説明

無線基地局

【課題】複数の無線送受信部及び複数のベースバンド部を備えた無線基地局において、無線送受信部とベースバンド部を接続をするケーブルの本数の抑制を図る。
【解決手段】1本のケーブルL1で双方向接続された複数の無線送受信部RF1,RF2と、無線送受信部RF1, RF2に一本のケーブルL2,L3でそれぞれ双方向接続されたベースバンド部BB0, BB1とを備え、各無線送受信部RF1, RF2は、ベースバンド部BB0, BB1から受信した自分宛の第1の下り方向信号及び無線送受信部RF2, RF1宛の第2の下り方向信号の内、該第2の下り方向信号を無線送受信部RF2, RF1に送ると共に、ベースバンド部BB0, BB1の運用時において、第1の下り方向信号及び無線送受信部RF2, RF1を経由したベースバンド部BB1, BB0からの第3の下り方向信号の内、第1の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局に関し、特に無線送受信部(無線器)を冗長に構成して無線通信サービスを行う無線基地局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動無線通信システムでは、1つの無線基地局がサービスするエリアをマルチセクタ(3セクタ、6セクタ等)で構成することが一般的となっている。また、近年では、マルチアンテナ技術が本格的に実用化されつつある。マルチアンテナ技術では従来のセクタ構成に加え複数のアンテナと無線送受信部が必要となる。また、複数の無線送受信部に対してベースバンド部と称されるディジタル信号処理部が必要となる。
【0003】
なお、多重送信部における光送信部において伝送する複数の電気信号を波長の異なる光信号に変換する手段を有し、多重化部においては、少なくとも回線断発生時には回線断の影響を受ける光信号と同一波長の光信号が他の回線で伝送されるように該光信号を多重して送出する手段を有し、受信分離部における分離部においては受信した多重化信号を分離する手段を有し、光受信部においては該光信号を電気信号に変換する手段を有する光送受信装置がある(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、複数の要素信号を多重して構成されている多重信号を受信し、この多重信号から該当する要素信号をドロップする伝送速度の変換方法において、前記多重信号から多重されている複数の要素信号を分離しながら、これら要素信号の回線を設定し、この回線設定のあとで、所定の受信処理を前記要素信号ごとに実行する伝送速度の変換方法及び装置がある(例えば特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、予備リング上に、所定波長のパスが形成されているとき、現用リングの光ファイバに破断障害が発生すると、監視制御器がその障害を検出し、予備リング上のショート・パスの切り離しを行うために、関係ノードにメッセージングを行い、該パスを切り離し、これに応じて予備リングを介して主信号光の送出を要求し、その要求に従って、予備リングにも光を送出するように光スイッチを切り替える通信ネットワーク及び通信ネットワーク・ノード装置がある(例えば特許文献3参照。)。
【0006】
さらに、二重化した送信拡散処理回路の拡散処理部を現用系拡散処理部と予備系拡散処理部に2分し、それぞれで処理された拡散信号を第1の加算合成部と第2の加算合成部とで別々に加算合成し、これら現用系拡散信号と予備系拡散信号を加算合成するかしないかを選択する加算選択部を各送信拡散処理回路に設け、二重化した相手側の送信拡散処理回路の故障検出部からの故障検出信号にてこの加算選択部を直接制御するCDMA通信装置における送信拡散処理回路の二重化方式がある(例えば特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開平7-74729号公報
【特許文献2】特開2000-13349号公報
【特許文献3】特開2000-78176号公報
【特許文献4】特許第3365382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来例の場合は、ベースバンド部と無線送受信部とを双方向接続するケーブルの本数が多くなってしまうという課題があった。
【0008】
従って、本発明は、複数の無線送受信部及び複数のベースバンド部を備えた無線基地局において、無線送受信部とベースバンド部を接続をするケーブルの本数の抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る無線基地局は、通信ケーブルで接続された第1、第2の無線送受信部と、該第1の無線送受信部に通信ケーブルで接続された第1ベースバンド部と、該第2の無線送受信部に通信ケーブルで接続された第2ベースバンド部とを備える。
【0010】
