説明

無線装置および故障位置特定方法

【課題】故障位置を特定することができる無線装置および故障位置特定方法を提供すること。
【解決手段】信号に対して変調処理等を行う無線部の所定部位へ送信信号が入力された時点から、かかる無線部から出力された送信信号の反射波がケーブルから無線部の所定部位へ入力された時点までの時間である反射時間を算出し、算出した反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、かかる反射時間に基づいてケーブルにおいて故障している位置の候補を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置および故障位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基地局などの無線装置には、自装置のアンテナや伝送経路であるケーブルなどが故障しているか否かを検出するものがある。具体的には、このような無線装置は、自装置のアンテナなどによって反射された送信信号の反射波を検波し、かかる反射波の電力値が所定値以上である場合に、アンテナやケーブルなどが故障したと判定する。
【0003】
また、このような無線装置には、送信信号に対して歪補償を行うものがある。具体的には、無線装置によって送信される信号は、変調や増幅が行われることにより歪みが発生する。このため、無線装置は、変調や増幅した後の送信信号を歪補償回路にフィードバックすることにより、送信信号に発生する歪みを補償する。
【0004】
最近では、歪補償処理に用いる歪補償係数を定期的に更新し、さらに、他システムなどから送信される信号である不要波の電力値が所定値以上である場合に歪補償係数更新処理を停止する無線装置も知られている。かかる技術によれば、不要波がフィードバック信号に混入して、歪補償係数を誤った値に更新してしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−142881号公報
【特許文献2】特開2006−197545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術には、無線装置の故障箇所を特定することができないという問題があった。具体的には、反射波の電力値に基づいて故障の発生有無を判定する従来技術は、ケーブルやアンテナに故障が発生したか否かを判定することができるものの、ケーブルからアンテナまでに至る経路のどこに故障が発生したのかを特定することができなかった。無線装置によっては何十メートルものケーブルが用いられている場合もあるので、故障位置を特定できないことは、メンテナンス作業を煩雑にさせるという問題を招いていた。
【0007】
また、上述した所定の電力値以上の不要波を受信した場合に歪補償係数更新処理を停止する技術を用いても、故障位置を特定することはできなかった。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、故障位置を特定することができる無線装置および故障位置特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する無線装置は、一つの態様において、信号に対して変調処理を行う無線部と、外部との間で信号を送受するアンテナと、前記無線部と前記アンテナとを接続するケーブルとを有する無線装置であって、前記無線部の所定部位へ送信信号が入力された時点から、前記無線部から出力された送信信号が前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射されて前記ケーブルから前記無線部の所定部位へ入力された時点までの時間である反射時間を算出する反射時間算出部と、前記反射時間算出部によって算出された反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、該反射時間に基づいて前記ケーブルにおいて故障している位置の候補を特定する故障位置特定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する無線装置の一つの態様によれば、故障している可能性がある位置を特定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1に係る無線装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施例2に係る無線装置の構成例を示す図である。
【図3】図3は、故障判定部による故障位置特定処理の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例2に係る無線装置による故障位置特定処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、複数のアンテナを有する無線装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する無線装置および故障位置特定方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本願の開示する無線装置および故障位置特定方法が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
まず、図1を用いて、実施例1に係る無線装置の構成について説明する。図1は、実施例1に係る無線装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、実施例1に係る無線装置1は、無線部11と、ケーブル12と、アンテナ13と、反射時間算出部14と、故障位置特定部15とを有する。
【0014】
無線部11は、送信信号に対して変調処理や増幅処理などを行う。ケーブル12は、無線部11とアンテナ13とを接続する。アンテナ13は、外部へ信号を送信したり、外部から信号を受信したりする。例えば、無線部11からケーブル12へ出力された送信信号は、アンテナ13によって外部へ送信される。また、例えば、かかる送信信号の一部または全部は、ケーブル12からアンテナ13までの経路において反射され、無線部11へ入力される。なお、以下では、ケーブル12からアンテナ13までの経路において反射された送信信号を「反射波」と表記する。
【0015】
反射時間算出部14は、無線部11の所定部位へ送信信号が入力された時点から、かかる送信信号の反射波がケーブル12から無線部11の所定部位へ出力された時点までの時間である反射時間を算出する。
【0016】
故障位置特定部15は、反射時間算出部14によって算出された反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、かかる反射時間に基づいてケーブル12において故障している位置の候補を特定する。なお、以下では、故障している位置の候補を「故障位置候補」と表記する。
【0017】
