説明

無線端末および無線通信システム

【課題】簡単な構成で、電池の長寿命化を図り、また、無線信号の衝突を回避する。
【解決手段】制御回路31は、時計(またはカレンダ)機能部35を備えている。なお、時計機能とは、現在の時刻を計時する機能であり、カレンダ機能とは、現在の日付(曜日を含む)を計時する機能であり、いずれか一方の機能を備えてもよいし、双方の機能を備えるようにしてもよい。制御回路31は、時計(カレンダ)機能部35に従って、特定の日付、あるいは時間帯にのみ、無線信号を送信する。また、複数の無線タグが配置されている場合、それぞれの無線タグの時計(またはカレンダ)機能部35に設定値を変えることで、送信タイミングがずれるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池を内蔵するアクティブ型RFID(Radio Frequency Identification:以下、無線タグという)は、その電池の電力により無線信号を送信する。最も単純な無線タグは、一定の時間間隔で無線信号を送信する。他に、センサを備え、該センサがある閾値を越える値を検知した際に、無線タグから無線信号を送信するものがある。
【0003】
商品に貼り付けた無線タグとしては、同一の商品に取り付けた無線タグから、何らかの情報を必要とする個別の商品による違いを判別する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図9は、特許文献1による無線タグを用いた無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0004】
商品1には、商品タグ2に加えて、複数の無線タグ3−1、3−2が貼付されている。商品1に無線タグ3−1を貼付する際、タグ・リーダ4によって無線タグ3−1の無線タグIDを読み込み、タグ情報管理装置5の格納部6に格納する。また、操作部7から入力される、商品IDと商品価格情報とが格納部6に格納され、クロック8により発信される現在の時刻も格納部6に格納される。商品価格を変えるときは、別の無線タグ3−2を用いて各情報を格納部6に格納する。
【0005】
商品価格情報を確認するときは、タグ・リーダ4によって無線タグ3−2の無線タグIDを読み取り、その無線タグIDに関連付けられた商品価格情報、商品ID、時刻情報を格納部6から読み出す。決定部9は、これらの情報を得て、最新の時刻情報が関連付けられた無線タグ3−2を有効な無線タグと決定する。制御部10は、全体の動作を制御し、表示部11は、各種情報(商品価格情報、商品ID、時刻情報)を表示する。
【0006】
このように、特許文献1の従来技術では、複数の無線タグを用いて物品の変更または変化する事項を管理する場合に、有効な無線タグを決定することができるタグ情報管理装置5を提供する。
【0007】
また、人が携帯する無線タグとしては、同時に幾人もの人が携帯する無線タグが無線信号を送信する場合、それらの無線信号が互いに衝突してタグ・リーダによって読み取れないような状況を回避する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。図10は、特許文献2による無線タグを用いた無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0008】
無線タグ20は、人に携帯される。無線タグ20を携帯した人がオフィスや商店(一点破線の右側)に入ると、まず、赤外線集電センサ21により検出される。無線タグ20を携帯した人は、そのままゲート23を通過し、所定の時間後に、第2無線信号を送信する。タグ・リーダ24は、上記第2無線信号を受信し、無線タグ20を携帯した人がオフィスや商店(一点破線の右側)に入ったことを検知する。
【0009】
一方、遅延時間算出装置22は、赤外線集電センサ21から無線タグ20を検出した時刻を受け付ける。遅延時間算出装置22は、その無線タグ20を検出した時刻、パルス間隔時間(T)と規定回数(m)とに基づいて、無線タグ20がその後発信する第2無線信号の発信時刻を算出する。
【0010】
次に、遅延時間算出装置22は、その各発信時刻から第2パルス長時間(Tw)前と後の2つの時刻を示す遅延設定間隔指定情報を算出する。そして、遅延設定間隔指定情報に基づいて、発信時刻を遅延させる遅延時間を算出して、その遅延時間の情報を示す第1無線信号を発信するようゲート23に指示する。他の無線タグ(図示略)は、遅延時間の情報に基づいて第2無線信号を遅延させる。
【0011】
このように、特許文献2の従来技術では、複数の無線タグが短時間に続けて電波を受けるような環境にある場合でも、それぞれの無線タグから発信される無線信号が衝突しないように制御することができる、無線信号衝突回避方法を提供する。
【特許文献1】特開2005−78520号公報
