説明

炭素繊維装置及び炭素繊維装置の製造方法

【課題】ホール形成層のホールの底面の略全域に金属触媒層を形成することができる炭素繊維装置及び炭素繊維装置の製造方法を提供する。
【解決手段】FED(炭素繊維装置)1は、カソード基板2と、カソード基板2上に形成されたカソード電極3と、カソード電極3上に形成された金属触媒層4と、金属触媒層4の一部を覆うとともに、金属触媒層4を露出させるホール17が形成され、絶縁層16を含むホール形成層6と、ホール形成層6から露出した金属触媒層4から延びる炭素繊維5とを備えている。FED1の製造方法では、金属触媒層4を形成した後、ホール形成層6が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブやグラファイトナノファイバー等のナノスケールの炭素繊維を備えた炭素繊維装置及び炭素繊維装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンナノチューブやグラファイトナノファイバー等のナノスケールの炭素繊維を備えたFEA(フィールドエミッションアレイ)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)や多層配線構造を有する集積回路等の炭素繊維装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
図16は従来のアレイ状の徴小電子放出源を備えたFEA(炭素繊維装置)の断面図である。図16に示すように、従来のFEA101は、基板102と、基板102上に形成されたカソード電極103と、カソード電極103の一部を露出させるためのホール117が形成された絶縁性のホール形成層106と、ホール形成層106上に形成されたゲート電極107と、ホール形成層106のホール117により露出されたカソード電極103上に形成された金属触媒層104と、露出させた金属触媒層104上に成長させたグラファイトナノファイバー等からなる炭素繊維105と、炭素繊維105を挟みカソード電極103と対向するように別の基板に設けられたアノード電極(図示略)とを備えている。
【0004】
次に、従来のFEA101の製造方法を、図17〜図19を参照して説明する。従来のFEA101の製造方法では、図17に示すように、基板102上にパターニングされたカソード電極103を形成する。次に、ホール形成層106及びゲート電極107を形成する。その後、ホール117を形成する領域が開口したレジスト膜121を形成する。
【0005】
次に、図18に示すように、ウェットエッチングによりゲート電極107及びホール形成層106の一部を除去してホール117を形成する。ここで、ドライエッチングによりホール117を形成すると、レジスト膜121が硬化して後述する有機液体(例えば、アセトン)による金属触媒層104のリフトオフが困難になるので、ドライエッチングは好ましくない。尚、硬化したレジスト膜121は、酸やアルカリ溶液には溶けるが、これらの溶液は金属触媒104をも溶かしてしまうので採用できない。
【0006】
次に、図19に示すように、ホール117を形成するためのレジスト膜121をそのまま除去せずに、鉄からなる金属触媒層104をスパッタ法により形成する。このように、金属触媒層104を構成する鉄は、酸に溶け易いためホール形成層106よりも後に形成することになる。その後、レジスト膜121とともにレジスト膜121上の金属触媒層104を有機液体により除去する(いわゆる、リフトオフ)。次に、図16に示すように、熱CVD法により、ホール117内に残った金属触媒層104に炭素繊維105を成長させる。
【特許文献1】特開2004−303679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したFEA101及びその製造方法では、先にホール形成層106を形成した後、金属触媒層104を形成している。このため、ホール117の底面の中央部には金属触媒層104を形成することができるが、ホール117の底面の外周部には触媒を形成することが難しいといった課題がある。この課題は、ホール117の直径が小さくなり、ホール117の深さに対して直径が小さくなった場合に、特に大きくなる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、ホール形成層のホールの底面の略全域に金属触媒層を形成することができる炭素繊維装置及び炭素繊維装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基板と、前記基板上に形成された電極と、前記電極上に形成された金属触媒層と、前記金属触媒層の一部を覆うとともに、前記金属触媒層を露出させるホールが形成され、絶縁層を含むホール形成層と、前記ホール形成層から露出した前記金属触媒層から延びる炭素繊維とを備えたことを特徴とする炭素繊維装置である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記ホール形成層は、前記絶縁層と前記金属触媒層との間に形成され、アッシング可能な第1保護層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維装置である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記ホール形成層は、前記絶縁層と前記炭素含有層との間に前記絶縁層よりもエッチングレートの低い第2保護層を備えたことを特徴とする請求項2に記載の炭素繊維装置
