説明

炭素膜被覆部材及びその製造方法

【課題】 基材上に高い密着性をもって炭素膜が形成された炭素膜被覆部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 炭素膜被覆部材1が、超硬合金の基材2の表面に直径50μm以下の複数の微細穴3が並んで形成され、基材2の表面に微細穴3を埋めて炭素膜4が形成されている。また、この炭素膜被覆部材の製造方法は、超硬合金の基材2の表面に直径50μm以下の複数の微細穴3を並べて形成する穴形成工程と、該穴形成工程後に基材2の表面に微細穴3を埋めて炭素膜4を形成する炭素膜形成工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライプレス加工用の金型等に好適な炭素膜被覆部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイヤモンド膜やDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜などの炭素膜を施した金型は、高潤滑の表面を持つため、金属の加工においてオイルレス・洗浄レスとしたプレス成型などのドライプレス加工を行えることが注目されている。これらは主にタングステンカーバイドを主成分とする超硬合金の上に種付け処理を施し、直接ダイヤモンドやDLCの膜をCVD法によって蒸着することで作製されている。
【0003】
これらの炭素膜は、十分高い潤滑性と硬度とを持つものの、基材である超硬合金と炭素膜との間の剥離が起こりやすく、力学的負荷が繰り返しかかったときの寿命が十分でない。これに対して超硬合金と炭素膜との密着性を向上させる技術として、例えば特許文献1には、基材表面にブラスト、研削加工、ピーニング、サンドペーパー等のやすり手段による擦り、粗面付きロールによる圧延、エッチング等の粗面化処理を施した後、基材との密着性が比較的良いDLC膜を設け、さらにDLC膜の表面を研磨する技術が提案されている。また、この文献では、基材の表面にダイヤモンド膜を予め形成し、このダイヤモンド膜上にDLC膜を設け、該DLC膜の表面を研磨する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
そもそも、CVD法で蒸着した炭素膜と超硬合金の基板との間の化学的結合力は弱く、これら2つの密着は下地の凹凸部に上の膜が引っ掛かるアンカー効果が支配的であると考えられる。したがって、特許文献1に記載の技術のように、粗面化処理を施した基材表面にDLC膜を施しても、その効果は、下地の表面状態によっては十分でないことが考えられる。すなわち、ブラスト等の粗面化処理の場合、ある程度の微細な凹凸を形成可能であるが、得られるアンカー効果にも限界がある。特に、基材との密着性が比較的良いDLC膜であれば粗面化処理によりある程度の密着性が得られるのに対し、DLC膜よりも基材との密着性が低いダイヤモンド膜の場合は、従来のブラスト等の粗面化処理では不十分であった。
さらに、超硬合金中にはバインダーとしてCoなどの焼結助剤を含むものが多く、これらがある場合、この上での健全な炭素膜の成長は困難であった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、基材上に高い密着性をもって炭素膜が形成された炭素膜被覆部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の炭素膜被覆部材は、超硬合金の基材の表面に直径50μm以下の複数の微細穴が並んで形成され、前記基材の表面に前記微細穴を埋めて炭素膜が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の炭素膜被覆部材の製造方法は、超硬合金の基材の表面に直径50μm以下の複数の微細穴を並べて形成する穴形成工程と、該穴形成工程後に前記基材の表面に前記微細穴を埋めて炭素膜を形成する炭素膜形成工程とを有していることを特徴とする。
【0008】
これらの炭素膜被覆部材及びその製造方法では、基材の表面に直径50μm以下の複数の微細穴が並んで形成され、基材の表面に微細穴を埋めて炭素膜が形成されるので、基材に並んで形成された複数の微細孔によって、ブラスト等の粗面化処理に比べてさらに高いアンカー効果が得られ、より高い密着性を有する炭素膜が得られる。
