説明

無端金属支持体の表面の清掃方法

【課題】広幅の無端金属支持体の効率がよい表面の清掃方法の提供。
【解決手段】原料のセルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解させセルロースエステル系樹脂溶液をダイス101bより無限移行する無端金属支持体上に流延してウェブを形成する流延工程101と、ウェブを前記無端支持体から剥離した後、少なくとも乾燥工程、巻き取り工程とを有する溶液流延製造装置の無端金属支持体の表面の清掃方法において、セルロースエステル系樹脂溶液に一般式CH2=CR1−CO−OR2で表される化合物から構成される樹脂からなる清掃剤を添加して、セルロースエステル系樹脂溶液の流延と同時に無端金属支持体の表面の清掃を行う無端金属支持体表面の清掃方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステル系樹脂を使用し、溶液流延法によりセルロースエステル系フィルムを製造する際の溶液流延製造装置における無端金属支持体の表面の清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステル系フィルムを製造する一つの方法として、溶液流延法が知られている。溶液流延法は、原料のセルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えて調製したセルロースエステル系樹脂溶液(以下、ドープと言う)を、無限移行する無端金属支持体(例えばベルトあるいはドラム)の上に、ダイスより吐出し、流延した後、無端金属支持体上である程度まで溶媒を除去した後、無端金属支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶媒を除去し製造する方法である。
【0003】
セルロースエステル系フィルムは、液晶表示装置(LCD)に使用する偏光板の保護フィルム、液晶表示装置(LCD)等に用いられる位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルム又有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム、プラスチック基板、写真用支持体、あるいは動画用セルや光学フィルタ、更にはOHPフィルムを含めた光学用フィルムとして使用されている。
【0004】
光学用フィルムの用途の一つである液晶液晶表示装置は、低電圧、低消費電力で、IC回路への直結が可能であり、特に薄型化が可能であることから、液晶TVやパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、携帯用端末、テレビジョン、更にはデジタルスチルカメラやムービーカメラ等の表示装置として広く採用されている。この液晶表示装置は、基本的な構成としては、例えば液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。
【0005】
偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通すので、LCDにおいては、電界による液晶の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っており、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。そして、この様な偏光板の保護フィルムとして、セルロースエステル系フィルムが広く用いられている。
【0006】
そして、液晶表示装置の品質の向上に合わせて、偏光板の品質向上が要求され、それと共に偏光板の保護フィルムも、より高品質であることが要望されている。更に、近年では液晶TVの大型化、薄軽化に伴い液晶画面が大きくなるに従って、セルロースエステル系フィルムも広幅化、薄膜化と合わせ、ますます高品質であることが要望されている。この様な偏光板の保護フィルムとして使用されるセルロースエステル系フィルムの重要な特性として、フィルム表面の平面性が挙げられる。
【0007】
偏光板の高生産性化に伴い、偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステル系フィルムの高生産性化(生産量増大)が進むと、製膜速度の高速化に伴って、無端金属支持体の表面が汚れるサイクルも短くなってきている。
【0008】
溶液流延製膜装置によるセルロースエステル系フィルムの製造において、無端金属支持体の表面の汚れは、主に原料のセルロースエステル樹脂中に微量に含まれる金属塩等の不純物が金属支持体表面に蓄積したものであると考えられ、これらがフィルムに転写して、転写した部分のヘイズ値が高くなる等の故障が発生する原因の一つになる。特に、薄膜のセルロースエステル系フィルムの場合は転写の影響が大きく出てしまい生産効率を低下させる原因の一つもなっている。この様な場合、生産を中止して清掃し直す必要がある。又、清掃が的確に行われなかった場合には、短時間で汚れが再発し、清掃をやり直さなければならない。
【0009】
このよ様な溶液流延製膜装置によるセルロースエステル系フィルムの製造において、無端金属支持体の清掃方法として、例えば特開2002−28943号公報に、純水又は有機溶媒を用具に含ませて拭く方法が知られている。更に確実に汚れが取れる方法が検討されてきた。例えば、無端金属支持体の表面温度を10〜30℃までの温度範囲とし、pH3.0〜5.5の酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、この順で拭くことにより、無端金属支持体の表面の汚れを拭き取る方法が知られている(例えばも特許文献1参照。)。
【0010】
しかしながら、特許文献1の記載の方法は確実に汚れを取る清掃方法ではあるが、清掃が人手に頼るため、セルロースエステル系フィルムの広幅化に合わせて、無端金属支持体の幅も広がり、表面積が増加するにつれて、効率的とは言えず生産性の観点から必ずしも、優れた方法とは言えない状況にあたる。
【0011】
この様な状況から、セルロースエステル系フィルムの広幅化に合わせて、広幅の無端金属支持体の効率がよい表面の清掃方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2002−28943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、広幅の無端金属支持体の効率がよい表面の清掃方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0014】
1.原料のセルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解させセルロースエステル系樹脂溶液をダイスより無限移行する無端金属支持体上に流延してウェブを形成する流延工程と、前記ウェブを前記無端支持体から剥離した後、少なくとも乾燥工程、巻き取り工程とを有する溶液流延製造装置の前記無端金属支持体の表面の清掃方法において、前記セルロースエステル系樹脂溶液に下記一般式(1)で表される化合物から構成される樹脂からなる清掃剤を添加して、前記セルロースエステル系樹脂溶液の流延と同時に前記無端金属支持体の表面の清掃を行うことを特徴とする無端金属支持体の表面の清掃方法。
【0015】
一般式(1) CH2=CR1−CO−OR2
式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素原子数4〜10の分岐又は直鎖のアルキル基(鎖状炭化水素)を示す。
【0016】
2.前記清掃剤を予めセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%添加することを特徴とする、前記1に記載の無端金属支持体の表面の清掃方法。
【0017】
3.前記清掃剤を5質量%〜80質量%溶解した溶液を、ダイスの直前にセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%インライン添加することを特徴とする、前記1に記載の無端金属支持体の表面の清掃方法。
【0018】
4.前記清掃剤を予めセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%添加し、且つ該清掃剤を5質量%〜80質量%溶解した溶液を、ダイスの直前にセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%インライン添加することを特徴とする、前記1に記載の無端金属支持体の表面の清掃方法。
【発明の効果】
【0019】
広幅の無端金属支持体の効率がよい表面の清掃方法を提供することが出来、広幅のセルロースエステル系フィルムの生産効率を上げることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図1〜図3を参照しながら説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図1は無限移行する無端金属支持体として無端金属ベルト支持体を使用した溶液流延法によるセルロースエステル系フィルムの製造装置の概略図である。