である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、基板上に電極を形成する電極形成工程と、前記電極上に金属触媒層を形成する触媒形成工程と、前記金属触媒層の一部を覆うとともに、前記金属触媒層を露出させるためのホールが形成され、絶縁層を含むホール形成層を形成するホール形成工程と、前記金属触媒層に炭素繊維を成長させる炭素繊維成長工程とを備えたことを特徴とする炭素繊維装置の製造方法である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記ホール形成工程では、ドライエッチングによって、前記ホール形成層の絶縁層に前記ホールを形成することを特徴とする請求項4に記載の炭素繊維装置の製造方法である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記ホール形成工程では、前記絶縁層と前記金属触媒層との間に、アッシング可能な第1保護層を形成し、前記絶縁層にホールを形成した後、前記第1保護層にアッシングによりホールを形成することを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の炭素繊維装置の製造方法である。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、前記ホール形成工程では、前記絶縁層と前記第1保護層との間に、前記絶縁層よりもエッチングレートの低い第2保護層を形成することを特徴とする請求項6に記載の炭素繊維装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属触媒層の一部を覆うようにホール触媒層を形成している。即ち、金属触媒層の後にホール形成層を形成しているので、ホールの底面の中央部及び外周部に関わらず、ホールの底面の略全域に金属触媒層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明を電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)に適用した第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態によるFEDの断面図である。図2は、カソード電極とゲート電極との関係を示す概略図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、FED1は、カソード基板(請求項の基板に相当)2と、複数のカソード電極(請求項の電極に相当)3と、金属触媒層4と、炭素繊維5と、ホール形成層6と、複数のゲート電極7と、蛍光体8と、複数のアノード電極9と、アノード基板10とを備えている。
【0019】
カソード基板2は、絶縁性のガラス基板からなる。
【0020】
カソード電極3は、クロム(Cr)からなり、カソード基板2上に形成されている。図2に示すように、カソード電極3は、約16μmの幅を有する直線状に形成されている。複数のカソード電極3は、互いに平行になるように約4μmの間隔で配置されている。尚、カソード電極3の幅及び間隔は適宜変更可能である。一例として、カソード電極3を約85μmの幅に形成し、約15μmの間隔で配置してもよい。これにより、RGBの3色で蛍光体を構成すると、約300μmピッチのピクセル(約100μmピッチのサブピクセル)を実現できる。
【0021】
金属触媒層4は、炭素繊維5を成長させるためのものである。金属触媒層4は、1nm〜10nmの厚み、好ましくは約3nm以下の厚みを有する鉄(Fe)の微粒子からなる。尚、金属触媒層4を、ニッケルまたクロム等を鉄に含有させた鉄合金の微粒子により構成してもよい。金属触媒層4は、カソード電極3とゲート電極7とが直交する領域のカソード電極3上に形成されている。金属触媒層4の一部は、ホール形成層6のホール17によって露出されている。
【0022】
炭素繊維5は、電子放出源として機能するものである。炭素繊維5は、数nm〜数十nmの直径を有するグラファイトナノファイバー(GNF)からなる。炭素繊維5は、ホール形成層6のホール17から露出した金属触媒層4から延びるように形成されている。
【0023】
ホール形成層6は、金属触媒層4の一部を覆うように形成されている。ホール形成層6には、金属触媒層4の一部を露出させるためのホール17が形成されている。ホール17は、約5μm以下、好ましくは約1μmの直径を有する。ホール形成層6は、炭素含有層(請求項の第1保護層に相当)15と、絶縁層16とを備えている。
