説明

無機微粒子分散ペースト組成物

【課題】良好な印刷性が得られる粘度を保持したまま無機微粒子の分散性に優れるとともに、低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂と、無機微粒子と、有機溶剤とを含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、前記(メタ)アクリル樹脂は、一部にジメチルシロキサン官能基を有し、かつ、ポリスチレン換算による数平均分子量が3000〜5万である無機微粒子分散ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な印刷性が得られる粘度を保持したまま無機微粒子の分散性に優れるとともに、低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性粉末、セラミック粉末等の無機微粒子を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物が、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。特に、微粒子として蛍光体を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)等に用いられ、近年需要が高まりつつある。
【0003】
また、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)の誘電体膜の形成には、誘電体微粒子としてガラス粉末を樹脂バインダー中に分散させたガラスペースト組成物が用いられている。
このようなガラスペースト組成物は、例えば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等を用いた塗布法、シート状に加工するためのキャスティング法、ダイコート法等の塗工法等により所定の形状に加工した後、脱脂及び焼成することで必要な形状の焼結体とすることができる。なかでも、PDPを製造する場合、厚膜を形成可能なダイコート法等の塗工法が好適に用いられている。
【0004】
ガラスペースト組成物を用いた焼結体の製造の生産性及び作業性を高めるためには、低温分解性を有する樹脂バインダーを用いることが好ましい。このような低温分解性を有する樹脂バインダーとしては、一般的にエチルセルロースが用いられている。
ところが、エチルセルロースを樹脂バインダーとして含有するペースト組成物は、ガラス焼結体を製造すると、エチルセルロースが熱分解性が悪いために、有機物質が残りやすく、それを防ぐために高温で焼成しなければならず、製造エネルギーや時間がかかる問題があった。
【0005】
一方、例えば、特許文献1には、熱分解性の良好なアクリル樹脂を用いたペースト組成物が開示されている。このようなアクリル樹脂を含有するガラスペースト組成物は、ペースト中のガラス組成比をできるだけ高めることで、ペーストを塗工、乾燥後、残されるガラス層の厚みを厚くすることができ、また、アクリル樹脂は熱分解性が良好なため、低温、短時間で焼成することができる。
しかしながら、このようなアクリル樹脂を用いてなるガラスペースト組成物は、エチルセルロースを用いた場合と比較すると、ガラス粒子の分散性に劣り、その結果レベリング性に劣るという問題があった。そのため、例えば、アクリル樹脂を用いてなるガラスペースト組成物をPDPの製造のためにダイコート法等により成膜すると、成膜時に形成される膜表面の凹凸が解消されないという問題があった。また、ガラスペースト組成物の粘度を下げると、レベリング性の改善は図れるが印刷が困難になる場合が多く、印刷性を保持するために必要なある程度の粘度を保持しながらも良好なレベリング性を示すアクリル樹脂を用いたペースト組成物は殆ど知られていない。
【特許文献1】特開平11−71132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、良好な印刷性が得られる粘度を保持したまま無機微粒子の分散性に優れるとともに、低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(メタ)アクリル樹脂と、無機微粒子と、有機溶剤とを含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、前記(メタ)アクリル樹脂は、ジメチルシロキサン官能基を有し、かつ、ポリスチレン換算による数平均分子量が3000〜5万である無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、バインダー成分としてジメチルシロキサン官能基を有する(メタ)アクリル樹脂を含有するペースト組成物は、驚くべきことに、無機微粒子、なかでも、ケイ素を含む無機微粒子、具体的にはガラス粒子の分散性が優れたものとなり、低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能であるとともに、良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性が極めて良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物(以下、単に本発明のペースト組成物ともいう)は、(メタ)アクリル樹脂を含有する。
上記(メタ)アクリル樹脂は、ジメチルシロキサン官能基を有する。このような構造の(メタ)アクリル樹脂を含有することで、本発明のペースト組成物は、無機微粒子の分散性が優れたものとなりレベリング性が良好となる。これは、上記(メタ)アクリル樹脂がジメチルシロキサン官能基を有することで、(メタ)アクリル樹脂と後述する無機微粒子との親和性が高くなるためであると考えられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0010】
