説明

無接触給電設備の2次側受電回路

【課題】本発明は、投入する機器または装置が多くても1次側から給電可能にできる無接触給電設備の2次側受電回路を提供することを目的とする。
【解決手段】1次側誘導線路14の高周波電流の周波数の2倍周波数の同期パルスPに同期して、スイッチ手段57ヘ駆動パルスPを出力し、この駆動パルスPがオンのときにスイッチ手段57を接続状態とし、オフのときに開放状態とすることにより、出力コンデンサ56の出力電圧が基準電圧となるように出力電圧フィードバック制御を実行するPWMモジュール63を備え、このモジュール63は、1次側誘導線路14への給電開始時には、駆動パルスPの幅を出力可能な駆動パルスのパルス幅の1/2として、スイッチ手段57へ出力し、出力コンデンサ56の出力電圧Vが基準電圧まで上昇する基準時間内に、基準電圧まで上昇しないと強制的に、出力電圧フィードバック制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無接触給電設備の2次側受電回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無接触給電設備の2次側受電回路の一例が、たとえば特許文献1に開示されている。
従来の無接触給電設備の2次側受電回路では、周波数が、例えば10kHzの高周波電流を流す1次側誘導線路に対向して、1次側誘導線路より起電力が誘起されるピックアップコイルを設け、このピックアップコイルに並列に、ピックアップコイルとともに1次側誘導線路の周波数に共振する共振回路を形成する共振コンデンサを接続し、この共振回路に整流回路(全波整流回路)を接続し、定電圧制御回路を介して、消費電力が変動する負荷(例えば、自走台車の走行用電動モータを制御するインバータ)へ給電している。
【0003】
前記定電圧制御回路は、チョークコイルと、ダイオードと、出力コンデンサ(電圧コンデンサ)と、整流回路の出力端間を接続状態または開放状態とするスイッチ手段(例えば、出力調整用トランジスタ)から構成され、前記スイッチ手段を制御する制御回路が設けられている。
この制御回路は、出力電圧(負荷の電圧)を計測し、前記走行用電動モータを停止するなどにより負荷が減少して、出力電圧(出力コンデンサの両端電圧)が上昇し、出力電圧が予め設定された基準電圧を超えると、前記スイッチ手段を接続状態として整流回路から負荷への給電を停止するとともに出力コンデンサへの充電を阻止し、このとき出力コンデンサから負荷へ給電されることから出力電圧を下げ、前記出力電圧が基準電圧より低下するとスイッチ手段を開放状態として、整流回路から負荷へ給電するとともに出力コンデンサを充電して出力電圧を基準電圧に戻す制御を行っている。
【0004】
以下に、上記2次側受電回路の構成における作用を説明する。
周波数が、例えば10kHzの高周波電流が1次側誘導線路に供給されると、この1次側誘導線路に発生する磁束により、ピックアップコイルに誘導起電力が誘起され、この誘導起電力によりピックアップコイルにおいて発生した電流は整流回路で整流され、スイッチ手段が開放状態のとき、定電圧制御回路を介して負荷へ供給される。また負荷が減少して、出力電圧が上昇し、出力電圧が予め設定された基準電圧を超えると、スイッチ手段が接続状態とされ、このとき出力コンデンサより負荷へ給電されることにより出力電圧が下げられ、また出力電圧が予め設定された基準電圧より低くなると、スイッチ手段が開放状態とされ、出力電圧は基準電圧に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−178104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の無接触給電設備の2次側受電回路では、出力電圧を監視して基準電圧になるようにスイッチング制御している為に、1次側誘導線路に給電が開始される初期状態では、出力電圧は0Vあるいは0Vに近いことから、スイッチは、連続して開放状態とされ、100%の負荷を要求する状態(全負荷状態)となる。
したがって、このような全負荷状態の機器または装置の台数が多いと、電源装置の定格出力電力を超えて過負荷状態となり、電源装置の保護機能が働いて誘導線路への給電が遮断されてしまう。したがって、給電開始時には、投入する機器または装置を大幅に減らしている。
【0007】
そこで、本発明は、投入する機器または装置が多くても1次側から給電可能にできる無接触給電設備の2次側受電回路を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、複数台の機器または装置にそれぞれ備えられ、電源装置より高周波電流が供給される1次側誘導線路より無接触で受電するための無接触給電設備の2次側受電回路であって、
前記1次側誘導線路に対向して前記誘導線路より起電力が誘起されるピックアップコイルと、前記ピックアップコイルに並列に接続され、このピックアップコイルと前記高周波電流の周波数に共振する共振回路を形成する共振コンデンサと、前記共振回路の共振コンデンサに並列に接続された全波整流回路と、前記全波整流回路の出力端子間に並列に接続された、スイッチ、および消費電力が変動する負荷に電力を供給する出力コンデンサと、前記スイッチを接続状態または開放状態とするコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記全波整流回路の一方の出力端子から出力される全波の電圧信号に同期して、前記高周波電流の周波数の複数倍の周波数の同期パルスを出力するパルス発生回路と、前記スイッチヘ駆動パルスを出力し、この駆動パルスがオンのときにスイッチを接続状態とし、オフのときにスイッチを開放状態とすることにより、前記出力コンデンサの出力電圧を予め設定された基準電圧となるように出力電圧フィードバック制御を実行するパルス幅制御回路を備え、前記パルス幅制御回路は、前記電源装置の出力定格電力を前記機器または装置の台数で除算して前記1次側誘導線路への給電開始時に1台当たりに受電可能な受電電力を求め、この受電電力以内に抑制可能な前記駆動パルスのパルス幅を、出力可能な駆動パルスのパルス幅より求め、前記1次側誘導線路へ給電が開始されると、前記パルス発生回路から入力した同期パルスに同期して前記抑制可能な駆動パルスを前記スイッチへ出力するスイッチング制御を実行し、前記出力コンデンサの出力電圧が予め設定された基準電圧となると、前記出力電圧フィードバック制御を実行することを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、1次側誘導線路へ給電が開始されると、“1台当たりに受電可能な受電電力”と“出力可能な駆動パルスのパルス幅W”とより求めたパルス幅mの受電電力を抑制可能な駆動パルスが出力される。すなわち、duty=m/Wで駆動パルスが出力される。
