説明

無線基地局及び無線端末装置

【課題】 通信の混雑に合わせた効率的な通信を行うことが可能な無線基地局及び無線端末装置を提供する。
【解決手段】 受信データがTCPデータであるかを検出するTCP検出部102、受信データがTCPデータであった時にTCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信するTCP ACK生成部103、TCPデータをバッファするTCPバッファ部105、TCPバッファ部105の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段、TCPバッファ部105の空き容量が所定量以下となった時にTCP ACK生成部103で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを具備する。これにより、無線基地局と無線端末装置間の通信の効率化及び高速化を実現できると共に、無線ネットワークの混雑に合わせた効率的な通信を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局及び無線端末装置に関し、特に、通信の効率化、高速化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来の無線基地局と無線端末装置との通信(OSI参照モデル2層の通信)の流れを示す図である。無線基地局から無線端末装置へデータを送信する場合、
1.無線基地局から無線端末装置へ無線パケットを送信する(図8の102)。
【0003】
2.無線パケットを受信した無線端末装置はACKと呼ばれる応答パケットを無線基地局へ送信する(図8の103)。
【0004】
3.無線基地局はACKを受信し、無線端末装置がパケットを受信したことを確認して次のパケットを送信する。
【0005】
また、OSI参照モデルの4層(以下OSI参照モデルの4層をL4と称す)の手順であるTCPプロトコルでも上記手順(1〜3)を行っており、OSI参照モデル2層(OSI参照モデルの2層をL2と称す)及び4層を含めた流れは以下の通りとなる。
【0006】
1.L4のTCPデータをL2の無線パケットで無線ネットワークへ送信する(図8の102)。
【0007】
2.無線端末装置は無線パケットを受信し、ACKと呼ばれる応答パケットを無線基地局へ送信する(図8の103)。
【0008】
3.無線端末装置の内部で、上記2で受信したTCPデータが上位の層(TCPの4層)へ送られ、TCPデータに対するACKが、2層を通り無線端末装置から無線基地局へ送信される(図8の104)。
【0009】
4.無線基地局は、TCPデータのACKを受信したことを示すACKを無線端末装置へ送信する(図8の105)。
【0010】
5.無線基地局は、無線端末装置から受信したTCPデータを有線端末へ送信する(図8の106)。
【0011】
ところが、図8の103で行っている2層のACKと4層のACK(図8の104)及び4層のACKに対する2層のACK(図8の105)でACK作業手順の重複が起き、TCP通信の遅延、通信速度の低下が起きている。
【0012】
そこで、例えば、特開2003−46432号公報には、路側装置が無線伝送部から取得した伝送結果をもとに、路側サーバからのデータ受信に対する受信確認パケットを代理送信することにより、車載装置からのアップリンク伝送遅延を削減し、スループットを向上させることが記載されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−46432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載された技術は、車載装置と路側装置の間で行われる路車間通信システムに関する技術であるが、データ受信に対する受信確認パケットを代理送信することのみ記載されており、通信の混雑等を考慮することまでは言及されていなかった。
【0014】
本発明の目的は、通信の混雑に合わせた効率的な通信を行うことが可能な無線基地局及び無線端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の無線基地局は、上記課題を解決する為、受信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記受信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の無線基地局は、受信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記受信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の無線基地局は、受信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記受信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の無線端末装置は、ドライバ部からの送信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記送信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを前記ドライバ部へ代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の無線端末装置は、ドライバ部からの