、容易に選択成長用マスク(2)を除去することができる。このため、それに伴い選択成長用マスク(2)の上面に成長した3C−SiC膜(8)も容易に炭化珪素基板(1)の上から除去することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、選択埋め込み層形成工程において、トレンチ(5)内に形成される不純物領域(7)とトレンチ(5)の外の選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−SiC膜(8)との間の距離が、選択成長用マスク(2)の膜厚よりも大きくなるように不純物領域(7)を成長させることを特徴としている。
【0017】
このように、不純物領域(7)と選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−SiC膜(8)との間の距離を選択成長用マスク(2)の膜厚より大きくすることで、酸化種の酸素原子の進入速度を低下させることなく、選択成長用マスク(2)の全域を容易に酸化させることができる。このため、選択成長用マスク(2)を容易に除去することが可能となる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、不純物領域形成工程において、成長温度を1600℃以上、C/Si比を2以下、成長圧力を1.33×104Pa以上、成長レートを2.5μm/h以下とすることを特徴としている。
【0019】
この条件で成長すれば、選択成長用マスク(2)の上の原料ガスのマイグレーションが活性化され、トレンチ(5)内の不純物領域(7)と選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−SiC膜(8)が接続しないようなエピ成長を行うことができる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態における炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図1(a)〜(f)に、本実施形態における炭化珪素半導体装置の製造工程図を示し、この図を参照して説明する。
【0023】
〔図1(a)に示す工程〕
まず、炭化珪素基板1を用意し、その上面に有機フォトレジスト膜を3μm程度均一に塗布する。次に、炭化珪素基板1の上に形成した有機フォトレジスト膜を非酸化性雰囲気、例えばAr雰囲気で700℃以上の温度で、炭化してカーボン層2とする。このとき、カーボン層2の膜厚は、当初の有機フォトレジスト膜が半減して約1.5μmとなる。
【0024】
なお、このカーボン膜2は、SiO2膜とは異なり2000℃以上の雰囲気においても、融解してマスクパターンがなくなることはなく、また、エピタキシャルにおいて炭化珪素基板1と反応することこともなく、成長後には酸化雰囲気で容易に除去できるため、選択成長マスクとして充分機能する。
【0025】
次に、そのカーボン膜2上にトレンチエッチング用マスクとしてのLTO膜(酸化膜)3を1.5μm形成する。
【0026】
〔図1(b)に示す工程〕
次に、LTO膜3とカーボン膜2を順次エッチングによってパターニングすることで、例えば、幅が約2μmとなる開口部4を形成する。このときのエッチングは、例えば、LTO膜3はCHF3プラズマ雰囲気でのドライエッチング、カーボン膜2はO2プラズマ雰囲気でのドライエッチングとしている。
【0027】
〔図1(c)に示す工程〕
次に、LTO膜3をマスクとして用いて、反応性ドライエッチングで炭化珪素基板1に深さが例えば4μmとなるトレンチ5を形成する。
【0028】
〔図1(d)に示す工程〕
次に、トレンチエッチングで用いたLTO膜3をHF等で完全に除去する。
【0029】
〔図1(e)に示す工程〕
成長装置を用いて、トレンチ5内に埋め込み層をエピ成長させることで、不純物領域7を形成する。このとき、エピ成長を図2に示す成長プロファイルにしたがって行う。
【0030】
まず、成長装置内にArガスを導入してAr雰囲気とし、この状態で1600℃以上、例えば1650℃まで加熱する昇温工程を行う。そして、原料ガスを導入する前、つまり昇温工程を終了した後の基板加熱保持を行う期間までAr雰囲気とする。このように、Ar雰囲気のような不活性ガス雰囲気とすれば、水素雰囲気とは異なり、カーボン膜2の水素によるエッチングがないため、カーボン膜2のトレンチ5の開口部からの後退は発生しない。
【0031】
続いて、Arガスをキャリアガスである水素に原料ガスであるプロパン(C38)およびシラン(SiH4)を混入した混合ガスに切り替えることで不純物領域7をエピ成長させ、トレンチ5内を不純物領域7によって埋め込む。このとき、不純物領域7をカーボン膜2の下面(下方位置)まで成長させ、トレンチ5内に成長する不純物領域7とトレンチ5の外のカーボン膜2の上面に成長する3C−SiC膜8との間の距離Lが、カーボン膜2の膜厚tよりも大きくなるように、不純物領域7をエピ成長させる。
