説明

無線通信システムの基地局装置及びタイミング調整方法

【課題】 本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置からなる無線通信システムおいて、複局同時送受信を可能とするため、各基地局装置間の上りおよび下りフレームの伝送タイミングを自動制御する。
【解決手段】 基地局装置3は、GPS受信手段11、無線送信タイミング算出手段12、無線送信遅延手段13、無線送受信手段14を備え、無線送信タイミング算出手段12は、本部局装置1から指定されたGPS時刻と、同じく指定された番号の下りフレームが自局に到達するまでの遅延時間を測定し、最遠端の基地局装置の遅延時間に相当する最大遅延時間から自局の遅延時間を減じた時間を無線送信遅延手段13に設定することにより、複局同時送信を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一つの本部局装置にツリー状に接続された複数の基地局装置を有する無線通信システムにおいて、複局同時送受信を可能とする基地局装置及びタイミング調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一つの本部局装置にツリー状にリンク接続された複数の基地局装置から同時刻に無線信号を送信する複局同時送信を可能とする場合、GPS(Global Positioning System )の時刻に同期させて送信する方法がある(例えば、特開平8−307932号公報)。
【0003】また、一つの移動局装置から発信された電波を複数の基地局装置で受信する場合、リンク間の上り伝送遅延を制御することによって、複数の基地局装置によるダイバーシチ受信(サイトダイバーシチ)を可能とすることができる。
【0004】なお、ここでいうツリー状とは、本部局装置を最上位とする有階位網であり、ある基地局装置に着目した場合、その上位局は1つであるのに対し、下位局はn(1≦n)局あり、下位方路にのみ分岐が可能な網をいう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のように、GPS時刻に従属同期して無線送信する場合、GPS時刻と同じ1秒周期のパルス信号を基地局装置内で発生させる必要があり、相応のGPS観測時間や同期維持手段が必要であった。
【0006】また、複局同時受信によるサイトダイバーシチを行うにあたり、スター型の上り回線のタイミングの補正方法をそのままツリー状でトーナメント方式を行うシステムに適用すると、余計な処理時間を生じたり、基地局装置の増設やリンク回線の経路変更の際に、基地局装置の配置や遅延時間が大きく変化した場合、多大な設定コストを生じるという課題があった。
【0007】また、基地局装置をツリー状に接続するシステムでは、下りは分配するだけでよいが、上りは方路がトーナメント式に絞られるため、もし移動局装置から送信された上りフレームが複数存在した場合、多重化できなければどの方路から到達した上りフレームを上位局に中継するかを選択する必要があるが、このとき少しでも先に到達した上りフレームを選択して中継する方法では、本部局装置に近い基地局装置で受信した上りフレームの方が中継されやすくなるため、下位局でより良好な状態で受信された上りフレームを本部局へ中継できなくなるという課題があった。
【0008】本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、複局同時送受信を実現するうえで、基地局装置間のタイミング調整を自動化し、定期的なタイミング補正や基地局装置の増設を容易にすると共に、良好な回線品質を確立することができる無線通信システムの基地局装置及びタイミング調整方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の無線通信システムの基地局装置は、本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、本部局装置と基地局装置は、無線通信システム全てに対し同時刻を認識できる信号を受信する基準信号受信手段と、無線送信タイミング算出手段と、無線送信遅延手段と、無線送信手段とを備え、無線送信タイミング算出手段は、基準信号受信手段から得られた基準信号と本部局装置から送出される下りフレームの到達時間の差を測定して本部局装置へ通知し、本部局装置から報知される時間差の最大値以上の一定値から測定した時間差を減じた値を送信遅延手段における遅延時間とすることで、無線送信手段が複局同時送信を行う構成を有する。
【0010】この構成により、各基地局装置は本部局装置から一斉通知された最大遅延時間から自局の遅延時間を減じた値を自局の遅延時間と設定することにより、本部局装置から送出された下りフレームを、この遅延時間分遅延させた後に無線送信することで全ての基地局装置から同時刻に送信する複局同時送信を行うことができることとなる。
