説明

無線センサ端末

【課題】 マルチホップによる無線センサネットワークの自動構築に使用される無線センサ端末で個人の健康情報を取得する場合の端末の使用性を向上させ、使用率を高める。
【解決手段】 使用者の腕に装着される腕時計形式とする。情報収集のためのセンサ40をベルト20などに設ける。本体11は端末部12と情報表紙部である時計部13とからなり、端末部12は端末としての中核デバイスであるプロセッサ基板30を内蔵する。情報表示により使用者の必需品となり、使用率が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップによる無線センサネットワークの自動構築に使用される無線中継機能をもつ自律型の無線センサ端末に関し、更に詳しくは、使用者の腕に装着される腕時計形式の小型無線センサ端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、遠隔地の状況を人の手を借りずに取得したいとい要望がある。例えば所有する店舗やビルの様子、旅行中の自宅、菜園の温度、地盤の緩みなどの情報取得の要望である。このような要望に対し、これまではインターネットが利用されてきた。すなわち、パソコンにセンサを接続し、常時インターネットに接続しておけば、今日でもこのような情報取得は可能である。
【0003】
しかしながらパソコンは大きく、観測点を増やす場合に限界がある。また、観測点が移動する場合、例えば人の健康状況を遠隔から監視するような場合、大型のパソコンは携帯性に問題がある。更にインターネット接続は設定が必要であるとか、無線LANのカバーエリアが狭いといった問題があり、これも観測点の増加や移動に対する対応を困難にしている。このような状況下で最近開発された技術が「MOTE(モート)」(登録商標)と呼ばれる小型で自律型の無線センサ端末を用いた無線センサネットワークシステムである(例えば非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】日経サイエンス2004年9月号P66−75
【0005】
このMOTEシステム(モートシステム)においては、図6に示すように、情報を収集すべき箇所に無線センサ端末1が設置される。無線センサ端末1は、情報を収集するためのセンサの他に、収集されたデータを処理する処理部、そのデータを送信する無線通信機能及び無線中継機能を有する通信部などを内蔵している。無線センサ端末1におる「M」はMOTE本体であって、データ処理部及びデータ通信部を搭載したプロセッサ基板を表し、「S」はこれに組み合わされるセンサ基板を表している。
【0006】
特徴的なのは無線中継機能を有する通信部であり、これによる情報のマルチホップにより、複数の無線センサ端末1は大規模の無線メッシュネットワークを自動構築する。すなわち、個々の無線センサ端末1は、処理能力、無線能力が低くても、前述の無線中継機能、これによるマルチホップにより、個々の能力を遥かに超える能力のシステムを構築するのである。このため、個々の無線センサ端末1は非常に小型かつ安価で低消費電力であり、観測点の増加や移動にも簡単に対応できることになる。この特徴のため、このシステムは海鳥の生態研究などにも用いられ始めている。
【0007】
そして個々の端末情報、すなわちMOTE端末情報は、ゲートウェイと呼ばれるインターフェース2を介してホストコンピュータなどに送られ、一元管理される。また、そのホストコンピュータがLANやインターネットに接続されることにより、このMOTE端末情報は事実上、世界中どこでも入手することができる。
【0008】
このようなMOTEシステムの用途の一つとして、多くの人の健康状態を継続的に一元管理することが考えられる。すなわち、無線センサ端末1は小型、軽量であるので携帯性に優れており、腕時計のようにして使用者の腕に装着することも可能である。このため、多くの人の健康状態を継続的に一元管理することが可能になり、管理される人の数が増えれば増えるほどネットワークの通信機能も向上する。なお、腕時計型の健康情報センサに関して、ホストコンピュータと1対1で情報授受を行うシングルホップ形式のものは種々開発されている。
【0009】
しかし、MOTEシステムにおいては、無線センサ端末1は、データ取得、無線中継ノードとしての機能が強調される余り、健康情報取得のために個人が使用する場合までは考慮されておらず、その使用性は非常に悪いものであった。具体的には、個人が装着しても利便性がなく、興味もわかない単なる端末機器にしか過ぎず、取得したデータを装着者が認識することさえできない。このため、多くの人に長時間装着して貰うことは期待できず、このことがシステムの構築に大きな弊害をもたらすと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、個人が装着使用する場合の使用性に優れ、使用率及び使用時間の増大により有効なシステム構築に寄与するMOTEシステム用の無線センサ端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の無線センサ端末は、マルチホップによる無線センサネットワークの構築に使用される無線中継機能をもつ無線センサ端末であって、使用者の腕に装着される腕時計形式であり、且つ情報収集のためのセンサと共に情報表示部を有している。