前記駆動パルスのパルス幅が0(duty=0)のとき、すなわち駆動パルスがオフで、スイッチが連続して開放状態であり、出力コンデンサが連続して充電されているとき、2次側は、1次側に対して全負荷状態となる。これに対して、パルス幅がmのとき、駆動パルスがオンとなると、スイッチが接続状態となり、逆に出力コンデンサが充電されなくなることから、1次側に対して(1−m/W)の負荷状態となる。このように、パルス幅mを小さくすると、全負荷状態に近づくことになる。この(1−m/W)の負荷状態のとき、1台当たりに受電可能な受電電力に抑えられるように、パルス幅mが設定される。このとき、1次側誘導線路へ高周波電流を給電する電源装置は、給電開始時に、全機器または装置が同時に負荷を取る事態となっても、電源装置が過負荷となることがなく、給電が停止する事態が避けられ、給電対象の機器または装置が多くても、給電を続けられる。
そして、出力コンデンサが充電され、出力電圧が基準電圧となると、出力電圧フィードバック制御が実行される。出力電圧が基準電圧となると、以後は、消費された電力のみを、1次側誘導線路より給電すればよくなり、各機器または装置が出力電圧フィードバック制御を実行しても電源装置が過負荷となり、給電が停止する事態は発生しない。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記パルス幅制御回路は、前記スイッチング制御を実行して、前記出力コンデンサの出力電圧が前記基準電圧まで上昇する予定時間が経過すると、強制的に、前記出力電圧フィードバック制御を実行することを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、1次側に対して(1−m/W)の負荷状態で出力コンデンサに充電され、予定時間が経過すると、出力電圧フィードバック制御を実行する。このとき、出力コンデンサの充電が遅れて、予定時間内に基準電圧まで上昇していないと、出力電圧を上げるために、スイッチを連続して開放状態とするよう、パルス幅=0となり、全負荷をとる状態となる。通常、他の機器または装置は予定時間内に基準電圧まで上昇しており、消費された電力のみを受電している状態なので、1台が全負荷をとる状態となっても、電源装置が過負荷となり、給電が停止する事態は避けられる。
【0012】
また請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明であって、前記パルス幅制御回路は、前記出力電圧フィードバック制御を実行しているとき、前記出力コンデンサの出力電圧が、前記基準電圧より低く予め設定された設定電圧以下まで低下すると、再び、前記スイッチング制御を実行することを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、出力コンデンサの出力電圧が、設定電圧以下まで低下すると、電源装置から給電できない事態となっていると判断され、抑制駆動パルスの幅の駆動パルスが出力され、1次側に対して(1−m/W)の負荷状態とされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無接触給電設備の2次側受電回路は、1次側誘導線路へ給電が開始されたとき、各機器または装置が受電する電力は、1台当たりに受電可能な受電電力に抑えられることにより、1次側誘導線路へ高周波電流を給電する電源装置は、給電開始時に全ての機器または装置が受電を開始し、負荷状態となっても、電源装置が過負荷となり、給電が停止する事態を避けることができ、給電対象の機器または装置が多くても、給電を続けることができる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における無接触給電設備の回路構成図である。
【図2】同無接触給電設備の電源装置の発振周波数の時間変化を示す図である。
【図3】同無接触給電設備の電源装置の発振周波数と移動体に供給される電力との関係を示す図である。
【図4】同無接触給電設備の2次側受電回路の回路構成図である。
【図5】同無接触給電設備の2次側受電回路のPWMモジュールの制御ブロック図である。
【図6】同無接触給電設備の2次側受電回路の各部の特性図であり、コンデンサ出力電圧が基準電圧より低いときの駆動パルスの出力を示す。
【図7】同無接触給電設備の2次側受電回路の各部の特性図であり、コンデンサ出力電圧が基準電圧より高いときの駆動パルスの出力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における無接触給電設備の回路構成図である。
この無接触給電設備では、電源装置12より誘導線路14へ高周波電流を給電し、この高周波電流が給電される誘導線路14より複数台の搬送台車(機器または装置の一例)17にそれぞれ無接触で給電している。前記誘導線路14は搬送台車17の走行レール(移動経路の一例;図示せず)に沿って連続して敷設(配置)されており、誘導線路14にはコンデンサ15が直列に接続され、さらに誘導線路14全体のインダクタンス値を調整する可変インダクタ16が直列に接続されている。この可変インダクタ16は、誘導線路14の線路長が所定の長さに満たないとき、すなわち誘導線路14のインダクタンス値が所定のインダクタンス値に満たないときに接続される。またこの誘導線路14と電源装置12との間に高周波トランス13が介装されており、この高周波トランス13は、誘導線路14の距離(長さ)が長いときに出力電圧を増幅することができるようにされ、例えば出力電圧を2倍まで増幅することができるように設置されている。
【0017】
前記搬送台車17には、誘導線路14に対向して誘導線路14より起電力が誘起されるピックアップコイル51が備えられ、このピックアップコイル51に受電ユニット27が接続されており、この受電ユニット27に、消費電力が変動する負荷(例えば、搬送台車17の走行用電動モータを制御するインバータ)58が接続されている。
