説明

無線送受信装置

【課題】送信電力の出力レベルが低レベルでも精度が劣化しないように調整することができる無線送受信装置を提供する。
【解決手段】制御部120は、伝搬距離算出処理部110aから無線伝搬距離を入力すると、経路選択データテーブル130aから無線伝搬距離に対応する選択経路を選択し、選択経路を設定した選択制御信号150を固定ATT経路切替SW143と固定ATT経路切替SW147に出力する。固定ATT経路切替SW143と固定ATT経路切替SW147は、選択制御信号150に基づいて経路を切り替える。制御部120は、信号処理部110から無線局Bの受信電力を入力し、この受信電力を基準として検出した伝搬路の減衰量により送信信号の送信電力を調整するための送信電力の出力レベル設定値を利得制御信号151に設定し、VATT148に出力する。VATT148は、利得制御信号151に基づいて送信電力の出力レベルを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信装置に係り、特に無線伝搬距離に応じて可変アナログアッテネータにより利得を制御することで送信信号の送信電力を調整する無線送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線送受信装置において、無線電波距離が短いときには送信信号における送信電力の出力レベルを下げる必要があるので、可変アナログアッテネータ(以下、VATTという)を用いて利得を制御し送信電力の出力レベルを調整している。しかし、VATTを用いて利得を制御する場合に、送信電力が低レベルのときにVATTに対して設定されるべき利得に対しVATTに実際に設定される利得がずれて設定される。これは、線形性を保つことができるダイナミックレンジが狭いVATTを用いているので、VATTに対して設定される利得の精度が送信電力の出力レベルが低い領域で劣化するためである。
【0003】
従来の無線送受信装置における送信電力の利得制御について、図4を用いて説明する。従来の無線送受信装置に用いられているVATTの利得制御信号対利得の関係を図4(1)の利得特性グラフ40に示す。また、従来の無線送受信装置において、送信電力の出力レベル設定値が0dBm(高いレベル領域)にある場合と−30dBm(低レベル領域)にある場合について、送信電力とVATTの各特性を比較した例を図4(2)を参照して説明する。
【0004】
まず、図4(1)の利得特性グラフ40について説明する。理想の特性41は、VATTの利得制御信号とそれに対応する理想の利得との関係を示す。実際の特性42は、VATTの利得制御信号とそれに対応する実際の利得との関係を示す。VATT可変領域43は、VATTのダイナミックレンジの領域を示す。必要可変領域44は、VATT可変領域43に対して無線送受信装置が必要とするVATTの利得領域を示す。線形性を保てない利得領域45は、必要可変領域44において、VATTの利得制御特性が理想の特性41と実際の特性42とで異なっている領域を示す。線形性を保てない出力レベル領域46は、線形性を保てない利得領域45に対応する送信電力の出力レベル領域を示す。このような利得特性グラフ40において、送信電力の出力レベルが低くなるにつれて実際の特性42は、理想の特性41に比べて利得が大きく下降するため、必要可変領域44において線形性を保てない領域45が発生してしまう。このため、送信電力の出力レベル設定値に対応した理想の送信電力の出力レベルと実際の送信電力の出力レベルとの間に誤差が生じていた。
【0005】
次に、VATTの利得が「−2dB」で制御されることで送信電力の出力レベルが「0dBm」になるよう組まれた無線送受信装置の回路において、送信電力の出力レベル設定値を「0dBm(高レベル)」と「−30dBm(低レベル)」に設定したときの例について、図4(2)の送信電力とVATTの各特性表50を参照して説明する。送信電力とVATTの各特性表50の「送信電力の出力レベル設定値」が「0dBm(高レベル)」のときには「VATTの理想の利得」としては「−2dB」に設定されるものとする。しかし、「VATTに設定される実際の利得」は、「−2.2dB」となる。したがって「VATTの理想の利得」と「VATTの実際の利得」との差である「VATTの理想と実際の利得の差」は、「−0.2dB」となる。このような無線送受信装置において実際の送信電力の出力レベルである「実際の送信電力の出力レベル」は、「−0.2dBm」となる。この結果、「送信電力の出力レベル設定値」が「0dBm」のときには、「送信電力の出力レベル設定値」と「実際の送信電力の出力レベル」との差である「出力レベル設定値と実際の出力レベルの差」が「−0.2dBm」となり、比較的差が小さい。
【0006】