送信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記送信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを前記ドライバ部へ代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファする手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを所定時間遅延させる手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の無線端末装置は、ドライバ部からの送信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記送信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを前記ドライバ部へ代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無線基地局と無線端末装置間の通信の効率化及び高速化を実現できると共に、無線ネットワークの混雑に合わせた効率的な通信を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る無線基地局の一実施形態の構成を示すブロック図である。無線基地局100は、IEEE802.11で規格化されている無線LANアクセスポイントの機能を有し、無線ネットワーク(無線LAN)と有線ネットワーク(イーサネット(登録商標)型LANやトークン型LAN等のLAN)をブリッジする機能を有する。
【0023】
また、無線基地局100は、有線ネットワークのデータ送受信を行う有線I/F101、TCPプロトコルのデータを検出するTCP検出部102、TCPのACKを生成し、送信するTCP ACK生成部103、TCPのシーケンスを記録するシーケンス部104、TCPのデータをバッファするTCPバッファ部105、無線ネットワークのデータ送受信を行う無線I/F107を含んでいる。
【0024】
また、無線基地局100は、TCPシーケンス部104のシーケンス更新、TCP検出部102でTCPのACKを検出した時にそのACKを廃棄する廃棄部108、TCPバッファ部105の送信指示、TCPACKの送信指示を行う制御部106、ACKの送信制御に用いられるタイマー109等を含んでいる。なお、110は有線ネットワーク、111は無線ネットワーク、200は無線端末装置を示す。
【0025】
無線基地局100では、有線I/F101が有線ネットワークで受信したデータを、TCP検出部102で受信データのOSI参照モデルレイヤ4(TCP/UDP)ヘッダか判別し、TCPデータか否かを判定する。TCPデータを検出した場合には、TCP ACK生成部103にてそのデータのACKを生成し、有線I/F101より受信データの送信元へ送信する。これによって、無線端末装置からのTCPのACKを待つことなく有線端末へTCPのACKを送信し、TCP通信の高速化を行う。
【0026】
図2は基本的な動作フローを示す図である。まず、有線I/F101はLAN等の有線ネットワークに接続されている有線端末からデータを受信すると(図2の(1)TCPデータ)、TCP検出部102で予め定めたビットの値であるか判別する。ここでは、TCPを表すIPヘッダのプロトコルタイプを監視し、値が6であるか判別する。この結果、TCPと判別した場合には、TCP ACK生成部104は受信したTCPデータのACKを生成する(図2の(2)TCPデータのACK生成)。
【0027】
受信したTCPデータは、TCP検出部102から無線I/F107に送られ(図2の(3)TCPデータ)、更に無線I/F107を介して無線端末装置200へ送信される(図2の(4)無線TCPデータ)。
【0028】
無線端末装置200は、無線TCPデータを受信すると、無線基地局100へ無線のACK(図2の(5)無線のACK)を送信する。無線のACKを無線I/F107が受信した場合には、TCPデータが無線端末装置200へ届いたことを意味し、TCP ACK生成部103で生成したTCPデータに対するACKを有線端末へ送信する(図2の(6)TCPデータのACK)。以上により、無線端末装置から届くTCPのACKを待つことなく送信元の有線端末へTCPのACKを返すことができる。
【0029】
ここで、図2の(5)無線のACKは、IEEE802.11のMAC層で行っているACKを指す。これは、図8の103、105、109、111に相当する。また、本実施形態のTCPのACKとは、TCPプロトコルにおけるACKである。これは、図8の104、110に相当する。
【0030】
本実施形態では、図3に示すようにこのTCPのACKは無線基地局100と無線端末装置200間では送受信されていない(図3における無線ACK203、207は図2における(5)無線のACKに相当する)。本来は図8の104や110のように無線基地局100と無線端末装置200間で送受信される。以上により、本実施形態では、無線端末装置からはTCPのACKは有線端末へ届いていない。有線端末へ届いているTCPのACKは上述のように無線基地局が生成した代理ACKである。従って、本実施形態では、上述のように無線端末装置200から届くTCPのACKを待つことなく、送信元の有線端末へTCPのACKを返すことができるのである。
【0031】