好ましくは、前記第1無線送受信部は、第1のセクタを形成し、前記第2無線送受信部は第2のセクタを形成する。
【0011】
好ましくは、前記第1無線送受信部は、前記第1ベースバンド部からの信号を下り送信信号として送信可能であるとともに、前記第1ベースバンド部からの信号を前記第2無線送受信部に転送し、前記第2無線送受信部は、前記第2ベースバンド部からの信号を下り信号として送信可能であるとともに、前記第2ベースバンド部からの信号を前記第2無線送受信部に転送する。
【0012】
好ましくは、前記第1無線送受信部は、前記第1ベースバンド部からの信号を前記転送により取得した第2ベースバンド部からの信号に対して優先して選択して送信する。
【0013】
また、本発明は、1本のケーブルで双方向接続された第1及び第2の無線送受信部と、該第1及び第2の無線送受信部にそれぞれ一本のケーブルで双方向接続された第1及び第2のベースバンド部と、を備え、該第1の無線送受信部は、該第1のベースバンド部から受信した自分宛の第1の下り方向信号及び該第2の無線送受信部宛の第2の下り方向信号の内、該第2の下り方向信号を該第2の無線送受信部に送ると共に、該第1のベースバンド部の運用時において、該第1の下り方向信号及び該第2の無線送受信部を経由した該第2のベースバンド部からの第3の下り方向信号の内、該第1の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とする無線基地局を提供する。
【0014】
すなわち、本発明では、一本のケーブルで複数の無線送受信部を双方向接続し、さらに各無線送受信部はベースバンド部と一本のケーブルで双方向接続されている。
【0015】
そして、第1のベースバンド部に一本のケーブルで双方向接続された第1の無線送受信部は、運用状態にある第1のベースバンド部からの自分宛の第1の下り方向信号と第2の無線送受信部からの第3の下り方向信号とを受信するが、この場合、自分宛の第1の下り方向信号を優先的に選択し移動局に向かって送信する。この場合の第2の無線送受信部からの第3の下り方向信号は、該第2の無線送受信部に双方向接続された第2のベースバンド部から該第2の無線送受信部を経由して受信した下り方向信号である。
【0016】
従って、第1のベースバンド部−第1の無線送受信部−第2の無線送受信部−第2のベースバンド部間のケーブル本数は合計で三本で済み、従来例に比べてより簡素な構造を実現できる。
【0017】
また、第1の無線送受信部は、直接接続されていない第2のベースバンド部が運用状態にある場合、今度は自分宛の第1の下り方向信号ではなく、第2の無線送受信部からの第3の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とすることができる。
【0018】
上記の場合、第1の無線送受信部は、自分宛の第1の下り方向信号及び第2の無線送受信部からの第3の下り方向信号の内、自分宛の第1の下り方向信号が障害状態を示していれば、第1のベースバンド部が運用時であっても、第2の無線送受信部からの第3の下り方向信号を選択して送信信号とすることができる。
【0019】
すなわち、各無線送受信部は、自分側のベースバンド部が正常な場合には自分宛の第1の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とするが、異常な場合には、別の無線送受信部からの第3の下り方向信号を選択して送信信号とする。
【0020】
また、第1の無線送受信部は、受信した上り方向信号を、自分宛の第1の上り方向信号及び第2の無線送受信部宛の第2の上り方向信号に分配し、該第2の上り方向信号を第2の無線送受信部に送ると共に、第1の上り方向信号及び第2の無線送受信部から受信した該第2の上り方向信号を第1のベースバンド部に送ることができる。
【0021】
すなわち、上り方向信号に関しては、運用/非運用、及び障害の有無に関わらずに、各無線送受信部はその上り方向信号を自分側のベースバンド部に送ると共に、別の無線送受信部を経由して別のベースバンド部にも送る。
【0022】
また、各無線送受信部は、該第2の下り方向信号と該第2の上り方向信号とを多重化して該第2の無線送受信部に送ると共に、該多重化して送られて来た多重化信号を、それぞれ、該第2の下り方向信号及び該第2の上り方向信号に分離することができる。
【0023】
この場合の各無線送受信部は、異なるセクタ又はセルに設置されたものでよい。
【0024】
これにより、単一のセクタ内に各無線送受信部が設定されている場合において、両方とも障害のときはそのセクタでの通信はできなくなってしまうが、異なるセクタに各無線送受信部を設置すれば、両方とも障害になっても当該セクタの別の無線送受信部によって救済できることになる。
【0025】
上記のベースバンド部は、例えば0系と1系のベースバンド部である。
【0026】
