説明

炭酸塩水溶液および炭酸水素塩溶液からのガスの電気透析分離

【課題】混合ガス流からCO2などのガスを捕捉前溶液に捕捉させて捕捉後溶液とし、捕捉後溶液を電気透析装置を用いてガス、液体、または超臨界流体などの生成物として生成して除去する方法を提供する。
【解決手段】電気透析装置110を用いて、ガス、液体、または超臨界流体のような生成物を発生させるプロセスが、本装置へ少なくとも2つの溶液を第1溶液タンク100、第2溶液タンク101から流入させ、電極溶液をタンク102,103から流入させるステップと、第2溶液から生成物が発生するように、温度および圧力を調整するステップと、第2溶液内に生成物が発生するように、本装置の電気透析スタックへ電圧を加えるステップと、本装置から第2溶液を流出させるステップと、第2溶液から生成物を再生するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
混合ガス流からCOを除去する技術は、典型的には捕捉および再生という2ステップのプロセスが必要である。最初に、ガスは水の「捕捉前溶液」と接触し、捕捉前溶液は、混合ガス流内のCOガスと反応し、COを「捕捉後溶液」内へ「捕捉する」。次に、このCOを多く含む捕捉後水溶液から、純粋なCOガス流が再生される。種々の捕捉前溶液が存在する。CO濃度が386ppmの雰囲気などの低濃度のCOを有する混合ガス流にとって、水酸化カリウム(KOH)もしくは水酸化ナトリウム(NaOH)などの水酸化物捕捉前水溶液、炭酸カリウム(KCO)もしくは炭酸ナトリウム(NaCO)などの炭酸塩捕捉前水溶液、または炭酸水素カリウム(KHCO)もしくは炭酸水素ナトリウム(NaHCO)などの炭酸水素塩捕捉前水溶液は、CO捕捉前溶液として有望な候補である。他の捕捉前溶液では、例えば、モノエタノールアミン(MEA:monoethanolamine)が知られており、これは、例えば燃焼排ガスからのCOを除去するために、ガス流浄化用途に用いられる。これらの捕捉前溶液内へCOガスを捕捉すると、元の水酸化物/炭酸塩/炭酸水素塩の捕捉前溶液は、水酸化物(KOHもしくはNaOH)、炭酸塩(KCOもしくはNaCO)、および/または炭酸水素カリウム(KHCO)もしくは炭酸水素ナトリウム(NaHCO)捕捉後溶液から成る混合物で構成される、より酸性の捕捉後溶液へ変換される。
【0002】
COガスが、CO(2−)および/またはHCOというイオンの形態で捕捉されて、捕捉後溶液を形成すると、典型的には溶液から純粋なCOガスが再生される。このプロセスが与える全体にわたる効果は、比較的低いモル(mole)分率のCOガスを有する分離前混合ガス流から、分離前ガス流よりも高いモル分率のCOガスを有する分離後ガス流へ、COガスの分離および濃縮を行うことである。次いで、捕捉および再生後、分離後ガスは、地質学的に隔離されるか、またはコンクリート、プラスチック、もしくは液体炭化水素燃料などの有益な生成物内へ包含されるか、することができる。再生されたCOのうちの可能性がある用途の多くは、1気圧よりも高い圧力へCOを加圧する必要がある。
【0003】
バイポーラ膜電気透析(BPMED:bipolar membrane electrodialysis)は、他の化学薬品を追加せずに、塩類水溶液を酸および塩基へ変換するのに用いることができる。BPMEDデバイスのコンポーネントは、溶液内のイオン種を分離するのに用いられるイオン交換膜であり、複数の膜を横切って電界が加えられるときに分離される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、高圧電気透析システムの一実施の形態の概略図である。
【図2】図2は、高圧電気透析システムに用いる高圧電気透析装置の一実施の形態の分解図である。
【図3】図3は、一実施の形態に従ってCOガスを発生させる電気透析膜スタック動作の概略図である。
【図4】図4は、一実施の形態に従ってCOガスを発生させる電気透析膜スタック動作の概略図である。
【図5A】図5Aは、0.5MのKHCO溶液を流れる4A、8A、16A、22A、および25Aの電流において、高圧電気透析装置の一実施の形態の性能を特徴付けるように設計された実験の測定値を示す。
【図5B】図5Bは、0.5MのKHCO溶液を流れる4A、8A、16A、22A、および25Aの電流において、高圧電気透析装置の一実施の形態の性能を特徴付けるように設計された実験の測定値を示す。
【図5C】図5Cは、0.5MのKHCO溶液を流れる4A、8A、16A、22A、および25Aの電流において、高圧電気透析装置の一実施の形態の性能を特徴付けるように設計された実験の測定値を示す。
【図5D】図5Dは、0.5MのKHCO溶液を流れる4A、8A、16A、22A、および25Aの電流において、高圧電気透析装置の一実施の形態の性能を特徴付けるように設計された実験の測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
現在利用可能なバイポーラ膜電気透析(BPMED)装置は、少なくとも1つの電気透析セルで構成される電気透析スタックを含む。電気透析セルは、少なくとも1つのバイポーラ膜(BPM:bipolar membrane)を含み、セルを横切る両端間に電位が加えられると、水素(H)イオンおよび水酸化物(OH)イオンへの水の解離が発生するようにする。
【0006】