【0018】
詳細は後述するが、受電ユニット27は、負荷58への出力電圧を一定に制御する定電圧制御の機能を有しており、そのために、図4に示すように、受電ユニット27の終端に出力コンデンサ(電圧コンデンサ)56を備えており、出力コンデンサ56の電圧をフィードバックすることにより、負荷58への出力電圧を一定に制御している。またピックアップコイル51には、このピックアップコイル51と共に誘導線路14に流れる高周波電流の周波数に共振する共振回路50を形成する共振コンデンサ52が並列に接続されており、この共振回路50の共振周波数は9.74kHzとなるように設定されている。
【0019】
<電源装置>
電源装置12は、商用電源11に接続されており、商用電源11から供給される交流電流を直流電流に変換する整流回路21と、起動・停止回路22と、整流回路21より起動・停止回路22を介して入力した直流電圧を降圧する降圧回路23と、降圧回路23から出力された直流電流を任意の発振周波数の高周波電流に変換し、誘導線路14に供給するインバータ24と、コントローラ40を備えている。コントローラ40は、それぞれCPUからなる、メインコントローラ41、降圧コントローラ42、および周波数・電流コントローラ43から構成されている(詳細は後述する)。また電源装置12には、誘導線路14に流れる電流が過電流かどうか(過負荷かどうか)を検出する保護装置(図示せず)が備えられ、保護装置が過負荷を検出すると、メインコントローラ41により誘導線路14へ供給する電流が遮断される(後述する)。
【0020】
「起動・停止回路22」
前記起動・停止回路22は、整流回路21と降圧回路23との間に直列に接続される突入抵抗31およびコイル(リアクトル)32と、前記突入抵抗31を短絡する起動コンダクタ33と、突入抵抗31およびコイル32の接続点と整流回路21との間に直列に接続されている放電抵抗34および停止コンダクタ35から構成されている。
起動コンダクタ33および停止コンダクタ35は、後述するメインコントローラ41により接続状態/開放状態に制御される。すなわち、起動コンダクタ33は、電源装置12の起動時には開放状態とされて突入抵抗31によって突入電流が抑制され、起動から所定時間後には接続状態とされて突入抵抗31が短絡される。また停止コンダクタ35は運転時には開放状態とされ、停止時に接続状態とされ、放電抵抗34によって電源装置12に蓄積されている電荷が消費される。
【0021】
「降圧回路23」
前記降圧回路23は、誘導線路14の負荷に応じてインバータ24へ供給する直流電圧を降圧する降圧手段であり、降圧コントローラ42により駆動・制御される。降圧コントローラ42には、後述するメインコントローラ41より、整流回路21より入力した直流電圧をそのまま降圧せずに出力する第1電圧モード指令、または予め設定された、誘導線路14により通常消費される電力を供給可能な所定電圧まで降圧して省エネルギーを実現する第2電圧モード指令が入力され、降圧コントローラ42は指令されたモード指令にしたがって降圧回路23を駆動し、インバータ24へは、第1電圧モード指令のとき、整流回路21より入力した直流電圧がそのまま供給され、第2電圧モード指令のとき、降圧された所定電圧が供給される。
【0022】
「インバータ24」
前記インバータ24は、フルブリッジに組まれたスイッチング素子38から構成されており、各スイッチング素子38は、周波数・電流コントローラ43より出力されるパルス信号により駆動され、降圧回路23から入力する直流電流を高周波の交流電流に変換して誘導線路14に出力電流として給電する。
【0023】
周波数・電流コントローラ43には、インバータ24に入力される直流電圧および直流電流が入力され、高周波トランス13による出力電圧の昇圧比が入力され、さらに後述するメインコントローラ41からインバータ24の発振周波数の目標周波数が入力されている。周波数・電流コントローラ43は、給電開始時には、インバータ24の発振周波数をメインコントローラ41から入力される目標周波数に制御するように、同時に(給電開始時および通常運転時)インバータ24の入力電圧・電流・昇圧比より誘導線路14に流れている電流値を演算して予め設定された一定電流となるデューティ比(パルス幅)を求めて定電流制御を実行できるように、各スイッチング素子38を駆動している。また求めたデューティ比をメインコントローラ41へ出力している。
【0024】
「メインコントローラ41」
メインコントローラ41は、以下の機能を有している。
【0025】
(a)起動・停止機能
外部から給電開始指令(電源装置12を普通に起動する指令)、または省エネ運転から復帰する省エネ復帰指令、または間欠運転をするときにオフ状態からオン状態とする間欠運転・給電開始指令を入力すると、起動・停止回路22の停止コンダクタ35を開放状態にし、続いて起動コンダクタ33を接続状態とする。また停止時には、停止コンダクタ35を接続状態にし、続いて起動コンダクタ33を開放状態とする。
また商用電源11から整流回路21に入力される電圧を監視しており、この電圧が、瞬時停電により急激に降下すると、あるいは上記保護装置が過負荷を検出すると、起動・停止回路22の停止コンダクタ35を接続状態にして電源を遮断し、続いて起動コンダクタ33を開放状態とする。また瞬時停電から電圧が復旧すると、起動・停止回路22の停止コンダクタ35を開放状態にし、続いて起動コンダクタ33を接続状態とする。
【0026】
(b)降圧機能
通常は上記第2電圧モード指令を降圧コントローラ42へ出力している。また周波数・電流コントローラ43より入力するデューティ比が、最大許容デューティ比(例えば、80%)に近づいているかどうかを確認し、確認すると第1電圧モード指令を降圧コントローラ42に出力する。また入力したデューティ比が最大許容デューティ比より遠のくと、再び第2電圧モード指令を降圧コントローラ42へ出力する。
【0027】
(c)周波数制御機能
給電開始時(給電開始指令または省エネ復帰指令または間欠運転・給電開始指令の入力時、あるいは瞬停からの復帰時)に、周波数・電流コントローラ43に、インバータ24の発振周波数の目標周波数を、共振周波数からずらした低い周波数、例えば9.00kHz(所定周波数の一例)から共振周波数の9.74kHzまでスイープさせて出力する。