なお、微細穴の直径を50μm以下とした理由は、直径50μmを超えた穴であると炭素膜と基材との間でのアンカー効果を発揮しなくなるためである。成膜された炭素膜は、数μm以下の粒の結合によって構成されており、この粒または粒の塊の一部と基材に形成された穴の側面とが絡み合うことでアンカー効果を発揮するのであるが、直径50μmを超えた穴であると炭素膜が絡み合っている穴の側面に対して穴底部などのそれ以外の面積の比率が高くなり、剪断応力に対して耐性がなくなりアンカー効果を発揮しなくなるのである。
【0009】
また、本発明の炭素膜被覆部材は、前記基材を構成する超硬合金がCoを含有し、前記基材の表面にタングステン膜が形成されていると共に該タングステン膜を通して前記微細穴が形成され、前記タングステン膜上に前記炭素膜が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の炭素膜被覆部材の製造方法は、前記基材を構成する超硬合金がCoを含有しており、前記穴形成工程前に、前記基材の表面にタングステン膜を形成する下地膜形成工程を有し、前記穴形成工程において、前記タングステン膜を通して前記微細穴を形成し、前記炭素膜形成工程において、前記タングステン膜上に前記炭素膜を形成することを特徴とする。
【0010】
すなわち、これらの炭素膜被覆部材及びその製造方法では、Coを含有した基材表面にタングステン膜を形成し、さらにその上に炭素膜が形成されるので、タングステン膜が下地膜となってCoを含む基材でも炭素膜の高い密着性が得られる。また、タングステン膜を通して微細穴が形成されるので、アンカー効果もそのまま維持され、安定した密着性が得られる。
【0011】
また、本発明の炭素膜被覆部材は、複数の前記微細穴が、深さ100μm以下であり、互いの間隔が100μm以上であることを特徴とする。
すなわち、この炭素膜被覆部材では、複数の微細穴が、深さ100μm以下であり、互いの間隔が100μm以上であるので、基材の強度を確保しつつ炭素膜の密着性を向上させることができる。
なお、複数の微細穴が、深さ100μmを超える、又は互いの間隔が100μm未満であると、基材の強度が低下してしまい金型に採用した場合など金型表層部の破壊が起こり易くなる。
さらに望ましくは、複数の微細穴の深さが、1μm以上であり、互いの間隔が2000μm以下とすることである。深さ1μmを下回る、又は互いの間隔が2000μmを超えると、炭素膜の基材に対する保持力が低下してしまい金型に採用した場合など金型表層部の剥離が起こり易くなる。
【0012】
また、本発明の炭素膜被覆部材は、前記炭素膜が、ダイヤモンド膜であることを特徴とする。
すなわち、この炭素膜被覆部材では、DLC膜に比べて基材との密着性が低いダイヤモンド膜でも基材に対して十分な密着性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の炭素膜被覆部材は、ドライプレス加工用の金型であることを特徴とする。すなわち、この炭素膜被覆部材では、ドライプレス加工用の金型とされることで、圧延時の打撃による炭素膜の剥離が起こり難くなり、金型が長寿命化すると共に、ドライ加工によるプロセスの簡便化と共にプレス品のコストダウンを図ることができる。
【0014】
また、本発明の炭素膜被覆部材の製造方法は、前記穴形成工程が、レーザ光を前記基材の表面に照射して前記微細穴を形成することを特徴とする。
すなわち、この炭素膜被覆部材の製造方法では、穴形成工程が、レーザ光を基材の表面に照射して微細穴を形成するので、多数の微細穴を高精度にかつ均一に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る炭素膜被覆部材及びその製造方法によれば、基材の表面に直径50μm以下の複数の微細穴が並んで形成され、基材の表面に微細穴を埋めて炭素膜が形成されるので、従来に比べてさらに高いアンカー効果が得られ、より高い密着性を有する炭素膜が得られる。
したがって、本発明の炭素膜被覆部材をドライプレス加工用の金型に適用することで、長寿命の金型が得られると共に、工程数の削減及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る炭素膜被覆部材及びその製造方法の第1実施形態において、炭素膜被覆部材の表面を示す拡大平面図である。
【図2】第1実施形態において、炭素膜被覆部材の製法を工程順に示す概念的な要部の断面図である。