また、該下り方向信号及び上り方向信号は、伝送する信号情報に接続障害情報を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、ケーブル本数を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図9は、複数の無線送受信部を用いる場合の無線基地局の一案を示す。
【0029】
同図(1)に示す例の場合は、ベースバンド部BBと複数の無線送受信部RF1及びRF2とを接続するとき、まず、ベースバンド部BBを無線送受信部RF1と一本のケーブル伝送路L1で双方向接続し、さらに無線送受信部RF1を無線送受信部RF2に一本のケーブル伝送路L2で双方向接続している。
【0030】
このように、複数の無線送受信部RF1及びRF2をベースバンド部BBに対して直列接続すると、例えば無線送受信部RF1において故障が発生した場合、無線送受信部RF2が正常であっても、その故障が無線送受信部RF1が転送する機能まで波及する場合、ベースバンド部BBと無線送受信部RF2との通信はできなくなってしまう。
【0031】
このような直列接続による問題点の解決を図ったものが同図(2)に示す例である。この場合には、ベースバンド部を冗長な構成とし、ベースバンド部(0系)BB0とベースバンド部(1系)BB1とを設けている。そして、図示のように各ベースバンド部と、無線送受信部RF1及びRF2とは、ケーブルL1〜L4で双方向接続されている。
【0032】
しかしながら、図9(2)に示した例とすると、ベースバンド部はそれぞれ各無線送受信部と双方向接続されるためケーブルの総数が増加し、配線処理に時間を要したり、装置占有スペースの増大を招くこととなる。そこで、下記の本発明の実施例が提供される。
【0033】
・基本構成例:図1
図1は、本発明に係る無線基地局の基本構成例を示したものである。すなわち、この無線基地局は、無線送受信部(無線器)RF1と冗長構成の無線送受信部RF2とを一本のケーブル(例えば光ケーブル)L1で接続している。また、無線送受信部RF1と0系のベースバンド部BB0とはケーブル(例えば光ケーブル)L2で双方向接続し、同様に無線送受信部RF2と1系のベースバンド部BB1とはケーブル(例えば光ケーブル)L3で双方向接続している。
【0034】
この図1に示した本発明の基本構成例は、無線送受信部RF1とRF2を同一のセクタ対応に設置することもできるし、又は異なるセクタに設置することもできる。
【0035】
同一セクタ対応とする場合に、無線送受信部RF1、RF2は、冗長の関係とすることもできる。即ち、無線送受信部RF1は、現用無線送受信部として動作し、ベースバンド部BB0からの受信信号をセクタに向けて送信する。尚、ケーブルL2の断線等があった場合は、無線送受信部RF2経由でベースバンド部BB1からの信号を受信し、そのセクタに向けて送信することもできる。
【0036】
無線送受信部RF2は、予備無線送受信部として動作し、ベースバンド部BB1からの信号を受信する。そして、無線送受信部RF1がセクタに向けて信号を送信できない場合に、ベースバンド部BB1からの信号を、無線送受信部RF1に代わって、同じセクタに対して送信する。尚、無線送受信部RF2は、無線送受信部RF1からベースバンド部BB0の出力信号を取得することができるため、ケーブルL3の断線等があった場合は、無線送受信部RF1経由でベースバンド部BB0からの信号を受信し、そのセクタに向けて送信することもできる。
【0037】
無線送受信部RF1、RF2は複数の経路から信号を取得できる場合は、最短の経路からの信号を優先的に用いて送信することもできる。信号の劣化も少なく、遅延も少ないと考えられるからである。
【0038】
尚、無線送受信部RF1、RF2等における転送を行う機能に障害がある場合は、ケーブルL2、L3等によりベースバンド部から直接取得した信号を用いればよい。
【0039】
無線送受信部RF1、RF2が異なるセクタに対応する場合は、無線送受信部RF1は、ベースバンド部BB0からの出力信号の一部を第1セクタに対して送信し、他の一部を無線送受信部RF2に転送する。逆に、無線送受信部RF2は、ベースバンド部BB1からの出力信号の一部を第2セクタに対して送信し、他の一部を無線送受信部RF1に転送する。
【0040】
・実施例:図2
図2に示す無線基地局の実施例においては、サービスエリアを6つに分割してセクタSCT1〜SCT6で構成し、各セクタ内には2つの無線送受信部を設け、一方に対して他方を冗長として設置する。そして、一方の無線送受信部を、例えば隣接するセクタの無線送受信部と一本のケーブルで直接双方向接続すると共に、それぞれ0系又は1系のベースバンド部に接続したものである。
【0041】
例えば、図示の太線で示す例では、セクタSCT1における無線送受信部D1(図1の無線送受信部RF2に相当。)と、セクタSCT1に隣接したセクタSCT2における無線送受信部M2(図1の無線送受信部RF1に相当。)とを一本のケーブルL1で接続し、無線送受信部M2をケーブルL2で0系のベースバンド部BB0に接続すると共に、無線送受信部D1をケーブルL3で1系のベースバンド部BB1に接続する。