【0011】本発明の無線通信システムの基地局装置は、本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、基地局装置は、移動局装置からの電波を受信する無線受信手段と、無線送受信手段からの受信方路および下位局が接続されている下位方路からの上りフレームを各方路別に遅延制御する遅延補正手段と、各方路からの上りフレームタイミングを同期させるために遅延補正手段の遅延時間を制御するフレーム同期比較手段と、遅延補正手段で遅延した各方路のフレームを選択して上位局に転送する方路選択手段とを備え、移動局装置の送信波が複数の基地局装置で同時に受信された場合に、その複数の上りフレームが下位方路のある基地局装置において合流時にタイミングを揃えることで複局同時受信を行う構成を有する。
【0012】この構成により、移動局装置の送信波が複数の基地局装置で同時に受信された場合に、その複数の上りフレームが下位方路のある基地局装置において合流時にタイミングを揃えることで複局同時受信が実現できることとなる。
【0013】本発明の無線通信システムのタイミング調整方法は、本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、複数の基地局装置はそれぞれ任意の基準時刻と下りフレーム到着時刻との時間差を測定し、複数の基地局装置のなかで下位方路のない基地局装置は測定した時間差を遅延情報として本部局装置に通知し、本部局装置は通知された遅延情報のなかの最大値を複数の基地局装置へ報知し、複数の基地局装置は報知された遅延情報の最大値から自局で測定した時間差を減じた値を無線送信遅延時間としてそれぞれ設定し、複数の基地局装置は本部局装置から送出されたフレームを無線送信遅延時間分遅延させた後に送信することで複局同時送信を行うものである。
【0014】この方法により、各基地局装置は本部局装置から一斉通知された遅延情報の最大値から自局の遅延時間を減じた値を自局の遅延時間と設定することにより、本部局装置から送出された下りフレームを、この遅延時間分遅延させた後に無線送信するので、全ての基地局装置から同時刻に送信できる複局同時送信ができることとなる。
【0015】本発明の無線通信システムのタイミング調整方法は、下位方路のない基地局装置が本部局装置に遅延情報を通知する際に、遅延情報に自局の基地局IDを付加して上位方路に転送し、下位方路を有する基地局装置は下位方路のない基地局装置から基地局ID付き遅延情報を受けると、これらに自局の基地局IDを付加して上位方路に転送するものである。
【0016】この方法により、本部局装置が遅延情報を得る際に、同時に基地局装置のトポロジーを認識することが可能となる。
【0017】本発明の無線通信システムのタイミング調整方法は、複数の基地局装置はGPSから得られた位置情報を自局の基地局IDと共に遅延情報に付加して本部局装置へ転送し、本部局装置は地図データと照合することにより、地理的な位置関係も含めた接続状態図を構築するものである。
【0018】この方法により、各基地局装置は本部局装置に通知する遅延情報にGPSの位置情報を加えて送ることにより、本部局装置は地理的な位置関係も含めた接続状態を認識することができることとなる。
【0019】本発明の無線通信システムのタイミング調整方法は、本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、下位方路を有する基地局装置は各下位方路および自局の無線受信手段で受信した上りフレームタイミングおよびそのフレーム番号を比較し、同一のフレーム番号のフレームタイミングが一致するように各下位方路に設けた遅延補正手段を調整し、任意または予め優先度を定めた方路の上りフレームを選択して上位局に中継することで複局同時受信を行う。
【0020】この方法により、複数の基地局装置で移動局装置の送信波が受信された場合、その上りフレームが本部局装置に到達するまでにタイミングを揃えられるため、複局同時受信が実現することとなる。
【0021】本発明の無線通信システムのタイミング調整方法は、下位方路からの上りフレームと自局の無線受信手段で受信したフレームとを比較して選択する際に、回線品質が最良と推定された方路の上りフレームを上位局に中継するものである。