例えば、無線装置1には、無線装置1が故障していない状態で測定された反射時間が反射時間閾値として設定される。かかる場合に、故障位置特定部15は、反射時間閾値と、反射時間算出部14によって算出された反射時間との差分に基づいて、ケーブル12における故障位置候補を特定する。具体的には、故障位置特定部15は、反射時間閾値と反射時間との差分が大きいほど、ケーブル12のうち無線部11に近い位置で送信信号が反射されたと判定し、かかる反射位置を故障位置候補として特定する。また、故障位置特定部15は、反射時間閾値と反射時間との差分が小さいほど、ケーブル12のうちアンテナ13に近い位置で送信信号が反射されたと判定し、かかる反射位置を故障位置候補として特定する。
【0018】
上述してきたように、実施例1に係る無線装置1は、反射時間が反射時間閾値よりも小さい場合に、ケーブル12における故障位置候補を特定する。これにより、例えば、無線装置1の管理者等は、故障位置特定部15によって特定された故障位置候補に基づいて、故障している可能性があるケーブル12の位置を検査することができ、故障位置を特定することができる。
【実施例2】
【0019】
次に、上記実施例1において説明した無線装置について具体例を用いて説明する。実施例2では、上記実施例1において説明した無線装置を、送信信号に対して歪補償を行う無線装置に適用する例について説明する。
【0020】
[実施例2に係る無線装置の構成]
まず、図2を用いて、実施例2に係る無線装置100の構成について説明する。図2は、実施例2に係る無線装置100の構成例を示す図である。なお、図2に示した無線装置100の構成は、送信系の構成を示している。
【0021】
図2に示した無線装置100は、例えば、基地局や、基地局と移動局との間で送受される信号を中継する中継局(「リレー局」とも呼ばれる)などである。図2に示すように、無線装置100は、インタフェース(以下、「I/F」と言う)101と、歪補償部110と、変調部121と、DAC(Digital to Analog Converter)122と、周波数変換アップコンバータ123と、AMP(Amplifier:増幅器)124と、カップラ125と、サーキュレータ126と、同軸ケーブル127と、アンテナ128と、分配器129と、RF(Radio Frequency)スイッチ130と、周波数変換ダウンコンバータ131と、ADC(Analog to Digital Converter)132と、復調部133と、検波器134と、スイッチ制御部135とを有する。
【0022】
なお、歪補償部110と、各部121〜126および129〜133とは、図1に示した無線部11に対応する。また、同軸ケーブル127は、図1に示したケーブル12に対応する。また、アンテナ128は、図1に示したアンテナ13に対応する。
【0023】
I/F101は、上位装置などの外部装置との間で信号を送受する。例えば、I/F101は、無線装置100と外部装置とを接続し、かかる外部装置から受信した信号を歪補償部110へ出力する。図2において、無線装置100は、外部装置からI/F101へ入力された信号を、アンテナ128を介して外部へ送信する。かかる信号は、例えば、ユーザデータまたは制御データなどを含む。
【0024】
歪補償部110は、例えば、集積回路であり、I/F101から入力された送信信号に発生する歪みを補償する。また、歪補償部110は、歪補償係数を更新する処理や、故障位置を特定する処理を行う。歪補償部110による歪補償処理や、歪補償係数更新処理、故障位置特定処理については後述する。
【0025】
変調部121は、例えば、集積回路であり、歪補償部110から入力された送信信号を変調する。DAC122は、変調部121によって変調された送信信号をアナログ信号に変換する。周波数変換アップコンバータ123は、送信信号と、局部発振信号とをミキシングすることにより、送信信号の周波数帯を無線周波数帯にアップコンバートする。AMP124は、周波数変換アップコンバータ123によってアップコンバートされた送信信号を増幅する。
【0026】
カップラ125は、AMP124から入力された送信信号を分割して、サーキュレータ126と、RFスイッチ130とへ出力する。サーキュレータ126は、カップラ125から入力された信号を同軸ケーブル127へ出力し、同軸ケーブル127から入力された信号を分配器129へ出力する。同軸ケーブル127は、サーキュレータ126とアンテナ128とを接続する。
【0027】
分配器129は、サーキュレータ126から入力された信号を分割して、RFスイッチ130と、検波器134とへ出力する。RFスイッチ130は、周波数変換ダウンコンバータ131へ入力される信号が、カップラ125から出力される信号、または、分配器129から出力される信号のいずれかになるように接続を切り替える。
【0028】
周波数変換ダウンコンバータ131は、RFスイッチ130から入力された信号をベースバンド信号へダウンコンバートする。ADC132は、周波数変換ダウンコンバータ131によってダウンコンバートされた信号をデジタル信号に変換する。復調部133は、例えば、集積回路であり、ADC132から入力された信号を復調し、復調後の信号を歪補償部110へ出力する。
【0029】
ここで、図2に示した無線装置100内で伝搬する信号の例について説明する。まず、カップラ125と周波数変換ダウンコンバータ131とが接続されるように、RFスイッチ130の接続が切り替えられている場合について説明する。かかる場合、歪補償部110から変調部121へ出力された送信信号は、カップラ125、RFスイッチ130、周波数変換ダウンコンバータ131、ADC132を介して、復調部133へ入力される。そして、復調部133は、ADC132から入力された送信信号をフィードバック信号として歪補償部110へ出力する。
【0030】
また、RFスイッチ130の接続状態が上記例の場合、送信信号は、カップラ125、サーキュレータ126を介して、同軸ケーブル127へ出力される。そして、同軸ケーブル127へ入力された送信信号の一部または全部は、アンテナ128を介して外部へ送信されるか、または、同軸ケーブル127からアンテナ128までの経路において反射される。このとき、かかる送信信号の反射波は、同軸ケーブル127、分配器129を介して検波器134へ出力される。
【0031】
続いて、分配器129と周波数変換ダウンコンバータ131とが接続されるように、RFスイッチ130の接続が切り替えられている場合について説明する。かかる場合、歪補償部110から変調部121へ出力された送信信号は、上記例と同様に、カップラ125、サーキュレータ126を介して、同軸ケーブル127へ出力される。そして、同軸ケーブル127へ入力された送信信号の一部または全部は、アンテナ128を介して外部へ送信されるか、または、同軸ケーブル127からアンテナ128までの経路において反射される。このとき、かかる送信信号の反射波は、同軸ケーブル127、サーキュレータ126、分配器129を介して検波器134へ出力される。さらに、かかる反射波は、同軸ケーブル127、サーキュレータ126、分配器129、RFスイッチ130、周波数変換ダウンコンバータ131、ADC132を介して復調部133へ入力される。そして、復調部133は、ADC132から入力された反射波を歪補償部110へ出力する。
