説明

無機質中空糸及びその製造方法

【課題】
高温自己伝播反応を通して金属−セラミック複合体であるサーメット、酸化物−非酸化物複合体中空糸及び難焼結性非酸化物中空糸を製造できる無機質中空糸製造用組成物を提供する。
【解決手段】
高温自己伝播反応物45〜60重量%、高分子6〜17重量%、分散剤0.1〜4重量%及び残量の有機溶媒を含む無機質中空糸製造用組成物を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質中空糸(inorganic hollow fibers)製造技術に関するもので、より詳細には、高温自己伝播反応物(Self−propagating High Temperature Reactant)を含む無機質中空糸製造用組成物及びこれに湿式放射及び高温自己伝播反応を行うことによって無機質中空糸を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機質中空糸は、中空の糸状をなしており、単位体積当たりの膜面積が非常に広く、生産性に優れているという長所を有する。したがって、これを用いて無機質分離膜を製造する場合、水処理、ガス分離、液体分離、粉塵フィルタ、膜反応、触媒担体、空調などの工程に適用することができる。
【0003】
現在まで知られたほとんどの無機質中空糸は、次のような方法で製造される。無機質中空糸を製造する第一の方法として、有機溶媒に高分子と無機質粒子を十分分散させた後、放射ノズルを通して高分子−無機質中空糸を製造し、熱処理して焼結する方法がある。この方法は、無機質粒子を焼結する方法として、焼結を促進するための焼結助剤を残りとして添加することもある。この方法で製造される無機質中空糸としては、Al23中空糸、ZrO2中空糸、Ni中空糸、Ni−Fe中空糸、ペロブスカイト中空糸、Si34中空糸などを挙げることができる。
【0004】
無機質中空糸を製造する第二の方法として、炭素とSi−C高分子前駆体原料を放射ノズルを通して放射して中空糸状にした後、特定のガス雰囲気条件で熱処理する方法がある。この方法で製造される無機質中空糸としては、SiC中空糸、Si34中空糸、カーボン中空糸などを挙げることができる。
【0005】
上述した第一の方法及び第二の方法のいずれにおいても、エネルギー消費の多い高温での熱処理が必要であり、気孔構造は、熱処理中の無機質粒子、反応形成物の粒成長及び緻密化によって決定される。
【0006】
一方、今まで製造されたほとんどの無機質中空糸は、Al23中空糸のような酸化物中空糸であって、無機質分離膜支持体として使用するための前提条件である30〜50%程度の高気孔率を有するためには、低い温度で焼結する必要があった。しかしながら、焼結温度が低い場合、低密度による低強度を有するようになり、膜モジュール化及び再生などの後処理工程で容易に破れるという問題がある。
【0007】
したがって、高い気孔率を有しながらも強度に優れた無機質中空糸を製造できる技術が要求される。このような無機質中空糸としては、セラミック−金属複合体であるサーメット、酸化物−非酸化物複合体、難焼結性非酸化物中空糸などを挙げることができる。
【0008】
一方、現在まで考案された無機質中空糸の製造例は、原素材的側面で見れば下記の通りである。
【0009】
第一の例として、NiO、Fe23酸化物粒子と高分子を有機溶媒に分散し、湿式放射後に溶媒置換して高分子/NiO、高分子/NiO−Fe23中空糸を製造し、これを還元雰囲気で焼結することによって水素分離用Ni、Ni−Fe中空糸を製作したことがあり、このとき、Ni、Ni−Feは完全な緻密質であった。
【0010】
第二の例として、セルローズ前駆体を熱分解して炭素中空糸分離膜を製造し、フェノールレジン、ピッチ、ポリイミド、PAN(Poly acrylonitrile)などを同一の方法で放射した後、炭化して炭素中空糸を製作したことがある。このとき、炭素中空糸は微細な多孔性構造を有した。
【0011】
第三の例として、代表的な酸化物粒子であるAl23粒子を高分子と共に有機溶媒に分散し、湿式放射後に溶媒置換して高分子/Al23中空糸を製造した後、熱処理することによって微細多孔性Al23中空糸を製作したことがある。
【0012】
第四の例として、有機シラザン高分子を溶融・放射した後、繊維表面を非溶融化し、熱分解してSiC、Si34系中空糸を製造した。非溶融化過程は、Si、B、P、金属化合物蒸気を含むガスで中空糸を処理する段階と、水又はアンモニアを含むガスで中空糸を処理する段階とからなる。本方法によって製造される中空糸が効果的に焼結されることによって、多孔性シリコン系中空糸を製造することができた。
【0013】
第五の例として、熱可塑性高分子とSi34、Al23粒子を混合した後、加熱状態で溶融・放射し、高分子−セラミック中空糸を製造した後、焼結してSi34系中空糸を製作したことがある。また、熱硬化性高分子とセラミック粒子を水と混合して圧出することによって高分子−セラミック中空糸を製造した後、焼結してセラミック中空糸を製作したことがある。
【0014】
前記無機質中空糸の各製造例から分かるように、現在までセラミック−金属複合体であるサーメット、酸化物−非酸化物複合体中空糸を製造した例はなかった。
