無線送信機
【課題】タイムスロットの前後で急激な電流変動が発生するのを回避でき、且つ、送信パワーが低く設定された場合には送信パワーに応じて消費電流の低減を図ることのできる無線送信機を提供する。
【解決手段】無線信号を所定のタイムスロットSaで送信するように構成された無線送信機である。そして、送信信号をアンテナに出力するゲイン可変型のファイナルアンプと、ファイナルアンプより前段に設けられ送信信号をファイナルアンプへ送るゲイン可変型のAGCアンプと、ファイナルアンプとAGCアンプのゲイン制御を行う制御手段とを備え、制御手段は、タイムスロットSaの開始の際、先ず、ファイナルアンプのゲインを上昇させ、その後、AGCアンプのゲインを上昇させて、送信パワーを立ち上げるように構成する。
【解決手段】無線信号を所定のタイムスロットSaで送信するように構成された無線送信機である。そして、送信信号をアンテナに出力するゲイン可変型のファイナルアンプと、ファイナルアンプより前段に設けられ送信信号をファイナルアンプへ送るゲイン可変型のAGCアンプと、ファイナルアンプとAGCアンプのゲイン制御を行う制御手段とを備え、制御手段は、タイムスロットSaの開始の際、先ず、ファイナルアンプのゲインを上昇させ、その後、AGCアンプのゲインを上昇させて、送信パワーを立ち上げるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線信号を所定のタイムスロットに送信するように構成された無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線送信機においては、一般に、アンテナから無線信号を送信するのに複数段のアンプを備えるものがある。また、無線信号の送信パワーを制御することも一般に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、出力段の増幅器の送信パワーを検出しながら、その前段の増幅器のゲインを調整して無線信号の送信パワーを制御する技術が開示されている。また、特許文献2には、APC(オートパワー制御)回路によって出力段のファイナルアンプとその前段のドライブアンプの両方のゲインを同時に調整することで、無線信号の送信パワーを制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−15319号公報
【特許文献2】特開2004−40418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、無線信号を大出力で送信する例えば業務用無線機の分野において、TDMA(時分割多重アクセス)方式で通信を行う無線装置の開発が進められている。また、このような無線装置においては、基地局からのパワー制御要求等に従って、送信パワーを、例えば定格パワー、定格パワーから−3dB、9dB、15dBなど、複数段階に切り換え可能としたり、或いはもっと多段階に調整できたりするように要求されることがある。
【0006】
また、TDMA方式の通信では、予め割り当てられたタイムスロットに無線信号を送信し、他のタイムスロットでは無線信号の送信を停止する必要がある。さらに、隣接するタイムスロットとの電波干渉を避けるために、各タイムスロットの前後に設けられた短いガードタイムの期間に、所定の傾斜パターンで、無線信号の送信パワーを立ち上げたり立ち下げたりしなければならないという制約もある。
【0007】
上記のように、大出力の送信が可能で、且つ、送信パワーを切り換え可能とした無線装置においては、その出力段に大きなパワー出力が可能で且つゲイン可変幅の大きなアンプを設ける必要がある。しかしながら、ゲイン可変幅の大きな大出力アンプでは、例えば、内部に複数段のFET(電界効果トランジスタ)増幅回路を有する構成となるため、図8の“四角”プロット線に示すように、ゲイン制御電圧(ゲートバイアス電圧)対出力送信パワーの特性はリニアにならない。
【0008】
そのため、ガードタイム中に所定の傾斜パターンで送信パワーを立ち上げたり立ち下げたりする制御を、出力段の大出力アンプのゲイン制御によって実現するには、この所定の傾斜パターンを実現するゲイン制御電圧の波形を、様々な送信パワーのレベルに対応させて幾つも用意しておかなければならないという課題が生じる。
【0009】
また、ゲイン可変型の大出力アンプでは、図8の“ダイヤ印”プロット線に示すように、そのゲインに応じて消費電流が大きく変化する。従って、出力段の大出力アンプのゲイン制御により送信パワーの立ち上げと立ち下げの制御を行った場合、短い期間(例えば1ms)に大きな電流変動(例えば0A−9Aなど)が生じることとなる。そして、この急激な電流変動により、例えば、搬送波を生成するVCO(電圧制御発振器)などの動作に摂動が生じるなどして、送信信号の変調精度が悪化するという課題を生じる。
【0010】
一方、特許文献1に示すように、出力段の大出力アンプのゲインを一定とし、ドライブ段など前段のアンプのゲイン制御を行うことで、ガードタイムにおける送信パワーの立ち上げと立ち下げ、並びに、パワー制御要求等に基づく送信パワーの段階的な切り換えを行う構成を適用することも可能である。
【0011】
しかしながら、このような構成では、出力段のアンプが常に大きなゲインのままとなって大電流を流し続けるため、例えばパワー制御要求等により低い送信パワーで動作する場合でも、無線装置全体の消費電流を低くすることができないという課題が生じる。
【0012】
例えば、図9には、出力段のアンプのゲインを35dB固定とした構成において、出力段のアンプの入力パワーPin対出力パワーPout、ならびに、入力パワーPin対アンプの消費電流Iddを表わした特性図を示すが、出力段のアンプを常に大きなゲインとしたままでは、図9の“四角”プロット線に示すように、送信パワーが30dB以下の領域ではアンプの消費電流は下げ止まりとなるため、送信パワーが低く設定されたときでも消費電流の低減を図ることができない。
【0013】
また、前段のドライブアンプのみでゲイン制御を行う構成では、送信パワーのダイナミックレンジは、ドライブアンプ自体のダイナミックレンジにより決定されてしまう。そのため、例えば、送信パワーが最大のときには、ドライブアンプのダイナミックレンジを最大幅に使って、所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げや立ち下げを行うことができても、パワー制御要求等により送信パワーが低く設定されたときには、ドライブアンプのダイナミックレンジの一部の範囲しか使うことができないことから、例えば、送信パワーのレベルが頭打ちとなって所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げや立ち下げを行うことが困難になる場合が生じる。
【0014】
また、特許文献2に示すように、出力段のファイナルアンプとドライブ段のアンプとの両方のゲインを同時に制御して送信パワーを変化させる構成を適用することも可能である。しかしながら、このような構成においても、短いガードタイムの期間中に、大出力のファイナルアンプのゲインを立ち上げたり立ち下げたりする必要があるため、タイムスロットの前後で急激な電流変動が生じることとなって、それにより送信信号の変調精度が悪化するといった課題が生じる。
【0015】
また、ゲイン制御電圧対出力送信パワーの特性がリニアにならないことから、ガードタイム中に所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げや立ち下げを行うために、様々な送信パワーのレベルに対応させて、ゲイン制御電圧の波形を幾つも用意しなければならないという課題が生じる。
【0016】
この発明の目的は、所定のタイムスロットで無線信号の送信を行う無線送信機において、送信パワーの立ち上げや立ち下げ時に急激な電流変動が発生するのを回避でき、且つ、送信パワーが低く設定された場合には送信パワーに応じて消費電流の低減を図ることのできる無線送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
無線信号を所定のタイムスロットで送信するように構成された無線送信機において、
送信信号をアンテナに出力するゲイン可変型の第1アンプと、
この第1アンプより前段に設けられ送信信号を前記第1アンプへ送るゲイン可変型の第2アンプと、
前記第1アンプと前記第2アンプのゲイン制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記タイムスロットの開始の際は、先ず、前記第1アンプのゲインを上昇させ、その後、前記第2アンプのゲインを上昇させて、無線信号を送信させ、
前記タイムスロットの終了の際は、先ず、前記第2アンプのゲインを下降させ、その後、前記第1アンプのゲインを下降させて、無線信号の送信を停止させ、
前記タイムスロットの終端側のガードタイム中に、前記第2アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させ、
前記第2アンプのゲインを非送信時のレベルまで下降させた後の期間に、前記第1アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる構成であることを特徴としている。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記制御手段は、
前記第2アンプのゲインを設定された傾斜パターンで変化させる構成であり、
この制御手段による前記第2アンプのゲイン制御によって、前記タイムスロットの始端或いは終端に設けられたガードタイムに無線送信パワーが所定の傾斜パターンで立ち上げ或いは立ち下げられることを特徴としている。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記制御手段は、
前記第1アンプのゲインを予め設定された複数段階の何れかのゲインに切り換える構成であり、
この制御手段による前記第1アンプのゲイン制御によって無線送信パワーが段階的に切り換え可能になっていることを特徴としている。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するパワー検出部を備え、
前記制御手段は、
前記パワー検出部の検出出力に基づいて該検出出力が所定の値になるように前記第2アンプの送信時のゲイン調整を行う構成であることを特徴としている。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するとともに検出感度が可変にされたパワー検出部と、
前記パワー検出部の検出信号と参照信号とがつり合うように前記第2アンプのゲインを自動的に調整する自動パワー制御部と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1アンプの送信時のゲインの変化に伴って当該ゲインの変化と逆行するように前記パワー検出部の検出感度を変化させるとともに、
前記オートパワー制御部の参照信号を変化させることで前記第2アンプのゲイン制御を行う構成であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うと、例えば大出力の無線送信が可能な無線送信機であっても、送信パワーが低く設定された場合には送信パワーに応じて消費電流の低減が図れるとともに、タイムスロット始端や終端で送信パワーを立ち上げたり立ち下げたりする際に急激な電流変動が発生するのを回避できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の無線装置の送信処理に関わる構成を示したブロック図である。
【図2】第1実施形態の無線装置の送信動作を説明するタイムチャートである。
【図3】二種類の送信パワー設定時におけるファイナルアンプの出力パワーと消費電流の特性を示すグラフである。
【図4】二種類の送信パワー設定時における送信パワーの立ち上り波形とランプ規格とを示す波形図である。
【図5】二種類の送信パワー設定時における送信パワーの立ち下り波形とランプ規格とを示す波形図である。
【図6】本発明の第2実施形態の無線装置の送信処理に関わる構成を示したブロック図である。
【図7】図6のAPC部とパワー検出部の詳細を示した回路ブロック図である。
【図8】大出力のファイナルアンプにおける出力パワーと消費電流の特性を示すグラフである。
【図9】大出力のファイナルアンプをゲイン固定とし、前段のアンプでパワー制御を行った場合の出力パワーと消費電流の特性を示すグラフである。
【図10】大出力のファイナルアンプのゲイン制御のみで所定のタイムスロットで無線送信を行う場合の動作を説明するタイムチャートである。
