説明

無線タグ方向探知システム

【課題】ノイズ検出用のアンテナを追加することなく、ノイズの少ない通信チャネルを探すことができる無線タグ方向探知システムを提供する。
【解決手段】無線タグ200は、送信するデータを、トリガデータと、方向探知用データに分ける。無線タグリーダ100は、通信用アンテナ140で受信待ちを行い、トリガデータを受信したらチャネル指定データを送信する。このチャネル指定データを受信した場合に、無線タグ200は方向探知用データを送信する。また、無線タグリーダ100は通信用アンテナ140で受信待ちをしている間、方向探知用アンテナ150を用いて、方向探知チャネルの候補チャネルでノイズ強度を測定して方向探知チャネルを決定する方向探知チャネル決定処理を行なう。そして、チャネル指定データで、この方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルを指定し、方向探知用データの送受信は、指定した方向探知チャネルで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグの方向を無線タグリーダが探知する無線タグ方向探知システムに関し、特に、無線タグと無線タグリーダとが通信を行なう通信チャンネルを決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性を変化させることができる可変指向性アンテナが知られている。たとえば、特許文献1には、励振素子とその周囲に配置された複数の非励振素子とを備え、非励振素子のリアクタンス値を制御することで指向性を制御できるアレーアンテナが開示されている。可変指向性アンテナを利用すると、アンテナに到来する信号を複数の指向性パターンで測定することで、電波の到来方向を推定することができる。そこで、この可変指向性アンテナを無線タグリーダに搭載し、無線タグの方向探知を行なう無線タグ方向探知システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3836080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線タグ方向探知システムにおける無線タグリーダには、方向探知を行なうための上記可変指向性アンテナとは別に、無線タグとデータのやりとりを行なうための通信用アンテナが備えられる。
【0005】
また、通信チャネルが異なると通信ができないため、無線タグと無線タグリーダは、同じ通信チャネルで通信を行なう必要がある。加えて、通信チャネルが1つのみでは、そのチャネルにノイズが多い場合に通信できなくなってしまうおそれがあるので、無線タグ、無線タグリーダは、複数の通信チャネルに切り替え可能となっている。そして、通信に使用しているチャネルはノイズが多く通信ができない場合には、ノイズの少ない別の通信チャネルに変更して通信を行なうことになる。
【0006】
変更したチャネルで確実に通信が行えるようにするためには、どのチャネルがノイズの少ないチャネルかを、通信に用いるチャネルの変更前に確認する必要がある。そのためには、通信に用いるチャネルの変更前に、候補となる複数のチャネルにおいてノイズ強度を測定しなければならない。ここでは、このための処理を変更チャネル決定処理という。
【0007】
変更チャネル決定処理においては、変更候補となるチャネルに切り替え、一定時間の受信レベルを測定する必要がある。しかしながら、変更チャネル決定処理を行うためには、もちろん、電波を受信するためにアンテナが必要である。
【0008】
アンテナとしては、通信用アンテナおよび方向探知用アンテナ(可変指向性アンテナ)のどちらを用いることもできる。しかし、これらのアンテナは、それぞれ、無線タグとの通信、電波到来方向の判定を目的としており、その目的のための受信中および受信待機中はチャネルを変更できないことから、変更チャネル決定処理のためのアンテナとして使用することはできない。しかも、それら通信用アンテナおよび方向探知用アンテナは、それらのアンテナの本来の目的のために、常時、受信あるいは受信待機中となっていた。
【0009】
より詳しくは、無線タグからいつデータが送信されるか不明であるため、無線タグと通信を行うことを目的としている通信用アンテナは、常時、受信待機状態としておく必要がある。また、方向探知用アンテナは、無線タグのデータを受信しているときに指向性を変化させる必要があるが、前述のように、無線タグのデータはいつ送信されてくるるか分からない。そのため、無線タグからデータが送信されてくる可能性に備え、常時、指向性を変化させつつデータ受信処理を行っていた。
【0010】
これらのことにより、従来の無線タグ方向探知システムにおいては、チャネルの変更前に変更予定のチャネルのノイズを確認できるようにするためには、ノイズ検出用のアンテナを追加する必要があった。しかし、当然のことながら、アンテナを追加するとコストアップとなってしまい好ましくない。
【0011】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、ノイズ検出用のアンテナを追加することなく、ノイズの少ない通信チャネルを探すことができる無線タグ方向探知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、
(A)人に携帯され、複数の通信チャネルに切り替え可能であり、複数の通信チャネルから1つの通信チャネルを選択して電波を逐次送信する無線タグと、
(B)無線タグとの間でデータの送受信を行なう通信用アンテナ、および、指向性を変化させつつ無線タグから送信されるデータを受信する方向探知用アンテナを有し、方向探知用アンテナで受信したデータを用いて無線タグの方向探知を行なう無線タグリーダと、
を含む無線タグ方向探知システムであって、
(A1)前記無線タグは、起動中、周期的に、予め設定された固定チャネルでトリガデータを送信し、
(B)前記無線タグリーダは、
(B1)前記通信用アンテナおよび方向探知用アンテナの通信チャネルが、前記無線タグと通信可能な複数のチャネルから互いに別々に設定可能となっており、
(B2)前記通信用アンテナを、前記トリガデータを受信するまで、前記固定チャネルでデータ受信待機状態とし、
(B3)前記通信用アンテナがデータ受信待機状態となっている間、前記方向探知用アンテナの通信チャネルを、方向探知を行なうためのデータを受信する通信チャネルの候補となる候補チャネルとしてノイズ強度を測定し、測定したノイズ強度を、ノイズ許容閾値、あるいは、他の候補チャネルで測定したノイズ強度と比較することで、方向探知を行なうためのデータを受信する通信チャネルである方向探知チャネルを決定する方向探知チャネル決定処理を実行し、
(B4)前記通信用アンテナにより前記トリガデータを受信したら、前記方向探知チャネル決定処理により決定した方向探知チャネルを指定するチャネル指定データを、前記通信用アンテナから前記固定チャネルで送信させた後、その通信用アンテナの通信チャネルも前記方向探知チャネルとしてデータ受信待機状態とし、
(B5)前記方向探知用アンテナの通信チャネルも前記方向探知チャネルとして、方向探知用アンテナの指向性を順次切り替えつつデータ受信を行なう方向探知用データ取得処理を行い、
(A2)無線タグは、無線タグリーダからチャネル指定データを受信したら、そのチャネル指定データにより指定された通信チャネルを用いて、前記無線タグリーダが方向探知を行なうことができる方向探知用データを送信し、
(B6)前記無線タグリーダは、前記通信用アンテナで受信する電波を用いて、方向探知用データの受信終了を判断した後、前記方向探知用アンテナを用いた方向探知用データ取得処理を終了し、前記方向探知チャネル決定処理を再開することを特徴とする。
【0013】
従来は、前述のように、無線タグから方向探知用データがいつ送信されるか分からなかったので、無線タグリーダは、常に、方向探知用アンテナを用いて方向探知用データの取得処理を行い、通信用アンテナはデータ受信待機状態としていた。
【0014】
これに対し、本発明では、無線タグが方向探知用データを送信するのは、チャネル指定データを受信した場合であり、このチャネル指定データは無線タグリーダが送信する。つまり、本発明では、無線タグリーダがチャネル指定データを送信しない限り、無線タグは方向探知用データを送信しないようになっている。
【0015】