【特許文献2】特願2004−314738号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した特許文献1に示すような従来技術では、一定時間間隔で電波を送信する、電池を内蔵した無線タグにおいて、この電波を送信する時間間隔を拡張することで、時間当たり相対的に電波を送信する割合を低減できる。これにより、電池の電力消費を抑制して、無線タグの寿命を延ばすことができる。しかしながら、無線タグ3−1、3−2があまりに広い時間間隔で電波を送信すると、きめ細かな状況が得られなくなるという問題がある。
【0013】
また、上述した特許文献1に示すような従来技術では、同じ対象物(同一商品)に貼付された無線タグ3−1、3−2からの情報を授受して、ある特定の対象物のみを判別することができるとしているが、そのためには、タグ・リーダ4側の制御部10や受信したデータの格納部6や決定部9などを備えた、複雑なタグ情報管理装置5が必要となり、コストアップにつながるという問題がある。
【0014】
さらに、上述した特許文献2に示すような従来技術では、ある場所に多数ある無線タグから情報を一斉に収集しようとした場合には、無線タグから送信される無線信号の衝突を回避することが可能なものの、やはり複雑な装置が必要となり、コストアップにつながるという問題がある。
【0015】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、電池の長寿命化を図ることができ、また、無線信号の衝突を回避することができる無線端末および無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明は、電池により駆動され、自身が保持する各種情報を無線信号により送信する無線端末であって、前記無線信号を送信すべき送信時期を保持する送信時期保持手段と、前記送信時期保持手段に保持されている送信時期に基づいて、前記無線信号を送信する送信手段とを具備することを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記の発明において、現在の時刻を計時する時計手段を具備し、前記送信手段は、前記時計手段による現在の時刻と前記送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の時間帯に前記無線信号を送信することを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記の発明において、現在の日付を取得するカレンダ手段を具備し、前記送信手段は、前記カレンダ手段による日付と前記送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の期間に前記無線信号を送信することを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記の発明において、現在の時刻を計時する時計手段と、現在の日付を取得するカレンダ手段とを具備し、前記送信手段は、前記時計手段による現在の時刻および前記カレンダ手段による日付と前記送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の期間で、かつ特定の時間帯に前記無線信号を送信することを特徴とする。
【0020】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、電池により駆動され、自身が保持する各種情報を無線信号により送信する複数の無線端末と、前記複数の無線端末から送信される無線信号を受信する基地局とからなる無線通信システムであって、前記複数の無線端末は、各々、前記無線信号を送信する送信期間に、無線端末毎に所定の時間だけずらして設定された送信タイミングで、前記無線信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、送信時期保持手段に無線信号を送信すべき送信時期を保持しておき、送信手段により、該送信時期に基づいて無線信号を送信する。したがって、一定の時間間隔で送信するのに比べ、電池の電力消耗を節約し、無線端末の長寿命化を図ることができる。また、送信時期以外には無線信号の送信を停止するので、常時、一定間隔で送信する電波を容易に第三者に傍受されるのを防止することができる。
【0022】
また、本発明によれば、送信手段により、時計手段による現在の時刻と送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の時間帯に無線信号を送信する。したがって、一定の時間間隔で送信するのに比べ、電池の電力消耗を節約し、無線端末の長寿命化を図ることができる。
【0023】