なお、無線基地局100はIEEE802.11のアクセスポイントに限定するものではなく、無線ネットワークの送信手順が、
1.無線基地局がデータを送信、
2.無線端末装置が無線基地局からのデータを受信した証として受信応答確認(ACK)を無線基地局へ送信する、
となっている無線基地局すべてに適用してもよい。
【0032】
また、データもTCPに限ることなく、受信応答確認を行うプロトコルに適用しても良いことは言うまでもない。
【0033】
図4は本発明に係る無線端末装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図4の無線端末装置200は図1の無線基地局100と無線通信を行う。
【0034】
無線端末装置200は、無線基地局100から送信されたデータを受信、送信する無線I/F201、無線端末装置200のOSへデータをやり取りするインターフェース(Windows(登録商標)OSのNDIS等)であるドライバ部204、ドライバ部204からの出力を監視し、TCPのACK等を検出するTCP検出部202、TCP検出部202で検出されたACKを廃棄する廃棄部205を含んでいる。
【0035】
また、無線端末装置200は無線I/F201でTCPデータを送信し、無線基地局100からの無線ACKを受信した場合にTCPデータのACKを生成し、ドライバ部204へ送信するTCP ACK生成部203、TCP検出部202で検出されたTCPのシーケンス番号を記録するTCPシーケンス部206、TCPのデータをバッファするTCPバッファ部207、ACKの送信制御に用いられるタイマー208等を含んでいる。
【0036】
無線基地局100から送信されたデータは無線I/F201で受信され、受信データはドライバ部204へ送信される。ドライバ部204は無線端末装置のOSへデータをやり取りするインターフェースである。
【0037】
ドライバ部204からの出力データをTCP検出部202でOSI参照モデルレイヤ4(TCP/UDP)ヘッダか判別し、TCPデータか否かを検出する。TCPデータを検出した場合には、TCP ACK生成部203にてTCPデータのACKを生成する。また、無線I/F201から無線基地局100へTCPデータを送信し、無線基地局100からの無線のACKを受信したことを確認して、TCPデータのACKをドライバ部204へ送信する。これによって、無線基地局100からのTCPのACKを待つことなく次のデータを送信する通信高速化が可能である。
【0038】
更に、具体的に説明すると、図5に示すように、まず、ドライバ部204からの出力データをTCP検出部202でOSI参照モデルレイヤ4(TCP/UDP)ヘッダか判別し、TCPデータか否かを検出する。TCPデータを検出した場合には、TCP ACK生成部203にてTCPデータのACKを生成し(図5の(3)TCPデータのACK生成)、TCP検出部202は無線I/F201へTCPデータを送信する(図5の(2)TCPデータ)。無線I/F201は無線ネットワークを介して無線基地局100へTCPデータを送信する(図5の(4)無線TCPデータ)。
【0039】
無線基地局100は無線端末装置200からのデータを受信すると、無線端末装置200へ無線ACKを送信する(図5の(5)無線ACK)。無線I/F201は無線基地局100からの無線のACKを受信したことをTCP ACK生成部203へ通知する(図5の(6)ACKトリガ)。この無線I/F201からの通知をトリガに、TCP ACK生成部203は生成したACKをドライバ部204へ送信する(図5の(7)TCPデータのACK)。ドライバ部204は送信したTCPデータのACKを受信したことで、次のTCPデータの送信を開始する。以上により、無線基地局の場合と同様に無線基地局100からのTCPのACKを待つことなくドライバ部204へTCPのACKを送信することができる。
【0040】
次に、無線端末装置200においてTCP検出部202がTCPのACKを検出した場合(TCP受信時)には、廃棄部205でACKを廃棄し、TCPのACKを無線ネットワークへ通さず、無線ネットワークの送信データ数を削減する。削減するデータはTCPに限ることなく、受信応答確認を行うプロトコルに適用してもよい。
【0041】
図6はこの場合の動作を示す。まず、無線I/F201は無線ネットワークを介して無線基地局100からデータを受信すると(図6の(1)無線TCPデータ)、受信したデータのすべてをドライバ部204へ送信する(図6の(2)TCPデータ)。TCP検出部202はドライバ部204から出力されるデータのヘッダを参照し、予め定めた値の場合には(ここでは、IPヘッダのプロトコルタイプがTCPを示し、且つ、TCPヘッダのコントロールフラグがACKのビットのみ立っている)、そのデータのACKを廃棄部205へ送信し、廃棄部205でデータのACKを廃棄する。
【0042】
以上により、無線ネットワークへ送信されるTCPのACKを削除でき、無線ネットワーク内のデータ数を削減出来る。また、この場合の上述のデータのACKに関して、図1の無線基地局100により送信元の端末へデータに対応するACKが送信されているため、通信は切断されない。
【0043】
なお、図1の無線基地局100においても、同様にTCP検出部102でTCPのACKを検出した場合には、廃棄部108でデータのACKを廃棄することでACKを削減することができる。
【0044】