【0042】
尚、このような接続形態をとると次の事態に対して冗長性を維持できる。
【0043】
即ち、セクタSCT1の無線送受信部M1が転送機能を含めて故障となった場合、無線送受信部D1は、セクタSCT1に対して無線信号を送信するが、その送信の際に元となる信号は、ベースバンド処理部BB1からも取得できるし、ベースバンド処理部BB0からも(無線送受信部M2経由で)取得できる。
【0044】
一方、無線送受信部間を直接接続するペアを同一セクタ内とすると、予備系の無線送受信部は直接接続されているベースバンド処理部からの信号を頼りにするしかない。
【0045】
1つのセクタ内における無線信号の送信の停止は、そのセクタ全体におけるサービスの中断を意味するため、その保護は強固である(冗長性が十分に確保されている)ことが望ましい。
【0046】
・実施例の基本動作(下り方向):図3
(1)図3は、図2に太線で示したケーブルL1〜L3で接続される無線送受信部M2,D1とベースバンド部BB0, BB1との接続関係における基本動作例(下り方向)を示したものである。
【0047】
まず、同図(1)に示す0系ベースバンド部BB0を運用するときには、無線送受信部M2は、自分(自セクタ)宛の下り方向信号a1と、他セクタ(例えば隣接セクタ)側の無線送受信部D1宛の下り方向信号a2とを受け、この内の下り方向信号a2をケーブルL1を介して無線送受信部M2に送る。
【0048】
同様にして、無線送受信部D1においても、ベースバンド部BB1から自セクタ宛の下り方向信号b1と、他セクタ側無線送受信部M2宛の下り方向信号b2とを受け、下り方向信号b2をケーブルL1を経由して無線送受信部M2に送る。
【0049】
このとき、ベースバンド部BB0が0系運用対象となっているので、無線送受信部M2は入力した自セクタ宛の下り方向信号a1と無線送受信部D1から受信した下り方向信号b1の内、下り方向信号a1を優先的に選択し移動局(図示せず)に向けて送信する。
【0050】
一方、無線送受信部D1においては、無線送受信部M2と同様に、自セクタ宛の下り方向信号b2と無線送受信部M2からの下り方向信号a2とを受信するが、この無線送受信部D1は1系運用状態、すなわち非運用状態にあるので、無線送受信部M2からの下り方向信号a2を選択して送信信号として出力する。
【0051】
(2)同図(2)に示す1系ベースバンド部BB1運用時、すなわち、無線送受信部D1が運用対象に設定され、無線送受信部M2が非運用対象に設定されている場合には、同図(1)に示す場合と逆になり、無線送受信部D1においては、自セクタ宛の下り方向信号b2と無線送受信部M2からの下り方向信号a2を受けたとき、自セクタ宛の下り方向信号b2を優先的に選択して送信信号とする。
【0052】
同様に無線送受信部M2においては、非運用対象になっているため、自セクタ宛の下り方向信号a1と無線送受信部D1から受信した下り方向信号b1の内、下り方向信号b1を選択して送出することになる。
【0053】
(3)上述した同図(1)及び(2)の場合には、ベースバンド部BB0及びBB1がいずれも正常である場合を扱っているが、同図(3)に示す場合には、0系のベースバンド部BB0に障害が発生した場合の動作を示している。
【0054】
すなわち、無線送受信部M2においては、ベースバンド部BB0からの自セクタ宛下り方向信号a1, a2が障害状態であることを示しているので、運用状態に設定されているか、又は非運用状態に設定されているかに関わらず、他セクタ側の無線送受信部D1からの下り方向信号b1をそのまま送信信号として出力する。
【0055】
一方、無線送受信部D1においては、無線送受信部M2からの下り方向信号a2がベースバンド部BB0の障害状態を示しているので、運用状態に設定されているか、又は非運用状態に設定されているかに関わらず、自セクタ宛下り方向信号b2を送信信号として出力することになる。
【0056】
(4)同図(4)に示した例では、ベースバンド部BB1において障害が発生した状態を示しており、この場合は、同図(3)に示す例と逆になり、無線送受信部D1では他セクタ側無線送受信部M2からの下り方向信号a2しか正常信号として受信しないので、これを送信信号として出力し、無線送受信部M2においては、自セクタ宛の下り方向信号a1しか正常信号として受信しないので、これをそのまま送信信号として出力することとなる。
【0057】
・実施例の基本動作(上り方向):図4
上記の図3の基本動作例では、全てが下り方向について示されているが、上り方向については図4で示されている。この上り方向については図3(1)〜(4)に示した場合と異なり、全ての動作において共通している。
【0058】
