説明

炭酸飲料用プラスチックボトル

【課題】室温より高温の環境下でも優れたガスバリア性を保持できる炭酸飲料用プラスチックボトルを提供する。
【解決手段】プラズマCVDにより形成されたガスバリア被膜を内面側に備え、室温より高温の環境下における体積増加率が8.0%以下である。前記室温より高温の環境下における体積増加率は、ガスボリューム4.2の炭酸水を充填して40℃の温度で2週間保存後の値、またはガスボリューム2.8の炭酸水を充填して容器中心部を65℃の温度に10分間以上保持する加熱処理を施した後の値である。前記ガスバリア被膜は、炭素原子を含む出発原料からプラズマCVDにより形成された炭素を主要構成元素とするアモルファスカーボン被膜、または有機珪素化合物を含む出発原料からプラズマCVDにより形成されたSi/O比が原子比で1/1.5〜1/2.2の範囲にあるケイ素酸化物含有被膜である。前記プラスチックボトルは、ポリエステルボトルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料用プラスチックボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックからなるプリフォームを二軸延伸ブロー成形してなるプラスチックボトルが知られている。前記プラスチックボトルは、機械的強度、透明性等に優れ、また、ガラス容器に比して割れにくく軽量であるので、種々の用途に用いられており、飲料充填用ボトルとしても広く用いられている。
【0003】
ところが、前記プラスチックボトルは、金属容器やガラス容器に比べてガスバリア性が低く、酸素、炭酸ガス等の気体を透過しやすいとの問題がある。例えば、近年消費が増大している小容量のプラスチックボトルでは、内容液量に対する表面積の割合が大きいため、内容物品質に対するガス透過の影響が大きく、特に500ml以下の容量の炭酸飲料用小型プラスチックボトルでは賞味期限が極端に短くなることがある。そこで、前記プラスチックボトルのガスバリア性を改良するために、内面側にアモルファスカーボン被膜またはケイ素酸化物含有被膜等のガスバリア被膜を形成したプラスチックボトルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記ガスバリア被膜は、例えば、中空の処理室に前記プラスチックボトルを配置し、該プラスチックボトル口部から内部に原料ガス導入管を挿入して、該処理室及びプラスチックボトル内部を真空に排気した後、原料ガスを供給すると共に高周波またはマイクロ波電圧を印加することによってプラズマを発生させる方法(プラズマCVD法)により形成することができる。
【0005】
前記プラスチックボトルは、内面側に前記ガスバリア被膜を形成することにより、ボトル壁面からの炭酸ガスの透過を極めて少なくすることができるため、炭酸飲料を充填する用途に好適である。このような炭酸飲料用プラスチックボトルには、サイダー、コーラ等の炭酸飲料を約5℃程度の低温で充填する用途に用いられる耐圧ボトルと、果汁入り炭酸飲料等を約5℃程度の低温で充填した後、さらに容器中心部を65℃の温度に10分間以上保持して加熱殺菌処理する用途に用いられる耐熱圧ボトルとがある。前記加熱殺菌処理は、通常、66℃程度の熱水シャワーを、前記耐熱圧ボトルに30〜40分間かけることにより行われる。
【0006】
しかしながら、前記ガスバリア被膜を形成した耐圧ボトルでは、前記炭酸飲料を充填した場合、夏期等に店頭に陳列したり、倉庫に保存している間等の室温より高温の環境下でガスバリア性が低下して該炭酸飲料中の炭酸ガスが抜けやすくなり、商品価値が低下するという不都合がある。また、前記ガスバリア被膜を形成した耐熱圧ボトルにおいても、果汁入り炭酸飲料を充填した後の加熱殺菌処理等の室温より高温の環境下でガスバリア性が低下して該炭酸飲料中の炭酸ガスが抜けやすくなり、商品価値が低下するという不都合がある。
【特許文献1】特開2004−142743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、夏期等の店頭陳列や倉庫保存、または果汁入り炭酸飲料を充填した後の加熱殺菌処理等の室温より高温の環境下でも優れたガスバリア性を保持することができる炭酸飲料用プラスチックボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記ガスバリア被膜を形成したプラスチックボトルに炭酸飲料を充填したときに、夏期等の店頭陳列や倉庫保存、または果汁入り炭酸飲料を充填した後の加熱殺菌処理等の室温より高温の環境下でガスバリア性が低下する理由について検討した結果、前記室温より高温の環境下ではボトル内圧が上昇し、これに伴ってボトルの体積がある一定量を超えて膨張したときに、該ガスバリア性が低下することを見出した。前記プラスチックボトルの体積が膨張すると、前記ガスバリア性被膜を形成しているアモルファスカーボン被膜またはケイ素酸化物含有被膜に目視では判別できない程度の微細な欠陥が発生し、該欠陥が発生した部分で酸素、炭酸ガス等のガスが透過しやすくなるものと思われる。