BPMED膜スタックは、2室構成または3室構成を有することができる。2室構成では、隣接する膜は、BPMとAEMとの間で交互に並べて、BPM、AEM、BPM、AEMなどの形式の膜スタックを形成してもよいし、または隣接する膜は、BPMとCEMとの間で交互に並べて、BPM、CEM、BPM、CEMなどの形式の膜スタックを形成してもよい。3室セルでは、隣接する膜は、BPMからAEM、CEMまでを循環させて、BPM、AEM、CEM、BPM、AEM、CEMなどの形式の膜スタックを形成してもよい。バイポーラ膜を有しない電気透析も可能性があり、交互に並ぶ一連のAEMおよびCEMによって形成された2室構成で構成されて、AEM、CEM、AEM、CEM、AEMなどの形式の膜スタックを形成する。
【0007】
市販のBPMEDシステムの内部にあるガス気泡により、膜表面の近傍にガス気泡が生じ、同ガス気泡により、この領域内のイオン輸送が阻止されて、膜の有効な表面面積が縮小されることがあり、その結果、抵抗が増加し、極めて高い電流密度の局所的な「ホットスポット」が発生して、膜寿命を短くすることになる。結果として、一般に使用される入力溶液および出力溶液は、周囲圧力において膜スタック内部に大した量のガスを放出しないように選択される。電気透析処理による全クラスのガス放出溶液は、このことから除外される。
【0008】
一実施の形態では、これらの課題は、高圧で、すなわち周囲圧力を超える圧力で、電気透析装置を動作することによって克服される。動作圧力は十分に高く、他のプロセス条件であれば、典型的には周囲圧力において溶液から膜スタック内へ放出することになるガスが、代わりに溶液内に溶解した状態のままであり、結果的に膜スタックの内部におけるガス気泡の放出が防止される。溶解ガスを含有する溶液の圧力は、スタックの下流で低減することができ、その結果溶解ガスは溶液から放出されて、他の用途に収集することができる。低減される、溶液の圧力は、膜スタックの動作圧力未満の任意の圧力とすることができる。このように、ガスは、周囲圧力よりも大きい圧力で放出することができ、必要に応じて周囲圧力未満の圧力で放出することもできる。
【0009】
本明細書で説明されるプロセスを用いて、ガス、液体、超臨界流体、またはこれらの何らかの組み合わせのうちのいずれが発生するかは、1)電気透析が実行される温度および圧力、および2)入力溶液組成物に依存する。例えば、COを含有する入力溶液が用いられるとき、COガス、CO液体、または超臨界COのうちのいずれかが、使用される温度および圧力に依存して発生してもよい。動作圧力および動作温度がCO相図のガス部分に入ると、例えば大略10気圧の圧力および大略20°Cの温度で、COは、ガスとして出力溶液内に発生する。用いられる動作圧力および動作温度がCO相図の液体部分内に収まると、例えば大略100気圧および20°Cで、CO液体が発生する。動作圧力および動作温度がCOの臨界点を通過するのに十分に高いと、例えば大略75気圧および35°Cで、超臨界CO流体が発生する。これらの場合のうちのいずれかでは、COガス、液体、または超臨界流体は、ガス/液体分離、液体/液体分離または液体/超臨界流体分離などの、既知の方法によって、出力溶液から再生することができる。用いられる入力溶液に依存して、CO以外に、SOまたはNHなどの他のガス、液体、または超臨界流体生成物が発生することもできる。電気透析プロセスの温度は、例えば入力溶液を直接に加熱することによって、制御してもよい。
【0010】
スタック内の溶液(電極溶液、第1溶液、第2溶液、および任意の第3溶液)を加圧し、その後で溶液内へイオン輸送を実行して同溶液からガスが放出されることによって、標準プロセスの場合よりも効率的に、加圧が成し遂げられる。これにより、COの場合には、液体燃料に対する隔離および反応などの一定の用途に必要な圧力で、COを直接に発生させることが可能となる。これにより、引き続く反応ステップに必要な高められた圧力で、直接に再生することもできる他のガスに対しても、利益を享受することができる。例えば、SOガスは、亜硫酸塩水溶液または硫酸水素塩水溶液が本システム内へ入力され、本システムの工程を経由して、より酸性にされるときに、生成することができ、NHガスは、アンモニウム水溶液が本システム内へ入力され、本システムの工程を経由して、よりアルカリ性にされるときに、生成することができる。
【0011】
図1は、一実施の形態の高圧電気透析システムを示す。2室式電気透析を行う装置を含むシステムは、3つのループ、すなわち第1溶液ループ、第2溶液ループ、および電極溶液ループで構成される。3室式電気透析を行う装置を含むシステムは、追加の第3溶液ループを含む。
【0012】
一実施の形態では、第1溶液はアルカリ性溶液、および第2溶液は酸性溶液である。代わりの構成としては、第1溶液は酸性溶液、および第2溶液はアルカリ性溶液である。電極溶液は、例えば電解液でもよい。4つのループを包含する一実施の形態では、第3溶液は、例えば動作中の電気透析ユニットの中を通過しながら希薄化された塩類溶液でもよい。
【0013】
各ループは、1つ以上のタンク(例えば、第1溶液タンク100)、ポンプ(例えば、第1溶液ポンプ104)、振動吸収材(例えば、第1溶液振動吸収材107)、1つ以上の温度計およびpH計(例えば、計器116)、1つ以上の温度計および導電率計(例えば、計器117)、1つ以上の圧力計および流量計(例えば、計器123および123)、バイパスモードとスタックモードとの間で動作モードを変化させるバルブ(例えば、バルブ112および120)、ならびに電気透析装置110の圧力を調整するバルブ(例えば、バルブ121)を含む。
【0014】
