説明

無線周波数受信システム統合型リアビューミラー装置

【課題】無線周波数受信システムが組み込まれていて、非常に簡略且つ安価なリアビューミラー装置を実現する。
【解決手段】リアビューミラー装置に、導電素材で形成された光反射面に加え、その光反射面に対し略平行な平面上に位置するよう平板状の導電素子を1個又は複数個設ける。この導電素子は光反射面と静電結合し、無線周波数信号受信に適した値の光反射面・導電素子間静電容量を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数(RF)受信システムが組み込まれていて非常に簡略且つ安価なリアビューミラー装置の実現に関する。
【0002】
本発明は、また、リアビューミラー装置の生来的構成要素のうち幾つかをRF信号受信用アンテナとして利用しRF受信システムを実現する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
本件技術分野では、車両の風防に備わっている加熱素子を送信アンテナ兼加熱手段として使用する技術が周知である。特許文献1乃至4にはそうした技術の例が示されている。
【0004】
特に、特許文献1に記載の分離整合装置は、そもそもアンテナになるよう設計されておらず本質的には非周期的且つVHF域内非共振である自動車用通電加熱ウィンドウを、送信アンテナとして使用できるようにするものである。この装置の電気回路には、自動車用直流(DC)電源に接続可能な入力リード、自動車用通電加熱ウィンドウ内加熱素子に接続可能な電力出力リード、並びに送信機内アンテナ給電回路にその電気回路を接続するためのアンテナ入力端子が備わっている。
【0005】
他方、特許文献5(名称:空間充填性小型アンテナ(Space-filling miniature antennas))には空間充填曲線の定義が示されている。自由空間動作波長に対し1/10未満の長さを有するセグメントを10個以上有し、より長大な直線状セグメントが生じないよう隣接セグメント同士が斜めに連なっており、且つ自身の始点及び終点以外では自身と交差しない曲線である、との定義である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4422077号明細書
【特許文献2】米国特許第5835066号明細書
【特許文献3】米国特許第6307516号明細書
【特許文献4】米国特許第4086594号明細書
【特許文献5】国際公開第WO01/54225号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車両用リアビューミラー装置の生来的構成要素を無線アンテナとして利用しつつ、リアビューミラー装置に専用アンテナを統合した場合のそれに比肩する性能を実現する技術を、提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、リアビューミラー装置の光反射面が通常はクロム等の導電素材で形成されていること、従って自動車用の無線機と適切に接続し適切に励振すればRF信号受信に使用できることに着眼している。
【0009】
より具体的には、本発明に係るリアビューミラー装置はRF受信システム統合型の装置であり、光反射面例えばクロム層の表面に加え、その光反射面が車載のRF信号受信アンテナとして機能するよう光反射面と静電結合する平板状の導電素子を1個又は複数個備えている。
【0010】
上掲の導電素子は光反射面に対し略平行な平面上に設けられる。それと光反射面との間の距離は、両者が静電結合するよう選定される。無線受信機接続時に所望動作帯域内のRF信号が受信されるよう、光反射面例えばクロム面と上掲の導電素子とを協働させるためである。稼働時には、その導電素子が静電結合先の光反射面を励振する。
【0011】
光反射面・導電素子間静電容量Cは次の式(1)
C=ε0・εr・S1・S2/d 式(1)
で与えられる。この式中、dは二導体間の距離、S1,S2はそれらの面積、ε0は空気の誘電率、εrはS1・S2間に存する誘電体の比誘電率である。無線受信に適する性能が得られるのはこの静電容量Cの値が1pFより大きいときである。
【0012】
本リアビューミラー装置では、更に、光反射面用のデフロスタとして使用される加熱導体を設けることや、その加熱導体にDC電圧を印加するための接続端子1個又は複数個に上掲の導電素子を接続することができる。
【0013】
その際には、加熱素子の経路や形状を、所望の動作帯域にて光反射面と最適に静電結合するよう設定する。例えば、式(1)に示す静電容量が1pF超になるようにする。
【0014】
こうした静電結合状態下では、別の表面導体を付加することなく、加熱導体を加熱とRF信号受信に併用することができる。この場合、加熱導体に流れるDC電流を受信したRF信号から分離させるスプリッタ回路を用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るリアビューミラー装置の模式的回路図である。
【図2】空間充填曲線に従いその形状が設定された整合導体を有するリアビューミラー装置の斜視図である。
【図3】光反射面付基板、加熱導体及び導電素子の配置例を三通り示す模式的断面図である。
【図4】光反射面付基板、加熱導体及び導電素子の平面図である。
【図5】空間充填曲線又はフラクタルを利用した構成の導電素子を図4と同様の形態にて更に三例示す図である。
【図6】加熱導体と静電結合するよう配置された導電素子を2個備えるリアビューミラー装置の斜視図である。
