点灯装置及びそれを用いた前照灯点灯装置、前照灯、車輌
【課題】負荷電圧に依らず、電源や負荷や接続状態の異常をいち早く検出して出力を低減可能な点灯装置を提供する。
【解決手段】DC電源を負荷が必要とする所定の出力へ変換するDC/DCコンバータと、その出力の検出値によりDC/DCコンバータを制御する制御部とから構成される点灯装置において、前記制御部は、第1の所定時間に前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行う(A02,A03)。前記負荷は半導体光源であり、前記制御部は、前記DC/DCコンバータを、出力電流が第1の所定電流値となるように制御する場合において、100[μs]当たりの出力電圧の変化が5[V]以上となる変化、もしくは、300[μs]当たりの出力電流の変化が0.12[A]以上となる変化を検出したとき、出力を低減する。
【解決手段】DC電源を負荷が必要とする所定の出力へ変換するDC/DCコンバータと、その出力の検出値によりDC/DCコンバータを制御する制御部とから構成される点灯装置において、前記制御部は、第1の所定時間に前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行う(A02,A03)。前記負荷は半導体光源であり、前記制御部は、前記DC/DCコンバータを、出力電流が第1の所定電流値となるように制御する場合において、100[μs]当たりの出力電圧の変化が5[V]以上となる変化、もしくは、300[μs]当たりの出力電流の変化が0.12[A]以上となる変化を検出したとき、出力を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDや放電灯のような光源を点灯させる点灯装置の負荷異常時の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの発光効率が向上し、LEDを用いた照明器具が多数量産化されている。特に車載用前照灯の分野では、従来は視認性向上(明るさ向上)のため、ハロゲンランプからHIDランプへ変更する車輌が増加していたが、LEDの発光効率向上を受け、LEDの前照灯を搭載した車輌の量産が始まっている。
【0003】
図22に従来の車載用LED点灯装置の構成を示す。LOWビームスイッチに連動して供給される電源E1からの直流電圧を、負荷を点灯させることの出来る電圧へDC/DCコンバータ1で昇降圧する。DC/DCコンバータ1の出力電圧であるDC電圧を、半導体光源5に印加することで半導体光源5を点灯させる。本点灯装置は半導体光源5を定電流制御により点灯させており、その制御にマイコン10を用いている。半導体光源5の負荷電圧と負荷電流を抵抗R1〜R3により検出し、電圧検出回路3及び電流検出回路4を介してマイコン10に入力する。マイコン10はそれらを平均化処理部11,12により平均化する。ROM部分に有する電流指令値データを出力電流指令値演算部14により呼び出す。さらに、比較演算部15にて平均化電流値Iaと電流指令値とを比較し、同一の値となるように1次側電流指令値Icを演算/出力する。この1次側電流指令値Icと1次側電流検出値IdをコンパレータCPで比較することにより、DC/DCコンバータ1のスイッチング素子Q1を駆動する。
【0004】
DC/DCコンバータ1のスイッチング素子Q1はドライブ回路としてのフリップフロップFFの出力によりオン/オフ駆動される。高周波のON信号HFによりフリップフロップFFがセットされると、スイッチング素子Q1がオンとなり、トランスT1の1次巻線を介して漸増する電流が流れて、トランスT1にエネルギーが蓄積される。スイッチング素子Q1がFETである場合、そのオン抵抗は略オーミック抵抗となるので、オペアンプ等で構成される1次側電流検出回路2によりドレイン電圧を増幅することで、1次側電流検出値Idを検出できる。この1次側電流検出値Idが1次側電流指令値Icに達すると、コンパレータCPの出力が反転し、フリップフロップFFをリセットすることで、スイッチング素子Q1がオフされる。スイッチング素子Q1がオフされると、トランスT1の蓄積エネルギーによる逆起電力が2次巻線に発生し、ダイオードD1を介してコンデンサC1に充電される。
【0005】
以上の回路構成により、DC/DCコンバータ1のスイッチング素子Q1のオン時間をPWM制御することにより、定電流制御を実現している。
【0006】
上記定電流制御に加えて、異常検出部16では、電源検出回路7や電圧検出回路3や電流検出回路4の検出結果から、電源異常や負荷異常を検出し、DC/DCコンバータ1の動作停止および異常信号の出力制御を行っている。
【0007】
なお、マイコン10への電源は制御電源生成部6にて生成され、制御電源生成部6への電源は、LOWビームスイッチ電源E1より得ている。平均化処理部13は電源電圧の読込み値を平均化処理する。
【0008】
半導体光源5の定電流制御と異常判断を行うマイコン10の制御フローを図23に示す。#04〜#12で半導体光源5の定電流制御を実現し、#13〜#17にて電源及び負荷異常の判断を行っている。図中の各ステップの説明を以下に示す。
【0009】
#01では、電源ONし、RESETが解除される。RESET入力は図22では図示を省略している。
#02では、使用する変数・フラグ等の初期化を行う。
【0010】
#03では、LOWビームスイッチがONかどうかを判断する。ONかどうかの判断は、例えば、9[V]<電源電圧<16[V]となっている場合はONと判断する等の手法を用いる。ONでない場合は#04以降の半導体光源5を点灯させるループへ移行しない。
【0011】
#04では、A/D変換により電源電圧を読込む。
#05では、読込み値に過去値を合わせて、電源電圧の平均化を行う。平均化の一例を挙げると、検出値を最新値から3値記憶(読込み時更新)しておき、次の最新値を読込んだとき、過去の3値と足し合わせて4で割る。
【0012】
#06では、A/D変換により負荷電圧を読込む。
#07では、読込み値に過去値を合わせて、上述のような平均化を行うことにより、平均化電圧値Vaを取得する。
【0013】
#08では、マイコン内のROM上にある出力電流指令値を読み出す。
【0014】
#09では、A/D変換により出力電流を読込む。
#10では、読込み値に過去値を合わせて、上述のような平均化を行うことにより、平均化電流値Iaを取得する。
【0015】
#11では、出力電流の電流指令値と平均化電流値Iaを比較演算する。
#12では、比較結果により1次側電流指令値Icを変更する。
【0016】
#13では、電源電圧が正常かどうかを所定電圧範囲内(正常電源下限〜正常電源上限)に入っているかどうかで判断する。ここでは、6[V]〜20[V]の範囲内を正常範囲として記載している。異常と判断すると、動作停止処理(#15)を経て、マイコンRESET後のLOWビームスイッチON判断(#03)へ移行する。
【0017】
#14では、負荷電圧が正常かどうかを所定電圧範囲内(正常出力電圧下限〜正常出力電圧上限)に入っているかどうかで判断する。ここでは、10[V]〜40[V]の範囲内を正常範囲として記載している。異常と判断すると負荷異常信号を出力(#16)して、永久停止処理(#17)を行う。
【0018】
#15では、動作停止処理(DC/DCコンバータを停止させ、マイコン内のデータをクリアする)を行う。
【0019】
#16では、負荷異常を外部に知らせるための負荷異常信号を出力する。具体的には、マイコン10よりHIGH/LOWの信号を出力するか、もしくは、通信機能等を用いて外部へ異常を知らせる。
【0020】
#17では、動作停止処理を行い、無限ループ処理を行う。
本制御により、負荷であるLEDがオープン/ショート故障となった場合は、出力電圧が正常出力電圧上限以上/正常出力電圧下限以下となることにより異常を検出し、動作停止させることが可能である。
【0021】
特許文献1(特開2006−114279号公報)には、動作停止させるのではなく、出力電圧が正常出力電圧上限を超えた場合には出力電流値を低減する技術が開示されている。また、特許文献2(特開2006−172819号公報)には、制御にマイコンを用いた場合の異常検出速度を速めるため、外部割込み処理を用いて出力を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−114279号公報
【特許文献2】特開2006−172819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
図24に出力オープン異常が発生した際の出力電圧と出力電流の波形を示す。従来例の制御は、出力電圧が所定電圧を超えた場合に動作停止を行うものであり、たとえ順方向電圧Vfのばらつきにより負荷電圧の異なる半導体光源が接続されていた場合でも、負荷電圧正常範囲の上限である正常出力電圧上限まで出力電圧が上昇することで動作停止していた。しかし、出力オープン異常が出力コネクタやLEDチップのボンディングのルーズコンタクトが原因で発生している場合、負荷が一瞬だけオープンとなってすぐに接続する状態(負荷チャタリングと以降記載)が発生することがある。
【0024】
図25に負荷チャタリングが発生した際の出力電圧と出力電流の波形を示す。順方向電圧Vfが大きい半導体光源が接続されている場合は、負荷チャタリングが発生している間に出力電圧が正常出力電圧上限まで上昇して動作停止し、再度負荷が接続された際に再度動作開始している(そのまま停止していても良い)。しかし、順方向電圧Vfが小さい半導体光源が接続されている場合は、負荷チャタリングが発生している間には、出力電圧が正常出力電圧上限に達することなく、再度負荷が接続された際には通常の順方向電圧Vfより遥かに大きな電圧が半導体光源の両端にかかり、過大な出力電流が流れた後に出力電流が安定する。この過大電流は半導体光源および点灯装置に大きな負荷を与えるため、最悪の場合は半導体光源や点灯装置の破壊につながることがある。
【0025】
また、負荷チャタリング以外にも、負荷(全体もしくは一部)が短絡状態となったり、瞬間的に電源電圧が上昇した際などにも出力電流が急激に上昇して半導体光源や点灯装置が壊れることがある。上述の特許文献2(特開2006−172819号公報)にあるように、マイコンの割り込み等を用いて応答を早くしたとしても、正常出力電圧上限や正常出力電流上限まで上昇もしくは下降しないため動作停止に至らしめることは不可能であり、半導体光源や点灯装置が壊れることがある。
【0026】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、負荷電圧に依らず、電源や負荷や接続状態の異常をいち早く検出して出力を低減可能な点灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図22に示すように、DC電源を受けて前記DC電源を負荷5が必要とする所定の出力へ変換するDC/DCコンバータ1と、前記出力の電圧もしくはそれに相当する値を検出する電圧検出部(抵抗R1,R2及び電圧検出回路3)と、前記出力の電流もしくはそれに相当する値を検出する電流検出部(抵抗R3及び電流検出回路4)と、前記電圧検出部及び/又は電流検出部の検出値により、DC/DCコンバータ1を制御する制御部(マイコン10)とから構成される点灯装置において、前記制御部は、第1の所定時間に前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行う(図1のA02,A03)ことを特徴とするものである。
【0028】
請求項2の発明は、請求項1記載の点灯装置において、前記負荷5は半導体光源であり、前記制御部は、前記DC/DCコンバータ1を、出力電流が第1の所定電流値(図2の定電流制御(0.7A)参照)となるように制御することを特徴とする。
【0029】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の点灯装置において、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、100[μs]当たりの出力電圧の変化が5[V]以上となる変化であることを特徴とする(図1のA02)。
【0030】
請求項4の発明は、請求項1または2記載の点灯装置において、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、300[μs]当たりの出力電流の変化が0.12[A]以上となる変化であることを特徴とする(図14のΔt,ΔI参照)。
【0031】
請求項5の発明は、請求項2記載の点灯装置において、前記制御部は、第1の所定電流値より大きな第2の所定電流値以上の電流が第2の所定時間連続した場合、前記DC/DCコンバータを停止する制御を行い(図16のG02、#17)、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、第2の所定電流値より大きな第3の所定電流値が流れることである(図16のG03、G04、図17参照)ことを特徴とする。
【0032】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記制御部は、前記DC/DCコンバータを電流臨界モードにて制御し、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータのスイッチング素子のON時間を維持しながら電流不連続モードへと切り替えることを特徴とする(図11のE02、図12参照)。
【0033】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを停止させることであることを特徴とする(図5のB01、#15参照)。
【0034】
請求項8の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを間欠的に動作させることであることを特徴とする(図16のG03、G04、G05、図17参照)。
【0035】
請求項9の発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記出力の低減とは、第1の所定電流値となるような制御を出力電圧が所定電圧値となるような制御に変更することを特徴とする(図8のA02、D04、D01〜D03、図9のt2〜t3参照)。
【0036】
請求項10の発明は、請求項9記載の点灯装置において、所定電圧値とは、前記出力の変化が発生する前の電圧値であることを特徴とする。
【0037】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の点灯装置において、前記制御部は、出力の低減後、第3の所定時間後に出力電流が所定の判定閾値以上の場合、出力の低減を停止することを特徴とする(図6のC01〜C04、図7のt2〜t4参照)。