【0015】
また、強度に優れた難焼結性非酸化物である場合、シリコンが含まれた高分子を溶融・放射して熱処理する方法以外の方法は報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、高温自己伝播反応を通して金属−セラミック複合体であるサーメット、酸化物−非酸化物複合体中空糸及び難焼結性非酸化物中空糸を製造できる無機質中空糸製造用組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、前記組成物を用いて高温自己伝播反応で無機質中空糸を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記一つの目的を達成するための本発明の一実施例に係る無機質中空糸製造用組成物は、高温自己伝播反応物45〜60重量%、高分子6〜17重量%、分散剤0.1〜4重量%及び残量の有機溶媒を含むことを特徴とする。
【0019】
このとき、高温自己伝播反応物は、高温自己伝播反応によって生成物としてセラミック−金属複合体、難焼結性非酸化物及び酸化物−非酸化物複合体のうちいずれか一つを生成する物質である。
【0020】
前記他の目的を達成するための本発明の一実施例に係る無機質中空糸製造方法は、高温自己伝播反応物、高分子及び分散剤を含む組成物を用意し;前記組成物に放射ノズルを用いて湿式放射を行い;前記組成物に放射ノズルを用いて湿式放射を行った結果物を洗浄及び乾燥して高分子−高温自己伝播反応物中空糸を形成し;前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸を熱処理して高分子成分を除去し、前記高温自己伝播反応物に高温自己伝播反応を行って無機質中空糸を形成することを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る無機質中空糸製造方法によれば、高温自己伝播反応を用いることによって難焼結性中空糸をより容易に製造することができる。また、相対的に低温で最初の局部反応を行えば、自然に反応を進行させることもできるので、エネルギーの低消費を追求することができる。
【0022】
また、本発明に係る無機質中空糸製造方法は、自己伝播反応前後の反応物と生成物の密度差及び反応物の非充填体積によって自然に3次元的に互いに連結されたフィルタ又は分離膜に適した気孔構造を有する。
【0023】
また、高分子−高温自己伝播反応物中空糸を束化した後、高温自己伝播反応を行う場合、数千℃に達する高い温度によって各中空糸が互いに強く連結される構造を容易に形成することができる。
【0024】
また、本発明に係る製造方法で製造された難焼結性セラミック中空糸とサーメット中空糸は、優れた熱的、機械的及び化学的特性を通して膜モジュール製作及び再生工程などにおいて相対的に安定性を有することができる。また、本発明に係る製造方法で製造された難焼結性セラミック中空糸とサーメット中空糸は、金属を含んでいるので、金属との化学的親和力が良く、これによって、高温で使用される膜モジュールの製作が容易である。
【0025】
また、製造される無機質中空糸の場合、熱膨張係数が低いことから、中間層及び分離層の導入時に熱衝撃による前記各層の破壊現象を防止することができ、無機質分離膜の製造における信頼性を増進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る無機質中空糸製造方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図2a】本発明によって製造されたAl23−TiC−Ti中空糸破断面の低倍率走査電子顕微鏡写真である。
【図2b】本発明によって製造されたAl23−TiC−Ti中空糸破断面の高倍率走査電子顕微鏡写真である。
【図3a】本発明によって製造されたTiC−Ni中空糸断面の鏡面化された低倍率光学顕微鏡写真である。
【図3b】本発明によって製造されたTiC−Ni中空糸断面の鏡面化された高倍率走査電子顕微鏡写真である。
【図4a】本発明によって製造されたTiB2中空糸断面の低倍率走査電子顕微鏡写真である。
【図4b】本発明によって製造されたTiB2中空糸断面の高倍率走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点、特徴及びそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する各実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する各実施例に限定されるものでなく、互いに異なる多様な形態で具現可能である。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は、特許請求の範囲の範疇によって定義されるものに過ぎない。明細書全般にわたって同一の参照符号は、同一の構成要素を示す。
【0028】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例に係る無機質中空糸製造用組成物及びこれを用いた無機質中空糸製造方法について詳細に説明する。