【0009】
そこで、前記目的を達成するために、本発明は、プラズマCVDにより形成されたガスバリア性被膜を内面側に備える炭酸飲料用プラスチックボトルにおいて、室温より高温の環境下における体積増加率が8.0%以下であることを特徴とする。本発明において、前記室温より高温の環境下における体積増加率は、ガスボリューム4.2の炭酸水を充填して40℃の温度で2週間保存後の値、または、ガスボリューム2.8の炭酸水を充填して容器中心部を65℃の温度に10分間以上保持する加熱処理を施した後の値である。
【0010】
尚、「ガスボリューム4.2の炭酸水を充填して40℃の温度で2週間保存後」との条件は、最高レベルの炭酸ガスを含む炭酸飲料を充填したプラスチックボトルを、夏期に相当の期間の店頭陳列、倉庫保存を行う場合を想定し、これよりもさらに過酷な条件を設定したものである。また、果汁入り炭酸飲料等は、充填後、容器中心部を65℃の温度に10分間以上保持する加熱処理による殺菌を必要とするが、該果汁入り炭酸飲料等のガスボリュームは、通常、最大で2.8程度である。
【0011】
本発明の炭酸飲料用プラスチックボトルによれば、前記室温より高温の環境下における体積増加率が8.0%以下であることにより、前記室温より高温の環境下でも優れたガスバリア性を保持することができ、内容物中の炭酸ガス含有量を維持すると共に酸素の侵入を防止して、商品価値の低下を防止することができる。一方、前記室温より高温の環境下における体積増加率が8.0%を超えると、ガスバリア性が低下し、内容物中の炭酸ガス含有量の低下や、酸素の侵入を阻止することができなくなる。
【0012】
前記ガスバリア被膜は、炭素原子を含む出発原料からプラズマCVDにより形成された炭素を主要構成元素とするアモルファスカーボン被膜、または、有機ケイ素化合物を含む出発原料からプラズマCVDにより形成されたSi/O比が原子比で1/1.5〜1/2.2の範囲にあるケイ素酸化物含有被膜である。
【0013】
前記プラスチックボトルとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルからなるポリエステルボトルを挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の炭酸飲料用プラスチックボトルの製造に用いるCVD装置の一構成例を示す説明的断面図である。
【0015】
本実施形態の炭酸飲料用プラスチックボトルは、例えば、ポリエステル樹脂からなるプリフォームのブロー成形により得られた耐圧ボトルまたは耐熱圧ボトルであり、ビール、発泡酒等の炭酸を含有するアルコール飲料、ソーダ水、サイダー、コーラ、果汁入り炭酸飲料等の炭酸を含有する清涼飲料の容器として用いられる。前記炭酸飲料用プラスチックボトルは、飲料中の炭酸ガスがボトル外部に揮散したり、空気中の酸素がボトル内部に侵入することを防止するために、その内面側にガスバリア被膜が形成されている。
【0016】
そして、前記耐圧ボトルでは、夏期における長期間の店頭陳列や倉庫保存を想定したガスボリューム4.2の水を充填して40℃の温度で2週間保存後の体積増加率が8.0%以下となっている。また、前記耐熱圧ボトルでは、ガスボリューム2.8の炭酸水を充填して容器中心部を65℃の温度に10分間以上保持する加熱処理を施した後の体積増加率が8.0%以下となっている。
【0017】
この結果、前記炭酸飲料用プラスチックボトルは、前記夏期における長期間の店頭陳列や倉庫保存、または果汁入り炭酸飲料を充填した後の加熱殺菌処理等の室温より高温の環境下で、飲料中の炭酸によりボトル内圧が上昇し、ボトルの体積が膨張しても、前記ガスバリア被膜によるガスバリア性を保持することができる。
【0018】
前記炭酸飲料用プラスチックボトルを形成するポリエステル樹脂は、多価アルコールと多価カルボン酸化合物との縮合重合反応、エステル交換反応等により得られる樹脂である。このようなポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。本実施形態では、以下、前記プラスチックボトルが、ポリエチレンテレフタレート樹脂製ボトル(以下、PETボトルと略記する)である場合を例として説明する。
【0019】
前記炭酸飲料用PETボトルは、まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるプリフォームをブロー成形することにより、ベースボトルとしての耐圧ボトルまたは耐熱圧ボトルを製造し、該ベースボトルの内面側に前記ガスバリア被膜を形成することにより製造することができる。
【0020】
このとき、前記室温より高温の環境下における体積増加率を抑制するためのベースボトルの製造方法として、例えば、前記プリフォームの樹脂量を多くしてベースボトルの胴部の側壁を肉厚にする方法がある。
【0021】
また、プリフォームをブロー成形してベースボトルを製造する際、肩部、胴部に高度の二軸分子配向を与えることにより分子鎖が緊張し、同時に結晶化が進行して耐圧強度が著しく向上するので、ブロー成形時の延伸倍率は、過延伸によるパール色が発生しない範囲で高目に設定することが望ましい。