これに対し、送信電力とVATTの各特性表50の「送信電力の出力レベル設定値」が「−30dBm(低レベル)」のときには「VATTの理想の利得」は「−32dB」となる。しかし、「VATTの実際の利得」は、「−33.4dB」となるので、「VATTの理想と実際の利得の差」は、「−1.4dB」となる。このような無線送受信装置において「実際の送信電力の出力レベル」は、「−31.4dBm」となる。この結果、「送信電力の出力レベル設定値」が「−30dBm」のときには、「出力レベル設定値と実際の出力レベルの差」が「−1.4dBm」となり、差が大きくなる。
【0007】
つまり、「送信電力の出力レベル設定値」が「0dBm(高レベル)」のときには、「出力レベル設定値と実際の出力レベルの差」が「−0.2dBm」であるが、「0dBm」より送信電力の出力レベル設定値が低い「−30dBm(低レベル)」のときには「出力レベル設定値と実際の出力レベルの差」が「−1.4dBm」となり、送信電力の出力レベル設定値に対する実際の送信電力の出力レベルとの差が大きくなり精度が劣化する。
【0008】
このように線形性を保つことができるダイナミックレンジが狭いVATTを用いて利得を制御する場合には、送信電力の出力レベル設定値が低レベルになるほどVATTの精度が劣化するため、送信電力の出力レベル設定値に対する実際の送信電力の出力レベルとの差が大きくなっていた。このため、送信電力の出力レベル設定値が低レベルでも精度が劣化しないようにするためには、線形性を保つことができるダイナミックレンジが広いVATTを用いていた。
【0009】
なお、上記従来の可変アッテネータを用いる技術として下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−242231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1では、信号検出回路が備えるA/D変換器の入力信号レベルを可変アッテネータで減衰させてからA/D変換器の出力信号レベルを監視することで、入力信号レベルが変動した場合でも監視対象の信号を正確に検出することができる信号検出回路を提供している。しかし、線形性を保つことができるダイナミックレンジの範囲を調整することはできないので、送信電力の出力レベルが低い領域で精度が劣化するという問題が発生する。また、線形性を保つことができるダイナミックレンジが広い可変アッテネータは高額であるため、無線送受信装置に容易に用いることができなかった。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる無線送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線送受信装置は、無線局間の無線通信を行う無線送受信装置において、前記無線局間の無線伝搬距離を計測する無線伝搬距離計測手段と、複数の固定アッテネータと、前記複数の固定アッテネータから前記無線伝搬距離に対応した固定アッテネータを選択して設定する固定アッテネータ選択手段と、選択された前記固定アッテネータの後段に、電力の出力レベルに応じて可変アッテネータを制御する可変アッテネータ制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送信電力の出力レベル設定値が低レベルでも精度が劣化しないように送信信号の送信電力を調整することができる無線送受信装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る無線システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る経路選択データテーブルの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る利得特性グラフを示す。
【図4】従来の実施例に係るVATT利得制御特性グラフ、及び送信電力とVATTの各特性表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について図面を参照して説明する。本発明の実施形態は、減衰量の異なる複数の固定アナログアッテネータ(以下、固定ATTという)を並列に接続し、計測した無線局間の無線伝搬距離に応じて減衰量の異なる固定ATTをスイッチで選択して切り替え、更にこのスイッチの後段に設けられたVATTを用いて伝搬路の減衰量を制御する。これにより、本発明の無線送受信装置は、送信電力の出力レベル設定値が低レベルでも精度が劣化しないように送信電力の出力レベルを下げることが可能となる。
【0017】