また、本発明によれば、送信手段により、カレンダ手段による日付と送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の期間に無線信号を送信する。したがって、一定の時間間隔で送信するのに比べ、電池の電力消耗を節約し、無線端末の長寿命化を図ることができる。
【0024】
また、この発明によれば、送信手段により、時計手段による現在の時刻およびカレンダ手段による日付と送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の期間で、かつ特定の時間帯に無線信号を送信する。したがって、一定の時間間隔で送信するのに比べ、電池の電力消耗を節約し、無線端末の長寿命化を図ることができる。
【0025】
また、この発明によれば、無線信号を送信する送信期間に、無線端末毎に所定の時間だけずらして設定された送信タイミングで、複数の無線端末の各々から無線信号を送信する。したがって、複数の無線端末からの情報を一斉に収集しようとした場合であっても、送信タイミングをずらすことにより、無線信号の衝突を回避することができ、かつ効率的な情報収集が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、送信設定を変更するとは、無線タグが通常一定間隔で電波を送信するという設定を例えば、電波の送信を所望の期間に限定して他の期間には送信を停止する設定に変更することを意味する。
【0027】
A.第1実施形態
A−1.第1実施形態の構成
図1は、本発明の第1実施形態による無線タグの構成を示すブロック図である。図において、無線タグ30は、制御回路31、無線送信回路32、アンテナ33、電池34から構成されている。制御回路31は、時計(またはカレンダ)機能部35を備えている。なお、時計機能とは、現在の時刻を計時する機能であり、カレンダ機能とは、現在の日付(曜日を含む)を計時する機能であり、いずれか一方の機能を備えてもよいし、双方の機能を備えるようにしてもよい。制御回路31は、無線信号の送信タイミング(時刻、時間帯、日付、曜日、期間など)を保持しており、時計(カレンダ)機能部35によって計時された時刻、または日付(曜日を含む)が上記送信タイミングに一致したか否かに従って、無線信号を送信するか、無線信号の送信を停止するかを制御する。なお、上記無線信号の送信タイミングは、制御回路31、もしくは時計(またはカレンダ)機能部35のどちらに保持されていてもよいし、あるいは別途、図示しないメモリ等に保持されていてもよい。
【0028】
例えば、時計機能を用いることで、昼間は送信を許可し、夜間は送信を停止させるということが可能となる。また、例えば、カレンダ機能を用いることで、月曜から金曜までの間は、送信を許可し、土曜と日曜(週末)には送信を停止させることが可能となる。あるいは、時計機能とカレンダ機能とを併用することで、月曜から金曜までの昼間(勤務時間に近い時間帯)のみ送信を許可し、夜間や土曜と日曜(勤務時間外に近い時間帯に加えて休日などに該当する日程)には送信を停止させるということが可能となる。
【0029】
無線送信回路32は、制御回路31の制御に従って、所定の無線信号をアンテナ33から送信する。電池34は、制御回路31、無線送信回路32に電力を供給する。
【0030】
A−2.第1動作例
次に、図2は、本第1実施形態による無線タグを物品に貼付して該物品を検査するような場合における動作を説明するためのタイミングチャートである。物品検査の場合には、時計(カレンダ)機能部35のカレンダ機能を用い、月末や年末、四半期末にだけ検査・確認を行うように、その(月末や年末、四半期末の)期間の2週間程度だけ、無線タグ30が電波を1分間隔で送信するように設定する。
【0031】
制御回路31は、図2(a)に示すように、時計(またはカレンダ)機能部35に従って、月末や年末、四半期末などの特定の期間になると、2週間のみ1分1回で無線信号を送信するように無線送信回路32に指示する。無線送信回路32は、上記指示を受けると、自身の無線タグIDを含む無線信号をアンテナ33から送信する。なお、図2(b)には、従来技術による無線タグの動作を示している。従来技術では、特定の期間に関係なく、常時、1分間に1回で定期的に無線信号を送信している。
【0032】
図2(a)、(b)から本第1実施形態の無線タグ30において、電波の送信回数が大幅に削減されていることが分かる。ここで、どの程度送信回数が削減されているかを簡単に計算する。四半期末の2週間のみに、1分間に1回の一定間隔で送信する場合と、常時、1分間に1回の一定間隔で送信する場合の送信回数は、それぞれ次のような送信回数になる。
【0033】
<本第1実施形態>
20,160回(=60分×24時間×7日×2週間)
<従来技術>
129,600回(=60分×24時間×30日×3ケ月)
【0034】