次に、図1の無線基地局100はTCPシーケンス部104と廃棄部108を有しているが、この場合のTCPシーケンス部104と廃棄部108によるACKの廃棄について説明する。まず、無線ネットワークから有線ネットワークへブリッジするデータからTCPデータをTCP検出部102で検出すると、そのTCPデータのシーケンス番号をTCPシーケンス部104へ記録する。また、有線I/F101でTCPデータのACKを受信すると、そのACKを無線ネットワークへブリッジすることなく、廃棄部108でTCPデータのACKを廃棄し、無線ネットワークの送信データ数の削減を行う。
【0045】
図7はこの場合の動作を示す。無線端末装置200から送信された無線データを無線I/F107で受信すると(図7の(1)無線TCPデータ)、TCP検出部102へ送信する(図7の(3)TCPデータ)。TCP検出部102は受信データのヘッダが予め定めたビットの値か判別し、その結果、TCPデータの場合には、そのシーケンス番号をTCPシーケンス部104へ記録する(図7の(4)シーケンス記録)。TCP検出部104で検出後、有線I/F101を介して送信先の有線端末へTCPデータを送信する(図7の(5)TCPデータ)。
【0046】
TCPデータを受信した有線端末は、TCPデータの受信応答であるTCPデータのACKを送信する(図7の(6)TCPデータのACK)。有線端末からのTCPデータのACKを有線I/F101で受信し、TCP検出部102へ送信する。TCP検出部102は受信データのヘッダが予め定めたビットの値か判別し、その結果、TCPデータのACKの場合には、TCPシーケンス部104に記録された値と比較し(図7の(7)シーケンス比較)、シーケンス番号が等しい場合には、廃棄部108に送信し、廃棄部108でTCPデータのACKを廃棄する(図7の(8)ACK廃棄)。
【0047】
以上により、無線ネットワークへ送信されるTCPのACKを削除でき、無線ネットワーク内のデータ数を削減出来る。
【0048】
次に、図1の無線基地局100においてTCPバッファ部105とタイマー109を用いて通信制御を行う場合の動作について説明する。これは本発明の特徴である。TCP検出部102でTCPデータを検出した場合には、そのTCPデータをTCPバッファ部105でバッファし、無線I/F107が無線ネットワークへ送信可能な状態であれば、TCPバッファ部105からデータを出力し、無線I/F107を介して無線ネットワークへ送信する。
【0049】
TCP ACK生成部103は、TCPバッファ部105の空きバッファ量に応じてTCP ACKのウィンドウサイズを変更する手段を有し、また、TCPバッファ部105の空きバッファ量が予め定めた空きサイズより少ない場合には、タイマー109でTCP ACK生成部103からのACK出力を制御し、無線ネットワークと有線ネットワークの混雑差に合わせた効率的な送信を行う。
【0050】
更に、詳しく説明すると、TCP ACK生成部103はRFC793に定められたTCPプロトコルのフロー制御において受信側のバッファ量に応じて変動するウィンドウサイズというパラメータを変更する手段を有する(ウィンドウサイズのパラメータの変更はTCP/IPの標準動作である)。
【0051】
無線基地局100は、TCP検出部102でTCPデータを検出した場合、そのTCPデータを無線I/F107を介して無線ネットワークへ送信するが、有線ネットワークからの受信データ量が多いと有線ネットワークに比べ無線ネットワークの送信速度(通信帯域)が低い為無線I/F107で送信待ちが発生する場合がある。
【0052】
そこで、TCP検出部102で検出したTCPデータを、TCPバッファ部105で一度バッファして無線I/F107へ送信する。TCP ACK生成部103はTCPバッファ部105の空き容量に応じてウィンドウサイズのパラメータ値を小さくし、送信元有線端末からのTCPデータを制限する。即ち、TCPバッファ部105の空きバッファ量が小さいほど、ウィンドウサイズのパラメータ値を小さくすることにより、有線端末からのデータ量を制限し、上述のような送信待ちの発生を抑制する。
【0053】
また、TCPバッファ部105の空きバッファ量が予め定めたバッファ量より少なくなった場合には、TCP ACK生成部103から送信するACKのタイミングをタイマー109で遅延させ、次のTCPデータが送信元から送信されるTCPデータを制限する。以上により、無線ネットワークの混雑に合わせた効率的な送信を行うことができる。
【0054】
次に、図4の無線端末装置200においてTCPバッファ部207、タイマー208を用いて通信制御を行う場合の動作について説明する。無線端末装置200はTCPバッファ部207を有し、TCP検出部202でTCPデータを検出した場合には、そのTCPデータをTCPバッファ部207でバッファする。また、無線I/F201が無線ネットワークへ送信可能な状態であれば、バッファ部207からデータを出力し、無線I/F201を介して無線ネットワークへ送信する。TCP ACK生成部203はTCPバッファ部207の空きバッファ量に応じてTCP ACKのウィンドウサイズを変更し、ドライバ部204へTCP ACKを出力し、無線ネットワークの混雑に合わせた効率的な送信を行う。
【0055】
更に、詳しく説明すると、TCP ACK生成部203はRFC793に定められたTCPプロトコルのフロー制御において受信側のバッファ量に応じて変動するウィンドウサイズというパラメータを変更する手段を有する。無線端末装置200は、TCP検出部202でTCPデータを検出した場合には、そのTCPデータを無線I/F201を介して無線ネットワークへ送信するが、ドライバ部204からの受信データ量が多いと無線I/F201で送信待ちが発生する場合がある。
