説明

無機化合物薄膜ライブラリー製造装置および製造方法

【課題】多数の元素が複合した無機化合物の高品質な積層薄膜の作製・評価を短時間で効率的に行い、さらに薄膜ライブラリーの作製から各薄膜の評価までを連続的に自動的に実行しうる、無機化合物薄膜ライブラリー製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に薄膜を2層以上積層した無機化合物の積層薄膜を複数形成して無機化合物薄膜ライブラリーを製造するための装置であって、1種以上の原料溶液(5)を分取し混合して試料溶液(6)を調製する試料調製手段(14)、前記試料溶液(6)を基板(3)上の複数箇所に分注する分注手段(14)および前記試料溶液(6)を基板(3)上に塗布する塗布手段(16)を備えた自動分注装置(1)、前記基板(3)を配置する試料台(2)、前記基板(3)上の薄膜(4)の焼成手段(8)、前記の試料溶液の調製・分注・塗布および前記基板上の薄膜の焼成を制御する制御手段(9)を含む無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な金属化合物・半導体などの無機材料の探索研究に用いうる無機化合物薄膜ライブラリー製造装置および製造方法に関し、詳しくは、薄膜ライブラリーの製造から各薄膜の評価までを連続的に自動的に実行しうる無機化合物薄膜ライブラリー製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境有害物質の除去などの環境分野においては光応答型半導体を用いた光触媒の利用が進んでおり、またエネルギー分野においても光応答型半導体を用いた光触媒や光電極を利用することで太陽光エネルギーによる水素製造などが期待されている。これらの分野においては、安定性などの制約からこれまで主に光応答型半導体として二酸化チタンの利用を中心に研究が行われてきた。しかしながら二酸化チタンでは400nm以下の紫外光しか吸収利用できず、太陽光の大部分を占める可視光を有効に利用できるようにその性能を向上させるには、二酸化チタンを超える新規な可視光応答型の半導体の開発が期待されている。
【0003】
しかし現在までのところ、膨大な数の試料を調製して評価することによって行う新規な光応答型半導体の探索研究は、その必要性が高いにもかかわらず試料の調製と評価に時間と手間がかかりすぎるため迅速には進んでいない。さらに複合酸化物やドーピング化合物は多元系になれば飛躍的にその探索の種類が増える。そのため膨大な数の試料の調製・評価を迅速に行うことができる探索法を開発することが必要である。またその一方で、高速の調製・評価を求めるあまり、高性能な物質を見逃すような探索方法では意味がない。
【0004】
一方、バイオテクノロジー分野では、膨大な数の試料から目的の化合物を探索するために、様々な組合せを系統的に網羅するように合成された一連の化合物群(ライブラリー)を作製して評価することで迅速な探索を行うコンビナトリアルケミストリー技術やハイスループットスクリーニング技術が活用されている。しかし無機材料分野においてはこれらの技術は進展しておらず、少数の研究例が報告されているにすぎない。
【0005】
バイオテクノロジー分野などにおける上記の探索研究には自動分注装置が好ましく用いられているが、これを材料分野の探索研究に用いて無機材料の薄膜を製造しようとした場合、そのままでは無機化合物の分散物は、分散液の安定性、表面張力などのため基板上に単に分注するだけでは厚さの均質な品質の良い薄膜を形成することができない等の問題がある。
【0006】
また、一般的な無機化合物の合成の場合には前駆体を分解する焼成操作が必要である。この焼成の段階でひび割れだらけの膜や基板から剥がれやすいボロボロの膜になれば、目的物質を見落とす可能性が大きくなり、ライブラリーとしては不適切である。汎用性高くクラックの無い膜を調製する方法はできるだけ薄い薄膜の塗布−焼成を繰り返して積層することであるが、自動化できなければその労力は膨大である。
【0007】
また、自動分注装置を用いて無機化合物の高品質の薄膜ライブラリーが自動で簡便に合成できるようになれば、光触媒・光電極分野だけでなく、一般的な触媒全般や、熱電変換素子、センサーなど多く分野の高速探索に役立つ。しかし多くの自動分注装置では熱に対して精度が極端に悪くなるので、焼成のための高温発熱装置を一般に装着することができない。
【0008】
近年の材料分野におけるライブラリー作製技術に関しては、いくつかの方法が知られている。その中で複数の溶液をインクジェット法で基板に吹き付ける方法は高速ではあるが、溶液の種類が限定される、基板上で短時間に混合させるので完全な均一混合が難しい、混合比の正確なコントロールが難しい、などの問題があり複合酸化物化合物等のライブラリー作製には不向きである。それに対して、溶液をあらかじめ自動分注装置で混合しておく方法は、成分元素が分子レベルで完全に混ざり合うため、複合化合物の調製に非常に適した方法である。いろいろな種類の溶液を使えるので汎用性も広く、混合比の正確なコントロールができる。
【0009】
例えば特許文献1には、自動分注装置を用いた金属酸化物薄膜ライブラリーの製造方法および製造装置が開示されている。この方法は、自動分注装置などにより複数のコーティング液をそれぞれの容器に調製し、各溶液中に複数の基板を同時に浸漬して引き上げてから乾燥や加熱処理することで金属薄膜ライブラリーを作製するというものである。
【0010】