【0022】
この際、プリフォームの加熱温度が高すぎると分子鎖の緊張が緩和して内圧による膨張が大きくなり、また、肉厚分布が不均一となる傾向があるため、プリフォームの加熱温度は、冷延伸によるパール色が発生しない程度で低く設定することが望ましい。
【0023】
一方、ブロー成形時の金型温度が低すぎると、急冷による残留歪みのためにボトルの経時収縮が大きくなり、結果として炭酸水充填後の体積膨張率が大きくなることがある。
【0024】
そこで、これらを勘案して、前記プリフォームの設計(質量、延伸倍率)、プリフォームの加熱温度、ブロー金型温度等を含む成形条件を適切に組み合わせることにより、前記室温より高温の環境下における体積増加率を抑制するためのベースボトルを製造することができる。
【0025】
また、プリフォームを一旦目的のベースボトルよりも大きな容積のボトルにブロー成形した後、加熱して収縮させ、再度ブロー成形して目的のベースボトルとする二段ブロー成形法は、首下部や底部が不必要に厚肉となり、肩部から胴部にかけて薄肉となることを回避できると同時に側壁の結晶化度を向上させ、剛性を高めることができるため、前記室温より高温の環境下における体積増加率を抑制するためのベースボトルを製造する用途に好適に用いることができる。
【0026】
前記ベースボトルの内面側に前記ガスバリア被膜を備える前記炭酸飲料用PETボトルは、例えば、図1示のプラズマCVD装置1により製造することができる。
【0027】
図1において、プラズマCVD装置1は、マイクロ波導入部がパイレックス(登録商標)ガラスで形成された側壁2と、昇降自在の底板3とにより画成された処理室4を備え、側壁2に臨む位置にマイクロ波発生装置5を備える。処理室4の上方には、側壁6と上壁7とにより画成された排気室8が備えられ、処理室4との間には隔壁9が設けられている。
【0028】
底板3は、ベースボトル10を配置して上昇移動することにより、ベースボトル10を処理室4内に収納する。このようにして収納されたベースボトル10は、口部保持具11を介してボトル内部が隔壁9に設けられた排気孔12と連通するように配置される。口部保持具11は上部突出部13が排気孔12に密に挿入され、口部保持部14がベースボトル10の口部に所定の間隔を存して挿入される。
【0029】
処理室4と排気室8とは隔壁9に設けられた通気口15のバルブ16を介して連通しており、排気室8の側壁6に形成された開口17は図示しない真空装置に接続されている。排気室8の上壁7にはシール18を介して、ガス状の出発原料(以下、原料ガスと略記する)を供給するガス導入管19が支持されており、ガス導入管19は上壁7と口部保持具11とを貫通して、ベースボトル10内に挿入される。尚、ガス導入管19と口部保持具11の内周面との間には間隙がある。
【0030】
図1示のプラズマCVD装置1では、まず、ベースボトル10を載置した底板3を上昇移動せしめ、処理室4内にベースボトル10を収納する。次に、図示しない真空装置を作動して、排気室8内を排気し、これにより通気口15を介して処理室4の内部を減圧する。同時に、排気孔12に挿入されたガス導入管19と口部保持具11の内周面との間隙を介して、ベースボトル10の内部を所定の真空度に減圧する。
【0031】
次に、ガス導入管19からベースボトル10内に、前記原料ガスを供給する。プラズマCVD装置1では、前記原料ガスを連続的に供給すると共に、前記真空装置により連続的に排気し、処理室4とベースボトル10との内部を所定の真空度に保持する。また、前記原料ガスの供給量は、対象となるベースボトル10の表面積、形成される被膜の厚さに応じて適正な量に設定される。
【0032】
そして、前記原料ガスが供給されている間、マイクロ波発生装置5を作動して、所定周波数、所定出力のマイクロ波を、所定時間照射することにより、前記原料ガスを電磁励起してベースボトル10内にプラズマを発生せしめ、ベースボトル10の内面にガスバリア性被膜(図示せず)を形成する。
【0033】
次に、前記原料ガスの供給が終了したならば、マイクロ波発生装置5を停止して、処理室4とベースボトル10との内部を大気圧に戻し、底板3を降下させてベースボトル10を取り出すことにより、処理を終了する。マイクロ波発生装置5は、前記原料ガスの供給が終了と同時に停止してもよいが、短時間延長して照射するようにしてもよい。このようにすることにより、容器中に残存している原料ガス成分を完全に被膜化することができ、得られたボトル10のガスバリヤ性、内容物を充填した際のフレーバー保持性をさらに向上させることができる。
【0034】
次に、前記ガスバリア性被膜として、炭素を主要構成元素とするアモルファスカーボン被膜を形成する場合について説明する。
【0035】
