説明

無線通信システム、誤差時間算出方法、基地局間時刻同期取得方法

【課題】基地局と補助基地局からなる無線通信システムであって、基地局のみがGPS受信機を搭載している場合でも、基地局間時刻同期を取ることが可能な無線通信システムや、当該システムにおける誤差時間算出方法、基地局間時刻同期取得方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の無線通信システムは、GPS信号5を受信する基地局1と、基地局1と専用回線3で接続されGPS信号5を受信しない補助基地局2とを備えて構成される無線通信システムである。基地局1は補助基地局2と時刻誤差信号を送受信し、時刻誤差信号の基地局1における送信時刻と、補助基地局2における受信時刻と、補助基地局2から基地局1への送信予定時刻と、基地局1における受信時刻とに基づいて補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Global Positioning System)受信機が搭載された基地局とGPS受信機が搭載されていない補助基地局とを備えて構成され、基地局間が専用回線で接続されて複局同時送信が可能な無線通信システムにおける、基地局間時刻同期取得に関する。
【背景技術】
【0002】
複局同時送信を実現する無線通信システムでは基地局間時刻同期を取る必要がある。従来、GPS受信機からの時刻情報は基地局間時刻同期に利用されておらず、外部からの同期用信号が供給されることにより、基地局間時刻同期を実現していた。
【0003】
しかし、このようなシステムでは、基地局外部からの同期用信号の供給がない場合に各基地局の時刻同期が取れない。
【0004】
特許文献1では、基地局と補助基地局の全てにGPS受信機が搭載されており、各基地局がGPS信号の時刻情報を利用して時刻同期が取れていることを前提として、無線エリア内への各基地局からの送信タイミングを算出する方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3376444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、基地局と補助基地局の全てにGPS受信機が搭載されている場合は、GPS信号の時刻情報を利用して各基地局間の時刻同期を取ることが出来るが、基地局のみにGPS受信機が搭載されている場合は各基地局間の時刻同期を取ることが出来ず、複局同時送信を行う事が出来ない。
【0007】
そこで、本発明は上述の問題点に鑑み、基地局と補助基地局からなる無線通信システムであって、基地局のみがGPS受信機を搭載している場合でも、基地局間時刻同期を取ることが可能な無線通信システムや、当該システムにおける誤差時間算出方法、基地局間時刻同期取得方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信システムは、GPS信号を受信する基地局と、基地局と専用回線で接続されGPS信号を受信しない補助基地局とを備えて構成され、基地局は補助基地局と時刻誤差信号を送受信し、時刻誤差信号の基地局における送信時刻と、補助基地局における受信時刻と、補助基地局から基地局への送信予定時刻と、基地局における受信時刻とに基づいて補助基地局の基地局に対する誤差時間を測定する。
【0009】
また、本発明の上記無線通信システムにおける誤差時間算出方法は、(a)基地局から補助基地局に送信される時刻誤差信号の送信時刻を基地局において記憶する工程と、(b)補助基地局における時刻誤差信号の受信時刻と、補助基地局から基地局への時刻誤差信号の送信予定時刻とを時刻誤差信号に記載する工程と、(c)基地局における受信時刻を基地局において記憶する工程と、(d)基地局の送信時刻、受信時刻と、補助基地局の受信時刻、送信予定時刻とに基づいて補助基地局の基地局に対する誤差時間を基地局において測定する工程と、を備える。
【0010】
また、本発明の基地局間時刻同期取得方法では、上記誤差時間算出方法によって測定した補助基地局の基地局に対する誤差時間を用いて、補助基地局の時刻を基地局の時刻に同期させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無線通信システムは、GPS信号を受信する基地局と、基地局と専用回線で接続されGPS信号を受信しない補助基地局とを備えて構成され、基地局は補助基地局と時刻誤差信号を送受信し、時刻誤差信号の基地局における送信時刻と、補助基地局における受信時刻と、補助基地局から基地局への送信予定時刻と、基地局における受信時刻とに基づいて補助基地局の基地局に対する誤差時間を測定する。これにより、補助基地局ではGPS信号を受信できなくとも、基地局との時刻誤差信号の送受信によって基地局に対する誤差時間を知ることが出来る。