本第1実施形態と従来技術とでは、送信回数の差は、約6.4倍になる。さらに、年末の2週間のみの場合では、約25.7倍の差になる。
【0035】
このように、本第1実施形態では、時計(またはカレンダ)機能部35を駆動する電力さえ確保できれば、殆どの期間は電波を送信せずに済む。この結果、無線タグ30の寿命を飛脚的(具体的には1年半〜3年の寿命から本技術の活用により8〜10年以上)に延ばせる。
【0036】
また、このカレンダ機能は単純なもので済ませることもできる。一般的に、うるう年は4年に一度存在するが、さらに百年に一度はうるう年が存在しない。このような煩雑な扱いを省いたうるう年を持たないカレンダでも十分である。これは、電池34自体の保障寿命が10年程度であるのに対して、無線タグ30の使用年数の間に存在し得る、うるう年が高々数回に限られているためである。例えば、最初に月末を28日(この日付とすれば最も短い2月の日数にも対応できる)と設定することで、うるう年を持たず、常に毎年が365日としたカレンダを用いたとしても、この電池34の保障寿命の10年後となっても、同月25日になる程度で済む。
【0037】
このように、物品検査を目的として無線タグ30を用いる場合には、時計(カレンダ)機能部35に従って、特定の期間にのみ無線信号を送信し、それ以外では無線信号の送信を停止するように制御するようにしたので、物品を検査するのに必要となる期末の物品検査の時期のみというように、無線タグ30が電波を送信する期間を限定することができる。そして、無線タグ30が備える電池の電力消耗を節約し、無線タグの長寿命化を図ることができる。また、期末以外の時期には電波の送信を停止するので、常時、一定間隔で送信する電波を容易に第三者に傍受されて物品の存在などを把握されないようにするという盗難などの防犯にもなる。
【0038】
A−2.第2動作例
次に、本第1実施形態の第2動作例について説明する。本第2動作例では、本第1実施形態による無線タグ30を人に携帯させる。人に無線タグ30を付ける場合には、1日24時間の内で会社にて活動する時間(勤務時間)を、およそ8時間とし、この勤務時間の間に次のような送信モデルを考える。
(1)10分1回の定期送信
(2)2時間振動による送信
【0039】
以上の条件ならば、無線タグ30の時計(カレンダ)機能部35の時計機能を用いて、制御回路31により実現できる。
【0040】
さらに、次のような要求項目については、時計(カレンダ)機能部35のカレンダ機能を用いれば可能となる。
(3)週末や、休日、祝日は停止
【0041】
このようにすれば、通常、殆ど電波を送信しないが、勤務時間内だけで、電波を送信させることが可能となり、無線タグ30の電池34を節約して寿命をさらに延ばすことができる。
【0042】
図3は、本第1実施形態による無線タグを人が携帯するような場合における動作を説明するためのタイミングチャートである。制御回路31は、図3(a)に示すように、時計(またはカレンダ)機能部35に従って、1日24時間の内で勤務時間(例えば、8時間)においてのみ、10分に1回、無線信号を送信するように無線送信回路32に指示する。無線送信回路32は、上記指示を受けると、自身の無線タグIDを含む無線信号をアンテナ33から送信する。
【0043】
また、制御回路31は、時計(またはカレンダ)機能部35に従って、週末や、休日、祝日には無線信号の送信を行わない。なお、図3(b)には、従来技術による無線タグの動作を示している。従来技術では、勤務時間、週末や、休日、祝日に関係なく、常時、10分間に1回で定期的に無線信号を送信している。本第1実施形態では、従来技術に比べて、電波の送信回数が3分の1に削減されていることが分かる。
【0044】
さらに,図3(a)において、カレンダ機能を用いて、休日においては無線タグ30の電波送信を停止させてもよい。この場合、図3(b)の本技術を用いない場合と比べ、1ヶ月でどの程度送信回数が削減されているかを簡単に計算する。1ヶ月の勤務時間が180時間で、該勤務時間のみ送信する場合と、常時、10分間に1回の一定間隔で送信する場合との送信回数は、それぞれ次のような送信回数になる。
【0045】
<本第1実施形態>
1,080回(=60分÷10分×180時間)
<従来技術>
4,320回(=60分÷10分×24時間×30日)
【0046】
この差は、ちょうど4倍になると分かる。なお、1ヶ月、180時間の勤務は、月曜から金曜まで1日8時間勤務して4週間(28日)で160時間となる。仮に、その他に残業の増加や休日の減少が同じ程度と考えれば、プラスマイナスゼロとなり、1ヶ月のほぼ通常勤務時間と想定できる。
【0047】
このように、無線タグ30に実装されている時計(カレンダ)機能部35以外の全ての機能を停止させて待機状態にすれば、無線タグ30の電池消耗が抑制され、無線タグ30の寿命を延長することができる。
【0048】
