説明

点字鋲

【課題】高い防滑性と視認性とを効率よく得ることができる点字鋲を提供する。
【解決手段】頭部3と脚部4とを有する金属製の鋲本体2と、頭部3上を覆う樹脂製の笠部5とを備える。笠部5の上面7にガラスカレット12からなる滑止め部13を設けたから、上面7のガラスカレット12が滑り止めになると共に、そのガラスカレット12に光が乱反射して視認性が向上する。したがって、上面7に設けたガラスカレット12により、滑り止めと視認性向上の複数の効果を同時に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者を誘導する点字鋲に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、頭部と脚部とを有する金属製の鋲本体の頭部表面を着色ゴム組成物で被覆し、歩行者に対する防滑性と識別性を長期間確保しようとした点字鋲(例えば特許文献1)がある。
【0003】
また、略T型形状に形成されているアンカー部に接続部が連設する平担部材と、前記平担部材に連結する接続部と起立部からなるT型部材とからなり、反射板を取り付けた反射部を備えた点字鋲(例えば特許文献2)がある。
【0004】
さらに、樹脂には各種の材質のものが混合され、視覚障害者用の誘導マーカーに用いられ、樹脂によって形成された視覚障害者用点字鋲であって、前記樹脂は、ポリブチレンテレフタレート、または、ポリブチレンフタレートにガラス繊維を含む樹脂を用いた点字鋲(例えば特許文献3)がある。
【0005】
一方、点字鋲の製造方法として、路面又は床敷物の表面に突出して形成された鋲本体の製造方法であって、鋲本体を表面に凹部の形成された金属製の基台で構成し、その後基台の凹部に樹脂を型流しすることで基台の表面に樹脂部を形成する製造方法(例えば特許文献4)が提案されている。
【特許文献1】特開平11−338341号公報
【特許文献2】特開平11−51020号公報
【特許文献3】特開2005−16170号公報
【特許文献4】特開2001−182023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の点字鋲は、使用する樹脂により防滑性を確保するものであるが、形状により防滑性を向上する点については考慮されていない。また、特許文献2の点字鋲では、光の反射により視認性を向上しているが、反射のみの機能を付加するために、わざわざ反射板を取り付けなければならない。また、特許文献3の点字鋲では、ガラス繊維を用いているが、これは耐久性を高めるに一般的に用いられるものである。したがって、これら引用文献1〜3のものでは、防滑性と視認性とを得るためには、それぞれ別々の材料が必要となり、効率が悪い面がある。
【0007】
一方、特許文献4の製造方法では、樹脂に各種の材料を混合する場合、単に貴台凹部に樹脂を流し入れるだけでは、その混合する材料の特性を生かすことができない。
【0008】
ところで、樹脂部分を有する点字鋲では、金属製又は金属が露出するものに比べて、歩行者の靴が当たるなどしても、歩行者側への負担が少なく好適なものとなる。しかし、車両が接触したり、タイヤが載ったりして大きな荷重が加わると、樹脂部分が破損する虞があり、特に、積雪地帯では、スコップなどの除雪具の先端が当たった衝撃により割れたり折れたりすることが懸念される。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、高い防滑性と視認性とを効率よく得ることができる点字鋲を提供することを目的とし、また、歩道部で考えられる衝撃に強い点字鋲を提供することを目的とし、さらに、複数の材料を用いても点字鋲を簡便に製造することができる点字鋲の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、頭部と脚部とを有する金属製の鋲本体と、前記頭部上を覆う樹脂製の笠部とを備えた点字鋲において、前記笠部の上面にガラスカレットからなる滑止め部を設けたものである。
【0011】
本発明の請求項2の発明は、前記笠部内にゴムチップを埋設したものである。
【0012】
本発明の請求項3の発明は、有色又は無色の前記ガラスカレットを用い、前記ゴムチップを着色したものである。
【0013】
本発明の請求項4の発明は、前記脚部は、上部に拡大部を一体に有し、前記脚部を前記頭部に挿通すると共に、前記拡大部を前記笠部内に埋設したものである。
【0014】