【0022】この方法により、複局同時受信が可能な状態において、受信した基地局装置が上りフレームに受信品質情報を付加し、上りフレームに含まれる受信品質情報を比較して受信品質の良い上りフレームを選択し、上位局に中継することで、ある移動局装置からの送信波が複数の基地局装置で同時に受信された場合に、より受信品質の良い基地局装置で受信した上りフレームが自動的に選ばれるサイトダイバーシチが可能となるものである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0024】(実施の形態1)図1は、本発明が適用される無線通信システムの構成図で、一つの本部局装置1に複数の基地局装置2〜7が専用のディジタルリンク回線によりツリー状に接続された構成を示している。また、基地局装置2〜7は移動局装置8〜9との間で無線交信を行うための無線送受信手段を備えており、本部局装置1および基地局装置2〜7はGPS衛星装置10からの電波を受信するGPS受信手段を備えている。そして、通信方式として一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送するTDMA(Time Division Multiple Access )方式を用いている。
【0025】また、この無線通信システムは、具体的には本部局装置1の下位に基地局装置2および基地局装置7が接続され、基地局装置2の下位に基地局装置3および基地局装置6が接続され、基地局装置3の下位に基地局装置4および基地局装置5が接続されている。各基地局装置を結ぶリンク回線は上位局に対する従属同期(これを網同期という)とし、リンク回線による伝送遅延については網同期後は変動しないものとする。
【0026】また、基地局装置2〜7および移動局装置8〜9間の下り無線回線周波数にはF1、上り無線回線周波数にはF2が割当てられており、下りF1に同期して上りF2が送信される。上りおよび下り回線の信号はフレーム単位で連続的に伝送され、無線送受信手段においては下りフレームに同期して上りフレームが送出される。なお、基地局リンク間の上下方向のフレーム同期は既に確立(下りおよび上り回線の伝送フレームのビット内容が読み出せる状態をさす)しているものとする。
【0027】下り回線においては、各基地局装置2〜7は上位局からの信号を下位方路の基地局に分配するとともに無線で送信する。このとき、例えば基地局装置4から移動局装置8への送信波F1(4−8)と、基地局装置5から移動局装置8への送信波F1(5−8)のタイミングがある程度ずれると、F1(4−8)とF1(5一8)は互いに干渉波となり、移動局装置8では正常に受信できなくなる可能性があるため、F1(4−8)とF1(5一8)の送信タイミングを同一にしなければならない。そのためには、上位局からの信号を下位方路に送出したタイミングでは無線送信を行わず、下りの伝送遅延を考慮し、最も下位の基地局装置に到達するまで無線送信を遅延させることにより、複数の基地局が同じ信号を同時刻に送信することができる。このように複数の基地局装置から同一のタイミングで送信波F1を送信することを複局同時送信という。
【0028】上り回線においては、各基地局装置2〜7は下位局で受信した上り信号または自局で受信した上り信号を上位局へ中継する。ここで、移動局装置9から上り信号F2が送信された場合、基地局装置5で受信した上り信号をF2(9−5)、基地局装置6で受信した上り信号をF2(9−6)とすると、それぞれ基地局装置で受信したタイミングが同一だったとしても、その上位局である基地局装置2においては、各ルート毎の伝送遅延の差によりF2(9−5)とF2(9−6)の到達タイミングがずれる可能性がある。このように到達タイミングがずれた場合において、基地局装置2がF2(9−5)とF2(9−6)を同一の上り信号F2として認識できる状態を複局同時受信という。
【0029】この無線通信システムでは、複局同時送信と複局同時受信を実現するうえで、少ないコストで基地局装置間のタイミングの調整を自動化し、定期的なタイミング補正や基地局装置の増設を容易にするとともに、良好な回線品質を確立するようにしている。
【0030】図2は、複局同時送信を実現する基地局装置の構成を示すブロック図で、基地局装置3を例に示している。なお、他の基地局装置2および4〜7も同一の構成を有している。
【0031】この基地局装置3は、基準信号受信手段としてGPS衛星装置10からの電波を受信するGPS受信手段11と、基準信号に対して本部局装置1から送出された下りフレームが到達するまでの時間差を測定する無線送信タイミング算出手段12と、複局同時送信を行うために無線送信タイミングを遅延させる無線送信遅延手段13と、移動局装置との間で無線送受信を行う無線送受信手段14と、自局の無線送受信手段14または下位局からの上りフレームのいずれかを選択して上位局へ送る方路選択手段16とを備えている。
【0032】上位局である基地局装置2からのフレームはGPS時刻補正手段12および無線送信遅延手段13に供給され、さらに下位局の基地局装置4、5に転送される構成となっている。