【0012】
なお、マルチホップとは、端末から発信されたデータが他の端末を経由しながらネズミ算式に転送されていくデータ中継のことであり、これにより、小規模の端末ながら、大規模のメッシュネットワークを構築できることは前述したとおりである。
【0013】
情報表示部は、例えば時刻を表示する時計である。或いはセンサで収集された情報を表示する構成であり、両者を兼ねるものでもよい。表示はアナログ、デジタルのどちらでもよく、両者を併用することもできる。
【0014】
センサは1つでも複数でもよい。その種類については脈拍センサ、体温センサ、血圧センサ、加速度センサなどを挙げることができ、健康状態の把握に有効なデータを収集できるものであれば特にその種類を問わない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の無線センサ端末は、使用者の腕に装着される腕時計形式であり、且つ情報収集のためのセンサと共に時計などの情報表示部を有するので、その情報表示部に表示される情報を目的に使用することができ、装着を負担に感じることがなくなり、表示される情報の種類によっては必需品とさえなる。その結果、使用率が著しく向上し、1日の使用時間も増大することになり、有効なMOTEシステムの構築が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す無線センサ端末の外観を示す斜視図、図2は同無線センサ端末の時計部を開いた状態を示す斜視図、図3は同無線センサ端末に内蔵されたプロセッサ基板の斜視図である。
【0017】
本実施形態の無線センサ端末は、使用者の手首に装着される腕時計であり、その本体10をベルト20で手首に固定する構造になっている。無線センサ端末の本体10は、中心を挟む両端にベルト掛け11,11を有する円形の端末部12と、その表面側に取付けられた時計部13とからなる。
【0018】
端末部12は、円形の浅い容器と、その内部に収容されたプロセッサ基板30とからなる。プロセッサ基板30は、MOTEの中核をなすデバイスであり、円形基板の表面側にデータ処理部であるマイクロチップ、無線通信機能及び無線中継機能を有する通信部としての無線回路などを搭載し、裏面側に電池などを保持した構成になっている。
【0019】
時計部13は情報表示部であり、情報としての時刻を表示する。円形のアナログ時計からなる時計部13は、端末部12における円形の浅い容器の蓋部を兼ねており、容器の一方の側部にヒンジ部14により開閉可能に支持されており、容器の他方の側部に設けられたロック部15により閉止状態(使用状態)に保持される。
【0020】
ベルト20は通常の腕時計用ベルトと同様の基本構成であり、固有の構成としては装着状態で手首の内側に当たる部分に脈拍センサ40を装備している。脈拍センサ40は、発光ダイオード及びフォトトランジスタを用いた周知の光電式センサであり、ゴムベルトに埋設された図示されないケーブルを通してプロセッサ基板30と接続され、信号の授受及び給電を行う。
【0021】
本実施形態の無線センサ端末は、腕時計として使用者に装着される。腕時計は必需品であり、使用者は余計なものを装着している感じをもたなくなり、日常的かつ自然な感覚で無線センサ端末を装着できる。一言で言えば、装着による違和感がなくなるのである。したがって、装着率が上がり、当然のことながら一日の使用時間も長くなる。また、装着による使用者の負担も激減する。
【0022】
使用中、使用者の脈拍が脈拍センサ40により検出され、そのデータがプロセッサ基板30上の無線回路から発信される。この無線回路は単なる通信機能だけでなく無線中継機能を有し、これによりマルチホップによる無線センサネットワークシステム(MOTEシステム)を構築することは前述したとおりである。かくして、使用者の脈拍がホストコンピュータにより遠隔から継続的に集中管理されることになる。
【0023】
本実施形態の無線センサ端末は又、このネットワークシステムを介してホストコンピュータとの間で双方向の情報授受が可能である。また、この無線センサ端末は、腕時計として使用者に装着されることにより移動端末として機能し、固定端末と併用することができる。
【0024】