【0022】
図中、1aはセルロースエステル系フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1aは、流延工程101と、第1乾燥工程102と延伸工程103と、第2乾燥工程104と、巻き取り工程105とを有している。
【0023】
流延工程101は、鏡面の無端金属ベルト支持体(以下、ベルト支持体とも言う)101aと、セルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープ2ベルト支持体101aに流延するダイス101bと、加熱装置101cとを有している。ベルト支持体101aはロール101a1とロール101a2とで保持され、回動(図中の矢印方向)が可能となっている。101b1はダイス101bに取り付けられたドープの供給管を示す。101b2はドープの供給管101b1に取り付けられた清掃剤の供給管を示す。清掃剤の供給管101b2の取り付け位置はダイス101bに出来るだけ近くであることが好ましい。
【0024】
清掃剤の供給管101b2の使用は次の方法が挙げられる。1)清掃剤が予め混合されているドープを使用する場合は、清掃剤の供給管は使用することはない。2)ドープに混合する清掃剤の量を減らし、不足する量を清掃剤の供給管101b2より供給する時に使用する。3)清掃剤をドープがダイスに供給する直前に混合する時に使用する。
【0025】
3はダイス101bからドープ2を無端ベルト支持体上に流延したウェブを示す。ウェブ3の厚さは、巻き取り工程105で回収された光学用フィルムの厚さが設定された膜厚になるように必要に応じて設定が可能となっている。4は無端ベルト支持体101aに流延されたウェブを剥離する剥離ロールを示す。
【0026】
ドープ2はセルロースエステル樹脂を良溶媒と、貧溶媒からなる混合溶媒を使用して作製されている。本発明では、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と言う。
【0027】
加熱装置101cは、無端ベルト支持体101aの上に流延されたウェブ3を無端ベルト支持体101aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。
【0028】
加熱装置101cは、乾燥箱101c1と、乾燥箱101c1に配設された乾燥風の第1供給装置101d1と、第2供給装置101d2と、排気管101d3とを有している。
【0029】
第1供給装置101d1と、第2供給装置101d2とは無端ベルト支持体101aの表面の両端部と中央部とに供給する乾燥風の温度を別々に供給する様に配設してもよいし、無端ベルト支持体101aの全面を同じ温度の乾燥風を供給する様に配設してもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。101d11は第1供給装置101d1への乾燥風の供給管を示す。101d21は第2供給装置101d2への乾燥風の供給管を示す。
【0030】
第1供給装置101d1から供給される乾燥風の温度は、乾燥効率、溶媒の発泡等を考慮し、20℃〜80℃であることが好ましい。
【0031】
第2供給装置101d2とから供給される乾燥風の温度は、溶媒の発泡、配向度、透湿性、剥離性等を考慮し、10℃〜40℃であることが好ましい。
【0032】
流延後、剥離までの間での時間は作製する光学用フィルムの膜厚、使用溶媒によって異なるが、無端ベルト支持体101aからの剥離性を考慮し、0.5分〜5分の範囲が好ましい。
【0033】
使用するベルト支持体101aとしては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、例えばステンレス、鋳物で表面をメッキ仕上げしたベルト支持体等が好ましく用いられる。ベルト支持体101aの幅は1000mm〜4000mmが好ましい。流延する幅は、ベルト支持体101aの幅に対して、80%〜99%とすることが好ましい。
【0034】
流延工程の無端ベルト支持体101aの表面の温度は20℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定することが好ましい。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0035】
ウェブ3をベルト支持体101aより剥離する時のウェブ3の全残留溶媒量は、ベルト支持体からの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後に出来上がるセルロースエステル系フィルムの物理特性等を考慮し、70質量%〜170質量%が好ましい。又、全残留溶媒量に対する良溶媒量の比率は、ベルト支持体からのウェブの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後に出来上がるセルロースエステル系フィルムの物理特性等を考慮し10%〜70%が好ましい。好ましくは5%〜60%であり、更に好ましくは5%〜30%である。尚、使用する溶媒に関しては後述する。
【0036】
ドープ2のセルロースエステル形成用の樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステル系フィルム形成用の樹脂の濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10質量%〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15質量%〜25質量%である。
【0037】
ベルト支持体101aからウェブ3を剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブ3はMD方向に延伸するため、本発明においては無端ベルト支持体101aからウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力は100N/m〜400N/mにすることが好ましい。
【0038】
第1乾燥工程102は、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとを有する乾燥箱102aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール102dと下部の搬送ロール102eとを有している。上部の搬送ロール102dと下部の搬送ロール102eとは上下で一組で、複数組から構成されている。第1乾燥工程102で延伸工程103に入る前のウェブ3に含まれる溶媒量の調整が行うことが可能となっている。
【0039】
乾燥温度は、延伸工程に入る時のウェブの残留溶媒量により異なるが、溶媒の蒸発に伴うウェブの表面への露結、残留溶媒量、伸縮率の調整、溶媒の発泡等を考慮し、20℃〜80℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。
【0040】
延伸工程103は、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとを有する外箱103aと、外箱103aの中に入れられたテンター延伸装置103dとを有している。テンター延伸装置103dに使用するテンターは特に限定はなく、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。テンター延伸装置103dでは、ウェブ3の搬送方向(MD方向)、あるいは搬送方向と直角方向(TD方向)に必要に応じて延伸することが可能となっている。
【0041】
尚、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとは逆であってもよい。延伸工程103における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線が挙げられる。
【0042】
第1乾燥工程102における処理が終了し、延伸工程103での延伸が開始される時のウェブの残留溶媒量の幅手の分布は、搬送・乾燥後に出来上がるフィルムの物理特性等を考慮し、ウェブの中央部の残留溶媒量が端部の残留溶媒量よりも2質量%〜20質量%高いことが好ましい。
【0043】
延伸工程103で延伸開始時のウェブの全残留溶媒量は、スリキズ、収縮率、変形等を考慮し、10質量%〜30質量%にすることが好ましい。又、全残留溶媒量に対する良溶媒量の比率は、搬送・乾燥後に出来上がるフィルムの物理特性等を考慮し、5%〜50%が好ましい。好ましくは、5%〜40%である。更に好ましくは、5%〜30%である。
【0044】