一実施の形態では、本システムは、高圧電気透析装置110も含む。図2は、一実施の形態に従うシステムに用いる高圧電気透析装置の分解図を示す。高圧電気透析装置は、アノード端部201およびカソード端部202を含む。本装置は、軸支持メンバ203および補強メンバ204を有する筺体を含む。本装置が組み立てられるとき、軸支持メンバ203は、いっしょにつがいにされて、電気透析膜スタック205を収容するセルチャンバを形成する。補強メンバ204は、同メンバが結合されるとき、軸方向に圧縮力を加えるように構成され、それによって、軸支持メンバ203がつがいにされるようにするとともに、電気透析装置が、本装置の周囲の環境内で自然に生じる圧力として定義される周囲圧力を超える圧力で、動作することができるようにする。周囲圧力は、海水面の高度において、典型的には大略1気圧、または101.325kPaである。高圧電気透析装置は、20気圧を含めて最大20気圧までの圧力で、または20気圧を超える圧力で、動作することができる。一実施の形態では、アノード端部201における軸支持メンバ203は、少なくとも1つの加圧ポート216を含み、同ポートは、電気透析膜スタック205の内部と、軸支持メンバ203のつがいによって形成されるセルチャンバとの間の圧力が、電極溶液の一部を電気透析スタック205の外側にあるセルチャンバの領域へ転換することによって、等しくなることを可能にする。
【0015】
電気透析スタック205は、バイポーラ膜なしに電気透析を実行するように構成される1つ以上の電気透析セル206、またはBPMEDを実行するように構成される1つ以上のセルを含む。BPMEDを実行するように構成されるセルは、2室セルまたは3室セルのいずれかとすることができる。例えば、図2の電気透析セル206は、第1イオン交換膜208および第2イオン交換膜209に対して交互となるように配置された、2つのセルガスケット207を含む。例えば、第1イオン交換膜208がAEMであり、第2イオン交換膜209がCEMであれば、セル206は、バイポーラ膜なしに電気透析を実行することもできる。代わりの構成としては、例えば、第1イオン交換膜208がBPMであり、第2イオン交換膜209がAEMまたはCEMであれば、セルは、BPMEDを実行することもできる。
【0016】
電気透析スタック205は、スタックの一方または両方の端部において端部ガスケット211、スタックの一方または両方の端部において端部イオン交換膜210、および膜スタック205のカソード端部202においてn番目の電気透析セル206と端部イオン交換膜210との間に挿入される追加のセルガスケット212も含むことができる。端部イオン交換膜210および追加のセルガスケット212が必要となるかどうか、およびどんなタイプのイオン交換膜210が適切であるかは、使用される入力溶液および所望の出力溶液に依存する。
【0017】
図3は、1つの2室BPMEDセルを収容する高圧電気透析装置内で、COガスを発生させるのに用いられる電気透析膜スタック動作の概略図を示す。図示されるスタック構成およびプロセスを用い、本システム内への入力に依存して、他のガスが発生してもよい。
【0018】
1つの2室BPMEDセル302を含む電気透析スタック301では、電気透析セル302は、2つのセルガスケット303および305、ならびにセルガスケット303および305に対して軸方向に交互となるように配置された2つのイオン交換膜304および306で構成される。電気透析スタック301はまた、2つの端部イオン交換膜307および308を含み、電気透析セル302は、2つの端部イオン交換膜307および308の間に挿入される。電気透析スタックはまた、電気透析セル302の第2イオン交換膜306と第2端部イオン交換膜308との間に挿入される追加のセルガスケット309を含む。電気透析スタック301はまた、2つの端部ガスケット310および311を含み、第1端部ガスケット310は、本装置のアノード端部電極312と第1端部イオン交換膜307との間に挿入され、第2端部ガスケット311は、本装置のカソード端部電極313と第2端部イオン交換膜308との間に挿入される。
【0019】
電気透析スタックが2室BPMEDを実行するように構成される一実施の形態では、第1イオン交換膜304はBPMであり、第2イオン交換膜306はAEMであり、端部イオン交換膜307および308はCEMである。第1CEM307とBPM304との間に、アルカリ性溶液が発生し、BPM304とAEM306との間に、酸性溶液が発生する。溶存種の濃度、pH、および絶対圧力などのシステムパラメータに依存して、ガスは、BPM304とAEM306との間の酸性溶液から放出してもよいし、酸性溶液内に溶解した状態のままでもよい。例えば、所与の濃度の溶解COおよび所与のpHの酸性溶液に対して、COガスが酸性溶液内に溶解しているとき、圧力が十分に高ければ、全COガスは、溶液内に溶解した状態のままであることになる。例えば、入力水溶液は、いずれかの電極に流れるKOHの電極溶液であり;ガスケット303によって定義される溶液室内にある端部CEM307とBPM304との間、およびガスケット309によって定義される溶液室内にあるAEM306と端部CEM308との間、に流れるKHCOおよびKCOの塩基溶液であり;ガスケット305によって定義される溶液室内にあるBPM304とAEM306との間に流れるKHPOおよびHPOの酸溶液である。Kイオンは、ガスケット310によって定義される室内にある電極溶液から、端部CEM307を横切って移送され、OHおよびHイオンは、BPM304を横切る両端間で解離し、HCO−およびCO2−は、ガスケット309によって定義される室内にあるアルカリ性溶液から、AEM306を横切って移送される。Kイオンは、解離したOHイオンと化合して、第1CEM307とBPM304との間にKOHを発生させ、Hイオンは、HCOイオンおよびCO2−イオンと化合して、BPM304とAEM306との間のガスケット305によって定義される溶液室内に、HCOおよび溶解COを形成する。
【0020】
一実施の形態では、電気透析スタックは、代わりに1つ以上の3室セルを含む。図4は、1つの3室セルを収容する高圧BPMED装置内で、COガスを発生させる電気透析スタック動作の概略図を示す。図示されるスタック構成およびプロセスを用い、本システム内への入力に依存して、他のガスが発生してもよい。