【0038】
請求項12の発明は、請求項11に記載の点灯装置において、所定の判定閾値は、負荷電圧の急激な上昇及び/又は負荷電流の急激な降下を検出する直前の電流値より小さく設定されることを特徴とする(図6のC01〜C04、図7のt2〜t4参照)。
【0039】
請求項13の発明は、請求項11または12のいずれかに記載の点灯装置において、第3の所定時間は20[ms]以下であることを特徴とする(図7のt2〜t4参照)。
【0040】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置を備え、車輌の前照灯を点灯させることを特徴とする前照灯点灯装置である。
【0041】
請求項15の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置を搭載した前照灯である。
【0042】
請求項16の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置もしくは請求項15記載の前照灯を搭載した車輌である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、所定時間に出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行うものであるから、負荷電圧の状態に依らず、電源や負荷や接続状態の異常をいち早く検出して出力を低減することができ、光源や点灯装置にストレスを与えない、安全な点灯装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態1の動作を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態1の負荷異常時の動作波形図である。
【図3】本発明の実施形態1の動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態1の一変形例の回路図である。
【図5】本発明の実施形態2の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態3の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態3の負荷異常時の動作波形図である。
【図8】本発明の実施形態4の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態4の負荷異常時の動作波形図である。
【図10】本発明の実施形態5の回路図である。
【図11】本発明の実施形態5の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態5の動作波形図である。
【図13】本発明の実施形態6の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態6の電源異常時の動作波形図である。
【図15】本発明の実施形態6の負荷一部短絡時の動作波形図である。
【図16】本発明の実施形態7の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施形態7の負荷短絡時の動作波形図である。
【図18】本発明の実施形態8の前照灯と車両を示す概略構成図である。
【図19】本発明の実施形態9の照明器具に用いるAC/DC変換回路の回路図である。
【図20】本発明の実施形態9の照明器具の一例を示す概略構成図である。
【図21】本発明の実施形態9の照明器具の他の一例を示す概略構成図である。
【図22】従来例の回路図である。
【図23】従来例の動作を示すフローチャートである。
【図24】従来例の負荷開放時の動作波形図である。
【図25】従来例の負荷異常時の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1のマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、制御フローにおいて、従来例(図23)と同じ部分は同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0046】
従来例と異なる点は、従来例では#08にて出力電流指令値を読み出して、平均化電流Iaが出力電流指令値に収束するように、DC/DCコンバータ1を制御していたが、本実施形態では負荷電圧の傾きを検出し、負荷電圧の傾きが50[V/ms]以上となった場合、その出力電流指令値を低減させる制御フローを追加した点である。本制御を実現するために変更したフローについて以下に詳細を示す。
【0047】
A01では、従来例の#08の出力電流指令値演算において、マイコン内のROMに記憶していた出力電流指令値を読み出していたところを、本実施形態では、読み出した後に、その出力電流指令値より後述のA03にて設定された電流指令値低減幅を減算して出力電流指令値として設定する。
【0048】
A02では、過去の出力電圧を記憶しておき、出力電圧の傾きを計算し、出力電圧の傾きが50[V/ms]以上の場合は、電流指令値低減幅を設定する処理A03へと遷移する。
A03では、電流指令値低減幅を設定する。
【0049】
本実施形態を実施した場合において、負荷チャタリングが発生したときの出力電圧と出力電流の波形を図2に示す。順方向電圧VfのばらつきによるVf:大とVf:小のそれぞれの出力の様子を示す。時刻t1にて負荷チャタリング(負荷オープン)が発生し、出力電流が0となる。これにより出力電圧が上昇し、Δt(100[μs])後の時刻t2にΔV(5[V])だけ変化したことを検出する(ΔV/Δt≧50[V/ms])。
【0050】
この検出により、出力電流指令値が0.7[A]から0.4[A]へと変更される。1次側電流指令値の変更は、電流指令値と実際の電流値との比較によりなされるため、出力電流指令値が下がると、1次側電流指令値の変化(上昇)幅も低減される。これにより、出力電圧の上昇を破線(従来例)から実線(本実施形態)のような上昇に抑えることが可能となる。これにより、時刻t3にて負荷チャタリングが解消し、半導体光源が接続された際には、出力電圧の上昇が抑えられているために突入電流を抑えることが可能となり、半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。本実施形態では、出力電流指令値が低減されているために、負荷チャタリング解消時の突入電流(出力電流のオーバーシュート)もさらに低減可能である。
【0051】
低減後出力電流は、その後、調光点灯を続けると、光束が下がった調光状態が続いてしまい、前照灯に利用した場合は走行安全性に影響を及ぼす。このため、所定時間で元に戻したほうが良いことは言うまでも無く、元に戻すまでに負荷オープン状態が続いている(負荷チャタリングでない)場合は、その他の判定手段(負荷電圧が正常出力電圧上限:40[V]を超える、出力電流値が正常出力電流下限:0.2[A]以下であるなど)を用いて動作停止させておく必要があることは言うまでもない。
【0052】
本実施形態において、Δt(100[μs])の観測時間は、瞬間的な電圧変化では出力低減しないように誤動作防止のために設けている。
【0053】
本実施形態では、出力電圧の傾きにて電流指令値の低減開始を判断したが、出力電流の傾きにて判断しても良い。例えば、出力電流の傾きが−50[A/ms]以下か否かを判断すれば、100[μs]で略0となることを検出可能である。さらに、出力電圧の傾きの判断結果と、出力電流の傾きの判断結果を共に求めて、両方のANDをとることで判断しても同様の効果を得ることができ、かつANDをとることにより不要な出力低減開始を防止することができることは言うまでもない。
【0054】
また、図3の(a)、(b)、(c)に示すように、電流指令値の低減幅を出力電圧(または出力電流)の傾きが大きいほど大きくすることで、半導体光源や点灯装置の破壊防止の効果と出力低減によるちらつきを防止する効果のバランスをとることが出来る。
【0055】
なお、本実施形態では負荷を半導体光源5として記載したが、図4に示すような高輝度放電灯Laであっても、出力電力の指令値を低減することで、同様の効果を得ることができる。出力電圧のばらつきが大きい程、本発明の効果が期待できるからである。
【0056】
放電灯点灯装置の詳細は示さないが、矩形波点灯を実現するためのフルブリッジインバータ31と高輝度放電灯Laを始動させるための高圧パルスを発生させるためのイグナイタ32を追加している。また、定電力制御を行うため、マイコン10のランプ電力指令値演算部18から出力されるランプ電力指令値を平均化電圧値Vaで除算することでランプ電流目標値を算出し、平均化電流値Iaとの差分により出力電流指令値Icを演算して、平均化電流値Iaがランプ電流目標値に収束するように定電流制御することで、ランプ電力の定電力制御を実現している。
【0057】
本実施形態で例示した傾きの判定値(閾値)は、以下の条件から設定している。従来例(図22)の回路を用いて、トランスT1の巻き数比が1:4で、1次側のインダクタンス値が数[μH]、駆動周波数が数100[kHz]、電源電圧:6[V]〜20[V]で出力電圧が10[V]〜40[V]の範囲で駆動した場合において、電源及び出力電圧を変更して点灯させ、急激に出力を開放させた場合の出力電圧の上昇傾きの最小値が56[V/ms](略一次関数的に上昇)であった。出力電圧が上昇すると、過大電流が流れるため、出力電圧の上昇は数[V]以内にする必要があり、LEDをちらつきが無いように点灯させた際の出力電圧のリプルは1.3[V]程度であったことから、出力電圧の上昇を1.3[V]より大きく、10[V]より小さくする必要があり、一例として5[V]とした。その際の判定時間は56[V/ms]の傾きより計算して、100[μs]で5[V]以上の傾き変化があった場合は出力低減をする制御とした。電源や負荷を変動させて試験したことで、本閾値は妥当であると言える。
【0058】
出力電流の閾値は、上記と同様に100[μs]程度の時間で判断する必要があり、100[μs]で定格電流の数100m[A]は略0[A]となるために、出力電流の傾きが−50[A/ms]以下か否かを判断するという閾値の設定は、妥当なものであると言える。
【0059】
本実施形態ではグラウンドに対して正の電圧をLEDに与えることで点灯しているが、負荷のLEDのアノードとカソードを逆転させ、負の電圧をLEDに供給することでも同様に点灯することが可能である。この場合、出力電圧や出力電流の傾きの符号と高/低の判断が逆となることは言うまでもない。
【0060】
(実施形態2)
図5に本発明の実施形態2に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、従来例(図23)と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0061】
従来例と異なる点は、負荷電圧の傾きを検出して、負荷電圧の傾きが50[V/ms]以上となった場合、回路動作を停止させるための処理(#15)へと遷移させている点である。回路動作を停止させた後、再度、#03から動作を開始することで負荷チャタリングの場合は再点灯を実現している。負荷チャタリングではなく、本当に負荷がオープン故障していた場合は再点灯の際にも負荷電圧が上昇して行き、正常出力電圧上限を超えるために、#14で検出されて永久停止を実現できる。一旦動作停止させて再動作させることにより出力電流の急増を防止し、負荷チャタリングによる半導体光源や点灯装置への負荷を低減する効果をより確実なものとすることができ、素早い再動作によりちらつきも低減することができる。
【0062】
本制御を実現するために、B01の処理を追加して、負荷電圧の傾きが50[V/ms]以上の場合は#15の動作停止から再動作のフロー(#03)へ遷移させている。
【0063】
本実施形態では、出力低減開始の判断を、出力電圧の傾きにて判断したが、出力電流の傾き(−50[A/ms]以下か否か)にて判断したり、両方のANDをとることで判断しても、同様の効果を得ることができ、かつANDをとることにより不要な出力低減開始を防止することができることは実施形態1と同様である。
【0064】
また、電流指令値の低減幅を出力電圧や出力電流の傾きが大きいほど大きくすることで、半導体光源や点灯装置の破壊防止の効果と出力低減によるちらつきを防止する効果のバランスをとることが出来ることは言うまでもない(図3(b),(c)参照)。
【0065】
なお、本実施形態では負荷を半導体光源5として記載したが、図4に示すような高輝度放電灯Laであっても、出力電力の指令値を低減することで、同様の効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態では出力の低減方法として出力電流指令値そのものを低減させているが、電流検出値にオフセットを重畳しても同様の効果を得ることができることは言うまでもない。他の実施形態でも同様である。
【0067】
本実施形態では、負荷電圧の傾きをマイコン内にて全て演算する方式を例示したが、以下のような方式で検出することで、より高速な応答が出来ることは言うまでもない。例えば、100[μs]前に読み込んだ出力電圧値をD/A変換により出力する(例えば20[μs]周期)。差分が所定電圧(5[V])より大きい場合は、判定結果をLOWからHIGHに切り替える差分検出回路に、上記D/A変換された過去値と電圧検出回路3の現在値を入力する。上記差分検出回路の出力を、マイコンの外部割込み回路もしくはタイマ出力強制停止等のポートへ入力する。この割り込みによる出力電流指令値の低減や、タイマ出力停止による出力の強制停止により出力を低減する。このようなマイコン外部の回路を用いて高速化する方式は、他の実施形態でも同様に適用可能である。
【0068】
(実施形態3)
図6に本発明の実施形態3に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、実施形態1と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0069】
実施形態1と異なる点は、負荷電圧の傾きにより電流指令値を低減した後、電流指令値低減後の時間を計測し、所定時間(20[ms])経過後の出力電流値を計測し、出力電流値が出力低減解除所定電流値(0.2[A])以上であれば、出力電流指令値の低減を停止して低減前の出力電流指令値に変更する点である。
【0070】
本制御を実現するため、実施形態1の制御フローの後に以下のフローを追加している。
C01では、電流指令値低減後の時間を計測する。
【0071】
C02では、電流指令値低減後の経過時間が20[ms]以上かどうかを計測し、もし経過時間が20[ms]以上の場合は出力電流指令値を電流指令値を低減する前の値に戻すかどうかを判断する処理(C03)へと遷移させる。20[ms]未満の場合は通常の定電流制御(#04〜)へ遷移させる。