まず、用いる原料ガスとしては、アセチレン、エチレン、プロピレン等の脂肪族不飽和炭化水素化合物、メタン、エタン、プロパン等の脂肪族飽和炭化水素化合物、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物等の炭素含有化合物を用いることができる。前記原料ガスは、単独で用いても、必要に応じて2種以上混合して用いてもよく、被膜改質剤として少量の水素、有機ケイ素化合物、その他の被膜形成性有機化合物を併用してもよい。また、前記原料ガスは、アルゴン、ヘリウム等の希ガスで希釈して用いるようにしてもよい。
【0036】
ただし、ガスバリヤ性に優れた被膜であるアモルファスカーボン薄膜をより短時間で形成するためには、前記原料ガスが実質的にアセチレンであることが適しており、前記原料ガスの60容量%以上、好ましくは80容量%以上をアセチレンとする。尚、前記原料ガスが実質的にアセチレンからなる場合、該アセチレンは製造過程等で混入する不可避的な不純物を含んでいてもよい。
【0037】
前記原料ガスの供給量は、内容積200〜2000mlのサイズのベースボトル10に、0.007〜0.08μmの膜厚の前記アモルファスカーボン被膜を形成するには、容器内表面積当たり0.1〜0.8sccm/cmの範囲とすることが適している。
【0038】
前記原料ガスが供給されている間のマイクロ波発生装置5の作動条件は、例えば周波数2.45GHz、出力150〜600Wのマイクロ波を、0.2〜2.0秒間、好ましくは0.4〜1.5秒間照射するものとする。この結果、前記原料ガスを電磁励起してベースボトル10内にプラズマを発生せしめ、ベースボトル10の内面にアモルファスカーボン被膜(図示せず)が形成される。
【0039】
このとき、前記原料ガスを連続的に供給しつつ、前記真空装置により連続的に排気し、ベースボトル10内部の真空度を1〜50Paに保持することが望ましい。前記真空度が1Pa未満では前記アモルファスカーボン被膜の形成に長時間を要し、50Paを超えるとベースボトル10内面に対する該アモルファスカーボン被膜の密着性、加工性、ガスバリア性が低下する。
【0040】
尚、前記マイクロ波の出力が150W未満では形成された被膜の着色が大になることがあり、600Wを超えると酸素透過性が大になることがある。また、前記マイクロ波の照射時間が0.2秒未満のときには前記アモルファスカーボン被膜において所望の膜厚が得られないことがあり、2.0秒を超えると前記アモルファスカーボン被膜の膜厚が大になり、着色が濃くなることがある。
【0041】
次に、前記ガスバリア性被膜として、ケイ素酸化物含有被膜を形成する場合について説明する。
【0042】
まず、用いる原料ガスとしては、シラン、アルキルシラン、ジアルキルシラン、トリアルキルシラン等のシラン類、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン等のアルコキシシラン類、テトラアルキルジシロキサン、ヘキサアルキルジシロキサン等のシロキサン類、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類等の他、それ自体公知の有機ケイ素化合物のガスを用いることができる。前記原料ガスは単独で用いても、必要に応じて2種以上混合して用いてもよく、さらに酸素ガスを適切な割合で混合して用いることが好ましい。前記原料ガスとして炭素含有量の高い有機ケイ素化合物を用いるときには、炭素を二酸化炭素として除去するために、酸素ガスの混合割合を高くすることが好ましい。また、前記原料ガスは、アルゴン、ヘリウム等の希ガスで稀釈して用いるようにしてもよい。
【0043】
前記原料ガスとして、前記有機ケイ素化合物のガスと共に、酸素ガス、希ガス等の他のガスを用いる場合には、予め前記有機ケイ素化合物のガスと他のガスとを混合してガス導入管19から導入してもよく、ガス導入管19を2本設け、その1つから前記有機ケイ素化合物のガスを導入し、他の1つから他のガスを導入するようにしてもよい。また、ガス導入管19を内外2重に設け、内側または外側の一方の側から前記有機ケイ素化合物のガスを導入し、他方の側から他のガスを導入するようにしてもよい。ただし、ガス導入管19を2本設け、またはガス導入管19を内外2重に設ける場合には、前記有機ケイ素化合物と、他のガスとが、十分に混合されるように注意する必要がある。
【0044】
この場合、ベースボトル10内部の真空度は、10−1〜10Paとすることが好ましい。前記真空度が10−1Pa未満では前記ケイ素酸化物含有被膜の形成に長時間を要し、10Paを超えるとベースボトル10内面に対する該ケイ素酸化物含有被膜の密着性、加工性、ガスバリア性が低下する。
【0045】
前記原料ガスが供給されている間のマイクロ波発生装置5の作動条件は、ベースボトル10の内容積や、原料ガスの種類、組成等により異なるが、例えば周波数2.45GHz、出力100〜3000Wのマイクロ波を、1〜30秒間、好ましくは3〜10秒間照射するものとする。この結果、前記原料ガスを電磁励起してベースボトル10内にプラズマを発生せしめ、ベースボトル10の内面に、Si/O比が原子比で1/1.5〜1/2.2の範囲にあり、厚さ3〜100nmのケイ素酸化物被膜(図示せず)が形成される。
【0046】
次に、本発明の実施例と比較例とを示す。
【実施例1】
【0047】