図1に無線システム10の構成を示す。無線システム10は複数の無線局から構成されるが、本発明の実施形態においては対向する無線局Aと無線局Bで送受信する場合について説明する。無線局Aは、無線送受信装置100とアンテナ(以下、ANTという)200を備え、時分割無線通信方式(以下、TDD方式という)を用いてディジタル信号の送受信を行う無線局である。無線局Bは、無線送受信装置300とANT400を備え、TDD方式を用いてディジタル信号の送受信を行う無線局である。また、無線局を設置したときに、予め決められた特定フレームが設定されたディジタル信号を無線局Aから無線局Bに送信し、更に無線局Bは受信した特定フレームのディジタル信号を次のTDD送信タイミングで無線局Aに送信する。このように無線局Aから無線局Bに送信した特定フレームを、再び無線局Aが無線局Bから受信することで、無線局Aは特定フレームの送信による遅延時間から無線局Aと無線局Bの間の無線伝搬距離を算出する。そして、無線局Aは、算出した無線電波距離に応じて送信電力の出力レベルを調整する。具体的には後述のように固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、固定ATT(3)146のいずれかを選択する。更に、無線局Aは、無線局Bから通知(送信)される無線局Bの受信信号の受信電力を基準として送信信号の送信電力を調整する。具体的には後述のようにVATT148を調整する。
【0018】
また、無線局Bにおいても同様に、無線局Bから無線局Aに送信した特定フレームを、再び無線局Bが無線局Aから受信することで、無線局Bは特定フレームの送信による遅延時間から無線局Bと無線局Aの間の無線伝搬距離を算出する。そして、無線局Bは、算出した無線電波距離に応じて送信電力の出力レベルを調整する。更に、無線局Bは、無線局Aから通知(送信)される無線局Aの受信信号の受信電力を基準として送信信号の送信電力を調整する。
【0019】
まず、本発明の実施形態における図1に示す無線局Aの無線送受信装置100の構成について説明する。なお、無線局Bの無線送受信装置300の構成は、無線局Aの無線送受信装置100の構成と同様であるので、無線送受信装置300の構成については説明を省略する。無線送受信装置100は、信号処理部110、制御部120、ROM130、及び無線部(以下、RF部という)140から構成されている。また、信号処理部110には、伝搬距離算出処理部110aが設けられ、ROM130には経路選択データテーブル130aが保存されている。また、RF部140は、送受信切替SW141、受信信号ダウンコンバート用ミキサ142、固定ATT経路切替SW143、固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、固定ATT(3)146、固定ATT経路切替SW147、VATT148、及び送信信号アップコンバート用ミキサ149から構成されている。RF部140の送受信切替SW141には、ANT200が設置されている。
【0020】
次に、不揮発性メモリであるROM130に保存されている図2に示す経路選択データテーブル130aの構成について説明する。経路選択データテーブル130aは、「無線伝搬距離範囲」と「選択経路」の項目から構成されている。「無線伝搬距離範囲」は、無線伝搬距離に応じた範囲が設定されている項目である。計測した無線伝搬距離「dkm」に応じ「d≦0.5km」、「0.5km<d≦2km」、及び「2km<d≦10km」の範囲が選択される。「選択経路」は、「無線伝搬距離範囲」の項目に対応して選択される経路である。「選択経路」には、経路1として「固定ATT(1):−40dB」、経路2として「固定ATT(2):−20dB」、及び経路3として「固定ATT(3):0dB」の経路が設定されている。すなわち、各経路には無線伝搬距離に応じて固定ATT装置(固定ATT(1)、固定ATT(2)、固定ATT(3))とその利得(−40dB、−20dB、0dB)が設定されている。例えば、無線伝搬距離「dkm」が「1.5km」であれば、経路選択データテーブル130aにおいて「無線伝搬距離範囲」の「0.5km<d≦2km」の範囲となるので、「選択経路」として「0.5km<d≦2km」に対応する経路2の「固定ATT(2):−20dB」が選択される。つまり、固定ATT(2)の経路を通ることで−20dBの利得制御が行われる。
【0021】
次に、ANT200と無線送受信装置100を構成する各部の処理について図1をもとにして説明する。ANT200は、送受信切替SW141から入力した無線局Bに送信する高周波信号を電波に変換して空間に放射し、また、無線局Bから送信された空間の電波を受信し高周波信号に変換して送受信切替SW141に出力する。送受信切替SW141は、送信側と受信側を時分割で切り替えを行うスイッチである。送受信切替SW141が送信側に切り替えられているときには、送信信号アップコンバート用ミキサ149から高周波信号を入力しANT200に出力する。送受信切替SW141が受信側に切り替えられているときには、ANT200から出力される高周波信号を入力し、受信信号ダウンコンバート用ミキサ142に出力する。受信信号ダウンコンバート用ミキサ142は、送受信切替SW141から高周波信号を入力すると低周波信号に変換し、変換した低周波信号の受信信号を信号処理部110に出力する。
【0022】