【図11】AGCアンプのゲイン制御のみで送信パワーの切り換えとランプ制御を行った場合の送信パワーの立ち上がり波形を示す波形図である。
【図12】AGCアンプのゲイン制御のみで送信パワーの切り換えとランプ制御を行った場合の送信パワーの立ち下り波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の無線装置の送信処理に関わる構成を示したブロック図である。
【0026】
第1実施形態の無線装置1は、TDMA(時分割多重アクセス)方式で通信を行うとともに、例えば業務用無線機の分野で使用される大出力(例えば20〜40dBm)の無線送信を可能とするものである。また、この無線装置1は、例えば、通信規格P25_Phase2に準拠した通信動作を行うように構成されたものである。
【0027】
通信規格P25_Phase2は、1つの周波数チャンネルに2つのタイムスロットを設定してTDMA方式で通信を行う規格であり、1つのタイムスロットが例えば30msに設定され、各タイムスロットの始端側の短い期間(例えば1ms)に、隣接するタイムスロットとの干渉を避けるためのガードタイムが設定されている。また、ACPR(隣接チャンネル漏洩電力比)が悪化しないように、ガードタイム中における送信パワーの立ち上げ或いは立ち下げの傾斜パターンについても所定の範囲に収まるように規定されている。さらに、無線基地局からのパワー制御要求に基づいて、送信パワーを複数段階(例えば定格パワーPc、Pc−3dB、9dB、15dB)に切り換え可能としたり、或いは、もっと多段に送信パワーを切り換え可能としたり要求されることもある。
【0028】
この無線装置1は、図1に示すように、特定周波数の搬送波を生成するための発振器(例えば、TCXO:温度補償型水晶発振器)11、PLL(Phase Locked
Loop)回路12およびVCO(電圧制御発振器)13と、発振器11やVCO13に対して情報信号により変調作用を及ぼす変調回路14と、搬送波が変調されてなる送信信号を増幅してアンテナANへ出力する複数段構成のアンプ15,16,17と、アンテナANの接続を送信側と受信側とに切り換えるスイッチ18と、通信周波数帯から外れた信号を除去するアンテナフィルタ19と、送受信動作の全体的な制御を行う制御手段としてのCPU(中央演算処理装置)20と、CPU20からのゲイン制御信号をアナログ電圧に変換するD/Aコンバータ21と、例えばアンテナフィルタ19の出力を導いて送信信号のパワーを検出するパワー検出部23と、パワー検出部23からの検出信号をデジタル値に変換してCPU20に送るA/Dコンバータ22と、制御プログラムや各種の設定データを格納する不揮発性メモリ24と、無線送信する音声信号を入力するマイクロフォン25およびA/Dコンバータ26等を備えている。なお、受信に関わる構成については図示および説明を省略する。
【0029】
送信信号を増幅する複数段の増幅回路15〜17は、送信パワーの自動的な利得制御が行われる第2アンプとしてのAGC(自動利得制御)アンプ15と、2段目に縦続接続されたバッファアンプ16と、3段目に縦続接続されアンテナANへ送信信号を出力する第1アンプとしてのファイナルアンプ17とから構成される。
【0030】
AGCアンプ15は、ゲイン可変型のアンプであり、CPU20からD/Aコンバータ21を介して入力されるパワー制御信号やランプ制御信号(例えば内部のFET増幅回路に供給されるゲートバイアス電圧など)によって、その利得が制御される。ランプ制御信号は、タイムスロットの開始や終了の際に送信パワーを所定の傾斜(ramp)パターンで立ち上げたり立ち下げたりするための制御信号、パワー制御信号は、無線信号の送信バースト期間中における送信パワーの制御信号である。これらはともに1本の制御線を介して出力されるゲイン制御電圧である。
【0031】
AGCアンプ15は、その出力は通常の大きさのものでよく、そのため、ゲイン制御電圧対利得の特性はリニアな特性とすることができる。また、その消費電流はファイナルアンプ17の消費電流と比較して無視できる程度のものである。
【0032】
ファイナルアンプ17は、ゲイン可変型の大出力アンプであり、CPU20からD/Aコンバータ21を介して入力されるゲイン制御信号によって、その利得が制御される。ファイナルアンプ17は、大きな送信パワーを実現するため、例えば50dBm近くまでの出力が可能なものである。
【0033】
ファイナルアンプ17は、上記のような大出力特性を有しているため、ゲイン制御電圧対利得の特性は、リニアな特性とすることは難しく、非線形の特性となっている。また、ファイナルアンプ17は、大きな消費電流を流して、大出力の特性を得る構成であるため、ゲインを低下させたときには、消費電流は小さくなるが、ゲインを上昇させたときには、入出力がなくても大きな消費電流が生じるという性質を有している。
【0034】
不揮発性メモリ24には、ファイナルアンプ17のゲイン制御信号の値として複数段階の送信パワーにそれぞれ対応する複数の設定値と、ガードタイム中に送信パワーを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げるためにAGCアンプ15に出力するランプ制御信号の波形データと、無線基地局からの細かいパワー制御要求があった場合にAGCアンプ15の利得制御により対応させるためにAGCアンプ15のパワー制御の設定値を算出する演算プログラムなどが含まれている。
【0035】
次に、この実施形態の無線装置1の動作について説明する。無線装置1は、無線信号を送信する送信動作期間と、無線信号を受信する受信動作期間とをスイッチ18により切り換える。ここでは受信動作についての説明は省略し、送信動作についてのみ説明する。
【0036】
[送信動作の概要]
無線信号の送信動作期間においては、発振器11、PLL回路12およびVCO13が動作して常に特定周波数の搬送波が生成されている。また、CPU20は、予め自己に割り当てられたタイムスロットの期間ごとにファイナルアンプ17とAGCアンプ15のゲインを送信時のレベルまで上げることで、送信信号をアンテナANに出力して無線信号を送信させる。一方、自己に割り当てられていないタイムスロットの期間にはファイナルアンプ17とAGCアンプ15のゲインを非送信時のレベルまで下げることで、アンテナANから送信される無線信号をほぼ停止させる。
【0037】
音声信号を無線送信する場合、CPU20は、マイクロフォン25から入力した音声信号をA/Dコンバータ26を介してサンプリングすることで音声データとして取り込み、そして、自己に割り当てられたタイムスロット期間に、この音声データを変調回路14に送る。すると、変調回路14により搬送波が変調されて変調後の送信信号がAGCアンプ15に送られる。このとき、AGCアンプ15とファイナルアンプ17のゲインは送信時のレベルになっているので、この送信信号がアンテナANから無線送信されることとなる。音声信号以外の様々なデータ送信を行う場合も、同様に、自己に割り当てられたタイムスロット期間に変調回路14に送信データが送られることで、この送信データにより変調された送信信号がAGCアンプ15とファイナルアンプ17により増幅されて無線送信されることとなる。
【0038】
[タイムスロットの開始時の制御動作]
図2には、無線装置1の送信時における制御内容を説明するタイムチャートを示す。同図(a)はタイムスロット、(b)はファイナルアンプ17のゲイン制御信号、(c)はAGCアンプ15のゲイン制御信号、(d)はファイナルアンプ17の出力パワーPo、(e)はファイナルアンプ17の消費電流Idd、それぞれの時間変化を示している。同図においてゲイン制御信号をより具体的にゲイン制御電圧と記している。
【0039】
図2(a)に示すように、無線装置1には30msごとに30msのタイムスロットSaが割り当てられる。また、各タイムスロットSa,Sbの始端には、隣接するタイムスロットとの干渉を避けるために1msのガードタイムGs,Geが設けられている。無線装置1は自己に割り当てられたタイムスロットSaの始端側のガードタイムGsで送信パワーを非送信時のレベルから送信時のレベルまで立ち上げ、終端側のガードタイムGe(=次のタイムスロットSbの始端側のガードタイムGe)で送信パワーを送信時のレベルから非送信時のレベルまで立ち下げるよう規定されている。また、この送信パワーの立ち上げと立ち下げ時には、傾斜パターンが所定範囲に収まるように規定されている。
【0040】
図2(b)に示すように、送信パワーの立ち上げ時において、CPU20は、先ず、始端側のガードタイムGsの直前の期間に、ファイナルアンプ17のゲインを非送信時のレベルから送信時のレベルまで上昇させる。
【0041】
このとき、ファイナルアンプ17への入力信号のレベルはほぼゼロであるので、図2(d)に示すように、ファイナルアンプ17の出力パワーPoはほぼゼロのままである。また、ファイナルアンプ17は、大出力のアンプであり、出力パワーPoがゼロであっても、ゲインを上げることに伴って比較的大きな消費電流が生じるので、図2(e)に示すように、消費電流Iddが増加する。例えば、消費電流Iddは信号の入出力があるときの8割前後まで増加する。
【0042】
上記のようにファイナルアンプ17のゲインを上昇させたら、次に、CPUは、ガードタイムGsの期間中に、AGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで非送信時のレベルから送信時のレベルまで上昇させる。
【0043】
これにより、AGCアンプ15から送信信号が出力されるとともに、その出力レベルが所定の傾斜パターンで立ち上がる。また、このとき、ファイナルアンプ17のゲインは送信時の設定レベルにあるので、AGCアンプ15から出力された送信信号はアンプ16を介してファイナルアンプ17で一律に増幅されてアンテナANへ出力される。従って、図2(d)に示すように、ファイナルアンプ17の出力パワーPoはガードタイムGsの期間中に所定の傾斜パターンで立ち上がって、非送信時のレベルから送信時のレベルまで上昇する。
【0044】
また、ファイナルアンプ17の出力パワーPoが上昇することで、ファイナルアンプ17の消費電流IddもガードタイムGsの期間中に僅かに上昇する。
【0045】
このようなAGCアンプ15とファイナルアンプ17のゲイン制御によって、送信バースト期間(ガードタイム後の送信期間)の直前に急激な電流変動が生じることが回避され、それにより、急激な電流変動に起因して送信バースト期間に変調精度等が悪化するといった不都合を回避することができる。
【0046】
図10には、比較のために、ファイナルアンプ17のゲイン制御によって送信パワーの立ち上げや立ち下げを行った場合のタイムチャートを示す。
【0047】
図10に示すように、ガードタイムGs中にファイナルアンプ17のゲインを上昇させて送信パワーを立ち上げた場合、この短いガードタイムGsの期間中に大出力のファイナルアンプ17で大きな消費電流Iddの変動が生じる。従って、この急激な電流変動により、ガードタイムGs直後の送信バースト期間等において、他の回路に影響が生じて例えば変調精度が悪化するなどの不具合が生じる。このような不具合は、AGCアンプ15のゲインを一定にしてファイナルアンプ17のみゲイン制御して送信パワーを立ち上げた場合だけでなく、ファイナルアンプ17とAGCアンプ15とを同時にゲイン制御して送信パワーを立ち上げた場合でも、同様に生じる。
【0048】
図2に示した、本実施形態のAGCアンプ15とファイナルアンプ17のゲイン制御処理によれば、上記の不具合を回避することができる。
【0049】
[タイムスロットの終了時の制御動作]
図2に示すように、自己に割り当てられたタイムスロットSaの終了の際には、先ず、CPU20は、その終端側のガードタイムGeの期間中にAGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる。
【0050】
これにより、AGCアンプ15の出力パワーが所定の傾斜パターンで下降する。そして、この出力がファイナルアンプ17で一律に増幅されることで、ファイナルアンプ17の出力パワーPoも上記所定の傾斜パターンで下降する。このとき、ファイナルアンプ17のゲインは変化しないが、出力パワーPoが低下することで、ファイナルアンプ17の消費電流Iddは僅かに減少する。例えば図2の例では、消費電流Iddが2割前後減少している。
【0051】
その後、CPU20は、ガードタイムGeの直後に、ファイナルアンプ17のゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる。このとき、既に、出力パワーPoはほぼゼロになっているので出力パワーPoの変化はほぼ生じないが、大出力のファイナルアンプ17のゲインが下げられることで、この期間に消費電流Iddが大きく低下する。