【0032】
なお、アンテナ128は、無線装置100によって送信処理が行われている場合であっても、他業者や他システムから送信された信号である不要波を受信する場合がある。このため、上述したフィードバック信号や反射波には不要波が含まれる場合がある。
【0033】
検波器134は、分配器129から入力された信号のうち、反射波と不要波とを含む信号を抽出し、抽出した信号の電力値を算出する。そして、検波器134は、算出した電力値をスイッチ制御部135へ出力する。
【0034】
スイッチ制御部135は、例えば、集積回路やソフトウェアにより形成される部位であり、RFスイッチ130の接続を切り替えることにより、歪補償部110へ入力される信号が、フィードバック信号または反射波のいずれかになるように制御する。具体的には、スイッチ制御部135は、検波器134によって算出された電力値が所定の閾値である検波レベル閾値よりも大きい場合に、分配器129と周波数変換ダウンコンバータ131とが接続されるように、RFスイッチ130の接続を切り替える。また、スイッチ制御部135は、所定の時間が経過するたびに、分配器129と周波数変換ダウンコンバータ131とが接続されるように、RFスイッチ130の接続を切り替える。
【0035】
上記のようにRFスイッチ130の接続を切り替える理由について説明する。実施例2における歪補償部110は、復調部133からフィードバック信号が入力される場合には、歪補償処理を行うとともに、歪補償係数更新処理を行う。また、歪補償部110は、復調部133から反射波が入力される場合には、歪補償処理を行うとともに、故障位置特定処理を行う。
【0036】
ここで、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値よりも大きい場合、反射波の電力値は異常である可能性がある。そして、反射波の電力値は異常である場合、同軸ケーブル127やアンテナ128は、故障している可能性がある。そこで、スイッチ制御部135は、反射波が歪補償部110へ入力されるようにRFスイッチ130の接続を切り替えることにより、歪補償部110に対して故障位置特定処理を行わせる。
【0037】
また、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値以下である場合であっても、反射時間が異常である可能性がある。そして、反射時間が異常である場合、同軸ケーブル127は、故障している可能性がある。そこで、スイッチ制御部135は、所定の時間が経過するたびに、反射波が歪補償部110へ入力されるようにRFスイッチ130の接続を切り替えることにより、歪補償部110に対して故障位置特定処理を行わせる。
【0038】
次に、上述した歪補償部110について詳細に説明する。以下では、歪補償部110が有する各部について、歪補償係数更新処理が行われる場合と、故障位置特定処理が行われる場合とに分けて説明する。まず、歪補償部110によって歪補償係数更新処理が行われる場合について説明する。
【0039】
図2に示すように、歪補償部110は、歪補償係数テーブル111と、パワー算出部112と、プリディストーション部113と、遅延回路114と、歪補償係数更新部115と、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換器)116と、監視制御部117と、閾値記憶部118と、故障判定部119とを有する。
【0040】
歪補償係数テーブル111は、送信信号の電力ごとに、歪補償処理が行われる際に用いられる歪補償係数を記憶する。なお、歪補償係数テーブル111は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。
【0041】
パワー算出部112は、I/F101から入力された送信信号の電力値を測定し、測定した電力値に対応する歪補償係数を歪補償係数テーブル111から読み出して、読み出した歪補償係数をプリディストーション部113へ出力する。プリディストーション部113は、パワー算出部112によって読み出された歪補償係数を用いて、送信信号に発生する歪みを補償する。
【0042】
遅延回路114は、I/F101から歪補償部110へ送信信号が入力された時点から、復調部133から歪補償部110へフィードバック信号が入力された時点までの時間(以下、「遅延時間」と言う)が設定されている。そして、遅延回路114は、送信信号を遅延時間分だけ遅延させて歪補償係数更新部115へ入力する。すなわち、遅延回路114は、送信信号を遅延させることにより、互いにタイミングのずれた送信信号とフィードバック信号とを同一のタイミングで歪補償係数更新部115へ入力させる。
【0043】
歪補償係数更新部115は、遅延回路114から入力された送信信号と、復調部133から入力されたフィードバック信号とを比較し、比較結果に基づいて歪補償係数を算出する。具体的には、歪補償係数更新部115は、送信信号の電力値と、後述する監視制御部117によって算出されるフィードバック信号の電力値との誤差を求め、求めた誤差が小さくなるように歪補償係数を算出する。そして、歪補償係数更新部115は、歪補償係数テーブル111に記憶されている歪補償係数を、算出した歪補償係数に更新する。
【0044】
FFT116は、復調部133から入力されたフィードバック信号の各周波数信号成分を抽出して、抽出結果を監視制御部117へ出力する。監視制御部117は、FFT116から入力されたフィードバック信号の各周波数信号成分に基づいて、フィードバック信号の電力値を算出し、算出した電力値を歪補償係数更新部115へ入力する。また、監視制御部117は、図2に示すように、遅延時間制御部117aと、係数更新停止部117bとを有する。
【0045】
遅延時間制御部117aは、FFT116から入力された各周波数信号成分に基づいて、I/F101から歪補償部110へ送信信号が入力された時点から、復調部133から歪補償部110へフィードバック信号が入力された時点までの遅延時間を算出する。そして、遅延時間制御部117aは、算出した遅延時間を用いて遅延回路114を制御する。
【0046】
係数更新停止部117bは、歪補償係数更新部115による歪補償係数更新処理を停止または再開させる。具体的には、係数更新停止部117bは、検波器134によって算出された電力値が所定値以上である場合に、フィードバック信号に不要波が含まれている可能性があると判定して、歪補償係数更新部115による歪補償係数更新処理を停止させる。これにより、係数更新停止部117bは、歪補償係数を誤った値に更新してしまうことを防止することができる。
【0047】
また、係数更新停止部117bは、歪補償係数更新処理を停止させた後に、検波器134によって算出された電力値が所定値より小さくなった場合に、歪補償係数更新部115による歪補償係数更新処理を再開させる。これにより、係数更新停止部117bは、フィードバック信号に不要波が含まれている可能性が低い状況になった場合に、歪補償係数更新処理を行わせることができる。
