説明

無機繊維触媒、その製造方法及び触媒構造体

【課題】微粒子化及び高分散化された触媒成分粒子を含有し、触媒成分粒子の剥離を抑制ないしは防止し得る無機繊維触媒、その製造方法、及びこれを用いた触媒構造体を提供する。
【解決手段】無機繊維触媒1は、アルミナ−シリカ繊維基材とアルミナ−シリカ繊維基材に含まれる触媒成分粒子とを有する無機繊維触媒であって、少なくともアルミナ−シリカ繊維基材の表層部における触媒成分粒子の分散分布の基準となる平均粒子群径が50nm以下であり、且つその標準偏差が30以下である。無機繊維触媒の製造方法は、アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらを混合してゾル分散液を得た後、紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、焼成する。触媒構造体は、上述の無機繊維触媒を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維触媒、その製造方法及び触媒構造体に係り、更に詳細には、微粒子化及び高分散化された触媒成分粒子を含有し、触媒成分粒子の剥離を抑制ないしは防止し得る無機繊維触媒、その製造方法、及びこれを用いた触媒構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンと比較して燃費効率が良く、二酸化炭素(CO)の排出量を低減可能であることから、ディーゼルエンジンが注目されている。
かかるディーゼルエンジンにおいては、排ガス中に含まれる粒子状物質(パティキュレートマター(PM))の低減が技術的課題となっており、これに対し、従来は、触媒を担持させた無機繊維成形体から成るディーゼルパティキュレートフィルターを用い、PMを捕集して浄化する方法が採用されていた。
【0003】
また、ディーゼルエンジンが排出する排ガス温度では、PMを十分に酸化できないことがあることから、助触媒を用いることも検討されており、セリウム−プラセオジム酸化物、セリウム−ジルコニウム酸化物などの希土類元素酸化物が有効であるとの報告がされている(非特許文献1参照。)。
一方、触媒成分や助触媒成分を無機繊維体に担持する方法としては、これらの成分の有機酸塩と界面活性剤とを含む水溶液に無機繊維体をディッピングし、乾燥・焼成する方法が知られている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−326036号公報
【非特許文献1】原田 浩一郎,對尾 良則,高見 明秀,Journal of the Japan Petroleum Institute,Vol.48,No.4,p.216(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の触媒成分や助触媒成分を無機繊維体に担持したパティキュレートフィルターでは、これらの成分を無機繊維の表面に均一に担持することができなかった。また、触媒成分などが繊維表面から剥離し易いという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、微粒子化及び高分散化された触媒成分粒子を含有し、触媒成分粒子の剥離を抑制ないしは防止し得る無機繊維触媒、その製造方法、及びこれを用いた触媒構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねたところ、アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらを混合してゾル分散液を得た後、紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、焼成することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の無機繊維触媒は、アルミナ−シリカ繊維基材と、該アルミナ−シリカ繊維基材に含まれる触媒成分粒子と、を有する無機繊維触媒であって、少なくとも該アルミナ−シリカ繊維基材の表層部における該触媒成分粒子の分散分布の基準となる平均粒子群径が50nm以下であり、且つその標準偏差が30以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の無機繊維触媒の製造方法は、上記本発明の無機繊維触媒の製造方法の一例であって、アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらを混合してゾル分散液を得た後、紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、焼成することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の触媒構造体は、上記本発明の無機繊維触媒を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらを混合してゾル分散液を得た後、紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、焼成することなどとしたため、微粒子化及び高分散化された触媒成分粒子を剥離し難い状態で含有する無機繊維触媒、その製造方法、及びこれを用いた触媒構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の無機繊維触媒について説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、濃度や含有量、配合量などについての「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0012】