【0052】
図10の比較例に示すように、ガードタイムGeの期間中にファイナルアンプ17のゲインを下降させて送信パワーを立ち下げた場合には、ガードタイムGeの期間中に急激な電流変動が生じてしまい、この急激な電流変動により他の回路に悪影響を及ぼしてしまうことが考えられる。一方、図2に示した本実施形態のゲイン制御処理では、送信パワー立ち下げ時の消費電流Iddの変動期間を長くとることができるため、急激な電流変動による他の回路への影響が低減される。
【0053】
[複数段階のパワー制御要求に対する制御動作]
次に、無線基地局から予め定められている複数段階のパワー制御要求があった場合の制御動作について説明する。
【0054】
無線基地局から複数段階のパワー制御要求がなされた場合、CPU20は、AGCアンプ15のゲイン制御の処理動作は変更せずに、ファイナルアンプ17のゲイン設定値を複数段階に切り換えることによって対応する。
【0055】
具体的には、図2(b)に示すように、ファイナルアンプのゲイン制御信号(電圧)のハイレベル値V1を、不揮発性メモリ24に格納されている複数種類の設定値のうち、パワー制御要求に対応するものに切り換える。例えば、定格パワーPc、Pc−3dB、9dB、15dBなど、4段階のパワー制御要求がある場合、これらの各送信パワーに対応する複数種類のゲイン設定値を不揮発性メモリ24に格納しておき、これらのうちパワー制御要求の対応する設定値を読み出して、ファイナルアンプ17のゲインを制御する。
【0056】
なお、複数段階のパワー制御要求に対応したファイナルアンプ17のゲイン設定値は、例えば工場出荷前の調整工程の際などに、不揮発性メモリ24に書き込んでおくことができる。調整工程においては、例えば、AGCアンプ15のゲインを通常仕様範囲の最大値とした状態で、アンテナANから送信される無線信号の送信パワーを測定しながら、ファイナルアンプ17のゲインを変化させる。そして、上記各段階のパワー制御要求に応じた送信パワーが得られたときのゲイン制御信号の値を求め、この値をゲイン設定値として不揮発性メモリ24に書き込んでおくことで、上記構成を実現することができる。
【0057】
図3には、二種類の送信パワー設定時におけるファイナルアンプ17の出力パワーPoと消費電流Iddの特性を表わしたグラフを示す。同図において、“ダイヤ印”プロット線は、最大送信パワー設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対出力パワーPoの関係を示すもの、“四角”プロット線は送信パワー−10dB設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対出力パワーPoの関係を示すもの、“三角”プロット線は最大送信パワー設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対消費電流Iddの関係を示すもの、“×”プロット線は送信パワー−10dB設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対消費電流Iddの関係を示すものである。
【0058】
図3の“三角”プロット線と“×”プロット線との比較から分かるように、ファイナルアンプ17のゲインを低くすると、ファイナルアンプ17の消費電流Iddは大きく減少する。一方、ファイナルアンプ17のゲインを一定としたまま入力パワーPinを低くした場合には、入力パワーPinが最大レベルの近傍では消費電流Iddも減少するが、入力パワーPinが最大レベル近傍より低い範囲では消費電流Iddは飽和してほとんど減少しない。
【0059】
従って、パワー制御要求により低い送信パワーで送信動作を行った場合に、この実施形態のゲイン制御のようにファイナルアンプ17のゲインを低くして対応することで、送信期間中の消費電力が送信パワーに応じて低減されるようになっている。例えば、パワー制御要求が最大パワー(例えば45dB)のときに、“ダイヤ印”プロット線や“三角”プロット線に示す特性で送信動作した場合、送信バースト期間中の消費電流は8.6Aとなる。そして、パワー制御要求により送信パワーが、例えば35dBなどに一段下げられたときには、“四角”プロット線や“×”プロット線に示す特性で送信動作させることで、送信バースト期間中の消費電流は3.0Aまで低減する。
【0060】
一方、パワー制御要求により低い送信パワーで動作させる場合に、この実施形態の方式とは別に、ファイナルアンプ17を最大ゲインとしたまま、AGCアンプ15のゲインを低下させて対応させた場合、図3の“三角”プロット線に示すように、ファイナルアンプ17の消費電流Iddは入力パワーPinを低下させても途中で飽和してしまうため、消費電流は5.0A弱にしか低下しない。従って、これと比較して、本実施形態のゲイン制御の方が、送信パワーが低いときにその送信パワーに応じて消費電力が大きく低減されるのが分かる。
【0061】
[ランプ制御動作]
次に、タイムスロットの前後に送信パワーを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げる際のランプ制御の動作について説明する。
【0062】
図4には、二種類の送信パワー設定(最大定格“Pc”と“Pc−15dB”)のときの送信パワーの立ち上がり波形とランプ規格を表わした波形図を示す。図5には、同設定時の送信パワーの立下り波形とランプ規格を表わした波形図を示す。
【0063】
本実施形態の通信規格においては、ACPR(隣接チャンネル漏洩電力比)が悪化しないように、ガードタイム中における送信パワーの立ち上がりや立ち下りの波形が規定されている。例えば、図4や図5の点線や実線に示すように、1msのガードタイム中にこの点線や実線より出力パワーが低くなければならないというように規定されている。また、送信パワーが複数段階に切り換えられる場合、送信パワーが大きいときには立ち上がり波形や立下り波形のレベルも全体的に高く、送信パワーが小さいときには立ち上がり波形や立下り波形のレベルも全体的に低くなるように規定されている。
【0064】
この実施形態のランプ制御処理においては、図2のタイムチャートにも示したように、ガードタイム中にファイナルアンプ17のゲインは送信時のレベルとしたまま、AGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げることで実現している。
【0065】
具体的には、図4や図5の立ち上がり波形や立下り波形に示すように、ガードタイム中にAGCアンプ15のランプ制御信号をレイズドコサイン(Raised
Cosine)波形で立ち上げ並びに立ち下げるようにすることで、送信パワーが同波形で立ち上げ並びに立ち下げられるように構成している。
【0066】
また、上述したように、この実施形態のゲイン制御では、パワー制御要求に応じて送信パワーが段階的に切り換えられる場合があるが、この段階的な送信パワーの切り換えはファイナルアンプ17のゲインを複数段階に切り換えることで対応している。このとき、AGCアンプ15のゲインは通常仕様範囲の最大ゲインのときに、パワー制御要求に応じた送信パワーが得られるように、ファイナルアンプ17の複数段階のゲインが設定されている。
【0067】
そのため、パワー制御要求に応じて送信パワーが切り換えられた場合でも、この実施形態のランプ制御処理では、AGCアンプ15に同一レベルで且つ同一の傾斜パターンのランプ制御信号が出力されることで、各段階の送信パワーに応じた出力パワーPoの立ち上げならびに立ち下げが実現されるようになっている。さらに、AGCアンプ15をランプ制御する際には、どの段階の送信パワーに設定されていても、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅で使用して送信パワーの立ち上げ並びに立ち下げを行うことができるようになっている。
【0068】
例えば、図4,図5に示すように、定格パワー“Pc”時を基準としたときに、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅に使用して、定格パワー“Pc”時のランプ規格(図4,図5の点線)を満たす出力パワーの立ち上がり(図4の“四角”プロット線)と立下り(図5の“四角”プロット線)が実現されるよう、AGCアンプ15を構成したとする。この構成で、送信パワーが“Pc−15dB”に下げられたとする。このとき、ファイナルアンプ17のゲインは同量(15dB)だけ下げられるので、AGCアンプ15に基準時と同一波形のランプ制御信号を出力することで、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅に使用して、“Pc−15dB”時の出力パワーの立ち上がりと立下り(図4,図5の“ダイヤ印”プロット線)を得ることができる。
【0069】
図11と図12には、比較のために、AGCアンプ15のみで送信パワーの切換制御とランプ制御とを行った場合の波形図を示す。
【0070】
図11,図12に示すように、AGCアンプ15のゲイン制御によって送信パワーの切換制御も行う構成とした場合、例えば、定格パワー“Pc”時にはランプ規格を満たすランプ制御が可能であっても、パワー制御要求に応じて送信パワーが切り換わった場合に、ランプ制御のためにAGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅で使用することができなくなる。そのため、図11,図12の“ダイヤ印”プロット線に示すように、送信パワーが“Pc−15dB”に下げられた場合には、ランプ制御に使用できるAGCアンプ15のダイナミックレンジは25dB分となり、出力パワーを−40dBより低くできなくなるなど、“Pc−15dB”時のランプ規格を満たすことができなくなる。
【0071】
本実施形態のランプ制御によれば、このような不都合は回避され、複数段階の送信パワーに切り換えられた場合でも、リニア特性を有するAGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅に使用して、各送信パワーに対応したランプ規格を満たすように、送信パワーの立ち上げと立ち下げ制御を行うことができる。
【0072】
[多段階のパワー制御要求に対する制御動作]
通信規格によっては、予め定められた複数段階のパワー制御要求だけでなく、これら各段階の中間の送信パワーを実現するよう、パワー制御要求がなされる場合もありえる。このような場合、ファイナルアンプ17のゲイン制御信号対利得の特性は非線形特性になっているため、ファイナルアンプ17のゲイン制御によって即座に対応するのはやや困難である。
【0073】
本実施形態のゲイン制御では、このような場合を想定して、予め定められた複数段階の送信パワーの中間にパワー制御要求がなされた場合、ファイナルアンプ17の複数段階のゲイン制御に、AGCアンプ15のリニア制御を併合させることで、このパワー制御要求に応えるように構成されている。
【0074】
ここで、AGCアンプ15のリニア制御とは、この中間のパワー制御要求を満たすためにAGCアンプ15に必要とされる利得の低減を、CPU20がパワー制御信号の値をこの利得低減量の割合分だけ低く設定しなおすことにより、実現するものである。AGCアンプ15のパワー制御信号対利得の特性はリニア特性であるので、必要な利得低減量の割合がわかれば、最大ゲインを得るパワー制御信号の値にこの割合を乗算することで、必要な利得低減が得られるパワー制御信号の値を算出することができる。CPU20は、無線基地局から送られてきたパワー制御要求の値と、予め設定されている複数段階の送信パワーのうち大きい方で一番近い送信パワーの値とから、パワー制御要求に応じるAGCアンプ15のパワー制御信号の値を算出することができる。
【0075】
そして、ファイナルアンプ17に対しては、予め設定された複数段階の送信パワーのうち、パワー制御要求の値に一番近い大きい方の送信パワーに対応したゲイン制御信号を出力する一方、AGCアンプ15に対しては、上記演算により求められたパワー制御信号の値に対応させたランプ制御信号やパワー制御信号を出力することで、両者のゲイン制御が併合されて、上記複数段階の中間にあるパワー制御要求に応じた送信パワーを実現することが可能になっている。
【0076】
また、上記のように多段階のパワー制御要求に対応する場合には、パワー検出部23の検出信号をCPU20が読み込むことで、実際の送信パワーがパワー制御要求の値からずれていないかソフトウェア的な比較処理が行われる。そして、実際の送信パワーにずれがある場合には、CPU20がこのずれがなくなるようにAGCアンプ15のリニア制御により補正処理を行って、例えば、次のスロットからパワー制御要求に正確に対応した送信パワーを出力することが可能になっている。