【図7】リアビューミラー装置の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、これまでの説明を補い本発明の特質に関するより好適な理解を促すため、例示的且つ非限定的な図面を参照しつつ本発明の好適且つ実用的な実施形態に関し説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態を模式的に示す。このリアビューミラー装置には、光反射面(1)を有するクロム層のほか、誘電体層(2)を挟み、そのクロム層と対峙する平板状の加熱導体(3)が備わっている。この導体(3)は光反射面(1)用のデフロスタとして使用される。
【0018】
その光反射面(1)に対し略平行な平面上には平板状の導電素子(4)が1個ある。光反射面(1)からその素子(4)までの距離は、両者が互いに静電結合しRF信号受信アンテナとして好適に協働するよう選定されている。
【0019】
加熱導体(2)には2個の接続端子(5,5’)が備わっている。それらは自動車用のバッテリ(Vcc)から導体(2)へのDC電圧印加に使用されている。他方の導電素子(4)にも2個の接続ノード(6,6’)が備わっている。それらは、クロム層で捉えたRF電流がDC電流に重畳されるよう、対応する接続端子(5,5’)に接続されている。
【0020】
本リアビューミラー装置には、RF信号とDC信号を相互分離させるスプリッタ(7)が備わっている。スプリッタ(7)は2個のインダクタ(L,L’)を有している。それらは、図示の通り、対応する接続端子(5,5’)と車載DC電源(Vcc)の間に接続されている。スプリッタ(7)は、更にキャパシタ(C)を有している。これは、同軸ケーブル(9)を介し、対応する接続端子(5,5’)とRF増幅器(8)の間に接続されている。そのキャパシタ(C)は同軸ケーブル(9)の内導体に、またケーブル(9)の遮蔽導体は車両の接地面(10)にそれぞれ接続されている。
【0021】
それらのうちインダクタ(L,L’)の役目は、DC電源(Vcc)から供給されるDC電流を加熱導体に流入させつつ、その電源(Vcc)へのRF電流流入を阻止することである。キャパシタ(C)の役目は、RF電流をRF増幅器に流入させつつ、DC電流を阻止することである。
【0022】
2本目の同軸ケーブル(11)は、そのRF増幅器(8)を図示しない車載無線機に接続するためのものである。
【0023】
図2に、接続端子(5,5’)・インダクタ(L,L’)間に都合一対の整合導体(12,12’)を直列接続した例を示す。この導体(12,12’)の形状は空間充填曲線に従い設定されており、その寸法はクロム層及び導電層からなるアンテナのインピーダンスに適合するよう選定されている。
【0024】
なお、この説明でいう空間充填曲線とは、特許文献5を参照し先に定義したものをいう。
【0025】
図3に、サンドイッチ構造が生じるよう光反射面、加熱導体及び導電素子を形成した例を示す。同図に示す諸例では、向かって左から右に向かい、諸層が次の順で並んでいる。
【0026】
[図3(a)] 水晶又はプラスチック製の透明基板(13)、クロム製の光反射層(1)、樹脂製の第1誘電体層(14)、アルミニウム製の加熱導体(3)、樹脂製の第2誘電体層(15)、導電素子(4)、第3誘電体層(16)、並びにリアビューミラー装置内構造を支持するプラスチック製の支持材(17)。
【0027】
[図3(b)] 水晶又はプラスチック製の透明基板(13)、クロム製の光反射層(1)、樹脂製の第1誘電体層(14)、導電素子(4)、樹脂製の第2誘電体層(15)、アルミニウム製の加熱導体(6)、第3誘電体層(16)、並びにリアビューミラー装置内構造を支持するプラスチック製の支持材(17)。
【0028】
[図3(c)] 図3(a)と同様であるが第3誘電体層(16)は使用されていない。その代わりに、製造プロセス中での印刷、オーバモールド等によって導電素子が直接、プラスチック製支持材(17)の表面上に形成されている。
【0029】
加熱導体は、光反射面が加熱されるよう、且つ光反射面と静電結合し無線信号の好適な受信に必要な最小限の静電容量値を呈するよう配置されている。そのため、この加熱導体には、加熱及びアンテナの両機能が備わっている。
【0030】
図4に、空間充填曲線に従いその形状が設定された導電素子(4)の例を示す。この例では、2個の接続端子(5,5’)を有する加熱導体(3)の上方に、2個の接続ノード(6,6’)を有する素子(4)が形成されている。
【0031】
図5(b)及び(c)に、空間充填曲線に従いその形状が設定された導電素子(4)及びその素子(4)がクロム層上方で採り得る配置の別例を示す。図5(a)に、フラクタル型の構成を有する導電素子(4)の例を示す。
【0032】
図6に、2個の導電素子(4,4’)を有するリアビューミラー装置の例を示す。それらの素子(4,4’)は陰面にある光反射面に対し平行であり、その光反射面と静電結合している。従って、その光反射面は両素子(4,4’)に共通の輻射素子として動作する。
【0033】
同図中、第1導電素子(4)は第1周波数帯域、第2導電素子(4’)は第2周波数帯域で動作するよう、その形状及び寸法が設定されている。複数個の導電素子を使用すること並びにその形状及び寸法を適切に設定することで、例えばFM、TV、DAB(登録商標)−III等、複数通りの周波数帯域にてそのRF受信システムを動作させることができる。また、導電素子(4,4’)は接続ノードを1個ずつ(6,6’)有している。そのノード(6,6’)は、加熱導体(3)に備わる接続端子(5,5’)のうち対応するものに接続されている。素子(4,4’)の少なくとも一部、例えば輪郭の一部は、空間充填曲線に従いその形状が設定されている。