【0021】
1つの3室式電気透析セル402を含む電気透析スタック401の一実施の形態では、電気透析セル402は、3つのセルガスケット403、405、407、およびセルガスケット403、405、407に対して軸方向に交互となるように配置された3つのイオン交換膜404、406、408で構成される。電気透析スタック401はまた、2つの端部ガスケット411および412を含み、第1端部ガスケット411は、本装置のアノード端部電極413と端部イオン交換膜409との間に挿入され、第2端部ガスケット412は、本装置のカソード端部電極414と電気透析セル402との間に挿入される。電気透析スタック401はまた、電気透析セル402と端部ガスケット411との間に挿入される1つの端部イオン交換膜409を含む。
【0022】
本実施の形態では、第1膜404はBPMであり、第2膜406はAEMであり、第3膜408はCEMであり、端部膜409はCEMである。アルカリ性溶液は、端部イオン交換膜409とBPM404との間に発生し、酸性溶液およびCOガスは、BPM404とAEM406との間に発生し、脱塩入力溶液は、AEM406とCEM408との間に発生する。例えば、入力溶液は、ガスケット411および412によって定義される室内にあるKOHの電極溶液、ガスケット403および407によって定義される室内にあるKHCOおよびKCOのアルカリ性溶液、ならびにガスケット405によって定義される室内にあるKHPOおよびHPOの酸性溶液を含むことができる。このような条件のもとで、Kイオンは、端部ガスケット411によって定義される室内にある電極溶液から端部CEM409を横切って、および端部ガスケット412によって定義される室内にある電極溶液内へCEM408を横切って移送され、OHおよびHイオンは、BPM404を横切る両端間で解離し、HCOおよびCO2−は、ガスケット407によって定義される室内にあるアルカリ性溶液から、AEM406を横切って移送される。Kイオンは、解離したOHイオンと化合して、端部イオン交換膜409とBPM404との間にKOHを発生させ、Hイオンは、HCOおよびCO2−イオンと化合して、BPM404とAEM406との間のガスケット405によって定義される溶液室内に、HCOおよび溶解COを形成し、入力溶液ほど濃縮されていない、希薄化されたKHCOおよびKCO溶液は、AEM406とCEM408との間に発生する。
【0023】
図2へ戻ると、高圧電気透析装置はまた、溶液が本装置へ流入するおよび本装置から流出することを可能にするポートを含む。ポートは、軸支持メンバ203内に形成される飾りポートであって、補強メンバ204内に形成される飾りポート穴を通してスライドする飾りポートでもよいし、フランジアダプタ213は、各飾りポートにぴったりかぶせて、補強メンバ204へ取り付けてもよい。本装置の流れは、アノード端部201にあるポートが放出口ポートであり、カソード端部202にあるポートが注入口ポートであるように、必要に応じて逆にすることができる。加えて、この流れは、アノード端部201において、一方の溶液用に入力ポートおよび他方の溶液用に出力ポートがあり、カソード端部202において、アノード端部に入力ポートがある溶液用に出力ポートおよびアノード端部に出力ポートがある溶液用に入力ポートがあるようにすることができる。本装置の各端部は、電極溶液注入口ポートおよび電極溶液放出口ポートを両方とも有する。
【0024】
高圧電気透析装置はまた、2つの電極であって、スタック205のいずれの端部にもそのうちの1つがある2つの電極214、および2つの電極格子であって、電極214のうちの1つと電気透析スタック205との間に各電極格子が挿入される2つの電極格子215を含む。一実施の形態では、本装置はまた、2つの応力低減シリンダ217を含み、そのうちの1つが各補強メンバ204へ取り付けられる。
【0025】
一実施の形態では、図2に示される電気透析装置は、図1に示される高圧電気透析システムへ、電気透析装置110として包含される。電気透析装置110が、BPMED電気透析スタックを含むとき、図1の電気透析システムは、例えば、炭酸塩水溶液および炭酸水素塩溶液からCOガスを再生するのに用いることができる。
【0026】
図1に戻ると、タンク100〜103は、周囲圧力と電気透析スタックの絶対圧力との間の任意の圧力に加圧することができる。タンクがこのように加圧されると、周囲圧力を超える圧力で、すなわちタンク100〜103の圧力と実質的に同じ圧力で、溶液からガスが放出される。
【0027】
一実施の形態では、第1溶液タンク100および第2溶液タンク101はそれぞれ、バイパスまたは電気透析装置110から入る注入口と、第1溶液ポンプ104または第2溶液ポンプ105へ向う放出口との両方を有する。タンク100および101は、pH計116ならびに導電率計117を溶液に差し込むためのフィードスルーを有する。第2溶液タンク101のカバーは、通気孔およびガス注入用の1/8インチ導管を備える。
【0028】
一実施の形態では、第1溶液タンク100および第2溶液タンク101は両方とも、タンクの状態に関する一定の情報を測定し、示し、および記録するための計器を有する。例えば、第1溶液タンク100は、第1溶液の温度およびpHを測定し、示し、および記録するコンピュータ(TXIR)計器116への、温度情報およびpH情報ならびに記録動作を含んでもよい。第1溶液タンク100は、第1溶液の温度および導電率を測定し、示し、および記録するTXIR計器117をさらに含んでもよい。第2溶液タンク101は、第2溶液に対して同一の機能を実行するTXIR計器116およびTXIR計器117をさらに有してもよい。