【0077】
以上のように、この実施形態の無線装置1によれば、TDMA方式の無線送信を、業務用無線で用いられるような大出力の送信パワーにより行う場合でも、自己に割り当てられたタイムスロットの直前直後に急激な電流変動が生じてしまうのを回避でき、それにより、他の回路の動作が乱されて例えば変調精度が悪化してしまうといった不都合を防ぐことができる。
【0078】
また、パワー制御要求等により送信パワーを複数段階に切り換える場合には、大出力のファイナルアンプ17のゲイン制御によって送信パワーが複数段階に切り換えられる構成なので、送信パワーが低く設定されているときには送信パワーに応じて無線装置1全体の消費電流を低減することが可能になっている。
【0079】
また、予め定められている複数段階の送信パワーの切換はファイナルアンプ17のゲイン制御により行い、ガードタイムGs,Geにおける送信パワーの立ち上げおよび立ち下げはAGCアンプ15のランプ制御により行う構成なので、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅で使用して所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げおよび立ち下げを実現できるといった効果や、送信パワーの段階的な切換えに関係なく、同一レベルで且つ同一波形のランプ制御信号により、通信規格を満たす送信パワー立ち上げおよび立ち下げを実現できるという効果が得られる。
【0080】
さらに、予め定められている複数段階の送信パワーの切り換えだけでなく、これら各段階の中間の送信パワーへパワー制御要求がある場合には、CPU20によるAGCアンプ15のリニア制御やパワー検出に基づくソフトウェア処理による自動的なパワー制御によって、多段のパワー制御要求にも正確に対応することができるという効果も得られる。
【0081】
[第2実施形態]
図6には、本発明の第2実施形態の無線装置1Aの送信処理に関わる構成を示したブロック図を、図7には、図6のAPC部28とパワー検出部23aの詳細を表わした回路ブロック図を示す。
【0082】
第2実施形態の無線装置1Aは、パワー検出に基づくAGCアンプ15の自動パワー制御を、第1実施形態のようにCPU20により行うのではなく、APC(自動パワー制御)部28のハードウェア構成によって実現するものである。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様であり、1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第2実施形態の無線装置1Aは、例えば、搬送波の振幅成分が変化しない変調方式を採用している場合など、送信信号のパワー検出を瞬時に行うことのできる構成に適用できるものである。
【0083】
この実施形態の無線装置1Aにおいては、パワー検出部23aからの検出信号はAPC部28に入力され、また、AGCアンプ15のゲイン制御信号(例えばFET増幅回路のゲートバイアス電圧)はAPC部28から出力されるように構成される。また、CPU20からは、D/Aコンバータ21を介してAPC部28に参照信号が入力されるようになっている。この参照信号は、APC部28内でパワー検出信号の増減を検出するためにパワー検出信号の比較基準として参照される信号である。
【0084】
また、この実施形態の無線装置1Aにおいては、上記の参照信号のレベルがCPU20の制御によって昇降されることで、APC部28からAGCアンプ15へ出力されるゲイン制御信号のレベルも昇降するようになっている。例えば、ガードタイム期間中にCPU20から特定の傾斜パターンで変化する波形の参照信号がAPC部28に出力されることで、AGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げるランプ制御信号がAPC部28からAGCアンプ15へ出力される。また、送信バースト期間中にCPU20によって参照信号のレベルが制御されることで、AGCアンプ15の送信バースト期間中のゲインを決定するパワー制御信号がAPC部28からAGCアンプ15へ出力されるようになっている。
【0085】
APC部28は、図7に示すように、D/Aコンバータ21からの参照信号を非反転入力端子に受け、且つ、パワー検出部23aからの検出信号を反転入力端子に受けるオペアンプOP1と、オペアンプOP1の非反転端子に接続されたバイアス抵抗R1、ブリーダ抵抗R2および入力抵抗R3と、オペアンプOP1を反転増幅動作させるための負帰還抵抗R4および入力抵抗R5等から構成される。そして、このオペアンプOP1の出力がAGCアンプ15のゲイン制御信号(例えばパワー制御信号やランプ制御信号)として出力されるように構成されている。
【0086】
このような構成のAPC部28によれば、オペアンプOP1が、D/Aコンバータ21からの参照信号とパワー検出信号との差分をとることで、この参照信号とパワー制御信号とが所定比率でつり合うように、AGCアンプ15のゲイン制御電圧が増減される。このような作用によって、D/Aコンバータ21からの参照信号が上昇すればパワー検出信号が所定比率で上昇するようにAGCアンプ15のゲインが増加され、D/Aコンバータ2
1からの参照信号が下降すればパワー検出信号が所定比率で下降するようにAGCアンプ15のゲインが低減されるように動作する。
【0087】
上記のパワー検出部23aは、ファイナルアンプ17のゲイン制御と連動して、当該ゲインと反比例して検出感度が変化するような構成となっている。検出感度を変化させる構成は、例えば、図7に示すように、パワー検出回路232の前段にアッテネータ231を設け、ファイナルアンプ17のゲイン制御信号により、ファイナルアンプ17のゲインが上昇したときに、それに比例してアッテネータ231の減衰率が上がるように設定することで実現可能とされる。
【0088】
上記のような構成の第2実施形態の無線装置1Aによれば、図2に示したのと同様に、CPU20からファイナルアンプ17へゲイン制御信号の出力が行われるとともに、CPU20からAPC部28へ出力される参照信号のレベルが昇降されることで、APC部28からAGCアンプ15へ第1実施形態と同様のランプ制御信号やパワー制御信号が出力されてガードタイム期間中の送信パワーの立ち上げや立ち下げ、並びに、送信バースト期間中の送信パワーの制御が行われることとなる。
【0089】
また、送信パワーの制御は、ハードウェアの帰還動作によって高速に行われるため、何らかの変動によって出力パワーが増減した場合でも、APC部28の作用によって速やかにAGCアンプ15のゲインが調整されて、CPU20からの参照信号に応じた送信パワーが安定的に得られるようになっている。
【0090】
また、ファイナルアンプ17のゲインが段階的に切り換えられたときには、そのゲインの増減に反比例するようにパワー検出部23aの検出感度が変化するので、ファイナルアンプ17の段階的なゲインの切り換えに関係なく、CPU20は同一レベルで且つ同一波形の参照信号を出力することで、AGCアンプ15のゲイン制御を行うことが可能になっている。例えば、送信パワーの立ち上げと立ち下げ時には、同一レベルで且つ同一波形で変化する参照信号を出力することで、複数段階の送信パワーにおける各通信規格に従った送信パワーの立ち上がりと立ち下りを実現できる。また、ファイナルアンプ17のゲインが段階的に切り換えられた場合でも、アッテネータ231の減衰率がゲインの変化を打ち消すように変化するので、パワー検出回路232のダイナミックレンジが狭まったり、D/Aコンバータ21の分解能が低下したりするような影響が生じない。それにより、ノイズに強いパワー制御が可能となる。
【0091】
以上のように、第2実施形態の無線装置1Aによれば、第1実施形態の作用効果に加えて、AGCアンプ15のオートパワー制御をハードウェアにより実現しているので、送信パワーに変化を与える何らかの回路変動が生じても、送信パワーを速やかに安定させることができるという効果がある。
【0092】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、特定の通信規格に準拠した無線装置を例示したが、TDMA方式で無線信号を送信するものであればどのような通信規格のものも含まれる。また、ファイナルアンプ(第1アンプ)の出力パワーのレベルも、上記実施形態で示した値は一例に過ぎない。
【0093】
また、上記実施形態では、ガードタイムGs,Geの直前直後の期間に、ファイナルアンプ(第1アンプ)のゲインを上昇、下降させるゲイン制御方法を示したが、例えば、図4や図5に示したように、ガードタイムの始端や終端の一部期間にAGCアンプ(第2アンプ)のゲインが非送信時のレベルまで低下している期間(例えば図4の“0〜400μ秒”や、図5の“600〜1000μ秒”)がある場合には、この期間を含めた期間にファイナルアンプのゲインを上昇、下降させるようにしても良い。
【0094】
その他、送信信号の変調方式や具体的な回路構成など、実施の形態に示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1,1A 無線装置
11 TCXO
12 PLL回路
13 VCO
14 変調回路
15 AGCアンプ(第2アンプ)
17 ファイナルアンプ(第1アンプ)
20 CPU(制御手段)
21 D/Aコンバータ
22 A/Dコンバータ
23,23a パワー検出部
24 不揮発性メモリ
28 APC部
231 アッテネータ
232 パワー検出回路
OP1 オペアンプ
AN アンテナ
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線信号を所定のタイムスロットに送信するように構成された無線送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線送信機においては、一般に、アンテナから無線信号を送信するのに複数段のアンプを備えるものがある。また、無線信号の送信パワーを制御することも一般に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、出力段の増幅器の送信パワーを検出しながら、その前段の増幅器のゲインを調整して無線信号の送信パワーを制御する技術が開示されている。また、特許文献2には、APC(オートパワー制御)回路によって出力段のファイナルアンプとその前段のドライブアンプの両方のゲインを同時に調整することで、無線信号の送信パワーを制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−15319号公報
【特許文献2】特開2004−40418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、無線信号を大出力で送信する例えば業務用無線機の分野において、TDMA(時分割多重アクセス)方式で通信を行う無線装置の開発が進められている。また、このような無線装置においては、基地局からのパワー制御要求等に従って、送信パワーを、例えば定格パワー、定格パワーから−3dB、9dB、15dBなど、複数段階に切り換え可能としたり、或いはもっと多段階に調整できたりするように要求されることがある。
【0006】
また、TDMA方式の通信では、予め割り当てられたタイムスロットに無線信号を送信し、他のタイムスロットでは無線信号の送信を停止する必要がある。さらに、隣接するタイムスロットとの電波干渉を避けるために、各タイムスロットの前後に設けられた短いガードタイムの期間に、所定の傾斜パターンで、無線信号の送信パワーを立ち上げたり立ち下げたりしなければならないという制約もある。
【0007】
上記のように、大出力の送信が可能で、且つ、送信パワーを切り換え可能とした無線装置においては、その出力段に大きなパワー出力が可能で且つゲイン可変幅の大きなアンプを設ける必要がある。しかしながら、ゲイン可変幅の大きな大出力アンプでは、例えば、内部に複数段のFET(電界効果トランジスタ)増幅回路を有する構成となるため、図8の“四角”プロット線に示すように、ゲイン制御電圧(ゲートバイアス電圧)対出力送信パワーの特性はリニアにならない。
【0008】
そのため、ガードタイム中に所定の傾斜パターンで送信パワーを立ち上げたり立ち下げたりする制御を、出力段の大出力アンプのゲイン制御によって実現するには、この所定の傾斜パターンを実現するゲイン制御電圧の波形を、様々な送信パワーのレベルに対応させて幾つも用意しておかなければならないという課題が生じる。
【0009】