【0072】
C03では、出力電流値が0.2[A]以上かどうかを判断する。出力電流値が0.2[A]以上の場合は、出力低減を行ったのは負荷のオープン故障ではなく負荷チャタリングであったと判断し(負荷のオープン故障の場合は出力電流値は0を維持し続けるため)、出力電流指令値の低減を解除するフロー(C04)へと遷移させる。0.2[A]未満の場合は、負荷のオープン故障と判断して永久停止のループ(#16,#17)へと遷移させる。
C04では、電流指令値の低減を解除する。
【0073】
本実施形態を実施した際に負荷チャタリングが発生した場合の出力電圧と出力電流の変化を図7に示す。順方向電圧VfのばらつきによるVf:大とVf:小のそれぞれの出力の様子を示す。時刻t1にて負荷チャタリング(負荷のオープン故障)が発生し、出力電流が0となる。これにより出力電圧が上昇し、Δt(100[μs])後の時刻t2にΔV(5[V])だけ変化したことを検出する(ΔV/Δt≧50[V/ms])。この検出により、出力電流指令値が0.7[A]から0.4[A]へと変更される。
【0074】
1次側電流指令値の変更は、電流指令値と実際の電流値との比較によりなされるため、出力電流指令値が下がると、1次側電流指令値の変化(上昇)幅も低減される。これにより、出力電圧の上昇を、破線(従来例)から実線(本実施形態)のような上昇に抑えることが可能となる。これにより、時刻t3にて負荷チャタリングが解消し、半導体光源が接続された際には、出力電圧の上昇が抑えられているために突入電流を抑えることが可能となり、半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。本実施形態では、出力電流指令値が低減されているために、負荷チャタリング解消時の突入電流(出力電流のオーバーシュート)もさらに低減可能である。
【0075】
その後、出力低減(出力電流指令値の低減:時刻t2)から所定時間(20[ms])が経過した後(残光特性調査)(時刻t4)に出力電流値が0.2[A]以上であることを検出して、出力電流指令値を、低減前の0.7[A]にもどすことで、負荷チャタリング発生前の状態に戻している。
【0076】
出力電流指令値の低減後、その状態を続けると光束が下がった調光状態が続いてしまい、前照灯の場合は走行安全性に影響を及ぼす。本実施形態では、人の目には調光状態となったことを感じさせないために、上記所定時間(20[ms])が経過した時点で出力低減前の状態に戻すことにより、ちらつきの防止を実現している。
【0077】
また、負荷異常の場合には20[ms]後の判断結果に応じて動作停止させることにより、速やかな動作停止も実現できる。一般に、負荷チャタリングは数[ms]で再接続するため本制御の時間もしくはより短い時間(例えば10[ms])で判断することで、負荷チャタリングと負荷のオープン故障を区別して判断することが出来る。
【0078】
残光等の影響は考えられるが、一般に50[Hz]以上の周波数で点滅させると人の目にはちらつきは感じられない。負荷チャタリングは数[ms]で再接続すると考えられるが、想定外に長い場合も極力動作停止をさせないために、本実施形態ではちらつきを感じさせない範囲で最も長い20[ms]を電流指令値低減の所定時間として用いている。
【0079】
本実施形態では、電流指令値低減時間を20[ms]として判断し、所定電流値(0.2[A])未満の場合は動作停止させているが、負荷オープン故障の場合も負荷電圧が正常範囲内(10[V]〜40[V])であれば点灯装置が破壊することも無いため、動作停止させずに(C03のNOの場合の遷移先を#04とすることで)連続動作させても同様の効果を得ることができることは言うまでもなく、より時間をかけて判断することで、負荷オープンであることを、より正確に判断することが出来る。
【0080】
本実施形態では、所定時間経過後より出力電流値が出力低減解除所定電流値以上か否かにより出力電流指令値低減の解除を判断したが、負荷がオープン故障の場合は出力電流が上昇することは無いため、所定時間を待たずに、出力電流値が所定電流値以上か否かをもって判断しても良いことは言うまでも無く、調光点灯状態をより短くすることで、よりちらつきの少ない点灯装置を実現することが出来る。
【0081】
(実施形態4)
図8に本発明の実施形態4に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、実施形態1と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0082】
実施形態1と異なる点は、実施形態1では、負荷電圧の傾きが所定の傾き(50[V/ms])以上となった場合に出力電流指令値を低減していたのに対して、本実施形態では、負荷電圧の傾きが所定の傾き以上となった場合に定電流制御に代えて、定電圧制御に切り替えるものである。
【0083】
本制御を実現するため、実施形態1の制御フローを以下のように変更している。
D01では、電流指令値と検出電流値を比較演算して、1次側電流指令値変更を行う処理(#11、#12)の前に、電圧指令値が設定されているか否かを判断する。電圧指令値が設定されている場合は、定電圧制御を行うフローD02,D03へと遷移させる。
【0084】
D02では、出力電圧指令値が設定されているため、電圧指令値と検出電圧値を比較して比較演算を行う。
D03では、比較演算により1次側電流指令値Icを変更する。D02とD03にて定電圧制御を実現している。
【0085】
D04では、負荷電圧の傾きが所定傾き以上であった場合に、実施形態1であれば出力電流指令値の低減幅を設定していたが、それを出力電圧指令値の設定に変更している。D04で出力電圧指令値が設定されると、D01の判定でD02,D03へと遷移し、定電圧制御となる。
【0086】
D05では、負荷チャタリングにより低下した出力電流が、出力低減解除所定電流値(本実施形態では0.4[A])以上かどうかを判断する。出力低減解除所定電流値以上となった場合には、D06に遷移し、D04で設定した出力電圧指令値を解除する。
【0087】
D06では、出力電圧指令値を解除する。出力電圧指令値を解除された場合は、D01の判定にて、#11,#12へと遷移し、定電流制御を再開する。
【0088】
本実施形態を実施した際に負荷チャタリングが発生した場合の出力電圧と出力電流の変化を図9に示す。順方向電圧(Vf)のばらつきによるVf:大とVf:小のそれぞれの出力の様子を示す。
【0089】
時刻t1にて負荷チャタリング(負荷オープン)が発生し、出力電流が0となる。これにより出力電圧が上昇し、Δt(100[μs])後の時刻t2にΔV(5[V])だけ変化したことを検出する(ΔV/Δt≧50[V/ms])。この検出により、負荷電圧の上昇を検出した時点の電圧値に出力電圧指令値が設定される。
【0090】
その後、マイコン10は出力電圧が一定となるようにDC/DCコンバータ1を定電圧制御により駆動する。負荷チャタリングが解消し、出力電流値が出力低減解除所定電流値(0.4[A])となったとき(時刻t3)に定電流制御に変更し、負荷チャタリング発生前の出力状態に戻る。
【0091】
本実施形態により、負荷オープンの間の出力電圧の上昇を防ぐことができ、負荷が再度接続された際の過電流を防止することができる。また、出力電流値が所定電流となることにより定電流制御へと戻すことで、負荷チャタリングが発生した際の出力低減期間を短くすることができ、光のちらつき低減を実現できる。
【0092】
なお、負荷チャタリングではなく、負荷がオープン故障の場合は、定電圧制御を所定時間維持した場合には動作停止して永久停止させる処理を付加することで対応できることは言うまでもない。
【0093】
また、本実施形態では定電圧制御を行う電圧値を、負荷が急激な変化を示した後の電圧値としたが、負荷が急激な変化を示す直前の値を記憶しておき、その値を定電圧制御の電圧値とすることで、さらに確実に過電流を防止することが出来ることは言うまでもない(請求項10参照)。
【0094】
また、負荷が急激な変化を示す直前の値を定電圧制御の電圧値とすると、負荷の接続/非接続による出力電圧リプルの変化等により微妙なA/D変換のずれが生じ、負荷が接続された際に、出力電圧が負荷の順方向電圧Vfより小さくなり、出力電流が所定電流(0.4[A])まで流れないことが考えられる。その場合には、定電圧制御を行う電圧値を負荷が急激な変化を示す直前の値より所定電圧(2〜3[V])だけ高い値に設定することで、より確実に定電流制御へ戻すことが可能となる。
【0095】
本実施形態では、負荷電圧の傾きを用いて負荷チャタリングを検出しているが、負荷チャタリングが発生した際には出力電圧の上昇と出力電流の下降の両方が発生するため、負荷電圧の傾きが所定の傾き以上かつ負荷電流の傾きが所定の傾き以下(ここでの所定の傾きとはマイナスの値を有する)である場合にのみ、負荷チャタリングが発生したとして、出力電圧指令値を設定することにより、より正確に負荷チャタリングの発生を検出することが可能となる。
【0096】
(実施形態5)
図10に本発明の実施形態5の点灯装置の構成を示す。また、図11に本実施形態のマイコン10の制御フローを示す。実施形態1と同じ構成には同一符号を付けることにより本実施形態での説明を省略する。
【0097】
一般に、スイッチング素子のON時にコイルもしくはトランスにエネルギーを蓄積して、スイッチング素子のOFF時にそれを吐き出すことにより電力変換を行うスイッチング電源(本実施形態ではフライバック回路にて例示しているが、昇圧チョッパや降圧チョッパやCuke回路等のどのようなスイッチング電源でも良い)では、スイッチング素子のOFF時のエネルギー吐き出し完了時に再度スイッチング素子をONするBCM制御(電流臨界モード)を採用することにより、回路効率を向上することができる。
【0098】
そこで、本実施形態では2次側電流吐き出し信号Ieを設けてマイコン10に2次側電流の吐き出しを通知し、マイコン10は2次側電流吐き出し信号Ieを受けてON信号発生部17よりON信号(HF)を出力する。このON信号(HF)と、1次側電流検出値Idと1次側電流指令値Icにより定まるOFFタイミングにより、DC/DCコンバータ1のスイッチング信号をドライブ回路(RSフリップフロップFF)により生成する。本構成によりBCM制御を実現している。
【0099】
なお、1次側電流検出回路2は、スイッチング素子Q1がオンのとき、そのドレイン・ソース間電圧がドレイン電流と略比例することを利用して、オペアンプ等により1次側電流を検出している。また、スイッチング素子Q1がオフのとき、トランスT1の1次側巻線の誘起電圧が消失したときに2次側電流の吐き出しが完了したことを検出して、2次側電流吐き出し信号Ieを出力している。
【0100】
本実施形態と実施形態1で制御フローにて異なる点は、実施形態1では出力電流指令値の低減幅を設定する(A03:出力を低減する)判断を行う際に、負荷電圧の傾きが所定電圧傾き(50[V/ms])以上であるかどうかで判断していたが、本実施形態では、所定電圧傾き以上であり、かつ負荷電流の傾きが所定電流傾き(−50[A/ms])以下の場合に出力電流指令値の低減幅を設定している。負荷電圧と負荷電流の両方で判断することにより、より正確に負荷異常を検出している。
【0101】
また、出力電流指令値を低減しても、実際の出力低減には外部回路により遅れ時間が発生する。そこで、本実施形態では通常は上述のBCM制御を行うが、出力低減(出力電流指令値の低減)に合わせてBCM制御をDCM制御(電流不連続モード)に切り替えている。DCM制御とは、コイルもしくはトランスに蓄積されたエネルギーを吐き出した後、遅れ時間を持ってスイッチング素子をONする制御である。
【0102】
その際のスイッチングの変化の様子を図12に示す。負荷電圧と負荷電流の急変を検出する前は、トランスの2次側電流のゼロクロスに同期して、トランスの1次側電流を通電開始している。これに対して、負荷状態急変の検出後はトランスの2次側電流のゼロクロス後、500[ns]が経過した後にトランスの1次側電流を通電開始している。
【0103】
フライバック回路の出力はスイッチング周波数に比例するため、DCM制御に変更する制御を加えることにより、出力電流指令値を低減するのみの場合よりも急激な出力の低減を実現できる。特に、マイコンを用いて負荷の急変判断や出力の低減を行う場合、マイコンがシリアル制御のためにどうしても遅れ時間が発生する。この遅れ時間と外部回路による遅れ時間が重なると、負荷異常時の動作が遅れてしまうため、本実施形態のように直接的な出力低減を付加することで、より確実な過電流防止を実現することができる。
【0104】
DCM制御においても定電流制御の実現が可能であるので、DCM制御に変更しても、上述の実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0105】
本実施形態では、出力の低減方法として出力電流指令値を低減したが、定電圧制御に切り替える場合に、BCM制御をDCM制御に切り替えても同様の効果を得ることができる。
【0106】
本実施形態ではDCM制御とするときの不連続時間を500[ns]としたが、この時間に限らず同様の効果を得ることができることは言うまでもない。また、出力変化の幅に応じて、この時間を可変とする(変化幅が大きいほど、不連続時間を短くする)ことで、変化幅が大きい場合、つまり早く出力を低減しないといけない場合ほど、出力低減の効果を増大させることができ、より安全な点灯装置を実現することができる。
【0107】
本実施形態では、BCM制御をDCM制御とすることで、急激な出力低減を行っているが、このほかにも1次側電流指令値Icを低減する、1次側電流検出値Idにオフセットを重畳する等の手段によっても急激な出力低減を行えることは言うまでもない。
【0108】
(実施形態6)
図13に本発明の実施形態6に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。実施形態3と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。図示を省略しているが、#04〜#12の処理は、図6と同様である。
【0109】
実施形態3では負荷電圧の傾きが所定電圧傾き(50[V/ms])以上であった場合に、出力電流指令値の低減幅を設定(A03)していたが、本実施形態ではそのほか、負荷電流の傾きが所定電流傾き以上(0.3[A/ms])である場合(F01)と負荷電圧の傾きが所定電圧傾き(−50[V/ms])未満である場合(F02)にも出力電流指令値を低減する処理(A03)へと遷移させる分岐処理を追加している。
【0110】