本発明の請求項5の発明は、請求項2記載の点字鋲の製造方法において、前記笠部に略対応した形状の成形型を用い、この成形型の底部上に前記頭部を配置した後、前記成形型に樹脂を注入し、この樹脂が硬化する前に、前記樹脂より比重が大きい前記ゴムチップを入れて該樹脂内にゴムチップを埋設すると共に、前記ガラスカレットを入れ、前記樹脂内の前記ゴムチップ上に前記ガラスカレットを載せることにより該樹脂の上面に前記ガラスカレットを設ける製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、上面のガラスカレットが滑り止めになると共に、そのガラスカレットに光が当たり視認性が向上する。したがって、上面に設けたガラスカレットにより、滑り止めと視認性向上の複数の効果を同時に得ることができる。
【0016】
本発明の請求項2によれば、埋設したゴムチップにより、笠部に加わる衝撃を緩和することができる。したがって、大きな荷重が加わっても損傷し難く、冬季において、雪の下の氷を割る際、スコップの先端が当たっても、割れたり折れたりする影響を極力避けることができる。
【0017】
本発明の請求項3によれば、ガラスカレットとゴムチップの色彩により、景観に合わせたり、視認性を向上したりできる。そして、樹脂に埋設したゴムチップを着色することにより、所望の色が得られると共に、色あせ難いものになる。また、着色することにより、周囲との輝度比を調整することもできる。
【0018】
本発明の請求項4によれば、鋲本体側の拡大部を、笠部内に埋設することにより、鋲本体と笠部とを一体化することができる。
【0019】
本発明の請求項5によれば、ゴムチップがないと、ガラスカレットは樹脂内に沈んでしまい、上面側に設けることができないが、樹脂内のゴムチップの上にガラスカレットが載ることにより、樹脂からなる笠部の上面にガラスカレットを設けることができ、ゴムチップの投入と、ガラスカレットの投入とを連続して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な点字鋲を採用することにより、従来にない点字鋲が得られ、その点字鋲について記述する。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明を添付図面を参照して説明する。図1〜図3は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、点字鋲1は、アルミニウム又はアルミニウム合金などからなる鋲本体2を備え、この鋲本体2は、平板状の頭部3と複数の脚部たる雄螺子部4とを有し、前記頭部3が平面長方形の形状をなし、その頭部3の下面に、長さ方向に間隔を置いて複数の前記雄螺子部4が設けられ、この例では、3本の雄螺子部4を有する。そして、前記雄螺子部4が、図示しない路面版などに固定される。
【0022】
また、前記点字鋲1には、前記頭部3の上を覆う笠部5を備え、この笠部5は、ウレタン樹脂などの樹脂Uなどからなり、その底面6は前記頭部3の面積より大きく、その上面7と底面6とは略平行で、幅両側に傾斜面8,8を有するとともに、長さ方向両側に傾斜面9,9を有し、幅方向の断面及び長さ方向の断面が台形となる。尚、傾斜面8,9は底面に対し手略45度の角度をなす。また、前記笠部5は、前記頭部3の上面と側面とを少なくとも覆う。
【0023】
また、前記雄螺子部4は、その上部に逆裁頭円錐型の拡大部4Aを一体に備え、この拡大部4Aの上面には、プラス溝やマイナス溝などの工具係合部を備えることができる。そして、前記頭部3には、前記雄螺子部4を遊挿する透孔3Aが穿設され、前記拡大部4Aは前記透孔3Aより大きく、前記透孔3Aに雄螺子部4を挿通すると共に、前記拡大部4Aを頭部3上に位置させ、その拡大部4Aを前記笠部5の樹脂U内に埋設している。また、前記拡大部4Aを有する前記雄螺子部4には、汎用的な台形状頭部を有するネジなどを用いることができ、汎用品を用いることにより安価で済む。
【0024】
前記笠部5の樹脂U内には、複数のゴムチップ11が埋設されている。このゴムチップ11の粒径は2.5mm以下である。尚、粒径2.5mm以下とは、2.5mm篩を通過する粒径であることを示し、そして、好ましくは、0.5〜2.5mmのゴムチップ11を用いる。また、ゴムチップ11は、前記頭部3の上及び頭部3の側部に充填されている。そして、この例では、古タイヤを粉砕したゴムチップ11を用い、この例では、アスペクト比が1.5以上のゴムチップが含まれている。また、ゴムチップ11の表面を塗料などを用いて例えば茶色に着色している。
【0025】