また、ゲイン可変型の大出力アンプでは、図8の“ダイヤ印”プロット線に示すように、そのゲインに応じて消費電流が大きく変化する。従って、出力段の大出力アンプのゲイン制御により送信パワーの立ち上げと立ち下げの制御を行った場合、短い期間(例えば1ms)に大きな電流変動(例えば0A−9Aなど)が生じることとなる。そして、この急激な電流変動により、例えば、搬送波を生成するVCO(電圧制御発振器)などの動作に摂動が生じるなどして、送信信号の変調精度が悪化するという課題を生じる。
【0010】
一方、特許文献1に示すように、出力段の大出力アンプのゲインを一定とし、ドライブ段など前段のアンプのゲイン制御を行うことで、ガードタイムにおける送信パワーの立ち上げと立ち下げ、並びに、パワー制御要求等に基づく送信パワーの段階的な切り換えを行う構成を適用することも可能である。
【0011】
しかしながら、このような構成では、出力段のアンプが常に大きなゲインのままとなって大電流を流し続けるため、例えばパワー制御要求等により低い送信パワーで動作する場合でも、無線装置全体の消費電流を低くすることができないという課題が生じる。
【0012】
例えば、図9には、出力段のアンプのゲインを35dB固定とした構成において、出力段のアンプの入力パワーPin対出力パワーPout、ならびに、入力パワーPin対アンプの消費電流Iddを表わした特性図を示すが、出力段のアンプを常に大きなゲインとしたままでは、図9の“四角”プロット線に示すように、送信パワーが30dB以下の領域ではアンプの消費電流は下げ止まりとなるため、送信パワーが低く設定されたときでも消費電流の低減を図ることができない。
【0013】
また、前段のドライブアンプのみでゲイン制御を行う構成では、送信パワーのダイナミックレンジは、ドライブアンプ自体のダイナミックレンジにより決定されてしまう。そのため、例えば、送信パワーが最大のときには、ドライブアンプのダイナミックレンジを最大幅に使って、所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げや立ち下げを行うことができても、パワー制御要求等により送信パワーが低く設定されたときには、ドライブアンプのダイナミックレンジの一部の範囲しか使うことができないことから、例えば、送信パワーのレベルが頭打ちとなって所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げや立ち下げを行うことが困難になる場合が生じる。
【0014】
また、特許文献2に示すように、出力段のファイナルアンプとドライブ段のアンプとの両方のゲインを同時に制御して送信パワーを変化させる構成を適用することも可能である。しかしながら、このような構成においても、短いガードタイムの期間中に、大出力のファイナルアンプのゲインを立ち上げたり立ち下げたりする必要があるため、タイムスロットの前後で急激な電流変動が生じることとなって、それにより送信信号の変調精度が悪化するといった課題が生じる。
【0015】
また、ゲイン制御電圧対出力送信パワーの特性がリニアにならないことから、ガードタイム中に所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げや立ち下げを行うために、様々な送信パワーのレベルに対応させて、ゲイン制御電圧の波形を幾つも用意しなければならないという課題が生じる。
【0016】
この発明の目的は、所定のタイムスロットで無線信号の送信を行う無線送信機において、送信パワーの立ち上げや立ち下げ時に急激な電流変動が発生するのを回避でき、且つ、送信パワーが低く設定された場合には送信パワーに応じて消費電流の低減を図ることのできる無線送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
無線信号を所定のタイムスロットで送信するように構成された無線送信機において、
送信信号をアンテナに出力するゲイン可変型の第1アンプと、
この第1アンプより前段に設けられ送信信号を前記第1アンプへ送るゲイン可変型の第2アンプと、
前記第1アンプと前記第2アンプのゲイン制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記タイムスロットの開始の際は、先ず、前記第1アンプのゲインを上昇させ、その後、前記第2アンプのゲインを上昇させて、無線信号を送信させ、
前記タイムスロットの終了の際は、先ず、前記第2アンプのゲインを下降させ、その後、前記第1アンプのゲインを下降させて、無線信号の送信を停止させ、
前記タイムスロットの終端側のガードタイム中に、前記第2アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させ、
前記第2アンプのゲインを非送信時のレベルまで下降させた後の期間に、前記第1アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる構成であることを特徴としている。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記制御手段は、
前記第2アンプのゲインを設定された傾斜パターンで変化させる構成であり、
この制御手段による前記第2アンプのゲイン制御によって、前記タイムスロットの始端或いは終端に設けられたガードタイムに無線送信パワーが所定の傾斜パターンで立ち上げ或いは立ち下げられることを特徴としている。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記制御手段は、
前記第1アンプのゲインを予め設定された複数段階の何れかのゲインに切り換える構成であり、
この制御手段による前記第1アンプのゲイン制御によって無線送信パワーが段階的に切り換え可能になっていることを特徴としている。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するパワー検出部を備え、
前記制御手段は、
前記パワー検出部の検出出力に基づいて該検出出力が所定の値になるように前記第2アンプの送信時のゲイン調整を行う構成であることを特徴としている。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の無線送信機において、
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するとともに検出感度が可変にされたパワー検出部と、
前記パワー検出部の検出信号と参照信号とがつり合うように前記第2アンプのゲインを自動的に調整する自動パワー制御部と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1アンプの送信時のゲインの変化に伴って当該ゲインの変化と逆行するように前記パワー検出部の検出感度を変化させるとともに、
前記オートパワー制御部の参照信号を変化させることで前記第2アンプのゲイン制御を行う構成であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従うと、例えば大出力の無線送信が可能な無線送信機であっても、送信パワーが低く設定された場合には送信パワーに応じて消費電流の低減が図れるとともに、タイムスロット始端や終端で送信パワーを立ち上げたり立ち下げたりする際に急激な電流変動が発生するのを回避できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の無線装置の送信処理に関わる構成を示したブロック図である。
【図2】第1実施形態の無線装置の送信動作を説明するタイムチャートである。
【図3】二種類の送信パワー設定時におけるファイナルアンプの出力パワーと消費電流の特性を示すグラフである。
【図4】二種類の送信パワー設定時における送信パワーの立ち上り波形とランプ規格とを示す波形図である。
【図5】二種類の送信パワー設定時における送信パワーの立ち下り波形とランプ規格とを示す波形図である。
【図6】本発明の第2実施形態の無線装置の送信処理に関わる構成を示したブロック図である。
【図7】図6のAPC部とパワー検出部の詳細を示した回路ブロック図である。
【図8】大出力のファイナルアンプにおける出力パワーと消費電流の特性を示すグラフである。
【図9】大出力のファイナルアンプをゲイン固定とし、前段のアンプでパワー制御を行った場合の出力パワーと消費電流の特性を示すグラフである。
【図10】大出力のファイナルアンプのゲイン制御のみで所定のタイムスロットで無線送信を行う場合の動作を説明するタイムチャートである。
【図11】AGCアンプのゲイン制御のみで送信パワーの切り換えとランプ制御を行った場合の送信パワーの立ち上がり波形を示す波形図である。
【図12】AGCアンプのゲイン制御のみで送信パワーの切り換えとランプ制御を行った場合の送信パワーの立ち下り波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の無線装置の送信処理に関わる構成を示したブロック図である。
【0026】
第1実施形態の無線装置1は、TDMA(時分割多重アクセス)方式で通信を行うとともに、例えば業務用無線機の分野で使用される大出力(例えば20〜40dBm)の無線送信を可能とするものである。また、この無線装置1は、例えば、通信規格P25_Phase2に準拠した通信動作を行うように構成されたものである。
【0027】
通信規格P25_Phase2は、1つの周波数チャンネルに2つのタイムスロットを設定してTDMA方式で通信を行う規格であり、1つのタイムスロットが例えば30msに設定され、各タイムスロットの始端側の短い期間(例えば1ms)に、隣接するタイムスロットとの干渉を避けるためのガードタイムが設定されている。また、ACPR(隣接チャンネル漏洩電力比)が悪化しないように、ガードタイム中における送信パワーの立ち上げ或いは立ち下げの傾斜パターンについても所定の範囲に収まるように規定されている。さらに、無線基地局からのパワー制御要求に基づいて、送信パワーを複数段階(例えば定格パワーPc、Pc−3dB、9dB、15dB)に切り換え可能としたり、或いは、もっと多段に送信パワーを切り換え可能としたり要求されることもある。
【0028】
この無線装置1は、図1に示すように、特定周波数の搬送波を生成するための発振器(例えば、TCXO:温度補償型水晶発振器)11、PLL(Phase Locked
Loop)回路12およびVCO(電圧制御発振器)13と、発振器11やVCO13に対して情報信号により変調作用を及ぼす変調回路14と、搬送波が変調されてなる送信信号を増幅してアンテナANへ出力する複数段構成のアンプ15,16,17と、アンテナANの接続を送信側と受信側とに切り換えるスイッチ18と、通信周波数帯から外れた信号を除去するアンテナフィルタ19と、送受信動作の全体的な制御を行う制御手段としてのCPU(中央演算処理装置)20と、CPU20からのゲイン制御信号をアナログ電圧に変換するD/Aコンバータ21と、例えばアンテナフィルタ19の出力を導いて送信信号のパワーを検出するパワー検出部23と、パワー検出部23からの検出信号をデジタル値に変換してCPU20に送るA/Dコンバータ22と、制御プログラムや各種の設定データを格納する不揮発性メモリ24と、無線送信する音声信号を入力するマイクロフォン25およびA/Dコンバータ26等を備えている。なお、受信に関わる構成については図示および説明を省略する。
【0029】
送信信号を増幅する複数段の増幅回路15〜17は、送信パワーの自動的な利得制御が行われる第2アンプとしてのAGC(自動利得制御)アンプ15と、2段目に縦続接続されたバッファアンプ16と、3段目に縦続接続されアンテナANへ送信信号を出力する第1アンプとしてのファイナルアンプ17とから構成される。
【0030】
AGCアンプ15は、ゲイン可変型のアンプであり、CPU20からD/Aコンバータ21を介して入力されるパワー制御信号やランプ制御信号(例えば内部のFET増幅回路に供給されるゲートバイアス電圧など)によって、その利得が制御される。ランプ制御信号は、タイムスロットの開始や終了の際に送信パワーを所定の傾斜(ramp)パターンで立ち上げたり立ち下げたりするための制御信号、パワー制御信号は、無線信号の送信バースト期間中における送信パワーの制御信号である。これらはともに1本の制御線を介して出力されるゲイン制御電圧である。
【0031】
AGCアンプ15は、その出力は通常の大きさのものでよく、そのため、ゲイン制御電圧対利得の特性はリニアな特性とすることができる。また、その消費電流はファイナルアンプ17の消費電流と比較して無視できる程度のものである。
【0032】