本実施形態を実施した際に、電源電圧が急激に上昇した場合の出力電圧と出力電流の変化を図14に示す。時刻t1にて定電流制御中に電源電圧が急激に上昇し、それに応じて出力電流が上昇する。Δt(300[μs])の時間が経過した後の時刻t2にて、出力電流がΔI以上変化したことを検出(傾きが0.12[A/ms]以上で変化したことを検出)した場合、出力を低減する(請求項4参照)。本制御により電源電圧が急激に上昇した際の過大な電流の印加による、半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。出力を低減しない場合は破線のような出力電流が流れるが、本実施形態により実線のような出力電流波形とすることができる。
【0111】
また、出力低減(出力電流指令値の低減)の後、所定時間(20[ms])が経過した後に、出力電流指令値を低減前の状態に戻すか否かの判断を行うことにより、ちらつきを感じさせることの無い半導体光源の点灯を実現することが可能となる。
【0112】
次に、本実施形態を実施した場合において、出力のLEDが一部短絡した際の出力電圧と出力電流の変化を図15に示す。出力のLEDの一部短絡により、時刻t1に出力電圧が急激に低下する。それに応じて出力電流が上昇して過大な電流が流れる。Δt(100[μs])の時間が経過した後の時刻t2において、出力電圧が−ΔV(−5[V])よりも多く変化したことを検出(つまり、負荷電圧傾き<−50[V/ms]で変化したことを検出)した場合、出力を低減する(F02)。
【0113】
本制御により負荷の一部が故障して短絡した際に、過大な電流が流れて、残った半導体光源や点灯装置を破壊することを防止できる。出力を低減しない場合は破線のような出力電流が流れるが、本実施形態により実線のような出力電流波形とすることが出来る。
【0114】
また、出力低減(出力電流指令値の低減)の後、所定時間(20[ms])が経過した後に、出力電流指令値を低減前の状態に戻すか否かの判断を行うことにより、ちらつきを感じさせることの無い半導体光源の点灯を実現することが可能となる(C01〜C04)。
【0115】
本実施形態により、電源や負荷の変動による半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。
【0116】
本実施形態では、電源電圧の変化やLEDの一部短絡を出力電流の急上昇(図14)や出力電圧の急低下(図15)にて検出しているが、それぞれの状態をより正確に検出する場合は、以下のような2条件のANDにより検出することで検出精度を向上させることが出来ることは言うまでもない。
【0117】
1)負荷オープン、負荷チャタリングでは、出力電圧が上昇し、出力電流が下降する。この場合、100[μs]あたり電圧変化が5[V]、出力電流は略0(変化幅で言うと−0.7[A]:定格電流値)となる。
【0118】
2)負荷ショート(一部)では、出力電圧が下降し、出力電流が上昇する。この場合、100[μs]あたりの電圧変化が5[V]、出力電流は50[A/ms]程度の傾きで上昇する。
【0119】
3)電源電圧の急上昇では、出力電圧が上昇し(略変化なし)、出力電流が上昇する。この場合、出力電圧の変化は略なし、出力電流は300[μs]あたりの電流変化が120[mA]となる。
【0120】
上記1)〜3)の異常の種類により、出力低減の手段や値を変更しても良いことは言うまでもない。
【0121】
本実施形態においても、通常の定電流制御をBCM制御を行い、負荷急変時にBCM制御をDCM制御に切り替える制御を行うことで、より素早く出力低減の効果を得ることができることは言うまでもない。
【0122】
本実施形態では、瞬間的な変化では応答しないように、所定の判定時間Δtを設けており、判定時間Δtが経過した後のΔIやΔVを平均値を用いて検出しているが、瞬時値を用いて検出しても同様の効果を得ることができることは言うまでもない。また、判定時間Δtの中でより細かく検出してそれぞれの値を記憶し、変化の傾向(連続で上昇している等)により負荷の急激な変化の判断を行っても良い。このように、負荷の変化の傾きの検出は、検出周期や記憶回数に影響されない。
【0123】
本実施形態で例示した傾きは、以下の条件から設定している。従来例(図22)の回路を用いて、トランスの巻き数比が1:4で、一次側のインダクタンス値が数[μH]、駆動周波数が数100[kHz]、電源電圧:6[V]〜20[V]で出力電圧が10[V]〜40[V]の範囲で駆動し、電源及び出力電圧を変更して点灯させ、急激に電源を上昇させた場合の出力電流の上昇傾きの最小値が0.45[A/ms](最大は1.5[A/ms])であった(略一次関数的に上昇)。LEDをちらつきの無いように点灯させた際の出力電流のリプルが70[mA]程度あったことから、瞬間的なリプルの傾きには影響されずに電源変動による傾きは確実に検出できるよう、300[μs]あたりに120[mA]以上(0.45[A/ms]は300[μs]で135[mA]の変化である)の電流変化があった場合には出力低減する制御とした(請求項4)。電源や負荷を変動させ試験したことで、本閾値は妥当であると言える。
【0124】
(実施形態7)
図16に本発明の実施形態7に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例と同じである。また、実施形態3、実施形態6と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。図示を省略しているが、#04〜#12の処理は、図6と同様である。
【0125】
実施形態6では、#14にて負荷電圧が正常か否かを判断していたが、本実施形態では、G01,G02の判定に置き換えている。G01では、負荷電圧の異常が150[ms]連続していた場合に、負荷異常信号出力(#16)から永久停止(#17)へ遷移させる。また、G02では、負荷電流の異常(出力電流が0.2[A]より高く1.0[A]より低ければ正常)が150[ms]連続していた場合に、負荷異常信号出力(#16)から永久停止(#17)へ遷移させる。
【0126】
また、出力電流値が負荷の正常範囲よりも大きな所定電流値(本実施形態では2.0[A])を超えたかどうかを判断する分岐処理(G03)を追加し、所定電流を超えた場合は#15と同様の動作停止処理(G04)させて、時間待ち処理(G05)実施後に、定電流制御を開始するフロー(#03)へと遷移させている。
【0127】
本実施形態を実施した場合に、負荷が急激に短絡した際の出力電圧と出力電流の変化を、図17に示す。負荷の短絡が発生し、出力の低減が間に合わず所定電流値(2.0[A])を超えた電流が流れた場合、即座に動作停止させている。その後30[ms]後に動作開始させるが、負荷の短絡が続いているために再度所定電流値(2.0[A])を超えてしまい、動作停止を繰り返す。このように動作開始と動作停止を間欠的に繰り返すことで、回路構成上、出力電流の低減が間に合わないほどの出力電流の急激な変化時にも、動作停止させることにより半導体光源及び点灯装置の保護を実現している。
【0128】
また、負荷短絡しているため出力電圧は上昇しないため、負荷電圧の異常連続判断(G01)にかかり、負荷短絡より150[ms]経過後には永久停止処理(#16,#17)へと遷移させて回路を安全に動作停止させることが出来る。
【0129】
本実施形態により出力の低減が間に合わない(困難な)ほどの負荷の急激な変化が発生した際にも、瞬間的な動作停止で破壊を防止し、かつ瞬間的に永久停止させてしまうとノイズ等の影響による誤動作も考えられるため間欠的な動作で負荷の異常を確実に検出できる。これにより、出力の低減が間に合わないほどの負荷の急変にも半導体光源と点灯装置を保護することが可能となる。
【0130】
本実施形態では、負荷電流が1.0[A]以上の状態が150[ms]以上となった場合、負荷異常信号出力(#16)から永久停止処理(#17)を行っている。その中で、150[ms]以内ではあるが、負荷電流が定格電流値(0.7[A])の2倍以上の電流値である2.0[A]以上となった場合(通常は0.7[A]となるように定電流制御しているため、通常の負荷変動ではこのような電流値となることは有り得ない)には、動作停止処理(G04)と時間待ち処理(G05)から再動作させることで、半導体光源と点灯装置を保護している。
【0131】
本実施形態では、負荷電流が1.0[A]以上の状態が150[ms]以上で動作停止させているが、それは負荷電圧が10[V]以下の状態が150[ms]以上で動作停止処理をさせていることと略同義であることから、G01もしくはG02のフローのどちらかがあれば同様の制御を実現可能であることは言うまでもない。
【0132】
(実施形態8)
図18に本発明の点灯装置を搭載した前照灯とその前照灯を搭載した車両を示す。5a,5bは車輌の前照灯(すれ違いビーム)に用いる光源負荷であり、20a,20bはその点灯装置である。LOWビームスイッチ電源E1は、車載用のバッテリと前照灯スイッチの直列回路で構成されており、前照灯スイッチをONすると、点灯装置20a,20bにDC電源が供給されて光源負荷5a,5bが点灯する。負荷に異常があれば、点灯装置20a,20bから異常報知信号が出力される。本発明の点灯装置や前照灯を搭載することにより、上述の各実施形態で述べた効果を有する車両を実現することが可能となる。
【0133】
(実施形態9)
図19に、点灯装置をAC電源に接続するためのAC/DC変換部25の一例を示す。入力コンデンサCと、フィルタコイルTf、インダクタLf、コンデンサCfはスイッチングノイズ除去用のローパスフィルタを構成している。ダイオードブリッジDBによりAC電源Vsを全波整流し、コンデンサC2に得られる脈流電圧をインダクタL1、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、平滑コンデンサC3よりなる昇圧チョッパ回路により平滑化してDC電源を得ている。これにより、AC電源に接続可能な点灯装置を実現できる。
【0134】
上述のAC/DC変換部25を用いて実現した、AC電源に接続する場合のLED照明器具(図20)とHID照明器具(図21)を示す。図20のLEDモジュール50は、複数のLEDを直列接続または並列接続したモジュールである。器具本体27はAC/DC変換部25とLED点灯装置20またはHID点灯装置20’を内蔵している。本発明の点灯装置を用いることにより、光源及び点灯装置が破壊することなく安全な照明器具を実現することが可能となる。
【0135】
本実施形態では、AC/DC変換部25を昇圧チョッパとしたが、ダイオードブリッジとコンデンサにより構成してもよい。また、点灯装置のDC/DCコンバータ1をフライバック回路を用いて記載したが、昇圧チョッパや降圧チョッパもしくはオートトランスやCuke回路といった昇降圧チョッパ等、どのような回路構成を用いても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0136】
1 DC/DCコンバータ
3 電圧検出回路
4 電流検出回路
5 半導体光源(LED)
10 マイコン
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDや放電灯のような光源を点灯させる点灯装置の負荷異常時の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの発光効率が向上し、LEDを用いた照明器具が多数量産化されている。特に車載用前照灯の分野では、従来は視認性向上(明るさ向上)のため、ハロゲンランプからHIDランプへ変更する車輌が増加していたが、LEDの発光効率向上を受け、LEDの前照灯を搭載した車輌の量産が始まっている。
【0003】
図22に従来の車載用LED点灯装置の構成を示す。LOWビームスイッチに連動して供給される電源E1からの直流電圧を、負荷を点灯させることの出来る電圧へDC/DCコンバータ1で昇降圧する。DC/DCコンバータ1の出力電圧であるDC電圧を、半導体光源5に印加することで半導体光源5を点灯させる。本点灯装置は半導体光源5を定電流制御により点灯させており、その制御にマイコン10を用いている。半導体光源5の負荷電圧と負荷電流を抵抗R1〜R3により検出し、電圧検出回路3及び電流検出回路4を介してマイコン10に入力する。マイコン10はそれらを平均化処理部11,12により平均化する。ROM部分に有する電流指令値データを出力電流指令値演算部14により呼び出す。さらに、比較演算部15にて平均化電流値Iaと電流指令値とを比較し、同一の値となるように1次側電流指令値Icを演算/出力する。この1次側電流指令値Icと1次側電流検出値IdをコンパレータCPで比較することにより、DC/DCコンバータ1のスイッチング素子Q1を駆動する。
【0004】
DC/DCコンバータ1のスイッチング素子Q1はドライブ回路としてのフリップフロップFFの出力によりオン/オフ駆動される。高周波のON信号HFによりフリップフロップFFがセットされると、スイッチング素子Q1がオンとなり、トランスT1の1次巻線を介して漸増する電流が流れて、トランスT1にエネルギーが蓄積される。スイッチング素子Q1がFETである場合、そのオン抵抗は略オーミック抵抗となるので、オペアンプ等で構成される1次側電流検出回路2によりドレイン電圧を増幅することで、1次側電流検出値Idを検出できる。この1次側電流検出値Idが1次側電流指令値Icに達すると、コンパレータCPの出力が反転し、フリップフロップFFをリセットすることで、スイッチング素子Q1がオフされる。スイッチング素子Q1がオフされると、トランスT1の蓄積エネルギーによる逆起電力が2次巻線に発生し、ダイオードD1を介してコンデンサC1に充電される。
【0005】
以上の回路構成により、DC/DCコンバータ1のスイッチング素子Q1のオン時間をPWM制御することにより、定電流制御を実現している。
【0006】
上記定電流制御に加えて、異常検出部16では、電源検出回路7や電圧検出回路3や電流検出回路4の検出結果から、電源異常や負荷異常を検出し、DC/DCコンバータ1の動作停止および異常信号の出力制御を行っている。
【0007】
なお、マイコン10への電源は制御電源生成部6にて生成され、制御電源生成部6への電源は、LOWビームスイッチ電源E1より得ている。平均化処理部13は電源電圧の読込み値を平均化処理する。
【0008】
半導体光源5の定電流制御と異常判断を行うマイコン10の制御フローを図23に示す。#04〜#12で半導体光源5の定電流制御を実現し、#13〜#17にて電源及び負荷異常の判断を行っている。図中の各ステップの説明を以下に示す。
【0009】
#01では、電源ONし、RESETが解除される。RESET入力は図22では図示を省略している。
#02では、使用する変数・フラグ等の初期化を行う。
【0010】