上述の如く、本発明の無機繊維触媒は、アルミナ−シリカ繊維基材と、アルミナ−シリカ繊維基材に含まれる触媒成分粒子とを有し、少なくとも該アルミナ−シリカ繊維基材の表層部における触媒成分粒子の分散分布の基準となる平均粒子群径が50nm以下であり、且つその標準偏差が30以下であるものである。
このような構成とすることにより、熱劣化や熱による収縮、衝撃などによる触媒成分粒子の脱落や剥離を抑制ないし防止することができる。また、触媒成分粒子が微粒子化及び高分散化された状態で含有されているため、繊維表面においても微粒子化及び高分散化された状態となっており、触媒成分粒子の表面積が大きく、優れた触媒活性を有する。
【0013】
ここで、「平均粒子群径」とは、無機繊維触媒における触媒成分粒子の分散分布の基準、換言すれば指標となるものであって、下記方法により測定・算出されるものである。
まず、無機繊維触媒から集束イオンビーム(FIB)加工などにより極薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)にて繊維断面を観察する。
次いで、観察像の1.5×1.5μmの視野の中から触媒成分粒子を市販のソフトウェア(旭化成エンジニアリング社製 A像くん)で画像解析処理して触媒成分粒子から成る触媒成分粒子群の30個以上の投影面積を測定する。なお、「触媒成分粒子群」とは、触媒成分粒子から成るものであって、例えば、触媒成分の一次粒子から成るものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。即ち、例えば触媒成分の一次粒子と二次粒子とから成るものや、触媒成分の二次粒子から成るものを挙げることもできる。
更に、各触媒成分粒子群の投影面積相当径(ヘイウッド径)を算出し、これらの相加平均を算出することによって、平均粒子群径が求められる。
つまり、各触媒成分粒子群の投影面積相当径をx、x、…xとすると、平均粒子群径たるこれらの相加平均は、次の数式(1)より求められる。そして、この相加平均から、数式(2)に示す標本分散が求められ、この標本分散の正の平方根σが標準偏差となる。なお、この「標準偏差」は、触媒成分粒子群の粒子群径のバラツキの基準となるものである。
【0014】
【数1】

【0015】
【数2】

【0016】
そして、本発明の無機繊維触媒においては、上述したように、平均粒子群径が50nm以下であることを要し、特に限定されるものではないが、平均粒子群径が10〜50nmであることが好ましく、10〜35nmであることがより好ましい。
平均粒子群径が10nm未満のものを製造するには、現時点においては困難を伴い、生産性が向上しないことがある。
一方、上述したように、標準偏差が30以下であることを要し、特に限定されるものではないが、標準偏差が10〜30であることが好ましい。
ここで、標準偏差が30であるとは、平均粒子群径が50nmの場合、触媒成分粒子群の68.27%が50nm±30nm以内に分布していることを意味する。このように標準偏差が30以下であることにより、本発明の無機繊維触媒中に含有される触媒成分粒子群の粒子群径のバラツキが小さくなり、繊維基材の熱収縮や衝撃による触媒成分粒子の脱落を防止し得る。
なお、標準偏差が10未満のものを製造するには、現時点においては困難を伴い、生産性が向上しないことがある。
【0017】
また、本発明の無機繊維触媒においては、特に限定されるものではないが、その繊維径が3〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。
繊維径が3μm未満である場合には、無機繊維触媒の繊維強度が低下することがある。なお、ここでの繊維径は、繊維断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
【0018】
一方、上記触媒成分粒子は、特に限定されるものではないが、その粒子径が1〜200nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、5〜50nmであることが更に好ましい。
各触媒成分粒子の粒子径が200nmを超える場合には、触媒活性の向上に重要な触媒成分粒子の表面積を大きくすることが困難となることがあり、各触媒成分粒子の粒子径が1nm未満のものを製造するには、現時点においては粒子成長や偏析の抑制が難しく、生産性が向上しないことがある。また、粒子径が1nm未満の場合、触媒活性の活性点となりにくいことがある。なお、ここでの触媒成分粒子の粒子径は、繊維断面をTEMで観察することにより求めることができる。
【0019】
また、無機繊維触媒中における上記触媒成分粒子の含有量は、特に限定されるものではないが、酸化物換算で5〜50%であることが好ましく、8〜30%であることがより好ましい。