【0032】
具体的には、成長温度1600℃以上、C/Si比2以下、成長圧力100Torr以上、成長レート2.5μm/h以下とすれば、不純物領域7とカーボン膜2の上面に成長する3C−SiC膜8が接続して成長することはなく、例えば、成長温度を1600℃以上(例えば1625℃)、C/Siを2以下(例えば1.0)、成長圧力を1.33×104Pa(=100Torr)以上(例えば2.66×104Pa(=200Torr))、成長レートを2.5μm/h以下として成長すれば、トレンチ5内の不純物領域7とトレンチ5の外のカーボン膜2の上面に成長する3C−SiC膜8との間の距離Lは10μm程度となり、不純物領域7と3C−SiC膜8とが接続されないようにすることができる。
【0033】
また、このエピ成長時に、混合ガスの流量を制御してN型、P型ドーパントとなる窒素ガスやTMAを混合ガス中に混入すれば、不純物領域7の導電型および不純物濃度を制御できる。
【0034】
〔図1(f)に示す工程〕
次に、1000℃程度の熱酸化を10分程度行う。この熱酸化により、酸化種の酸素原子が、露出したカーボン膜2を起点として、カーボン膜2の全域に侵入し、カーボン膜2が容易に酸化される。このため、この酸化したカーボン層2を除去すれば、それに伴ってカーボン膜2の上面に成長した3C−SiC膜8も容易に炭化珪素基板1の上から除去される。
【0035】
以上の工程により、炭化珪素基板1に、不純物型、不純物濃度が制御された不純物領域7が形成される。
【0036】
続いて、本実施形態で示した炭化珪素半導体装置の製造方法による効果について説明する。
【0037】
(1)本実施形態の炭化珪素半導体装置の製造方法では、トレンチ5内に形成される不純物領域7の成長上面が選択マスクとなるカーボン膜2の下面よりも下方となるようにしている。すなわち、カーボン膜2の下面までにトレンチ5内に形成される不純物領域7の成長上面を抑えることにより、不純物領域7の横方向の拡大を抑制することができ、横方向成長した場合に発生する3C−SiCの多形混入を防止することが可能となる。
【0038】
(2)また、本実施形態の炭化珪素半導体装置の製造方法では、不純物領域7をエピ成長させる際の原料ガスを導入する前、つまり昇温工程を終了した後の基板加熱保持を行う期間までAr雰囲気としている。
【0039】
一般的には、炭化珪素基板1上に不純物領域7を形成する場合、図3に示される成長プロファイルでエピ成長が実施される。すなわち、原料ガスのシラン(SiH4)、プロパン(C38)を流すまでの昇温工程及び基板エッチングの間、基板は水素やHCLガス雰囲気に晒されている。
【0040】
このため、図4(a)に示されるように、水素やHCLガスにより、選択成長マスクとなるカーボン膜2が一部エッチングされ、トレンチ5の開口端からカーボン膜2が後退する。その結果、次工程の不純物領域7を選択的埋め込み形成する工程において、カーボン膜2が後退した領域に、図4(b)に示されるように3C−SiC欠陥が発生することが本発明者らの実験により確認された。これは、炭化珪素基板1のオフ角に起因して炭化珪素基板1のステップ情報がないことが原因となっている。
【0041】
これに対し、本実施形態では、昇温工程および昇温工程後の基板加熱保持の期間中、Ar雰囲気としているため、カーボン膜2がエッチングされることがない。このため、カーボン膜2のトレンチ5の開口端からの後退を無くすことができ、その結果、3C−SiC欠陥の発生を防止することができる。
【0042】
(3)また、本実施形態の炭化珪素半導体装置の製造方法では、不純物領域7をエピ成長させる際に、不純物領域7が選択マスクとして用いられるカーボン膜2の上に形成される3C−SiCと接続されないようにしている。
【0043】
もし、トレンチ5内の不純物領域7とカーボン膜2上に成長する3C−SiC膜8が接続して、カーボン膜2の露出領域がなくなると、その後に熱酸化を実施しても、カーボン膜2の全域が酸化レートの小さい炭化珪素で覆われているため、酸化種の酸素原子がカーボン膜2に到達しなくなる。このため、選択マスクとして用いたカーボン膜2を除去できなくなる。
【0044】
一方、トレンチ5内の不純物領域7とカーボン膜2上に成長する3C−SiC膜8が接続しないようにエピ成長させた場合には、酸化種の酸素原子が、露出したカーボン膜2を起点として、カーボン膜2の全域に侵入し、カーボン膜2が容易に酸化される。このため、カーボン膜2を用意に除去でき、それに伴いカーボン膜2の上面に成長した3C−SiC膜8を容易に炭化珪素基板1上から除去することが可能となる。
【0045】