【0012】
また、本発明の上記無線通信システムにおける誤差時間算出方法は、基地局から補助基地局に送信される時刻誤差信号の送信時刻を基地局において記憶する工程と、補助基地局における時刻誤差信号の受信時刻と、補助基地局から基地局への時刻誤差信号の送信予定時刻とを時刻誤差信号に記載する工程と、基地局における受信時刻を基地局において記憶する工程と、基地局の送信時刻、受信時刻と、補助基地局の受信時刻、送信予定時刻とに基づいて補助基地局の基地局に対する誤差時間を基地局において測定する工程と、を備える。これにより、補助基地局ではGPS信号を受信できなくても、基地局との時刻誤差時間の送受信を経て、基地局が補助基地局の誤差時間を測定することが出来る。
【0013】
また、本発明の基地局間時刻同期取得方法では、上記誤差時間算出方法によって測定した補助基地局の基地局に対する誤差時間を用いて、補助基地局の時刻を基地局の時刻に同期する。これにより、補助基地局ではGPS信号を受信できなくても、基地局間時刻同期を取ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る無線通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の基地局間時刻同期方法における基地局と補助基地局の動作を示したフローチャートである。
【図3】補助基地局の補正時刻を算出する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1の複局同時通信を実現する無線通信システムの全体を示す模式図である。実施の形態1の無線通信システムは、基地局1と、基地局1と専用回線3で接続される補助基地局2と、基地局1のGPSアンテナ6にGPS信号5を送信するGPS衛星4と、を備える。基地局1の通信エリア9内で携帯型無線機11は基地局1から無線信号13を受信可能であり、補助基地局2の通信エリア10内で携帯型無線機12は補助基地局2から無線信号14を受信可能である。基地局1から補助基地局2への信号を下り信号7、補助基地局2から基地局1への信号を上り信号8とする。補助基地局2はGPS信号を受信することが出来ない。
【0016】
図1では1台の補助基地局を示したが、補助基地局は基地局1に対して複数あっても良い。
【0017】
<基地局間時刻同期方法>
GPS信号を利用した基地局1−補助基地局2間での基地局間時刻同期方法について図2を用いて説明する。図2は、複局同時通信を開始する前に行う時刻同期を取る過程における、基地局1と補助基地局2の動作を示したフローチャートである。
【0018】
基地局1はGPS信号5を受信すると(ステップS1)、GPS信号5のGPS時刻情報を基に基地局1内部の時刻を補正する(ステップS2)。基地局1は時刻誤差信号を生成し(ステップS3)、専用回線3を介して補助基地局2に時刻誤差信号を送信する(ステップS4)。送信時刻は基地局1において保存しておく(ステップS5)。
【0019】
専用回線3を介して時刻誤差信号を基地局1から受信した補助基地局2は、時刻誤差信号の受信時刻と基地局1への時刻誤差信号送信予定時刻を時刻誤差信号に追記する(ステップS6)。このとき、時刻誤差信号の受信時刻には補助基地局2内部の時刻誤差と専用回線3による伝播遅延誤差が含まれており、時刻誤差信号送信予定時刻には補助基地局2内部の時刻誤差が含まれている。補助基地局2は当該追記を行った時刻誤差信号を専用回線3を介して基地局1に返信する(ステップS7)。
【0020】
時刻誤差信号を補助基地局2から受信した基地局1は、その受信時刻を保存する(ステップS8)。基地局1は、時刻誤差信号の基地局1における送信時刻と受信時刻、時刻誤差信号に追記された補助基地局2における受信時刻と送信予定時刻を基に、補助基地局2における時刻補正値、すなわち補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を算出する(ステップS9)。時刻補正値の算出方法については後に詳述する。基地局1は、算出した補助基地局2における時刻補正値より時刻補正値信号を生成し(ステップS10)、専用回線3を介して補助基地局2に送信する(ステップS11)。
【0021】
補助基地局2は時刻補正値信号を基地局1から受信し、自装置の時刻を補正する(ステップS12)。時刻補正が完了すると、補助基地局2は専用回線3を介して基地局1に対し時刻補正完了通知を送信する(ステップS13)。
【0022】