本実施例では、まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる質量32gのプリフォームを用い、プリフォーム加熱温度、ブロー金型温度、延伸倍率、肉厚分布等を適切に設定してブロー成形を行い、ベースボトルとして内容量500mlの耐圧ボトルを製造した。
【0048】
次に、図1示のCVD装置1により、前記ベースボトルの内面側に約35nmの膜厚のアモルファスカーボン被膜を形成した。前記アモルファスカーボン被膜の形成は、ベースボトル10内部を5Paに維持しつつ、原料ガスとしてアセチレンを供給し、周波数2.45GHz、出力260Wのマイクロ波を短時間照射することにより行った。
【0049】
この結果、ガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填した後、40℃で2週間保存した後の体積増加率が5.5%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。前記体積増加率は、次のようにして測定した。
【0050】
まず、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルを沈めることができる量の水を収容した容器を天秤上に配置した。次に、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルに水を満量充填した後キャップを取り付け、前記天秤上に配置された容器に収容された水中に、該ボトルが該容器の内面に接触しないようにして完全に沈め、その前後の重量差から、内容液を含む該炭酸飲料用PETボトルの体積(V)を求めた。
【0051】
次に、前記炭酸飲料用PETボトルから水を排出した後、ガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、40℃で2週間保存した後、40℃の温度を保ったまま、前記天秤上に配置された容器に収容された水中に、該ボトルが該容器の内面に接触しないようにして完全に沈め、その前後の重量差から、内容液を含む該炭酸飲料用PETボトルの体積(V)を求めた。そして、次式により体積増加率を求めた。
【0052】
体積増加率(%)=((V−V)/V)×100
また、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルにガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、40℃で2週間保存した後と、40℃で4週間保存した後とに、それぞれのボトル内炭酸水のガスボリュームを測定し、充填直後のガスボリュームとの差から、炭酸ガスの減少量を求めた。前記ガスボリュームの測定は、前記炭酸水が充填されたボトルを約6℃まで冷却した後、京都電子工業株式会社製ガスボリューム測定機(商品名:VAG−500)を用いて行った。
【0053】
また、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルの前記炭酸水充填前の酸素透過率と、前記炭酸水充填後、40℃4週間保存した後の酸素透過率とを測定した。前記酸素透過率の測定は、MOCON社製OXTRAN2/20(商品名)を用いて、22℃、相対湿度60%の条件下で行った。
【0054】
結果を表1に示す。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、実施例1で製造したベースボトルを用い、図1示のCVD装置1により、前記ベースボトルの内面側に約30nmの膜厚のケイ素酸化物含有被膜を形成した。前記ケイ素酸化物含有被膜の形成は、処理室4とベースボトル10との内部を所定の真空度に減圧した後、原料ガスとして有機ケイ素化合物ガスと酸素とを供給しつつ、周波数2.45GHz、出力1500Wのマイクロ波を短時間照射することにより行った。
【0056】
この結果、ガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填した後、40℃で2週間保存した後の体積増加率が5.4%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。尚、前記体積増加率は、実施例1と全く同一にして測定した。
【0057】
次に、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記炭酸水中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、実施例1で製造したベースボトルに、ガスバリア被膜を全く形成せずに、ガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填した後、40℃で2週間保存した後の体積増加率が5.7%の炭酸飲料用PETボトルを得た。尚、前記体積増加率は、実施例1と全く同一にして測定した。
【0058】