(4)また、本実施形態の炭化珪素半導体装置の製造方法では、トレンチ5内の不純物領域7とトレンチ5の外のカーボン膜2の上面に成長する3C−SiC膜8との間の距離が、選択マスクであるカーボン膜2の膜厚よりも大きくなるようにエピ成長を行っている。
【0046】
このように、不純物領域7とカーボン膜2の上面に成長する3C−SiC膜8との間の距離をカーボン膜2の膜厚より大きくすることで、酸化種の酸素原子の進入速度を低下させることなく、カーボン膜2の全域を容易に酸化させることができ、カーボン膜2を容易に除去させられる。
【0047】
具体的には、エピ成長における成長温度を1600℃以上、C/Siを2以下、成長圧力を1.33×104Pa(=100Torr)以上、成長レートを2.5μm/h以下としている。このようなエピ成長とすれば、カーボン膜2上の原料ガスのマイグレーションが活性化され、トレンチ5内の不純物領域7とトレンチ5の外のカーボン膜2の上面に成長する3C−SiC膜8との間の距離は10μm程度となり、不純物領域7と3C−SiC膜8とが接続されないようにすることができる。
【0048】
(他の実施形態)
上記実施形態では、埋め込み成長を行った不純物領域7の上面が、炭化珪素基板1の表面と一致する例を示したが、実際には完全に一致させることは困難であり、現実的な成長形態としては図5(a)、(b)、(c)に示されるように、トレンチ5が不純物領域7によって完全には埋め込まれていない状態となる。
【0049】
具体的には、図5(a)〜(c)は、不純物領域7によってトレンチ5が完全に埋め込まれなかった場合に、不純物領域7に残る凹みの程度を示したものである。このように、不純物領域7に残る凹みの程度は、エピ成長を行う際の成長時間に応じて調整可能であるため、炭化珪素半導体装置の用途に応じて不純物領域7の凹みの程度を調整すればよい。
【0050】
また、上記実施形態では、不純物領域7の成長上面がカーボン膜2の下面を超えないようにすることで、3C−SiC欠陥のない不純物領域7を形成している。これは、埋め込み成長層上面がカーボン層上面を越えた場合、3C−SiC多形が混入するとともに、横方向成長が発生するためである。しかしながら、不純物領域7の成長上面がカーボン膜2の下面とカーボン膜2の上面との間に位置している場合には、不純物領域7内への3C−SiC多形混入が僅かに発生するだけであり、用途を限定すれば応用可能である。つまり、不純物領域7の成長上面が少なくともカーボン膜2の上面よりも下方に位置していれば良い。
【0051】
また、図6に示すようにトレンチ5の側面に比べ、底面の成長レートを大きくしたり、小さくすることも成長条件(成長温度・原料ガス濃度)により制御可能である。
【0052】
また、他の実施形態として、不純物領域7を2層以上で構成したり、連続的に不純物濃度を変化させた構成としても良い。図7は不純物領域7を領域7aおよび領域7bの2層で成長した場合である。このように不純物領域7を2層で構成する場合には、1層目となる領域7aを低濃度、2層目となる領域7bを高濃度となる構成とすれば、全体として抵抗が低く、リーク電流の少ないPN接合が形成できる。さらに、他の2層の例として、炭化珪素基板1をN型とした場合、1層目となる領域7aをP型、2層目となる領域7bをN型として成長すれば、炭化珪素基板1とは電気的に分離されたN型の領域7bが形成できる。
【0053】
また、図8は、不純物領域7の不純物濃度を徐々に変更した例を示したもので、図8(a)は、炭化珪素基板1の断面図、図8(b)は、図8(a)におけるA−A’断面での不純物濃度分布を示したものである。この図に示されるように、例えば、不純物領域7の成長に合わせて不純物濃度を高くしていくことで、トレンチ5の中央部において不純物領域7の不純物濃度が高く、そこから離れるにしたがって不純物領域7の不純物濃度が低くなるような構成とすることができる。この場合は、複数の層を形成した場合と同様な機能が複数層の場合よりもさらに効率的に実現されることは言うまでもない。
【0054】
また、上記実施形態では、不活性ガスとしてArを用いた例を示しているが、Heを用いても良い。
【0055】
Heは、熱伝導性が高いため、原料ガスを効率的に分解することができる。また、Heは、炭化珪素のエピタキシャル成長に用いることも可能であるガスであり、高温でもカーボン膜2と反応しない。そのため、トレンチ5の開口端からのカーボン膜2の後退も防止することができる。
【0056】
ただし、上記実施形態のようにArを用いる場合、Arが熱伝導性がHeに劣るものの、Heに比べコスト的に有利なガスであることから、炭化珪素半導体装置の製造コストを抑えるという点に関しては有利である。
【0057】