すなわち、給電開始時に、共振回路50により全ての搬送台車17が取り出すことができる総電力を、電源装置12が供給できる定格電力内に抑えることができるように、共振周波数からずらした低い周波数としており、誘導線路14への給電により各搬送台車17の受電ユニット27の出力電圧が基準電圧まで上昇可能な所定時間の経過後、前記所定周波数の9.00kHzから共振周波数の9.74kHzへとスイープしている。
【0028】
具体的には、図2に示すように、インバータ24の発振周波数を、誘導線路14への給電開始から、9.00kHzを2秒間(前記所定時間の一例)維持し、続いて、9.10kHzを0.2秒間維持し、続いて、9.20kHzを0.2秒間維持し、続いて、9.30kHzを0.2秒間維持し、続いて、9.40kHzを0.2秒間維持し、続いて、9.50kHzを0.2秒間維持し、続いて、9.60kHzを0.2秒間維持し、続いて、9.70kHzを0.2秒間維持し、その後は9.74kHz(共振周波数)の出力を維持するように、周波数・電流コントローラ43に目標周波数を出力している。
【0029】
インバータ24は、周波数・電流コントローラ43およびメインコントローラ42の作用により、一定電流制御を行いながら、電源装置12から誘導線路14に給電を開始する際に、9.00kHzから9.74kHzまで発振周波数をスイープさせる動作を実行している。
【0030】
<電源装置12の作用>
上記電源装置12の構成における作用を説明する。
なお、電源装置12から誘導線路14に給電を開始する前の初期状態において、誘導線路14が敷設された走行レール上に20台の搬送台車17が存在するものとする。また電源装置12にAC200Vの商用電源11が接続され、起動コンダクタ33は開放状態とされ、停止コンダクタ35は接続状態とされているとする。また各搬送台車17の定格電力{共振回路50が電源装置12による発振周波数との共振状態で、誘導線路14により全負荷状態(100%の負荷状態)で取り出すことができる電力}を、1800Wとしている。また、電源装置12の定格電力(供給できる電力)を30kWとしており、この電源装置12の定格電力は、各搬送台車17が通常に動作しているときに必要となる走行モータ等の負荷58の消費電力をまかなう電力より大きく、全ての搬送台車17が、電源装置12による発振周波数との共振状態で、全負荷状態で取りだす総電力(36kW=1800W×20台)より小さいものとしている。よって、電源装置12は、それほど電力の容量が大きなものとする必要がなくなり、適正な電力の容量で運用可能とされている。
【0031】
まず、電源装置12に商用電源11が接続されると、整流回路21により、商用電源11の交流電流は直流電流に変換されて起動・停止回路22へ出力される。このとき、起動コンダクタ33は、開放状態とされ、停止コンダクタ35は接続状態とされていることにより、起動時の突入電流は、突入抵抗31により抑制(制限)され、放電抵抗34で消費される。所定時間後には、起動コンダクタ43は接続状態とされて突入抵抗31は短絡され、続いて停止コンダクタ35は開放状態とされ、突入電流が解消した安定した直流電流が降圧回路23へ出力される。このとき、整流回路21による整流後の直流電圧は、DC270Vとなる。
【0032】
そして、インバータ24による発振周波数の目標周波数が、9.00kHzとされ、所定時間(2秒)後、9.00kHzから9.74kHzまでスイープされる。
発振周波数が9.00kHzのとき、搬送台車17の共振回路50では取り出すことができる電流が低減される。図3に示すように、9.74kHzでは、定格電力(1800W)まで取り出すことができるのに対して、9.00kHzでは、9.74kHzの共振周波数からずれているために1200Wしか取り出すことはできない(電力の供給を受ける効率が低下している)。これは電源装置12から見て、全ての搬送台車17へ供給する総電力が小さくなっていることになる。したがって、全20台の搬送台車17が全負荷状態となっても、総電力は24kW(=1200W×20台)にしかならず、電源装置12の定格電力(30kW)より低く、過負荷状態となって出力電流が遮断される恐れはない。
【0033】
インバータ24の発振周波数が9.74kHzとなると、搬送台車17が全負荷状態となることができるが、前記所定時間(2秒)後には、各搬送台車17の出力電圧は、基準電圧に上昇しているので、正常な搬送台車17は、負荷58が消費した電力だけを受電する状態となっており、全ての搬送台車17が一斉に全負荷状態で電力を取り出すような事態となることはなく、また基準電圧への上昇が遅れている搬送台車17があり全負荷状態で電力をとろうとしても、全てのうちの一部の搬送台車17に限られることにより、電源装置12が過負荷状態となることはなく、電源装置12から誘導線路14への給電が安定して行われる。
【0034】
停止時は、停止コンダクタ35が接続状態とされ、続いて起動コンダクタ33が開放状態とされ、停止コンダクタ35が接続状態とされることにより、放電抵抗34により電源装置12に蓄積されている電荷が消費される。
【0035】
なお、9.00kHzよりもインバータ24の発振周波数を小さくすると、搬送台車17が取り出すことができる電力が、さらに小さくなるため、受電ユニット27の出力電圧が基準電圧に上昇するまでの時間が長くなる。
【0036】
<搬送台車の受電ユニット27> 図4に示すように、受電ユニット27は、前記共振コンデンサ52と、この共振コンデンサ52に接続される整流回路(全波整流回路)53とを備えている。
さらに受電ユニット27は、定電圧制御回路として、前記整流回路53のプラス側出力端子(一方の出力端子)53aに一端が接続されているチョークコイル54と、該チョークコイル54の他端にアノードが接続されているダイオード55と、一端がダイオード55のカソードに接続され、他端が整流回路53のマイナス側出力端子(他方の出力端子)53bに接続されている前記出力コンデンサ(電圧コンデンサ)56と、一端が、チョークコイル54の他端およびダイオード55のアノードの接続点に接続され、他端が整流回路53のマイナス側出力端子53bに接続されているスイッチ手段(例えば、出力調整用トランジスタ)57と、スイッチ手段57を接続状態(スイッチ手段がオン状態)または開放状態(スイッチ手段がオフ状態)とするコントローラ(制御装置)61とを備えている。前記出力コンデンサ56の両端に接続された回路出力端子59a,59b間に、前記負荷58が接続される。