次に、本比較例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記炭酸水中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
本比較例では、実施例1で製造したベースボトルと同一質量(32g)であるが、実施例1で使用したプリフォームに比較して胴部の延伸倍率が低い耐圧PETボトルをベースボトルとした以外は、実施例1と全く同一にして、該ベースボトルの内面側に約35nmの膜厚のアモルファスカーボン被膜を形成した。この結果、ガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填した後、40℃で2週間保存した後の体積増加率が9.4%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。尚、前記体積増加率は、実施例1と全く同一にして測定した。
【0059】
次に、本比較例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記炭酸水中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
本比較例では、まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる質量24gのプリフォームを金型内でブロー成形して、ベースボトルとして内容量500mlの耐圧ボトルを製造した。
【0060】
次に、本比較例で得られたベースボトルを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該ベースボトルの内面側に約35nmの膜厚のアモルファスカーボン被膜を形成した。この結果、ガスボリューム4.2の炭酸水を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填した後、40℃で2週間保存した後の体積増加率が10.7%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。本比較例の炭酸飲料用PETボトルは、前記プリフォームの質量が実施例1に比較して少なく、この結果として側壁が薄肉となっているために前記体積増加率が7%を超える値となっているものと思われる。尚、前記体積増加率は、実施例1と全く同一にして測定した。
【0061】
次に、本比較例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記炭酸水中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】


表1から、内面側にガスバリア被膜を備え、ガスボリューム4.2の炭酸水を充填し、40℃で2週間保存後の体積増加率が8.0%以下である実施例1,2の炭酸飲料用PETボトルによれば、前記充填から4週間後でも酸素透過量によって示される酸素バリア性が0.015ml/ボトル/日以下と良好であり、前記炭酸水中の炭酸ガス減少量も少なく、夏期等の店頭陳列や倉庫保存等の室温より高温の環境下でも、優れたガスバリア性を保持していることが明らかである。
【0063】
これに対して、ガスボリューム4.2の炭酸水を充填し、40℃で2週間保存後の体積増加率が8.0%以下であるがガスバリア被膜を備えていない炭酸飲料用PETボトル(比較例1)、ガスバリア性被膜は備えているがガスボリューム4.2の炭酸水を充填し、40℃で2週間保存後の体積増加率が8.0%を超える炭酸飲料用PETボトル(比較例2,3)では、いずれも前記充填から4週間後の酸素透過量、炭酸ガス減少量とも実施例1,2に比較して多いことが明らかである。
【実施例3】
【0064】
本実施例では、まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる質量28gのプリフォームを用い、肉厚分布、ヒートセット条件等を適切に設定してブロー成形し、ベースボトルとして内容量350mlの耐熱圧ボトルを製造した。
【0065】
次に、図1示のCVD装置1により、前記ベースボトルの内面側に約50nmの膜厚のアモルファスカーボン被膜を形成した。前記アモルファスカーボン被膜の形成は、処理室4とベースボトル10との内部を所定の真空度に減圧して、原料ガスとしてアセチレンを供給しつつ、周波数2.45GHz、出力380Wのマイクロ波を短時間照射することにより行った。
【0066】
この結果、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が3.4%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。尚、前記体積増加率は、実施例1と同様にして測定した。
【0067】