第2乾燥工程104は、乾燥風取り入れ口104bと排出口104cとを有する乾燥箱104aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとを有している。上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとは上下で一組で、複数組から構成されている。第2乾燥工程104に配設される搬送ロールの数は、乾燥条件、方法、製造されるセルロースエステル系フィルムの長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ロール104dと下部の搬送ロール104eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ロールとなっている。又、乾燥工程から巻き取り工程までの間には、全て自由回転する搬送ロールが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ロール(駆動源によって回転駆動するロール)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ロールは、その駆動でセルロースエステル系フィルムを搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアの吸引)などにより、セルロースエステル系フィルムの搬送と、駆動ロールの回転とを同期させる機構が付いている。
【0045】
第2乾燥工程104では加熱空気、赤外線等単独又は加熱空気と赤外線乾燥を併用しても構わない。簡便さの点で加熱空気で行うのが好ましい。本図は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のウェブの残留溶媒量により異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、30℃〜180℃の範囲で残留溶媒量により適宜選択して決めればよく、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥しても構わない。第2乾燥工程104での乾燥処理後のセルロースエステル系フィルムの残留溶媒量は、乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性伸縮率等を考慮し、0.01質量%〜15質量%が好ましい。尚、本発明では流延工程で形成されたウェブが第2乾燥工程104で徐々に溶媒が除去され、全残留溶媒量が15質量%以下となったウェブをセルロースエステル系フィルムと言う。
【0046】
巻き取り回収工程105は、巻き取り装置(不図示)を有し、第2乾燥工程104で設定した残留溶媒量としたセルロースエステル系フィルム5を必要量の長さに巻き芯に巻き取る。105aは巻き芯に巻き取られたロール状のセルロースエステル系フィルムを示す。尚、巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることが出来る。
【0047】
巻き取り回収工程105で回収されたセルロースエステル系フィルム5の伸縮率は、搬送・乾燥後に出来上がるフィルムの物理特性等を考慮し、MD方向の伸縮率が0%〜20%で、TD方向の伸縮率が−3%〜20%であることが好ましい。
【0048】
図2は無限移行する無端金属支持体として無端ドラム支持体を使用した溶液流延法によるセルロースエステル系フィルムの製造装置の概略図である。図1に示される製造装置1aとの違いは、流延工程で使用する無端支持体のみであり、他の工程は全て同じである。
【0049】
図中、1bはセルロースエステル系フィルムの溶液流延法の製造装置を示す。製造装置1bは、流延工程101′と、第1乾燥工程102と延伸工程103と、第2乾燥工程104と、巻き取り工程105とを有している。第1乾燥工程102と延伸工程103と、第2乾燥工程104と、巻き取り工程105は図1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0050】
流延工程101′は、鏡面の無端ドラム支持体(以下、ドラム支持体とも言う)101′aと、セルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープ2を、ドラム支持体101′aに流延するダイス101′bと、加熱装置101′cとを有している。ドラム支持体101′aは軸支され、回動(図中の矢印方向)が可能となっている。101′b1はダイス101′bに取り付けられたドープの供給管を示す。101′b2はドープの供給管101′b1に取り付けられた清掃剤の供給管を示す。清掃剤の供給管101′b2の取り付け位置はダイス101′bに出来るだけ近くであることが好ましい。清掃剤の供給管101′b2の使用は図1に示した場合と同じである。
【0051】
4′はドラム支持体101′aに流延されたドープが固化した状態のウェブを剥離する剥離ロールを示す。
【0052】
加熱装置101′cは、ドラム支持体101′aの上に流延されたウェブ3をドラム支持体101′aから剥離出来る状態に溶媒を除去するために配設されている。
【0053】
加熱装置101′cは、乾燥箱101′c1と、乾燥箱101′c1に配設された乾燥風の供給装置101′dと、排気管101′d2とを有している。
【0054】
乾燥風の供給装置101′dはドラム支持体101′aの表面の両端部と中央部とに供給する乾燥風の温度を別々に供給する様に配設してもよいし、ドラム支持体101′aの全面を同じ温度の乾燥風を供給する様に配設してもよく、必要に応じて適宜選択することが可能である。101′d1は供給装置101′dへの乾燥風の供給管を示す。供給装置101′dから供給される乾燥風の温度は、乾燥効率、溶媒の発泡等を考慮し、20℃〜80℃であることが好ましい。
【0055】
流延後、剥離までの間での時間は作製するセルロースエステル系フィルムの膜厚、使用溶媒によって異なるが、ドラム支持体101′aからの剥離性を考慮し、0.5分〜5分の範囲が好ましい。
【0056】
使用するドラム支持体101′aとしては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、例えばステンレス、鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラム支持体等が好ましく用いられる。ドラム支持体101′aの幅は1700mm〜2700mmが好ましい。流延する幅は、ドラム支持体101′aの幅に対して、80%〜99%とすることが好ましい。
【0057】
流延工程のドラム支持体101′aの表面の温度は20℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定することが好ましい。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、あまり高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0058】
ウェブ3をドラム支持体101′aより剥離する時のウェブ3の残留溶媒量は、ドラム支持体101′aからの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後に出来上がるフィルムの物理特性等を考慮し、130質量%〜250質量%が好ましい。又、全残留溶媒量に対する良溶媒量の比率は、ドラム支持体からのウェブの剥離性、剥離時の残留溶媒量、剥離後の搬送性、搬送・乾燥後に出来上がるセルロースエステル系フィルムの物理特性等を考慮し5%〜70%が好ましい。好ましくは5%〜60%であり、更に好ましくは5%〜30%である。
【0059】
ドラム支持体101′aからウェブ3を剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブ3はMD(Machine Direction)方向に延伸するため、本発明においてはドラム支持体101′aからウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力は50N/m〜170N/mにすることが好ましい。他の符号は図1と同義である。
【0060】
本発明は、図1、図2に示される流延工程においてベルト支持体及びドラム支持体の清掃方法に関するものである。
【0061】
図1、図2に示される製造装置で製造されるセルロースエステル系フィルムは、幅1000mm〜4000mm、膜厚20μm〜100μmである。
【0062】
図1、図2に示される残留溶媒量は、下記の式により求めた値である。
【0063】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0064】
図3は図1のXで示される部分の拡大概略図である。
【0065】
図中、101b3はドープの供給管101b1の内部に配設されたスタチックミキサーを示す。スタチックミキサー101b3の配設する位置は、清掃剤の供給管101b2の取り付け位置とドープの供給管101b1のダイス101b取り付け位置との間に配設されている。使用するスタチックミキサー101b3のエレメントの数、長さ等の型はドープ及び清掃剤の粘度、混合度合い等を考慮し選択することが可能である。
【0066】