無機繊維触媒中における触媒成分粒子の含有量が酸化物換算で5%未満の場合には、十分な触媒機能が得られないことがある。また、50%を超える場合には、無機繊維触媒を構成するアルミナ−シリカ繊維基材の含有量が相対的に少なくなり、繊維強度が低下する蓋然性が高い。
【0020】
更に、上記触媒成分粒子は、特に限定されるものではないが、X線回折で測定される当該触媒成分粒子の初期(熱処理前)の結晶子径dと1100℃で3時間熱処理後の結晶子径dとの比(d/d)が1.0〜1.5であるものであることが好ましい。
/dが1.0未満となることは、後述する作製条件ではあり得ない。一方、d/dが1.5を超える場合には、熱処理により触媒成分粒子の表面積が小さくなり、活性が低下することがある。なお、上述の熱処理とは、無機繊維触媒を3時間、空気中で加熱することをいう。また、結晶子径は、X線回折装置を用い、Scherrerの式より計算して求めることができる。
【0021】
更にまた、上記触媒成分粒子としては、特に限定されるものではないが、例えばセリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、ガリウム(Ga)又はマンガン(Mn)、及びこれらの任意の組合せに係る元素を構成元素として含有する酸化物を挙げることができる。また、2種以上の構成元素を含有する酸化物は、混合酸化物であっても複合酸化物であってもよい。特に、セリウムとプラセオジムとが含まれていることが望ましい。
【0022】
他方、上記アルミナ−シリカ繊維基材は、特に限定されるものではないが、アルミニウム(Al)及びケイ素(Si)を構成元素として含有する酸化物を含有し、その酸化物におけるAl/SiO比が重量比で50〜99.5/50〜0.5であることが好ましく、70〜85/30〜15であることがより好ましい。
アルミナ−シリカ繊維基材は、アルミニウム及びケイ素のみを構成元素とする酸化物であってもよいが、無機繊維触媒の繊維強度を維持し、触媒成分粒子の性能を損なわなければ、アルミニウム、ケイ素、及びその他の元素を構成元素として含有する酸化物であってもよい。その他の元素としては、例えばマグネシウムやニッケル、クロム、ホウ素などを挙げることができる。
このような酸化物において、Al:SiO=99.5:0.5(重量比)よりアルミナ成分が多くなると、無機繊維触媒の繊維強度が低下することがあり、Al:SiO=50:50(重量比)よりアルミナ成分が少なくなると、無機繊維触媒の耐熱性が低下することがある。
【0023】
本発明の無機繊維触媒は、上述のように、アルミナ−シリカ繊維基材と、アルミナ−シリカ繊維基材に含まれる上記触媒成分粒子とを備える。そして、上記無機繊維触媒は、図1に示すような均一な材料からできている構造でもよく、また、図2に示すような断面で見て芯鞘構造であってもよい。図1のような無機繊維触媒1は、後述するように単一の紡糸原液から得ることができるため、製造コストを削減することができる。しかし、粒子状物質(PM)の酸化反応は無機繊維触媒の表面で起こることから、上記触媒成分粒子は、少なくともアルミナ−シリカ繊維基材の表層部分に存在すればよい。例えば、図2に示すように、無機繊維触媒2の鞘成分2aにのみ上記触媒成分粒子を含有させ、芯成分2bには触媒成分粒子を含有させない構造でも本発明の所望する効果を得ることができる。また、無機繊維触媒2の鞘成分2aと芯成分2bに、それぞれ異なる触媒成分粒子を含有させることも可能である。
なお、鞘成分2aの厚さtは、図3に示すように、無機繊維触媒2全体の断面半径rの1/3以上であることが好ましい。これにより、無機繊維触媒中における上記触媒成分粒子の含有量が5%以上となり、粒子状物質(PM)を効率的に酸化することができる。
【0024】
次に、本発明の無機繊維触媒の製造方法について説明する。
上述の如く、本発明の無機繊維触媒の製造方法は、上記本発明の無機繊維触媒の製造方法の一実施形態であって、アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらを混合してゾル分散液を得、次いで、紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、焼成して、所望の無機繊維触媒を得る方法である。
このように酸化物ゾルを用いる方法によると、微粒子化及び高分散化された触媒成分粒子を剥離し難い状態で含有する無機繊維触媒が得られる。
また、このようにして得られた無機繊維触媒は、耐熱性に優れるという副次的な効果も奏する。
【0025】
上記酸化物ゾルについて、さらに詳細に説明する。上述のように、本発明では、上記無機繊維触媒を製造する際、触媒成分粒子としての酸化物粒子が液体中に分散した酸化物ゾルを用いることを特徴とする。繊維触媒の製造する方法として、アルミナ−シリカ繊維基材原料と、触媒成分粒子原料たる金属塩との溶液から無機繊維触媒前駆体を得、その後焼成するという方法もある。しかし、金属塩由来の触媒成分粒子原料は粒子径が小さく、焼成した際に粒子成長や偏析しやすい。しかし、酸化物ゾルでは、触媒成分粒子としての酸化物が分散媒中で予め粒子を形成している。さらにその酸化物粒子は、数十ナノメートル付近にシャープな粒度分布を有する。また、その酸化物粒子は、粒子径が小さい金属塩のものと比較して表面エネルギーが小さく、さらにアルミナ−シリカ繊維基材により包囲されていることから粒子が移動しにくいため、粒子成長や偏析が起き難い。そのため、酸化物ゾルを用いて繊維触媒を調製することにより、粒子状物質(PM)の酸化能だけでなく、耐熱性も優れた繊維触媒を得ることができる。