【0029】
<無機質中空糸製造用組成物>
本発明に係る無機質中空糸製造用組成物は、高温自己伝播反応を起こすことができる原料物質である高温自己伝播反応物、高分子、分散剤及び有機溶媒を含む。
【0030】
<高温自己伝播反応物>
高温自己伝播反応物は、高温自己伝播反応を起こすことができる原料物質である。このような物質としては、高温自己伝播反応によってAl23/Fe、Al23/Ni、4C/Fe、TiC/Niなどのサーメット、TiC、TiB2、SiC、Si34などの難焼結性非酸化物、Al23/SiC、Al23/TiCなどの酸化物−非酸化物複合体などを形成できる物質がある。
【0031】
このような高温自己伝播反応物に使用される反応物粉末としては微粒状のものが優れているが、過度に微粒である場合、湿式放射及び乾燥工程中に酸化され、高温自己伝播反応を中止させることもあるので、高温自己伝播反応物に応じて適切な大きさを選定して使用する必要がある。
【0032】
前記高温自己伝播反応物は、組成物全体の重量に対して45〜60重量%の含量比で含まれることが望ましい。高温自己伝播反応物の含量が45重量%未満であれば、高温自己伝播反応が発生しないという問題がある。その一方、高温自己伝播反応物の含量が60重量%を超えれば、粘度が過度に高くなり、湿式放射が行われないか、高温自己伝播反応中に膨潤現象が起きるという問題がある。
【0033】
<高分子>
本発明で適用される高分子は、無機質中空糸の形状維持と微細構造を決定する役割をする。このような高分子としては、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリアクリロニトリル系高分子、セルロースアセテート系高分子、ポリビニリデンフルオライド系高分子、ポリイミド系高分子などを提示することができ、これらを単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0034】
前記高分子は、組成物全体の重量に対して6〜17重量%の含量比で含まれることが望ましい。高分子バインダーの含量が6重量%未満である場合、中空糸の形状維持が難しいので、湿式放射が難しくなるという問題がある。また、高分子バインダーの含量が17重量%を超える場合、組成物の粘度が過度に高くなり、湿式放射が十分に行われないという問題がある。
【0035】
<分散剤>
本発明で適用される分散剤は、組成物の製造時に高温自己伝播反応物の分散を向上させ、組成物の粘度を制御する役割をする。本発明に適用される分散剤は、有機溶媒及び高分子の種類に応じて適宜選定される。高分子としてポリスルホンを使用し、有機溶媒としてN−メチル−2ピロリドン(NMP)を使用する場合、分散剤として、より望ましくは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)などを提示することができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0036】
分散剤は、組成物全体の重量に対して0.1〜4重量%の含量で含まれることが望ましい。分散剤の含量が0.1重量%未満である場合、高温自己伝播反応物粉末の分散性が低いので、均一に湿式放射を行えなくなる。また、分散剤の含量が4重量%を超える場合、組成物の粘度が過度に高くなり、湿式放射が十分行われないという問題がある。
【0037】
<有機溶媒>
本発明に適用される有機溶媒は、前記高分子及び分散剤を解膠させる役割をすると同時に、高温自己伝播反応物の分散媒体の役割をする。本発明に適用される有機溶媒は、高分子の種類に応じて適宜選定されるが、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2ピロリドン、ジメチルアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどを提示することができ、これらを単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0038】
また、本発明に係る無機質中空糸製造用組成物は、酸化物、窒化物、炭化物、金属などの希薄剤をさらに含むことができるが、希薄剤は、高温自己伝播反応の断熱温度を調節し、高温自己伝播反応速度及び無機質中空糸の微細構造を制御できるようにする。
【0039】
前記希薄剤は、高温自己伝播反応物100重量部に対して50重量部まで添加することができ、50重量部を超えて添加する場合、高温自己伝播反応が発生しないという問題がある。
【0040】
<無機質中空糸製造方法>
図1は、本発明に係る無機質中空糸製造方法の一実施例を示すフローチャートである。
【0041】
図1を参照すれば、無機質中空糸製造方法は、組成物用意段階(S110)、湿式放射段階(S120)、洗浄及び乾燥段階(S130)及び高温自己伝播反応段階(S140)を含む。
【0042】
組成物用意段階(S110)は、高温自己伝播反応物、高分子及び分散剤が有機溶媒に分散された組成物を用意する段階である。前記組成物は、上述したような高温自己伝播反応物45〜60重量%、高分子6〜17重量%、分散剤0.1〜4重量%及び残量の有機溶媒を含む無機質中空糸製造用組成物になる。