【0048】
閾値記憶部118および故障判定部119は、故障位置特定処理に関連する部位である。したがって、閾値記憶部118および故障判定部119については後述する。
【0049】
次に、歪補償部110によって故障位置特定処理が行われる場合について説明する。かかる場合、RFスイッチ130の接続は、分配器129と周波数変換ダウンコンバータ131とが接続されるように切り替えられている状態である。すなわち、復調部133は、歪補償係数更新部115およびFFT116へ反射波を入力する。
【0050】
反射波が入力されたFFT116は、反射波の各周波数信号成分を抽出して、抽出結果を監視制御部117へ出力する。かかる監視制御部117は、FFT116から入力された反射波の各周波数信号成分に基づいて、反射波の電力値を算出し、算出した電力値を故障判定部119へ出力する。なお、以下では、監視制御部117から故障判定部119へ入力される反射波の電力値を「反射電力」と表記するものとする。
【0051】
また、遅延時間制御部117aは、FFT116から入力された各周波数信号成分に基づいて、I/F101から歪補償部110へ送信信号が入力された時点から、復調部133から歪補償部110へ反射波が入力された時点までの反射時間を算出する。そして、遅延時間制御部117aは、算出した反射時間を故障判定部119へ出力する。
【0052】
このように、歪補償部110によって故障位置特定処理が行われる場合、監視制御部117は、反射電力を算出する。また、遅延時間制御部117aは、送信信号が歪補償部110へ入力された時点から、反射波が歪補償部110へ入力された時点までの反射時間を算出する。すなわち、監視制御部117は、歪補償係数更新処理を行う場合に、フィードバック信号の電力値や遅延時間を算出し、故障位置特定処理を行う場合に、反射電力や反射時間を算出する。したがって、無線装置100は、歪補償係数更新処理時に用いられる監視制御部117を流用することで、故障位置特定処理を行う。このため、無線装置100は、回路規模を増大させることなく、故障位置特定処理を行うことができる。
【0053】
閾値記憶部118は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置であり、反射時間閾値と、反射電力の閾値である反射電力閾値とを記憶する。具体的には、閾値記憶部118は、同軸ケーブル127やアンテナ128が故障していない状態で測定された反射時間と反射電力を、反射時間閾値、反射電力閾値として記憶する。なお、閾値記憶部118は、反射時間閾値として、送信信号I/F101から歪補償部110へ送信信号が入力された時点から、アンテナ128において反射された送信信号の反射波が歪補償部110へ入力された時点までの時間を記憶するものとする。
【0054】
故障判定部119は、監視制御部117から入力された反射電力と、遅延時間制御部117aから入力された反射時間と、閾値記憶部118に記憶されている反射電力閾値および反射時間閾値とに基づいて、故障位置候補を特定する。また、故障判定部119は、反射電力と、反射時間との組合せを所定の記憶部にログとして記憶する。
【0055】
具体的には、故障判定部119は、反射時間が閾値記憶部118に記憶されている反射時間閾値よりも小さい場合に、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定する。これは、反射時間が反射時間閾値よりも小さい場合、送信信号は、アンテナ128まで届かずに、同軸ケーブル127において反射されたことになるからである。このような状況は、同軸ケーブル127に故障が発生している可能性があるので、故障判定部119は、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定する。
【0056】
さらに、故障判定部119は、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定した場合、反射時間に基づいて、同軸ケーブル127の故障位置を特定する。具体的には、故障判定部119は、反射時間閾値と反射時間との差分が大きいほど、同軸ケーブル127のうち無線部140に近い位置に故障が発生している可能性があると特定する。また、故障判定部119は、反射時間閾値と反射時間との差分が小さいほど、同軸ケーブル127のうちアンテナ128に近い位置に故障が発生している可能性があると特定する。
【0057】
また、故障判定部119は、反射時間が閾値記憶部118に記憶されている反射時間閾値以上であり、かつ、反射電力が閾値記憶部118に記憶されている反射電力閾値よりも大きい場合に、アンテナ128を故障位置候補として特定する。これは、反射時間が反射時間閾値以上である場合、送信信号は、アンテナ128において反射されたことになる。そして、反射電力が反射電力閾値よりも大きい場合に、送信信号は、アンテナ128において大量に反射されたことになる。このような状況は、アンテナ128に故障が発生している可能性があるので、故障判定部119は、アンテナ128を故障位置候補として特定する。
【0058】
また、故障判定部119は、反射時間が閾値記憶部118に記憶されている反射時間閾値以上であり、かつ、反射電力が閾値記憶部118に記憶されている反射電力閾値以下である場合に、故障位置候補が存在しないと判定する。かかる場合、スイッチ制御部135は、分配器129と周波数変換ダウンコンバータ131とが接続されるように、RFスイッチ130の接続を切り替える。これにより、無線装置100は、歪補償係数更新処理を行う状態に戻る。
【0059】
ここで、図3を用いて、故障判定部119による故障位置特定処理について説明する。図3は、故障判定部119による故障位置特定処理の一例を説明するための図である。なお、図3に示した無線部140は、図2に示したI/F101と、歪補償部110と、各部121〜126および129〜133とに対応する。
【0060】
まず、図3に示した状態Aは、同軸ケーブル127やアンテナ128が故障していない例を示している。図3に示した状態Aにおいて、送信信号は、アンテナ128で反射される。かかる送信信号の反射波R10の反射電力は「P11」であり、反射時間は「ΔT11」である。図3に示した例において、閾値記憶部118は、反射電力閾値として「P11」を記憶し、反射時間閾値として「ΔT11」を記憶するものとする。
【0061】
次に、図3に示した状態Bは、反射波R20の反射電力が「P12」であり、反射時間が「ΔT11」である例を示している。ここで、反射電力「P12」>反射電力「P11」であるものとする。かかる場合に、故障判定部119は、反射電力「P12」が反射電力閾値「P11」よりも大きく、かつ、反射時間「ΔT11」と反射時間閾値「ΔT11」とが等しいので、アンテナ128を故障位置候補として特定する。
【0062】