また、本発明において、無線タグリーダがチャネル指定データを送信するのは、無線タグからトリガデータを受信した場合であることから、無線タグリーダは、無線タグが送信するトリガデータを受信できる受信待機状態としておく必要がある。この受信待機状態においても方向探知決定処理を行えるようにするため、通信用アンテナの通信チャネルと方向探知用アンテナの通信チャネルを別々に設定可能としており、通信用アンテナのみを、トリガデータの送信に用いられるチャネルとして設定されている固定チャネルで受信待機状態とする。これにより、方向探知用アンテナは、無線タグからのデータを受信するために受信待機状態とする必要はない。そこで、通信用アンテナが受信待機状態となっている間、方向探知用アンテナを用いて、方向探知チャネルの候補チャネルでノイズ強度を測定して方向探知チャネルを決定する方向探知チャネル決定処理を行なうことができる。
【0016】
そして、トリガデータを受信した後に無線タグへ送信するチャネル指定データには、この方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルを指定するので、方向探知用データの送受信は、直前まで行っていた方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルを用いて行なうことができる。よって、別途、アンテナを追加することなく、方向探知用データの送受信に適した通信チャネルで方向探知用データの送受信を行なうことができる。
【0017】
なお、方向探知用データは、方向探知のみを目的としたデータでもよいが、方向探知においてはデータの内容は特に制限はないことから、この方向探知用データとして、制御に必要なデータを送信するようにしてもよい。
【0018】
前述の方向探知チャネル決定処理は、たとえば、請求項2のように、複数の候補チャネルで測定したノイズ強度を比較して方向探知チャネルを決定することができる。
【0019】
その請求項2記載の発明では、前記無線タグリーダは、
無線タグがこの無線タグリーダの通信範囲内に存在しないと判断できる場合、前記方向探知チャネル決定処理においてノイズ強度を測定する候補チャンネルを、設定可能な全部の通信チャネルとし、且つ、各候補チャネルに対し、方向探知範囲内の全設定方位においてノイズ強度を測定する全チャネル全方位測定処理を実行し、全候補チャネルにおけるノイズ強度の比較に基づいて、前記方向探知チャネルを決定する一方、
無線タグがこの無線タグリーダの通信範囲内に存在すると判断できる場合において、前記通信用アンテナがデータ受信待機状態となったときに実行する方向探知チャネル決定処理では、ノイズ強度を測定する候補チャネルを限定した限定チャネルノイズ測定処理を実行して前記方向探知チャネルを決定するようになっており、
この限定チャネルノイズ測定処理では、前回の方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルについては、方向探知範囲内の全設定方位においてノイズ強度を測定し、測定した全設定方位のノイズ強度が前記ノイズ許容閾値を越えなかった場合には、前回の方向探知チャネルを次回の方向探知チャネルとして決定し、
測定した全設定方位のノイズ強度のうち、前記ノイズ許容閾値を越える方位があった場合、この全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルに隣接する通信チャネルのみ、且つ、今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおいて最もノイズ強度が大きかった設定方位についてのみノイズ強度を測定し、今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおけるノイズ強度のうちの最大ノイズ強度と、隣接する通信チャネルにおいて測定したノイズ強度とを比較して、最もノイズ強度が低い通信チャネルを、方向探知チャネルとして更新する。
【0020】
無線タグが無線タグリーダの通信範囲に存在しない場合、無線タグリーダは、無線タグの方向探知を行なう必要がないことから、方向探知チャネルを決定するための時間が十分にある。そこで、無線タグが無線タグリーダの通信範囲に存在しないと判断できる場合には、全チャネル全方位測定処理を実行する。この全チャネル全方位測定処理は、ノイズ強度を測定する候補チャンネルを設定可能な全部の通信チャネルとしており、しかも、各候補チャネルに対し、方向探知範囲内の全設定方位においてノイズ強度を測定する。そのため、この全チャネル全方位測定処理により決定する方向探知チャネルは信頼性が高い。
【0021】
一方、無線タグが無線タグリーダの通信範囲内に存在する場合、無線タグリーダは周期的に無線タグからトリガデータを受信することになる。よって、無線タグが無線タグリーダの通信範囲に存在する場合、頻繁に無線タグの方向探知を行なうことになる。また、ノイズ強度は、時間に応じて変化することもある。そのため、無線タグが無線タグリーダの通信範囲に存在する場合においても、方向探知チャネル決定処理を繰り返し行なう必要がある。
【0022】
しかし、方向探知用データ取得処理は方向探知用アンテナを使用することから、同じく方向探知用アンテナを使用する方向探知チャネル決定処理は、頻繁に行われる方向探知用データ取得処理の間の短い時間に行わなければならない。
【0023】
そこで、無線タグが無線タグリーダの通信範囲に存在すると判断できる場合には、ノイズ強度を測定する候補チャネルを限定した限定チャネルノイズ測定処理を実行して方向探知チャネルを決定する。この限定チャネルノイズ測定処理では、まず、前回の方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルについてのみ、方向探知範囲内の全設定方位においてノイズ強度を測定する。そして、測定した全設定方位のノイズ強度がノイズ許容閾値を越えなかった場合には、この時点で、前回の方向探知チャネルを次回の方向探知チャネルとして決定する。よって、この場合には、ノイズ強度を測定するチャネルが1チャネルのみであることから、方向探知チャネルを短時間で決定することができる。
【0024】
さらに、測定した全設定方位のノイズ強度のうち、ノイズ許容閾値を越える方位があった場合でも、追加でノイズ強度を測定するのは、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルに隣接する通信チャネルのみ、且つ、今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおいて最もノイズ強度が大きかった設定方位についてのみである。そのため、この場合にも、方向探知チャネルを短時間で決定することができる。
【0025】
なお、隣接する通信チャネルにおいてノイズ強度を測定するのは、今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおいて最もノイズ強度が大きかった設定方位についてのみであるが、この設定方位のみに限定しても、この通信チャネルの適否をある程度の精度で判断することができる。その理由は以下の通りである。
【0026】
各チャネルは一定の周波数範囲で区切られてはいるものの、隣接する通信チャネルとは周波数範囲が連続している。そのため、ある通信チャネルにおいて測定されたノイズは、周波数範囲が連続する隣接するチャネルにおいても影響する場合が多いと考えられる。このため、設定方位に対するノイズ強度の変化をグラフ化した場合、ある通信チャネルと、それに隣接する通信チャネルとは、類似したグラフ形状となる。したがって、今回の限定チャネルノイズ測定処理において、全設定方位のノイズ強度を測定したチャネルで最もノイズ強度が大きかった設定方位は、そのチャネルに隣接する通信チャネルでも、最もノイズ強度が大きい方位であると推測できる。そこで、隣接する通信チャネルにおいてノイズ強度を測定するのは、今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおいて最もノイズ強度が大きかった設定方位についてのみとしているのである。
【0027】
また、方向探知チャネル決定処理は、請求項3のように、候補チャネルのノイズ強度をノイズ許容閾値と比較して方向探知チャネルを決定することもできる。
【0028】
その請求項3記載の発明では、前記方向探知チャネル決定処理が、