【0026】
次に、無機繊維触媒の製造方法の一例につき説明する。
例えば、アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらと紡糸助剤としての水溶性有機重合体とを混合し、この混合物を所定の粘度(例えば、粘度20〜800Pa・s、好ましくは80〜500Pa・sである。)になるまで濃縮して、紡糸原液を調製する。
その後、得られた紡糸原液を乾式紡糸することにより、無機繊維触媒前駆体を得ることができる。
そして、この無機繊維触媒前駆体を1100℃以上で焼成することにより、所望の無機繊維触媒が得られる。
ここで、乾式紡糸とは、原料を熱で気化する溶剤に溶かした状態で、熱雰囲気中でノズルから押し出して溶剤を蒸発させて繊維状にする方法をいい、公知の乾式紡糸機を用いて行うことができる。また、上記前駆体の焼成方法としては、例えば、昇温速度100℃/hで450℃まで加熱し、次いで、昇温速度300℃/hで1150℃まで加熱し、更に1150℃で1時間焼成する方法が挙げられる。
ここで、図1に示す、均一な材料からできている無機繊維触媒1は、単一の紡糸原液を用いて乾式紡糸することにより得ることができる。また、図2に示す、芯鞘構造の無機繊維触媒2は、二種類の紡糸原液を用い、公知の芯鞘型複合繊維用ノズルを用いて乾式紡糸することにより得ることができる。
【0027】
また、上記アルミナ−シリカ繊維基材原料としては、アルミニウム含有液とケイ素含有液とを用いることが望ましい。
アルミニウム含有液としては、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液や塩基性酢酸アルミニウム水溶液、塩基性硝酸アルミニウム水溶液などを挙げることができる。一方、ケイ素含有液としては、シリカゾルやシロキサン化合物などを挙げることができる。
更に、上記触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとしては、セリウム、プラセオジム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ガリウム又はマンガン、及びこれらの任意の組合せに係る元素を構成元素として含有する酸化物ゾルを用いることが望ましい。
金属塩由来の触媒成分粒子原料は粒子径が小さく、焼成した際に粒子成長や偏析がし易い反面、酸化物ゾル由来の触媒成分粒子は、数十ナノ近傍にシャープな粒度分布を有し、粒子径が小さい金属塩のものと比較して、表面エネルギーが小さく、動きにくいため、粒子成長や偏析が起き難い。
更にまた、上記水溶性有機重合体としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)水溶液やポリエチレンオキサイド(PEO)水溶液などを挙げることができる。
【0028】
ここで、触媒成分粒子原料として用いる酸化物ゾルについて説明する。
酸化物ゾルは、例えば以下に記載の方法により得ることができる。
まず、金属塩(例えば、上述のセリウムやプラセオジム、イットリウムなどの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを挙げることができる。)の水溶液にアンモニアなどのアルカリ水溶液を添加し、ゲル化して、沈殿物を得る。
次に、得られた沈殿物(ゲル)を水洗し、次いで、オートクレープ中で水熱合成するなどして熟成し、しかる後、乾燥して、ゾル粉末を得る。このとき、粒径の小さい酸化物ゾルとなっており、ナノレベルなのでX線回折分析(XRD)により得られる回折パターンはブロードとなる。
次に、得られたゾル粉末と、酢酸、硝酸、有機界面活性剤の溶液などとを混合して、酸化物ゾル分散液を得る。
【0029】
次に、本発明の触媒構造体について説明する。
上述の如く、本発明の触媒構造体は、上記本発明の無機繊維触媒を含有するものである。
このような触媒構造体としては、例えば無機繊維触媒を集合させたもの(集合型触媒構造体)や無機繊維触媒を支持体に担持させたもの(支持型触媒構造体)などを挙げることができる。
上記集合型触媒構造体は、例えばPMを捕集し易くなると共に取り扱いが容易となる。また、上記支持型触媒構造体は、無機繊維触媒に所望の形状や強度を付与し易くなり、取り扱いも容易になる。
【0030】
集合型触媒構造体は、例えば織物や編み物、抄造法により得られるものなどを挙げることができる。例えば織物は平織り、朱子織りなど、編み物はたて編み、よこ編みなどに加工できる。更に抄造法としては、丸網抄造機、長網抄造機等の連続抄造設備を用いる方式、抄造ボックスにスラリーを流し込むバッチ抄造方式、スラリーから平網で漉き上げる方式等が採用できる。
抄造法の場合は、例えばアクリルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ポリスチレンエマルジョン、NBRラテックス等の有機質バインダーを無機繊維触媒100重量部に対して3〜20重量部混合することが好ましい。