しかし、特許文献1記載の方法では、ライブラリーのそれぞれの薄膜は別々の基板上に形成される。そのため、ライブラリーの薄膜はその評価試験に必要なだけの大きさであれば充分であるにもかかわらず、不必要に大きく煩雑になるのが避けられないという問題があった。また、この方法では一枚の基板上に複数の薄膜を規則的、制御して作製することができなかった。このため、薄膜ライブラリーの製造からその後の評価までの一連の流れを自動化するのが困難であり、試料の迅速な評価・試験ができないという問題があった。また、各薄膜調製のための試料溶液量は、基板を浸漬するだけの液量が必要となるため、多量の試料を調製しなければならず負担が大きいばかりでなく不経済である。さらに、コーティング液に浸漬して引き上げる特許文献1記載の方法では、膜厚等を一定して精密に制御するのが困難であった。
【0011】
また、例えば非特許文献1には、熱電変換材料探索用ライブラリー作製方法として自動分注装置を用いてアルミナ基板上に混合溶液をライン状に塗布する方法が開示されている。材料探索においては、品質のよい薄膜を得るためにあらゆる溶液組成に対応した均一塗布方法でなくてはいけないが、この方法では、塗布について膜厚を制御する特別な工夫がなされていないため薄くて品質の良い薄膜を製造することが困難であった。また膜厚を薄くするために単純に溶液濃度を薄くするだけでは、乾燥段階で塗布部分の外側に溶液が集まるため、コーヒーのシミのように周囲だけが厚くなる不均一な塗布膜となるので好ましくない。さらに基板の焼成装置が装備されていないため、塗布後の焼成は人が搬送することになり、複数回の積層塗布の場合はその労力は大きい。
【0012】
【特許文献1】特開2003−83855号公報
【非特許文献1】浦田,北脇,舟橋,「コンビナトリアルケミストリーによる熱電酸化物の探索」,粉体および粉末冶金,第50巻,第6号,p.490−494(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、多数の元素が複合した無機化合物の高品質な積層薄膜の作製・評価を短時間で効率的に行い、さらに薄膜ライブラリーの作製から各薄膜の評価までを連続的に自動的に実行しうる、無機化合物薄膜ライブラリー製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、分注装置と焼成装置を組み合わせ、塗布方法を工夫することにより、基板上に多数の元素が複合した無機化合物の高品位な積層薄膜ライブラリーを作製することができ、その後の評価を含めて自動化に対応しうることを見い出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)基板上に薄膜を2層以上積層した無機化合物の積層薄膜を複数形成して無機化合物薄膜ライブラリーを製造するための装置であって、1種以上の原料溶液を分取し混合して試料溶液を調製する試料調製手段、前記試料溶液を基板上の複数箇所に分注する分注手段および前記試料溶液を基板上に塗布する塗布手段を備えた自動分注装置、前記基板を配置する試料台、前記基板上の薄膜の焼成手段、前記の試料溶液の調製・分注・塗布および前記基板上の薄膜の焼成を制御する制御手段を含むことを特徴とする無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
(2)前記の基板上の薄膜を焼成する焼成手段について前記の試料台との間の前記基板の搬送を行う搬送手段を含み、前記制御手段が基板の搬送および薄膜の焼成を制御することを特徴とする(1)項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
(3)前記分注手段が、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に基板上の一部の溶液を吸引除去する吸引手段を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
(4)前記試料台が、前記基板を傾斜させて配置するための基板保持具を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
(5)前記試料台が溶媒の蒸発速度をコントロールするための温度制御手段を備えることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
(6)前記試料台がダンパー機構を備えることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
(7)薄膜機能評価手段を含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置、
【0016】
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置を用いて基板上に薄膜を2層以上積層した無機化合物の積層薄膜を複数形成して無機化合物薄膜ライブラリーを製造する方法であって、
(a)1種以上の原料溶液を分取し混合して試料溶液を調製するステップ、
(b)該試料溶液を基板上の複数箇所に分注するステップ、
(c)前記基板上に該試料溶液を塗布し成膜するステップ、
(d)前記基板上に形成された薄膜を焼成するステップ、
(e)前記の基板上に形成された薄膜を焼成した後、該薄膜上に同一又は異なる試料溶液を塗布してから更に焼成し、塗布と焼成とを繰り返すことで積層膜を形成するステップ、