前記方向探知用アンテナの通信チャネルを、一つの候補チャネルに設定し、その候補チャネルでノイズ強度を逐次測定し、測定したノイズ強度と前記ノイズ許容閾値とを比較し、測定したノイズ強度が前記ノイズ許容閾値を超えていない間は、その候補チャネルを前記方向探知チャネルに決定する一方、
測定したノイズ強度が前記ノイズ許容閾値を超えた場合には、方向探知用アンテナの通信チャネルを別の候補チャネルに変更して、ノイズ強度の測定、ノイズ許容閾値との比較、その候補チャネルを方向探知チャネルに決定するかの判断を繰り返す処理である、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の無線タグ方向探知システムのシステム構成を説明する図である。
【図2】無線タグリーダ100の構成を示す図である。
【図3】無線タグ200の構成を示す図である。
【図4】無線タグリーダ100の制御部110が実行する制御内容の要部を示すフローチャートである。
【図5】無線タグリーダ100と無線タグ200とのデータ送受信の時間的流れを示す図である。
【図6】図4のステップS1で開始する方向探知チャネル決定処理を示すフローチャートである。
【図7】従来の無線タグ方向探知システムにおける無線タグリーダと無線タグとのデータ送受信の時間的流れを示す図である。
【図8】無線タグリーダ100が方向探知用アンテナ150を用いて行なう処理を示した図である。
【図9】ノイズスキャン1の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】図9のS22の全方位ノイズスキャンの処理内容を示すフローチャートである。
【図11】図9のS24の方向探知チャネル決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】ノイズスキャン2の処理内容を示すフローチャートである。
【図13】図12のS35の特定方位ノイズスキャンの詳細を示すフローチャートである。
【図14】図12のS37の方向探知チャネルの変更判定処理の具体的処理を示すフローチャートである。
【図15】周波数に対するノイズレベルを例示した図である。
【図16】設定方位に対するノイズレベルの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態の無線タグ方向探知システムのシステム構成を説明する図である。この図1に示すように、本実施形態の無線タグ方向探知システムは、無線タグリーダ100と無線タグ200を備えており、また、図2に示すコントローラ300も備えている。
【0031】
無線タグ200は人に携帯されるものであり、無線タグリーダ100と通信を行う。無線タグリーダ100は、無線タグ200からの電波を受信し、その電波の到来方向を、無線タグ200の方向として推定する。
【0032】
図2は、無線タグリーダ100の構成を示す図である。図2に示すように、無線タグリーダ100は、制御部110、チャネル制御部115、送信部120、受信部130、通信アンテ用ナ140、方向探知用アンテナ150、方向検知部160を備えている。
【0033】
制御部110は、外部へ無線送信させる信号を送信部120へ送るとともに、通信アンテ用ナ140によって受信され、受信部130によって復調・復号された信号をその受信部130から取得する。また、制御部110は、内部にメモリ111とタイマ112とを備えている。メモリ111には、制御部110が実行するプログラムや、後述するデフォルトチャネルなどが記憶されている。
【0034】
チャネル制御部115は、制御部110と接続されており、制御部110から通信チャネルを指定されると、指定された通信チャネルで送信部120および受信部130が通信を行なうように、送信部120の変調部122、受信部130の復調部131を制御する。なお、この通信チャネルは複数チャネル(たとえば、16チャネル)が設定可能である。
【0035】
送信部120は、符号部121、変調部122、増幅部123を備えている。符号部121は、制御部110から供給されたコマンドを符号化する。このコマンドとしては、たとえば、方向探知チャネルを無線タグ200へ送信することを指示するチャネル送信指示コマンドがある。方向探知チャネルとは、方向探知を行なうためのデータの送受信を行なう際の通信チャネルであり、この方向探知チャネルは、後述する方向探知チャネル決定処理で決定される。符号部121は、符号化したコマンドを変調部122へ出力する。変調部122は、符号部121にて符号化されたコマンドを電気的デジタル信号に変換した後に、チャネル制御部115により設定された通信チャネルで位相偏移変調や周波数偏移変調等の所定の変調方式により変調する。増幅部123は、変調部122で変調された信号を増幅する。増幅された信号は、通信アンテ用ナ140から電波として送信される。
【0036】
通信アンテ用ナ140は、無線タグ200との通信(データの送受信)に用いるアンテナであり、通信アンテ用ナ140により受信された電波は、復調部131において復調される。なお、この復調部131も、チャネル制御部115により設定された通信チャネルで復調を行なう。復調された信号は復号部132において符号化され、符号化された信号が制御部110に送られる。
【0037】
方向探知用アンテナ150は、電子走査導波器アレーアンテナ装置であり、1本の励振素子151と、その励振素子151を中心とする円周上に等間隔に設けられた6本の非励振素子152とを備えている。これら励振素子151と非励振素子152は、いずれも、接地導体153の上に鉛直に配置される。また、励振素子151は、電力受信部162に接続されている。
【0038】
さらに、方向探知用アンテナ150の各非励振素子152には、図示していないが、可変リアクタンス素子を備えた可変リアクタンス回路がそれぞれ接続されており、この可変リアクタンス素子は、指向性制御部161によりリアクタンス値が変化させられる。
【0039】
指向性制御部161は、方向探知用アンテナ150の指向性を制御部110から指示された指向性とするために、可変リアクタンス素子のリアクタンス値を指向性に基づいて定まる値に設定する。
【0040】
電力受信部162は、方向探知用アンテナ150の励振素子151が受信した受信信号の電力強度(受信電力強度)を検出する回路であり、無線信号の電力を検出する種々の公知の回路、たとえばダイオード検波器を含む回路構成のものである。また、電力受信部162も、送信部120や受信部130と同じチャネルに設定可能である。電力受信部162は、検出した受信電力強度を示す信号を図示しないAD変換回路を介して制御部110へ供給する。チャネル制御部163は、制御部110と接続されており、制御部110から受信チャネルを指定されると、電力受信部162の受信チャネルを、指定されたチャネルに設定する。
【0041】
前述の制御部110は、さらに、指向性制御部161に指向性を指示する信号を出力する。指向性制御部161は、制御部110からの信号に従い、予め設定された探知範囲分、方向探知用アンテナ150の指向性を変化させる。探知範囲は、たとえば、0〜330°までであり、また、指向性の変化は、所定角度毎であって、たとえば30°毎である。
【0042】
次に、図3を用いて、無線タグ200の構成を説明する。図3は、無線タグ200の構成を示す図である。無線タグ200は、アクティブ方式の無線タグであり、内蔵電源210を備えている。この内蔵電源210の他に、無線タグ200は、チャネル制御部215、送信部220、受信部230、アンテナ部240、切り替えスイッチ250、制御部260を備えており、内蔵電源210は、これらに電力を供給する。
【0043】
チャネル制御部215は、制御部260と接続されている。このチャネル制御部215は、無線タグリーダ100のチャネル制御部115と同様の機能であり、制御部260から通信チャネルを指定されると、指定された通信チャネルで送信部220および受信部230が通信を行なうように、送信部220の変調部222、受信部230の復調部231を制御する。
【0044】
送信部220は、符号部221、変調部222を備えている。符号部221は制御部260から供給されるデータを符号化して変調部222に送る。変調部222は、符号部221からの符号を、チャネル制御部215により設定された通信チャネルで、たとえば、振幅変位変調などの変調方式により変調する。変調された信号は、図示しない増幅部により増幅された後、アンテナ部240へ出力される。