有機質バインダーの混合は、予め無機繊維触媒と有機質バインダーとを所定量混ぜる方法、無機繊維触媒のみのスラリーを抄造し、ケーキとした後、その上方から有機質バインダーを含む溶液をスプレーし、下方より吸引する方法、又はそれらを併用する方法により行うことができる。この場合、スラリーには触媒成分を含有させることもできる。
【0031】
図4では、本発明の無機繊維触媒を用いた集合型触媒構造体の一例を示す。集合型触媒構造体10は、本発明の無機繊維触媒1(又は2)を平織りしたものである。なお、図4では、1枚の集合型触媒構造体10のみを示したが、集合型触媒構造体10を複数枚積層して用いてもよい。
【0032】
支持型触媒構造体としては、例えば上述した無機繊維触媒と、ステンレス金網、ステンレスメタル箔、セラミックス板(コージェライト、SiC)、いわゆるウォールフロー型ディーゼルパティキュレートフィルタ(コージェライト、SiC)、ストレートフローハニカム、セラミックス発泡板、セラミックスマット(コージェライト、SiC)などの支持体とを複合化したものを例示することができる。
【0033】
図5では、本発明の無機繊維触媒を用いた支持型触媒構造体の一例を示す。支持型触媒構造体11は、ウォールフロー型ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)20と、本発明の無機繊維触媒1(又は2)とを組み合わせたものである。DPF20は、PMを除去できる径を有する複数の気孔を備えたセル壁21をフィルタ要素として有しており、このセル壁21で仕切られた多角形断面構造を有する。このDPF20では、これらのセル壁21により、複数のセル22が互いに平行に形成されている。また、セル22の相隣接するセル入口23及びセル出口24は、目封じ部25により交互にかつ千鳥状に塞がれている。排気ガスは、図5中の矢印で示すように、DPF20のセル入口23における開放されたセルからDPF20内に流入し、そのセル壁21の複数の気孔を通過して隣接したセル22に流入して、開放端のセル出口24を通じて排出される。
支持型触媒構造体11では、セル22内に無機繊維触媒1が配設されている。これにより、DPF20のセル壁21だけでなく、無機繊維触媒1により排気ガス中のPMを捕集することができる。そして、無機繊維触媒1により捕集されたPMは、触媒成分と接触することにより酸化され、DPF20より排出される。
【0034】
これら集合型触媒構造体や支持型触媒構造体は、例えば所望の形状や強度を有し、更にPMを捕集し易いディーゼルパティキュレートフィルターとすることができる。例えば、蛇腹形状やハニカム形状に成形したディーゼルパティキュレートフィルターを挙げることができる。また、このような触媒触媒構造は、捕集したPMを自己燃焼する温度より低温から酸化ないし燃焼して、浄化することもできる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(原料の準備)
アルミナ−シリカ繊維基材原料として、オキシ塩化アルミニウム溶液(塩化アルミニウムの水溶液、和光純薬工業株式会社製 塩化アルミニウム 純度99.9%使用)とシリカゾル(日産化学工業株式会社製 スノーテックス)とを用意した。また、実施例の触媒成分粒子原料として、酸化物ゾルであるCeOナノゾル分散液、CeO−Pr11ナノゾル分散液、CeO−Pr11−MnOナノゾル粉末、CeO−Yナノゾル粉末、及びCeO−Y−MnOナノゾル粉末を用意した。なお、これらの触媒成分粒子原料たる酸化物ゾルは、硝酸セリウム(和光純薬工業株式会社製 純度99.9%)、硝酸イットリウム(和光純薬工業株式会社製 純度99.9%)、硝酸プラセオジム(和光純薬工業株式会社製 純度99.9%)、硝酸マンガン(和光純薬工業株式会社製 純度98%)を用い、上述の酸化物ゾルの製造方法に従い、作成した。
更に、比較例の触媒成分粒子原料として、酸化物ゾルでない硝酸セリウム(和光純薬工業株式会社製 純度99.9%)及び硝酸プラセオジム(和光純薬工業株式会社製 純度99.9%)を用意した。また、紡糸助剤として、ポリビニルアルコール水溶液(ポリビニルアルコール:和光純薬工業株式会社製 けん化度78〜80mol%)を用意した。
【0037】
(実施例1)
まず、オキシ塩化アルミニウム溶液に、シリカゾルをAl:SiO=80:20(重量比)となるように加え、ポリビニルアルコール水溶液を加え、CeOナノゾル分散液を酸化物の含有量として12%になるように加え、粘度を調整してゾル分散液を得、次いで、得られる無機繊維触媒の繊維径を30μmとなるように乾式紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、1150℃で1時間焼成して、本例の無機繊維触媒を得た。
【0038】
(実施例2)
得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0039】
(実施例3)
得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0040】
(実施例4)