【0043】
前記組成物は、湿式ボールミルを用いて混合・分散することができ、追加でロッドミルを用いて分散性を増進させることができる。
【0044】
前記組成物は、スラリー状であって、前記高温自己伝播反応物、高分子及び分散剤を有機溶媒に分散・混合して製造され、ボールミルを用いることが望ましい。前記ボールミル工程は、セラミックボールを用いて100〜400rpmの速度で4〜168時間行われることが望ましく、得られた組成物スラリーは、30〜80℃の真空雰囲気で4〜24時間脱気することが望ましい。
【0045】
ボールミルの回転速度が100rpm未満である場合、セラミックボールがボールミルの下端から上端まで容易に移動することができない。また、ボールミルの回転速度が400rpmを超える場合、セラミックボールがスラリーと共に回転するので、十分分散された組成物スラリーを製造することができない。
【0046】
また、混合された組成物スラリーに脱気工程を行わない場合、組成物スラリーに気泡が存在し、湿式放射段階で中空糸が破れるという現象が発生する。
【0047】
次に、湿式放射段階(S120)では、前記高温自己伝播反応物、高分子、分散剤及び有機溶媒からなる組成物スラリーに3重放射ノズルを用いて湿式放射を行う。放射ノズルの外部孔及び内部孔を決定する三つの直径は、目的とする無機質中空糸の内径と外径を考慮して選定しなければならない。前記組成物スラリーは、ギアポンプによって3重放射ノズルの外部孔に流入し、ギアポンプの回転数は5〜18rpmであることが望ましい。また、前記3重放射ノズルの内部孔に水をLCポンプで流入し、水の流入速度は8〜20ml/min、流入圧力は1〜6MPaであることが望ましい。
【0048】
その次に、3重放射ノズルを通して放射された中空糸状のスラリーを、水で充填された洗浄槽に落下させる。3重ノズルの入口と洗浄槽の水表面との間の距離は100cm以下であり、3重ノズルの内部孔に導入された水と洗浄槽に収容された水によって、放射された中空糸状のスラリー内の有機溶媒が水と交換され、高分子−高温自己伝播反応物中空糸が形成される。
【0049】
ここで、前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸は、別途の洗浄槽に通過させて糸車に巻くことができ、糸車に巻かれた高分子−高温自己伝播反応物中空糸は、別途の洗浄段階を経ることができる。糸車に巻かれた高分子−高温自己伝播反応物中空糸の別途の洗浄工程は、30〜100℃で6〜168時間行うことが望ましい。また、前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸は、80〜120℃で12〜48時間乾燥(S130)し、溶媒置換された水を完全に除去することが望ましい。最後には、乾燥段階を経て高分子−高温自己伝播反応物中空糸の製造を完了する。
【0050】
また、前記湿式放射段階(S120)と洗浄及び乾燥段階(S130)は、無機質中空糸の製造において広く知られたいかなる方法で行っても構わない。
【0051】
次に、高温自己伝播反応段階(S140)では、高分子−高温自己伝播反応物を熱処理して高分子成分を除去し、高温自己伝播反応を起こしてサーメット、難焼結性非酸化物、酸化物−非酸化物複合体である高温自己伝播生成物を形成することによって、無機質中空糸を製造する。
【0052】
このとき、高温自己伝播反応のための熱処理は、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン又は水素雰囲気で行われるが、窒化物を生成するためには窒素雰囲気を用いることが有利である。その一方、金属成分を含むサーメットを生成するためには、窒素、ヘリウム、アルゴン又は水素雰囲気を用いることが有利である。また、酸化物−炭化物複合体を形成するためには、空気、窒素、ヘリウム又はアルゴン雰囲気を用いることが有利である。すなわち、高温自己伝播反応物の1種の成分又は2種以上の成分は、組成物用意段階(S110)だけでなく、高温自己伝播反応段階(S140)でガスの形態で供給されることもある。また、高温自己伝播反応のための熱処理温度は、高温自己伝播反応が起きる点火温度以上でなければならなく、高温自己伝播反応物によって決定されるが、一般的に1000〜1800℃の温度範囲を有する。
【0053】
<実施例>
以下、本発明の好適な実施例を通して本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは、本発明の望ましい例示として提示されたものであって、これによって本発明が制限されると解釈されることはない。
【0054】
ここに記載されていない内容は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば充分に技術的に類推可能であるので、それについての説明は省略する。
【0055】
<実施例1>
平均粒子サイズが0.2μmであるTiO2粉末、平均粒子サイズが#325であるアルミニウム粉末、平均粒子サイズが0.2μmであるコロイダル黒鉛粉末に3:4:1.5のモル比でアセトンを用いて湿式ボールミルを行い、60℃で24時間真空乾燥を行い、1000gバッチの3TiO2−4Al−1.5C高温自己伝播反応物を製造した。