【0029】
一実施の形態では、第2溶液タンク101は、電気透析スタックを通して動作している間、ガスを再生するために、第2溶液へガスを注入する手段をさらに有してもよい。例えば、第2溶液タンク101は、例えば導管によって接続されるCOガスボトルを有する塩基溶液タンクでもよい。ガスの第1溶液タンク101への注入は、バルブ118を用いて、オンまたはオフすることができる。
【0030】
一実施の形態では、第1溶液ループはまた、第1溶液ループを排液するバルブ119、およびバイパスモードから電気透析スタックモードへ動作を変化させるバルブ120を含む。第2溶液ループもまた、第2溶液ループに対して同一の機能を実行するバルブ119および120を含む。第1溶液ループはまた、本システム内の圧力を変化させるバルブ121、およびサンプルを取り込むバルブ122を含む。第2溶液ループもまた、第2溶液ループに対して同一の機能を実行するバルブ121および122を含む。一実施の形態では、第1溶液ループの圧力および流量は、それぞれ、コンピュータ(PIR)計器123への圧力情報および記録動作、ならびにコンピュータ(FIR)計器124への圧力情報および記録動作によって、測定され、記録される。第2溶液ループもまた、第2溶液ループに対して同一の機能を実行するPIR計器123およびFIR計器124を含む。
【0031】
一実施の形態では、電極溶液ループは、2つのタンク102〜103を有する。各タンク102〜103は、バイパスまたは電気透析装置110から入る注入口、および電極溶液ポンプ106へ向う放出口を有する。電極溶液タンク102は、酸素を放出することになる電気透析装置110のアノード端部201から入る電極溶液のためのものである。電極溶液タンク103は、水素を放出することになる電気透析装置110のカソード端部202から入る流体のためのものである。
【0032】
一実施の形態では、電極溶液ループもまた、電極溶液ループを排液するバルブ111を有する。電極溶液ループもまた、バイパスモードから電気透析スタックモードへ動作を変化させる2つのバルブ112を含んでもよい。電極溶液ループもまた、本システム内の圧力を変化させるように変更することができる2つのバルブ113を含んでもよい。一実施の形態では、電極溶液ループの圧力および流量は、それぞれPIR計器114およびFIR計器115によって測定され、記録される。
【0033】
一実施の形態では、電気透析装置110の各ポートは、本システムがバイパスモードで動作中に、任意の溶液が電気透析装置110内へ流れることを回避する、チェックバルブ128を備える。各ループは、容積型ポンプ104の動作によって引き起こされる圧力振動を減衰させる振動吸収材107を有する。
【0034】
一実施の形態では、本システムは、家庭用真空器へ接続される、三方弁であるバルブ131を含む。本システムが使用される前に、バルブ131は、バルブ118を用いて交互に開閉することができ、バルブ118は、本システムが使用中に発生させるどんなガスでも含むシリンダへ接続される。これにより、本システムが使用中に発生させるどんなガスでも、それ以外にヘッドスペースが何も含有しないように、第1溶液タンク100のヘッドスペースから空気が除去される。ヘッドスペースをこのように浄化することによって、FIR計器130を流れるガスがすべて純粋になること、またはできる限り純粋に近いものとなることが確実にされ、FIR計器130によるガス流量の正確な測定が保障される。
【0035】
一実施の形態では、電気透析システムは、各溶液ループ用に各1つのモータ125、および各溶液ループ用に各1つのHz/RPMコントローラ126を含む。電気透析システムはまた、各溶液ループ用に各1つの圧力軽減バルブ127を含む。電気透析システムはまた、真空またはガスシリンダからの流れを接続するまたは阻止することを可能にする双方向バルブであるバルブ132を含み、この流れは、バルブ131およびバルブ118の設定に依存して阻止される。電気透析システムはまた、FIR計器130を流れるガス流量を制御するバルブ133を含む。本システムはまた、タンク100〜103からそれぞれバルブ111および119を経由して排液される任意の溶液を受ける排液管129を含む。
【0036】
高圧電気透析装置を包含する電気透析システムを用いることによって、ガスは、任意のガス放出溶液から、周囲圧力と電気透析スタックの絶対圧力との間の任意の圧力で生成することができる。次の図および説明では、COガスを発生させる一実施の形態に従うプロセスが、参照される。しかしながら、高圧電気透析システム、プロセス、および本明細書で説明される好ましい条件の実施の形態は、どんな溶液が用いられるかに依存して、CO以外の他のガスを発生させるのに用いることができる。
【0037】
電気透析スタック内で行われるイオン輸送は、高圧電気透析システムを用いてCOガスを放出するプロセスを説明することによって、もっともよく理解される。KCOなどの炭酸塩、およびKHCOなどの炭酸水素塩の水溶液に関する電気透析において、COが発生する場合、電気透析装置内の圧力を増加させると、電気透析膜スタック内で膜面積を縮小する気泡が抑圧され、それによって所与の速度に対するCO発生の電圧およびエネルギ消費が減少する。次の図は、この原理を説明する。
【0038】
高圧電気透析システムが、炭酸塩/炭酸水素塩水溶液からCOガスを放出するのに用いられるとき、次のようないくつかの性能特性が理解される:1)CO流量は、電流密度が増加するにつれて増加する、2)電圧は、所与の電流密度および塩基溶液に対して、圧力が増加するにつれて減少する、3)電圧減少の大きさは、電流密度が増加するにつれて増加する、4)COのモル当たりに必要なエネルギは、設定された電流密度およびCO輸送速度に対して、圧力が増加するにつれて減少する。これらの性能特性が生じるのは、高圧電気透析を実行する結果として、電気透析スタック内におけるガス気泡の放出を抑圧するからである。これらの特性は、次の表および図面を参照することによって、より良好に理解されることになる。