このように、本実施の形態の無線通信システムは、GPS信号5を受信する基地局1と、基地局1と専用回線3で接続されGPS信号5を受信しない補助基地局2とを備えて構成される無線通信システムである。基地局1は補助基地局2と時刻誤差信号を送受信し、時刻誤差信号の基地局1における送信時刻と、補助基地局2における受信時刻と、補助基地局2から基地局1への送信予定時刻と、基地局1における受信時刻とに基づいて補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を測定する。そして、補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を用いて、補助基地局2の時刻を基地局1の時刻に同期させる。これにより、基地局1のみがGPS信号5を受信できる環境であっても基地局間同期を取ることが出来る。
【0023】
また、本実施の形態の誤差時間算出方法は、上記無線通信システムにおける誤差時間算出方法であり、基地局1から補助基地局2に送信される時刻誤差信号の送信時刻を基地局1において記憶する工程と、補助基地局2における時刻誤差信号の受信時刻と、補助基地局2から基地局1への誤差信号の送信予定時刻とを時刻誤差信号に記載する工程と、基地局における受信時刻を基地局1において記憶する工程と、基地局1の送信時刻、受信時刻と、補助基地局2の受信時刻、送信予定時刻とに基づいて補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を基地局1において測定する工程と、を備える。これにより、基地局1のみがGPS信号を受信できる環境であっても補助基地局2の基地局1に対する時刻誤差を知ることが出来る。
【0024】
また、本実施の形態の基地局間時刻同期取得方法は、上記の誤差時間算出方法によって測定した補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を用いて、補助基地局2の時刻を基地局1の時刻に同期させる。これにより、基地局1のみがGPS信号を受信できる環境であっても基地局間同期を取ることが出来る。
【0025】
<時刻補正値算出方法>
補助基地局2の時刻補正値の算出方法を、図3を用いて説明する。基地局1から補助基地局2への下り信号7における下り遅延時間をDL_Delay、補助基地局2から基地局1への上り信号8における上り遅延時間をUL_Delayとし、DL_Delay=UL_Delayと仮定する。基地局1が算出したい値は、補助基地局2の時刻補正値=誤差(Err_semi)である。基地局1において補助基地局2より時刻誤差信号を受信した時点で既知となる値は、基地局1での送信時刻TX_base、基地局1での受信時刻RX_base、補助基地局2での受信時刻RX_semi_meas、補助基地局2での送信予定時刻TX_semi_measの4つである。
【0026】
補助基地局2での受信時刻RX_baseと送信予定時刻TX_semi_measには誤差が生じており、基地局1の時刻と同期した時刻をRX_semiとすると、受信時刻RX_baseと送信予定時刻TX_semi_measは以下のように表される。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
又、補助基地局2からの情報を基に基地局1で算出する、専用回線3における誤差を含んだ下り回線遅延時間DL_Delay_measは以下のように表される。
【0030】
【数3】

【0031】
又、補助基地局2からの情報を基に基地局1にて算出する専用回線3における誤差を含んだ上り回線遅延時間UL_Delay_measは以下のように表される。
【0032】
【数4】

【0033】
DL_Delay=UL_Delayという仮定より、以下の式が求められる。
【0034】
【数5】

【0035】
よって、補助基地局2での誤差Err_semiは以下のように推測できる。
【0036】
【数6】

【0037】
<効果>
本実施の形態の無線通信システムは、既に述べた通り以下の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の無線通信システムは、GPS信号5を受信する基地局1と、基地局1と専用回線3で接続されGPS信号5を受信しない補助基地局2とを備えて構成される無線通信システムであり、基地局1は補助基地局2と時刻誤差信号を送受信し、時刻誤差信号の基地局1における送信時刻と、補助基地局2における受信時刻と、補助基地局2から基地局1への送信予定時刻と、基地局1における受信時刻とに基づいて補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を測定する。これにより、これにより、基地局1のみがGPS信号を受信できる環境であっても補助基地局2の基地局1に対する時刻誤差を知ることが出来る。