次に、図3に示した状態Cは、反射波R30の反射電力が「P12」であり、反射時間が「ΔT12」である例を示している。ここで、反射時間「ΔT11」>反射時間「ΔT12」であるものとする。かかる場合に、故障判定部119は、反射時間「ΔT12」が反射時間閾値「ΔT11」よりも小さいので、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定する。
【0063】
さらに、故障判定部119は、反射時間「ΔT12」に基づいて、同軸ケーブル127における故障位置を特定する。例えば、同軸ケーブル127が、I/F101から同軸ケーブル127までの経路長と比較して十分に長いので、送信信号がI/F101から出力されてから同軸ケーブル127へ入力されるまでの時間を無視できるものとする。同様の理由により、反射波が同軸ケーブル127から出力されてから歪補償部110へ入力されるまでの時間を無視できるものとする。かかる場合に、故障判定部119は、例えば、反射時間「ΔT12」が反射時間閾値「ΔT11」の半分の大きさである場合に、同軸ケーブル127の中央付近を故障位置として特定する。
【0064】
次に、図3に示した状態Dは、2個の反射波R41およびR42が存在する例を示している。ここで、反射波R41の反射電力は「P11」であり、反射時間は「ΔT12」であるものとする。また、反射波R42の反射電力は「P12」であり、反射時間は「ΔT11」であるものとする。かかる場合に、故障判定部119は、同軸ケーブル127とアンテナ128との双方を故障位置候補として特定する。
【0065】
具体的には、状態Dに示した例の場合、送信信号の一部が同軸ケーブル127において反射され、また、アンテナ128まで届いた送信信号が大量にアンテナ128において反射されたことを示している。したがって、故障判定部119は、状態Dに示した例の場合、同軸ケーブル127とアンテナ128の双方に故障が発生している可能性があると判定する。
【0066】
なお、上述した状態Cでは、同軸ケーブル127が、I/F101から同軸ケーブル127までの経路長と比較して十分に長いことを前提として、同軸ケーブル127の故障位置を特定する処理の例について説明した。具体的には、上述した例では、送信信号がI/F101から出力されてから同軸ケーブル127へ入力されるまでの時間や、反射波が同軸ケーブル127から出力されてから歪補償部110へ入力されるまでの時間を無視できるものとして説明した。しかし、故障判定部119は、前述した前提が成り立たない場合であっても、同軸ケーブル127の故障位置を特定することができる。
【0067】
例えば、故障判定部119は、反射時間と反射時間閾値との比率に基づいて、同軸ケーブル127の故障位置を特定してもよい。かかる例の場合、無線装置100は、反射時間と反射時間閾値との比率に対応付けて、同軸ケーブル127の故障位置を示す情報を保持しておく。一例を挙げて説明すると、故障判定部119は、反射時間と反射時間閾値との比率が「6:10」である場合に、例えば、同軸ケーブル127の中央付近を故障位置として特定する。
【0068】
また、例えば、歪補償部110は、送信信号がI/F101から出力されてから同軸ケーブル127へ入力されるまでの時間T1と、反射波が同軸ケーブル127から出力されてから歪補償部110へ入力されるまでの時間T2とを保持しておいてもよい。かかる場合に、故障判定部119は、時間T1およびT2を、反射時間から減算することにより、同軸ケーブル127からアンテナ128までの経路において信号が往復した時間T3を算出する。また、故障判定部119は、反射時間閾値から時間T1およびT2を減算して時間T4を算出する。そして、故障判定部119は、このようにして算出した時間T3と時間T4とを比較することにより、同軸ケーブル127の故障位置を特定する。例えば、故障判定部119は、時間T3が時間T4の半分の値である場合、同軸ケーブル127の中央付近に故障が発生している可能性があると判定する。
【0069】
[実施例2に係る無線装置による故障位置特定処理手順]
次に、図4を用いて、実施例2に係る無線装置100による故障位置特定処理の手順について説明する。図4は、実施例2に係る無線装置100による故障位置特定処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
図4に示すように、無線装置100のスイッチ制御部135は、検波器134によって算出された反射波と不要波とを含む信号の電力値が検波レベル閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS101)。そして、スイッチ制御部135は、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値よりも大きい場合に(ステップS101肯定)、反射波が歪補償部110へ入力されるようにRFスイッチ130の接続を切り替える(ステップS102)。
【0071】
なお、同軸ケーブル127から出力された反射波は、サーキュレータ126、分配器129、RFスイッチ130、周波数変換ダウンコンバータ131、ADC132を介して、復調部133へ入力される。反射波を入力された復調部133は、復調後の反射波をFFT116へ出力する。反射波を入力されたFFT116は、反射波の各周波数信号成分を抽出して、抽出結果を監視制御部117へ出力する。
【0072】
監視制御部117は、FFT116から入力された反射波の各周波数信号成分に基づいて、反射電力を算出する(ステップS103)。また、遅延時間制御部117aは、FFT116から入力された各周波数信号成分に基づいて、反射時間を算出する(ステップS103)。
【0073】
そして、故障判定部119は、監視制御部117によって算出された反射電力と、遅延時間制御部117aによって算出された反射時間とをログに記憶する(ステップS104)。また、故障判定部119は、閾値記憶部118に記憶されている反射電力閾値と反射電力とを比較するとともに、閾値記憶部118に記憶されている反射時間閾値と反射時間とを比較する(ステップS105)。
【0074】
そして、故障判定部119は、反射時間が反射時間閾値よりも小さい場合に(ステップS105肯定)、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定する(ステップS106)。そして、故障判定部119は、反射時間に基づいて、同軸ケーブル127の故障位置を特定し、特定した故障位置をログに記憶したり、管理者へ通知したりする(ステップS107)。そして、故障判定部119は、アラームを発動して、無線装置100を停止させる(ステップS108)。
【0075】
また、故障判定部119は、反射時間が反射時間閾値以上であり(ステップS105否定)、かつ、反射電力が反射電力閾値よりも大きい場合に(ステップS109肯定)、アンテナ128を故障位置候補として特定する(ステップS110)。そして、故障判定部119は、アンテナ128が故障している旨をログに記憶したり、管理者へ通知したりする(ステップS111)。そして、故障判定部119は、アラームを発動して、無線装置100を停止させる(ステップS108)。