を含むことを特徴とする無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、
(9)前記ステップ(c)において、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に、基板上の一部の溶液を吸引除去することを特徴とする(8)項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、
(10)前記ステップ(c)において、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に、吐出された溶液を前記装置の分注手段により塗布し、次いで基板上の一部の溶液を吸引除去することを特徴とする(8)又は(9)項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、
(11)基板が導電性であることを特徴とする(8)〜(10)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、
(12)薄膜が半導体であることを特徴とする(8)〜(11)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、
【0017】
(13)多種の試料溶液を塗布することで多数の薄膜を自動的に作製することを特徴とする(8)〜(12)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、
(14)一回の塗布で形成される薄膜の厚さが1000nm以下であることを特徴とする(8)〜(13)のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法、および
(15)(8)〜(14)のいずれか1項に記載の方法によって得られた無機化合物薄膜ライブラリーの各薄膜に光照射してその光電流を測定することを特徴とする無機化合物薄膜ライブラリーの特性の評価方法
を提供するものである。
【0018】
本発明において、「無機化合物薄膜ライブラリー」とは、自動高速探索技術において、基板にパターン化されて並べられた無機化合物薄膜サンプルのセットのことをいう。また、「原料溶液」及び「試料溶液」は、化合物が溶媒に溶解した液体および化合物が溶媒に分散した液体の両方を含み、「原料溶液」を様々な割合で混合することにより多種の「試料溶液」が調製される。また、「焼成」とは、鉱物加工において広く用いられる高温処理の一方式をいい、熱分解、酸化、焼結などを目的として行われる。また、本発明において「積層膜」とは、試料溶液を塗布および焼成した後に、同一又は異なる種類の試料溶液を重ねて塗布し焼成することで形成された2層以上の層を有する膜をいうが、界面の有無は問わない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、原料溶液の種類に束縛されずに、薄い均一な塗布−焼成を繰り返し、高品位な積層薄膜を作製することができる。
本発明によれば、薄膜ライブラリーの作製(塗布並びに焼成の過程を含む)および評価という一連の操作についても連続して自動的に実行することができる。
また、本発明によれば、従来の方法に比べて、溶液の種類を気にせずに均質な高品位の無機化合物多層薄膜を基板上に配列したライブラリーを効率よく作製することができる。
本発明は、多数の試料薄膜を調製してその機能を探索研究するのに非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、基板上に多数の元素が複合した無機化合物の高品質な積層薄膜の作製・評価を短時間で効率的に行うことができる無機化合物薄膜ライブラリー製造装置および製造方法である。高品質な積層薄膜を作製するには、基板上に原料溶液を均一で且つ薄く目的の位置にのみ塗布する技術およびその焼成−塗布を繰り返して多層薄膜にする技術が必要である。
【0021】
次に本発明の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図の説明において同一の要素には同一の符号を付す。
図1は、本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置の好ましい一実施態様を示す斜視図である。図1の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置は、自動分注装置1、試料台2、焼成手段8および制御手段9を含んでなる。
自動分注装置1は、支持体11と、支持体11に支持されたアーム12及び13と、アーム13に設置された分注手段14とを含んでなる。分注手段14は分注ヘッド15を備え、分注ヘッド15の先端には交換可能なディスポーザブルチップ16が取り付けられている。また、自動分注装置1は、試料台2、原料溶液(母液:分散液を含む)5を配置するケース、試料溶液6を配置するケース、交換用ディスポーザブルチップ7を配置するケースを含んでもよい。
試料台2上には基板3が配置され、基板3上に薄膜4が形成される。試料台2には後述するようにダンパー機構21や加熱手段が設けられていてもよい。
制御手段9はケーブル91により自動分注装置1に接続される。
【0022】