図2に示されるドープの供給管101′b1にも同じ様にスタチックミキサーが配設されている。
【0067】
清掃剤の供給管101b2より供給された清掃剤溶液はスタチックミキサー101b3によりドープ2(図1を参照)と混合されダイス101bに供給され無端ベルト支持体101a上に流延される。
【0068】
図1に示されるベルト支持体及び図2に示されるドラム支持体の清掃方法として、前記一般式(1)で表される化合物から構成される樹脂からなる清掃剤を使用することである。一般式(1)で表される化合物から構成される樹脂としては、重量平均分子量が500〜50,000でガラス転移温度(Tg)が50℃以上、好ましくは、60℃〜180℃を示すアクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステル等、アクリル系ポリマーが好ましいが、これに限定されない。分子量は、大塚電子(株)製光散乱光度計DLS8000を使用して測定した値を示す。
【0069】
前記一般式(1)で表される化合物として、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが挙げられる。
【0070】
更に、不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。
【0071】
更に、前記一般式(1)で表される化合物とコポリマーを構成する不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることが出来る。
【0072】
前記一般式(1)で示される化合物で構成される樹脂はコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸又はメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
【0073】
本発明において、アクリル系ポリマーという(単にアクリル系ポリマーという)のは、芳香環あるいはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はコポリマーを指す。芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。
【0074】
アクリル系ポリマーは、上記モノマーのホモポリマー又はコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、又、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
【0075】
上述のアクリル系ポリマーは、いずれもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
【0076】
本発明において、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸又はメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリル系ポリマー中2質量%〜20質量%含有することが好ましい。
【0077】
清掃剤の使用方法としては、1)清掃剤をドープに予め添加する方法、2)ダイスにドープを供給する直前にインラインで添加する方法、3)清掃剤をドープに予め添加し、不足分をダイスにドープを供給する直前にインラインで添加する方法が挙げられる。以下、各方法に付き具体的に説明する。
【0078】
1)清掃剤をドープに予め添加する方法
清掃剤を溶媒に温度30℃〜40℃で溶解し、5質量%〜80質量%の溶液Aとする。溶液Aをドープに温度35℃〜40℃で攪拌混合し添加する。添加量は、清掃効果、剥離張力の上昇に伴うウェブの破断を考慮し、1質量%〜30質量%が好ましい。
【0079】
2)ダイスにドープを供給する直前に清掃剤の供給管より清掃剤をドープに添加する方法
清掃剤を溶媒に温度30℃〜40℃で溶解し、5質量%〜80質量%の溶液Bとする。溶液Bを清掃剤の供給管より清掃剤をドープに添加する。添加量は、清掃効果、剥離張力の上昇に伴うウェブの破断を考慮し、1質量%〜30質量%が好ましい。尚、ドープの供給管に使用するスタチックミキサーは、使用するドープの供給管の直径、ドープの粘度等により選択することが可能である。例えば径が100mmのドープの供給管を使用し、ドープの粘度が20Pa・s、供給量30l/minの場合は、直径100mm、長さ2000mm、エレメントの数45枚を使用することが好ましい。
【0080】
3)清掃剤をドープに予め添加し、不足分をダイスにドープを供給する直前に清掃剤の供給管より清掃剤を添加する方法
この場合は、1)、2)に記載の方法を組み合わせて行うことが可能である。
【0081】
次に、本発明の無端金属支持体の清掃方法に使用する材料に付き説明する。
【0082】
(セルロースエステル系樹脂)
本発明に係わるセルロースエステル系樹脂としては特に限定はなく、例えば、セルロースアセテート樹脂、セルロースジアセテート樹脂、セルローストリアセテート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等を挙げることが出来る。これらの樹脂の中でセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートフタレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂が好ましく用いられる。
【0083】
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有するセルロースエステル系樹脂が好ましく用いられる。
【0084】
式(I) 2.0≦X+Y≦2.6
式(II) 0.1≦Y≦1.2
更に2.4≦X+Y≦2.6、1.4≦X≦2.3のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。中でも2.4≦X+Y≦2.6、1.7≦X≦2.3、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は公知の方法で合成することが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0085】
本発明に係わるセルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
【0086】
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂は各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステル系樹脂はこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0087】
本発明に係わるセルロースエステル系樹脂としては、前述のようにセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、又はセルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂のようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。尚、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネート樹脂は耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0088】
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、40000〜200000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、溶液流延法の場合は適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、50000〜150000である。又、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
【0089】
(ドープ)
溶液流延法に使用するドープを作製する際に使用される溶媒としては、上記樹脂を溶解出来る溶媒であれば何でもよく、又単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解出来るものであれば使用することが出来る。一般的には良溶媒と、貧溶媒からなる混合溶媒が用いられている。セルロースエステル系樹脂の場合、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶媒、貧溶媒が変わり、例えばアセトンを溶媒として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶媒になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶媒となる。セルロースエステル系樹脂の場合、良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。