前記笠部5の上面7側には、ガラス製品を破砕したガラスカレット12が層状に設けられ、上面7にはガラスカレット12に形成された滑止め部13が形成される。このガラスカレット12の粒径は5.0mm以下である。尚、粒径5.0mm以下とは、5.0mm篩を通過する粒径であることを示す。そして、好ましくは、0.5〜5.0mmのガラスカレット12を用いる。そして、この例では、ビール瓶などの茶色に着色された廃ガラスを粉砕したガラスカレット12を用いている。このように着色することにより、設置場所である路面版などの輝度に比べて点字鋲1の輝度を小さくし、例えば、設置場所の輝度と点字鋲1の輝度との比を1.5〜2.5程度とすることにより、弱視者に対する視認性を向上することができる。
【0026】
尚、前記頭部3の厚さが2mm程度である場合、ガラスカレット12の層の厚さTは略1.5mm、ガラスカレット12の層の下部と頭部2の上面との間の厚さは、前記厚さTと略等しい。また、一例として、笠部5の幅は15〜30mm程度である。
【0027】
次に、前記点字鋲1の製造方法につき説明する。図3に示すように、前記笠部5に対応する断面形状を有する成形型21を用い、この成形型21は、前記底面6を形成する底面形成部22と、前記傾斜面8,8を形成する幅方向の傾斜面形成部23,23と、前記傾斜面9,9を形成する長さ方向傾斜面形成部(図示せず)とを備え、上部は開口している。そして、前記底面形成部22の上面に、前記頭部3を配置し、雄螺子部4は底面形成部22を挿通して下方に露出しておく。
【0028】
この場合、頭部3の透孔3Aに雄螺子部4を挿通し、頭部3の上方に拡大部4Aを位置させておく。そして、透孔3Aには螺子部がなく、単に、透孔3Aに雄螺子部4を挿通すれば、透孔3Aより大きな拡大部4Aにより止まり、頭部3に雄螺子部4を簡単にセットすることができる。
【0029】
このように成形型21内に頭部3を配置した後、上部開口からウレタン樹脂などの樹脂Uを所定量だけ注入し、この樹脂Uが硬化する前に、ゴムチップ11を入れる。このゴムチップ11は、頭部3の上と両側の底面6側へも入れるようにする。樹脂Uには硬化前には流動性を有するものを用いる。尚、ゴムチップ11は使用する樹脂Uより比重が大であるため、樹脂U内へと沈んでいく。所定量のゴムチップ11を層状の樹脂U内に入れた後、その上からガラスカレット12を入れる。ガラスカレット12は、樹脂Uより比重が大であるが、ゴムチップ11の層の上に乗ることにより、層状をなすガラスカレット12の上部を、樹脂Uの上面より上に突出して設けることができる。
【0030】
このように樹脂U、ゴムチップ11、ガラスカレット12を順次入れ、樹脂Uが硬化したら、成形型21から脱型し、点字鋲1の製品を得ることできる。尚、分解可能な成形型21を用いてもよい。
【0031】
また、透孔3Aに遊挿した雄螺子部4は、それら透孔3Aと雄螺子部4との間に入り込んだ樹脂Uにより、頭部3に固定される。
【0032】
また、得られた点字鋲1を、ASTM E303の振子式スキッドレジスタンステスターの試験で定められた湿潤時の滑り抵抗値を測定したところ、測定値は45BPNとなった。尚、設置した路面の温度が20℃であったため、温度補正はしなかった。
【0033】
この試験結果から、一般的な歩道の湿潤路面で必要とするBPN値:40以上を満足することが分かった。
【0034】
このように本実施例では、請求項1に対応して、頭部3と脚部4とを有する金属製の鋲本体2と、頭部3上を覆う樹脂製の笠部5とを備えた点字鋲において、笠部5の上面7にガラスカレット12からなる滑止め部13を設けたから、上面7のガラスカレット12が滑り止めになると共に、そのガラスカレット12に光が乱反射して視認性が向上する。したがって、上面7に設けたガラスカレット12により、滑り止めと視認性向上の複数の効果を同時に得ることができる。
【0035】
そして、有色又は無色のガラスカレット12を用いることにより、樹脂Uや着色したゴムチップ11では得られない透明感を得ることができる。
【0036】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、笠部5内にゴムチップ11を埋設したから、埋設したゴムチップ11により、笠部5に加わる衝撃を緩和することができる。したがって、大きな荷重が加わっても損傷し難く、冬季において、雪の下の氷を割る際、スコップの先端が当たっても、割れたり折れたりする影響を極力避けることができる。
【0037】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、有色又は無色のガラスカレット12を用い、ゴムチップ11を着色したから、ガラスカレッ12トとゴムチップ11の色彩により、景観に合わせたり、視認性を向上したりできる。そして、樹脂Uに埋設したゴムチップ11を着色することにより、所望の色が得られると共に、色あせ難いものになる。そして、無色透明のガラスカレット12を用いた場合は、艶(光沢)が得られ、有色のガラスカレット12を用いた場合は、その色と透明感とが見た目に表れたものになる。