#03では、LOWビームスイッチがONかどうかを判断する。ONかどうかの判断は、例えば、9[V]<電源電圧<16[V]となっている場合はONと判断する等の手法を用いる。ONでない場合は#04以降の半導体光源5を点灯させるループへ移行しない。
【0011】
#04では、A/D変換により電源電圧を読込む。
#05では、読込み値に過去値を合わせて、電源電圧の平均化を行う。平均化の一例を挙げると、検出値を最新値から3値記憶(読込み時更新)しておき、次の最新値を読込んだとき、過去の3値と足し合わせて4で割る。
【0012】
#06では、A/D変換により負荷電圧を読込む。
#07では、読込み値に過去値を合わせて、上述のような平均化を行うことにより、平均化電圧値Vaを取得する。
【0013】
#08では、マイコン内のROM上にある出力電流指令値を読み出す。
【0014】
#09では、A/D変換により出力電流を読込む。
#10では、読込み値に過去値を合わせて、上述のような平均化を行うことにより、平均化電流値Iaを取得する。
【0015】
#11では、出力電流の電流指令値と平均化電流値Iaを比較演算する。
#12では、比較結果により1次側電流指令値Icを変更する。
【0016】
#13では、電源電圧が正常かどうかを所定電圧範囲内(正常電源下限〜正常電源上限)に入っているかどうかで判断する。ここでは、6[V]〜20[V]の範囲内を正常範囲として記載している。異常と判断すると、動作停止処理(#15)を経て、マイコンRESET後のLOWビームスイッチON判断(#03)へ移行する。
【0017】
#14では、負荷電圧が正常かどうかを所定電圧範囲内(正常出力電圧下限〜正常出力電圧上限)に入っているかどうかで判断する。ここでは、10[V]〜40[V]の範囲内を正常範囲として記載している。異常と判断すると負荷異常信号を出力(#16)して、永久停止処理(#17)を行う。
【0018】
#15では、動作停止処理(DC/DCコンバータを停止させ、マイコン内のデータをクリアする)を行う。
【0019】
#16では、負荷異常を外部に知らせるための負荷異常信号を出力する。具体的には、マイコン10よりHIGH/LOWの信号を出力するか、もしくは、通信機能等を用いて外部へ異常を知らせる。
【0020】
#17では、動作停止処理を行い、無限ループ処理を行う。
本制御により、負荷であるLEDがオープン/ショート故障となった場合は、出力電圧が正常出力電圧上限以上/正常出力電圧下限以下となることにより異常を検出し、動作停止させることが可能である。
【0021】
特許文献1(特開2006−114279号公報)には、動作停止させるのではなく、出力電圧が正常出力電圧上限を超えた場合には出力電流値を低減する技術が開示されている。また、特許文献2(特開2006−172819号公報)には、制御にマイコンを用いた場合の異常検出速度を速めるため、外部割込み処理を用いて出力を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006−114279号公報
【特許文献2】特開2006−172819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
図24に出力オープン異常が発生した際の出力電圧と出力電流の波形を示す。従来例の制御は、出力電圧が所定電圧を超えた場合に動作停止を行うものであり、たとえ順方向電圧Vfのばらつきにより負荷電圧の異なる半導体光源が接続されていた場合でも、負荷電圧正常範囲の上限である正常出力電圧上限まで出力電圧が上昇することで動作停止していた。しかし、出力オープン異常が出力コネクタやLEDチップのボンディングのルーズコンタクトが原因で発生している場合、負荷が一瞬だけオープンとなってすぐに接続する状態(負荷チャタリングと以降記載)が発生することがある。
【0024】
図25に負荷チャタリングが発生した際の出力電圧と出力電流の波形を示す。順方向電圧Vfが大きい半導体光源が接続されている場合は、負荷チャタリングが発生している間に出力電圧が正常出力電圧上限まで上昇して動作停止し、再度負荷が接続された際に再度動作開始している(そのまま停止していても良い)。しかし、順方向電圧Vfが小さい半導体光源が接続されている場合は、負荷チャタリングが発生している間には、出力電圧が正常出力電圧上限に達することなく、再度負荷が接続された際には通常の順方向電圧Vfより遥かに大きな電圧が半導体光源の両端にかかり、過大な出力電流が流れた後に出力電流が安定する。この過大電流は半導体光源および点灯装置に大きな負荷を与えるため、最悪の場合は半導体光源や点灯装置の破壊につながることがある。
【0025】
また、負荷チャタリング以外にも、負荷(全体もしくは一部)が短絡状態となったり、瞬間的に電源電圧が上昇した際などにも出力電流が急激に上昇して半導体光源や点灯装置が壊れることがある。上述の特許文献2(特開2006−172819号公報)にあるように、マイコンの割り込み等を用いて応答を早くしたとしても、正常出力電圧上限や正常出力電流上限まで上昇もしくは下降しないため動作停止に至らしめることは不可能であり、半導体光源や点灯装置が壊れることがある。
【0026】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、負荷電圧に依らず、電源や負荷や接続状態の異常をいち早く検出して出力を低減可能な点灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図22に示すように、DC電源を受けて前記DC電源を負荷5が必要とする所定の出力へ変換するDC/DCコンバータ1と、前記出力の電圧もしくはそれに相当する値を検出する電圧検出部(抵抗R1,R2及び電圧検出回路3)と、前記出力の電流もしくはそれに相当する値を検出する電流検出部(抵抗R3及び電流検出回路4)と、前記電圧検出部及び/又は電流検出部の検出値により、DC/DCコンバータ1を制御する制御部(マイコン10)とから構成される点灯装置において、前記制御部は、第1の所定時間に前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行う(図1のA02,A03)ことを特徴とするものである。
【0028】
請求項2の発明は、請求項1記載の点灯装置において、前記負荷5は半導体光源であり、前記制御部は、前記DC/DCコンバータ1を、出力電流が第1の所定電流値(図2の定電流制御(0.7A)参照)となるように制御することを特徴とする。
【0029】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の点灯装置において、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、100[μs]当たりの出力電圧の変化が5[V]以上となる変化であることを特徴とする(図1のA02)。
【0030】
請求項4の発明は、請求項1または2記載の点灯装置において、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、300[μs]当たりの出力電流の変化が0.12[A]以上となる変化であることを特徴とする(図14のΔt,ΔI参照)。
【0031】
請求項5の発明は、請求項2記載の点灯装置において、前記制御部は、第1の所定電流値より大きな第2の所定電流値以上の電流が第2の所定時間連続した場合、前記DC/DCコンバータを停止する制御を行い(図16のG02、#17)、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、第2の所定電流値より大きな第3の所定電流値が流れることである(図16のG03、G04、図17参照)ことを特徴とする。
【0032】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記制御部は、前記DC/DCコンバータを電流臨界モードにて制御し、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータのスイッチング素子のON時間を維持しながら電流不連続モードへと切り替えることを特徴とする(図11のE02、図12参照)。
【0033】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを停止させることであることを特徴とする(図5のB01、#15参照)。
【0034】
請求項8の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを間欠的に動作させることであることを特徴とする(図16のG03、G04、G05、図17参照)。
【0035】
請求項9の発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の点灯装置において、前記出力の低減とは、第1の所定電流値となるような制御を出力電圧が所定電圧値となるような制御に変更することを特徴とする(図8のA02、D04、D01〜D03、図9のt2〜t3参照)。
【0036】
請求項10の発明は、請求項9記載の点灯装置において、所定電圧値とは、前記出力の変化が発生する前の電圧値であることを特徴とする。
【0037】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の点灯装置において、前記制御部は、出力の低減後、第3の所定時間後に出力電流が所定の判定閾値以上の場合、出力の低減を停止することを特徴とする(図6のC01〜C04、図7のt2〜t4参照)。
【0038】
請求項12の発明は、請求項11に記載の点灯装置において、所定の判定閾値は、負荷電圧の急激な上昇及び/又は負荷電流の急激な降下を検出する直前の電流値より小さく設定されることを特徴とする(図6のC01〜C04、図7のt2〜t4参照)。
【0039】
請求項13の発明は、請求項11または12のいずれかに記載の点灯装置において、第3の所定時間は20[ms]以下であることを特徴とする(図7のt2〜t4参照)。
【0040】
請求項14の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置を備え、車輌の前照灯を点灯させることを特徴とする前照灯点灯装置である。
【0041】
請求項15の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置を搭載した前照灯である。
【0042】
請求項16の発明は、請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置もしくは請求項15記載の前照灯を搭載した車輌である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、所定時間に出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行うものであるから、負荷電圧の状態に依らず、電源や負荷や接続状態の異常をいち早く検出して出力を低減することができ、光源や点灯装置にストレスを与えない、安全な点灯装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態1の動作を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態1の負荷異常時の動作波形図である。
【図3】本発明の実施形態1の動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態1の一変形例の回路図である。
【図5】本発明の実施形態2の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態3の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態3の負荷異常時の動作波形図である。
【図8】本発明の実施形態4の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態4の負荷異常時の動作波形図である。
【図10】本発明の実施形態5の回路図である。
【図11】本発明の実施形態5の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態5の動作波形図である。
【図13】本発明の実施形態6の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態6の電源異常時の動作波形図である。
【図15】本発明の実施形態6の負荷一部短絡時の動作波形図である。
【図16】本発明の実施形態7の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施形態7の負荷短絡時の動作波形図である。
【図18】本発明の実施形態8の前照灯と車両を示す概略構成図である。
【図19】本発明の実施形態9の照明器具に用いるAC/DC変換回路の回路図である。
【図20】本発明の実施形態9の照明器具の一例を示す概略構成図である。
【図21】本発明の実施形態9の照明器具の他の一例を示す概略構成図である。
【図22】従来例の回路図である。
【図23】従来例の動作を示すフローチャートである。
【図24】従来例の負荷開放時の動作波形図である。
【図25】従来例の負荷異常時の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1のマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、制御フローにおいて、従来例(図23)と同じ部分は同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0046】
従来例と異なる点は、従来例では#08にて出力電流指令値を読み出して、平均化電流Iaが出力電流指令値に収束するように、DC/DCコンバータ1を制御していたが、本実施形態では負荷電圧の傾きを検出し、負荷電圧の傾きが50[V/ms]以上となった場合、その出力電流指令値を低減させる制御フローを追加した点である。本制御を実現するために変更したフローについて以下に詳細を示す。
【0047】
A01では、従来例の#08の出力電流指令値演算において、マイコン内のROMに記憶していた出力電流指令値を読み出していたところを、本実施形態では、読み出した後に、その出力電流指令値より後述のA03にて設定された電流指令値低減幅を減算して出力電流指令値として設定する。
【0048】
A02では、過去の出力電圧を記憶しておき、出力電圧の傾きを計算し、出力電圧の傾きが50[V/ms]以上の場合は、電流指令値低減幅を設定する処理A03へと遷移する。
A03では、電流指令値低減幅を設定する。
【0049】