【0045】
アンテナ部240は、第1アンテナ241と第2アンテナ242とを備えており、第1アンテナ241と第2アンテナ242は、アンテナの角度が互いに異なる角度とされており、これにより、偏波が互いに異なっている。たとえば、第1アンテナ241および第2アンテナ242には、いずれも、チップアンテナあるいはパターンアンテナを用い、互いの角度が90°異なるようにする。
【0046】
アンテナ部240と送信部220との間には、切り替えスイッチ250が配置されている。切り替えスイッチ250は、送信部220或いは受信部230を、第1アンテナ241に接続する状態と、第2アンテナ242に接続する状態とを切り替えるスイッチであり、制御部260により接続状態が切り替えられる。
【0047】
送信部220から出力された信号は、切り替えスイッチ250の導通状態に応じて定まるアンテナ241、242から外部に送信される。また、切り替えスイッチ250により受信部230と接続状態となっている側のアンテナ241、242により受信された電波は、電気信号として受信部230に供給される。
【0048】
受信部230は、アンテナ部240が受信した電波を復調する復調部231と、復調部231が復調した信号を復号する復号部232とを備えている。復調部231は、チャネル制御部215により設定された通信チャネルで復調を行なう。復号部232は、復号した信号を制御部260へ供給する。
【0049】
制御部260は、チャネル制御部215、送信部220および受信部230を制御する。また、制御部260は、タイマ261、メモリ262を備えている。タイマ261は、クロック発振器(図示せず)のクロックを計数することで計時を行う。メモリ262には、この無線タグ200のIDデータ等が記憶されている。
【0050】
制御部260は周期的に起動する。そして、起動中、一定周期でトリガデータを送信させる。このトリガデータは、常に、予め設定されたデフォルトチャネル(特許請求の範囲の固定チャネルに相当)で送信させる。トリガデータのデータ内容は、このトリガデータを受信した無線タグリーダ100が、方向探知用データ取得処理を開始できるデータであれば、どのようなデータ内容でもよい。たとえば、この無線タグ200のID、方向探知用データ取得処理の開始を指示するコマンド、および、ヘッダやチェックサム等からなる短いデータでよい。
【0051】
また、トリガデータに応答して無線タグリーダ100が送信したデータを受信した場合には、制御部260は、トリガデータを周期的に送信させることに代えて、方向探知用データを送信させる。この方向探知用データは、無線タグリーダ100の方向探知用アンテナ150が指向性を予め設定された探知範囲分だけ変化させる時間以上の送信時間であればよく、データ内容は特に制限はない。そこで、たとえば、制御に必要なデータを方向探知用データとして送信する。なお、無線タグ200に振動センサが備えられている場合には、周期的な起動を、その振動センサにより振動を検出している間に限ってもよい。
【0052】
図4は、無線タグリーダ100の制御部110が実行する制御内容の要部を示すフローチャートである。また、図5は、無線タグリーダ100と無線タグ200とのデータ送受信の時間的流れを示す図である。これら図4、図5を用いて、無線タグリーダ100の制御部110の制御内容を説明する。
【0053】
無線タグリーダ100の制御部110は、図4に示すように、まず、ステップS1において、方向探知チャネル決定処理を開始する。なお、この図4の処理は、コントローラ300の指示により開始し、コントローラ300は、電源がONされると無線タグリーダ100に図4の開始指示を出す。
【0054】
方向探知チャネル決定処理の詳細は後述するが、本実施形態における方向探知チャネル決定処理は、方向探知用アンテナ150の通信チャネルをある候補チャネルに設定し、その候補チャネルでノイズ強度を逐次測定する。そして、測定したノイズ強度とノイズ許容閾値とを比較し、測定したノイズ強度がノイズ許容閾値を超えていない間は、その候補チャネルを方向探知チャネルとする。一方、測定したノイズ強度がノイズ許容閾値を超えた場合には、方向探知用アンテナ150の受信チャネルを別の候補チャネルに変更して、ノイズ強度の測定以下を繰り返す処理である。
【0055】
続くステップS2では、通信用アンテナ140の受信チャネルをデータ通信用チャネルとしてデータ受信待ち状態とする。このデータ通信用チャネルは、あるチャネルに固定されており、図5では、デフォルトチャネルとして示しており、無線タグ200がトリガデータを送信するチャネルと同じチャネルである。
【0056】
続くステップS3では、通信用アンテナ140によりトリガデータを受信したか否かを判断する。このトリガデータは無線タグ200が一定周期で送信するものである。よって、この判断が否定判断であるうちは、無線タグ200は無線タグリーダ100の通信範囲に存在しないと判断できる。この場合、ステップS3の判断を繰り返す。一方、肯定判断となった場合には、無線タグ200は無線タグリーダ100の通信範囲に入ってきたと判断できる。この場合、この無線タグ200の方向探知を行なう必要があるので、ステップS3が肯定判断となった場合には、ステップS4に進み、ステップS1で開始した方向探知チャネル決定処理を中止する。図5では、t1〜t2に、無線タグ200はトリガデータを送信しており、これを通信用アンテナ140が受信している。そのため、t2時点で、方向探知用アンテナ150は方向探知チャネル決定処理を中止している。
【0057】
方向探知チャネル決定処理では、詳細は後述するが、どの時点でこの処理が中止されても、ある通信チャネルが方向探知チャネルに決定されている。そこで、ステップS5では、方向探知用アンテナ150の通信チャネルを、方向探知決定処理で決定された方向探知チャネルに設定する。
【0058】
そして、続くステップS6では、ステップS5で方向探知チャネルに設定した方向探知用アンテナ150を用いて、方向探知用データの取得処理を開始する。図5では、t3時点で、ステップS5、S6を実行することになる。
【0059】
ステップS7では、方向探知用データを送信する通信チャネルとして、方向探知チャネルを指定するチャネル指定データを、通信用アンテナ140から送信させる(図5のt3〜t4)。このとき、通信用アンテナ140はまだデフォルトチャネルであり、また、無線タグ200もデフォルトチャネルであるので、両者の通信チャネルは一致している。よって、チャネル指定データの送受信は通常成功することになる。
【0060】
ステップS8では、通信用アンテナ140の受信チャネルも方向探知チャネルとする。また、無線タグ200は、チャネル指定データを受信したら方向探知用データを送信するようになっており、図5では、t5〜t6で方向探知用データを送信している。また、無線タグ200は、この方向探知用データを、チャネル指定データで指定された方向探知チャネルで送信する。
【0061】
ステップS9では、無線タグ200が送信する方向探知用データの受信を行なう。この方向探知用データの受信は、通信用アンテナ140、方向探知用アンテナ150の両方で行なう。
【0062】
方向探知用アンテナ150を用いた受信では受信電力強度を測定することしかできない。しかし、通信用アンテナ140は受信部130(復調部131、復号部132)と接続されていることから、方向探知用データを通信用アンテナ140でも受信することにより、制御部110は、方向探知用データの受信終了を判断することができる。
【0063】
方向探知用データの受信終了を判断したら(図5のt6)、ステップS10で、通信用アンテナ140からレスポンス信号を送信させる(図5のt7〜t8)。このときの通信用アンテナ140の通信チャネルは、まだ方向探知チャネルであり、また、無線タグ200もまだ方向探知チャネルである。
【0064】
レスポンス信号を送信したら、ステップS11において、通信用アンテナ140、方向探知用アンテナ150の通信チャネルをともにデフォルトチャネルにする(図5のt9)。その後、ステップS1へ戻る。これにより、通信用アンテナ140は、デフォルトチャネルで受信待機状態を継続し、方向探知用アンテナ150は、次の方向探知用データ取得処理で用いる方向探知チャネルを決定するため、方向探知チャネル決定処理を再開する。また、無線タグ200も、レスポンス信号を受信したら、通信チャネルをデフォルトチャネルに戻す。なお、制御部110は、方向探知用データ取得処理において方向探知用アンテナ150を用いて取得した受信電力強度を用いて無線タグ200の方向判定を行なう。この方向判定の方法は、公知の種々の方法を用いることができ、たとえば、受信電力強度が最大値となったときの指向性方位を無線タグ200が存在する方位として推定する。なお、図5に示すように、実際に方向判定に用いる受信電力強度は、方向探知用データを受信している間の強度である。