なお、各搬送台車17の受電ユニット27と1次側の電源装置12との間には、信号の取り合いはなく、それぞれ独立して駆動される。
【0037】
前記コントローラ61には、制御信号として、全波整流回路53のプラス側出力端子53aに出力される整流直後の電圧であるチョークコイル54の全波の入力電圧(全波の入力電圧信号)Vが入力され、フィードバック信号として回路の出力電圧(出力コンデンサ56の両端電圧、負荷58の電圧)Vが入力され、コントローラ61は、スイッチ手段57へ駆動パルスPを出力している。このコントローラ61は、ゲートパルス発振器(パルス発生回路の一例)62とPWMモジュール(パルス幅制御回路の一例)63と制御電源装置64から構成されている。
【0038】
「制御電源装置64」
制御電源装置64は、出力電圧(出力コンデンサ56の両端電圧、負荷58の電圧)Vを入力電源して、制御電源(所定電圧V)をゲートパルス発振器62とPWMモジュール63へ供給する。前記出力電圧(出力コンデンサ56の両端電圧、負荷58の電圧)Vは、起動時は0Vであり、出力電圧Vが所定の電圧(例えば、15V)まで上昇すると、所定電圧Vで制御電源を供給可能な構成とされている。
【0039】
「ゲートパルス発振器62」
前記ゲートパルス発振器62は、制御電源装置64より制御電源が供給されると、全波整流回路53のプラス側出力端子53aに出力されるチョークコイル54の全波の入力電圧Vに同期して、誘導線路14の高周波電流の周波数fの2倍(複数倍の一例)の周波数(2f)の同期パルス(トリガ)を出力するパルス発生回路であり、図6に示すチョークコイル54の入力電圧Vがゼロ電圧となる毎に同期パルスPを形成しスイッチトリガーとしてPWMモジュール63へ出力している。入力電圧Vは、全波整流回路53の出力電圧であるから、周波数2fの連続波形となっており、周波数2fの同期パルスPが出力される。
【0040】
「PWMモジュール63」
前記PWMモジュール63には、出力電圧Vと、ゲートパルス発振器62から出力された同期パルスPが入力されており、PWMモジュール63は、制御電源装置64から制御電源が供給されると、スイッチ手段57へ駆動パルスPを出力し、駆動パルスPがオンのときスイッチ手段57を接続状態とし、オフのときスイッチ手段57を開放状態とするパルス幅制御回路であり、図5に示すように、構成されている。
【0041】
図5に示すように、PWMモジュール63は、供給されている制御電源(所定電圧V)を確認するための第1比較器71と、出力電圧Vが基準電圧(例えば、310V)以上かどうかを確認するための第2比較器72と、出力電圧Vが設定電圧(例えば、100V)以上かどうかを確認するための第3比較器73と、第1比較器71の出力信号、すなわち制御電源が供給されたこと(起動されたこと)により出力される起動信号によりカウントを開始する、予め設定された設定時間(予定時間、例えば5秒)のタイマー74を備えている。
【0042】
またタイマー74がカウントアップしたことにより出力される信号(経過信号)がオン、または前記起動信号がオン且つ第2比較器72の出力信号がオンのときにセットされ、前記起動信号がオフとなるとリセットされるRSフリップフロップ75が設けられ、RSフリップフロップ75がセットされているときに動作する(励磁される)リレイRY1が設けられている。
また前記起動信号がオン、且つリレイRY1の出力信号がオフ(b接点は接続状態)、且つ第2比較器72の出力信号がオフのときにより動作する(励磁される)リレイRY2と、リレイRY1の出力信号(a接点)がオンで第3比較器73の出力信号がオフのときにより動作する(励磁される)リレイRY3が設けられている。
【0043】
上記ブロックの構成により、リレイRY1は、誘導線路14へ高周波電流Iの供給が開始されて(起動信号がオン)、出力電圧Vが基準電圧(例えば、310V)以上となったとき(第2比較器72の出力信号がオン)、または設定時間(予定時間、例えば5秒)が経過したとき(タイマー74の出力信号がオン)に動作し、初期状態から通常状態に移行したときに動作する。またリレイRY2は、誘導線路14へ高周波電流Iの供給が開始されて(起動信号がオン)、出力電圧Vが基準電圧(例えば、310V)未満のとき(第2比較器72の出力信号がオフ)に、すなわち初期状態のときに動作し、通常状態に移行すると(リレイRY1が動作すると)、不動作となる。またリレイRY3は、リレイRY1が動作しているとき(通常状態のとき)、出力電圧Vが設定電圧(例えば、100V)未満まで異常に低下すると動作する。
【0044】
また基準電圧を目標電圧とし出力電圧フィードバック制御を実行するパルス幅演算部77と、スイッチ手段57へパルスを出力するパルス駆動部78が設けられている。
前記パルス幅演算部77には、出力電圧Vと同期パルスPが入力されており、パルス幅演算部77は、図6に示すように、ゲートパルス発振器62から入力した周波数2fの同期パルスPに同期してPWM基準波(三角波)を形成し、すなわちチョークコイル54の入力電圧Vに同期して入力電圧Vのピークをピーク位置とする三角波を形成し、この三角波と交差する、出力電圧Vの基準電圧(一点鎖線で示す)を予め設定し、チョークコイル54の入力電圧Vがピークから下降に転じた位置を、駆動パルスPをオンするタイミングとし、基準電圧より三角波(電圧)が低くなっている時間を駆動パルスPのパルス幅としている。なお、出力電圧Vが前記基準電圧と一致するとき、基準電圧より三角波の電圧が低くなった三角波の時間を、駆動パルスPの「基準パルス幅」としており、負荷58が定格負荷のとき、この基準パルス幅の駆動パルスPが出力されると、出力電圧Vが基準電圧に維持される。
【0045】
そして、前記三角波に、入力した出力電圧Vを交差させることにより駆動パルスPのパルス幅を得ている。図6に示すように、出力電圧Vが基準電圧より低いとき駆動パルスPのパルス幅を「基準パルス幅」より短くし、図7に示すように、基準電圧より高いとき駆動パルスPのパルス幅を「基準パルス幅」より長くし、デューティ(duty)比を求めてパルス駆動部78へ出力している。
【0046】