【0024】
炭素含有層15は、絶縁層16をエッチングする際に、金属触媒層4が劣化することを抑制するためのものである。炭素含有層15は、約300nmの厚みを有する。炭素含有層15は、炭素を含み、アッシング可能な熱硬化させたレジスト膜により構成されている。尚、このような炭素含有層15を構成する材料として、炭素を含むポリイミド等を熱硬化させたポリマー材料やカーボン等を適用できる。炭素含有層15は、金属触媒層4と絶縁層16との間に形成されている。炭素含有層15は、金属触媒層4の一部を除き略全面を覆うように形成されている。
【0025】
絶縁層16は、カソード電極3とゲート電極7とを絶縁するためのものである。絶縁層16は、SiOからなる。絶縁層16は、炭素含有層15の上面の略全域に形成されている。
【0026】
ゲート電極7は、炭素繊維5から電子を引き出すためのものである。ゲート電極7は、クロム(Cr)からなり、ホール形成層6の上面に形成されている。図2に示すように、ゲート電極7は、約16μmの幅を有し、カソード電極3と直交する方向に延びる直線状に形成されている。複数のゲート電極7は、約4μmの間隔で配置されている。尚、ゲート電極7の幅及び間隔は適宜変更可能である。一例として、ゲート電極7を約85μmの幅に形成し、約15μmの間隔で配置してもよい。これにより、RGBの3色で蛍光体を構成すると、約300μmピッチのピクセル(約100μmピッチのサブピクセル)を実現できる。
【0027】
蛍光体8は、炭素繊維5から放出された電子が衝突することにより、所望の色の光を発光させるためのものである。尚、蛍光体8は、単層として図面に記載しているが、異なる複数の色を発光可能なドット状に形成してもよい。蛍光体8は、アノード電極9の下面に形成されている。
【0028】
アノード電極9は、炭素繊維5から放出された電子を蛍光体8へと衝突させるためのものである。アノード電極9は、光を透過可能なITO(インジウムスズ酸化物)からなり、アノード基板10の下面に形成されている。アノード電極9は、直線状に形成されている。アノード電極9は、カソード電極3と同じ方向に延びるように平行に形成されている。
【0029】
アノード基板10は、光を透過可能なガラス基板からなる。
【0030】
次に、上述したFED1の動作について説明する。
【0031】
まず、所定のカソード電極3とゲート電極7との間に電圧が印加される。電圧が印加されたカソード電極3とゲート電極7とが交差する位置に形成されている炭素繊維5から電子が放出される。放出された電子は、電圧が印加されているアノード電極9に引かれて進行する。進行する電子は、蛍光体8に衝突して、所定の色の光が発光される。そして、これらの光がアノード基板10を透過して、画像が表示される。
【0032】
次に、上述したFED1の製造方法について説明する。図3〜図9は、第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【0033】
まず、図3に示すように、フォトリソグラフィー技術及びリフトオフ法等により、カソード基板2上にパターニングされたカソード電極3を形成する。
【0034】
次に、図4に示すように、フォトリソグラフィー技術及びリフトオフ法等により、カソード電極3を覆うように、パターニングされた金属触媒層4を形成する。
【0035】
次に、図5に示すように、金属触媒層4を覆うように炭素を含むレジスト膜を熱硬化させて炭素含有層15を形成する。炭素含有層15をカーボンにより構成する場合は、スパッタ法または蒸着法等により形成してもよい。その後、炭素含有層15上に絶縁層16を形成する。更に、フォトリソグラフィー技術及びスパッタ法により絶縁層16上に直線状のゲート電極7を形成する。ここでゲート電極7は、平面視にて、金属触媒層4が形成された領域でカソード電極3と直交するようにパターニングされる(図2参照)。
【0036】
次に、図6に示すように、フォトリソグラフィー技術によりホール17が形成される領域が除去されたレジスト膜21を形成する。
【0037】
次に、図7に示すように、塩素(Cl)ガスを用いた反応性イオンエッチングにより、レジスト膜21から露出したゲート電極7を除去する。その後、CFガスのプラズマを用いたドライエッチングにより、レジスト膜21から露出した絶縁層16を除去する。ここで、炭素含有層15の一部が除去された状態で、ドライエッチングをストップさせるので、金属触媒層4がドライエッチングにより劣化することを抑制できる。尚、CFガスの代わりに、Cガス、Cガス、SFガス等のフッ素系ガスを用いてもよい。
【0038】
次に、図8に示すように、酸素を用いたアッシングにより、絶縁層16から露出した残りの炭素含有層15及びレジスト膜21を除去する。これによりホール形成層6に金属触媒層4の一部を露出させるためのホール17が形成される。この結果、ホール形成層6によって金属触媒層4の一部は覆われつつ、ホール形成層6から金属触媒層4の一部が露出する。ここで、金属触媒層4を構成する鉄は、ほとんどアッシングされない。