【0065】
次に、図4のステップS1で開始する方向探知チャネル決定処理を説明する。図6は、この方向探知チャネル決定処理を示すフローチャートである。この方向探知チャネル決定処理は、図5に示したように、通信用アンテナ140がデフォルトチャネルで受信待ちをしている間に、方向探知用アンテナ150を用いて行なう。
【0066】
まず、ステップS101では、変更候補チャネルとして、デフォルトチャネルを設定する。続くステップS102では、実際に受信を行なう受信チャネルとして、ステップS101で設定した変更候補チャネル(すなわちデフォルトチャネル)を設定する。そして、ステップS103では、受信チャネルで受信処理を行なう。この受信処理は、受信チャネルの受信レベル(ノイズレベル)を測定する処理であり、方向探知用アンテナ150の指向性を探知範囲内で順次切り替えつつ、受信強度を測定する処理である。
【0067】
続くステップS104では、ステップS103での受信処理の結果得られた受信レベルが、変更閾値よりも大きいか否かを判断する。ここで受信レベルは、ステップS103の受信処理における全方位の平均値でもよいし、また、最大値でもよい。また、変更閾値は、特許請求の範囲のノイズ許容閾値に相当するものである。受信レベルが変更閾値を超えていない(S104がNO)場合、現在の受信チャネル、すなわち、現在の変更候補チャネルのノイズレベルは許容範囲であると判断できる。そこで、ステップS105にて、現在の受信チャネルを方向探知チャネルにする。
【0068】
一方、受信レベルが変更閾値を超えている場合、現在の受信チャネルのノイズレベルは許容値を超えていることになる。そこで、ステップS106に進み、別のチャネルを変更候補チャネルとして選択する。そして、ステップS107では、ステップS106で選択した変更候補チャネルを、実際に受信を行なう受信チャネルに設定する。その後は、前述のステップS103以降を実行する。
【0069】
よって、この図6の方向探知チャネル決定処理では、変更候補チャネルの受信レベルが変更閾値を超えた場合には、別のチャネルに切り替えて受信レベルが変更閾値を超えないチャネルを探す処理を継続することになる。そして、受信レベルが変更閾値を超えない変更候補チャネルを発見した場合には、そのチャネルを方向探知チャネルに設定する。そして、変更候補チャネルの受信レベルが変更閾値を超えない限り、その変更候補チャネルを方向探知チャネルとして、そのチャネルの受信レベルの監視を継続する。
【0070】
以上、説明した本実施形態の無線タグ方向探知システムについて、従来の方向探知システムと比較した効果を説明する。図7は、従来の無線タグ方向探知システムにおける無線タグリーダと無線タグとのデータ送受信の時間的流れを示す図である。従来のシステムにおいては、無線タグは、IDと方向探知用データとを1回のデータ送信で送信していた。このデータは、同図ではt1〜t3の期間に送信されているが、無線タグリーダは、無線タグからのデータがいつ送信されてくるか判断できないため、方向探知用アンテナを用いて、常時、方向探知用データ取得処理を行っていた。また、同様に、通信用アンテナも、常時、受信待ち、あるいは、データ送受信状態となっていた。そのため、これらのアンテナを用いて、別のチャネルのノイズレベルを測定することはできなかった。
【0071】
これに対して、本実施形態の無線タグ方向探知システムでは、図5に示したように、無線タグ200が方向探知用データを送信するのは、チャネル指定データを受信した場合であり、このチャネル指定データは無線タグリーダ100が送信するものである。つまり、本実施形態では、無線タグリーダ100がチャネル指定データを送信しない限り、無線タグ200は方向探知用データを送信しないようになっている。
【0072】
ただし、本実施形態において、無線タグリーダ100がチャネル指定データを送信するのは、無線タグ200からトリガデータを受信した場合であることから、無線タグリーダ100は、無線タグ200が送信するトリガデータを受信できる受信待機状態としておく必要がある。この受信待機状態においても方向探知チャネル決定処理を行えるようにするため、通信用アンテナ140の通信チャネルと方向探知用アンテナ150の通信チャネルを別々に設定可能としており、通信用アンテナ140のみを、トリガデータの送信に用いられるデフォルトチャネルで受信待機状態とする。これにより、方向探知用アンテナ150は、無線タグ200からのデータを受信するために受信待機状態とする必要はない。そこで、通信用アンテナ140がトリガデータの受信を終了するt2時点まで、方向探知用アンテナ150を用いて、方向探知チャネルの候補チャネルでノイズ強度を測定して方向探知チャネルを決定する方向探知チャネル決定処理を行なうことができる。
【0073】
そして、トリガデータを受信した後に無線タグ200へ送信するチャネル指定データには、この方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルを指定するので、方向探知用データの送受信は、直前まで行っていた方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルを用いて行なうことができる。よって、別途、アンテナを追加することなく、方向探知用データの送受信に適した通信チャネルで方向探知用データの送受信を行なうことができ、ひいては、無線タグ200の方向探知精度が向上する。
【0074】
さらに、無線タグ200が送信するデータを、トリガデータと、方向探知用データに分けることにより、次の効果も得られる。すなわち、本実施形態では、無線タグ200は、短いトリガデータを送信した後、チャネル指定データを受信しない限り、トリガデータに比較して送信時間が長い方向探知用データは送信しない。よって、無線タグリーダ100の通信範囲に存在しない場合にも方向探知用データを送信していた従来システムの無線タグに比較して、データ送信による電池の消耗を抑えることができる。
【0075】
また、それだけではなく、本実施形態では、方向探知用データは、ノイズの少ないチャネルで送信することができるものの、トリガデータはチャネル変更できないが、トリガデータは、従来システムの無線タグが1度に送信するデータよりもデータ送信時間がはるかに短い。従って、突発的に発生するノイズがこのトリガデータに重畳してしまう可能性が低くなる。よって、従来システムのように、ID等と方向探知用データを1回で送信する場合よりも、通信成功率が高くなる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第1実施形態では、方向探知チャネル決定処理は、方向探知チャネルとして決定している通信チャネルの受信レベルを継続的に測定しており、その受信レベルが変更閾値を超えた場合に、受信を行なうチャネルを別の変更候補チャネルに切り替えて受信レベルを測定し、この切り替えた変更候補チャネルの受信レベルも変更閾値を超えている場合には、さらに別の変更候補チャネルに切り替えて受信レベルを測定するという処理を行っていた。また、この方向探知チャネル決定処理は、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内であるか通信範囲外であるかに関係なく、同じ処理であった。
【0077】
これに対して、第2実施形態では、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲外である場合と通信範囲内である場合とで、方向探知チャネル決定処理の内容を異ならせており、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内に存在しないと判断できる場合には、ノイズスキャン1(特許請求の範囲の全チャネル全方位測定処理に相当)を実行して方向探知チャネルを決定する。一方、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内に存在すると判断できる場合にはノイズスキャン2(特許請求の範囲の限定チャネルノイズ測定処理に相当)を実行して方向探知チャネルを決定する。なお、第2実施形態において、これ以外の処理および装置構成は第1実施形態と同じである。