得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0041】
(実施例5)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11ナノゾル分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0042】
(実施例6)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11ナノゾル分散液を用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0043】
(実施例7)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11ナノゾル分散液を用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0044】
(実施例8)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11ナノゾル分散液を用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0045】
(実施例9)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11−MnOナノゾルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0046】
(実施例10)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11−MnOナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0047】
(実施例11)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11−MnOナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0048】
(実施例12)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Pr11−MnOナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0049】
(実施例13)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Yナノゾルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0050】
(実施例14)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Yナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0051】
(実施例15)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Yナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0052】
(実施例16)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Yナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0053】
(実施例17)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Y−MnOナノゾルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0054】
(実施例18)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Y−MnOナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0055】
(実施例19)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Y−MnOナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0056】
(実施例20)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えてCeO−Y−MnOナノゾルを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0057】
(比較例1)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0058】
(比較例2)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウムを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0059】
(比較例3)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウムを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0060】
(比較例4)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウムを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0061】
(比較例5)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウム及び硝酸プラセオジムを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0062】
(比較例6)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウム及び硝酸プラセオジムを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を15μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0063】
(比較例7)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウム及び硝酸プラセオジムを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を7μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
【0064】
(比較例8)
触媒成分粒子原料として、CeOナノゾル分散液に替えて硝酸セリウム及び硝酸プラセオジムを用い、得られる無機繊維触媒の繊維径を5μmとなるように乾式紡糸したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の無機繊維触媒を得た。
上記各例の仕様を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
ここで、表1中の「平均粒子群径」は、以下に記載の方法により測定・算出したものである。
まず、各例の無機繊維触媒を樹脂に埋め込み、FIB加工により極薄切片を切り出し、TEMにて繊維断面を観察した。次いで、観察像の1.5×1.5μmの視野の中から触媒成分粒子を市販のソフトウェア(旭化成エンジニアリング社製 A像くん)で画像解析処理して触媒成分粒子から成る触媒成分粒子群の30個の投影面積を測定した。更に、各触媒成分粒子群の投影面積相当径(ヘイウッド径)を算出し、これらの相加平均を算出することによって、平均粒子群径を求めた。更に、「標準偏差」もこれらから算出した。なお、図6(a)及び(b)は、実施例1及び比較例1の繊維断面のTEM写真である。また、図7(a)及び(b)は、図6(a)及び(b)のTEM写真を画像解析処理した画像データである。具体的には、同図(a)及び(b)は、図6(a)及び(b)において触媒成分粒子群を黒く示したものである。
【0067】
また、触媒粒子径は、各例の無機繊維触媒をTEMにより観察し、触媒粒子径を測定した結果、実施例1〜8及び13〜16においては、1〜100nmであることが確認された。実施例9〜12及び17〜20においては、1〜200nmであることが確認された。比較例1〜8においては、1〜2000nmであることが確認された。
【0068】
更に、表1中の「d/d」は、各例の無機繊維触媒の初期(使用前)の結晶子径dと、空気中1100℃で3時間熱処理した後の結晶子径dとの比(d/d)である。
なお、各結晶子径は、各例の無機繊維触媒を下記の測定条件においてXRD測定し、各ピークの半値幅より算出した。
(XRD測定条件)
装置名 :マックサイエンス社製 X線回折装置(MXP18VAHF)
電圧・電流 :40kV・300mA
X線波長 :CuKα
【0069】
[性能評価]
上記各例の無機繊維触媒の性能を下記の方法により評価した。
【0070】
(触媒構造体の作製)
上記各例の無機繊維触媒を長さ約15mmで裁断し、紙すき器にて不織布を作製した。この不織布の厚さは約5mmであった。この不織布を10枚重ね合わせて触媒構造体を作製した。
【0071】
(すす堆積)
上記各例の無機繊維触媒を用いて得られた触媒構造体を、日産自動車株式会社製の直列4気筒、排気量2500ccエンジンの排気系に装着し、すすを堆積させた。
【0072】
(触媒性能評価)
上述のようにすすを堆積させた各例の無機繊維触媒を用いて得られた触媒構造体につき、固定床流通式反応装置(株式会社堀場製作所製)を用いて、触媒性能評価を行った。
反応ガスは酸素濃度5vol%でバランスガスには窒素を用いた。触媒入り口ガス温度500℃、空間速度50,000/hの条件において、5分間に、触媒構造体に堆積したすすが酸化して生成した一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)の量を測定した。得られた結果を表1に併記する。
【0073】
表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜20は、平均粒子群径を50nm以下とし、その標準偏差を30以下としたため、本発明外の比較例1〜8(平均粒子群径:50〜100nm、標準偏差:40〜60)と比較して、CO及びCOの生成量が多く、触媒活性が優れていることが分かる。
