説明

無機質板のプレス成形方法

【課題】真空吸引のための空気孔の跡による問題を解消する。
【解決手段】無機質板1の表面に成形型3を押し付けてプレスするにあたり、無機質板の表面を成形型に設けた空気孔4を通じて成形型側に真空吸引し、その後、型締め状態のままで上記空気孔に所定の圧力の加圧空気を供給し、次いで型開きを行って無機質板の離型を行う。プレス成形の際に脱気のための空気孔によって無機質板に生じる脱気跡を、型締め状態のままで上記空気孔に加圧空気を供給して押し戻すことで解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質板のプレス成形方法に関するものであり、殊に成形に際して真空吸引を行うプレス成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋の外装材などにセメント系の無機質板が広く用いられているが、押出し又は抄造により作成された無機質板の生板をプレス成形することで表面に柄、目地等の凹凸模様を付与するにあたり、表面にシャープな凹凸模様が確実に形成されるようにするために、その表面を成形型側に真空吸引することが行われている。
【0003】
また、このように真空吸引しつつプレス成形した無機質板を離型するにあたり、上記真空吸引のために成形型に設けた空気孔を利用して無機質板の表面にエアーを吹き付けるとともに成形型に振動を与えて、スムーズな離型がなされるようにすることも行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上記真空吸引を行った場合、成形型に設けた脱気用の空気孔の跡が無機質板に転写して脱気跡である突起が形成されてしまうという問題がある。この突起は著しく外観を損なう上に、塗膜形成後に突起が外力によって除去されることがあると、塗膜が破壊されて吸水可能な状態になるなどで本来の性能を発揮できなくなってしまう。
【0005】
塗膜形成前に上記突起を機械的に除去することも考えられるが、この除去作業の際に無機質板の表面の意匠を損なってしまう虞が高い。
【特許文献1】特開2001−121525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、真空吸引のための空気孔の跡による問題を解消することができる無機質板のプレス成形方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る無機質板のプレス成形方法は、無機質板の表面に成形型を押し付けてプレスするにあたり、無機質板の表面を成形型に設けた空気孔を通じて成形型側に真空吸引し、その後、型締め状態のままで上記空気孔に所定の圧力の加圧空気を供給し、次いで型開きを行って無機質板の離型を行うことに特徴を有している。
【0008】
プレス成形の際に脱気のための空気孔によって無機質板に生じる脱気跡を、型締め状態のままで上記空気孔に加圧空気を供給することで押し戻すことで解消するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プレス成形時に真空吸引によって無機質板に脱気跡が生じても、型締め状態のままで脱気のための空気孔に所定の圧力の加圧空気を供給するために、脱気跡が押し戻されて脱気跡が解消されてしまうものであり、このために脱気跡が成形後の無機質板の外観を悪くしてしまうことがなく、脱気跡が剥がれることによる塗膜破壊が生じることもないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると、図1は本発明にかかるプレス成形工程を示しており、押出成形により作製された中空の無機質板1がプレス成形機における下型2上に位置させた後、成形型3を下降させて無機質板1の表面に押し付け、プレスして成形型3の型面に対応する凹凸模様を無機質板1の表面に形成させる。
【0011】
また、このプレスに際し、成形型3の内部に設けたエア通路5と、型面に設けた空気孔4とを通じて真空吸引することで、無機質板1の表面部を成形型3の型面に追随させて無機質板1の表面にシャープな凹凸模様を形成する。この時、プレス成形機を振動(上下方向に振動)させると、脱気がよりスムーズになされる。
【0012】
このようにプレス成形を行ったならば、次いで型開きを行う前に、上記エア通路5に加圧空気を供給してエア通路5内の所定の圧力に短時間だけ上昇させる。型締め状態のままでこのようなエアパージを行えば、成形型3に設けた空気孔4内に無機質板1の表面の一部が入り込んでいても空気圧によって押し戻されてしまうために、突起としての脱気跡が無機質板1に残ることがない。
【0013】
このエアパージもプレス成形機に振動を付加した状態で行うことができる。無機質板1が空気による加圧で変形するには、無機質板1の弾性限界応力以上の応力が必要であるが、無機質板1の弾性限界応力が1kgf/cm2以下である場合には振動を付加せずに、1kgf/cm2を越える場合は振動を付加することが好ましい。
【0014】
また、上記空気による加圧で脱気跡を解消するには、成形型3内のエア通路5の空隙体積に応じた圧力のエアを充填する必要があるが、空気孔7を含むエア通路5の空隙体積は、成形型3の製作後に実測で把握しておくことで、対応する所定の圧力を決定することができる。
【0015】
上記脱気跡の解消のためのエアパージが完了すれば、成形型3を上昇させることで型開きを行う。型開き前にエア通路5内の空気を抜いて大気圧に戻しておいてもよいが、エア通路5内の加圧空気を利用して型開き時に無機質板1が成形型3から離されるようにしてもよく、別途離型用のエアを供給するようにしてもよい。また、離形に際して、上下振動を付加してもよいのはもちろんである。なお、離型を促すためのエアは、型を開いた状態で供給するために、型締め状態での加圧エアの供給の際と異なり、脱気跡を解消することはできない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の一例を断面で示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 無機質板
2 下型
3 成形型
4 空気孔
5 エア通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質板の表面に成形型を押し付けてプレスするにあたり、無機質板の表面を成形型に設けた空気孔を通じて成形型側に真空吸引し、その後、型締め状態のままで上記空気孔に所定の圧力の加圧空気を供給し、次いで型開きを行って無機質板の離型を行うことを特徴とする無機質板のプレス成形方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−202369(P2009−202369A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44884(P2008−44884)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】