【0039】
次に、図9に示すように、約450℃〜約800℃程度の成長温度にカソード基板2を昇温して、CHガスを成長ガスとして用いた熱CVD(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)により、露出した金属触媒層4の表面に炭素繊維5を成長させる。尚、CHガスの代わりに、C、CO、メターノール、エタノール等のガスを成長ガスとして採用することができる。
【0040】
その後、別工程によりアノード基板10にアノード電極9及び蛍光体8を順に形成する。そして、このアノード基板10をカソード基板2に接着剤により接着して、図1に示すFED1が完成する。
【0041】
図10及び図11は、上述した第1実施形態によるFEDの製造方法により製造された炭素繊維の写真である。図11は、図10における円内部の拡大写真である。図10及び図11に示すように、ホールの底面の略全域に複数の炭素繊維が形成されているのがわかる。尚、カソード電極上に形成された金属触媒層は、厚み約3nm(一般では厚さ約20nm以下)と極めて薄いため写真内で示すことができない。
【0042】
上述したように、第1実施形態によるFED1は、金属触媒層4の一部を覆うようにホール形成層6を形成している。即ち、金属触媒層4をホール形成層6よりも先に形成している。これにより、ホール17の底面の中央部及び外周部に関わらず、ホール17の底面の略全域に金属触媒層4を形成することができる。また、ホール17の側面及びホール17の開口部(上面)の外周部のゲート電極7上に金属触媒層4が形成されることを抑制できる。これらのことから、所望の領域であるホール17の底面にのみ炭素繊維5を形成することができる。
【0043】
また、従来のようにレジスト膜が硬化することを防ぐために、ホールをウェットエッチングにより形成していた場合、ウェットエッチングでは微細加工が難しく、ホールの微細化に限界があった。しかしながら、第1実施形態によるFED1では、金属触媒層4を先に形成するので、ホール形成層6の絶縁層16をドライエッチングすることができる。これにより、ホール17の微細化を実現することができる。この結果、消費電力の低減、放出される電子の面方向での均一化、及び、画素密度の向上等を実現できる。
【0044】
また、金属触媒層4を炭素含有層15により覆った状態で、絶縁層16をドライエッチングすることによって、金属触媒層4の劣化を抑制できる。更に、金属触媒層4はアッシングされ難いため、アッシング可能な炭素含有層15を除去する際にも、金属触媒層4の劣化を抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態を部分的に変更した第2実施形態に係るFEDについて、図面を参照して説明する。図12は、第2実施形態に係るFEDの断面図である。尚、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付けて説明を省略する。
【0046】
図12に示すように、第2実施形態によるFED1Aは、カソード基板2と、複数のカソード電極3と、金属触媒層4Aと、炭素繊維5と、ホール17Aが形成されたホール形成層6Aと、複数のゲート電極7と、蛍光体8と、複数のアノード電極9と、アノード基板10とを備えている。
【0047】
金属触媒層4Aは、ドライエッチングにより劣化し難いニッケル(Ni)の微粒子からなる。
【0048】
炭素繊維5Aは、約10nmの直径を有する複数のカーボンナノチューブ(CNT)からなる。
【0049】
ホール形成層6Aは、絶縁層16によって構成されている。即ち、第1実施形態における炭素含有層15が省略されている。これは、金属触媒層4Aをドライエッチングにより劣化し難いニッケルにより構成しているためである。
【0050】
上述したように第2実施形態によるFED1Aでは、金属触媒層4Aをドライエッチングにより劣化し難いニッケルにより構成しているので、炭素含有層を省略してホール形成層6Aの構成を簡略化することができる。また、ホール形成層6Aにホール17Aを形成する工程を簡略化することができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、上述した第1実施形態を部分的に変更した第3実施形態によるFEDについて、図面を参照して説明する。図13は、第3実施形態に係るFEDの断面図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0052】
図13に示すように、第3実施形態によるFED1Bは、カソード基板2と、複数のカソード電極3と、金属触媒層4と、炭素繊維5と、ホール17Bが形成されたホール形成層6Bと、複数のゲート電極7と、蛍光体8と、複数のアノード電極9と、アノード基板10とを備えている。
【0053】