【0078】
上記ノイズスキャン1、2の詳細は後述するが、ノイズスキャン2は短時間で方向探知チャネルを決定することができる処理である。まず、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内に存在すると判断できる場合には、短時間で方向探知チャネルを決定することができるノイズスキャン2を実行する理由を説明する。
【0079】
図8は、無線タグリーダ100が方向探知用アンテナ150を用いて行なう処理を、横軸を時間軸として示した図である。この図8に示すように、無線タグリーダ100は、方向探知用アンテナ150を用いて、方向探知用判定用データの受信とノイズスキャン(方向探知チャネル決定処理)を行なう。
【0080】
同図に示すように、また、第1実施形態でも説明したように、無線タグリーダ100は無線タグ200からトリガデータを受信すると、(チャネル指定データを送信した後)方向探知用データ取得処理を行なう。そのため、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲に存在する場合、頻繁に無線タグ200の方向探知を行なうことになる。また、この方向探知用データ受信処理には方向探知用アンテナ150を使用することから、同じく方向探知用アンテナ150を使用するノイズスキャンは、頻繁に行われる方向探知用データ取得処理の間の短い時間に行わなければならない。そこで、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲に存在すると判断できる場合には、短時間で方向探知チャネルを決定することができるノイズスキャン2を実行するのである。
【0081】
その一方、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲に存在しない場合、無線タグリーダ100は、無線タグ200の方向探知を行なう必要がないことから、ノイズスキャンを行なう時間が十分にある。そこで、この場合には、時間はかかるものの、方向探知用データの送受信に最も適した通信チャネルを確実に方向探知チャネルとして設定することができるノイズスキャン1を実行するようにしている。
【0082】
なお、このノイズスキャン1で決定した方向探知チャネルを、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲に入ってきた後も継続して使用することも考えられる。しかし、ノイズ強度は時間に応じて変化することもある。そのため、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲に存在する場合においても、方向探知チャネル決定処理を繰り返し行なう必要があるのである。
【0083】
上述のように、この第2実施形態では、ノイズスキャン1または2を実行して方向探知チャネルを決定する。これらノイズスキャン1または2は、第1実施形態の図6に代わる処理であり、図4のステップS1でノイズスキャン1または2のいずれかを開始することになる。
【0084】
ノイズスキャン1または2のいずれを開始するかは、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内に存在すると判断できるか否かで決定する。無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内に存在するか否かは、トリガデータを受信しているかどうかで判断し、トリガデータの送信周期よりも長い間、このトリガデータあるいは無線タグ200からのその他のデータを受信していない場合には、無線タグ200は無線タグリーダ100の通信範囲内に存在しないと判断する。
【0085】
無線タグ200は無線タグリーダ100の通信範囲内に存在しないと判断できる場合には、ノイズスキャン1を実行する。図9は、このノイズスキャン1の処理内容を示すフローチャートである。
【0086】
まず、ステップS21では、1つの変更候補チャネルを選択する。ここで選択する変更候補チャネルは、設定可能な通信チャネルのうちの1つであり、このステップS21の繰り返し回数により、どの通信チャネルを選択するかが決まっている。そして、最終的には、このステップS21の繰り返しにより、設定可能な通信チャネルを全て選択することになる。
【0087】
続くステップS22では全方位ノイズスキャンを実行する。この全方位ノイズスキャンの詳細は図10に示してある。図10において、まず、ステップS221では、チャネル設定を行なう。この処理は具体的には、ステップS21で選択した変更候補チャネルを受信チャネルとすることである。続くステップS222では方位設定を行なう。具体的には、探知範囲において設定すべき複数の設定方位のうち、このステップS222の繰り返し回数に応じて定まる設定方位に、方向探知用アンテナ150の指向性を設定する。
【0088】
続くステップS223では、ノイズスキャンを行なう。すなわち、方向探知用アンテナ150の指向性を、ステップS222で測定した設定方位として、ノイズ強度の測定を行なう。なお、ノイズ強度は、たとえば、一定時間の受信信号強度の平均強度、あるいは最大強度とする。
【0089】
続くステップS224では、探知範囲において設定すべき全ての設定方位においてノイズ強度を測定したか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS222へ戻る。一方、肯定判断であれば、この全方位ノイズスキャンを終了して図9へ戻る。
【0090】
全方位ノイズスキャンを終了したら、ステップS23において、設定可能な全部の通信チャネルを変更候補チャネルとして選択したか否かを判断する。この判断が否定判断であればステップS21へ戻る。
【0091】
一方、ステップS23の判断が肯定判断であれば、ステップS24へ進み、方向探知チャネル決定処理を実行する。この方向探知チャネル決定処理の詳細は図11に示してある。図11において、まず、ステップS241では、ステップS22で行なった全方位ノイズスキャンの結果、全設定方位のノイズ強度がノイズ許容閾値以下となった変更候補チャネルがあるか否かを調べる。
【0092】
続くステップS242では、上記条件(すなわち、全設定方位のノイズ強度がノイズ許容閾値以下)に当てはまるチャネル数を判断する。このチャネル数が1個であった場合には、ステップS243へ進み、そのチャネルを方向探知チャネルに決定して、この図11を終了する。
【0093】
一方、上記条件に当てはまるチャネル数が1個以外、すなわち、0個または2個以上の場合には、ステップS244へ進む。ステップS244では、各チャネルのノイズレベルのレンジを求める。このノイズレベルのレンジとは、各チャネルについて、図9のステップS22で行なった全方位ノイズスキャンにおける最大値と最小値との差である。
【0094】
続くステップS245では、ステップS244で求めたノイズレベルのレンジが最も小さい変更候補チャネルを方向探知チャネルに決定して、この図11を終了する。
【0095】
全設定方位のノイズ強度がノイズ許容閾値以下であるチャネル数が0個または2個以上の場合に、このようにノイズレベルのレンジが最も小さいチャネルを選択するのは、次の理由による。すなわち、この図11で決定する方向探知チャネルは、方向探知用データを受信する際に使用するチャネルであり、設定方位を順次変化させつつ受信した方向探知用データの受信レベルの大小により、無線タグ200の方向推定を行なう。よって、全設定方位に全体にノイズが重畳する場合には、ノイズレベルが全体に大きくても、ノイズにより無線タグ200の方位推定を誤る可能性は低い。一方、全設定方位のノイズレベルが全体的には低くても、設定方位によるノイズレベルのばらつきが大きい場合には、無線タグ200の存在方向に指向性を向けたときの受信レベルよりも、別の方向に指向性を向けたときの受信レベルのほうが、ノイズの影響によって大きくなってしまい、その結果、無線タグ200の方位推定を誤ってしまう可能性が高いからである。
【0096】