発信元である無線センサ端末からの最初のホップ先が、近隣の既知の場所に設置された固定端末の場合、無線センサ端末を装着する使用者の現在位置が、当該固定端末へ電波が届く範囲内であるという事実から、使用者のおおよその場所を検出できる。このため、センサ値が異常で使用者の救助が必要な場合など、使用者の早期の保護が可能となる。
【0025】
また、発信元である無線センサ端末からの最初のホップ先が近隣の移動端末の場合、使用者の健康状態等が緊急的保護を要するようなケースでは、発信元又は近隣端末でそのセンサ異常値を認識し、当該近隣端末の装着者へ緊急性を伝達することにより、早期の保護が可能になる。
【0026】
図5は本発明の別の実施形態を示す無線センサ端末の斜視図である。
【0027】
本実施形態の無線センサ端末は、図1〜図3に示した無線センサ端末と比べて時計部13の構造が相違する。情報表示部である時計部13は、ここではデジタル時計であり、そ液晶表示部16に通常のデジタル時計と同様に時刻、日付をデジタル表示すると共に、脈拍センサ40の出力(脈拍数BP)もデジタル表示する。更にここではその脈拍の警告度(WARNING)も同時にデジタル表示する。脈拍数の表示に代えて、或いは脈拍数の表示と共に、脈拍をパルス表示することも可能である。
【0028】
このような無線センサ端末を使用すれば、使用者は自分の脈拍をリアルタイムで知ることができ、その装着により大きな価値や意味、興味を見いだすことがてきる。したがって、装着率及び一日の使用時間が更に増大することを期待できる。
【0029】
これらの実施形態おいては、情報を収集するセンサは脈拍センサ40のみを使用したが、更に多くの種類のセンサを搭載することができる。具体的には、例えば図4に示すセンサ基板50をプロセッサ基板30と共に本体10に組み込む。センサ基板50はここでは3軸加速度センサ、温度センサなどを搭載しており、多種類のセンサを効率的に本体10に組み込むことができる。3軸加速度センサ、或いは1軸乃至2軸加速度センサは使用者の運動量の検出を可能にし、温度センサは使用者の環境の検出を可能とする。温度センサは体温検出等に使用することができる。
【0030】
これらの検出データも、無線センサ端末をノードとするメッシュネットワークによりホストコンピュータに伝送される。また、情報表示部であるデジタル方式の時計部13などに表示され、使用者はより多くの興味ある情報を受け取ることができる。
【0031】
以上、2つの実施形態を示したが、代表的な形態例であり、時計の形式がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。また、センサの種類及び取付け位置等がこれらの実施形態に限定されないことも当然である。更に表示がアナログ、デジタルの一方又は両方で可能なことは前述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示す無線センサ端末の外観を示す斜視図である。
【図2】同無線センサ端末の時計部を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】同無線センサ端末に内蔵されるプロセッサ基板の斜視図である。
【図4】同無線センサ端末に内蔵されるセンサ基板の斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態を示す無線センサ端末の斜視図である。
【図6】マルチホップによる無線センサネットワークの概念図である。
【符号の説明】
【0033】
10 本体
11 ベルト掛け
12 端末部
13 時計部
14 ヒンジ部
15 ロック部
16 液晶表示部
20 ベルト
30 プロセッサ基板
40 脈拍センサ
50 センサ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチホップによる無線センサネットワークの構築に使用される無線中継機能をもつ無線センサ端末であって、使用者の腕に装着される腕時計形式であり、且つ情報収集のためのセンサと共に情報表示部を有する無線センサ端末。
【請求項2】
前記情報表示部は、時刻を表示する時計である請求項1に記載の無線センサ端末。
【請求項3】
前記情報表示部は、前記センサで収集された情報を表示する請求項1又は2に記載の無線センサ端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−14471(P2007−14471A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197525(P2005−197525)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】