本実施形態を実施した場合において、負荷チャタリングが発生したときの出力電圧と出力電流の波形を図2に示す。順方向電圧VfのばらつきによるVf:大とVf:小のそれぞれの出力の様子を示す。時刻t1にて負荷チャタリング(負荷オープン)が発生し、出力電流が0となる。これにより出力電圧が上昇し、Δt(100[μs])後の時刻t2にΔV(5[V])だけ変化したことを検出する(ΔV/Δt≧50[V/ms])。
【0050】
この検出により、出力電流指令値が0.7[A]から0.4[A]へと変更される。1次側電流指令値の変更は、電流指令値と実際の電流値との比較によりなされるため、出力電流指令値が下がると、1次側電流指令値の変化(上昇)幅も低減される。これにより、出力電圧の上昇を破線(従来例)から実線(本実施形態)のような上昇に抑えることが可能となる。これにより、時刻t3にて負荷チャタリングが解消し、半導体光源が接続された際には、出力電圧の上昇が抑えられているために突入電流を抑えることが可能となり、半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。本実施形態では、出力電流指令値が低減されているために、負荷チャタリング解消時の突入電流(出力電流のオーバーシュート)もさらに低減可能である。
【0051】
低減後出力電流は、その後、調光点灯を続けると、光束が下がった調光状態が続いてしまい、前照灯に利用した場合は走行安全性に影響を及ぼす。このため、所定時間で元に戻したほうが良いことは言うまでも無く、元に戻すまでに負荷オープン状態が続いている(負荷チャタリングでない)場合は、その他の判定手段(負荷電圧が正常出力電圧上限:40[V]を超える、出力電流値が正常出力電流下限:0.2[A]以下であるなど)を用いて動作停止させておく必要があることは言うまでもない。
【0052】
本実施形態において、Δt(100[μs])の観測時間は、瞬間的な電圧変化では出力低減しないように誤動作防止のために設けている。
【0053】
本実施形態では、出力電圧の傾きにて電流指令値の低減開始を判断したが、出力電流の傾きにて判断しても良い。例えば、出力電流の傾きが−50[A/ms]以下か否かを判断すれば、100[μs]で略0となることを検出可能である。さらに、出力電圧の傾きの判断結果と、出力電流の傾きの判断結果を共に求めて、両方のANDをとることで判断しても同様の効果を得ることができ、かつANDをとることにより不要な出力低減開始を防止することができることは言うまでもない。
【0054】
また、図3の(a)、(b)、(c)に示すように、電流指令値の低減幅を出力電圧(または出力電流)の傾きが大きいほど大きくすることで、半導体光源や点灯装置の破壊防止の効果と出力低減によるちらつきを防止する効果のバランスをとることが出来る。
【0055】
なお、本実施形態では負荷を半導体光源5として記載したが、図4に示すような高輝度放電灯Laであっても、出力電力の指令値を低減することで、同様の効果を得ることができる。出力電圧のばらつきが大きい程、本発明の効果が期待できるからである。
【0056】
放電灯点灯装置の詳細は示さないが、矩形波点灯を実現するためのフルブリッジインバータ31と高輝度放電灯Laを始動させるための高圧パルスを発生させるためのイグナイタ32を追加している。また、定電力制御を行うため、マイコン10のランプ電力指令値演算部18から出力されるランプ電力指令値を平均化電圧値Vaで除算することでランプ電流目標値を算出し、平均化電流値Iaとの差分により出力電流指令値Icを演算して、平均化電流値Iaがランプ電流目標値に収束するように定電流制御することで、ランプ電力の定電力制御を実現している。
【0057】
本実施形態で例示した傾きの判定値(閾値)は、以下の条件から設定している。従来例(図22)の回路を用いて、トランスT1の巻き数比が1:4で、1次側のインダクタンス値が数[μH]、駆動周波数が数100[kHz]、電源電圧:6[V]〜20[V]で出力電圧が10[V]〜40[V]の範囲で駆動した場合において、電源及び出力電圧を変更して点灯させ、急激に出力を開放させた場合の出力電圧の上昇傾きの最小値が56[V/ms](略一次関数的に上昇)であった。出力電圧が上昇すると、過大電流が流れるため、出力電圧の上昇は数[V]以内にする必要があり、LEDをちらつきが無いように点灯させた際の出力電圧のリプルは1.3[V]程度であったことから、出力電圧の上昇を1.3[V]より大きく、10[V]より小さくする必要があり、一例として5[V]とした。その際の判定時間は56[V/ms]の傾きより計算して、100[μs]で5[V]以上の傾き変化があった場合は出力低減をする制御とした。電源や負荷を変動させて試験したことで、本閾値は妥当であると言える。
【0058】
出力電流の閾値は、上記と同様に100[μs]程度の時間で判断する必要があり、100[μs]で定格電流の数100m[A]は略0[A]となるために、出力電流の傾きが−50[A/ms]以下か否かを判断するという閾値の設定は、妥当なものであると言える。
【0059】
本実施形態ではグラウンドに対して正の電圧をLEDに与えることで点灯しているが、負荷のLEDのアノードとカソードを逆転させ、負の電圧をLEDに供給することでも同様に点灯することが可能である。この場合、出力電圧や出力電流の傾きの符号と高/低の判断が逆となることは言うまでもない。
【0060】
(実施形態2)
図5に本発明の実施形態2に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、従来例(図23)と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0061】
従来例と異なる点は、負荷電圧の傾きを検出して、負荷電圧の傾きが50[V/ms]以上となった場合、回路動作を停止させるための処理(#15)へと遷移させている点である。回路動作を停止させた後、再度、#03から動作を開始することで負荷チャタリングの場合は再点灯を実現している。負荷チャタリングではなく、本当に負荷がオープン故障していた場合は再点灯の際にも負荷電圧が上昇して行き、正常出力電圧上限を超えるために、#14で検出されて永久停止を実現できる。一旦動作停止させて再動作させることにより出力電流の急増を防止し、負荷チャタリングによる半導体光源や点灯装置への負荷を低減する効果をより確実なものとすることができ、素早い再動作によりちらつきも低減することができる。
【0062】
本制御を実現するために、B01の処理を追加して、負荷電圧の傾きが50[V/ms]以上の場合は#15の動作停止から再動作のフロー(#03)へ遷移させている。
【0063】
本実施形態では、出力低減開始の判断を、出力電圧の傾きにて判断したが、出力電流の傾き(−50[A/ms]以下か否か)にて判断したり、両方のANDをとることで判断しても、同様の効果を得ることができ、かつANDをとることにより不要な出力低減開始を防止することができることは実施形態1と同様である。
【0064】
また、電流指令値の低減幅を出力電圧や出力電流の傾きが大きいほど大きくすることで、半導体光源や点灯装置の破壊防止の効果と出力低減によるちらつきを防止する効果のバランスをとることが出来ることは言うまでもない(図3(b),(c)参照)。
【0065】
なお、本実施形態では負荷を半導体光源5として記載したが、図4に示すような高輝度放電灯Laであっても、出力電力の指令値を低減することで、同様の効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態では出力の低減方法として出力電流指令値そのものを低減させているが、電流検出値にオフセットを重畳しても同様の効果を得ることができることは言うまでもない。他の実施形態でも同様である。
【0067】
本実施形態では、負荷電圧の傾きをマイコン内にて全て演算する方式を例示したが、以下のような方式で検出することで、より高速な応答が出来ることは言うまでもない。例えば、100[μs]前に読み込んだ出力電圧値をD/A変換により出力する(例えば20[μs]周期)。差分が所定電圧(5[V])より大きい場合は、判定結果をLOWからHIGHに切り替える差分検出回路に、上記D/A変換された過去値と電圧検出回路3の現在値を入力する。上記差分検出回路の出力を、マイコンの外部割込み回路もしくはタイマ出力強制停止等のポートへ入力する。この割り込みによる出力電流指令値の低減や、タイマ出力停止による出力の強制停止により出力を低減する。このようなマイコン外部の回路を用いて高速化する方式は、他の実施形態でも同様に適用可能である。
【0068】
(実施形態3)
図6に本発明の実施形態3に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、実施形態1と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0069】
実施形態1と異なる点は、負荷電圧の傾きにより電流指令値を低減した後、電流指令値低減後の時間を計測し、所定時間(20[ms])経過後の出力電流値を計測し、出力電流値が出力低減解除所定電流値(0.2[A])以上であれば、出力電流指令値の低減を停止して低減前の出力電流指令値に変更する点である。
【0070】
本制御を実現するため、実施形態1の制御フローの後に以下のフローを追加している。
C01では、電流指令値低減後の時間を計測する。
【0071】
C02では、電流指令値低減後の経過時間が20[ms]以上かどうかを計測し、もし経過時間が20[ms]以上の場合は出力電流指令値を電流指令値を低減する前の値に戻すかどうかを判断する処理(C03)へと遷移させる。20[ms]未満の場合は通常の定電流制御(#04〜)へ遷移させる。
【0072】
C03では、出力電流値が0.2[A]以上かどうかを判断する。出力電流値が0.2[A]以上の場合は、出力低減を行ったのは負荷のオープン故障ではなく負荷チャタリングであったと判断し(負荷のオープン故障の場合は出力電流値は0を維持し続けるため)、出力電流指令値の低減を解除するフロー(C04)へと遷移させる。0.2[A]未満の場合は、負荷のオープン故障と判断して永久停止のループ(#16,#17)へと遷移させる。
C04では、電流指令値の低減を解除する。
【0073】
本実施形態を実施した際に負荷チャタリングが発生した場合の出力電圧と出力電流の変化を図7に示す。順方向電圧VfのばらつきによるVf:大とVf:小のそれぞれの出力の様子を示す。時刻t1にて負荷チャタリング(負荷のオープン故障)が発生し、出力電流が0となる。これにより出力電圧が上昇し、Δt(100[μs])後の時刻t2にΔV(5[V])だけ変化したことを検出する(ΔV/Δt≧50[V/ms])。この検出により、出力電流指令値が0.7[A]から0.4[A]へと変更される。
【0074】
1次側電流指令値の変更は、電流指令値と実際の電流値との比較によりなされるため、出力電流指令値が下がると、1次側電流指令値の変化(上昇)幅も低減される。これにより、出力電圧の上昇を、破線(従来例)から実線(本実施形態)のような上昇に抑えることが可能となる。これにより、時刻t3にて負荷チャタリングが解消し、半導体光源が接続された際には、出力電圧の上昇が抑えられているために突入電流を抑えることが可能となり、半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。本実施形態では、出力電流指令値が低減されているために、負荷チャタリング解消時の突入電流(出力電流のオーバーシュート)もさらに低減可能である。
【0075】
その後、出力低減(出力電流指令値の低減:時刻t2)から所定時間(20[ms])が経過した後(残光特性調査)(時刻t4)に出力電流値が0.2[A]以上であることを検出して、出力電流指令値を、低減前の0.7[A]にもどすことで、負荷チャタリング発生前の状態に戻している。
【0076】
出力電流指令値の低減後、その状態を続けると光束が下がった調光状態が続いてしまい、前照灯の場合は走行安全性に影響を及ぼす。本実施形態では、人の目には調光状態となったことを感じさせないために、上記所定時間(20[ms])が経過した時点で出力低減前の状態に戻すことにより、ちらつきの防止を実現している。
【0077】
また、負荷異常の場合には20[ms]後の判断結果に応じて動作停止させることにより、速やかな動作停止も実現できる。一般に、負荷チャタリングは数[ms]で再接続するため本制御の時間もしくはより短い時間(例えば10[ms])で判断することで、負荷チャタリングと負荷のオープン故障を区別して判断することが出来る。
【0078】
残光等の影響は考えられるが、一般に50[Hz]以上の周波数で点滅させると人の目にはちらつきは感じられない。負荷チャタリングは数[ms]で再接続すると考えられるが、想定外に長い場合も極力動作停止をさせないために、本実施形態ではちらつきを感じさせない範囲で最も長い20[ms]を電流指令値低減の所定時間として用いている。
【0079】
本実施形態では、電流指令値低減時間を20[ms]として判断し、所定電流値(0.2[A])未満の場合は動作停止させているが、負荷オープン故障の場合も負荷電圧が正常範囲内(10[V]〜40[V])であれば点灯装置が破壊することも無いため、動作停止させずに(C03のNOの場合の遷移先を#04とすることで)連続動作させても同様の効果を得ることができることは言うまでもなく、より時間をかけて判断することで、負荷オープンであることを、より正確に判断することが出来る。
【0080】
本実施形態では、所定時間経過後より出力電流値が出力低減解除所定電流値以上か否かにより出力電流指令値低減の解除を判断したが、負荷がオープン故障の場合は出力電流が上昇することは無いため、所定時間を待たずに、出力電流値が所定電流値以上か否かをもって判断しても良いことは言うまでも無く、調光点灯状態をより短くすることで、よりちらつきの少ない点灯装置を実現することが出来る。
【0081】
(実施形態4)
図8に本発明の実施形態4に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。また、実施形態1と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。
【0082】
実施形態1と異なる点は、実施形態1では、負荷電圧の傾きが所定の傾き(50[V/ms])以上となった場合に出力電流指令値を低減していたのに対して、本実施形態では、負荷電圧の傾きが所定の傾き以上となった場合に定電流制御に代えて、定電圧制御に切り替えるものである。
【0083】
本制御を実現するため、実施形態1の制御フローを以下のように変更している。
D01では、電流指令値と検出電流値を比較演算して、1次側電流指令値変更を行う処理(#11、#12)の前に、電圧指令値が設定されているか否かを判断する。電圧指令値が設定されている場合は、定電圧制御を行うフローD02,D03へと遷移させる。