図1中、自動分注装置1は、支持体11にはアーム12がZ方向に移動可能に着設され、アーム12にはアーム13がX方向に移動可能に着設され、アーム13には分注手段14がY方向に移動可能に着設されている。ただし、本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置は、分注手段14がX、Y及びZの三方向へ移動可能であればよく、このような態様には限定されない。
【0023】
分注手段14は分注ヘッド15を備え、分注ヘッド15の先端には交換可能なディスポーザブルチップ16が取り付けられている。分注手段14は内蔵された吸引手段(図示せず)により溶液を吸引・吐出することができる。
【0024】
図1中、分注手段14は試料調製手段としても用いられ、1種以上の原料溶液5を分取し混合して試料溶液6を調製することができる。分注手段14と試料調製手段とは別個独立でもよいが、コスト等を考慮すれば分注手段14を試料調製手段として兼用するのが好ましい。
【0025】
分注ヘッド15の先端に取り付けられたディスポーザブルチップ16はピペット状であり、溶液の吸引・吐出に用いられる。ディスポーザブルチップ16は、母液5及び試料溶液6に直接触れる際における溶液の混入(コンタミネーション)を防止するため、溶液ごとに別のディスポーザブルチップ7に交換される。
ディスポーザブルチップを用いることにより、配管を洗浄する必要がなく、配管つまりや洗い残しによる溶液の混入のおそれがなく、チップがつまっても簡単に取り替えることができるという利点がある。
【0026】
図1中、ディスポーザブルチップ16は塗布手段としても用いられる。基板3上に試料溶液6を分注するだけでは、試料の種類によっては、分散後の分散物の安定性、表面張力のため薄い膜を形成することができず、また、所望の大きさの薄膜を形成することができない。そのため、基板上に分注した溶液を塗布手段により引き伸ばして基板上に塗布する。この際、塗布手段を別個独立に備えてもよいが、コスト等を考慮すれば分注手段14に設けられたディスポーザブルチップ16を塗布手段として兼用するのが好ましい。
【0027】
また、分注手段14は、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に基板上の一部の溶液を吸引除去する吸引手段を含むことが好ましい。これにより、余分な溶液を除去して塗布溶液量を制御し、薄膜の厚さやその均一性、面積を精密に制御することができる。
本発明の装置における吸引手段は、吐出量以上に吸引できる能力を有するため、基板上の溶液の一部を吸引除去して膜厚が均一な薄い膜を形成することができる。様々な未知の溶液を必然的に扱う薄膜ライブラリー作製においては、成膜しにくい溶液を薄膜にすることは避けられないため、このような吸引手段を含むことは、薄膜を薄くし、薄膜の均一性・均質性を得る上で特に好ましい。
【0028】
溶液吐出後の溶液吸引について、図2を参照しながら説明する。図2は塗布手段の作用を説明する図であり、図2(a)は基板上に溶液を分注した状態を示す斜視図、図2(b)は溶液を引き伸ばして塗布した状態を示す斜視図、図2(c)は余分な溶液を吸引した状態を示す斜視図である。図2(c−1)及び(c−2)は図2(c)における溶液吸引の前後の状態を示す側面図である。
まず、分注ヘッド15に取り付けられたチップ16から基板3上に試料溶液6を吐出する(図2(a))。溶液6はチップ16から矢印A方向に流れて基板3上に吐出される。次いで、分注ヘッド15を矢印B方向に移動させチップ16により溶液6を引き伸ばして基板上に塗布する(図2(b))。このときチップ16は塗布手段として機能する。基板3上に引き伸ばされた溶液61は、図2(c−1)に示すように厚みがあり、このまま乾燥・焼成を行っても薄く膜厚の均一な薄膜を得ることができない。そこで、目的膜厚に対して余分な溶液を吸引手段により吸引して基板上から除去する(図2(c)及び(c−1))。吸引することで溶液は矢印C方向に移動する。これにより余分な溶液を除去することができ(図2(c−2))、これを乾燥させることで薄く膜厚の均一な薄膜を形成することができる。
【0029】
試料台2(図1参照)は、基板を傾斜させて配置するための基板保持具を有していてもよい。基板を傾斜させることで、基板上に分注した試料溶液は重力により下方へ流れて薄く広がり、均一で薄い薄膜を作製することができる。この場合、さらに上述した吸引手段により基板上の一部の溶液を吸引除去することが好ましい。なお、基板を傾斜させることで、ディスポーザブルチップ16の吸い上げ口が基板面に密着して塞がれるのを防止して、余分な溶液の吸引除去をスムーズに行うことができる。基板の傾斜角度は、塗布液の種類、濃度により異なるが、鋭角(0°を超え90°未満)であることが好ましく、1〜45°がより好ましく、3〜40°がさらに好ましく、5〜30°がさらに好ましい。
【0030】
また、試料台2は、図1に示すようにダンパー機構(緩衝機構)21を備えるのが好ましい。
ダンパー機構について図3を参照しながら説明する。図3は試料台2上に設置されたダンパー装置21の側面図である。試料台2上にダンパー装置21が設置され、ダンパー装置21上に基板3が配置される。ダンパー装置は特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えばダンパー装置21における衝撃吸収部22にゴムなどの弾性体を用いてもよい。