【0038】
そして、補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を用いて、補助基地局2の時刻を基地局1の時刻に同期させる。これにより、基地局1のみがGPS信号5を受信できる環境であっても基地局間同期を取ることが出来る。
【0039】
また、本実施の形態の誤差時間算出方法は、上記無線通信システムにおける誤差時間算出方法であり、基地局1から補助基地局2に送信される時刻誤差信号の送信時刻を基地局1において記憶する工程と、補助基地局2における時刻誤差信号の受信時刻と、補助基地局2から基地局1への誤差信号の送信予定時刻とを時刻誤差信号に記載する工程と、基地局における受信時刻を基地局1において記憶する工程と、基地局1の送信時刻、受信時刻と、補助基地局2の受信時刻、送信予定時刻とに基づいて補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を基地局1において測定する工程と、を備える。これにより、基地局1のみがGPS信号を受信できる環境であっても補助基地局2の基地局1に対する時刻誤差を知ることが出来る。
【0040】
また、本実施の形態の基地局間時刻同期取得方法は、上記の誤差時間算出方法によって測定した補助基地局2の基地局1に対する誤差時間を用いて、補助基地局2の時刻を基地局1の時刻に同期させる。これにより、基地局1のみがGPS信号を受信できる環境であっても基地局間同期を取ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、複局同時通信を実現する無線通信システムにおいて基地局間同期を取るために信号供給がない場合に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 基地局、2 補助基地局、3 専用回線、4 GPS衛星、5 GPS信号、6 GPSアンテナ、9 基地局の通信エリア、10 補助基地局の通信エリア、11,12 携帯型無線機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS信号を受信する基地局と、前記基地局と専用回線で接続されGPS信号を受信しない補助基地局とを備えて構成される無線通信システムであって、
前記基地局は前記補助基地局と時刻誤差信号を送受信し、
前記時刻誤差信号の前記基地局における送信時刻と、前記補助基地局における受信時刻と、前記補助基地局から前記基地局への送信予定時刻と、前記基地局における受信時刻とに基づいて前記補助基地局の前記基地局に対する誤差時間を測定することを特徴とする、無線通信システム。
【請求項2】
前記補助基地局の前記基地局に対する誤差時間を用いて、前記補助基地局の時刻を前記基地局の時刻に同期させることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
GPS信号を受信する基地局と、前記基地局と専用回線で接続されGPS信号を受信しない補助基地局とを備えて構成される無線通信システムにおける誤差時間算出方法であって、
(a)前記基地局から前記補助基地局に送信される時刻誤差信号の送信時刻を前記基地局において記憶する工程と、
(b)前記補助基地局における前記時刻誤差信号の受信時刻と、前記補助基地局から前記基地局への前記時刻誤差信号の送信予定時刻とを前記時刻誤差信号に記載する工程と、
(c)前記基地局における受信時刻を前記基地局において記憶する工程と、
(d)前記基地局の前記送信時刻、前記受信時刻と、前記補助基地局の前記受信時刻、前記送信予定時刻とに基づいて前記補助基地局の前記基地局に対する誤差時間を前記基地局において測定する工程と、を備える誤差時間算出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の誤差時間算出方法によって測定した前記補助基地局の前記基地局に対する誤差時間を用いて、前記補助基地局の時刻を前記基地局の時刻に同期させることを特徴とする、基地局間時刻同期取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−109165(P2011−109165A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258874(P2009−258874)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】