【0056】
700gの前記高温自己伝播反応物、100gのポリスルホン、30gのポリビニルピロリドン(PVP)、400gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を2000ml容積のポリプロピレン(PP)に投入し、400gのジルコニア(ZrO2)ボールを用いて常温で150rpmの速度で48時間ボールミルを行い、混合・分散して組成物スラリーを製造した。製造された組成物スラリーは、50℃の真空で12時間脱気させ、最終的に湿式放射のための組成物を製造した。
【0057】
得られた組成物スラリーを1.4−0.8−0.55mmの直径を有する3重ノズルに通過させた後、水洗浄槽に落下させて溶媒置換した。このとき、組成物スラリーは、3重ノズルの外部孔に流入し、流入速度はギアポンプで調節し、ギアポンプの回転数は12rpmで、流入圧力は3気圧であった。また、3重ノズルの内部孔には水をLCポンプを用いて流入させたが、その流入速度は14ml/min、圧力は5MPaであった。洗浄槽は水で充填され、温度は常温であった。3重ノズルの入口と洗浄槽の水表面との間の距離は15cmであった。その後、得られたポリスルホン−3TiO2−4Al−1.5C中空糸は、常温で48時間水で洗浄し、100℃の真空雰囲気で24時間乾燥し、最終的にポリスルホン−3TiO2−4Al−1.5C中空糸を製造した。
【0058】
得られたポリスルホン−3TiO2−4Al−1.5C中空糸を800℃で4時間1次熱処理してポリスルホン高分子を除去し、1500℃で4時間2次熱処理して高温自己伝播反応(3TiO2 + 4Al + 1.5C = 2Al23 + 1.5TiC−1.5Ti)を起こし、Al23−TiC−Ti無機質複合中空糸を製造した。熱処理中の昇温速度は4℃/minで、冷却速度は4℃/minであった。
【0059】
図2aと図2bには、製造されたAl23−TiC−Ti中空糸破断面の低倍率及び高倍率走査電子顕微鏡写真をそれぞれ示した。形成されたAl23−TiC−Ti物質は、多孔性であって、気孔が3次元的に互いに連結された構造を有しており、気孔の大きさは数十マイクロメートルであることを確認することができる。
【0060】
<実施例2>
平均粒子サイズが#325であるTi粉末、平均粒子サイズが0.2μmであるコロイダル黒鉛粉末、平均粒子サイズが#325であるNi粉末に1:1:1のモル比で乾式振動ミルを行い、1000gバッチのTi−C−Ni高温自己伝播反応物を製造した。
【0061】
実施例1と同一の工程を経てポリスルホン−Ti−C−Ni中空糸を製造した。製造されたポリスルホン−Ti−C−Ni中空糸は、800℃で4時間1次熱処理してポリスルホン高分子を除去し、1500℃で4時間2次熱処理して高温自己伝播反応(Ti+C+Ni=TiC+Ni)を起こし、TiC−Ni無機質複合中空糸を製造した。熱処理中の昇温速度は4℃/minで、冷却速度は4℃/minであった。
【0062】
図3aと図3bには、製造されたTiC−Ni中空糸断面の鏡面化された低倍率光学顕微鏡写真と高倍率走査電子顕微鏡写真をそれぞれ示した。形成されたTiC−Ni物質は、多孔性であって、気孔が3次元的に互いに連結された構造を有しており、気孔の大きさは数十マイクロメートルであることを確認することができる。
【0063】
<実施例3>
平均粒子サイズが#325であるTi粉末、平均粒子サイズが#325であるボロン(B)粉末に1:2のモル比で乾式振動ミルを行い、100gバッチのTi−2B高温自己伝播反応物を製造した。
【0064】
実施例1と同一の工程であるが、バッチの大きさを1/10に減少させ、ポリスルホン−Ti−2B中空糸を製造した。製造されたポリスルホン−Ti−2B中空糸は、800℃で4時間1次熱処理してポリスルホン高分子を除去し、1500℃で4時間2次熱処理して高温自己伝播反応(Ti+2B=TiB2)を起こし、TiB2無機質複合中空糸を製造した。熱処理中の昇温速度は4℃/minで、冷却速度は4℃/minであった。
【0065】
図4aと図4bには、製造されたTiB2中空糸断面の低倍率及び高倍率走査電子顕微鏡写真をそれぞれ示した。形成されたTiB2物質は、多孔性であって、気孔が3次元的に互いに連結された構造を有しており、気孔の大きさは数十マイクロメートルであることを確認することができる。
【0066】
上述したように、本発明によって製造された無機質中空糸は、初期の強力な発熱反応によって生成された熱を用いて自ら反応が進行する高温自己伝播反応を用いるので、その反応熱によって温度が熱処理温度を上回る数千℃に達し、その結果、一般的な熱処理過程で得られない物質の中空糸を製造できるという長所を有する。
【0067】
すなわち、無機質中空糸の対象範囲は、従来の焼結によるときには主に酸化物に限定されていたが、本発明による場合、サーメット、難焼結性非酸化物、酸化物−非酸化物複合体に拡大される。
【0068】