【0090】
使用する樹脂により、良溶媒及び貧溶媒は異なってくるのでセルロースエステル系樹脂の場合に付き説明する。良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0091】
貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘクサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0092】
次にセルロースエステル系樹脂を使用したドープの調製方法に付き述べる。ドープを調製する時の、セルロースエステル系樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。又、セルロースエステル系樹脂を貧溶媒と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0093】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0094】
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。又、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
【0095】
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステル系樹脂を溶解させることが出来る。
【0096】
次に、このセルロースエステル系樹脂溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0097】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0098】
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステル系フィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。又、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0099】
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶媒の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0100】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0101】
(可塑剤)
可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等が挙げられる。トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等が挙げられる。ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等が挙げられる。グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。
【0102】
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
【0103】
又、本発明では特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、更に好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は単独あるいは2種以上併用して用いることが出来る。
【0104】
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステル系樹脂に対して、1〜40質量%添加させることが出来、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることが出来ず、切り屑の発生が多くなる。
【0105】
本発明に係わる光学用フィルムには酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。又例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0106】
又、この他、カオリン、タルク、けい藻土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0107】
本発明の清掃方法で製造されたセルロースエステル系フィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板又は液晶表示用部材等に使用することが可能であり、この場合、偏光板又は液晶等の劣化防止のため、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0108】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
【0109】
好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。例えば、特開平10−182621号、特開平8−337574号、記載の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。又、特開平6−148430号、特開平12−273437号に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。あるいは特開平10−152568号に記載されている紫外線吸収剤を加えてもよい。
【0110】
これらの紫外線吸収剤の中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい紫外線吸収剤として挙げられる。以下にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0111】
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
以下にベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
紫外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒とセルロースエステル系樹脂中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加することが好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤としての効果、透明性等を考慮し、0.1質量%〜2.5質量%が好ましい。更に、好ましくは、0.8質量%〜2.0質量%%である。
【0112】
又、セルロースエステル系樹脂フィルムには、フィルム同士の張り付きを防止したり、滑り性を付与したりして、ハンドリングしやすくするために、マット剤として微粒子を添加してもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子が挙げられる。無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、珪素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0113】
二酸化珪素の微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL−200、200V、300、R972、R972V、R974、R976、R976S、R202、R812,R805、OX50、TT600、RY50、RX50、NY50、NAX50、NA50H、NA50Y、NX90、RY200S、RY200、RX200、R8200、RA200H、RA200HS、NA200Y、R816、R104、RY300、RX300、R106などが挙げられる。これらの内、分散性や粒径を制御する点では、AEROSIL−200V、R972Vが好ましい。
【0114】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
【0115】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0116】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
【0117】
本発明に係る微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0118】
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、又、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