【0084】
D02では、出力電圧指令値が設定されているため、電圧指令値と検出電圧値を比較して比較演算を行う。
D03では、比較演算により1次側電流指令値Icを変更する。D02とD03にて定電圧制御を実現している。
【0085】
D04では、負荷電圧の傾きが所定傾き以上であった場合に、実施形態1であれば出力電流指令値の低減幅を設定していたが、それを出力電圧指令値の設定に変更している。D04で出力電圧指令値が設定されると、D01の判定でD02,D03へと遷移し、定電圧制御となる。
【0086】
D05では、負荷チャタリングにより低下した出力電流が、出力低減解除所定電流値(本実施形態では0.4[A])以上かどうかを判断する。出力低減解除所定電流値以上となった場合には、D06に遷移し、D04で設定した出力電圧指令値を解除する。
【0087】
D06では、出力電圧指令値を解除する。出力電圧指令値を解除された場合は、D01の判定にて、#11,#12へと遷移し、定電流制御を再開する。
【0088】
本実施形態を実施した際に負荷チャタリングが発生した場合の出力電圧と出力電流の変化を図9に示す。順方向電圧(Vf)のばらつきによるVf:大とVf:小のそれぞれの出力の様子を示す。
【0089】
時刻t1にて負荷チャタリング(負荷オープン)が発生し、出力電流が0となる。これにより出力電圧が上昇し、Δt(100[μs])後の時刻t2にΔV(5[V])だけ変化したことを検出する(ΔV/Δt≧50[V/ms])。この検出により、負荷電圧の上昇を検出した時点の電圧値に出力電圧指令値が設定される。
【0090】
その後、マイコン10は出力電圧が一定となるようにDC/DCコンバータ1を定電圧制御により駆動する。負荷チャタリングが解消し、出力電流値が出力低減解除所定電流値(0.4[A])となったとき(時刻t3)に定電流制御に変更し、負荷チャタリング発生前の出力状態に戻る。
【0091】
本実施形態により、負荷オープンの間の出力電圧の上昇を防ぐことができ、負荷が再度接続された際の過電流を防止することができる。また、出力電流値が所定電流となることにより定電流制御へと戻すことで、負荷チャタリングが発生した際の出力低減期間を短くすることができ、光のちらつき低減を実現できる。
【0092】
なお、負荷チャタリングではなく、負荷がオープン故障の場合は、定電圧制御を所定時間維持した場合には動作停止して永久停止させる処理を付加することで対応できることは言うまでもない。
【0093】
また、本実施形態では定電圧制御を行う電圧値を、負荷が急激な変化を示した後の電圧値としたが、負荷が急激な変化を示す直前の値を記憶しておき、その値を定電圧制御の電圧値とすることで、さらに確実に過電流を防止することが出来ることは言うまでもない(請求項10参照)。
【0094】
また、負荷が急激な変化を示す直前の値を定電圧制御の電圧値とすると、負荷の接続/非接続による出力電圧リプルの変化等により微妙なA/D変換のずれが生じ、負荷が接続された際に、出力電圧が負荷の順方向電圧Vfより小さくなり、出力電流が所定電流(0.4[A])まで流れないことが考えられる。その場合には、定電圧制御を行う電圧値を負荷が急激な変化を示す直前の値より所定電圧(2〜3[V])だけ高い値に設定することで、より確実に定電流制御へ戻すことが可能となる。
【0095】
本実施形態では、負荷電圧の傾きを用いて負荷チャタリングを検出しているが、負荷チャタリングが発生した際には出力電圧の上昇と出力電流の下降の両方が発生するため、負荷電圧の傾きが所定の傾き以上かつ負荷電流の傾きが所定の傾き以下(ここでの所定の傾きとはマイナスの値を有する)である場合にのみ、負荷チャタリングが発生したとして、出力電圧指令値を設定することにより、より正確に負荷チャタリングの発生を検出することが可能となる。
【0096】
(実施形態5)
図10に本発明の実施形態5の点灯装置の構成を示す。また、図11に本実施形態のマイコン10の制御フローを示す。実施形態1と同じ構成には同一符号を付けることにより本実施形態での説明を省略する。
【0097】
一般に、スイッチング素子のON時にコイルもしくはトランスにエネルギーを蓄積して、スイッチング素子のOFF時にそれを吐き出すことにより電力変換を行うスイッチング電源(本実施形態ではフライバック回路にて例示しているが、昇圧チョッパや降圧チョッパやCuke回路等のどのようなスイッチング電源でも良い)では、スイッチング素子のOFF時のエネルギー吐き出し完了時に再度スイッチング素子をONするBCM制御(電流臨界モード)を採用することにより、回路効率を向上することができる。
【0098】
そこで、本実施形態では2次側電流吐き出し信号Ieを設けてマイコン10に2次側電流の吐き出しを通知し、マイコン10は2次側電流吐き出し信号Ieを受けてON信号発生部17よりON信号(HF)を出力する。このON信号(HF)と、1次側電流検出値Idと1次側電流指令値Icにより定まるOFFタイミングにより、DC/DCコンバータ1のスイッチング信号をドライブ回路(RSフリップフロップFF)により生成する。本構成によりBCM制御を実現している。
【0099】
なお、1次側電流検出回路2は、スイッチング素子Q1がオンのとき、そのドレイン・ソース間電圧がドレイン電流と略比例することを利用して、オペアンプ等により1次側電流を検出している。また、スイッチング素子Q1がオフのとき、トランスT1の1次側巻線の誘起電圧が消失したときに2次側電流の吐き出しが完了したことを検出して、2次側電流吐き出し信号Ieを出力している。
【0100】
本実施形態と実施形態1で制御フローにて異なる点は、実施形態1では出力電流指令値の低減幅を設定する(A03:出力を低減する)判断を行う際に、負荷電圧の傾きが所定電圧傾き(50[V/ms])以上であるかどうかで判断していたが、本実施形態では、所定電圧傾き以上であり、かつ負荷電流の傾きが所定電流傾き(−50[A/ms])以下の場合に出力電流指令値の低減幅を設定している。負荷電圧と負荷電流の両方で判断することにより、より正確に負荷異常を検出している。
【0101】
また、出力電流指令値を低減しても、実際の出力低減には外部回路により遅れ時間が発生する。そこで、本実施形態では通常は上述のBCM制御を行うが、出力低減(出力電流指令値の低減)に合わせてBCM制御をDCM制御(電流不連続モード)に切り替えている。DCM制御とは、コイルもしくはトランスに蓄積されたエネルギーを吐き出した後、遅れ時間を持ってスイッチング素子をONする制御である。
【0102】
その際のスイッチングの変化の様子を図12に示す。負荷電圧と負荷電流の急変を検出する前は、トランスの2次側電流のゼロクロスに同期して、トランスの1次側電流を通電開始している。これに対して、負荷状態急変の検出後はトランスの2次側電流のゼロクロス後、500[ns]が経過した後にトランスの1次側電流を通電開始している。
【0103】
フライバック回路の出力はスイッチング周波数に比例するため、DCM制御に変更する制御を加えることにより、出力電流指令値を低減するのみの場合よりも急激な出力の低減を実現できる。特に、マイコンを用いて負荷の急変判断や出力の低減を行う場合、マイコンがシリアル制御のためにどうしても遅れ時間が発生する。この遅れ時間と外部回路による遅れ時間が重なると、負荷異常時の動作が遅れてしまうため、本実施形態のように直接的な出力低減を付加することで、より確実な過電流防止を実現することができる。
【0104】
DCM制御においても定電流制御の実現が可能であるので、DCM制御に変更しても、上述の実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0105】
本実施形態では、出力の低減方法として出力電流指令値を低減したが、定電圧制御に切り替える場合に、BCM制御をDCM制御に切り替えても同様の効果を得ることができる。
【0106】
本実施形態ではDCM制御とするときの不連続時間を500[ns]としたが、この時間に限らず同様の効果を得ることができることは言うまでもない。また、出力変化の幅に応じて、この時間を可変とする(変化幅が大きいほど、不連続時間を短くする)ことで、変化幅が大きい場合、つまり早く出力を低減しないといけない場合ほど、出力低減の効果を増大させることができ、より安全な点灯装置を実現することができる。
【0107】
本実施形態では、BCM制御をDCM制御とすることで、急激な出力低減を行っているが、このほかにも1次側電流指令値Icを低減する、1次側電流検出値Idにオフセットを重畳する等の手段によっても急激な出力低減を行えることは言うまでもない。
【0108】
(実施形態6)
図13に本発明の実施形態6に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例(図22)と同じである。実施形態3と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。図示を省略しているが、#04〜#12の処理は、図6と同様である。
【0109】
実施形態3では負荷電圧の傾きが所定電圧傾き(50[V/ms])以上であった場合に、出力電流指令値の低減幅を設定(A03)していたが、本実施形態ではそのほか、負荷電流の傾きが所定電流傾き以上(0.3[A/ms])である場合(F01)と負荷電圧の傾きが所定電圧傾き(−50[V/ms])未満である場合(F02)にも出力電流指令値を低減する処理(A03)へと遷移させる分岐処理を追加している。
【0110】
本実施形態を実施した際に、電源電圧が急激に上昇した場合の出力電圧と出力電流の変化を図14に示す。時刻t1にて定電流制御中に電源電圧が急激に上昇し、それに応じて出力電流が上昇する。Δt(300[μs])の時間が経過した後の時刻t2にて、出力電流がΔI以上変化したことを検出(傾きが0.12[A/ms]以上で変化したことを検出)した場合、出力を低減する(請求項4参照)。本制御により電源電圧が急激に上昇した際の過大な電流の印加による、半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。出力を低減しない場合は破線のような出力電流が流れるが、本実施形態により実線のような出力電流波形とすることができる。
【0111】
また、出力低減(出力電流指令値の低減)の後、所定時間(20[ms])が経過した後に、出力電流指令値を低減前の状態に戻すか否かの判断を行うことにより、ちらつきを感じさせることの無い半導体光源の点灯を実現することが可能となる。
【0112】
次に、本実施形態を実施した場合において、出力のLEDが一部短絡した際の出力電圧と出力電流の変化を図15に示す。出力のLEDの一部短絡により、時刻t1に出力電圧が急激に低下する。それに応じて出力電流が上昇して過大な電流が流れる。Δt(100[μs])の時間が経過した後の時刻t2において、出力電圧が−ΔV(−5[V])よりも多く変化したことを検出(つまり、負荷電圧傾き<−50[V/ms]で変化したことを検出)した場合、出力を低減する(F02)。
【0113】
本制御により負荷の一部が故障して短絡した際に、過大な電流が流れて、残った半導体光源や点灯装置を破壊することを防止できる。出力を低減しない場合は破線のような出力電流が流れるが、本実施形態により実線のような出力電流波形とすることが出来る。
【0114】
また、出力低減(出力電流指令値の低減)の後、所定時間(20[ms])が経過した後に、出力電流指令値を低減前の状態に戻すか否かの判断を行うことにより、ちらつきを感じさせることの無い半導体光源の点灯を実現することが可能となる(C01〜C04)。
【0115】
本実施形態により、電源や負荷の変動による半導体光源や点灯装置の破壊を防止することが可能となる。
【0116】
本実施形態では、電源電圧の変化やLEDの一部短絡を出力電流の急上昇(図14)や出力電圧の急低下(図15)にて検出しているが、それぞれの状態をより正確に検出する場合は、以下のような2条件のANDにより検出することで検出精度を向上させることが出来ることは言うまでもない。
【0117】
1)負荷オープン、負荷チャタリングでは、出力電圧が上昇し、出力電流が下降する。この場合、100[μs]あたり電圧変化が5[V]、出力電流は略0(変化幅で言うと−0.7[A]:定格電流値)となる。
【0118】
2)負荷ショート(一部)では、出力電圧が下降し、出力電流が上昇する。この場合、100[μs]あたりの電圧変化が5[V]、出力電流は50[A/ms]程度の傾きで上昇する。
【0119】
3)電源電圧の急上昇では、出力電圧が上昇し(略変化なし)、出力電流が上昇する。この場合、出力電圧の変化は略なし、出力電流は300[μs]あたりの電流変化が120[mA]となる。
【0120】
上記1)〜3)の異常の種類により、出力低減の手段や値を変更しても良いことは言うまでもない。
【0121】
本実施形態においても、通常の定電流制御をBCM制御を行い、負荷急変時にBCM制御をDCM制御に切り替える制御を行うことで、より素早く出力低減の効果を得ることができることは言うまでもない。
【0122】
本実施形態では、瞬間的な変化では応答しないように、所定の判定時間Δtを設けており、判定時間Δtが経過した後のΔIやΔVを平均値を用いて検出しているが、瞬時値を用いて検出しても同様の効果を得ることができることは言うまでもない。また、判定時間Δtの中でより細かく検出してそれぞれの値を記憶し、変化の傾向(連続で上昇している等)により負荷の急激な変化の判断を行っても良い。このように、負荷の変化の傾きの検出は、検出周期や記憶回数に影響されない。
【0123】
本実施形態で例示した傾きは、以下の条件から設定している。従来例(図22)の回路を用いて、トランスの巻き数比が1:4で、一次側のインダクタンス値が数[μH]、駆動周波数が数100[kHz]、電源電圧:6[V]〜20[V]で出力電圧が10[V]〜40[V]の範囲で駆動し、電源及び出力電圧を変更して点灯させ、急激に電源を上昇させた場合の出力電流の上昇傾きの最小値が0.45[A/ms](最大は1.5[A/ms])であった(略一次関数的に上昇)。LEDをちらつきの無いように点灯させた際の出力電流のリプルが70[mA]程度あったことから、瞬間的なリプルの傾きには影響されずに電源変動による傾きは確実に検出できるよう、300[μs]あたりに120[mA]以上(0.45[A/ms]は300[μs]で135[mA]の変化である)の電流変化があった場合には出力低減する制御とした(請求項4)。電源や負荷を変動させ試験したことで、本閾値は妥当であると言える。
【0124】
(実施形態7)
図16に本発明の実施形態7に用いるマイコンの制御フローを示す。点灯装置の構成は従来例と同じである。また、実施形態3、実施形態6と同じ制御フローには同一符号を付けることにより、本実施形態での説明を省略する。図示を省略しているが、#04〜#12の処理は、図6と同様である。