このように、人に無線タグ30を携帯させて用いる場合には、時計(カレンダ)機能部35に従って、特定の期間にのみ無線信号を送信し、それ以外では無線信号の送信を停止するように制御するようにしたので、その人が会社などで勤務活動する時間帯(あるいは出勤日)のみに、無線タグ30が電波を送信する期間を制限することができる。結果的に、時計(またはカレンダ)機能部35を駆動する電力さえ確保できれば、無線タグ30が備える電池34の電力消耗を節約することができ、無線タグ30の長寿命を図ることができる。また、勤務時間以外のプライベートな時間(週末や祭日などの休日)に電波の送信を停止することで、常時、一定間隔で送信する電波を容易に第三者に傍受されて個人の行動などを把握されないようにするという防犯にもなる。
【0049】
なお、図4に示すように、図1に示す構成に加えて、センサ36を備えるようにしてもよい。センサ36は、例えば、無線タグ30が取り付けられた対象物(人を含む)の動きを検出するような振動センサとする。上記時計(カレンダ)機能部35の時計機能およびカレンダ機能と、センサ36からの情報とを組み合わせて、無線タグ30を取り付けた対象物が動かされたときの振動時のみに電波を送信するように限定することができる。このようにすれば、無線タグ30は殆ど電波を送信しないが、勤務時間に物品が動かされるという必要なときのみ電波を送信させることが可能となる。このような制御を行い、無線タグ30の電池34を節約して寿命をさらに延ばすことが可能となる。
【0050】
上述した第1実施形態によれば、無線タグ30を取り付ける対象物(携帯する人を含む)の状態(対象物の環境パターンや、行動など)に合わせて無線タグ30の無線信号の送信時期を変更することができ、きめ細やかな状況を把握することができるとともに、無線タグ30の長寿命化を図ることができる。
【0051】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態は、コンビニエンスストア、自動販売機などの商品補充に適用したものである。コンビニエンスストア、自動販売機では、販売商品の補充を一定時刻(或いは日時)で搬送トラックより行っている。例えば、コンビニエンスストアでは、朝(午前)、昼(午後)、夜(夜間)というように、1日に数回に渡って商品の補充を行っている。コンビニエンスストアでは、商品の販売情報を店員がバーコードリーダを用いて読み取り、POSシステムでチェーン店の本社に情報を集めている。本社に集めた情報を参考にコンビニエンスストアの店長が発注判断をして、その連絡を配送元へ入れている。
【0052】
一方、自動販売機では、販売の量に合わせて多いところは頻繁に商品の補充が行われ、販売の量が少ない所は補充する時々に合わせて必要な量を補充している。特に、在庫の情報を定期的に通報する機能を持つ自動販売機では、自動的に販売した商品数や在庫を把握して、補充する必要の有無を収集できる。
【0053】
しかし、そのような情報を収集するためには、定期的な通報の間隔を短くしたり、情報を収集するオンライン自動販売数管理システム(センタ側)から個別の自動販売機へデータを収集するように指令を出したり、あるいは、自動販売機側に自発的に情報を送信しようとするイベントを検知できる個別のセンサを設置し、その検知の結果から送信するか否かを判定する機能が必要となる。例えば、在庫が無いということだけを検知するセンサだけでなく、残る商品の在庫がどの程度少なくなったとか、販売数の記録を蓄積しながら、その販売数が急増し始めているかいうことも判断することが必要になる。
【0054】
このような課題に対して、本第2実施形態では、図4に示すように、無線タグ30にセンサ36を設けるとともに、図5に示すように、各自動販売機50に無線タグ30を設ける。この場合、センサ36は、商品の在庫数を検知するために用いられる。そして、過去に得られている販売数の推移や変動などに基づいて、自動販売機の在庫数の残りが少なくなると予想される時期(月日)に定期的なデータ送信の頻度を増やすように、該予想される時期を無線タグ30の時計(カレンダ)機能部35に予め設定しておく。
【0055】
これにより、自動手販売機50毎に、商品の在庫数の残りが少なくなると予想される時期(月日)に商品の在庫(在庫数、在庫有無など)に関する情報がオンライン自動販売数管理システム51に自動的に通報される。オンライン自動販売数管理システム51では、通報された商品の在庫に関する情報に従って、飲料メーカ52などに商品の補充を依頼し、依頼を受けた飲料メーカ52などは、対象となる自動販売機50への商品を補充することになる。
【0056】
当然、想定より早く在庫数が減少しても、データ送信の頻度が少なくとも(例えば、1週間とか数日単位での)大まかな販売状況を捕捉しているので、その状況を把握した時点で送信頻度を増やしたり、あるいは在庫切れを未然に防止するように現地へ商品を補充したりすることもできる。