【0119】
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。又例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することが出来る。
【0120】
尚、見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
【0121】
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に係る微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
【0122】
《調製方法A》
溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0123】
《調製方法B》
溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶媒に少量のセルロースエステル系樹脂を加え、撹拌溶解する。
【0124】
これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0125】
《調製方法C》
溶媒に少量のセルロースエステル系樹脂を加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0126】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0127】
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0128】
使用される溶媒は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステル系樹脂の製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
【0129】
セルロースエステル系樹脂に対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル系樹脂100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0130】
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
【0131】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0132】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。又その際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0133】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
【0134】
又、これらの微粒子はフィルムの厚み方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましい。
【0135】
又、本発明に係わるドープには導電性を有する物質を添加することで好ましいインピーダンスを有するセルロースエステル系フィルムを得ることも出来る。導電性物質としては特に限定はされないが、イオン導電性物質や導電性微粒子あるいはセルロースエステル系樹脂と相溶性を有する帯電防止剤などを用いることが出来る。
【0136】
ここでイオン導電性物質とは電気伝導性を示し、電気を運ぶ担体であるイオンを含有する物質のことであるが、例えば、イオン性高分子化合物を挙げることが出来る。
【0137】
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号に見られるようなアニオン性高分子化合物、例えば特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー、特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることが出来る。
【0138】
又、導電性微粒子の例としては導電性を有する金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0139】
又、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm以下特に105Ωcm以下であって、1次粒子径が10nm以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体をフィルム内の少なくとも一部の領域に体積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
【0140】
特に好ましくは、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマーあるいは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマーなどを含有することが望ましい。
【0141】
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度に持たせることが出来るため、優れた導電性を有しているばかりでなく、低相対湿度下においても導電性の劣化は見られず、粒子同志も分散状態ではよく分散されているにもかかわらず、塗布後造膜過程において粒子同志の接着性もよいため膜強度も強く、又他の物質、例えば基体にも優れた接着性を有し、耐薬品性に優れている。
【0142】
架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは一般に約0.01μm〜0.3μmの粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05μm〜0.15μmの範囲の粒子サイズが用いられる。ここで用いている「分散性粒状ポリマー」の語は、視覚的観察によって透明又はわずかに濁った溶液に見えるが、電子顕微鏡の下では粒状分散物として見えるポリマーである。
【0143】
帯電防止剤もしくはマット剤の添加はセルロースエステル系フィルムを光学用フィルムとして使用する場合は、光学用フィルムの表層部(表面から10μmの部分)に含まれていることが好ましく、共流延等の方法によってフィルムの表面に帯電防止剤及び/又はマット剤を含有させることが好ましい。具体的には、導電性物質及び/又はマット剤を含有するドープAと実質的にこれらを含有しないドープBを使用し、ドープBの少なくとも片側の面にドープAがあるように流延されることが好ましい。
【0144】
必要に応じて、更に帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤、マット剤、その他添加剤を加えてもよい。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0146】
実施例1
以下に示す方法によりセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0147】
(ドープの調製)
〈微粒子分散液〉
微粒子(アエロジルR972V(日本アエロジル株式会社製)) 11質量部
(1次粒子の平均径16nm、見掛比重90g/リットル)
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0148】
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに下記セルロースエステル樹脂を添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を十分に攪拌しながら、ここに上記微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0149】
メチレンクロライド 99質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.0、総アシル基置換度2.5) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
〈ドープの調製〉
下記組成のドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶媒の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネート樹脂と表1に示す様に各種清掃剤を投入し、更に可塑剤、微粒子添加液及び紫外線吸収剤を添加した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製しNo.1−1〜1−10とした。尚、清掃剤を使用しない他は全て同じ条件でドープを作製しNo.1−11とした。
【0150】
〈ドープの組成〉
メチレンクロライド 391質量部