次に、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルに、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行い、さらに40℃で2週間保存した後の前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量と、40℃で4週間保存した後の前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量とを測定した。また、前記炭酸飲料用PETボトルの前記充填直後の酸素透過率と、40℃で4週間保存した後の酸素透過率とを測定した。尚、前記炭酸ガス減少量と、酸素透過率とは、実施例1と全く同一にして測定した。結果を表2に示す。
【実施例4】
【0068】
本実施例では、実施例3で製造したベースボトルを用い、図1示のCVD装置1により、前記ベースボトルの内面側に約30nmの膜厚のケイ素酸化物被膜を形成した。前記ケイ素酸化物被膜の形成は、ベースボトル10の内部を30Paに維持しつつ、原料ガスとして有機ケイ素化合物と酸素とを供給しつつ、周波数2.45GHz、出力1000Wのマイクロ波を短時間照射することにより行った。
【0069】
この結果、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が3.3%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。尚、前記体積増加率は、実施例1と同様にして測定した。
【0070】
次に、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表2に示す。
〔比較例4〕
本比較例では、実施例3で製造したベースボトルに、ガスバリア被膜を全く形成せずに、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が3.9%の炭酸飲料用PETボトルを得た。尚、前記体積増加率は、実施例1と同様にして測定した。
【0071】
次に、本比較例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表2に示す。
〔比較例5〕
本比較例では、プリフォーム加熱温度が高く、肉厚分布がやや不均一である以外は実施例3と全く同一にして耐熱圧PETボトルを製造した。次に、本比較例で得られた耐熱圧PETボトルをベースボトルとした以外は、実施例4と全く同一にして、該ベースボトルの内面側に約30nmの膜厚のケイ素酸化物被膜を形成した。この結果、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が9.8%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。尚、前記体積増加率は、実施例1と同様にして測定した。
【0072】
次に、本比較例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】


表2から、内面側にガスバリア被膜を備え、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が8.0%以下である実施例3,4の炭酸飲料用PETボトルによれば、前記充填から4週間後でも酸素透過量によって示される酸素バリア性が0.015ml/ボトル/日以下と良好であり、前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量も少なく、前記果汁入り炭酸飲料を充填した後の加熱殺菌処理等における室温より高温の環境下でも、優れたガスバリア性を保持していることが明らかである。
【0074】
これに対して、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が8.0%以下であるがガスバリア被膜を備えていない炭酸飲料用PETボトル(比較例4)、ガスバリア性被膜は備えているがガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が8.0%を超える炭酸飲料用PETボトル(比較例5)では、いずれも前記充填から4週間後の酸素透過量、前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量とも実施例3,4に比較して多いことが明らかである。
【実施例5】
【0075】
本実施例では、まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる質量25gのプリフォームをブロー成形して、内容量約500mlの予備成形ボトルを得た後、該予備成形ボトルを加熱して収縮させ、再度ブロー成形を行う、二段ブロー成形により、ベースボトルとして内容量350mlの耐熱圧ボトルを製造した。
【0076】
次に、本実施例で得られたベースボトルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、該ベースボトルの内面側に約50nmの膜厚のアモルファスカーボン被膜を形成した。
【0077】