パルス駆動部78には、同期パルスPが入力され、さらにリレイRY2の出力信号(a接点)がオンのとき(初期状態のとき)、またはリレイRY3の出力信号(a接点)がオンのとき(出力電圧Vが異常に低下したとき)、予め設定されたデューティ比(以下、固定デューティ比と称す、例えば、50%)が入力され、リレイRY1の出力信号(a接点)がオンのとき、パルス幅演算部77から出力されたデューティ比が入力されている。パルス駆動部78は、入力したデューティ比に基づいて駆動パルスPを形成し、駆動パルスPの中間点を全波の入力電圧Vのゼロクロス位置としてスイッチ手段57へ出力し、パルス幅制御を実行している。
【0047】
上記固定デューティ比は、次のように求めている。
まず、電源装置12の定格電力を、給電対象の搬送台車(機器または装置の一例)17の台数で除算して、誘導線路14への給電開始時に、1台当たりに受電可能な受電電力を求める。
次に、前記駆動パルスPのパルス幅が0のとき、すなわち駆動パルスPがオフで、スイッチ手段57が連続して開放状態で、よって出力コンデンサ56が連続して充電されているとき、2次側は、1次側(電源装置12)に対して全負荷状態(100%の負荷状態)となり、これに対して、パルス幅がmのとき{出力可能な駆動パルスの(最大)パルス幅をWとする}、駆動パルスPを出力すると、スイッチ手段17が接続状態となり出力コンデンサ56は充電されなくことから、1次側に対して(1−m/W)の負荷状態となる(パルス幅mを小さくすると、全負荷状態に近づく)。
(1−m/W)の負荷状態のとき、上記求めた“1台当たりに受電可能な受電電力”に抑えられように、パルス幅mを設定する。
この受電電力以内に抑制可能な駆動パルスPのパルス幅mを、出力可能な駆動パルスのパルス幅Wより除算することにより、固定デューティ比(=m/W)で求めている。本実施の形態では、50%としている。
なお、このとき、誘導線路14へ高周波電流を給電する電源装置12は、給電開始時に、全搬送台車17が同時に負荷を取る事態となっても、1/2負荷の状態(50%負荷状態)で立ち上がるので電源装置12が過負荷となることがなく、給電が停止する事態が避けられる。
【0048】
またタイマー74の設定時間は、上記固定デューティ比の負荷状態で、出力コンデンサ17が充電され、その出力電圧Vが基準電圧(例えば、310V)に到達する時間に余裕を持たせて設定されている。
【0049】
このようなPWMモジュール63の構成により、周波数2fの同期パルスPに同期してチョークコイル54の入力電圧Vがピークから下降に転じた位置を駆動パルスPのオンのタイミングとし、駆動パルスPのパルス幅の中間点を全波の入力電圧Vのゼロクロス位置として、スイッチング周波数2fで高速スイッチングが実行される。
リレイRY2の出力信号(a接点)がオンのとき、すなわち起動して、出力電圧Vが基準電圧未満のとき、固定デューティ比50%で、高速スイッチングが実行される。
【0050】
またリレイRY1の出力信号(a接点)がオンのとき、すなわち起動して、出力電圧Vが基準電圧以上となると、あるいはタイマー74がカウントアップすると、パルス幅演算部77から出力されたデューティ比で、高速スイッチングが実行され、すなわち基準電圧を目標電圧とした出力電圧フィードバック制御が実行される。このとき前記走行用電動モータを停止するなどにより負荷58が減少して、出力電圧Vが上昇し、出力電圧Vが予め設定された基準電圧を超えると、前記スイッチ手段57へ出力する駆動パルスPのパルス幅mを長くして(スイッチ手段57の接続状態を長くして)出力電圧Vを下げ、出力電圧Vが基準電圧に戻るとスイッチ手段57へ出力する駆動パルスPのパルス幅mを短くして(スイッチ手段57の開放状態を長くして)、出力電圧Vを基準電圧に維持する。
【0051】
またリレイRY1の出力信号(a接点)がオンのとき、すなわちリレイRY1がオン(出力電圧フィードバック制御へ移行)した後、出力電圧Vが設定電圧未満となると(リレイRY3がオンとなると)、固定デューティ比50%で、高速スイッチングが実行される。
【0052】
<受電ユニット27の作用> 上記受電ユニット27の構成における作用を説明する。
高周波電流Iが1次側の誘導線路14に供給されると、この誘導線路14に発生する磁束により、ピックアップコイル51に誘導起電力が誘起され、この誘導起電力によりピックアップコイル51において発生した電流は全波整流回路53で整流される。
【0053】
「起動直後」
起動前には、出力コンデンサ56が空の状態にあり、出力電圧Vは0Vである。そして、高周波電流Iが誘導線路14へ供給が開始されると、その直後は、制御電源装置64から制御電源を供給できない状態であり、このとき、PWMモジュール63は、駆動パルスPを出力できないためスイッチ手段57を開放状態となっており、全波整流回路53から出力された電流により、出力コンデンサ56が連続して充電される。
【0054】
「起動時」
出力コンデンサ56が充電され、出力電圧Vが上昇し、制御電源装置64から制御電源を供給できる状態となると、ゲートパルス発振器62から同期パルスPがPWMモジュール63へ入力され、またPWMモジュール63では、制御電源の確認により起動信号がオンとなり、タイマー74が駆動され、このとき出力電圧Vは基準電圧未満であるので、固定デューティ比50%に制限され、すなわち1/2負荷の状態で高速スイッチングが実行される。
【0055】
すなわち、スイッチ手段57は、スイッチング周波数2f(例えば、f=10kHz、60kHz以下に制限)で高速スイッチングされ、開放状態のとき(駆動パルスPがオフのとき)、全波整流回路53から出力された電流は、チョークコイル54の励磁エネルギーを加えて出力コンデンサ56が充電され、同時に負荷58へ供給される。またスイッチ手段57が接続状態のとき(駆動パルスPがオンのとき)、全波整流回路53から出力された電流によりチョークコイル54が励磁されてエネルギーが充填される一方、出力コンデンサ56からは放電電流が負荷58へ供給される。
【0056】
なお、起動開始時には、誘導線路14に流れる電流の周波数は9.00kHzとされ、共振回路50の共振周波数よりずれているので、全負荷状態で1200Wしか取り出すことができない上に、1/2負荷の状態とすることにより600Wしか取り出すことができない。
【0057】
「起動より基準時間経過後/通常時」
タイマー74がカウントアップすると、強制的に、あるいは出力電圧Vは基準電圧以上となると、基準電圧を目標電圧とし出力電圧フィードバック制御が実行される。パルス幅演算部77から出力されたデューティ比で、高速スイッチングが実行される。