エタノール 34質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.65) 100質量部
清掃剤 表1参照
可塑剤:トリフェニルフォスフェート 8.5質量部
可塑剤:エチルフタリルエチルグリコレート 2.0質量部
紫外線吸収剤:チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
0.5質量部
微粒子添加液 0.3質量部
上記、ドープの組成において、メチレンクロライドが良溶媒、エタノールが貧溶媒となる。
【0151】
【表1】

【0152】
(セルローストリアセテートフィルムの製造)
準備した各ドープNo.1−1〜1−11を図1に示す製造装置を使用し、流延工程、第1乾燥工程、延伸工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を経て以下に示す条件で作製し試料No.101〜111とした。製造条件を以下に示す。
【0153】
流延開始の条件
準備したドープを温度33℃で、ステンレス製の幅2500mm、ベルト長100mの無端ベルト支持体の上に乾燥膜厚が40μmになるように均一に押し出し流延した。
【0154】
流延工程の乾燥風の供給条件
ステンレス無端ベルト支持体上のウェブを乾燥するために第1供給装置より、温度70℃の乾燥風を供給した。第2供給装置より、温度15℃で乾燥風を供給した。
【0155】
第1乾燥工程の乾燥条件
ステンレス無端ベルト支持体からの剥離張力は180N/mの設定値で行い、第1乾燥工程の乾燥温度50℃で1分間とした。
【0156】
ステンレス無端ベルト支持体より剥離したウェブの全残留溶媒量は40質量%とした。ステンレス無端ベルト支持体より剥離したウェブの残留溶媒量(質量%)の値は一定の大きさのウェブを115℃で1時間乾燥した時のウェブの質量をBとし、乾燥前のウェブの質量をAとした時、((A−B)/B)×100=残留溶媒量(質量%)で求めた値である。
【0157】
延伸工程の延伸条件
テンター延伸装置はクリップテンターを使用し、巻き取り工程で回収したセルロースアセテートプロピオネートフィルムのTD方向の伸縮率が10%になるようにTD方向の延伸を行った。延伸工程の温度115℃で30秒間搬送させた。
【0158】
第2乾燥工程の乾燥条件
第2乾燥工程の乾燥温度125℃で15分間搬送させた。
【0159】
巻き取り工程
巻き取り時の残留溶媒量は0.1%未満であった。
【0160】
評価
作製した各試料No.101〜111に付き、生産安定性、生産効率を以下に示す測定方法で測定し結果を表2に示す。
【0161】
生産安定性の測定方法
流延製膜されたフィルムを巻き終わりから100mの位置でサンプリングし、その中から無作為に10箇所選んで、JIS K6714に規定される方法に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。ベルト清掃を実施後、フィルム3枚のヘイズ値が1.0を超えるまでの生産時間を測定し生産安定性とした。
【0162】
生産効率の測定方法
各試料を作製した後、次の試料を作製するまでに流延ベルト幅2500mm、ベルト長100mのベルト支持体の清掃に要した時間を測定し、清掃に要した時間が短いほど切り換えが容易になり生産効率が向上するため、清掃に要した清掃時間を目安とし生産効率とした。清掃が短い方が生産効率がよい。
【0163】
尚、清掃は溶媒として純水とメチレンクロライドを各々布に浸み込ませ、手による払拭方式で行った。
【0164】
【表2】

【0165】
本発明の有効性が確認された。
【0166】
実施例2
以下に示す方法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
【0167】
〈微粒子分散液〉
実施例1と同じ微粒子分散液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0168】
〈微粒子添加液〉
実施例1と同じ微粒子添加液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0169】
〈ドープの調製〉
下記組成のドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶媒の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネート樹脂と可塑剤、微粒子添加液及び紫外線吸収剤を添加した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
【0170】
〈ドープの組成〉
メチレンクロライド 391質量部
エタノール 34質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.65) 100質量部
可塑剤:トリフェニルフォスフェート 8.5質量部
可塑剤:エチルフタリルエチルグリコレート 2.0質量部
紫外線吸収剤:チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
0.5質量部
微粒子添加液 0.3質量部
上記、ドープの組成において、メチレンクロライドが良溶媒、エタノールが貧溶媒となる。
【0171】
〈清掃剤溶液の調製〉
清掃剤として綜研化学製アクトフローUMM1001を使用し、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、温度30℃で混合攪拌し表3に示す様に清掃剤の濃度を変えた清掃剤溶液を調製しNo.2−1〜2−8とした。流延直前、ダイス前のドープの供給管に図3に示す清掃剤溶液の供給管よりインラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)でインライン添加しドープへの添加を行った。
【0172】
【表3】

【0173】
(セルローストリアセテートフィルムの製造)
準備したドープを図1に示す製造装置を使用し、実施例1と同じ製膜条件で作製する時、以下に示す条件で流延工程で準備した各清掃剤溶液No.2−1〜2−8をドープの供給管に表4に示すように添加量を変えてインライン添加しセルローストリアセテートフィルムを作製し試料No.201〜223とした。尚、表中の添加量はセルローストリアセテートフィルムの固形分に対する質量%を示す。製造条件を以下に示す。
【0174】
清掃剤溶液のドープへの添加条件
清掃剤溶液を温度30℃で、流量を調整し、ドープの供給管に図3に示す清掃剤溶液の供給管よりインライン添加しドープへの添加を行った。尚、ドープの供給管の直径は100mm、スタチックミキサーは長さ2000mm、エレメントの数45枚を使用した。
【0175】
流延開始の条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0176】
流延工程の乾燥風の供給条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0177】
第1乾燥工程の乾燥条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0178】
延伸工程の延伸条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0179】
第2乾燥工程の乾燥条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0180】
巻き取り工程
実施例1と同じ条件で行った。
【0181】
評価
作製した各試料No.201〜223に付き、生産安定性、生産効率を実施例1と同じ測定方法で測定した結果を表4に示す。
【0182】
【表4】

【0183】
本発明の有効性が確認された。
【0184】
実施例3
以下に示す方法によりセルロースアセテートプロピオネートフィルムを製造した。
【0185】
〈微粒子分散液〉
実施例1と同じ微粒子分散液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0186】
〈微粒子添加液〉
実施例1と同じ微粒子添加液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0187】
〈ドープの調製〉
下記組成のドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶媒の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネート樹脂と可塑剤、微粒子添加液及び紫外線吸収剤を添加した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製しNo.3−1〜3−7とした。
【0188】
〈ドープの組成〉
メチレンクロライド 390質量部
エタノール 80質量部
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.65) 100質量部
清掃剤 表5参照