この結果、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が4.0%の炭酸飲料用PETボトルが得られた。本実施例の炭酸飲料用PETボトルは、前記プリフォームの質量が実施例3に比較して小さいが、前記二段ブロー成形によりボトル全体の肉厚がより均一となり、側壁の結晶度も高くなっており、胴部の剛性が高いため、前記体積増加率が低く抑えられているものと思われる。尚、前記体積増加率は、実施例1と同様にして測定した。
【0078】
次に、本実施例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表3に示す。
〔比較例6〕
本比較例では、実施例5で製造したベースボトルに、ガスバリア被膜を全く形成せずに、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を、ヘッドスペースを炭酸ガスで置換して充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が4.2%の炭酸飲料用PETボトルを得た。尚、前記体積増加率は、実施例1と同様にして測定した。
【0079】
次に、本比較例で得られた炭酸飲料用PETボトルを用いた以外は、実施例3と全く同一にして、該炭酸飲料用PETボトルにおける前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量と、該炭酸飲料用PETボトルの酸素透過率とを測定した。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】


表3から、内面側にガスバリア被膜を備え、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が8.0%以下である実施例5の炭酸飲料用PETボトルによれば、前記充填から4週間後でも酸素透過量によって示される酸素バリア性が0.015ml/ボトル/日以下と良好であり、前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量も少なく、前記果汁入り炭酸飲料を充填した後の殺菌処理等における室温より高温の環境下でも、優れたガスバリア性を保持していることが明らかである。
【0081】
これに対して、ガスボリューム2.8の果汁入り炭酸飲料を充填し、35分間の熱水シャワーにより容器中心部が65℃の温度に10分間以上保持されるようにして加熱殺菌処理を行った後の体積増加率が8.0%以下であるがガスバリア被膜を備えていない炭酸飲料用PETボトル(比較例6)は、前記充填から4週間後の酸素透過量、前記果汁入り炭酸飲料中の炭酸ガス減少量ともに実施例5に比較して多いことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に用いるCVD装置の一構成例を示す説明的断面図。
【符号の説明】
【0083】
1…CVD装置、 4…処理室、 5…マイクロ波発生装置、 8…排気室、 10…ベースボトル、 19…ガス導入管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVDにより形成されたガスバリア被膜を内面側に備える炭酸飲料用プラスチックボトルにおいて、
室温より高温の環境下における体積増加率が8.0%以下であることを特徴とする炭酸飲料用プラスチックボトル。
【請求項2】
前記室温より高温の環境下における体積増加率は、ガスボリューム4.2の炭酸水を充填して40℃の温度で2週間保存後の値であることを特徴とする請求項1記載の炭酸飲料用プラスチックボトル。
【請求項3】
前記室温より高温の環境下における体積増加率は、ガスボリューム2.8の炭酸水を充填して容器中心部を65℃の温度に10分間以上保持する加熱処理を施した後の値であることを特徴とする請求項1記載の炭酸飲料用プラスチックボトル。
【請求項4】
前記ガスバリア被膜は、炭素原子を含む出発原料からプラズマCVDにより形成された炭素を主要構成元素とするアモルファスカーボン被膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の炭酸飲料用プラスチックボトル。
【請求項5】
前記ガスバリア被膜は、有機珪素化合物を含む出発原料からプラズマCVDにより形成されたSi/O比が原子比で1/1.5〜1/2.2の範囲にあるケイ素酸化物含有被膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の炭酸飲料用プラスチックボトル。
【請求項6】
前記プラスチックボトルは、ポリエステルボトルであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の炭酸飲料用プラスチックボトル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−315697(P2006−315697A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137968(P2005−137968)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】