【0057】
このように、本第2実施形態によれば、各自動販売機50からの補充情報が商品の在庫数の残りが少なくなると予想される時期(月日)にオンライン自動販売数管理システム51に自動的に収集されるので、無線タグ30の電池34を節約して寿命をさらに延ばすことができるとともに、製品の補充(トラックでの搬送)の効率的な計画が立てられ、無駄な補充や計画立案の労力などを軽減することができる。
【0058】
さらに、図6は、これまで説明した事例を実現する基本的な構成として、図1または図4に示した無線タグ30に、設定部(変更部)37を付加したものである。設定部(変更部)37は、時計(カレンダ)機能部35に設定すべき無線信号の送信時期を設定するためのものである。このような設定部(変更部)37を付加することで,上述した幾つもの事例に対して同じ構成の無線タグ30を用いることができる。すなわち、商品の補充情報についても、無線タグ30の送信が設定変更できれば、製品販売の売上げに変動が生じても、該変動に対処することが可能となり、さらに柔軟で効率的な補充体制が構築できる。
【0059】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態は、電気・ガス・水道メータなどの自動メータ検針に適用したものである。なお、本第3実施形態においても、図4に示すように、無線タグ30にセンサ36を設ける。この場合、センサ36は、ガスの使用量を検知するために用いられる。現在でも、多くの家庭やオフィスなどの電気・ガス・水道メータの検針には、各事業者から派遣される検針員が読み取り、それらの使用量に応じて料金の請求、支払いが行われている。また、先進的な取り組みとして、自動検針が一部地域や特定の事業者によって行われている。
【0060】
自動検針システムの多くは、情報を収集するセンタ側から検針の指示を送り、その指示により検針を行い、この結果を応答として返送する。このような情報の収集方法で、しかも1つの基地局が多くの端末(各メータ)の情報を、無線を使って一斉に集めると、無線で応答される各種の情報が無線信号で衝突する確率が高くなり、情報の収集が困難になると想像される。また、各々のメータに対して検針の指示を出して、その結果の応答を受けるということを順次行うようにして情報を収集することも可能ではある。しかし、この情報収集の方法では、センタ側から、各々のメータに対して1回ずつ検針の指示を送信するので、必ずしも効率的な方法とは言えない。
【0061】
そこで、本発明の第3実施形態では、図7に示すように、各メータ60、60、…、60に無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)を取り付ける。各無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)では、時計(カレンダ)機能部35の時計機能およびカレンダ機能を用いている。各無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)は、それぞれの時計(カレンダ)機能部35に設定された日付(及び時刻)に従って、検針の結果を送信するようになっている。あるメータに取り付けられた無線タグ30は、別のメータに取り付けられた無線タグ30の時計(カレンダ)機能部35に設定された日付(及び時刻)と全く一致しないように多少ずらすことができる。
【0062】
図8は、本第3実施形態による無線タグにおける無線衝突防止策を説明するためのタイミングチャートである。無線衝突防止策では、多数の無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)があり、一定期間毎(例えば、毎月や四半期毎)に無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)が取り付けられた各種(電気ガス,水道)メータ、或いは各種データ(事務所や商店の在庫数や売上げなどの集計機器情報)を収集する。この際、これらの一定期間の決められた期間(例えば、毎月ならば月末や四半期毎ならばその最終週)に無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)からデータが送信される。この送信の際に、図8(b)に示すように、各々の無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)が異なるタイミングで起動するようにタイムスロットを割り当てる。言い換えると、データ送信期間(図8では「期末」)には、無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)毎に電波送信用のスロット時間が設定されており、無線タグ30(A)、30(B)、…、30(N)は、それぞれのスロット時間でデータ送信を行う。