上記(メタ)アクリル樹脂としては、ジメチルシロキサン官能基を有するものであれば特に限定されないが、メチルメタクリレートと片末端メタクリル変性ジメチルシロキサンとを原料モノマーとする共重合体(以下、本発明に係る共重合体ともいう)であることが好ましい。アクリルポリマーをジメチルシロキサン基で修飾することにより、ガラス表面への樹脂の濡れ性が高まり、レベリング性能が良好となる。
【0011】
上記本発明に係る共重合体において、上記片末端メタクリル変性ジメチルシロキサンとしては特に限定されないが、例えば、X−24−8201、X−22−174DX、X−22−2426(いずれも、信越シリコーン社製)等を好適に用いることができる。
【0012】
上記本発明に係る共重合体において、上記片末端メタクリル変性ジメチルシロキサンの共重合比率の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は0.8重量%である。0.1重量%未満であると、本発明のペースト組成物の無機微粒子の分散性及びレベリング性が不充分となることがあり、0.8重量%を超えると、焼結体にボイド等が発生する可能性が高くなる。より好ましい下限は0.2重量%、より好ましい上限は0.5重量%である。
【0013】
本発明のペースト組成物において、上記(メタ)アクリル樹脂は、ポリスチレン換算による数平均分子量の下限が3000、上限が5万である。3000未満であると、本発明のペースト組成物の増粘性が劣ることとなる。5万を超えると、樹脂の凝集力が高く、絡み合うために流動性が悪くなりレベリング性が劣ることなる。なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算数平均分子量であり、また、GPCによりポリスチレン換算数平均分子量を測定する際のカラムとしてはSHOKO社製カラムLF−804等が挙げられる。
【0014】
本発明のペースト組成物において、上記(メタ)アクリル樹脂の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は20重量%である。5重量%未満であると、最適粘度を確保できないことあり、20重量%を超えると、脱脂処理後の残炭量が増加することで得られる製品の品質に影響が出たり、脱脂処理により厳しい環境が必要となったりして好ましくない。
【0015】
このような(メタ)アクリル樹脂の合成方法としては特に限定されず、例えば、上記メチルメタクリレートと片末端メタクリル変性ジメチルシロキサンとを原料モノマーとし、重合連鎖移動剤及び有機溶剤等を含有するモノマー混合液を調製した後、該モノマー混合液に重合開始剤を添加し、上記原料モノマーを共重合させる方法が挙げられる。
【0016】
上記重合連鎖移動剤、有機溶剤及び重合開始剤としては特に限定されず、共重合体合成時に用いられるドデシルメルカプタン等の従来公知のものを用いることができる。なかでも、本発明のペースト組成物では、上記重合連鎖移動剤として、メルカプトシロキサン類を用いることが好ましい。メルカプトシロキサンを用いることで、ポリマー末端にシロキサン成分を導入することができるため、ガラスへの濡れ性を高めることができる。
【0017】
上記メルカプトシロキサンとしては特に限定されず、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ジメチルシロキサンの末端をメルカプト基修飾したもの等が挙げられる。
【0018】
上記(メタ)アクリル樹脂を含有する本発明のペースト組成物は、低温脱脂処理が可能となる。なお、本明細書において、低温脱脂処理とは、(メタ)アクリル樹脂、及び、後述する有機溶剤等の初期重量の99.5%が失われる温度が低温であることを意味し、熱分解重量測定装置TG・DTA測定で窒素置換等をしない通常の空気雰囲気下で、分解終了温度が250〜400℃である場合をいう。
【0019】
本発明のペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子としては、本発明のペースト組成物を用いて製造する焼結体に合わせて適宜決定され、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラスの低融点ガラス、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属錯体、YS:Eu、(SrCaBaMg)(POCl:Eu、LaPO:Ce,Tb、Y:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Eu、CaWO、GdS:Tb、(Y,Sr)TaO:Nb等の蛍光体等からなる群より選択される少なくとも1種を原料とするものが好適に用いられる。
上記ガラス粉末としては特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス等が挙げられる。
【0020】
上記無機微粒子の添加量としては特に限定されないが、本発明のペースト組成物のうち上記(メタ)アクリル樹脂及び後述する有機溶剤等の無機微粒子以外の成分からなるバインダー樹脂組成物100重量部に対して好ましい下限が10重量部、好ましい上限が800重量部である。10重量部未満であると、充分な厚みの焼結体が得られないことがあり、800重量部を超えると、無機微粒子を分散させることが困難となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は700重量部である。
【0021】
本発明のペースト組成物は、有機溶剤を含有する。