すなわち、無線送受信部M2は、上り方向信号cを受信したとき、この上り方向信号cを自セクタ側のベースバンド部BB0と他セクタ側の無線送受信部D1とに分配する。
【0059】
この分配された上り方向信号cを受信した無線送受信部D1においては、この上り方向信号をそのまま自セクタ側ベースバンド部BB1に出力する。
【0060】
これは、無線送受信部D1で受信した上り方向信号dについても全く同様にして自セクタ側ベースバンド部BB1及び他セクタ側ベースバンド部BB0に分配されることになる。
【0061】
上記の図3及び図4に示した基本動作例の具体的な動作が、それぞれ、図5〜図8に示されており、これらについて一つずつ以下に説明する。
【0062】
・動作例(1)(0系ベースバンド部BB0の運用時):図5
まず、この動作例(1)は図3(1)に示した基本動作例に対応するものである。すなわち、無線送受信部は異なるセクタに配置し、図2に示した実施例に則してセクタSCT1における無線送受信部D1を1系のベースバンド部BB1に接続し、セクタSCT2における無線送受信部M2を0系のベースバンド部BB0に接続する。
【0063】
無線送受信部M2, D1は、それぞれ、セレクタSELと、スイッチSW1及びSW2と、多重部MUX1及びMUX2と、分配部DISTとで構成されている。そして、無線送受信部M2には0系運用信号SS0が与えられ、無線送受信部D1においても0系運用信号SS0が与えられることにより、無線送受信部M2が運用状態となり、無線送受信部D1が非運用状態に設定される。この場合の運用信号SS0は各無線送受信部M2, D1のセレクタSELに与えられることによって運用/非運用の切替が行われる。
【0064】
各部の動作は以下の説明においてそれぞれ行う。
【0065】
(i)下り方向の説明
まず、無線送受信部M2に着目すると、0系のベースバンド部BB0から2つの下り方向信号a1及びa2が一本のケーブルL2を介して入力される。この内の下り方向信号a1は無線送受信部M2宛の信号であり、下り方向信号a2は他セクタ側無線送受信部D1宛の信号である。スイッチSW1は、下り方向信号の方路切替を行うものである。このスイッチSW1へケーブルL2を介してポートP1から入力された信号は、信号a1とa2が多重されたものであるが、このスイッチSW1は自セクタ宛の下り方向信号a1をセレクタSELに出力し、他セクタ側の無線送受信部D1宛の下り方向信号a2を多重化部MUX2に送るように予め設定されている。この場合、スイッチSW1のスイッチング動作は無線送受信部M2が運用状態に在るか非運用状態に在るかに関係なく実行される。
【0066】
また、下り方向信号a1及びa2において、接続ケーブルの断線や送信元の異常発生など入力データ断が発生した場合には後段のセレクタSEL及び多重化部MUX2にその状態を通知する。例えば、その状態通知は、下り方向信号と一緒に、又は別に1ビットの情報(正常状態=“0”、異常状態=“1”、或いはその逆)の情報であればよい。但し、ここでは、下り方向信号a1及びa2は、いずれも正常状態を示している。
【0067】
セレクタSELには、上記の下り方向信号a1の他、他セクタ側無線送受信部D1からの下り方向信号b1(これについては後述する。)が入力されており、今、セレクタSELは上記のとおり、0系運用信号SS0によって下り方向信号a1を選択するように設定されているので、下り方向信号a1及びb1の双方が正常状態を示す場合には、下り方向信号a1を優先的に選択してアンテナから送信信号a1として出力することになる。但し、後述するように、セレクタSELは下り方向信号a1が障害状態を示す場合には下り方向信号b1を選択して出力することになる。
【0068】
スイッチSW1から出力された下り方向信号a2は、上記のとおり多重化部MUX2に送られるが、この多重化部MUX2には、分配部DISTを経由して上り方向信号cが与えられている。なお、分配部DISTは、アンテナから受信した上り方向信号cを多重化部MUX2に対して送ると共に、同じ上り方向信号cを別の多重化部MUX1に対しても送ることによって、上り方向信号cを2方向に分配している。
【0069】
多重化部MUX2は、下り方向信号a2と上り方向信号cとを多重化してポートP2からケーブルL1を介して他セクタ側無線送受信部D1におけるポートP2に与える。なお、無線送受信部M2のポートP2と無線送受信部D1のポートP2とは一本のケーブルL1で双方向接続されている。
【0070】
無線送受信部D1においては、無線送受信部M2からポートP2において受信した多重化された信号a2及びcをスイッチSW2に送る。スイッチSW2は、上記のスイッチSW1と同様に、その方路を切り替えるものである。すなわち、このスイッチSW2は、下り方向信号a2をセレクタSELに送り、上り方向信号cを多重化部MUX1に送る。
【0071】