チップ16で基板上に溶液を塗布する際、基板が歪んで隆起していると基板とチップとが接触して大きな力が加わり(矢印P)、基板及び/又はチップが損傷してしまうおそれがある。試料台にダンパー装置を設けることで、基板とチップとが接触して力が加わっても基板の移動により吸収することができる(矢印Q)。この機能は、基板上の薄膜を焼成して重ね塗りを行う場合に、焼成により基板が変形することが多いので特に有用であり、焼成による基板の変形の影響を小さくすることができる。
【0031】
また、試料台2は温度制御手段を備えてもよい。基板の温度を制御することで、溶液の乾燥速度を制御して膜質や膜厚を制御することができる。温度制御手段としては任意のものを用いることができ、例えばホットプレートや赤外線ランプ、ペルチェ素子、恒温水循環装置などを用いてもよい。好ましい温度は試料溶液の種類によって異なるが、0〜200℃であり、より好ましくは0〜100℃であり、さらに好ましくは20〜80℃である。
また周囲を断熱機構で覆うなどして分注装置に悪影響が及ばないようにすることができれば、その温度範囲では、この温度制御手段によって基板の焼成を行うことができる。その場合、事例によって異なるが好ましい温度は、0〜600℃であり、より好ましくは300〜500℃であり、さらに好ましくは400〜500℃である。
【0032】
焼成手段8は基板3上の薄膜4を焼成し金属酸化物の薄膜を形成するために用いられる。焼成手段としては特に限定されないが、例えば電気炉などを用いることができる。
焼成温度及び焼成時間は機能探索の目的や用いた試料溶液の種類によって異なるが、好ましい焼成温度は、200〜1000℃であり、より好ましくは300〜800℃であり、さらに好ましくは400〜700℃である。また、好ましい焼成時間は、5分〜5時間であり、より好ましくは10分〜3時間であり、さらに好ましくは10分〜1時間である。
【0033】
はじめから厚い膜を作製すると割れたり基板から剥がれたりするおそれがあるため好ましくないが、薄膜を焼成してから同一の試料溶液6を重ね塗りし、その塗布と焼成とを繰り返すことで、厚くても割れにくい膜を形成することができる。また、試料溶液の種類によっては、最初に塗布した層とその後に焼成し重ね塗りした層との界面で何らかの変化が生じる可能性もある。本発明は、そのような現象が生じるか否かの探索研究にも用いることができる。
一方、異なる試料溶液6の塗布と焼成とを繰り返すことで、層ごとに性質の異なる積層膜を形成することもできる。これにより、例えば、各層の屈折率を変えて各層の光の散乱状態が異なる積層膜を形成することができる。また、半導体分野においては、ある層とある層との界面(接合面)についての研究を行うこともできる。
【0034】
制御手段9は、ケーブル91を介して焼成手段8に接続される。制御手段9により、焼成温度、焼成時間などが精密に制御される。
【0035】
制御手段9はケーブル91を介して自動分注装置1に接続される。制御手段9により、試料溶液6における母液5の混合比、分注位置、分注量などが精密に制御される。また、試料台2が温度制御手段を備える場合や基板を傾斜させて配置するための基板保持具を含む場合には、制御手段9はケーブル91を介して試料台2に接続されていてもよく、温度や傾斜角度などが精密に制御される。
【0036】
制御手段9により、試料溶液の調製、分注、塗布を連続して自動的に行うことができる。また、制御手段9により、ディスポーザブルチップの交換も自動的に行うことができ、さらに、試料台2上の基板3の交換も自動的に行うことができる。
【0037】
次に本発明の別の好ましい一実施態様について説明する。図4は、本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置の別の好ましい一実施態様を示す斜視図である。図4の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置は、自動分注装置1、試料台2、焼成手段8、制御手段9、および搬送手段101を含んでなる。
【0038】
搬送手段101は、試料台2と焼成手段8との間の基板3の搬送を行うために用いられる。搬送手段としては特に限定されず、例えば図4に示すようにロボットアーム111を用いて搬送してもよい。
【0039】
制御手段が、ケーブル91を介して搬送手段101および焼成手段8に接続される。制御手段9により、搬送位置、焼成温度、焼成時間などが精密に制御される。これにより、電気炉などによる薄膜の焼成についても自動的に行うことができる。
搬送位置を制御手段9により精密に制御することで、焼成後の基板3を試料台2の元の位置に正確に戻し、薄膜4上に同一又は異なる試料溶液6を塗布してから更に焼成し、塗布と焼成とを繰り返して、自動的に積層膜を形成することができる。
【0040】
この実施態様の薄膜ライブラリー製造装置の他の構成や作用、効果は、前記の実施態様の薄膜ライブラリー製造装置とほぼ同様であるのでそれらの説明は省略する。
【0041】
本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置に用いられる原料溶液5としては、機能探索の目的に応じて、任意の金属錯体溶液や金属塩溶液などの金属化合物(無機化合物)を含む溶液を用いることができ、無機化合物が溶媒に分散した液体を用いることもできる。また、機能探索の目的に応じて、任意の溶媒を用いてもよい。
また、原料溶液5中の無機化合物の濃度は、機能探索の目的に応じて適宜決定される。好ましくは0.03〜2mol/l、より好ましくは0.1〜1.0mol/lである。溶液の濃度が低すぎる場合には、薄膜の平均的な厚さを薄くすることはできるが、乾燥により蒸発する液量が多いため膜厚が不均一となり、周辺部は厚く、中央部が薄くなってしまう。一方、粘性が高すぎると分注や薄膜の形成が困難となる。