ファイナルアンプ17は、ゲイン可変型の大出力アンプであり、CPU20からD/Aコンバータ21を介して入力されるゲイン制御信号によって、その利得が制御される。ファイナルアンプ17は、大きな送信パワーを実現するため、例えば50dBm近くまでの出力が可能なものである。
【0033】
ファイナルアンプ17は、上記のような大出力特性を有しているため、ゲイン制御電圧対利得の特性は、リニアな特性とすることは難しく、非線形の特性となっている。また、ファイナルアンプ17は、大きな消費電流を流して、大出力の特性を得る構成であるため、ゲインを低下させたときには、消費電流は小さくなるが、ゲインを上昇させたときには、入出力がなくても大きな消費電流が生じるという性質を有している。
【0034】
不揮発性メモリ24には、ファイナルアンプ17のゲイン制御信号の値として複数段階の送信パワーにそれぞれ対応する複数の設定値と、ガードタイム中に送信パワーを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げるためにAGCアンプ15に出力するランプ制御信号の波形データと、無線基地局からの細かいパワー制御要求があった場合にAGCアンプ15の利得制御により対応させるためにAGCアンプ15のパワー制御の設定値を算出する演算プログラムなどが含まれている。
【0035】
次に、この実施形態の無線装置1の動作について説明する。無線装置1は、無線信号を送信する送信動作期間と、無線信号を受信する受信動作期間とをスイッチ18により切り換える。ここでは受信動作についての説明は省略し、送信動作についてのみ説明する。
【0036】
[送信動作の概要]
無線信号の送信動作期間においては、発振器11、PLL回路12およびVCO13が動作して常に特定周波数の搬送波が生成されている。また、CPU20は、予め自己に割り当てられたタイムスロットの期間ごとにファイナルアンプ17とAGCアンプ15のゲインを送信時のレベルまで上げることで、送信信号をアンテナANに出力して無線信号を送信させる。一方、自己に割り当てられていないタイムスロットの期間にはファイナルアンプ17とAGCアンプ15のゲインを非送信時のレベルまで下げることで、アンテナANから送信される無線信号をほぼ停止させる。
【0037】
音声信号を無線送信する場合、CPU20は、マイクロフォン25から入力した音声信号をA/Dコンバータ26を介してサンプリングすることで音声データとして取り込み、そして、自己に割り当てられたタイムスロット期間に、この音声データを変調回路14に送る。すると、変調回路14により搬送波が変調されて変調後の送信信号がAGCアンプ15に送られる。このとき、AGCアンプ15とファイナルアンプ17のゲインは送信時のレベルになっているので、この送信信号がアンテナANから無線送信されることとなる。音声信号以外の様々なデータ送信を行う場合も、同様に、自己に割り当てられたタイムスロット期間に変調回路14に送信データが送られることで、この送信データにより変調された送信信号がAGCアンプ15とファイナルアンプ17により増幅されて無線送信されることとなる。
【0038】
[タイムスロットの開始時の制御動作]
図2には、無線装置1の送信時における制御内容を説明するタイムチャートを示す。同図(a)はタイムスロット、(b)はファイナルアンプ17のゲイン制御信号、(c)はAGCアンプ15のゲイン制御信号、(d)はファイナルアンプ17の出力パワーPo、(e)はファイナルアンプ17の消費電流Idd、それぞれの時間変化を示している。同図においてゲイン制御信号をより具体的にゲイン制御電圧と記している。
【0039】
図2(a)に示すように、無線装置1には30msごとに30msのタイムスロットSaが割り当てられる。また、各タイムスロットSa,Sbの始端には、隣接するタイムスロットとの干渉を避けるために1msのガードタイムGs,Geが設けられている。無線装置1は自己に割り当てられたタイムスロットSaの始端側のガードタイムGsで送信パワーを非送信時のレベルから送信時のレベルまで立ち上げ、終端側のガードタイムGe(=次のタイムスロットSbの始端側のガードタイムGe)で送信パワーを送信時のレベルから非送信時のレベルまで立ち下げるよう規定されている。また、この送信パワーの立ち上げと立ち下げ時には、傾斜パターンが所定範囲に収まるように規定されている。
【0040】
図2(b)に示すように、送信パワーの立ち上げ時において、CPU20は、先ず、始端側のガードタイムGsの直前の期間に、ファイナルアンプ17のゲインを非送信時のレベルから送信時のレベルまで上昇させる。
【0041】
このとき、ファイナルアンプ17への入力信号のレベルはほぼゼロであるので、図2(d)に示すように、ファイナルアンプ17の出力パワーPoはほぼゼロのままである。また、ファイナルアンプ17は、大出力のアンプであり、出力パワーPoがゼロであっても、ゲインを上げることに伴って比較的大きな消費電流が生じるので、図2(e)に示すように、消費電流Iddが増加する。例えば、消費電流Iddは信号の入出力があるときの8割前後まで増加する。
【0042】
上記のようにファイナルアンプ17のゲインを上昇させたら、次に、CPUは、ガードタイムGsの期間中に、AGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで非送信時のレベルから送信時のレベルまで上昇させる。
【0043】
これにより、AGCアンプ15から送信信号が出力されるとともに、その出力レベルが所定の傾斜パターンで立ち上がる。また、このとき、ファイナルアンプ17のゲインは送信時の設定レベルにあるので、AGCアンプ15から出力された送信信号はアンプ16を介してファイナルアンプ17で一律に増幅されてアンテナANへ出力される。従って、図2(d)に示すように、ファイナルアンプ17の出力パワーPoはガードタイムGsの期間中に所定の傾斜パターンで立ち上がって、非送信時のレベルから送信時のレベルまで上昇する。
【0044】
また、ファイナルアンプ17の出力パワーPoが上昇することで、ファイナルアンプ17の消費電流IddもガードタイムGsの期間中に僅かに上昇する。
【0045】
このようなAGCアンプ15とファイナルアンプ17のゲイン制御によって、送信バースト期間(ガードタイム後の送信期間)の直前に急激な電流変動が生じることが回避され、それにより、急激な電流変動に起因して送信バースト期間に変調精度等が悪化するといった不都合を回避することができる。
【0046】
図10には、比較のために、ファイナルアンプ17のゲイン制御によって送信パワーの立ち上げや立ち下げを行った場合のタイムチャートを示す。
【0047】
図10に示すように、ガードタイムGs中にファイナルアンプ17のゲインを上昇させて送信パワーを立ち上げた場合、この短いガードタイムGsの期間中に大出力のファイナルアンプ17で大きな消費電流Iddの変動が生じる。従って、この急激な電流変動により、ガードタイムGs直後の送信バースト期間等において、他の回路に影響が生じて例えば変調精度が悪化するなどの不具合が生じる。このような不具合は、AGCアンプ15のゲインを一定にしてファイナルアンプ17のみゲイン制御して送信パワーを立ち上げた場合だけでなく、ファイナルアンプ17とAGCアンプ15とを同時にゲイン制御して送信パワーを立ち上げた場合でも、同様に生じる。
【0048】
図2に示した、本実施形態のAGCアンプ15とファイナルアンプ17のゲイン制御処理によれば、上記の不具合を回避することができる。
【0049】
[タイムスロットの終了時の制御動作]
図2に示すように、自己に割り当てられたタイムスロットSaの終了の際には、先ず、CPU20は、その終端側のガードタイムGeの期間中にAGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる。
【0050】
これにより、AGCアンプ15の出力パワーが所定の傾斜パターンで下降する。そして、この出力がファイナルアンプ17で一律に増幅されることで、ファイナルアンプ17の出力パワーPoも上記所定の傾斜パターンで下降する。このとき、ファイナルアンプ17のゲインは変化しないが、出力パワーPoが低下することで、ファイナルアンプ17の消費電流Iddは僅かに減少する。例えば図2の例では、消費電流Iddが2割前後減少している。
【0051】
その後、CPU20は、ガードタイムGeの直後に、ファイナルアンプ17のゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる。このとき、既に、出力パワーPoはほぼゼロになっているので出力パワーPoの変化はほぼ生じないが、大出力のファイナルアンプ17のゲインが下げられることで、この期間に消費電流Iddが大きく低下する。
【0052】
図10の比較例に示すように、ガードタイムGeの期間中にファイナルアンプ17のゲインを下降させて送信パワーを立ち下げた場合には、ガードタイムGeの期間中に急激な電流変動が生じてしまい、この急激な電流変動により他の回路に悪影響を及ぼしてしまうことが考えられる。一方、図2に示した本実施形態のゲイン制御処理では、送信パワー立ち下げ時の消費電流Iddの変動期間を長くとることができるため、急激な電流変動による他の回路への影響が低減される。
【0053】
[複数段階のパワー制御要求に対する制御動作]
次に、無線基地局から予め定められている複数段階のパワー制御要求があった場合の制御動作について説明する。
【0054】
無線基地局から複数段階のパワー制御要求がなされた場合、CPU20は、AGCアンプ15のゲイン制御の処理動作は変更せずに、ファイナルアンプ17のゲイン設定値を複数段階に切り換えることによって対応する。
【0055】
具体的には、図2(b)に示すように、ファイナルアンプのゲイン制御信号(電圧)のハイレベル値V1を、不揮発性メモリ24に格納されている複数種類の設定値のうち、パワー制御要求に対応するものに切り換える。例えば、定格パワーPc、Pc−3dB、9dB、15dBなど、4段階のパワー制御要求がある場合、これらの各送信パワーに対応する複数種類のゲイン設定値を不揮発性メモリ24に格納しておき、これらのうちパワー制御要求の対応する設定値を読み出して、ファイナルアンプ17のゲインを制御する。
【0056】
なお、複数段階のパワー制御要求に対応したファイナルアンプ17のゲイン設定値は、例えば工場出荷前の調整工程の際などに、不揮発性メモリ24に書き込んでおくことができる。調整工程においては、例えば、AGCアンプ15のゲインを通常仕様範囲の最大値とした状態で、アンテナANから送信される無線信号の送信パワーを測定しながら、ファイナルアンプ17のゲインを変化させる。そして、上記各段階のパワー制御要求に応じた送信パワーが得られたときのゲイン制御信号の値を求め、この値をゲイン設定値として不揮発性メモリ24に書き込んでおくことで、上記構成を実現することができる。
【0057】
図3には、二種類の送信パワー設定時におけるファイナルアンプ17の出力パワーPoと消費電流Iddの特性を表わしたグラフを示す。同図において、“ダイヤ印”プロット線は、最大送信パワー設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対出力パワーPoの関係を示すもの、“四角”プロット線は送信パワー−10dB設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対出力パワーPoの関係を示すもの、“三角”プロット線は最大送信パワー設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対消費電流Iddの関係を示すもの、“×”プロット線は送信パワー−10dB設定時におけるファイナルアンプ17の入力パワーPin対消費電流Iddの関係を示すものである。
【0058】
図3の“三角”プロット線と“×”プロット線との比較から分かるように、ファイナルアンプ17のゲインを低くすると、ファイナルアンプ17の消費電流Iddは大きく減少する。一方、ファイナルアンプ17のゲインを一定としたまま入力パワーPinを低くした場合には、入力パワーPinが最大レベルの近傍では消費電流Iddも減少するが、入力パワーPinが最大レベル近傍より低い範囲では消費電流Iddは飽和してほとんど減少しない。
【0059】
従って、パワー制御要求により低い送信パワーで送信動作を行った場合に、この実施形態のゲイン制御のようにファイナルアンプ17のゲインを低くして対応することで、送信期間中の消費電力が送信パワーに応じて低減されるようになっている。例えば、パワー制御要求が最大パワー(例えば45dB)のときに、“ダイヤ印”プロット線や“三角”プロット線に示す特性で送信動作した場合、送信バースト期間中の消費電流は8.6Aとなる。そして、パワー制御要求により送信パワーが、例えば35dBなどに一段下げられたときには、“四角”プロット線や“×”プロット線に示す特性で送信動作させることで、送信バースト期間中の消費電流は3.0Aまで低減する。