ベースバンド部BB1から出力され、一本のケーブルL3及びポートP1を経由して多重化された下り方向信号b1及びb2がスイッチSW1で方路切替されて、その内の下り方向信号b2がセレクタSELに与えられ、他方、下り方向信号b1が多重化部MUX2に与えられる。従って、セレクタSELは下り方向信号a2に加えてベースバンド部BB1からの下り方向信号b2を入力することになる。
【0072】
このとき、無線送受信部D1は、0系運用信号SS0を入力しているので、無線送受信部M2におけるセレクタSELとは逆の動作を呈し、スイッチSW1からの下り方向信号b2ではなく、スイッチSW2からの下り方向信号、すなわち、運用側の無線送受信部M2を経由してベースバンド部BB0から送られて来た下り方向信号a2を選択し、これを送信信号a2として出力することになる。
【0073】
(ii)上り方向の説明
一方、無線送受信部M2において、分配部DISTで分配された上り方向信号cは、多重化部MUX1においてスイッチSW2からの上り方向信号d(後述する。)と多重化され、ポートP1及びケーブルL2を経由してベースバンド部BB0へ送られる。
【0074】
無線送受信部D1においても、上り方向信号dは分配部DISTにおいて2つの方向に分配され、一方は、多重化部MUX1に送られ、他方は多重化部MUX2に送られる。多重化部MUX1においては前述の如く、スイッチSW2から方路切替された無線送受信部M2からの上り方向信号cが与えられているので、これらの上り方向信号c及びdが多重化されポートP1及びケーブルL3からベースバンド部BB1に送られることになる。
【0075】
分配部DISTから多重化部MUX2に送られた上り方向信号dは、スイッチSW1から与えられた下り方向信号b1と多重化され、ケーブルL1を経由して無線送受信部M2のポートP2からスイッチSW2に与えられる。
【0076】
そして、このスイッチSW2は、上述したように下り方向信号b1をセレクタSELに与えるとともに、上り方向信号dを多重化部MUX1に与える。
【0077】
このようにして、図3(1)に示したように、0系のベースバンド部BB0から出力された下り方向信号a1が無線送受信部M2より送信信号として出力され、下り方向信号a2は無線送受信部M2から無線送受信部D1を経由してやはり送信信号a2として出力されることになる。また、上り方向信号c及びdは、ベースバンド部BB0及びBB1に共に送られることになる(図4参照。)。
【0078】
・動作例(2)(1系ベースバンド部BB1の運用時):図6
この動作例は、図3(2)に示す基本動作例に対応するもので、今度は無線送受信部D1が1系運用信号SS1を受けて運用状態となり、無線送受信部M2が1系運用信号SS1を受けて非運用状態に設定される。
【0079】
従って、この動作例において図5に示した動作例(1)と異なる点は、各無線送受信部M2, D1におけるセレクタSELの動作である。
【0080】
すなわち、無線送受信部D1におけるセレクタSELは、1系運用信号SS1が与えられることにより、入力するスイッチSW1からの下り方向信号b2と、スイッチSW2からの下り方向信号a2の内、自セクタ宛の下り方向信号b2を優先的に選択して送信信号とするものである。
【0081】
同様に、無線送受信部M2におけるセレクタSELにおいては、やはり1系運用信号SS1が与えられることにより、この場合にはスイッチSW1からの下り方向信号a1とスイッチSW2からの下り方向信号b1の内、下り方向信号b1を選択して送信信号とするものである。
【0082】
なお、上り方向信号c及びdについては、上記の動作例(1)と全く同様の動作を呈することになるので、ベースバンド部BB0及びBB1において共に上り方向信号c及びdが受信される。
【0083】
・動作例(3)(0系ベースバンド部BB0の故障時):図7
この動作例(3)の場合には、0系のベースバンド部BB0が障害状態に陥り、従って、図5及び6に示した動作例(1)及び(2)における上り方向信号a1及びa2が障害状態を示すことになる。この障害状態は、図では点線で示されている。
【0084】
従って、この下り方向信号a1及びa2が障害状態であることを示す信号である場合、スイッチSW1からセレクタSELに下り方向信号a1が与えられると、セレクタSELは、ベースバンド部BB0が障害状態にあると判断し、スイッチSW2からの下り方向信号b1を選択して送信信号とする。
【0085】
また、無線送受信部D1においては、やはりセレクタSELにおいてスイッチSW2からの下り方向信号a2がベースバンド部BB0の障害状態を示しているので、セレクタSELはベースバンド部BB0の障害状態を知ることとなり、以てスイッチSW1からの下り方向信号b2を選択して送信信号とする。
【0086】
すなわち、無線送受信部M2及びD1におけるセレクタSELは、共に運用信号が0系であるか1系であるかに関わらず、入力して来た正常な信号の方を出力することになる。
【0087】
その他の動作に関しては、上記の動作例(1)及び(2)と同様である。