【0039】
表1〜5は、1.5気圧から10気圧までの絶対圧力において、図2に示される本実施の形態などの高圧電気透析装置の性能を特徴付けるように行われた実験に対して、CO流量(slpm)(表1)、効率(表2)、電圧(ボルト)(表3)、分数電圧低減量(表4)、およびエネルギ(kJ/molCO)(表5)の測定値を示す。これらの実験は、すべて次の条件のもとで実行された:使用されたBPM、AEM、およびCEMは、それぞれネオセプタ(Neosepta)BP−1E、ネオセプタAHA、ネオセプタC66−10Fであった;KHCOの塩基溶液は0.5Mであり、pHは大略8.6であった;KCOの塩基溶液は0.5Mであり、pHは大略11.6であった;KOHの塩基溶液は0.5Mであり、pHは大略13.6であった;すべての電極溶液は、2MのKOHであった;すべての酸溶液は、0.3MのKHPOおよび純水(DI water)5L当たり30mLのHPOであり、pHは大略2.6であった。本実施の形態における7つのセルの高圧電気透析ユニット(図2を参照)を通る体積流量は、酸および塩基溶液に対して2.33lpm、電極溶液に対して6.9lpmであった。
【0040】
次の塩基溶液/圧力組み合わせが調査された:1.5気圧、5気圧、および10気圧における0.5MのKHCO;1.5気圧および5気圧における0.5MのKCO;ならびに1.5気圧、5気圧、および10気圧における0.5MのKOH。
【0041】
表1は、増加中の電流密度において、1.5気圧、5気圧、および10気圧の絶対圧力から1気圧へ減圧後、酸タンクからCOガスが放出される速度の測定値を示す。CO流量は、所与の電流密度において、KHCOに対してはKCOよりも2倍高く、電流密度が増加するにつれて線形的に増加する。
【表1】

【0042】
表2は、増加中の電流密度において、1.5気圧、5気圧、および10気圧の絶対圧力に対する効率を示す。効率は、電流の電子電荷当たりに放出されるガスの分子比率として定義される。この定義のもとで起こりうる最大効率は、KHCOに対しては1.0であり、KCOに対しては0.5である。KOHが塩基溶液として用いられるとき、CO流量はゼロになるので、KOHの塩基溶液に対するどんなデータも収集されなかった。表3は、効率が圧力に依存しないことを示す。さらに、電流密度が増加するにつれて、効率は、KCOに対して大略0.45およびKHCOに対して0.85の漸近値に達する。
【表2】

【0043】
表3は、増加中の電流密度において、1.5気圧、5気圧、および10気圧の絶対圧力に対する測定電圧を示す。表3は、1)所与の電流密度および塩基溶液に対して、絶対圧力が増加するにつれて、電気透析スタックを横切る両端間の全電圧は減少すること、および2)この減少量は、KOHに対してよりも、KCOおよびKHCOの塩基溶液に対して大きくなること、を示す。表4は、1.5気圧で測定された電圧に関して、圧力pにおいて、式(V1.5気圧−V)/V1.5気圧によって決定される分数電圧低減量を示す。表4は、1)KCOおよびKHCOに対する分数低減量が、高電流密度においてそれぞれ大略20%および15%である一方で、KOHに対する低減量は、多くても5%であること、および2)分数電圧低減量は、電流密度が増加するにつれて増加すること、を示す。これらの観察は、両方とも、電気透析システムの絶対圧力を増加させる効果が、電気透析スタックの内部の溶液から放出するCOガスの量を減少させることになっているという事実によって説明することができる。
【表3】

【表4】

【0044】
一定の電流密度および効率に対して、一定量のCOが、膜を横切って、HCOおよびCO(2−)イオンの形態の酸溶液内へ、輸送されることになる。酸溶液のpHが、溶液内に溶解したCO(2−)、HCO、およびCOガスの濃度の比率を決定し、他方、酸溶液と平衡にあるCOガスの分圧が、溶液内に溶解したCOの濃度の絶対値を決定する。電気透析システムの内部の酸溶液と平衡にあるガスは、定常状態では純粋COであり、その結果、酸溶液と平衡にあるCOの分圧は、酸室の絶対圧力となる。一定の電流密度において、一定量のCOが酸溶液内へ輸送されるとすると、一定の電流密度に対して圧力が増加するにつれて、AEMを横切って酸溶液内へ輸送されるCOの割合が増加し、それによって、溶解CO、HCO、およびCO(2−)として、酸溶液pHによって決定されるこれらの種の濃度比率で、溶液内に溶解した状態のままのようになる。各CO輸送速度に対して、すなわち何らかの効率にある各電流密度に対して、輸送されるすべてのCOが、溶液内の状態のままであることになるための圧力が存在し、この点を超えて圧力を増加させても、さらなる効果は何も与えないはずである。
【0045】
電気透析スタックそれ自体の内部でガスが放出されると、膜表面上にガス気泡が捕捉されるようになることが知られている。これにより、膜の有効な表面面積が縮小されて、電流密度および抵抗が増加するとともに、局所的に限定された極めて高い電流密度の領域、すなわち「電流集中現象」が発生し、結果として膜にダメージを与えることがある。一実施の形態では、高圧電気透析システムは、所与の電流密度およびしたがって所与のCO輸送速度に対して、圧力を増加させると、電気透析スタックそれ自体の内部にある溶液から生じるガス気泡の量が削減され、それによって抵抗が小さくなり、スタックを横切る両端間の全電圧が低減される。代わりに、電気透析スタックから物理的に分離された酸タンク内で、酸溶液が大略1気圧まで、または周囲圧力と電気透析装置の圧力との間の何らかの圧力まで減圧されると、溶液からCOが生じる。分数低減量は、所与の電流密度において、KCOに対してよりもKHCOに対して大きくなるが、これは、所与の電流密度において、KHCOに対するCO輸送速度が、KCOに対するよりも高くなるからである。同様に、KHCOおよびKCOに対する低減量は、KOHに対するよりもさらに大きく、これは、KOHに対してどんなCO放出も発生しないからであり、絶対圧力が増加することによって、電極において化学的活性が増加するために、KOHに対して観察される小さな低減が起こりうる。