また、上記実施形態では、カーボン膜2を有機フォトレジスト膜を用いて形成しているが、スパッタリング法による堆積膜やCVD法による堆積膜を用い形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態における炭化珪素半導体装置の製造工程図である。
【図2】不純物領域をエピ成長させるときの成長プロファイルを示す図である。
【図3】一般的にエピ成長を行う場合に用いられる成長プロファイルを示す図である。
【図4】(a)は、水素やHCLガスによってカーボン膜が一部エッチングされた様子を示す炭化珪素半導体装置の断面図であり、(b)は、カーボン膜が後退した場所に3C−SiC欠陥が形成された様子を示す炭化珪素半導体装置の断面図である。
【図5】不純物領域によってトレンチが完全に埋め込まれなかった場合の様子を示す炭化珪素半導体装置の断面図である。
【図6】トレンチの側面と底面とで不純物領域の成長レートを変えた場合の様子を示す炭化珪素半導体装置の断面図である。
【図7】不純物領域を2層で成長した場合の炭化珪素半導体装置の断面図である。
【図8】(a)は、炭化珪素基板1の断面図、(b)は、図8(a)におけるA−A’断面での不純物濃度分布を示した図である。
【図9】トレンチ内の成長層上面が、選択成長マスクの上面を越えた場合の様子を示す炭化珪素半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1…炭化珪素基板、2…カーボン膜(選択成長用マスク)、
3…LTO膜(トレンチエッチング用マスク)、4…開口部、5…トレンチ、
7…不純物領域、8…3C−SiC膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素基板(1)の上面に選択成長用マスク(2)を形成する選択マスク形成工程と、
前記選択成長用マスク(2)の上面にトレンチエッチング用マスク(3)を形成するトレンチマスク形成工程と、
前記トレンチエッチング用マスク(3)と選択成長用マスク(2)を連続してパターニングするマスクパターン工程と
前記トレンチエッチング用マスク(3)を用いてドライエッチングを行い、前記炭化珪素基板(1)にトレンチ(5)を形成するトレンチ形成工程と、
前記トレンチエッチング用マスク(3)を除去した後、前記炭化珪素基板(1)をエピタキシャル成長温度まで加熱する昇温工程と、
前記トレンチ(5)内にエピタキシャル成長法により、不純物領域(7)をその上面が前記選択成長用マスク(2)の上面よりも下方となるように形成する不純物領域形成工程と、
前記選択成長用マスク(2)を除去する選択マスク除去工程と、を有することを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記選択成長用マスクとしてカーボン膜(2)を用い、前記昇温工程を不活性ガス雰囲気で行うことをを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。。
【請求項3】
前記不活性ガスとしてHeを用いることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記不活性ガスとしてArを用いることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記不純物領域形成工程においては、前記トレンチ(5)内の前記不純物領域(7)と前記選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−SiC膜(8)が接続しないように前記不純物領域(7)を成長させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記選択埋め込み層形成工程においては、前記トレンチ(5)内の前記不純物領域(7)と前記選択成長用マスク(2)の上面に成長する3C−SiC膜(8)との間の距離が前記選択成長用マスク(2)の膜厚より大きくなるように前記不純物領域(7)を成長させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記不純物領域形成工程では、成長温度を1600℃以上、C/Si比を2以下、成長圧力を1.33×104Pa以上、成長レートを2.5μm/h以下とすることを特徴とする請求項5または6に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記選択マスク除去工程を熱酸化によって行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−41163(P2006−41163A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218542(P2004−218542)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】