【0056】
そこで、TCP検出部202で検出したTCPデータは、TCPバッファ部207で一度バッファして無線I/F201へ送信する。TCP ACK生成部203はTCPバッファ部207の空き容量に応じてウィンドウサイズのパラメータ値を小さくし、ドライバ部204からのTCPデータを制限する。即ち、TCPバッファ部207の空きバッファ量が小さいほど、ウィンドウサイズのパラメータ値を小さくすることにより、ドライバ部204からのTCPデータを制限する。
【0057】
また、TCPバッファ部207の空きバッファ量が予め定めたサイズより少なくなった場合には、TCP ACK生成部203から送信する上述の代理ACKの送信タイミングをタイマー208で遅延させ、次に送信元から送信されるTCPデータを制限する。以上により、無線ネットワークの混雑に合わせた効率的な送信を行う。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る無線基地局の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】無線基地局の動作(TCP受信時)を示す図である。
【図3】本発明の無線基地局と無線端末装置間のデータ送受信を示す図である。
【図4】本発明に係る無線端末装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5】無線端末装置の動作(TCP送信時)を示す図である。
【図6】無線端末装置の動作(TCP送信時)を示す図である。
【図7】無線基地局の動作(TCP送信時)を示す図である。
【図8】従来の無線基地局と無線端末装置間の通信手順を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
100 無線基地局
101 有線I/F
102 TCP検出部
103 TCP ACK生成部
104 TCPシーケンス部
105 TCPバッファ部
106 制御部
107 無線I/F
108 廃棄部
109 タイマー
110 有線ネットワーク
111 無線ネットワーク
200 無線端末装置
201 無線I/F
202 TCP検出部
203 TCP ACK生成部
204 ドライバ部
205 廃棄部
206 TCPシーケンス部
207 TCPバッファ部
208 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記受信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段とを備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項2】
受信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記受信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項3】
受信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記受信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項4】
ドライバ部からの送信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記送信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを前記ドライバ部へ代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段とを備えたことを特徴とする無線端末装置。
【請求項5】
ドライバ部からの送信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記送信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを前記ドライバ部へ代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファする手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを所定時間遅延させる手段とを備えたことを特徴とする無線端末装置。
【請求項6】
ドライバ部からの送信データがTCPデータであるか否かを判別する手段と、前記送信データがTCPデータであった時に前記TCPデータのACKを生成し、生成したACKを前記ドライバ部へ代理で送信する手段と、前記TCPデータをバッファするバッファ手段と、前記バッファ手段の空き容量に応じてTCP ACKのウインドウサイズを変更する手段と、前記バッファ手段の空き容量が所定量以下となった時に前記ACK生成手段で生成された代理ACKの送信タイミングを遅延させる手段とを備えたことを特徴とする無線端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−114973(P2006−114973A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297664(P2004−297664)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】