【0076】
また、故障判定部119は、反射時間が反射時間閾値以上であり(ステップS105否定)、かつ、反射電力が反射電力閾値以下である場合に(ステップS109否定)、故障位置候補が存在しないと判定する(ステップS112)。かかる場合に、スイッチ制御部135は、フィードバック信号が歪補償部110へ入力されるようにRFスイッチ130の接続を切り替える(ステップS113)。
【0077】
一方、スイッチ制御部135は、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値以下である場合に(ステップS101否定)、所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS114)。そして、スイッチ制御部135は、所定の時間が経過した場合に(ステップS114肯定)、反射波が歪補償部110へ入力されるようにRFスイッチ130の接続を切り替える(ステップS115)。
【0078】
そして、監視制御部117は、反射電力を算出し、遅延時間制御部117aは、反射時間を算出する(ステップS116)。そして、故障判定部119は、監視制御部117によって算出された反射電力と、遅延時間制御部117aによって算出された反射時間とをログに記憶する(ステップS117)。
【0079】
そして、故障判定部119は、反射時間が反射時間閾値よりも小さい場合に(ステップS118肯定)、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定する(ステップS119)。そして、故障判定部119は、反射時間に基づいて、同軸ケーブル127の故障位置を特定し、特定した故障位置をログに記憶したり、管理者へ通知したりする(ステップS120)。そして、故障判定部119は、アラームを発動して、無線装置100を停止させる(ステップS121)。
【0080】
また、故障判定部119は、反射時間が反射時間閾値以上である場合に(ステップS118否定)、故障位置候補が存在しないと判定する(ステップS122)。かかる場合に、故障判定部119は、閾値記憶部118に記憶されている反射電力閾値を、監視制御部117によって算出された反射電力に更新する(ステップS123)。また、故障判定部119は、閾値記憶部118に記憶されている反射時間閾値を、遅延時間制御部117aによって算出された反射時間に更新する(ステップS123)。このように、故障判定部119は、故障位置候補が存在しない場合に、動作環境等によって変化する可能性のある反射電力閾値および反射時間閾値を更新する。これにより、無線装置100は、動作環境の変化に伴って反射電力や反射時間が変化する場合であっても、故障位置特定処理を正確に行うことができる。
【0081】
そして、スイッチ制御部135は、フィードバック信号が歪補償部110へ入力されるようにRFスイッチ130の接続を切り替える(ステップS124)。
【0082】
なお、図4に示した例では、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値以下であり(ステップS101否定)、かつ、所定の時間が経過した場合に(ステップS114肯定)、故障判定部119は、反射電力と反射電力閾値とを比較しない。これは、実施例2における無線装置100では、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値以下である場合、反射電力が反射電力閾値よりも大きくなることがないことを前提としているからである。しかし、故障判定部119は、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値以下である場合であっても、反射電力と反射電力閾値とを比較する処理を行うことにより、アンテナ128に故障が発生しているか否かを判定してもよい。
【0083】
[実施例2の効果]
上述してきたように、実施例2に係る無線装置100は、反射時間が反射時間閾値より小さい場合に、かかる反射時間に基づいて同軸ケーブル127における故障位置候補を特定する。これにより、無線装置100を管理する管理者等は、無線装置100によって特定された故障位置候補に基づいて、同軸ケーブル127が故障しているか否かを容易に特定することができる。
【0084】
また、実施例2に係る無線装置100は、歪補償係数更新処理時に遅延時間を算出する遅延時間制御部117aによって、反射電力を算出する。これにより、無線装置100は、回路規模を増大させることなく、故障位置特定処理を行うことができる。
【0085】
また、実施例2に係る無線装置100は、反射電力が反射電力閾値よりも大きい場合に、アンテナ128を故障位置候補として特定する。これにより、管理者等は、アンテナ128が故障しているか否かを確認することができる。
【0086】
また、実施例2に係る無線装置100は、ユーザデータまたは制御データを含む送信信号の反射波を用いて故障位置特定処理を行う。これにより、無線装置100は、パイロット信号などのテスト用信号を用いることなく、故障位置候補を特定することができる。すなわち、無線装置100は、運用中に故障位置候補を特定することができる。
【0087】
また、実施例2に係る無線装置100は、反射電力および反射時間を算出するたびにログに記憶する。これにより、管理者等は、故障が発生した場合に、ログを確認することにより、徐々に故障したのか、または、突然に故障したのかを判断することができる。例えば、無線装置100によってアンテナ128が故障位置候補として特定されたものとする。かかる場合に、管理者等は、上記ログを確認して、反射電力が徐々に大きくなっていれば、アンテナ128が徐々に故障したと判断することができ、反対に、反射電力が急に大きくなっていれば、アンテナ128が突然に故障したと判断することができる。
【0088】
また、実施例2に係る無線装置100は、検波器134によって反射波や不要波を含む信号の電力値を算出し、かかる電力値が検波レベル閾値よりも大きい場合に、歪補償部110へ入力される信号が反射波になるようにRFスイッチ130を切り替える。これにより、無線装置100は、反射電力が反射電力閾値よりも大きいおそれがある場合に、故障位置特定処理を行うことができる。
【0089】
また、実施例2に係る無線装置100は、反射電力が反射電力閾値以下であり、かつ、反射時間が前記反射時間閾値以上である場合に、故障位置が存在しないと判定する。これにより、無線装置100は、不要波を受信している場合であっても、故障位置が存在するか否かを正確に判定することができる。
【0090】
また、実施例2に係る無線装置100は、所定の時間が経過するたびに、歪補償部110へ入力される信号が反射波になるようにRFスイッチ130を切り替える。これにより、無線装置100は、検波器134によって算出された電力値が検波レベル閾値よりも小さい場合であっても、定期的に故障位置特定処理を行うことで、同軸ケーブル127に故障が発生しているか否かを特定することができる。
【実施例3】
【0091】