ホール形成層6Bは、炭素含有層15と、エッチングストッパー層(請求項の第2保護層に相当)18と、絶縁層16とを備えている。エッチングストッパー層18は、炭素含有層15と絶縁層16との間に形成されている。エッチングストッパー層18は、フッ素系ガスによるドライエッチングされ難い、数十nmの厚みを有するクロム(Cr)からなる。ここでフッ素系ガスによりドライエッチングがされ難いとは、絶縁層16のエッチングレートに比べてエッチングストッパー層18のエッチングレートが小さければよい。好ましくは、絶縁層16のエッチングレートに比べてエッチングストッパー層18のエッチングレートが1/10以下である。
【0054】
FED1Bの製造方法では、炭素含有層15と、エッチングストッパー層18と、絶縁層16と、ゲート電極7とを順に積層する。その後、ゲート電極7、絶縁層16、エッチングストッパー層18、炭素含有層15を順にエッチングしてホール17Bを形成する。ここで、エッチングストッパー層18のホール17Bの領域は、塩素ガスによる反応性イオンエッチングによって除去される。
【0055】
上述したように第3実施形態によるFED1Bは、フッ素系ガスによるドライエッチングではエッチングされ難いクロムからなるエッチングストッパー層18を備えている。これにより、絶縁層16をドライエッチングする際に、金属触媒層4がフッ素系ガスにより劣化することを、より抑制できる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、上述した第1実施形態を部分的に変更した第4実施形態によるFEDについて、図面を参照して説明する。図14は、第4実施形態に係るFEDの断面図である。尚、上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0057】
図14に示すように、第4実施形態によるFED1Cは、カソード基板2と、複数のカソード電極3と、金属触媒層4と、炭素繊維5と、ホール17が形成されたホール形成層6と、複数のゲート電極7と、絶縁層25と、集束電極26と、蛍光体8と、複数のアノード電極9と、アノード基板10とを備えている。
【0058】
絶縁層25は、集束電極26とゲート電極7とを絶縁するためのものである。絶縁層25は、SiOからなり、ゲート電極7上に形成されている。
【0059】
集束電極26は、炭素繊維5から放出された電子を集束させるためのものである。集束電極26は、クロムからなり、絶縁層25上に形成されている。
【0060】
絶縁層25及び集束電極26には、ホール形成層6のホール17と略同じ位置がドライエッチングにより除去されている。
【0061】
上述したように、第4実施形態によるFED1Cでは、集束電極26を備えているので、炭素繊維5から放出された電子を集束させることができる。これにより画像の鮮明度を向上させることができる。
【0062】
(第5実施形態)
次に、本発明を多層配線構造の集積回路(IC)に適用した第5実施形態について、図面を参照して説明する。図15は、第5実施形態による集積回路(IC)の断面図である。
【0063】
図15に示すように、第5実施形態によるIC51は、基板52と、下層電極53と、金属触媒層54と、炭素繊維55と、ホール形成層56と、上層電極57とを備えている。
【0064】
基板52は、絶縁性のガラス基板からなる。
【0065】
下層電極53は、クロム(Cr)やアルミニウム(Al)等の金属材料からなり、所望の形状にパターニングされて基板52上に形成されている。
【0066】
金属触媒層54は、炭素繊維55を成長させるためのものであって、鉄または鉄合金からなる。
【0067】
炭素繊維55は、下層電極53と上層電極57とを電気的に接続するためのものである。炭素繊維55は、金属触媒層54から上層電極57に達するまで形成されている。尚、炭素繊維55は、上述したFEDの電子放出源として用いる場合比べて、単位面積当たりの本数を増やす方が好ましい。低抵抗を実現するためである。
【0068】
ホール形成層56には、ホール67が形成されている。ホール形成層56は、金属触媒層54の一部を覆うように形成されている。即ち、ホール形成層56は、金属触媒層54よりも後に形成されている。ホール形成層56は、炭素を含むレジスト膜を熱硬化させたポリマーからなる炭素含有層65と、SiOからなる絶縁層66とを備えている。
【0069】
上層電極57は、クロム(Cr)やアルミニウム(Al)等の金属材料からなり、所望の形状にパターニングされて絶縁層66上に形成されている。上層電極57は、ホール67を塞ぐように形成されている。
【0070】
上述したように第5実施形態によるIC51では、金属触媒層54の一部を覆うようにホール形成層56を形成している。即ち、金属触媒層54を形成した後、ホール形成層56を形成しているので、金属触媒層54をホール形成層56のホール67の略全域に形成することができる。
【0071】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。以下、上記実施形態を一部変更した変更形態について説明する。