【0058】
すなわち、スイッチ手段57は、スイッチング周波数2fで高速スイッチングされ、駆動パルスPのパルス幅はパルスのオンタイミング時の出力電圧Vにより求められ、出力電圧Vが予め設定された基準電圧より低いとき短くされ、基準電圧より高いとき長くされる。すなわち、負荷58が減少して、出力コンデンサ56の両端電圧、すなわち出力電圧Vが上昇し、出力電圧Vが前記基準電圧を超えると、スイッチ手段57が接続状態とされる時間が長くなり、出力電圧Vが下げられて基準電圧に維持される。また負荷58が増加して、出力コンデンサ56の両端電圧、すなわち出力電圧Vが下降し、出力電圧Vが前記基準電圧より下がると、スイッチ手段57が開放状態とされる時間が長くなり、出力電圧Vが上げられて基準電圧に維持される。
【0059】
またスイッチング周波数を正確に2fとし、駆動パルスPのオンタイミングを、チョークコイル54の入力電圧Vがピークから下降に転じた位置としていることにより、駆動パルスPがオン、すなわちチョークコイル54が励磁されるとき、共振回路50によってチョークコイル54へ供給される電流は、90゜位相がずれているために、この電流は略ゼロであり、かつこの後、入力電圧Vは下降し、入力電圧Vがゼロクロスしている範囲としていることにより、チョークコイル54に流れる電流(コイル電流)Iの上昇は抑えられ、滑らかになる(脈動が少なくなる)。またこのように、コイル電流Iの脈動が少なくなり、チョークコイル54の入力電圧と出力電圧の差が少なくなることにより、コイル電流Iのリップルは大きく抑えられる。
【0060】
またスイッチング周波数2fで高速スイッチングされることにより、負荷58の変動に迅速に対応され、負荷58の変動が、共振回路50を介して誘導線路14に及ぼす影響、たとえば急に帰還インピーダンスがゼロに近くなることにより誘導線路14が過電流となる影響が抑えられる。
またスイッチング周波数2fで高速スイッチングされることにより、非共振状態から共振状態が遷移するとき、出力電圧Vに迅速に対応され、共振電圧が急激に上昇することが抑えられる。
また高速スイッチングをし、昇圧トポロジーにより出力電圧を上げよう上げようとするので、ピックアップコイル51の共振周波数に、誘導線路14に供給される高周波電流Iの周波数fとの間でずれが発生しても、給電電力を維持できる。すなわち、給電周波数特性が、従来の場合と比較して改善され、広い周波数のずれの範囲で電力を得ることができ、高周波電流の周波数がずれても安定して電力を供給できる。
【0061】
「異常発生時」
出力電圧フィードバック制御の実行中に、出力電圧Vが設定電圧未満まで低下すると、デューティ比は、固定デューティ比50%に制限され、すなわち1/2負荷の状態で、高速スイッチングが実行される。
【0062】
すなわち、出力電圧Vが基準電圧よりどんどん下がっていくと、デューティ比0%、すなわちスイッチ手段57が開放状態とされ、全負荷の状態とされ、出力コンデンサ56を最大限チャージして基準電圧へ戻そうとする。それにもかかわらず、出力電圧Vが上昇せずに、設定電圧まで低下すると、誘導線路14側に流れる電流の供給に異常が発生したと判断して、誘導線路14側に負荷をかけないように1/2負荷状態としている。
【0063】
上述した電源装置12の作用と受電ユニット27の作用の説明から判るように、電源装置12と各搬送台車17の受電ユニット27との間には信号の取り合いはなく、それぞれ独立して駆動している。しかし、起動時には、一方の電源装置12は誘導線路14に流す高周波電流の周波数を、共振周波数よりずらした周波数として各搬送台車17が取り込むことを制限し、他方の各搬送台車17では1/2負荷状態として取り込みを制限しており、2重に、電源装置12が過負荷となり誘導線路14に流す高周波電流が遮断されて給電ができなくなる事態を回避している。
【0064】
なお、瞬停の際には、高周波電流が遮断されても、搬送台車17の出力電圧は設定電圧まで急に低下することはなく、高周波電流の復旧時、各搬送台車17では1/2負荷状態として取り込みの制限を実行しないので、全負荷状態で電力を取り込もうとする。したがって、「瞬停時」には、電源装置12が、誘導線路14に流す高周波電流の周波数を、共振周波数よりずらした周波数とすることのみによって、電源装置12が過負荷となり誘導線路14に流す高周波電流が遮断されて給電ができなくなる事態が回避される。
【0065】
以上のように本実施の形態によれば、1次側誘導線路14へ給電が開始されると、駆動パルスPは固定デューティ(duty)比50%で出力され、1次側に対して1/2の負荷状態で出力コンデンサ56に充電されることにより、1次側誘導線路14へ高周波電流を給電する電源装置12は、給電開始時に全ての搬送台車17が、一斉に最大電力、すなわち全負荷を取る状態となり、電源装置12が過負荷となり、給電が停止する事態を避けることができ、給電対象の搬送台車17の台数が多くても、給電を続けることができる。そして、出力コンデンサ56が充電され、出力電圧Vが基準電圧となると、出力電圧フィードバック制御が実行されることにより、以後は、消費された電力のみを、1次側誘導線路14より給電すればよくなり、各搬送台車17が出力電圧フィードバック制御を実行しても電源装置12が過負荷となり、給電が停止する事態を避けることができる。
【0066】
また本実施の形態によれば、1次側に対して1/2の負荷状態で出力コンデンサ56に充電され、予定時間が経過すると(タイマー74の出力信号がオンとなると)、出力電圧フィードバック制御を実行され、このとき、出力コンデンサ56への充電が遅れて、予定時間内に基準電圧まで上昇していないと、パルス幅mを最小として、全負荷をとる状態とされ、出力電圧Vの上昇を急ぐことができる。なお、他の搬送台車17は予定時間内に基準電圧まで上昇しており、消費された電力のみを受電している状態なので、1台が全負荷をとる状態となっても、電源装置12が過負荷となり、給電が停止する事態は少ない。
【0067】