本発明のペースト組成物に含有される有機溶剤は、1気圧下での沸点の好ましい下限が150℃、好ましい上限が350℃である。上記有機溶剤がこの範囲を満たすことで印刷プロセス時の有機溶剤の揮発が抑制されることで粘度が安定し、最終的に印刷性が向上する。
【0022】
上記沸点の下限が150℃、上限が350℃である有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールドデシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールドデシルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノnブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノnブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノオレエートアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコール、フェニルプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコール 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートテトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、ターピネアセテート、ジヒドロターピネオール、テキサノール、ベンジルアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、クレゾール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
本発明のペースト組成物は、更に、ジメチルシロキサンオリゴマーを含有することが好ましい。上記ジメチルシロキサンオリゴマーを含有することで、ガラス凝集体の解砕性が向上し、ペースト化するとレベリング性が向上する。添加するオリゴマーとしては、粘度温度係数(Viscosity Temperature Coefficient)が0.5〜0.55程度で25℃における粘度が10mm/s以下の比較的低分子量の物は揮発性があるために好適に用いられる。
【0024】
上記ジメチルシロキサンオリゴマーの配合量としては、好ましい下限が0.005重量%、好ましい上限が1重量%である。0.005重量%未満であると、上記ジメチルシロキサンオリゴマーを配合する効果が殆ど得られず、1重量%を超えると、ビヒクルが相分離し、粘度が高くなるおそれがある。
より好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は0.5重量%である。
【0025】
更に、本発明のペースト組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。
上記界面活性剤を含有することで、本発明のペースト組成物における無機微粒子の分散性をより向上させることができる。
上記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び、ノニオン系界面活性剤等が挙げられ、なかでも、ノニオン系界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤を含有することで、本発明のペースト組成物のレベリング性は極めて良好となる。
【0026】
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の脂肪酸系;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルや、アルキルグルコシド等の高級アルコール系;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、ソルビタン脂肪酸エステルやポリオキエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系が好適である。
【0027】
このようなノニオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ノイゲンET−83、ノイゲンET−102、ノイゲンET−143、ノイゲンET−160、ノイゲンET−170、ノイゲンET−69、ノイゲンET−89、ノイゲンET−109、ノイゲンET−129、ノイゲンET−149、ノイゲンET−159、ノイゲンET−189、ノイゲンET−97、ノイゲンET−107、ノイゲンET−127、ノイゲンET−147、ノイゲンET−157、ノイゲンET−167、ノイゲンET−187、ノイゲンET−87B、ノイゲンET−137B、ノイゲンET−147A、ノイゲンET−207A、ノイゲンET−65、ノイゲンET−95、ノイゲンET−115、ノイゲンET−135、ノイゲンET−165、ノイゲンES−99、ノイゲンES−129、ノイゲンES−149、ノイゲンES−169、ソルゲン−30、ソルゲン−40、ソルゲン−50(以上、第一工業製薬社製)、エマルゲン−103、エマルゲン−104P、エマルゲン−105、エマルゲン−106、エマルゲン−108、エマルゲン−109P、エマルゲン−120、エマルゲン−210P、エマルゲン−306P、エマルゲン−404、エマルゲン−408、エマルゲン−409P、エマルゲン−420、レオドールSP−L10、レオドールSP−P10、レオドールSP−O10V、レオドールSP−O30V、レオドールTW−L106、レオドールTW−S106(以上、花王社製)、NIKKOL BL−2、NIKKOL BL−4.2、NIKKOL BL−9EX、NIKKOL BC−2、NIKKOL BC5.5、NIKKOL BC7、NIKKOL BC10、NIKKOL BC15、NIKKOL BO−2V、NIKKOL BO−7V、NIKKOL BO−10V、NIKKOL BO−15V(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0028】