【0072】
例えば、上述した各構成の形状、数値、材料等は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態によるFEDの断面図である。
【図2】カソード電極とゲート電極との関係を示す概略図である。
【図3】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図4】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図5】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図6】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図7】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図8】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図9】第1実施形態によるFEDの各製造工程における説明図である。
【図10】第1実施形態によるFEDの製造方法により製造された炭素繊維の写真である。
【図11】図10の円部分を拡大した炭素繊維の写真である。
【図12】第2実施形態に係るFEDの断面図である。
【図13】第3実施形態に係るFEDの断面図である。
【図14】第4実施形態に係るFEDの断面図である。
【図15】第5実施形態による集積回路(IC)の断面図である。
【図16】従来のFEDの断面図を示す。
【図17】従来のFEDの製造方法を説明する図である。
【図18】従来のFEDの製造方法を説明する図である。
【図19】従来のFEDの製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
1、1A、1B、1C FED
2 カソード基板
3 カソード電極
4、4A 金属触媒層
5、5A 炭素繊維
6、6A、6B ホール形成層
7 ゲート電極
8 蛍光体
9 アノード電極
10 アノード基板
15 炭素含有層
16 絶縁層
17、17A、17B ホール
18 エッチングストッパー層
21 レジスト膜
25 絶縁層
26 集束電極

51 集積回路(IC)
52 基板
53 下層電極
54 金属触媒層
55 炭素繊維
56 ホール形成層
57 上層電極
65 炭素含有層
66 絶縁層
67 ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された電極と、
前記電極上に形成された金属触媒層と、
前記金属触媒層の一部を覆うとともに、前記金属触媒層を露出させるホールが形成され、絶縁層を含むホール形成層と、
前記ホール形成層から露出した前記金属触媒層から延びる炭素繊維とを備えたことを特徴とする炭素繊維装置。
【請求項2】
前記ホール形成層は、前記絶縁層と前記金属触媒層との間に形成され、アッシング可能な第1保護層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維装置。
【請求項3】
前記ホール形成層は、前記絶縁層と前記炭素含有層との間に前記絶縁層よりもエッチングレートの低い第2保護層を備えたことを特徴とする請求項2に記載の炭素繊維装置。
【請求項4】
基板上に電極を形成する電極形成工程と、
前記電極上に金属触媒層を形成する触媒形成工程と、
前記金属触媒層の一部を覆うとともに、前記金属触媒層を露出させるためのホールが形成され、絶縁層を含むホール形成層を形成するホール形成工程と、
前記金属触媒層に炭素繊維を成長させる炭素繊維成長工程とを備えたことを特徴とする炭素繊維装置の製造方法。
【請求項5】
前記ホール形成工程では、
ドライエッチングによって、前記ホール形成層の絶縁層に前記ホールを形成することを特徴とする請求項4に記載の炭素繊維装置の製造方法。
【請求項6】
前記ホール形成工程では、
前記絶縁層と前記金属触媒層との間に、アッシング可能な第1保護層を形成し、前記絶縁層にホールを形成した後、前記第1保護層にアッシングによりホールを形成することを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の炭素繊維装置の製造方法。
【請求項7】
前記ホール形成工程では、
前記絶縁層と前記第1保護層との間に、前記絶縁層よりもエッチングレートの低い第2保護層を形成することを特徴とする請求項6に記載の炭素繊維装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−140723(P2009−140723A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315352(P2007−315352)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】