可塑剤:トリフェニルフォスフェート 8.5質量部
可塑剤:エチルフタリルエチルグリコレート 2.0質量部
紫外線吸収剤:チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
1質量部
紫外線吸収剤:チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
0.5質量部
微粒子添加液: 0.3質量部
上記、ドープの組成において、メチレンクロライドが良溶媒、エタノールが貧溶媒となる。
【0189】
【表5】

【0190】
〈清掃剤溶液の調製〉
表6に示す様に清掃剤として大同化成製ダイカラック8080を使用しの種類を変え、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、温度30℃で混合攪拌し清掃剤を溶解し、清掃剤溶液を調製しNo.3−a〜3−fとした。
【0191】
【表6】

【0192】
(セルロースアセテートプロピオネートフィルムの製造)
準備した各ドープNo.3−1〜3−7を図1に示す製造装置を使用し実施例1と同じ製膜条件で作製する時、流延工程で準備した各清掃剤溶液No.3−a〜3−fの添加量を変えてドープへインライン添加しセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製し試料No.301〜332とした。
【0193】
清掃剤溶液のドープへの添加条件
清掃剤溶液を温度30℃で、ドープの供給管に図3に示す清掃剤溶液の供給管より流量を調整しインライン添加しドープへの添加を行った。尚、ドープの供給管の直径は100mm、スタチックミキサーは長さ2000mm、エレメントの数45枚を使用した。
【0194】
流延開始の条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0195】
流延工程の乾燥風の供給条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0196】
第1乾燥工程の乾燥条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0197】
延伸工程の延伸条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0198】
第2乾燥工程の乾燥条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0199】
巻き取り工程
実施例1と同じ条件で行った。
【0200】
評価
作製した各試料No.301〜332に付き、生産安定性、生産効率を実施例1と同じ測定方法で測定した結果を表7に示す。
【0201】
【表7】

【0202】
本発明の有効性が確認された。
【0203】
実施例4
以下に示す方法によりセルローストリアセテートフィルムを製造した。
(ドープの調製)
〈微粒子分散液〉
実施例1と同じ微粒子分散液を調製し使用した。
【0204】
〈微粒子添加液〉
実施例1と同じ微粒子添加液を調製し使用した。
【0205】
〈主ドープの調製〉
実施例1と同じ方法で表8に示す様に各種清掃剤を添加した主ドープを調製しNo.4−a〜4−jとした。
【0206】
〈ドープの調製〉
準備した主ドープNo.4−a〜4−jを100質量部と、準備した微粒子添加液5質量部とを実施例1と同じ方法で混合しドープとしNo.4−1〜4−10とした。尚、清掃剤を使用しない他は全て同じ条件でドープを作製し比較としNo.4−11とした。
【0207】
【表8】

【0208】
(セルローストリアセテートフィルムの製造)
準備した各ドープNo.4−1〜4−11を図2に示す製造装置を使用し、流延工程、第1乾燥工程、延伸工程、第2乾燥工程、巻き取り工程を経て、実施例1と同じ条件でセルローストリアセテートフィルム作製し試料No.401〜411とした。
【0209】
流延開始の条件
準備したドープを温度33℃で、ステンレス製の無端金属ドラム支持体の上に乾燥膜厚が40μmになるように均一に押し出し流延した。
【0210】
流延工程の乾燥風の供給条件
ステンレス無端金属ドラム支持体上のウェブを乾燥するために第1供給装置より、温度70℃の乾燥風を供給した。第2供給装置より、温度15℃で乾燥風を供給した。
【0211】
第1乾燥工程の乾燥条件
ステンレス無端金属ドラム支持体からの剥離張力は180N/mの設定値で行い、第1乾燥工程の乾燥温度50℃で1分間とした。
【0212】
ステンレス無端金属ドラム支持体より剥離したウェブの全残留溶媒量は40質量%とした。全残留溶媒量の測定は実施例1と同じ方法で測定した値を示す。
【0213】
延伸工程の延伸条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0214】
第2乾燥工程の乾燥条件
実施例1と同じ条件で行った。
【0215】
巻き取り工程
巻き取り時の残留溶媒量は0.1%未満であった。
【0216】
評価
作製した各試料No.401〜411に付き、生産安定性を実施例1と同じ測定方法で測定し結果を評価ランクに従って評価し、生産効率は以下に示す方法で測定し得られた結果を表9に示す。
【0217】
生産効率の測定方法
各試料を作製した後、次の試料を作製するまでに幅2500mmの無端金属ドラム支持体の清掃に要した時間を測定し、清掃に要した時間が短いほど切り換えが容易になり生産効率が向上するため、清掃に要した清掃時間を目安とし生産効率とした。清掃が短い方が生産効率がよい。尚、清掃は溶媒として純水とメチレンクロライドを各々布に浸み込ませ、手による払拭方式で行った。
【0218】
【表9】

【0219】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】無限移行する無端金属支持体として無端金属ベルト支持体を使用した溶液流延法によるセルロースエステル系フィルムの製造装置の概略図である。
【図2】無限移行する無端金属支持体として無端ドラム支持体を使用した溶液流延法によるセルロースエステル系フィルムの製造装置の概略図である。
【図3】図1のXで示される部分の拡大概略図である。
【符号の説明】
【0221】
1a、1b 溶液流延法の製造装置
101、101′ 流延工程
101a 無端金属ベルト支持体(ベルト支持体)
101′a 無端ドラム支持体(ドラム支持体)
101b、101′b ダイス
101b1、101′b1 ドープの供給管
101b2、101′b2 清掃剤の供給管
101b3 スタチックミキサー
102 第1乾燥工程
103 延伸工程
104 第2乾燥工程
105 巻き取り工程
2 ドープ
3 ウェブ
4 剥離ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料のセルロースエステル系樹脂を溶媒に溶解させセルロースエステル系樹脂溶液をダイスより無限移行する無端金属支持体上に流延してウェブを形成する流延工程と、前記ウェブを前記無端金属支持体から剥離した後、少なくとも乾燥工程、巻き取り工程とを有する溶液流延製造装置の前記無端金属支持体の表面の清掃方法において、
前記セルロースエステル系樹脂溶液に下記一般式(1)で表される化合物から構成される樹脂からなる清掃剤を添加して、前記セルロースエステル系樹脂溶液の流延と同時に前記無端金属支持体の表面の清掃を行うことを特徴とする無端金属支持体の表面の清掃方法。
一般式(1) CH2=CR1−CO−OR2
式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素原子数4〜10の分岐又は直鎖のアルキル基(鎖状炭化水素)を示す。
【請求項2】
前記清掃剤を予めセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%添加することを特徴とする、請求項1に記載の無端金属支持体の表面の清掃方法。
【請求項3】
前記清掃剤を5質量%〜80質量%溶解した溶液を、ダイスの直前にセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%インライン添加することを特徴とする、請求項1に記載の無端金属支持体の表面の清掃方法。
【請求項4】
前記清掃剤を予めセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%添加し、且つ該清掃剤を5質量%〜80質量%溶解した溶液を、ダイスの直前にセルロースエステル系樹脂溶液に1質量%〜30質量%インライン添加することを特徴とする、請求項1に記載の無端金属支持体の表面の清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−34946(P2009−34946A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202833(P2007−202833)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】