図9に戻り、ステップS24の方向探知チャネル決定処理を終了したら、ステップS25では、次の方向探知用データ取得処理において用いる方向探知チャネルを、ステップS24で決定した方向探知チャネルに更新する。このステップS25を実行したら、ステップS21へ戻り、再び、ノイズスキャン1を最初から実行する。なお、このノイズスキャン1は、図4のステップS4が実行されるまで継続することになる。
【0097】
次に、ノイズスキャン2を説明する。図12は、ノイズスキャン2の処理内容を示すフローチャートである。まず、ステップS31では、方向探知用アンテナ150の受信チャネルを、前回のノイズスキャン(ノイズスキャン1および2の両方を対象として直近のノイズスキャン)で決定した方向探知チャネルに設定する。
【0098】
続くステップS32では、ステップS31で設定した受信チャネルにおいて、図9のステップS22と同様の全方位ノイズスキャンを実行する。続くステップS33では、ステップS32の全方位ノイズスキャンの結果、ノイズ許容閾値を超える設定方位があったか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、この図12の処理を終了する。従って、この場合、前回のノイズスキャンで決定した方向探知チャネルを、そのまま維持することになる。
【0099】
一方、ステップS33が肯定判断であった場合には、ステップS34において、方向探知チャネルに隣接する通信チャネルを、変更候補チャネルとして選択する。そして、ステップS35に進み、特定方位ノイズスキャンを実行する。この特定方位ノイズスキャンの詳細は図13に示してある。
【0100】
図13において、まず、ステップS351では、チャネル設定を行なう。この処理は具体的には、ステップS34で選択した変更候補チャネル(方向探知チャネルに隣接する通信チャネル)を受信チャネルとすることである。続くステップS352では方位設定を行なう。具体的には、直近のステップS32で実行した全方位ノイズスキャンにおいて、ノイズレベルが最大となった設定方位に、方向探知用アンテナ150の指向性を設定する。
【0101】
そして、ステップS353ではノイズスキャンを行なう。すなわち、方向探知用アンテナ150の指向性をステップS353で測定した設定方位として、ノイズ強度の測定を行なう。このステップS353を実行したら特定方位ノイズスキャンを終了であり、次は、図12のステップS36を実行する。
【0102】
ステップS36では、方向探知チャネルに隣接する2つの通信チャネルに対して、特定方位ノイズスキャンが完了したか否かを判断する。この判断が否定判断であれば、ステップS324へ戻り、今度は、方向探知チャネルに隣接する2つの通信チャネルのうち、まだ特定方位ノイズスキャンを実行していない通信チャネルを選択して、特定方位ノイズスキャンを実行する。
【0103】
一方、ステップS36が肯定判断であれば、ステップS37へ進み、方向探知チャネルの変更判定処理を行なう。この変更判定処理の具体的処理は図14に示してある。図14において、まず、ステップS371では、3つの通信チャネル、すなわち、ステップS32の全方位ノイズスキャンを行なった方向探知チャネル、および、この方向探知チャネルに隣接する2つの通信チャネルの特定方位のノイズレベルを比較する。方向探知チャネルについては、ステップS322の全方位ノイズスキャンの結果を用い、隣接する2つの通信チャネルについては、ステップS35の特定方位ノイズスキャンの結果を用いる。そして、これら3つのノイズレベルを比較して、最もノイズレベルが低いチャネルを、新たな方向探知チャネルとする。
【0104】
続くステップS372では、次の方向探知用データ取得処理において用いる方向探知チャネルを、ステップS371で決定した方向探知チャネルに変更する。
【0105】
上述のように、隣接する通信チャネルにおいては、特定方位のみのノイズレベルを測定しているが、ノイズレベルを測定する設定方位を特定方位のみに限定しても、この通信チャネルの適否をある程度の精度で判断することができる。その理由を以下に説明する。
【0106】
各チャネルは一定の周波数範囲で区切られてはいるものの、隣接する通信チャネルとは周波数範囲が連続している。そのため、ある通信チャネルにおいて測定されたノイズは、周波数範囲が連続する隣接するチャネルにおいても影響する場合が多いと考えられる。図15は、あるノイズについて、周波数に対するノイズレベルを例示した図である。たとえば、Cチャネルを方向探知チャネルとしており、この図に示すように、Cチャネルにピークを持つノイズが発生したとした場合、このノイズは、隣接するBチャネルやDチャネルにも影響する場合が多いと考えられる。
【0107】
このため、設定方位に対するノイズレベルの変化をグラフ化した場合、ある通信チャネルと、それに隣接する通信チャネルとは、類似したグラフ形状となる。図16の下段には、幾つかの通信チャネルにおいて、横軸を設定方位、縦軸をノイズレベルとしたグラフを例示している。この図16において、3チャネルが方向探知チャネルであり、ノイズ発生により、ある設定方位においてノイズレベルがノイズ許容閾値を超えている。この3チャネルに隣接する2チャネルおよび4チャネルは、グラフ形状が3チャネルに類似したものとなっており、3チャネルと同様の方位が、最もノイズレベルが高くなっている。一方、3チャネルとは比較的離れた周波数帯である16チャネルは、3チャネル付近の発生したノイズの影響はほとんどないことから、16チャネルのグラフ形状は、3チャネルのグラフ形状とは類似しない。なお、図16の上段は、下段の折れ線グラフを円グラフにしたものである。
【0108】
このように、今回のノイズスキャン2の処理において、全方位ノイズスキャンを実行した方向探知チャネルにおいて最もノイズレベルが大きかった設定方位は、このチャネルに隣接する通信チャネルでも、最もノイズレベルが大きい方位(すなわち特定方位)であると推測できる。そこで、隣接する通信チャネルにおいてノイズレベルを測定する方位を特定方位のみに限定しても、この通信チャネルの適否をある程度の精度で判断することができるのである。
【0109】
また、このノイズスキャン2は、図8で示したように、方向探知用データ受信処理を終了してから、次にトリガデータを受信するまでの間に実行する必要があるが、ノイズスキャン2は、十分にこの間に終了することができる。以下にその理由を具体例を用いて説明する。
【0110】
ノイズスキャン2を実行するのに要する時間は、方向探知チャネルで行なう全方位ノイズスキャンの実行時間と、方向探知チャネルに隣接する2つの通信チャネルで行なう特定方位ノイズスキャンの実行時間によって概ね決まる。全方位ノイズスキャンは、何方位スキャンするかにより実行時間が変化し、また、1スキャンに要する時間も実行時間に影響する。スキャンする方位数は、多くても24方位程度である。その理由は、無線タグ方向探知システムは、無線タグ200を携帯する人の方位を検出することを目的としていることから、60°と61°とを区別する必要はなく、15°程度の区別ができれば十分だからである。24方位をスキャンするとし、また、1スキャンに比較的時間がかかる低能力の処理装置を用いるとしても、全方位ノイズスキャンは700μs程度で実行することができる。また、特定方位ノイズスキャンは50μs程度で実行することができる。よって、ノイズスキャン2は、1msよりも短い時間で終了すると言える。
【0111】
一方、方向探知用データ受信処理を終了してから、次にトリガデータを受信するまで時間は、状況によっても種々変動するが、一般的な家庭を例に考えると、最もノイズスキャン2を行なう時間的余裕が短い状況として、無線タグ200を携帯した家族4〜5人が同時に通信範囲内に存在するという状況が考えられる。人の移動はそれほど高速ではないことから、無線タグ200の方向探知を行なう間隔は、短くても100ms程度であれば十分であることから、5台の無線タグ200が同時に通信範囲に存在していても、いずれかの無線タグ200と通信するのは、平均すると20ms間隔となる。もちろん、常に20ms間隔で通信できるわけではなく、これよりも短い通信間隔の場合もあると考えられる。しかしながら、上述したように、ノイズスキャン2は1msよりも短い時間で終了する。よって、ほとんどの場合、ノイズスキャン2は、方向探知用データ受信処理を終了してから、次にトリガデータを受信するまでの間に実行することができると言える。
【0112】