【0060】
一方、パワー制御要求により低い送信パワーで動作させる場合に、この実施形態の方式とは別に、ファイナルアンプ17を最大ゲインとしたまま、AGCアンプ15のゲインを低下させて対応させた場合、図3の“三角”プロット線に示すように、ファイナルアンプ17の消費電流Iddは入力パワーPinを低下させても途中で飽和してしまうため、消費電流は5.0A弱にしか低下しない。従って、これと比較して、本実施形態のゲイン制御の方が、送信パワーが低いときにその送信パワーに応じて消費電力が大きく低減されるのが分かる。
【0061】
[ランプ制御動作]
次に、タイムスロットの前後に送信パワーを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げる際のランプ制御の動作について説明する。
【0062】
図4には、二種類の送信パワー設定(最大定格“Pc”と“Pc−15dB”)のときの送信パワーの立ち上がり波形とランプ規格を表わした波形図を示す。図5には、同設定時の送信パワーの立下り波形とランプ規格を表わした波形図を示す。
【0063】
本実施形態の通信規格においては、ACPR(隣接チャンネル漏洩電力比)が悪化しないように、ガードタイム中における送信パワーの立ち上がりや立ち下りの波形が規定されている。例えば、図4や図5の点線や実線に示すように、1msのガードタイム中にこの点線や実線より出力パワーが低くなければならないというように規定されている。また、送信パワーが複数段階に切り換えられる場合、送信パワーが大きいときには立ち上がり波形や立下り波形のレベルも全体的に高く、送信パワーが小さいときには立ち上がり波形や立下り波形のレベルも全体的に低くなるように規定されている。
【0064】
この実施形態のランプ制御処理においては、図2のタイムチャートにも示したように、ガードタイム中にファイナルアンプ17のゲインは送信時のレベルとしたまま、AGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げることで実現している。
【0065】
具体的には、図4や図5の立ち上がり波形や立下り波形に示すように、ガードタイム中にAGCアンプ15のランプ制御信号をレイズドコサイン(Raised
Cosine)波形で立ち上げ並びに立ち下げるようにすることで、送信パワーが同波形で立ち上げ並びに立ち下げられるように構成している。
【0066】
また、上述したように、この実施形態のゲイン制御では、パワー制御要求に応じて送信パワーが段階的に切り換えられる場合があるが、この段階的な送信パワーの切り換えはファイナルアンプ17のゲインを複数段階に切り換えることで対応している。このとき、AGCアンプ15のゲインは通常仕様範囲の最大ゲインのときに、パワー制御要求に応じた送信パワーが得られるように、ファイナルアンプ17の複数段階のゲインが設定されている。
【0067】
そのため、パワー制御要求に応じて送信パワーが切り換えられた場合でも、この実施形態のランプ制御処理では、AGCアンプ15に同一レベルで且つ同一の傾斜パターンのランプ制御信号が出力されることで、各段階の送信パワーに応じた出力パワーPoの立ち上げならびに立ち下げが実現されるようになっている。さらに、AGCアンプ15をランプ制御する際には、どの段階の送信パワーに設定されていても、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅で使用して送信パワーの立ち上げ並びに立ち下げを行うことができるようになっている。
【0068】
例えば、図4,図5に示すように、定格パワー“Pc”時を基準としたときに、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅に使用して、定格パワー“Pc”時のランプ規格(図4,図5の点線)を満たす出力パワーの立ち上がり(図4の“四角”プロット線)と立下り(図5の“四角”プロット線)が実現されるよう、AGCアンプ15を構成したとする。この構成で、送信パワーが“Pc−15dB”に下げられたとする。このとき、ファイナルアンプ17のゲインは同量(15dB)だけ下げられるので、AGCアンプ15に基準時と同一波形のランプ制御信号を出力することで、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅に使用して、“Pc−15dB”時の出力パワーの立ち上がりと立下り(図4,図5の“ダイヤ印”プロット線)を得ることができる。
【0069】
図11と図12には、比較のために、AGCアンプ15のみで送信パワーの切換制御とランプ制御とを行った場合の波形図を示す。
【0070】
図11,図12に示すように、AGCアンプ15のゲイン制御によって送信パワーの切換制御も行う構成とした場合、例えば、定格パワー“Pc”時にはランプ規格を満たすランプ制御が可能であっても、パワー制御要求に応じて送信パワーが切り換わった場合に、ランプ制御のためにAGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅で使用することができなくなる。そのため、図11,図12の“ダイヤ印”プロット線に示すように、送信パワーが“Pc−15dB”に下げられた場合には、ランプ制御に使用できるAGCアンプ15のダイナミックレンジは25dB分となり、出力パワーを−40dBより低くできなくなるなど、“Pc−15dB”時のランプ規格を満たすことができなくなる。
【0071】
本実施形態のランプ制御によれば、このような不都合は回避され、複数段階の送信パワーに切り換えられた場合でも、リニア特性を有するAGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅に使用して、各送信パワーに対応したランプ規格を満たすように、送信パワーの立ち上げと立ち下げ制御を行うことができる。
【0072】
[多段階のパワー制御要求に対する制御動作]
通信規格によっては、予め定められた複数段階のパワー制御要求だけでなく、これら各段階の中間の送信パワーを実現するよう、パワー制御要求がなされる場合もありえる。このような場合、ファイナルアンプ17のゲイン制御信号対利得の特性は非線形特性になっているため、ファイナルアンプ17のゲイン制御によって即座に対応するのはやや困難である。
【0073】
本実施形態のゲイン制御では、このような場合を想定して、予め定められた複数段階の送信パワーの中間にパワー制御要求がなされた場合、ファイナルアンプ17の複数段階のゲイン制御に、AGCアンプ15のリニア制御を併合させることで、このパワー制御要求に応えるように構成されている。
【0074】
ここで、AGCアンプ15のリニア制御とは、この中間のパワー制御要求を満たすためにAGCアンプ15に必要とされる利得の低減を、CPU20がパワー制御信号の値をこの利得低減量の割合分だけ低く設定しなおすことにより、実現するものである。AGCアンプ15のパワー制御信号対利得の特性はリニア特性であるので、必要な利得低減量の割合がわかれば、最大ゲインを得るパワー制御信号の値にこの割合を乗算することで、必要な利得低減が得られるパワー制御信号の値を算出することができる。CPU20は、無線基地局から送られてきたパワー制御要求の値と、予め設定されている複数段階の送信パワーのうち大きい方で一番近い送信パワーの値とから、パワー制御要求に応じるAGCアンプ15のパワー制御信号の値を算出することができる。
【0075】
そして、ファイナルアンプ17に対しては、予め設定された複数段階の送信パワーのうち、パワー制御要求の値に一番近い大きい方の送信パワーに対応したゲイン制御信号を出力する一方、AGCアンプ15に対しては、上記演算により求められたパワー制御信号の値に対応させたランプ制御信号やパワー制御信号を出力することで、両者のゲイン制御が併合されて、上記複数段階の中間にあるパワー制御要求に応じた送信パワーを実現することが可能になっている。
【0076】
また、上記のように多段階のパワー制御要求に対応する場合には、パワー検出部23の検出信号をCPU20が読み込むことで、実際の送信パワーがパワー制御要求の値からずれていないかソフトウェア的な比較処理が行われる。そして、実際の送信パワーにずれがある場合には、CPU20がこのずれがなくなるようにAGCアンプ15のリニア制御により補正処理を行って、例えば、次のスロットからパワー制御要求に正確に対応した送信パワーを出力することが可能になっている。
【0077】
以上のように、この実施形態の無線装置1によれば、TDMA方式の無線送信を、業務用無線で用いられるような大出力の送信パワーにより行う場合でも、自己に割り当てられたタイムスロットの直前直後に急激な電流変動が生じてしまうのを回避でき、それにより、他の回路の動作が乱されて例えば変調精度が悪化してしまうといった不都合を防ぐことができる。
【0078】
また、パワー制御要求等により送信パワーを複数段階に切り換える場合には、大出力のファイナルアンプ17のゲイン制御によって送信パワーが複数段階に切り換えられる構成なので、送信パワーが低く設定されているときには送信パワーに応じて無線装置1全体の消費電流を低減することが可能になっている。
【0079】
また、予め定められている複数段階の送信パワーの切換はファイナルアンプ17のゲイン制御により行い、ガードタイムGs,Geにおける送信パワーの立ち上げおよび立ち下げはAGCアンプ15のランプ制御により行う構成なので、AGCアンプ15のダイナミックレンジを最大幅で使用して所定の傾斜パターンで送信パワーの立ち上げおよび立ち下げを実現できるといった効果や、送信パワーの段階的な切換えに関係なく、同一レベルで且つ同一波形のランプ制御信号により、通信規格を満たす送信パワー立ち上げおよび立ち下げを実現できるという効果が得られる。
【0080】
さらに、予め定められている複数段階の送信パワーの切り換えだけでなく、これら各段階の中間の送信パワーへパワー制御要求がある場合には、CPU20によるAGCアンプ15のリニア制御やパワー検出に基づくソフトウェア処理による自動的なパワー制御によって、多段のパワー制御要求にも正確に対応することができるという効果も得られる。
【0081】
[第2実施形態]
図6には、本発明の第2実施形態の無線装置1Aの送信処理に関わる構成を示したブロック図を、図7には、図6のAPC部28とパワー検出部23aの詳細を表わした回路ブロック図を示す。
【0082】
第2実施形態の無線装置1Aは、パワー検出に基づくAGCアンプ15の自動パワー制御を、第1実施形態のようにCPU20により行うのではなく、APC(自動パワー制御)部28のハードウェア構成によって実現するものである。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様であり、1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第2実施形態の無線装置1Aは、例えば、搬送波の振幅成分が変化しない変調方式を採用している場合など、送信信号のパワー検出を瞬時に行うことのできる構成に適用できるものである。
【0083】
この実施形態の無線装置1Aにおいては、パワー検出部23aからの検出信号はAPC部28に入力され、また、AGCアンプ15のゲイン制御信号(例えばFET増幅回路のゲートバイアス電圧)はAPC部28から出力されるように構成される。また、CPU20からは、D/Aコンバータ21を介してAPC部28に参照信号が入力されるようになっている。この参照信号は、APC部28内でパワー検出信号の増減を検出するためにパワー検出信号の比較基準として参照される信号である。
【0084】
また、この実施形態の無線装置1Aにおいては、上記の参照信号のレベルがCPU20の制御によって昇降されることで、APC部28からAGCアンプ15へ出力されるゲイン制御信号のレベルも昇降するようになっている。例えば、ガードタイム期間中にCPU20から特定の傾斜パターンで変化する波形の参照信号がAPC部28に出力されることで、AGCアンプ15のゲインを所定の傾斜パターンで立ち上げおよび立ち下げるランプ制御信号がAPC部28からAGCアンプ15へ出力される。また、送信バースト期間中にCPU20によって参照信号のレベルが制御されることで、AGCアンプ15の送信バースト期間中のゲインを決定するパワー制御信号がAPC部28からAGCアンプ15へ出力されるようになっている。
【0085】