無機化合物の分散液の場合、分散物の粒子の大きさは特に限定されないが、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0042】
本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置に用いられる基板3としては、機能探索の目的に応じて任意のものを用いることができ、例えばガラス基板などを用いることができる。光応答型半導体の探索研究に用いる場合には、導電性基板が好ましく、導電性ガラス基板がより好ましい。導電性基板を用いる場合には、薄膜の光電流を容易に測定することができ、光応答型半導体としての特性を容易に評価することができる。また、導電性ガラス基板を用いる場合には、基板の薄膜が形成されていない側から光照射を行いながら光電流を測定することができ、さらに容易に光応答型半導体としての特性を評価することができる。
【0043】
本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置により作製される各薄膜4の形状は特に限定されず、機能探索の目的に応じて適宜決定される。例えば、図1に示したような円形や図4に示したような線形でもよい。
本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置により作製される薄膜4の塗布1回分の平均的な厚さは特に限定されず、機能探索の目的に応じて適宜決定されるが、好ましくは1000nm以下、より好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜100nmである。また、薄膜4が積層膜である場合は、積層回数は2〜20回、好ましくは2〜10回、より好ましくは3〜5回である。
また、本発明の装置により作製される薄膜4は、半導体の開発を目的とする場合は半導体であり、光応答型半導体の開発を目的とする場合は、光応答型半導体である。
【0044】
次に、上記で説明した装置を用いて無機化合物薄膜ライブラリーを製造する方法について説明する。
本発明の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法は、以下のステップ(a)〜(e)を含む。
(a)1種以上の原料溶液を分取し混合して試料溶液を調製するステップ
(b)該試料溶液を基板上の複数箇所に分注するステップ
(c)前記基板上に該試料溶液を塗布し成膜するステップ
(d)前記基板上に形成された薄膜を焼成するステップ
(e)前記の基板上に形成された薄膜を焼成した後、該薄膜上に同一又は異なる試料溶液を塗布してから更に焼成し、塗布と焼成とを繰り返すことで積層膜を形成するステップ
【0045】
ステップ(a)において、1種以上の原料溶液を分取し混合して複数の試料溶液を調製し、ステップ(b)において、分注手段により試料溶液を基板上の複数箇所に分注する。上述したように、溶液ごとにディスポーザブルチップを交換することで溶液のコンタミネーションを防止することができる。
【0046】
ステップ(c)において、基板上に試料溶液を塗布手段により塗布し成膜する。この際、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に、基板上の一部の溶液を吸引除去することが好ましい。また、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に、吐出された溶液を前記装置の分注手段を移動させて溶液を引き伸ばすことで塗布し、次いで基板上の一部の溶液を吸引除去することがより好ましい。吸引容積は塗布量と同一以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは10倍以上である。吸引後の塗布溶液膜の厚さの範囲は濃度にも影響するが、100μm以下、好ましい範囲は10μm以下、より好ましい範囲は1μm以下である。
【0047】
なお、前記基板上に該試料溶液を塗布し成膜する手段として、塗布する試料溶液量をあらかじめマイクロリットル又はピコリットルレベルに制御してインクジェット方式で噴射して成膜する方法も考えられるが、これは本発明の目的を考慮すると除外される。すなわち、インクジェット技術で用いられる溶液はそれに適するように調製されたものであるのに対し、本発明が用いられるような未知材料の探索研究においては様々な性質の溶液を必然的に扱うためインクジェット技術で扱うことができないものも当然に予想されるからである。また、微量の吹きつけでは基板上に成膜できない場合も想定される。
【0048】
ステップ(a)〜(c)により基板上に薄膜を形成した後、ステップ(d)では基板ごと焼成手段に搬送して薄膜を焼成する。さらにステップ(e)では基板上に形成された薄膜を焼成した後、該薄膜上に同一又は異なる試料溶液を塗布してから更に焼成し、塗布と焼成とを繰り返すことで積層膜を形成する。
【0049】
さらに、上記の方法によって得られた無機化合物薄膜ライブラリーの各薄膜に光照射してその光電流を測定することが好ましい。評価方法は上述のように機能探索の目的に応じて任意の方法を用いることができ、例えば光応答型半導体の探索研究を目的とする場合には、導電性基板と該基板上に形成された薄膜とに電極を接続し、薄膜に光を照射して電極間に生じる光電流を測定する。