また本実施の形態によれば、出力コンデンサ56の出力電圧が、設定電圧以下まで低下すると、電源装置12から給電できない事態となっていると判断され、固定デューティ比とされ、駆動パルスの幅mを出力可能な駆動パルスのパルス幅Wの1/2として駆動パルスPが出力され、1次側に対して1/2の負荷状態とされることにより、電源装置12の負荷状態を改善することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、インバータ24の発振周波数が共振周波数である9.74kHzより低い周波数の所定周波数である9.00kHzから共振周波数である9.74kHzにかけて段階的に変化するように制御しているが、図3に示すように、インバータ24の発振周波数が共振周波数である9.74kHzより高い周波数にかけて段階的に変化するように制御しても、搬送台車17へ供給される電力を低下させることが出来るため、ンバータ24の発振周波数が共振周波数(9.74kHz)より高い周波数(例えば、10.5kHz)から共振周波数(9.74kHz)にかけて段階的に制御するようにしてもよい。
【0069】
また本実施の形態では、インバータ24の発振周波数を、0.1kHz刻みで共振周波数にむけて段階的に変化させているが、0.1kHz刻みに拘らず、刻みの間隔を0.1kHzよりも大きくしてもよいし、0.1kHzよりも小さくして連続的に周波数を変化させるようにすることもできる。
【0070】
また本実施の形態では、コントローラ61のPWMモジュール63は、ゲートパルス発振器62から入力した周波数2fの同期パルスPに同期してPWM基準波(三角波)を形成しているが、同期パルスPに1つおきに同期して入力電圧Vの2つの波形で、3つのPWM基準波(三角波)を形成し、各三角波の立ち上がりを、駆動パルスPをオンするタイミングとすることもできる。このとき、駆動パルスPのスイッチング周波数は、高周波電流周波数fの3倍(3f)となり、より高速でスイッチングされる。よって、負荷58の変動に、より迅速に対応され、負荷58の変動が、共振回路50を介して誘導線路14に及ばす影響、たとえば急に帰還インピーダンスがゼロに近くなることにより誘導線路14が過電流となる影響を抑えることができ、さらに非共振状態から共振状態に遷移するとき、出力電圧Vに、より迅速に対応され、共振電圧が急激に上昇することを抑えることができる。
また本実施の形態では、機器または装置の一例として、搬送台車17について説明したが、機器または装置には、搬送機能を有さない自走車や据置きの機器・装置等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
I 1次側誘導線路の高周波電流(一次側電流)
f 1次側誘導線路の高周波電流の周波数
入力電圧
出力電圧
制御電圧
同期パルス
駆動パルス
コイル電流
11 商用電源
12 電源装置
14 誘導線路
17 搬送台車
21 整流回路
22 起動・停止回路
24 インバータ
27 受電ユニット
38 スイッチング素子
40 コントローラ
50 共振回路
51 ピックアップコイル
52 共振コンデンサ
53 整流回路(全波整流回路)
54 チョークコイル
55 ダイオード
56 電圧コンデンサ(出力コンデンサ)
57 スイッチ手段(例えば、出力調整用トランジスタ)
58 負荷
61 コントローラ
62 ゲートパルス発振器
63 PWMモジュール
64 制御電源装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の機器または装置にそれぞれ備えられ、電源装置より高周波電流が供給される1次側誘導線路より無接触で受電するための無接触給電設備の2次側受電回路であって、
前記1次側誘導線路に対向して前記誘導線路より起電力が誘起されるピックアップコイルと、
前記ピックアップコイルに並列に接続され、このピックアップコイルと前記高周波電流の周波数に共振する共振回路を形成する共振コンデンサと、
前記共振回路の共振コンデンサに並列に接続された全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力端子間に並列に接続された、スイッチ、および消費電力が変動する負荷に電力を供給する出力コンデンサと、
前記スイッチを接続状態または開放状態とするコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記全波整流回路の一方の出力端子から出力される全波の電圧信号に同期して、前記高周波電流の周波数の複数倍の周波数の同期パルスを出力するパルス発生回路と、
前記スイッチヘ駆動パルスを出力し、この駆動パルスがオンのときにスイッチを接続状態とし、オフのときにスイッチを開放状態とすることにより、前記出力コンデンサの出力電圧を予め設定された基準電圧となるように出力電圧フィードバック制御を実行するパルス幅制御回路
を備え、
前記パルス幅制御回路は、前記電源装置の出力定格電力を前記機器または装置の台数で除算して前記1次側誘導線路への給電開始時に1台当たりに受電可能な受電電力を求め、この受電電力以内に抑制可能な前記駆動パルスのパルス幅を、出力可能な駆動パルスのパルス幅より求め、前記1次側誘導線路へ給電が開始されると、前記パルス発生回路から入力した同期パルスに同期して前記抑制可能な駆動パルスを前記スイッチへ出力するスイッチング制御を実行し、前記出力コンデンサの出力電圧が予め設定された基準電圧となると、前記出力電圧フィードバック制御を実行すること
を特徴とする無接触給電設備の2次側受電回路。
【請求項2】
前記パルス幅制御回路は、前記スイッチング制御を実行して、前記出力コンデンサの出力電圧が前記基準電圧まで上昇する予定時間が経過すると、強制的に、前記出力電圧フィードバック制御を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の無接触給電設備の2次側受電回路。
【請求項3】
前記パルス幅制御回路は、前記出力電圧フィードバック制御を実行しているとき、前記出力コンデンサの出力電圧が、前記基準電圧より低く予め設定された設定電圧以下まで低下すると、再び、前記スイッチング制御を実行すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の無接触給電設備の2次側受電回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196027(P2012−196027A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57325(P2011−57325)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】