上記界面活性剤の含有量としては、用いる無機微粒子の重量分によって好適な量が決まることから特に限定されず、可能な限り少量な方が好ましいが、好ましい下限は0.001重量%、好ましい上限は5重量%である。0.001重量%未満であると、本発明のペースト組成物の無機微粒子の分散性を向上させる効果を殆ど得ることができないことがあり、5重量%を超えると、印刷性への悪影響を与えたり、脱脂処理後の残留炭素の原因となったりする。より好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は2重量%である。
【0029】
このような(メタ)アクリル樹脂等を含有する本発明のペースト組成物は、無機微粒子の分散性に優れたものである。具体的には、本発明のペースト組成物は、厚さ10ミルで塗工し、有機溶剤を揮発させた後の表面平均粗さRa(μm)を、無機微粒子の平均粒子径R(μm)で割った値(Ra/R)の好ましい下限が0.1、好ましい上限が0.8である。0.8を超えると、無機微粒子層が平らでは無く、微粒子層の多層化等のプロセスに用いることができなくなることがある。
【0030】
本発明のペースト組成物は、室温においてB型粘度計を用いプローブ回転数を10rpmに設定して測定した時の粘度が10Pa・s以上であることが好ましい。10Pa・s未満であると、ダイコート法等により成膜した後に静置して乾燥させる際に自然流延してしまうことがある。より好ましい下限は30Pa・sである。本発明のペースト組成物の粘度の好ましい上限は100Pa・sである。
【0031】
本発明のペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、上述した(メタ)アクリル樹脂、無機微粒子、有機溶剤、及び、必要に応じてジメチルシロキサンオリゴマー等を従来公知の攪拌方法、具体的には例えば、3本ロール等で攪拌を行えばよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、良好な印刷性が得られる粘度を保持したまま無機微粒子の分散性に優れるとともに、低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)100重量部、片末端メタクリル変成ジメチルシロキサン(信越シリコーン社製、X−22−174DX)0.5重量部、重合連鎖移動剤としてドデカンチオール2.8重量部、有機溶剤としてテルピネオール100重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
【0035】
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。モノマー混合液が95℃に達した後、重合開始剤を酢酸エチルで希釈した溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加した。
【0036】
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、一部の側鎖にジメチルシロキサンを有する(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、GPCによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は1万であった。
このようにして得られた(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液に対し、表1に示した組成比となるようにテルピネオールを更に添加し、高速分散機で分散させてバインダー樹脂組成物を得た。
【0037】
得られたバインダー樹脂組成物に対して、ノニオン系界面活性剤として日光ケミカル社製「BL−9EX」、無機微粒子として平均粒径が2.5μmのガラス粉末(東罐マテリアルテクノロジー社製、ABX169F:融点464℃)を70重量%になるよう配合した。その後、高速撹拌機にて撹拌後、3本ロールミルにて滑らかになるまで混練し、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0038】
(実施例2)
片末端メタクリル変成ジメチルシロキサン(信越シリコーン社製、X−22−174DX)の添加量を0.2重量部とし、連鎖移動剤としてドデカンチオールを4重量部にした以外は、実施例1と同様にして一部の側鎖にジメチルシロキサンを有する(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は3000であった。
得られた(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー樹脂組成物、及び、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0039】
(実施例3)
連鎖移動剤としてドデカンチオールを1重量部に添加量を変えた以外は、実施例1と同様にして一部の側鎖にジメチルシロキサンを有する(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー樹脂組成物を調製し、ジメチルシロキサンオリゴマー(信越シリコーン社製、KF96−10)を表1に示す割合で添加した以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0040】