【0125】
実施形態6では、#14にて負荷電圧が正常か否かを判断していたが、本実施形態では、G01,G02の判定に置き換えている。G01では、負荷電圧の異常が150[ms]連続していた場合に、負荷異常信号出力(#16)から永久停止(#17)へ遷移させる。また、G02では、負荷電流の異常(出力電流が0.2[A]より高く1.0[A]より低ければ正常)が150[ms]連続していた場合に、負荷異常信号出力(#16)から永久停止(#17)へ遷移させる。
【0126】
また、出力電流値が負荷の正常範囲よりも大きな所定電流値(本実施形態では2.0[A])を超えたかどうかを判断する分岐処理(G03)を追加し、所定電流を超えた場合は#15と同様の動作停止処理(G04)させて、時間待ち処理(G05)実施後に、定電流制御を開始するフロー(#03)へと遷移させている。
【0127】
本実施形態を実施した場合に、負荷が急激に短絡した際の出力電圧と出力電流の変化を、図17に示す。負荷の短絡が発生し、出力の低減が間に合わず所定電流値(2.0[A])を超えた電流が流れた場合、即座に動作停止させている。その後30[ms]後に動作開始させるが、負荷の短絡が続いているために再度所定電流値(2.0[A])を超えてしまい、動作停止を繰り返す。このように動作開始と動作停止を間欠的に繰り返すことで、回路構成上、出力電流の低減が間に合わないほどの出力電流の急激な変化時にも、動作停止させることにより半導体光源及び点灯装置の保護を実現している。
【0128】
また、負荷短絡しているため出力電圧は上昇しないため、負荷電圧の異常連続判断(G01)にかかり、負荷短絡より150[ms]経過後には永久停止処理(#16,#17)へと遷移させて回路を安全に動作停止させることが出来る。
【0129】
本実施形態により出力の低減が間に合わない(困難な)ほどの負荷の急激な変化が発生した際にも、瞬間的な動作停止で破壊を防止し、かつ瞬間的に永久停止させてしまうとノイズ等の影響による誤動作も考えられるため間欠的な動作で負荷の異常を確実に検出できる。これにより、出力の低減が間に合わないほどの負荷の急変にも半導体光源と点灯装置を保護することが可能となる。
【0130】
本実施形態では、負荷電流が1.0[A]以上の状態が150[ms]以上となった場合、負荷異常信号出力(#16)から永久停止処理(#17)を行っている。その中で、150[ms]以内ではあるが、負荷電流が定格電流値(0.7[A])の2倍以上の電流値である2.0[A]以上となった場合(通常は0.7[A]となるように定電流制御しているため、通常の負荷変動ではこのような電流値となることは有り得ない)には、動作停止処理(G04)と時間待ち処理(G05)から再動作させることで、半導体光源と点灯装置を保護している。
【0131】
本実施形態では、負荷電流が1.0[A]以上の状態が150[ms]以上で動作停止させているが、それは負荷電圧が10[V]以下の状態が150[ms]以上で動作停止処理をさせていることと略同義であることから、G01もしくはG02のフローのどちらかがあれば同様の制御を実現可能であることは言うまでもない。
【0132】
(実施形態8)
図18に本発明の点灯装置を搭載した前照灯とその前照灯を搭載した車両を示す。5a,5bは車輌の前照灯(すれ違いビーム)に用いる光源負荷であり、20a,20bはその点灯装置である。LOWビームスイッチ電源E1は、車載用のバッテリと前照灯スイッチの直列回路で構成されており、前照灯スイッチをONすると、点灯装置20a,20bにDC電源が供給されて光源負荷5a,5bが点灯する。負荷に異常があれば、点灯装置20a,20bから異常報知信号が出力される。本発明の点灯装置や前照灯を搭載することにより、上述の各実施形態で述べた効果を有する車両を実現することが可能となる。
【0133】
(実施形態9)
図19に、点灯装置をAC電源に接続するためのAC/DC変換部25の一例を示す。入力コンデンサCと、フィルタコイルTf、インダクタLf、コンデンサCfはスイッチングノイズ除去用のローパスフィルタを構成している。ダイオードブリッジDBによりAC電源Vsを全波整流し、コンデンサC2に得られる脈流電圧をインダクタL1、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、平滑コンデンサC3よりなる昇圧チョッパ回路により平滑化してDC電源を得ている。これにより、AC電源に接続可能な点灯装置を実現できる。
【0134】
上述のAC/DC変換部25を用いて実現した、AC電源に接続する場合のLED照明器具(図20)とHID照明器具(図21)を示す。図20のLEDモジュール50は、複数のLEDを直列接続または並列接続したモジュールである。器具本体27はAC/DC変換部25とLED点灯装置20またはHID点灯装置20’を内蔵している。本発明の点灯装置を用いることにより、光源及び点灯装置が破壊することなく安全な照明器具を実現することが可能となる。
【0135】
本実施形態では、AC/DC変換部25を昇圧チョッパとしたが、ダイオードブリッジとコンデンサにより構成してもよい。また、点灯装置のDC/DCコンバータ1をフライバック回路を用いて記載したが、昇圧チョッパや降圧チョッパもしくはオートトランスやCuke回路といった昇降圧チョッパ等、どのような回路構成を用いても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0136】
1 DC/DCコンバータ
3 電圧検出回路
4 電流検出回路
5 半導体光源(LED)
10 マイコン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC電源を受けて前記DC電源を負荷が必要とする所定の出力へ変換するDC/DCコンバータと、
前記出力の電圧もしくはそれに相当する値を検出する電圧検出部と、
前記出力の電流もしくはそれに相当する値を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部及び/又は電流検出部の検出値により、DC/DCコンバータを制御する制御部とから構成される点灯装置において、
前記制御部は、第1の所定時間に前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行うことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記負荷は半導体光源であり、前記制御部は、前記DC/DCコンバータを、出力電流が第1の所定電流値となるように制御することを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、100[μs]当たりの出力電圧の変化が5[V]以上となる変化であることを特徴とする請求項1または2記載の点灯装置。
【請求項4】
前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、300[μs]当たりの出力電流の変化が0.12[A]以上となる変化であることを特徴とする請求項1または2記載の点灯装置。
【請求項5】
前記制御部は、第1の所定電流値より大きな第2の所定電流値以上の電流が第2の所定時間連続した場合、前記DC/DCコンバータを停止する制御を行い、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、第2の所定電流値より大きな第3の所定電流値が流れることであることを特徴とする請求項2記載の点灯装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータを電流臨界モードにて制御し、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータのスイッチング素子のON時間を維持しながら電流不連続モードへと切り替えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項7】
前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを停止させることであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項8】
前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを間欠的に動作させることであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項9】
前記出力の低減とは、第1の所定電流値となるような制御を出力電圧が所定電圧値となるような制御に変更することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項10】
所定電圧値とは、前記出力の変化が発生する前の電圧値であることを特徴とする請求項9記載の点灯装置。
【請求項11】
前記制御部は、出力の低減後、第3の所定時間後に出力電流が所定の判定閾値以上の場合、出力の低減を停止することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項12】
所定の判定閾値は、負荷電圧の急激な上昇及び/又は負荷電流の急激な降下を検出する直前の電流値より小さく設定されることを特徴とする請求項11に記載の点灯装置。
【請求項13】
第3の所定時間は20[ms]以下であることを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置を備え、車輌の前照灯を点灯させることを特徴とする前照灯点灯装置。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置を搭載した前照灯。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置もしくは請求項15記載の前照灯を搭載した車輌。
【請求項1】
DC電源を受けて前記DC電源を負荷が必要とする所定の出力へ変換するDC/DCコンバータと、
前記出力の電圧もしくはそれに相当する値を検出する電圧検出部と、
前記出力の電流もしくはそれに相当する値を検出する電流検出部と、
前記電圧検出部及び/又は電流検出部の検出値により、DC/DCコンバータを制御する制御部とから構成される点灯装置において、
前記制御部は、第1の所定時間に前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化を検出したとき、出力の低減を行うことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
前記負荷は半導体光源であり、前記制御部は、前記DC/DCコンバータを、出力電流が第1の所定電流値となるように制御することを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、100[μs]当たりの出力電圧の変化が5[V]以上となる変化であることを特徴とする請求項1または2記載の点灯装置。
【請求項4】
前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、300[μs]当たりの出力電流の変化が0.12[A]以上となる変化であることを特徴とする請求項1または2記載の点灯装置。
【請求項5】
前記制御部は、第1の所定電流値より大きな第2の所定電流値以上の電流が第2の所定時間連続した場合、前記DC/DCコンバータを停止する制御を行い、前記出力の変化が所定幅以上となる負荷状態の急激な変化とは、第2の所定電流値より大きな第3の所定電流値が流れることであることを特徴とする請求項2記載の点灯装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータを電流臨界モードにて制御し、前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータのスイッチング素子のON時間を維持しながら電流不連続モードへと切り替えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項7】
前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを停止させることであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項8】
前記出力の低減とは、前記DC/DCコンバータを間欠的に動作させることであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項9】
前記出力の低減とは、第1の所定電流値となるような制御を出力電圧が所定電圧値となるような制御に変更することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項10】
所定電圧値とは、前記出力の変化が発生する前の電圧値であることを特徴とする請求項9記載の点灯装置。
【請求項11】
前記制御部は、出力の低減後、第3の所定時間後に出力電流が所定の判定閾値以上の場合、出力の低減を停止することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項12】
所定の判定閾値は、負荷電圧の急激な上昇及び/又は負荷電流の急激な降下を検出する直前の電流値より小さく設定されることを特徴とする請求項11に記載の点灯装置。
【請求項13】
第3の所定時間は20[ms]以下であることを特徴とする請求項11または12のいずれかに記載の点灯装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置を備え、車輌の前照灯を点灯させることを特徴とする前照灯点灯装置。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置を搭載した前照灯。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の点灯装置もしくは請求項14記載の前照灯点灯装置もしくは請求項15記載の前照灯を搭載した車輌。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−100666(P2011−100666A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255370(P2009−255370)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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