【0088】
・動作例(4)(1系ベースバンド部BB1の故障時):図8
この動作例(4)の場合には、0系のベースバンド部BB0の代わりに1系のベースバンド部BB1が障害状態に陥った点が上記の動作例(3)と異なる。
【0089】
従って、無線送受信部D1において、この下り方向信号b1及びb2が障害状態であることを示す信号であるので、スイッチSW1からセレクタSELに下り方向信号b2が与えられると、セレクタSELは、ベースバンド部BB1が障害状態にあると判断し、スイッチSW2からの下り方向信号b1を選択して送信信号とする。
【0090】
また、無線送受信部M2においては、やはりセレクタSELにおいてスイッチSW2からの下り方向信号b1がベースバンド部BB1の障害状態を示しているので、セレクタSELはベースバンド部BB1の障害状態を知ることとなり、以てスイッチSW1からの下り方向信号a1を選択して送信信号とする。
【0091】
その他の動作に関しては、上記の動作例(3)と同様である。
【0092】
なお、本発明は、上記実施例によって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【0093】
(付記1)
通信ケーブルで接続された第1、第2の無線送受信部と、該第1の無線送受信部に通信ケーブルで接続された第1ベースバンド部と、該第2の無線送受信部に通信ケーブルで接続された第2ベースバンド部とを備えたことを特徴とする無線基地局。
(付記2)付記1において、
前記第1無線送受信部が、第1のセクタを形成し、前記第2無線送受信部が第2のセクタを形成することを特徴とする無線基地局。
(付記3)付記1において、
前記第1無線送受信部が、前記第1ベースバンド部からの信号を下り送信信号として送信可能であるとともに、前記第1ベースバンド部からの信号を前記第2無線送受信部に転送し、前記第2無線送受信部が、前記第2ベースバンド部からの信号を下り信号として送信可能であるとともに、前記第2ベースバンド部からの信号を前記第2無線送受信部に転送することを特徴とする無線基地局。
(付記4)付記1において、
前記第1無線送受信部が、前記第1ベースバンド部からの信号を前記転送により取得した第2ベースバンド部からの信号に対して優先して選択して送信することを特徴とする無線基地局。
(付記5)
1本のケーブルで双方向接続された第1及び第2の無線送受信部と、
該第1及び第2の無線送受信部にそれぞれ一本のケーブルで双方向接続された第1及び第2のベースバンド部と、
を備え、該第1の無線送受信部は、該第1のベースバンド部から受信した自分宛の第1の下り方向信号及び該第2の無線送受信部宛の第2の下り方向信号の内、該第2の下り方向信号を該第2の無線送受信部に送ると共に、該第1のベースバンド部の運用時において、該第1の下り方向信号及び該第2の無線送受信部を経由した該第2のベースバンド部からの第3の下り方向信号の内、該第1の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とすることを特徴とした無線基地局。
(付記6)付記5において、
該第1の無線送受信部は、該第2のベースバンド部の運用時において、該第1及び第3の下り方向信号の内、該第3の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とすることを特徴とした無線基地局。
(付記7)付記5において、
該第1の無線送受信部は、該第1及び第3の下り方向信号の内、該第1の下り方向信号が障害状態を示しているとき、該第1のベースバンド部の運用時であっても、該第3の下り方向信号を選択して送信信号とすることを特徴とした無線基地局。
(付記8)付記5において、
該第1の無線送受信部は、受信した上り方向信号を、自分宛の第1の上り方向信号及び該第2の無線送受信部宛の第2の上り方向信号に分配し、該第2の上り方向信号を該第2の無線送受信部に送ると共に、該第1の上り方向信号及び該第2の無線送受信部から受信した該第2の上り方向信号を該第1のベースバンド部に送ることを特徴とした無線基地局。
(付記9)付記8において、
各無線送受信部は、該第2の下り方向信号と該第2の上り方向信号とを多重化して該他局側の無線送受信部に送ると共に、該多重化して送られて来た多重化信号を、それぞれ、該第2の下り方向信号及び該第2の上り方向信号に分離することを特徴とした無線基地局。
(付記10)付記5から9のいずれか1つにおいて、
各無線送受信部が、異なるセクタ又はセルに設置されていることを特徴とした無線基地局。
(付記11)付記5において、
該ベースバンド部が、0系と1系のベースバンド部であることを特徴とした無線基地局。
(付記12)付記5において、