(実施例4)
重合連鎖移動剤をドデカンチオールに代えて、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを0.5重量部用いた以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は5万であった。
得られた(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を用い、実施例1と同様にしてバインダー樹脂組成物を調製し、ジメチルシロキサンオリゴマー(信越シリコーン社製、KF96−10)を表1に示す割合で添加した以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0041】
(比較例1)
片末端メタクリル変成ジメチルシロキサンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー樹脂組成物、及び、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0042】
(比較例2)
連鎖移動剤としてドデカンチオールを0.2重量部に添加量を変えた以外は、実施例1と同様にして一部の側鎖にジメチルシロキサンを有する(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂のテルピネオール溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー樹脂組成物、及び、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
(評価)
実施例1〜4、比較例1、2で得られた無機微粒子分散ペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0045】
(1)粘度評価
得られた無機微粒子分散ペースト組成物を、B型粘度計(BROOK FILED社製、DVII+Pro)を利用して常温で、回転数10rpm粘度を測定した。なお、印刷塗工にはある程度の粘度が必要なため、表2中、30Pa・s以上であるものを「○」、30Pa・s未満のものを「×」とした。
【0046】
(2)レベリング性評価
先が鋭利なピックの先端から5mmを黒く色づけし、得られた無機微粒子分散ペースト組成物に先端印まで刺し、素早く引き上げてペースト表面に立った角が5秒以内に消えるか否かを確認した。なお、表2中、ペースト表面に立った角が5秒以内に消えたものを「○」とし、消えなかったものを「×」とした。
【0047】
(3)分散度評価
アプリケータを用いて、得られた無機微粒子分散ペースト組成物を10ミルの厚さにガラス基板上に塗工し、150℃オーブン中で60分養生し、テルピネオールを蒸発させ、ガラス粒子層を得た。得られたガラス粒子層の表面を、接触型表面粗さ計(小坂研究所社製、サーフコーダSE−30D)にて評価し、得られた平均粗さRa(μm)を粒子の平均粒径(R)で割った値(Ra/R)を分散度とした。
【0048】
(4)焼結性
アプリケータを用いて、得られた無機微粒子分散ペースト組成物を10ミルの厚さにガラス基板上に塗工し、150℃オーブン中で60分養生し、テルピネオールを蒸発させ、ガラス粒子層を得た。得られたガラス粒子層を、500℃のオーブンで30分加熱し、得られたガラス板の光沢の有無を目視で確認した。なお、表2中、ガラス特有の光沢を有するものを「○」、光沢を持たないものを「×」とした。
【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、良好な印刷性が得られる粘度を保持したまま無機微粒子の分散性に優れるとともに、低温雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂と、無機微粒子と、有機溶剤とを含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂は、ジメチルシロキサン官能基を有し、かつ、ポリスチレン換算による数平均分子量が3000〜5万である
ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと片末端メタクリル変性ジメチルシロキサンとを原料モノマーとする共重合体であって、前記片末端メタクリル変性ジメチルシロキサンの共重合比率が0.2〜0.5重量%であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル樹脂は、メルカプトシロキサンを連鎖移動剤として合成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項4】
更に、ジメチルシロキサンオリゴマーを0.01〜0.5重量%含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項5】
厚さ10ミルで塗工し、有機溶剤を揮発させた後の表面平均粗さRa(μm)を、無機微粒子の平均粒子径R(μm)で割った値(Ra/R)が0.1〜0.8であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の無機微粒子分散ペースト組成物。

【公開番号】特開2008−101167(P2008−101167A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286764(P2006−286764)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】