【図3】第1実施形態において、炭素膜被覆部材をドライプレス加工用金型とした際のしごき加工時の状態を示す概略的な断面図である。
【図4】本発明に係る炭素膜被覆部材及びその製造方法の第2実施形態において、炭素膜被覆部材の製法を工程順に示す概念的な要部の断面図である。
【図5】本発明に係る炭素膜被覆部材及びその製造方法の実施例において、抗折力試験の試験状態を示す模式図である。
【図6】本発明の実施例において、炭素膜被覆部材の表面を示す拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る炭素膜被覆部材及びその製造方法の第1実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している部分がある。
【0018】
本実施形態の炭素膜被覆部材1は、図1及び図2に示すように、超硬合金で構成された基材2の表面に直径50μm以下の均一な複数の微細穴3が一定間隔で並んで形成され、基材2の表面に微細穴3を埋めて炭素膜4が形成されている。
上記基材2は、超硬合金で構成されている。
上記複数の微細穴3は、深さhが100μm以下であり、互いの間隔dが100μm以上である。さらに望ましくは、このときの複数の微細穴の深さが、1μm以上であり、互いの間隔が2000μm以下とすることである。
上記炭素膜4は、DLC膜やダイヤモンド膜であり、本実施形態ではダイヤモンド膜を採用している。
【0019】
この炭素膜被覆部材1の製造方法は、図2の(a)に示すように、超硬合金の基材2の表面に直径50μm以下の複数の微細穴3を並べて形成する穴形成工程と、図2の(b)に示すように、該穴形成工程後に基材2の表面に微細穴3を埋めて炭素膜4を形成する炭素膜形成工程と、図2の(c)に示すように、炭素膜4の表面の凹凸を研磨して平滑化する研磨工程とを有している。
【0020】
上記穴形成工程では、レーザ光Lを基材2の表面に照射してマイクロホールとして微細穴3を形成する。例えば、波長532nmのレーザ光Lを用いて、直径50μm以下、深さ100μm以下、さらに互いの間隔が100μm以上で、多数の微細穴3を千鳥配置状に並べて形成する。さらに望ましくは、このときの多数の微細穴の深さが、1μm以上であり、互いの間隔が2000μm以下で形成する。
また、上記炭素膜形成工程では、CVD法によりダイヤモンド膜を成膜する。
さらに、上記研磨工程では、ダイヤモンド膜の自形等によって凹凸の生じた表面を、例えば波長355nmのレーザ光により表面粗さ(最大高さ)Rz:0.5μm以下に平滑化する。
【0021】
次に、本実施形態の炭素膜被覆部材を、例えば、ステンレスやアルミニウム合金等のドライ圧延用金型として採用した場合について、図3を参照して説明する。
図3は、アルミニウム合金の素材5に対して、アルミ缶を作製するためのしごき加工を行うドライプレス加工用金型6を示している。このドライプレス加工用金型6は、炭素膜被覆部材としてのパンチ部6Aとダイ部6Bと備え、パンチ部6Aとダイ部6Bとの隙間に素材5を押し込むことにより、しごき加工を行なって薄肉化することで、加工を行うものである。
【0022】
このドライプレス加工用金型6では、しごき加工を行う加工面として、パンチ部6Aの外周面及び先端面とダイ部6Bの内周面とに、上述したように、微細穴3が多数形成された上に、炭素膜4としてダイヤモンド膜が被覆され、その表面がレーザ光で研磨されている。したがって、このドライプレス加工用金型6では、高い付着力を有するダイヤモンド膜が加工面に施されており、低い摩擦係数及び高い耐摩耗性を有している。
【0023】
このように本実施形態の炭素膜被覆部材及びその製造方法では、基材2の表面に直径50μm以下の複数の微細穴3が並んで形成され、基材2の表面に微細穴3を埋めて炭素膜4が形成されるので、基材2に並んで形成された複数の微細穴3によって、ブラスト等の粗面化処理に比べてさらに高いアンカー効果が得られ、より高い密着性を有する炭素膜4が得られる。
特に、炭素膜4が、DLC膜に比べて基材2との密着性が低いダイヤモンド膜であっても、基材2に対して十分な密着性を得ることができる。
【0024】
また、複数の微細穴3が、深さ100μm以下であり、互いの間隔が100μm以上であるので、基材2の強度を確保しつつ炭素膜4の密着性を向上させることができる。また、このときの複数の微細穴の深さが、1μm以上であり、互いの間隔が2000μm以下であるとさらに望ましい。