信号処理部110は、受信信号を入力するとこの受信信号に予め決められた特定フレームが含まれているかを判定する。信号処理部110が受信信号に特定フレームが含まれていると判定したときには、信号処理部110は伝搬距離算出処理部110aに特定フレーム受信の通知を出力する。また、信号処理部110が受信信号に特定フレームが含まれていないと判定したときには、受信信号の処理を行い制御部120に出力する。更に、信号処理部110は、無線局Bからの受信電力を通知する受信信号を入力すると、無線局Bからの受信電力の通知を制御部120に出力する。伝搬距離算出処理部110aは、無線局Bが設置されたときに特定フレームを設定した送信信号の送信要求を制御部120に行う。また、伝搬距離算出処理部110aは、信号処理部110からの特定フレーム受信の通知により、特定フレームの送信から受信までの遅延時間を計測することで無線伝搬距離を算出し、算出した無線伝搬距離を制御部120に出力する。
【0023】
制御部120は、無線送受信装置100全体を制御し、送信要求が行なわれた送信データを送信信号として固定ATT経路切替SW143の切替端子aに出力する。また、制御部120は、伝搬距離算出処理部110aから無線伝搬距離を入力すると、ROM130から経路選択データテーブル130aを読み出し、無線伝搬距離に対応する選択経路を決定する。そして、制御部120は、決定した選択経路を選択制御信号150に設定し、選択制御信号150を固定ATT経路切替SW143と固定ATT経路切替SW147に出力する。例えば、無線伝搬距離「dkm」が「3km」であれば、経路選択データテーブル130aの「無線伝搬距離範囲」の「2km<d≦10km」の範囲となるので、「選択経路」として「固定ATT(3):0dB」が読み出され、選択制御信号150には「固定ATT(3):0dB」の選択経路が設定される。更に、制御部120は、信号処理部110から入力する無線局Bからの受信電力の通知により受信電力を基準として検出された伝搬路の減衰量に基づいて送信信号の送信電力を調整するための利得を決定する。そして制御部120は、決定した利得を利得制御信号151に設定し、利得制御信号151をVATT148に出力する。このように、無線局Bの受信信号の受信電力を基準として無線局Aの送信信号の送信電力を調整することで、無線局Aと無線局Bの伝搬路の流動的な減衰量を制御する。
【0024】
固定ATT経路切替SW143は、制御部120から選択制御信号150を入力すると選択制御信号150に設定された選択経路に基づいてスイッチを切り替えることで、制御部120から出力される送信信号を選択された固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、または固定ATT(3)146のいずれかの経路に出力する。固定ATT(1)144は、送信信号の送信電力を−40dBの利得で制御する固定アナログアッテネータである。固定ATT(2)145は、送信信号の送信電力を−20dBの利得で制御する固定アナログアッテネータである。固定ATT(3)146は、送信信号の送信電力を0dBの利得で制御する固定アナログアッテネータである。固定ATT経路切替SW147は、制御部120から選択制御信号150を入力すると選択制御信号150に設定された選択経路に基づいてスイッチを切り替えることで、送信信号を選択された固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、または固定ATT(3)146のいずれかの経路から入力し、VATT148に出力する。例えば、選択制御信号150に「固定ATT(2):−20dB」の経路が設定されたときには、固定ATT経路切替SW143と固定ATT経路切替SW147は、固定ATT(2)145の経路に切り替わるため、制御部120から出力される送信信号の送信電力は−20dBの利得で制御される。VATT148は、可変アナログアッテネータであり、制御部120から利得制御信号151を入力すると、固定ATT経路切替SW147から入力した送信信号の送信電力を、利得制御信号151に設定されている利得で制御し、送信信号アップコンバート用ミキサ149に出力する。送信信号アップコンバート用ミキサ149は、送信信号を入力すると高周波信号に変換し、送受信切替SW141に出力する。高周波信号は、送受信切替SW141が送信側に切り替えられているときに、ANT200から出力される。
【0025】
本発明の無線送受信装置100における送信電力の利得制御について、図3を用いて説明する。本発明の無線送受信装置100におけるVATTの利得制御信号とそれに対応する利得との関係を図3の利得特性グラフ20に示す。
【0026】
まず、図3の利得特性グラフ20について説明する。経路1の特性21、経路2の特性22、及び経路3の特性23は、利得制御信号とそれに対応するそれぞれの経路の利得の関係を示す。必要可変領域24は、無線送受信装置100が必要とする利得領域を示す。VATT可変領域25は、VATT148のダイナミックレンジの領域における利得制御信号と利得の線形性が保てる可変領域を示す。経路1の特性21、経路2の特性22、及び経路3の特性23は、可変領域が従来に比較し狭くなっており、全ての可変領域において線形性を保つことができるようになっている。VATTの特性26は、形成されたそれぞれの経路1、経路2、及び経路3においてVATT148が示す利得制御信号と利得の関係である。