【0050】
上述した溶液の調製工程、分注工程、塗布工程および成膜工程、ならびに薄膜の焼成工程および評価工程は、いずれもコンピュータなどの制御手段により制御され、連続して自動的に実行されることが好ましい。これにより大量の試料を自動的に作製して評価することができ、探索研究の効率化が期待できる。
【0051】
さらに、本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置は薄膜機能評価手段を含むことが好ましい。該評価手段は前記制御手段9により制御され、作製された薄膜の評価についても自動的に実行することができる。これにより大量の試料を自動的に作製して評価することができるので、探索研究の効率化が期待できる。
評価手段としては機能探索の目的に応じて任意の方法を用いることができ、例えば光応答型半導体の探索研究を目的とする場合には、導電性基板と該基板上に形成された薄膜とに電極を接続し、薄膜に光を照射して電極間に生じる光電流を測定する。
【0052】
評価手段として光電流測定装置を例に挙げて図5を参照しながら説明する。図5は自動光電流測定装置の斜視図である。光照射装置201及び測定装置203はケーブル91を介して制御手段9に接続しており、光照射の位置、強度、時間や光電流の測定などが制御手段9によって制御され、自動的に行われる。
まず、導電性基板3と該基板3上に形成された薄膜4とに電極202を接続する。次いで、光照射装置201に設けられた照射部211から薄膜に光212を照射する。そして、このとき電極202間に生じる光電流を測定装置203にて測定する。光照射装置201に設けられた照射部211は光照射位置を自由に変更することができ、多数の薄膜についてそれぞれ光照射位置を変更して自動的に測定を行うことができる。
【0053】
本発明によれば無機化合物の高品質の薄膜ライブラリーが自動的に簡便に合成できる。本発明は、光触媒・光電極分野だけでなく、一般的な触媒全般や、熱電変換素子、センサーなど多く分野の高速探索に応用しうると考えられる。
【0054】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
実施例1
(単層膜の作製)
図4に示した装置を用いて薄膜を作製した。ディスポーザブルチップとして容量が200μlのものを使用した。
Fe23溶液(シンメトリックス社製、0.5mol/l)を導電性ガラス基板上に2μl吐出し、チップ先端を基板につけたまま10mm移動し、余分な溶液を充分吸い込む(吸い込み量約150μl)操作を行った。これを室温で15分間乾燥させた後、基板を電気炉に搬送し、500度で1時間焼成した。焼成により幅4mm長さ7mmの褐色膜が得られた。膜は薄く均一であり、膜厚は20nm程度であった。
作製した薄膜について顕微鏡(200倍)で観察したところ、ひび割れは全く無かった。また、膜を指でこすっても剥離は全くなかった。
【0056】
(積層膜の作製)
実施例1で得られた薄膜について、実施例1と同様の塗布および焼成をさらに2回繰り返して積層膜を作製した。膜厚は40nm程度であった。
実施例1と同様にして、作製した薄膜について顕微鏡で観察したところ、ひび割れは全く無かった。また、膜を指でこすっても剥離は全くなかった。
【0057】
比較例1
溶液を0.5μl基板上に吐出し、吸引せずにそのまま15分間乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして膜を形成した。基板上に吐出された溶液は水玉状であり、円形スポット状の膜が得られた。
作製した膜について顕微鏡(200倍)で観察したところ、縁が大きく盛り上がった不均一な形状であった。この原因は、溶液乾燥時に溶液が水玉の縁に凝縮されるためであると考えられる。また、縁の部分で多くのひび割れが観測された。縁の部分の厚さは200nm程度であった。
【0058】
実施例1および比較例1の結果から明らかなように、単に分注しただけの比較例1の膜は膜厚が不均一でかつ200nmの厚い部分もあり、ひび割れや剥離が生じやすいのに対し、分注された溶液を基板上に引き伸ばして塗布した実施例1の膜は厚さが20nmである均一な薄膜であり、ひび割れや剥離は全くなかった。
また、実施例1の積層膜の場合の結果から明らかなように、重ね塗りにより積層化した場合は膜厚が40nm程度でもひび割れや剥離は全くなかった。このことから、重ね塗りすることで目的や対象に合わせて膜厚の精密な制御を容易に行えることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置の好ましい一実施態様を示す斜視図である。
【図2】図2は塗布手段の作用を説明する図であり、図2(a)は基板上に溶液を分注した状態を示す斜視図、図2(b)は溶液を引き伸ばして塗布した状態を示す斜視図、図2(c)は余分な溶液を吸引した状態を示す斜視図である。図2(c−1)及び(c−2)は図2(c)における溶液吸引の前後の状態を示す側面図である。
【図3】図3は試料台上に設置されたダンパー装置の側面図である。
【図4】図4は、本発明の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置の別の好ましい一実施態様を示す斜視図である。
【図5】図5は自動光電流測定装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動分注装置
2 試料台