該下り方向信号及び上り方向信号が、伝送する信号情報に接続障害情報を含むことを特徴とした無線基地局。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る無線基地局の基本構成例を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る無線基地局の一実施例を示したブロック図である。
【図3】図2に示した無線基地局の実施例による基本動作例(下り方向)を示したブロック図である。
【図4】図2に示した無線基地局の構成例による基本動作例(上り方向)を示したブロック図である。
【図5】図3(1)に示した0系ベースバンド部運用時の動作例(1)を示したブロック図である。
【図6】図3(2)に示した1系ベースバンド部運用時の動作例(2)を示したブロック図である。
【図7】図3(3)に示した0系ベースバンド部故障時の動作例(3)を示したブロック図である。
【図8】図3(4)に示した1系ベースバンド部故障時の動作例(4)を示したブロック図である。
【図9】課題を解決する一案を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0095】
M1〜M6, D1〜D6 無線送受信部
BB0 ベースバンド部(0系)
BB1 ベースバンド部(1系)
SCT1〜SCT6 セクタ
a1, a2, b1, b2 下り方向信号
c, d 上り方向信号
SW1, SW2 スイッチ
SEL セレクタ
MUX1, MUX2 多重化部
DIST 分配部
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ケーブルで接続された第1、第2の無線送受信部と、該第1の無線送受信部に通信ケーブルで接続された第1ベースバンド部と、該第2の無線送受信部に通信ケーブルで接続された第2ベースバンド部とを備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1無線送受信部が、第1のセクタを形成し、前記第2無線送受信部が第2のセクタを形成することを特徴とする無線基地局。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1無線送受信部が、前記第1ベースバンド部からの信号を下り送信信号として送信可能であるとともに、前記第1ベースバンド部からの信号を前記第2無線送受信部に転送し、前記第2無線送受信部が、前記第2ベースバンド部からの信号を下り信号として送信可能であるとともに、前記第2ベースバンド部からの信号を前記第2無線送受信部に転送することを特徴とする無線基地局。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1無線送受信部が、前記第1ベースバンド部からの信号を前記転送により取得した第2ベースバンド部からの信号に対して優先して選択して送信することを特徴とする無線基地局。
【請求項5】
1本のケーブルで双方向接続された第1及び第2の無線送受信部と、
該第1及び第2の無線送受信部にそれぞれ一本のケーブルで双方向接続された第1及び第2のベースバンド部と、
を備え、該第1の無線送受信部は、該第1のベースバンド部から受信した自分宛の第1の下り方向信号及び該第2の無線送受信部宛の第2の下り方向信号の内、該第2の下り方向信号を該第2の無線送受信部に送ると共に、該第1のベースバンド部の運用時において、該第1の下り方向信号及び該第2の無線送受信部を経由した該第2のベースバンド部からの第3の下り方向信号の内、該第1の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とすることを特徴とした無線基地局。
【請求項6】
請求項5において、
該第1の無線送受信部は、該第2のベースバンド部の運用時において、該第1及び第3の下り方向信号の内、該第3の下り方向信号を優先的に選択して送信信号とすることを特徴とした無線基地局。
【請求項7】
請求項5において、
該第1の無線送受信部は、該第1及び第3の下り方向信号の内、該第1の下り方向信号が障害状態を示しているとき、該第1のベースバンド部の運用時であっても、該第3の下り方向信号を選択して送信信号とすることを特徴とした無線基地局。
【請求項8】
請求項5において、
該第1の無線送受信部は、受信した上り方向信号を、自分宛の第1の上り方向信号及び該第2の無線送受信部宛の第2の上り方向信号に分配し、該第2の上り方向信号を該第2の無線送受信部に送ると共に、該第1の上り方向信号及び該第2の無線送受信部から受信した該第2の上り方向信号を該第1のベースバンド部に送ることを特徴とした無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−219276(P2008−219276A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51724(P2007−51724)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】