APC部28は、図7に示すように、D/Aコンバータ21からの参照信号を非反転入力端子に受け、且つ、パワー検出部23aからの検出信号を反転入力端子に受けるオペアンプOP1と、オペアンプOP1の非反転端子に接続されたバイアス抵抗R1、ブリーダ抵抗R2および入力抵抗R3と、オペアンプOP1を反転増幅動作させるための負帰還抵抗R4および入力抵抗R5等から構成される。そして、このオペアンプOP1の出力がAGCアンプ15のゲイン制御信号(例えばパワー制御信号やランプ制御信号)として出力されるように構成されている。
【0086】
このような構成のAPC部28によれば、オペアンプOP1が、D/Aコンバータ21からの参照信号とパワー検出信号との差分をとることで、この参照信号とパワー制御信号とが所定比率でつり合うように、AGCアンプ15のゲイン制御電圧が増減される。このような作用によって、D/Aコンバータ21からの参照信号が上昇すればパワー検出信号が所定比率で上昇するようにAGCアンプ15のゲインが増加され、D/Aコンバータ2
1からの参照信号が下降すればパワー検出信号が所定比率で下降するようにAGCアンプ15のゲインが低減されるように動作する。
【0087】
上記のパワー検出部23aは、ファイナルアンプ17のゲイン制御と連動して、当該ゲインと反比例して検出感度が変化するような構成となっている。検出感度を変化させる構成は、例えば、図7に示すように、パワー検出回路232の前段にアッテネータ231を設け、ファイナルアンプ17のゲイン制御信号により、ファイナルアンプ17のゲインが上昇したときに、それに比例してアッテネータ231の減衰率が上がるように設定することで実現可能とされる。
【0088】
上記のような構成の第2実施形態の無線装置1Aによれば、図2に示したのと同様に、CPU20からファイナルアンプ17へゲイン制御信号の出力が行われるとともに、CPU20からAPC部28へ出力される参照信号のレベルが昇降されることで、APC部28からAGCアンプ15へ第1実施形態と同様のランプ制御信号やパワー制御信号が出力されてガードタイム期間中の送信パワーの立ち上げや立ち下げ、並びに、送信バースト期間中の送信パワーの制御が行われることとなる。
【0089】
また、送信パワーの制御は、ハードウェアの帰還動作によって高速に行われるため、何らかの変動によって出力パワーが増減した場合でも、APC部28の作用によって速やかにAGCアンプ15のゲインが調整されて、CPU20からの参照信号に応じた送信パワーが安定的に得られるようになっている。
【0090】
また、ファイナルアンプ17のゲインが段階的に切り換えられたときには、そのゲインの増減に反比例するようにパワー検出部23aの検出感度が変化するので、ファイナルアンプ17の段階的なゲインの切り換えに関係なく、CPU20は同一レベルで且つ同一波形の参照信号を出力することで、AGCアンプ15のゲイン制御を行うことが可能になっている。例えば、送信パワーの立ち上げと立ち下げ時には、同一レベルで且つ同一波形で変化する参照信号を出力することで、複数段階の送信パワーにおける各通信規格に従った送信パワーの立ち上がりと立ち下りを実現できる。また、ファイナルアンプ17のゲインが段階的に切り換えられた場合でも、アッテネータ231の減衰率がゲインの変化を打ち消すように変化するので、パワー検出回路232のダイナミックレンジが狭まったり、D/Aコンバータ21の分解能が低下したりするような影響が生じない。それにより、ノイズに強いパワー制御が可能となる。
【0091】
以上のように、第2実施形態の無線装置1Aによれば、第1実施形態の作用効果に加えて、AGCアンプ15のオートパワー制御をハードウェアにより実現しているので、送信パワーに変化を与える何らかの回路変動が生じても、送信パワーを速やかに安定させることができるという効果がある。
【0092】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、特定の通信規格に準拠した無線装置を例示したが、TDMA方式で無線信号を送信するものであればどのような通信規格のものも含まれる。また、ファイナルアンプ(第1アンプ)の出力パワーのレベルも、上記実施形態で示した値は一例に過ぎない。
【0093】
また、上記実施形態では、ガードタイムGs,Geの直前直後の期間に、ファイナルアンプ(第1アンプ)のゲインを上昇、下降させるゲイン制御方法を示したが、例えば、図4や図5に示したように、ガードタイムの始端や終端の一部期間にAGCアンプ(第2アンプ)のゲインが非送信時のレベルまで低下している期間(例えば図4の“0〜400μ秒”や、図5の“600〜1000μ秒”)がある場合には、この期間を含めた期間にファイナルアンプのゲインを上昇、下降させるようにしても良い。
【0094】
その他、送信信号の変調方式や具体的な回路構成など、実施の形態に示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1,1A 無線装置
11 TCXO
12 PLL回路
13 VCO
14 変調回路
15 AGCアンプ(第2アンプ)
17 ファイナルアンプ(第1アンプ)
20 CPU(制御手段)
21 D/Aコンバータ
22 A/Dコンバータ
23,23a パワー検出部
24 不揮発性メモリ
28 APC部
231 アッテネータ
232 パワー検出回路
OP1 オペアンプ
AN アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を所定のタイムスロットで送信するように構成された無線送信機において、
送信信号をアンテナに出力するゲイン可変型の第1アンプと、
この第1アンプより前段に設けられ送信信号を前記第1アンプへ送るゲイン可変型の第2アンプと、
前記第1アンプと前記第2アンプのゲイン制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記タイムスロットの開始の際は、先ず、前記第1アンプのゲインを上昇させ、その後、前記第2アンプのゲインを上昇させて、無線信号を送信させ、
前記タイムスロットの終了の際は、先ず、前記第2アンプのゲインを下降させ、その後、前記第1アンプのゲインを下降させて、無線信号の送信を停止させ、
前記タイムスロットの終端側のガードタイム中に、前記第2アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させ、
前記第2アンプのゲインを非送信時のレベルまで下降させた後の期間に、前記第1アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる構成であることを特徴とする無線送信機。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第2アンプのゲインを設定された傾斜パターンで変化させる構成であり、
この制御手段による前記第2アンプのゲイン制御によって、前記タイムスロットの始端或いは終端に設けられたガードタイムに無線信号の送信パワーが所定の傾斜パターンで立ち上げ或いは立ち下げられることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記第1アンプのゲインを予め設定された複数段階の何れかのゲインに切り換える構成であり、
この制御手段による前記第1アンプのゲイン制御によって無線信号の送信パワーが段階的に切り換え可能になっていることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項4】
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するパワー検出部を備え、
前記制御手段は、
前記パワー検出部の検出出力に基づいて該検出出力が所定の値になるように前記第2アンプの送信時のゲイン調整を行う構成であることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項5】
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するとともに検出感度が可変にされたパワー検出部と、
前記パワー検出部の検出信号と参照信号とがつり合うように前記第2アンプのゲインを自動的に調整する自動パワー制御部と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1アンプの送信時のゲインの変化に伴って当該ゲインの変化と逆行するように前記パワー検出部の検出感度を変化させるとともに、
前記オートパワー制御部の参照信号を変化させることで前記第2アンプのゲイン制御を行う構成であることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項1】
無線信号を所定のタイムスロットで送信するように構成された無線送信機において、
送信信号をアンテナに出力するゲイン可変型の第1アンプと、
この第1アンプより前段に設けられ送信信号を前記第1アンプへ送るゲイン可変型の第2アンプと、
前記第1アンプと前記第2アンプのゲイン制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記タイムスロットの開始の際は、先ず、前記第1アンプのゲインを上昇させ、その後、前記第2アンプのゲインを上昇させて、無線信号を送信させ、
前記タイムスロットの終了の際は、先ず、前記第2アンプのゲインを下降させ、その後、前記第1アンプのゲインを下降させて、無線信号の送信を停止させ、
前記タイムスロットの終端側のガードタイム中に、前記第2アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させ、
前記第2アンプのゲインを非送信時のレベルまで下降させた後の期間に、前記第1アンプのゲインを送信時のレベルから非送信時のレベルまで下降させる構成であることを特徴とする無線送信機。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第2アンプのゲインを設定された傾斜パターンで変化させる構成であり、
この制御手段による前記第2アンプのゲイン制御によって、前記タイムスロットの始端或いは終端に設けられたガードタイムに無線信号の送信パワーが所定の傾斜パターンで立ち上げ或いは立ち下げられることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記第1アンプのゲインを予め設定された複数段階の何れかのゲインに切り換える構成であり、
この制御手段による前記第1アンプのゲイン制御によって無線信号の送信パワーが段階的に切り換え可能になっていることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項4】
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するパワー検出部を備え、
前記制御手段は、
前記パワー検出部の検出出力に基づいて該検出出力が所定の値になるように前記第2アンプの送信時のゲイン調整を行う構成であることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【請求項5】
前記アンテナに出力される送信信号のパワーを検出するとともに検出感度が可変にされたパワー検出部と、
前記パワー検出部の検出信号と参照信号とがつり合うように前記第2アンプのゲインを自動的に調整する自動パワー制御部と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1アンプの送信時のゲインの変化に伴って当該ゲインの変化と逆行するように前記パワー検出部の検出感度を変化させるとともに、
前記オートパワー制御部の参照信号を変化させることで前記第2アンプのゲイン制御を行う構成であることを特徴とする請求項1記載の無線送信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−170132(P2012−170132A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100996(P2012−100996)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2008−264089(P2008−264089)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【分割の表示】特願2008−264089(P2008−264089)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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