以上、説明した第2実施形態では、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲に存在しないと判断できる場合には、全通信チャネルに対して、全設定方位のノイズ測定を行なうノイズスキャン1を実行する。一方、無線タグ200が無線タグリーダ100の通信範囲内に存在すると判断できる場合には、ノイズスキャン2を実行して方向探知チャネルを決定する。このノイズスキャン2では、まず、前回のノイズスキャンで決定した方向探知チャネルについてのみ、全方位ノイズスキャンを実行する(S31、S32)。そして、全設定方位のノイズレベルがノイズ許容閾値を超えなかった場合には、この時点で、前回の方向探知チャネルを次回の方向探知チャネルとして決定する。よって、この場合には、ノイズレベルを測定するチャネルが1チャネルのみであることから、方向探知チャネルを短時間で決定することができる。
【0113】
さらに、全設定方位のノイズレベルのうち、ノイズ許容閾値を超える方位があった場合でも、追加でノイズレベルを測定するのは、全方位ノイズスキャンを行なった方向探知チャネルに隣接する2つの通信チャネルのみ、且つ、全方位ノイズスキャンにおいて最もノイズレベルが大きかった設定方位についてのみである。そのため、この場合にも、方向探知チャネルを短時間で決定することができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0115】
たとえば、前述の実施形態では、たとえば、前述の第2実施形態において、ステップS244、S245では、ノイズレベルのレンジが最も小さい変更候補チャネルを方向探知チャネルに決定していたが、ノイズレベルのレンジに代えて、ノイズレベルの分散を求め、この分散が最も小さい変更候補チャネルを方向探知チャネルに決定してもよい。
【0116】
また、前述の実施形態では、無線タグ200は、2つのアンテナ241、242を備えていたが、いずれか1つのみでもよい。
【符号の説明】
【0117】
100:無線タグリーダ 110:制御部 111:メモリ 112:タイマ 115:チャネル制御部 120:送信部 121:符号部 122:変調部 123:増幅部 130:受信部 131:復調部 132:復号部 140:通信用アンテナ 150:方向探知用アンテナ 151:励振素子 152:非励振素子 160:方向検知部 161:指向性制御部 162:電力受信部 170:チャネル制御部 200:無線タグ 210:内蔵電源 215:チャネル制御部 220:送信部 221:符号部 222:変調部 230:受信部 231:復調部 232:復号部 240:アンテナ部 241:第1アンテナ 242:第2アンテナ 250:切り換えスイッチ 260:制御部 261:タイマ 262:メモリ 300:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に携帯され、複数の通信チャネルに切り替え可能であり、複数の通信チャネルから1つの通信チャネルを選択して電波を逐次送信する無線タグと、
無線タグとの間でデータの送受信を行なう通信用アンテナ、および、指向性を変化させつつ無線タグから送信されるデータを受信する方向探知用アンテナを有し、方向探知用アンテナで受信したデータを用いて無線タグの方向探知を行なう無線タグリーダと、
を含む無線タグ方向探知システムであって、
前記無線タグは、起動中、周期的に、予め設定された固定チャネルでトリガデータを送信し、
前記無線タグリーダは、
前記通信用アンテナおよび方向探知用アンテナの通信チャネルが、前記無線タグと通信可能な複数のチャネルから互いに別々に設定可能となっており、
前記通信用アンテナを、前記トリガデータを受信するまで、前記固定チャネルでデータ受信待機状態とし、
前記通信用アンテナがデータ受信待機状態となっている間、前記方向探知用アンテナの通信チャネルを、方向探知を行なうためのデータを受信する通信チャネルの候補となる候補チャネルとしてノイズ強度を測定し、測定したノイズ強度を、ノイズ許容閾値、あるいは、他の候補チャネルで測定したノイズ強度と比較することで、方向探知を行なうためのデータを受信する通信チャネルである方向探知チャネルを決定する方向探知チャネル決定処理を実行し、
前記通信用アンテナにより前記トリガデータを受信したら、前記方向探知チャネル決定処理により決定した方向探知チャネルを指定するチャネル指定データを、前記通信用アンテナから前記固定チャネルで送信させた後、その通信用アンテナの通信チャネルも前記方向探知チャネルとしてデータ受信待機状態とし、
前記方向探知用アンテナの通信チャネルも前記方向探知チャネルとして、方向探知用アンテナの指向性を順次切り替えつつデータ受信を行なう方向探知用データ取得処理を行い、
無線タグは、無線タグリーダからチャネル指定データを受信したら、そのチャネル指定データにより指定された通信チャネルを用いて、前記無線タグリーダが方向探知を行なうことができる方向探知用データを送信し、
前記無線タグリーダは、前記通信用アンテナで受信する電波を用いて、方向探知用データの受信終了を判断した後、前記方向探知用アンテナを用いた方向探知用データ取得処理を終了し、前記方向探知チャネル決定処理を再開する
ことを特徴とする無線タグ方向探知システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記無線タグリーダは、
無線タグがこの無線タグリーダの通信範囲内に存在しないと判断できる場合、前記方向探知チャネル決定処理においてノイズ強度を測定する候補チャンネルを、設定可能な全部の通信チャネルとし、且つ、各候補チャネルに対し、方向探知範囲内の全設定方位においてノイズ強度を測定する全チャネル全方位測定処理を実行し、全候補チャネルにおけるノイズ強度の比較に基づいて、前記方向探知チャネルを決定する一方、
無線タグがこの無線タグリーダの通信範囲内に存在すると判断できる場合において、前記通信用アンテナがデータ受信待機状態となったときに実行する方向探知チャネル決定処理では、ノイズ強度を測定する候補チャネルを限定した限定チャネルノイズ測定処理を実行して前記方向探知チャネルを決定するようになっており、
この限定チャネルノイズ測定処理では、前回の方向探知チャネル決定処理で決定した方向探知チャネルについては、方向探知範囲内の全設定方位においてノイズ強度を測定し、測定した全設定方位のノイズ強度が前記ノイズ許容閾値を越えなかった場合には、前回の方向探知チャネルを次回の方向探知チャネルとして決定し、
測定した全設定方位のノイズ強度のうち、前記ノイズ許容閾値を越える方位があった場合、この全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルに隣接する通信チャネルのみ、且つ、今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおいて最もノイズ強度が大きかった設定方位についてのみノイズ強度を測定し、
今回、全設定方位のノイズ強度を測定した通信チャネルにおけるノイズ強度のうちの最大ノイズ強度と、隣接する通信チャネルにおいて測定したノイズ強度とを比較して、最もノイズ強度が低い通信チャネルを、方向探知チャネルとして更新する
ことを特徴とする無線タグ方向探知システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記方向探知チャネル決定処理は、
前記方向探知用アンテナの通信チャネルを、一つの候補チャネルに設定し、その候補チャネルでノイズ強度を逐次測定し、測定したノイズ強度と前記ノイズ許容閾値とを比較し、測定したノイズ強度が前記ノイズ許容閾値を超えていない間は、その候補チャネルを前記方向探知チャネルに決定する一方、
測定したノイズ強度が前記ノイズ許容閾値を超えた場合には、方向探知用アンテナの通信チャネルを別の候補チャネルに変更して、ノイズ強度の測定、ノイズ許容閾値との比較、その候補チャネルを方向探知チャネルに決定するかの判断を繰り返す処理である、ことを特徴とする無線タグ方向探知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−72732(P2013−72732A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211565(P2011−211565)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】