【0046】
最後に、圧力が増加すると、一定のCO発生速度に必要な電圧が低減されるという事実により、表5に示されるデータが得られるが、同表では、増加中の電流密度において、1.5気圧、5気圧、および10気圧のモルCO当たりのエネルギが示される。一定の電流密度およびCO輸送速度において、COのモル当たりに必要なエネルギは、圧力が増加するにつれて、電気透析スタックの内部におけるガス気泡の放出が抑圧されるために、低減される。
【表5】

【0047】
図5A〜5Dは、4A、8A、16A、22A、および25Aの電流において、図2に示される本実施の形態などの高圧電気透析装置の性能を特徴付ける実験に対して、CO流量(slpm)(図5A)、効率(図5B)、電圧(ボルト)(図5C)、およびエネルギ(kJ/molCO)(図5D)の測定値を示す。各実験の実行は、一定の電流密度において、圧力が増加するにつれて電圧がその漸近値に達するまで行われた。本実施の形態における実験設定によって可能となる最大電流は、25Aであったが、別の実施の形態の場合には、より大きな電流の可能性があってもよいことが理解されるだろう。本実験における各膜に対する膜面積は、大略180cmであったが、これは25Aが、139mA/cmの電流密度に対応することを意味する。次の条件が使用された:使用されるBPM、AEM、およびCEMは、それぞれネオセプタBP−1E、ネオセプタAHA、およびネオセプタC66−10Fであった;KHCOの塩基溶液は0.5Mであり、pHは大略8.6であった;すべての電極溶液は、2MのKOHであった;すべての酸溶液は、0.3MのKHPOおよび純水5L当たり30mLのHPOであり、pHは大略2.6であった。高圧電気透析ユニットを通る体積流量は、酸および塩基溶液に対して2.33lpm、電極溶液に対して6.9lpmであった。実験は、1.5気圧から10.2気圧までの圧力において0.5MのKHCOの塩基溶液を調査した。
【0048】
図5Aは、絶対圧力(気圧)に対して、1気圧に減圧後に酸タンクからCOガスが放出される速度の測定値のプロットを示す。図5Bは、同一のデータ点に対して、効率対絶対圧力のプロットを示す。効率は、電流の電子電荷当たりに放出されるガスの分子比率として定義される。図5Aは、電流密度が大略線形的に増加するにつれて、すべての圧力において、CO流量が多くなることを示す。図5Bは、高い電流密度において、CO流量が線形的増加よりも若干高く増加するのは、電流密度が増加するにつれて、効率がわずかに増加することに起因することを示す。
【0049】
図5Cは、5つの種々の総電流値:4A、8A、16A、22A、および25Aに対して、測定電圧対絶対圧力のプロットを示す。図5Cは、1)所与の電流密度および塩基溶液に対して、電気透析スタックを横切る両端間の全電圧は、絶対圧力が増加するにつれて、減少すること、2)この減少量は、電流密度が高くなるにつれて、ますます大きくなること、3)一定の電流密度に対して、電圧は、圧力が増加するにつれて、最低電圧に漸近的に接近すること、を示す。圧力が増加するにつれて、電圧が漸近的に振る舞うのは、各CO輸送速度に対して、すなわち何らかの効率にある各電流密度に対して、輸送されるすべてのCOが、溶液内の状態のままであることになるための圧力があるからであり、この点を超えて圧力を増加させても、さらなる効果は何も与えないはずである。
【0050】
図5Cもまた、所与の電流密度、およびしたがって所与のCO輸送速度に対して、圧力を増加させると、膜スタックそれ自体の内部にある溶液から生じるガス気泡の量を削減することによって、抵抗が小さくなり、スタックを横切る両端間の全電圧が低減されることを示す。代わりに、膜スタックから物理的に分離された酸タンク内で、酸溶液が1気圧まで減圧されると、溶液からCOが生じる。この低減量は、電流密度の増加に対して増加するが、これはCO輸送速度が電流密度とともに増加するからである。この低減量は、圧力が増加するにつれて、漸近的限界に達するが、これは、ある圧力を超える圧力では、すべてのCOは溶液内に溶解した状態のままであるからである。
【0051】
図5Dは、5つの値の電流密度に対して、モルCO当たりのエネルギ対圧力のプロットを示す。一実施の形態では、装置内にある膜の膜面積は大略180cmであり、その結果、25Aの電流は、大略140mA/cmの電流密度に対応する。図5Dは、圧力が増加すると、一定のCO発生速度に必要な電圧が低減されることを示す。一定の電流密度およびCO輸送速度において、圧力が増加するにつれて、電気透析スタックの内部におけるガス気泡の放出が抑圧され、それによってCOのモル当たり必要なエネルギは、低減される。25Aに対して、10.2気圧において必要なエネルギ、すなわち333kJ/molCOは、1.5気圧において必要なエネルギ、すなわち471kJ/molCOよりも大略30%少ない。それゆえに、電流密度およびしたがってCO発生速度が増加するにつれて、圧力を増加させると、1気圧における動作と比較して、エネルギ消費の分数低減量はますます大きくなる。
【0052】