【0027】
固定ATT量(−40dB)27は、経路1が形成されたときの固定ATT(1)144の利得を示す。したがって経路1の利得特性はVATT148と固定ATT(1)144の和である経路1の特性21となる。この経路1の特性21は線形性が保たれている。すなわち、無線送受信装置100では図1の経路1において、固定ATT(1)144により送信電力を−40dBの利得で制御し、次にVATT148により可変利得の制御を行っているので、VATTの特性26を経路1の特性21に適用することができる。
同様に、図1の経路2において、固定ATT(2)145により送信電力を−20dBの利得で制御し、次にVATT148により可変利得の制御を行っているので、VATTの特性26を経路2の特性22に適用することができる。
また、図1の経路3においては、固定ATT(3)146では送信電力を0dBの利得で制御し、次にVATT148により可変利得の制御を行っているので、VATTの特性26と経路3の特性23は一致する。
このような利得特性グラフ20において、VATT可変領域25のVATTの特性26では線形性を保てない領域は発生しない。したがって経路1の特性21、経路2の特性22、及び経路3の特性23が連続した特性も必要可変領域24全体において線形性を保ったものとなる。
【0028】
本発明の無線送受信装置100によれば、線形性を保つことができるダイナミックレンジが狭いVATTの場合でも、送信電力の出力レベルでなく無線伝搬距離に応じた固定利得の固定ATTを選択して用い、更に可変利得を制御するVATTを用いて送信電力の出力レベルを調整するので、送信電力の出力レベル設定値が低レベルでも精度が劣化しない。つまり、流動的に変化する可変利得を送信電力の出力レベルを監視することで制御するので、容易に利得の制御を行うことができる。また、無線局間の伝搬路において、天候や気温による減衰量の流動的な変化を無線局間の対向局の受信電力を基準として検出するので、天候や気温に依存しない送信電力の出力レベル調整を行うことができる。
【0029】
なお、実施形態によれば、無線局Bから通知される無線局Bの受信信号の受信電力を基準として検出される伝搬路の減衰量に基づいて、無線局Aが送信信号の送信電力を調整する方法について説明した。このように無線局Bが受信信号の受信電力を監視し、また無線局Bが無線局Aに受信電力を通知するようにすることで、無線局Aは送信信号の送信電力を容易に調整することができる。しかし、この方法に限らず、例えば無線局Aが送信信号を出力する直前に分配器により送信信号を分配して検波することで検出される伝搬路の減衰量に基づいて、無線局Aが送信信号の送信電力を調整することも可能である。
【0030】
また、実施形態によれば、図1に示すように無線システム10において、3段階の固定の利得を制御する固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、及び固定ATT(3)146を接続したが、この3段階に限らず複数段階の固定ATTを接続することも可能である。このように、複数段階の固定ATTを接続することで、利得制御範囲を拡大することができる。
【0031】
また、実施形態によれば、無線局Bに送信するデジタル信号を構成するフレームの遅延時間を計測することで無線伝搬距離を算出する無線伝搬距離計測機能を持つ無線送受信装置について説明した。このような無線伝搬距離計測機能を持つことで、無線伝搬距離を容易に算出することができる。しかし、予め無線伝搬距離が計測されている場合には、無線伝搬距離計測機能で算出する無線伝搬距離の代わりに、予め計測されている無線伝搬距離の情報を使用することも可能である。
【0032】
また、実施形態によれば、固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、及び固定ATT(3)146を並列に接続して各々が固定の利得を制御し、VATT148で可変の利得を制御するようにした。このような構成では、線形性を保つことができるダイナミックレンジが狭いVATT148が共通に1つあればよいので安価となる。
【0033】
変形例として次のような形態も考えられる。
VATT148を除いて固定ATT(1)144、固定ATT(2)145、及び固定ATT(3)146をVATTとし、この複数のVATTが可変の利得を制御するようにすることも可能である。この場合、複数設けられたVATTを選択制御信号150で選択すると共に、選択されたVATTの利得を利得制御信号151で設定するようにすればよい。このような構成ではVATTの個数が複数必要となるが、線形性を保つことができるダイナミックレンジが狭いVATTを用いるので安価となる。