ところで、本願の開示する無線装置等は、上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、実施例3では、本願の開示する無線装置等の他の実施例について説明する。
【0092】
[複数アンテナ]
上記実施例1および2では、無線装置が1個のアンテナを有する場合を例に挙げて説明したが、本願の開示する無線装置は、複数のアンテナを有する無線装置に適用することもできる。図5を用いて具体的に説明する。図5は、複数のアンテナを有する無線装置の構成例を示す図である。図5に示した無線装置2は、分配器/合成器150を有する。そして、分配器/合成器150にアンテナ128a〜128cが接続されている。
【0093】
図5に示した無線装置2において、無線部140から同軸ケーブル127へ入力された送信信号が、同軸ケーブル127からアンテナ128a〜128cまでの経路において反射されるパターンは複数存在する。具体的には、送信信号は、アンテナ128aにおいて反射されて無線部140へ入力される場合や、アンテナ128bにおいて反射されて無線部140へ入力される場合や、アンテナ128cにおいて反射されて無線部140へ入力される場合がある。さらに、送信信号は、アンテナ128aにおいて反射された後に、アンテナ128bにおいて反射されて、無線部140へ入力される場合もある。
【0094】
無線装置2は、送信信号が反射されるパターンごとに反射時間閾値を保持する。例えば、無線装置2は、送信信号がアンテナ128aにおいて反射された場合における反射時間閾値や、アンテナ128bにおいて反射された場合における反射時間閾値や、アンテナ128cにおいて反射された場合における反射時間閾値を保持する。さらに、無線装置2は、送信信号がアンテナ128aにおいて反射された後に、アンテナ128bや128cにおいて反射された場合における反射時間閾値を保持する。
【0095】
そして、無線装置2の故障判定部119は、遅延時間制御部117aによって算出された反射時間が、全ての反射時間閾値よりも小さい場合に、同軸ケーブル127を故障位置候補として特定する。このように、無線装置2は、複数のアンテナを有する場合であっても、反射パターンごとに反射時間閾値を保持することにより、故障位置を特定することができる。
【0096】
[システム構成等]
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図2では、歪補償係数更新処理時に用いられる監視制御部117を流用して、故障位置特定処理に用いる反射電力や反射時間を算出する例を示した。しかし、無線装置100は、歪補償係数更新処理時に動作する監視制御部117とは別に、反射電力や反射時間を算出する専用回路を設けてもよい。
【0097】
また、上記実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともできる。あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、図1に示した例において、反射時間算出部14による反射時間算出処理は、手動で行われてもよい。また、図1に示した例において、故障位置特定部15による故障位置特定処理は、手動で行われてもよい。具体的には、反射時間算出部14によって反射時間を手動で確認して、故障位置の候補を特定してもよい。
【0098】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0099】
(付記1)信号に対して変調処理を行う無線部と、外部との間で信号を送受するアンテナと、前記無線部と前記アンテナとを接続するケーブルとを有する無線装置であって、
前記無線部の所定部位へ送信信号が入力された時点から、前記無線部から出力された送信信号が前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射されて前記ケーブルから前記無線部の所定部位へ入力された時点までの時間である反射時間を算出する反射時間算出部と、
前記反射時間算出部によって算出された反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、該反射時間に基づいて前記ケーブルにおいて故障している位置の候補を特定する故障位置特定部と
を備えたことを特徴とする無線装置。
【0100】
(付記2)前記無線部は、
前記ケーブルへ出力される送信信号がフィードバックされた信号であるフィードバック信号に基づいて、前記送信信号に発生する歪みを補償する歪補償部と、
前記送信信号が前記歪補償部へ入力された時点から、前記フィードバック信号が前記歪補償部へ入力された時点までの時間である遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記遅延時間算出部によって算出された遅延時間だけ遅延された送信信号と、該送信信号のフィードバック信号とに基づいて、前記歪補償部によって歪補償処理が行われる際に用いられる歪補償係数を算出する歪補償係数算出部と、
前記歪補償部へ入力される信号が、前記フィードバック信号、または、前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射された信号である反射波のいずれかになるように選択する選択部とを備え、
前記反射時間算出部は、前記選択部によって前記歪補償部へ入力される信号が前記反射波になるように選択された場合に、前記遅延時間算出部によって算出される前記送信信号と前記反射波との遅延時間を反射時間として用いることを特徴とする付記1に記載の無線装置。
【0101】
(付記3)前記無線部は、前記フィードバック信号の電力を算出する電力算出部をさらに備え、
前記電力算出部は、前記選択部によって前記歪補償部へ入力される信号が前記反射波になるように選択された場合に、反射波の電力値を算出し、
前記故障位置特定部は、前記電力算出部によって算出された電力値が所定の閾値である反射電力閾値よりも大きく、かつ、前記反射時間算出部によって算出された反射時間が前記反射時間閾値以上である場合に、故障している位置の候補を前記アンテナに特定することを特徴とする付記1または2に記載の無線装置。
【0102】
(付記4)前記送信信号は、ユーザデータまたは制御データを含む信号であることを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の無線装置。
【0103】
(付記5)前記故障位置特定部は、前記反射時間算出部によって算出された反射時間と、前記電力算出部によって算出された前記反射波の電力値とをログに記憶することを特徴とする付記3または4に記載の無線装置。
【0104】
(付記6)前記アンテナから前記ケーブルを介して出力される信号の電力値を算出する検波部をさらに備え、
前記選択部は、前記検波部によって算出された電力値が所定の閾値である検波レベル閾値よりも大きい場合に、前記歪補償部へ入力される信号が前記反射波になるように選択することを特徴とする付記2〜5のいずれか一つに記載の無線装置。
【0105】