【0063】
本第3実施形態によれば、複数の無線タグ30から情報を一斉に収集しようとしたときに、時計(カレンダ)機能部35に従って、各無線タグ30の送信タイミングをずらすようにしたので、既存の自動検針システムで無線により一斉にデータを収集しようとした際に発生していた電波の衝突を防止することができ、容易に、かつ効率的に情報収集を行うことができる。また、本第3実施形態では、ガス管理センタ61側から各々のメータ60に対して、検針の指示を出す必要もないので、より効率的に情報収集を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態による無線タグの構成を示すブロック図である。
【図2】本第1実施形態による無線タグを物品に貼付して該物品を検査するような場合における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本第1実施形態による無線タグを人が携帯するような場合における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本第1実施形態の変形例による無線タグの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態による無線タグを自動販売機に用いた場合の商品補充システムの構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態または第2実施形態の変形例による無線タグの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態による無線タグをガスメータに用いた場合の検針システムの構成を示すブロック図である。
【図8】本第3実施形態による無線タグにおける無線衝突防止策を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】特許文献1による無線タグを用いた無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図10】特許文献2による無線タグを用いた無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
30 無線タグ
31 制御回路
32 無線送信回路
33 アンテナ
34 電池
35 時計(カレンダ)機能部
36 センサ
37 設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池により駆動され、自身が保持する各種情報を無線信号により送信する無線端末であって、
前記無線信号を送信すべき送信時期を保持する送信時期保持手段と、
前記送信時期保持手段に保持されている送信時期に基づいて、前記無線信号を送信する送信手段と
を具備することを特徴とする無線端末。
【請求項2】
現在の時刻を計時する時計手段を具備し、
前記送信手段は、前記時計手段による現在の時刻と前記送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の時間帯に前記無線信号を送信することを特徴とする請求項1記載の無線端末。
【請求項3】
現在の日付を取得するカレンダ手段を具備し、
前記送信手段は、前記カレンダ手段による日付と前記送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の期間に前記無線信号を送信することを特徴とする請求項1記載の無線端末。
【請求項4】
現在の時刻を計時する時計手段と、
現在の日付を取得するカレンダ手段とを具備し、
前記送信手段は、前記時計手段による現在の時刻および前記カレンダ手段による日付と前記送信時期保持手段に保持されている送信時期とに基づいて、特定の期間で、かつ特定の時間帯に前記無線信号を送信することを特徴とする請求項1記載の無線端末。
【請求項5】
電池により駆動され、自身が保持する各種情報を無線信号により送信する複数の無線端末と、前記複数の無線端末から送信される無線信号を受信する基地局とからなる無線通信システムであって、
前記複数の無線端末は、各々、前記無線信号を送信する送信期間に、無線端末毎に所定の時間だけずらして設定された送信タイミングで、前記無線信号を送信することを特徴とする無線通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−295249(P2007−295249A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120454(P2006−120454)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】