【0034】
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0035】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1) 本発明の無線送受信装置は、無線局間の無線通信を行う無線送受信装置において、複数の固定アッテネータと、前記複数の固定アッテネータから前記無線局間の無線伝搬距離に対応した固定アッテネータを選択して設定する固定アッテネータ選択手段と、選択された前記固定アッテネータの後段に、電力の出力レベルに応じて可変アッテネータを制御する可変アッテネータ制御手段と、を備えたことを特徴としている。
(2) (1)の本発明の無線送受信装置は、前記無線伝搬距離を計測する無線伝搬距離計測手段を備えたことを特徴としている。
(3) (2)の本発明の無線送受信装置は、前記無線伝搬距離計測手段が、ディジタル信号を構成する特別なフレームを無線局間で送受信するときの遅延時間から無線伝搬距離を計測することを特徴としている。
(4) (1)から(3)のいずれかの本発明の無線送受信装置は、前記可変アッテネータが、前記無線局間の伝搬路の減衰量に対応するアッテネータであることを特徴としている。
(5) (4)の本発明の無線送受信装置は、対向する無線局から通知される前記対向無線局の受信信号の受信電力を基準として前記減衰量を検出する減衰量検出手段を備えることを特徴としている。
(6) (4)の本発明の無線送受信装置は、送信信号を出力する直前に分配器により送信信号を分配して検波することで前記減衰量を検出する減衰量検出手段を備えることを特徴としている。
(7) 本発明の無線送受信装置の送信電力制御方法は、無線局間の無線通信を行う無線送受信装置の送信電力制御方法において、複数の固定アッテネータと、前記複数の固定アッテネータから前記無線局間の無線伝搬距離に対応した固定アッテネータを選択して設定する固定アッテネータ選択工程と、選択された前記固定アッテネータの後段に、電力の出力レベルに応じて可変アッテネータを制御する可変アッテネータ制御工程と、を備えたことを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、無線送受信装置に好適であるが、伝搬距離に連動して送信電力の制御を行う機器一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
20・・・・・利得特性グラフ
21・・・・・経路1の特性
22・・・・・経路2の特性
23・・・・・経路3の特性
24・・・・・必要可変領域
25・・・・・VATT可変領域
26・・・・・VATTの特性
27・・・・・固定ATT量(−40dB)
28・・・・・固定ATT量(−20dB)
40・・・・・利得特性グラフ
41・・・・・理想の特性
42・・・・・実際の特性
43・・・・・VATT可変領域
44・・・・・必要可変領域
45・・・・・線形性を保てない利得領域
46・・・・・線形性を保てない出力レベル領域
50・・・・・送信電力とVATTの各特性表
100・・・・・無線送受信装置
110・・・・・信号処理部
110a・・・・伝搬距離算出処理部
120・・・・・制御部
130・・・・・ROM
130a・・・・経路選択データテーブル
140・・・・・RF部(無線部)
141・・・・・送受信切替SW
142・・・・・受信信号ダウンコンバート用ミキサ
143・・・・・固定ATT経路切替SW
144・・・・・固定ATT(1)
145・・・・・固定ATT(2)
146・・・・・固定ATT(3)
147・・・・・固定ATT経路切替SW
148・・・・・VATT
149・・・・・送信信号アップコンバート用ミキサ
150・・・・・選択制御信号
151・・・・・利得制御信号
200・・・・・ANT(アンテナ)
300・・・・・無線送受信装置
400・・・・・ANT(アンテナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線局間の無線通信を行う無線送受信装置において、
前記無線局間の無線伝搬距離を計測する無線伝搬距離計測手段と、
複数の固定アッテネータと、前記複数の固定アッテネータから前記無線伝搬距離に対応した固定アッテネータを選択して設定する固定アッテネータ選択手段と、
選択された前記固定アッテネータの後段に、電力の出力レベルに応じて可変アッテネータを制御する可変アッテネータ制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−165347(P2012−165347A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26372(P2011−26372)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】