また、表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜20は、d/dが1.3〜1.5であり、本発明外の比較例1〜8(d/d:11〜13)と比較して、耐熱性が優れていることが分かる。
更に、図6及び図7より、本発明の範囲に属する実施例1〜20及び本発明外の比較例1〜8は、アルミナ−シリカ繊維基材中に触媒成分が埋没していることから、双方ともアルミナ−シリカ繊維基材に触媒成分微粒子が剥離し難い状態で含有されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る無機繊維触媒の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無機繊維触媒の他の例を示す斜視図である。
【図3】図2に示した無機繊維触媒のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る触媒構造体の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係る触媒構造体の他の例を示す概略図である。
【図6】実施例1及び比較例1の繊維断面のTEM写真(a)及び(b)である。
【図7】図6(a)及び(b)のTEM写真を画像解析処理した画像データ(a)及び(b)である。
【符号の説明】
【0075】
1 無機繊維触媒
2 無機繊維触媒
2a 鞘成分
2b 芯成分
10 集合型触媒構造体
11 支持型触媒構造体
20 DPF
21 セル壁
22 セル
23 セル入口
24 セル出口
25 目封じ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ−シリカ繊維基材と、該アルミナ−シリカ繊維基材に含まれる触媒成分粒子と、を有する無機繊維触媒であって、
少なくとも上記アルミナ−シリカ繊維基材の表層部における上記触媒成分粒子の分散分布の基準となる平均粒子群径が50nm以下であり、且つその標準偏差が30以下である、ことを特徴とする無機繊維触媒。
【請求項2】
上記触媒成分粒子の粒子径が1〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の無機繊維触媒。
【請求項3】
上記触媒成分粒子の含有量が5〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機繊維触媒。
【請求項4】
上記触媒成分粒子は、X線回折で測定される該触媒成分粒子の初期の結晶子径dと1100℃で3時間熱処理後の結晶子径dとの比(d/d)が1.0〜1.5である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の無機繊維触媒。
【請求項5】
上記触媒成分粒子が、セリウム、プラセオジム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ガリウム及びマンガンから成る群より選ばれた少なくとも1種を構成元素として含有する酸化物である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の無機繊維触媒。
【請求項6】
上記アルミナ−シリカ繊維基材が、アルミニウム(Al)及びケイ素(Si)を構成元素として含有する酸化物を含有し、その酸化物におけるAl/SiO比が重量比で50〜99.5/50〜0.5である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の無機繊維触媒。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の無機繊維触媒の製造方法であって、
アルミナ−シリカ繊維基材原料と触媒成分粒子原料である酸化物ゾルとを用い、これらを混合してゾル分散液を得た後、紡糸して無機繊維触媒前駆体を得、しかる後、焼成する、ことを特徴とする無機繊維触媒の製造方法。
【請求項8】
上記アルミナ−シリカ繊維基材原料として、アルミニウム含有液とケイ素含有液を用いる一方、上記酸化物ゾルとして、セリウム、プラセオジム、イットリウム、ランタン、ジルコニウム、ガリウム及びマンガンから成る群より選ばれた少なくとも1種を構成元素として含有する酸化物ゾルを用いることを特徴とする請求項7に記載の無機繊維触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の無機繊維触媒を含有することを特徴とする触媒構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−61443(P2009−61443A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200564(P2008−200564)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000134936)株式会社ニチビ (13)
【Fターム(参考)】