高圧電気透析システムは、小型の信頼性のあるユニット内で、ガス、例えばCOのエネルギ効率の優れた高速濃縮を可能にする。COの場合には、これは、例えば図2に示される本実施の形態などの高圧BPMEDシステムを用いて、炭酸塩/炭酸水素塩捕捉水溶液上で、高圧BPMEDを実行することによって行うことができる。これにより、周囲圧力と同等以上かつ電気透析装置の圧力未満の圧力において、捕捉溶液から純粋COの放出が可能となるが、このようなCOは、例えば、液体燃料、隔離、またはセメントのような他の部材への組み込みに対する反応に適している。さらに、一実施の形態では、高圧電気透析システムは、エネルギ効率の優れたCO分離用に能動型pH制御(pH塩基−pH≦7)、およびガス放出システム内で高圧動作によって可能となる高電流密度(≧100mA/cm)を含む。このように高圧動作をpH制御および高電流密度と組み合わせることによって、小型の信頼性のあるユニット内で、エネルギ効率の優れた高速CO分離が可能となる。
【0053】
一実施の形態では、高圧電気透析システムは、所与の流量に対して発生したCOのモル当たりに消費されるエネルギを、最小化することを可能にする。例えば、COについて一定の体積流量が望ましい場合、再生されるCOのモル当たりに消費されるエネルギは、1)すべてのCOが、炭酸水素塩(HCO)イオン、例えばKHCOの形態で含有されるような塩基溶液を用いること、2)HCOイオンの濃度が0.5Mの塩基溶液を用いること、3)少なくとも10気圧の絶対圧力という電気透析スタック圧力で動作すること、および4)膜スタックを横切る両端間に適用される電流密度を、所望のCO体積流量に一致するように設定すること、によって最小化することができる。
【0054】
一実施の形態では、高圧電気透析システムはまた、一定の電流密度が与えられたとすると、電圧を最小化することを可能にする。例えば、一定の電流密度ならびに溶液濃度および流量などの他の一定のパラメータに対して、電圧は、十分に大きい電気透析スタック圧力で動作することによって最小化することができる。所与のパラメータセットに対して、電気透析スタックの絶対圧力が、1気圧を超えて増加するにつれて、どんな追加の圧力増加も、もはや電圧に影響を及ぼさないような、あるしきい値電圧に至るまで、電圧は減少する。このしきい値電圧の値は、残りのプロセス条件の値に依存することになり、COガス再生の体積流量に直接に関連している。
【0055】
一実施の形態では、電気透析のイオンが移送された後、動作圧力および動作温度により、ガス状COが溶液内に溶解した状態となる場合、CO再生は、溶剤からのCOのガス/液体分離によって実行される。電気透析のイオンが移送された後、動作圧力および動作温度により、溶液/液体CO混合物または溶液/超臨界CO混合物の状態となる場合には、CO再生は、高圧電気透析、続いて溶剤からのCOの液体/液体分離または液体/超臨界流体分離によって、実行される。
【0056】
一実施の形態では、CO以外のガスを放出する溶液が用いられてもよい。例えば、SOガスは、亜硫酸塩水溶液または硫酸水素塩水溶液が本システム内へ入力され、本システムの工程を経由してより酸性にされると、生成することができ、NHガスは、アンモニウム水溶液が本システム内へ入力され、本システムの工程を経由してよりアルカリ性にされると、生成することができる。
【0057】
一部の実施の形態では、ガスは、ある圧力plowにおいて水溶液内へ吸収される。次いで、溶液上で高圧電気透析が実行され、その後で同一のガスが、phigh>plowとなる圧力phighで再生される。このように、本実施の形態は、非効率的な機械式のコンプレッサを置き換えることができる、新規なガス加圧プロセスとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気透析装置を用いて、ガスを生成するプロセスであって、
前記電気透析装置へ、少なくとも第1溶液および第2溶液を流入させるステップと、
前記電気透析装置へ電極溶液を流入させるステップと、
前記電気透析装置をスタック圧力で加圧するステップと、
前記第2溶液内に溶解ガスが発生するように、前記電気透析装置の電気透析スタックへ電圧を加えるステップと、
前記電気透析装置から前記第2溶液を流出させるステップと、
前記第2溶液から前記ガスを再生するステップと、
前記ガスを収集するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記スタック圧力は、周囲圧力よりも大きい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
電気透析装置を用いて、入力溶液から生成物を発生させるプロセスであって、
前記電気透析装置へ、少なくとも第1溶液および第2溶液を流入させるステップと、
前記電気透析装置へ電極溶液を流入させるステップと、
前記電気透析装置の温度および圧力を調整するステップであって、該温度および圧力は、前記第2溶液から前記生成物が発生するように選択される、調整するステップと、
前記第2溶液内に前記生成物が発生するように、前記電気透析装置の電気透析スタックへ電圧を加えるステップと、
前記電気透析装置から前記第2溶液を流出させるステップと、
前記第2溶液から前記生成物を再生するステップとを含む、プロセス。
【請求項4】
前記温度および前記圧力は、前記生成物が、ガス、液体、および超臨界流体のうちの1つ以上を含むように選択される、請求項3に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2012−125761(P2012−125761A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268376(P2011−268376)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】