(付記7)前記故障位置特定部は、前記電力算出部によって算出された電力値が反射電力閾値以下であり、かつ、前記反射時間算出部によって算出された反射時間が前記反射時間閾値以上である場合に、故障している位置が存在しないと判定することを特徴とする付記6に記載の無線装置。
【0106】
(付記8)前記選択部は、所定の時間が経過するたびに、前記歪補償部へ入力される信号が前記フィードバック信号または前記反射波になるように交互に選択することを特徴とする付記2〜7のいずれか一つに記載の無線装置。
【0107】
(付記9)信号に対して変調処理を行う無線部と、外部との間で信号を送受するアンテナと、前記無線部と前記アンテナとを接続するケーブルとを有する無線装置の故障位置を特定する故障位置特定方法であって、
前記無線部の所定部位へ送信信号が入力された時点から、前記無線部から出力された送信信号が前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射された信号である反射波が前記ケーブルから前記無線部の所定部位へ入力された時点までの時間である反射時間を算出する反射時間算出ステップと、
前記反射時間算出ステップによって算出された反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、該反射時間に基づいて前記ケーブルにおいて故障している位置の候補を特定する故障位置特定ステップと
を含んだことを特徴とする故障位置特定方法。
【符号の説明】
【0108】
1、2、100 無線装置
11、140 無線部
12 ケーブル
13、128、128a、128b、128c アンテナ
14 反射時間算出部
15 故障位置特定部
110 歪補償部
118 閾値記憶部
119 故障判定部
127 同軸ケーブル
130 RF(Radio Frequency)スイッチ
134 検波器
135 スイッチ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号に対して変調処理を行う無線部と、外部との間で信号を送受するアンテナと、前記無線部と前記アンテナとを接続するケーブルとを有する無線装置であって、
前記無線部の所定部位へ送信信号が入力された時点から、前記無線部から出力された送信信号が前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射されて前記ケーブルから前記無線部の所定部位へ入力された時点までの時間である反射時間を算出する反射時間算出部と、
前記反射時間算出部によって算出された反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、該反射時間に基づいて前記ケーブルにおいて故障している位置の候補を特定する故障位置特定部と
を備えたことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記無線部は、
前記ケーブルへ出力される送信信号がフィードバックされた信号であるフィードバック信号に基づいて、前記送信信号に発生する歪みを補償する歪補償部と、
前記送信信号が前記歪補償部へ入力された時点から、前記フィードバック信号が前記歪補償部へ入力された時点までの時間である遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記遅延時間算出部によって算出された遅延時間だけ遅延された送信信号と、該送信信号のフィードバック信号とに基づいて、前記歪補償部によって歪補償処理が行われる際に用いられる歪補償係数を算出する歪補償係数算出部と、
前記歪補償部へ入力される信号が、前記フィードバック信号、または、前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射された信号である反射波のいずれかになるように選択する選択部とを備え、
前記反射時間算出部は、前記選択部によって前記歪補償部へ入力される信号が前記反射波になるように選択された場合に、前記遅延時間算出部によって算出される前記送信信号と前記反射波との遅延時間を反射時間として用いることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記無線部は、前記フィードバック信号の電力を算出する電力算出部をさらに備え、
前記電力算出部は、前記選択部によって前記歪補償部へ入力される信号が前記反射波になるように選択された場合に、反射波の電力値を算出し、
前記故障位置特定部は、前記電力算出部によって算出された電力値が所定の閾値である反射電力閾値よりも大きく、かつ、前記反射時間算出部によって算出された反射時間が前記反射時間閾値以上である場合に、故障している位置の候補を前記アンテナに特定することを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記送信信号は、ユーザデータまたは制御データを含む信号であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の無線装置。
【請求項5】
前記故障位置特定部は、前記反射時間算出部によって算出された反射時間と、前記電力算出部によって算出された前記反射波の電力値とをログに記憶することを特徴とする請求項3または4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記アンテナから前記ケーブルを介して出力される信号の電力値を算出する検波部をさらに備え、
前記選択部は、前記検波部によって算出された電力値が所定の閾値である検波レベル閾値よりも大きい場合に、前記歪補償部へ入力される信号が前記反射波になるように選択することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の無線装置。
【請求項7】
信号に対して変調処理を行う無線部と、外部との間で信号を送受するアンテナと、前記無線部と前記アンテナとを接続するケーブルとを有する無線装置の故障位置を特定する故障位置特定方法であって、
前記無線部の所定部位へ送信信号が入力された時点から、前記無線部から出力された送信信号が前記ケーブルから前記アンテナまでの経路において反射された信号である反射波が前記ケーブルから前記無線部の所定部位へ入力された時点までの時間である反射時間を算出する反射時間算出ステップと、
前記反射時間算出ステップによって算出された反射時間が所定の閾値である反射時間閾値よりも小さい場合に、該反射時間に基づいて前記ケーブルにおいて故障している位置の候補を特定する故障位置特定ステップと
を含んだことを特徴とする故障位置特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−55372(P2011−55372A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204074(P2009−204074)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】