なお、本実施形態では、均一な複数の微細穴3が一定間隔で並んで形成されているが、この場合、不等間隔にかつランダムに不均一な径や深さの微細穴3が形成されている場合よりも、密着性の面内ばらつきが少なくなり、面内で均一で高い密着性が得られる。
また、穴形成工程において、レーザ光Lを基材2の表面に照射して微細穴3を形成するので、多数の微細穴3を高精度にかつ均一に形成することができる。
【0025】
したがって、本実施形態の炭素膜被覆部材が適用されたドライプレス加工用金型6では、加工面が上記炭素膜被覆構造を有しているので、圧延時の打撃による炭素膜4の剥離が起こり難くなり、金型が長寿命化すると共に、ドライ加工によるプロセスの簡便化と共にプレス品のコストダウンを図ることができる。
【0026】
次に、本発明に係る炭素膜被覆部材及びその製造方法の第2実施形態について、図4を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0027】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、微細穴3が形成された基材2に直接、炭素膜4が形成されているのに対し、第2実施形態の炭素膜被覆部材21は、基材2を構成する超硬合金がCoを含有し、図4の(d)に示すように、基材2の表面にタングステン膜27が形成されていると共に該タングステン膜27を通して微細穴3が形成され、タングステン膜27上に炭素膜4が形成されている点である。
【0028】
すなわち、この炭素膜被覆部材21の製造方法は、図4の(a)に示すように、穴形成工程前に、基材2の表面にタングステン膜27を形成する下地膜形成工程を有し、図4の(b)に示すように、穴形成工程において、タングステン膜27を通して微細穴3を形成し、図4の(c)に示すように、炭素膜形成工程において、タングステン膜27上に炭素膜4を形成し、図4の(d)に示すように、炭素膜4の表面の凹凸を研磨して平滑化する研磨工程とを有している。
なお、上記下地膜形成工程では、タングステンスパッタリングターゲットを用いてスパッタすることで、タングステン膜27を基材2の表面に形成している。
【0029】
このように本実施形態の炭素膜被覆部材21及びその製造方法では、Coを含有した基材2表面にタングステン膜27を形成し、さらにその上に炭素膜4が形成されるので、タングステン膜27が下地膜となって、Coを含む基材2でも炭素膜4の高い密着性が得られる。また、タングステン膜27を通して微細穴3が形成されるので、アンカー効果もそのまま維持され、安定した密着性が得られる。
【実施例】
【0030】
次に、上記第2実施形態の炭素膜被覆部材を作製し、強度評価試験を行った結果について説明する。
まず、強度評価試験として、表面:5mm×30mmで厚さ:1mmのCoを含む硬合金基材の表面に、タングステンスパッタリングターゲットを用いたスパッタにより、下地膜としてタングステン膜を設けた後、出力10W、波長532nm、繰り返し1kHzのレーザ光により、最大径50μm、深さ30μmのマイクロホールである微細穴を、近接の微細穴から互いに150μm離して、基材表面に形成した。
この後、CVD法で炭素膜としてダイヤモンド膜を被覆することで、試験片を作製した。
【0031】
この試験片に対して次のようにして抗折力試験を行った。
すなわち、図5に示すように、3点曲げ試験機100とAE(アコースティックエミッション)センサ101とを用いて、ダイヤモンド膜の基材からの剥がれ、破断、基材の破断時期を評価した。試験片102にはAEセンサ101が取り付けられており、このAEセンサ101には、AEテスタ本体103が接続されている。AEテスタ本体103は、AEセンサ101からの信号をプリアンプ104、メインアンプ105及びバンドパスフィルタ106を介してデジタルストレージオシロスコープ107でその波形を出力するようになっている。
【0032】
すなわち、ダイヤモンド膜が破断する際のAEセンサ101からの信号を取得することができ、出力される波形を解析することで、その破断の際の応力を測定した。その結果、ダイヤモンド膜の破断時の応力は、1.1kN/mmであり、十分高い強度を確認した。
なお、本発明の実施例である上記試験片について、その表面を拡大した顕微鏡写真を図6に示す。この写真中では、微細穴をマイクロホールとして表記している。
【0033】