3 基板
4 薄膜
5 原料溶液(母液)
6 試料溶液
8 焼成手段
9 制御手段
14 分注手段
16 ディスポーザブルチップ(塗布手段)
21 ダンパー装置
101 搬送手段
201 光照射装置
202 電極
203 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を2層以上積層した無機化合物の積層薄膜を複数形成して無機化合物薄膜ライブラリーを製造するための装置であって、1種以上の原料溶液を分取し混合して試料溶液を調製する試料調製手段、前記試料溶液を基板上の複数箇所に分注する分注手段および前記試料溶液を基板上に塗布する塗布手段を備えた自動分注装置、前記基板を配置する試料台、前記基板上の薄膜の焼成手段、前記の試料溶液の調製・分注・塗布および前記基板上の薄膜の焼成を制御する制御手段を含むことを特徴とする無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項2】
前記の基板上の薄膜を焼成する焼成手段について前記の試料台との間の前記基板の搬送を行う搬送手段を含み、前記制御手段が基板の搬送および薄膜の焼成を制御することを特徴とする請求項1記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項3】
前記分注手段が、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に基板上の一部の溶液を吸引除去する吸引手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項4】
前記試料台が、前記基板を傾斜させて配置するための基板保持具を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項5】
前記試料台が溶媒の蒸発速度をコントロールするための温度制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項6】
前記試料台がダンパー機構を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項7】
薄膜機能評価手段を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリー製造装置を用いて基板上に薄膜を2層以上積層した無機化合物の積層薄膜を複数形成して無機化合物薄膜ライブラリーを製造する方法であって、
(a)1種以上の原料溶液を分取し混合して試料溶液を調製するステップ、
(b)該試料溶液を基板上の複数箇所に分注するステップ、
(c)前記基板上に該試料溶液を塗布し成膜するステップ、
(d)前記基板上に形成された薄膜を焼成するステップ、
(e)前記の基板上に形成された薄膜を焼成した後、該薄膜上に同一又は異なる試料溶液を塗布してから更に焼成し、塗布と焼成とを繰り返すことで積層膜を形成するステップ、
を含むことを特徴とする無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)において、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に、基板上の一部の溶液を吸引除去することを特徴とする請求項8記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)において、基板上の所定位置に溶液を吐出した後に、吐出された溶液を前記装置の分注手段により塗布し、次いで基板上の一部の溶液を吸引除去することを特徴とする請求項8又は9に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項11】
基板が導電性であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項12】
薄膜が半導体であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項13】
多種の試料溶液を塗布することで多数の薄膜を自動的に作製することを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項14】
一回の塗布で形成される薄膜の厚さが1000nm以下であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の無機化合物薄膜ライブラリーの製造方法。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法によって得られた無機化合物薄膜ライブラリーの各薄膜に光照射してその光電流を測定することを特徴とする無機化合物薄膜ライブラリーの特性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−300812(P2006−300812A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124858(P2005−124858)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人産業技術総合開発機構「光電気化学的手法を用いた高速自動半導体探索システムによる高性能な可視光応答型光触媒の開発」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】