【0038】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、脚部たる雄螺子部4は、上部に拡大部4Aを一体に有し、雄螺子部4を頭部3に挿通すると共に、拡大部4Aを頭部3の上方で笠部5内に埋設したから、鋲本体2側の拡大部4Aを、笠部5の樹脂U内に埋設することにより、鋲本体2と笠部5とを一体化することができる。
【0039】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、請求項2記載の点字鋲の製造方法において、笠部5に略対応した形状の成形型21を用い、この成形型21の底部たる底面形成部22上に頭部3を配置した後、成形型21に樹脂Uを注入し、この樹脂Uが硬化する前に、樹脂Uより比重が大きいゴムチップ11を入れて該樹脂U内にゴムチップ11を埋設すると共に、その上からガラスカレット12を入れ、樹脂U内のゴムチップ11上にガラスカット12を載せることにより樹脂Uの上面にガラスカレット12を設けるから、ゴムチップ11がないと、ガラスカレット12は樹脂U内に沈んでしまい、多量に入れないと、上面に設けることができないが、樹脂U内のゴムチップ11の上にガラスカレット12が載ることにより、樹脂Uからなる笠部5の上面7にガラスカレット12を設けることができ、ゴムチップ11の投入と、ガラスカレット12の投入とを連続して行うことができる。
【0040】
また、実施例上の効果として、ガラスカレット12は、廃棄ガラスを破砕したものでああるから、廃棄物の再利用に寄与することができる。さらに、ゴムチップ11は廃タイヤを破砕した砕片状のチップであるから、廃タイヤを有効活用することができる。
【0041】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、用いる樹脂は、充填前は流動性を有し、経時的に硬化するものであれば、各種のものを用いることができる。また、着色した樹脂を用いてもよい。さらに、ガラスカレットとゴムチップと樹脂とは異なる色のものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1を示す側面図である。
【図2】同上、断面図である。
【図3】同上、製造方法を説明する断面図であり、図3(A)は成形型内に樹脂を入れた状態、図3(B)は樹脂内にゴムチップを入れた状態を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 点字鋲
2 鋲本体
3 頭部
4 雄螺子部(脚部)
4A 拡大部
5 笠部
11 ゴムチップ
12 ガラスカレット
21 成形型
U 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と脚部とを有する金属製の鋲本体と、前記頭部上を覆う樹脂製の笠部とを備えた点字鋲において、前記笠部の上面にガラスカレットからなる滑止め部を設けたことを特徴とする点字鋲。
【請求項2】
前記笠部内にゴムチップを埋設したことを特徴とする請求項1記載の点字鋲。
【請求項3】
有色又は無色の前記ガラスカレットを用い、前記ゴムチップを着色したことを特徴とする請求項2記載の点字鋲。
【請求項4】
前記脚部は、上部に拡大部を一体に有し、前記脚部を前記頭部に挿通すると共に、前記拡大部を前記笠部内に埋設したことを特徴とする請求項2記載の点字鋲。
【請求項5】
請求項2記載の点字鋲の製造方法において、前記笠部に略対応した形状の成形型を用い、この成形型の底部上に前記頭部を配置した後、前記成形型に樹脂を注入し、この樹脂が硬化する前に、前記樹脂より比重が大きい前記ゴムチップを入れて該樹脂内にゴムチップを埋設すると共に、前記ガラスカレットを入れ、前記樹脂内の前記ゴムチップ上に前記ガラスカレットを載せることにより該樹脂の上面に前記ガラスカレットを設けることを特徴とする点字鋲の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−297827(P2008−297827A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146044(P2007−146044)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(592056997)開発技建株式会社 (1)
【出願人】(591273281)株式会社アドヴァンス (18)
【出願人】(502449820)株式会社エム・アートコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】