次に、直径30mm、高さ20mmの金型において、Coを含む硬合金基材表面に、上記試験片と同じタングステン膜を形成する工程と微細穴を形成する工程とダイヤモンド膜を形成する工程とを行った。さらに、ダイヤモンド膜の自形によって凹凸の生じた表面を、波長355nmのレーザ光により研磨して、表面粗さRz:0.5μm以下に平滑化し、ドライプレス用金型を作製した。
【0034】
そして、このドライプレス用金型を用いて、板厚0.5mmのアルミニウム合金3003の素材を使用し、5000ショットのドライ加工での絞り加工を良好に行うことができた。このように、ステンレスの圧延のみならず、塑性変形し易いアルミニウム合金のドライ圧延用金型としても本発明の金型を採用することができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では、炭素膜被覆部材としてドライプレス加工用金型に適用したが、他の部材に適用しても構わない。例えば、切削工具等に本発明を採用しても構わない。すなわち、切削工具の刃先や刃部の基材に多数の微細穴を形成し、その表面にダイヤモンド膜等の炭素膜を形成することで、高い密着性を有する炭素膜コーティングされた切削工具を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1,21…炭素膜被覆部材、2…基材、3…微細穴、4…炭素膜、6…ドライプレス用金型、6A…パンチ部(金型)、6B…ダイ部(金型)、27…タングステン膜、L…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金の基材の表面に直径50μm以下の複数の微細穴が並んで形成され、
前記基材の表面に前記微細穴を埋めて炭素膜が形成されていることを特徴とする炭素膜被覆部材。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素膜被覆部材において、
前記基材を構成する超硬合金がCoを含有し、
前記基材の表面にタングステン膜が形成されていると共に該タングステン膜を通して前記微細穴が形成され、前記タングステン膜上に前記炭素膜が形成されていることを特徴とする炭素膜被覆部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の炭素膜被覆部材において、
複数の前記微細穴が、深さ100μm以下であり、互いの間隔が100μm以上であることを特徴とする炭素膜被覆部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の炭素膜被覆部材において、
前記炭素膜が、ダイヤモンド膜であることを特徴とする炭素膜被覆部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の炭素膜被覆部材において、
ドライプレス加工用の金型であることを特徴とする炭素膜被覆部材。
【請求項6】
超硬合金の基材の表面に直径50μm以下の複数の微細穴を並べて形成する穴形成工程と、
該穴形成工程後に前記基材の表面に前記微細穴を埋めて炭素膜を形成する炭素膜形成工程とを有していることを特徴とする炭素膜被覆部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の炭素膜被覆部材の製造方法において、
前記基材を構成する超硬合金がCoを含有しており、
前記穴形成工程前に、前記基材の表面にタングステン膜を形成する下地膜形成工程を有し、
前記穴形成工程において、前記タングステン膜を通して前記微細穴を形成し、
前記炭素膜形成工程において、前記タングステン膜上に前記炭素膜を形成することを特徴とする炭素膜被覆部材の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の炭素膜被覆部材の製造方法において、
前記穴形成工程が、レーザ光を前記基材の表面に照射して前記微細穴を形成することを特徴とする炭素膜被覆部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49881(P2013−49881A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187575(P2011−187575)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】