【0034】
図7に、本発明に係るリアビューミラー装置の展開例を示す。通例に倣い、この装置は筐体(18)を備えている。その筐体(18)内には、クロム層(1)付の透明基板(13)を支持するプラスチック製支持材(17)と共に、モータ式レギュレータ(19)が収容されている。
【0035】
なお、本発明で形成されるサンドイッチ構造(20)は、図3(a)、(b)及び(c)に示した諸例のいずれでもよい。無線受信機及び上述のリアビューミラー装置を備える自動車も本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電素材で形成された光反射面と、
その光反射面に対し略平行な平面上に存する平板状の導電素子1個又は複数個と、
を備え、互いに静電結合し無線周波数信号受信に適した値の光反射面・導電素子間静電容量が生じるよう光反射面・導電素子間距離が選定された無線周波数受信システム統合型のリアビューミラー装置。
【請求項2】
請求項1記載のリアビューミラー装置であって、1pF超の静電容量が生じるよう光反射面・導電素子間距離が選定されたリアビューミラー装置。
【請求項3】
請求項1記載のリアビューミラー装置であって、更に、上記光反射面を加熱しうるよう配置された加熱導体を備え、その加熱導体が2個の接続端子を有し、その接続端子のうち少なくとも1個が上記導電素子に接続されたリアビューミラー装置。
【請求項4】
請求項3記載のリアビューミラー装置であって、互いに静電結合し無線周波数信号受信に適した1pF超の静電容量が生じるよう光反射面・加熱導体間距離が選定されたリアビューミラー装置。
【請求項5】
請求項1記載のリアビューミラー装置であって、更に第1及び第2の誘電体層を備え、光反射面、加熱導体及び導電素子間が当該第1及び第2の誘電体層で分離されるよう、それら2個の誘電体層、光反射面、加熱導体及び導電素子によってサンドイッチ構造が形成されたリアビューミラー装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載のリアビューミラー装置であって、2個の接続ノードを有する導電素子を1個備え、各接続ノードが接続端子のうち1個に接続されたリアビューミラー装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項記載のリアビューミラー装置であって、上記光反射面に対し平行でその光反射面と静電結合する導電素子を2個備え、その導電素子が、接続端子のうち1個に接続された接続ノードを1個ずつ有するリアビューミラー装置。
【請求項8】
請求項7記載のリアビューミラー装置であって、互いに異なる無線周波数帯域を受信するよう各導電素子が構成されたリアビューミラー装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載のリアビューミラー装置であって、更に、無線周波数信号と直流信号とを相互分離させるスプリッタを備え、そのスプリッタが、車載の直流電源に接続可能な直流入力端子対と、加熱導体に備わる2個の接続端子に接続された無線周波数入力端子対と、無線周波数出力端子と、を有するリアビューミラー装置。
【請求項10】
請求項1記載のリアビューミラー装置であって、上記導電素子又はその一部の形状が空間充填曲線に従い設定されたリアビューミラー装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項記載のリアビューミラー装置であって、更に、アンテナ・無線周波数増幅器間接続及び対アンテナインピーダンス整合に必要な誘導成分が生じるようその電気長が設定された整合導体を備えるリアビューミラー装置。
【請求項12】
請求項11記載のリアビューミラー装置であって、上記整合導体又はその一部の形状が空間充填曲線に従い設定されたリアビューミラー装置。
【請求項13】
請求項10又は11記載のリアビューミラー装置であって、その空間充填曲線が、自由空間動作波長に対し1/10未満の長さを有するセグメントを10個以上有し、より長大な直線状セグメントが生じないよう隣接セグメント同士が斜めに連なっており、且つ自身の始点及び終点以外では自身と交差しない曲線であるリアビューミラー装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項記載のリアビューミラー装置であって、加熱導体及び導電素子を収容する筐体を備えるリアビューミラー装置。
【請求項15】
無線受信機と、請求項1乃至14のいずれか一項記載のリアビューミラー装置と、を備え、2個の接続端子が車載の直流電源、スプリッタの無線周波数出力端子が無線受信機にそれぞれ接続された自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60642(P2012−60642A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−194578(P2011−194578)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(502381405)
【Fターム(参考)】