以上、本発明の一実施例を中心に説明したが、当業者の水準によって多様な変更や変形が可能である。このような変更と変形は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で本発明に属するといえる。したがって、本発明の権利範囲は、以下に記載する特許請求の範囲によって判断されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温自己伝播反応物45〜60重量%、高分子6〜17重量%、分散剤0.1〜4重量%及び残量の有機溶媒を含む無機質中空糸製造用組成物。
【請求項2】
前記高温自己伝播反応物は、高温自己伝播生成物としてセラミック−金属複合体、難焼結性非酸化物及び酸化物−非酸化物複合体のうちいずれか一つを形成できる物質であることを特徴とする、請求項1に記載の無機質中空糸製造用組成物。
【請求項3】
前記高分子は、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリアクリロニトリル系高分子、セルロースアセテート系高分子、ポリビニリデンフルオライド系高分子及びポリイミド系高分子から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の無機質中空糸製造用組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2ピロリドン、ジメチルアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びジエチレングリコールジブチルエーテルから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の無機質中空糸製造用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、希薄剤として酸化物、窒化物、炭化物及び金属から選択される一つ以上をさらに含み、前記希薄剤は、前記高温自己伝播反応物100重量部に対して50重量部以下で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の無機質中空糸製造用組成物。
【請求項6】
高温自己伝播反応物、高分子及び分散剤を含む組成物を用意し、
前記組成物に放射ノズルを用いて湿式放射を行い、
前記組成物に放射ノズルを用いて湿式放射を行った結果物を洗浄及び乾燥し、高分子−高温自己伝播反応物中空糸を形成し、
前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸を熱処理して高分子成分を除去し、前記高温自己伝播反応物に高温自己伝播反応を行って無機質中空糸を形成することを含むことを特徴とする無機質中空糸製造方法。
【請求項7】
前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸を熱処理して高分子成分を除去し、前記高温自己伝播反応物に高温自己伝播反応を行って無機質中空糸を形成するのは、前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸の最初の反応のために最初に1000℃〜1800℃の温度を提供することを特徴とする、請求項6に記載の無機質中空糸製造方法。
【請求項8】
前記高分子−高温自己伝播反応物中空糸を熱処理して高分子成分を除去し、前記高温自己伝播反応物に高温自己伝播反応を行って無機質中空糸を形成するのは、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム又は水素ガス雰囲気で行われることを特徴とする、請求項6に記載の無機質中空糸製造方法。
【請求項9】
前記組成物は、高温自己伝播反応物45〜60重量%、高分子6〜17重量%、分散剤0.1〜4重量%及び残量の有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項6に記載の無機質中空糸製造方法。
【請求項10】
前記高温自己伝播反応物の反応生成物がセラミック−金属複合体、難焼結性非酸化物及び酸化物−非酸化物複合体のうちいずれか一つであることを特徴とする、請求項6に記載の無機質中空糸製造方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか一つの方法で製造された無機質中空糸。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2011−136328(P2011−136328A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218736(P2010−218736)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(502291252)韓国エネルギー技術研究院 (16)
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF ENERGY RESEARCH
【住所又は居所原語表記】71−2,Jang−dong,Yuseong−gu,Daejeon 305−343,Republic of Korea
【Fターム(参考)】