【0033】次に、図3に示す説明図を参照しながら、本実施の形態による無線通信システムの複局同時送信のタイミング調整方法について説明する。
【0034】まず、本部局装置1は、図3(a)〜(b)に示すように、GPS衛星装置10から受信したGPS信号より得られた任意のUTC時刻(以下、GPS時刻、という)tと、その△t〈0〉秒後に送出する下りフレーム番号nと、1フレームの長さa秒とから、GPS時刻t+x秒の直後に本部局装置1から送出する予定の下りフレーム番号mを算出し、各基地局装置i(i=2,3,…,7)に測定予定時刻としてt+x、測定フレーム番号としてmを通知する。
【0035】ただし、測定予定時刻t+xは、t+x秒よりも前に全ての基地局装置が本部局装置1から測定予定時刻t+xと測定フレーム番号mの通知を受信して測定準備できるのに必要十分な時間とし、測定フレーム番号mは、m=n+int{(x−Δt〈0〉)/a}
となる。
【0036】次に、基地局装置iに具備した無線送信タイミング算出手段12は、図3(c)に示すように、GPS時刻がt+xとなった時点から、下りフレームが自局に到達するまでの時間差Δt〈i〉を測定し、さらに下位方路に基地局装置がない末端の基地局装置4〜7の測定結果を本部局装置1へ通知する。
【0037】本部局装置1は、通知された遅延時間Δt〈i〉から最大値Δt〈max〉を求めて各基地局装置iへ通知する。
【0038】各基地局装置iの無線送信タイミング算出手段12は、通知された最大値Δt〈max〉から自局の遅延時間Δt〈i〉を減じた値以上の値を自局の無線送信遅延手段13の遅延時間として設定する。これにより、図3(d)と図3(e)に示すように、本部局装置1からの下りフレームは、各基地局装置iの無線送信遅延手段13で「Δt〈max〉−Δt〈i〉」遅延された後に、無線送受信手段14から送信されるため、最遠端の基地局装置の無線送信タイミングに基地局装置iの無線送信タイミングが揃えられ、全ての基地局装置から複局同時送信がされることとなる。
【0039】なお、本実施の形態では、GPS時刻と下りフレーム到着時刻の差とから遅延時間Δt〈i〉を算出したが、本部局装置1と全ての基地局装置に同時刻であることを通知できる電波や光などの信号でありさえすれば、本部局装置1から各基地局装置へ測定予定時刻と測定フレーム番号を通知するという手順に変わりがないため、GPS電波の代用とすることができる。例えばGPSに近いシステムとしては、低軌道周回衛星位置情報システムがあるが、光ビーコンのようなものでも代用可能である。
【0040】(実施の形態2)図4は、各基地局装置iは、自局の下位局がないとき、本部局装置1から自局までの下り伝送遅延時間の測定結果「Ei」を本部局装置1への上りフレームに載せて通知するが、このとき測定結果を中継する基地局装置が測定結果に自局の基地局IDである「00i」を付加して上りフレームに載せる場合の実施の形態を示す構成図である。図中、「( )」は各方路における上りフレームの伝送単位、「/」は方路の分岐を示す記号とする。
【0041】この例では、基地局装置4〜7が末端となるので、基地局装置4〜7の遅延情報E4〜E7に、それぞれ自局の基地局IDである004〜007を付加して上位局へ送信する状態を示している。
【0042】下位方路を有する基地局装置2〜3では、下位方路から基地局ID付きの遅延情報が上って来た場合、自局の基地局IDを追加して上り回線に転送するが、下位方路が複数ある基地局装置2〜3の場合は、全ての方路からの遅延情報が揃うまで待ってから上位局へ伝送する。
【0043】例えば基地局装置2は、リンクL2からの遅延情報003(004E4/005E5)と、リンクL5からの遅延情報006E6の両方が揃ってから、002((003(004E4/005E5))/006E6)をリンクL1に送出することになる。
【0044】このように動作することにより、本部局装置1においては遅延情報を得ると同時に全基地局装置のトポロジー(接続状態)を認識でき、また下位方路が複数ある基地装置においてはIDなどの情報が衝突したり重複しないように制御することが可能となる。
【0045】ここで、本部局装置1に伝送される情報と、各リンクL1〜L6を伝送される情報とを整理して示しておく。
【0046】本部局装置:001((002((003(004E4/005E5)))/006E6)/007E7)
L1:002((003(004E4/005E5))/006E6)
L2:003(004E4/005E5)
L3:004E4L4:007E7L5:006E6L6:005E5また、各基地局装置iは本部局装置1に通知する遅延情報にGPS受信手段12から得られた位置情報を加えて送ることにより、本部局装置1は地理的な位置関係も含めた接続状態を認識することができる。従って、例えば基地局装置の設置に際して、得られた位置情報を元に地図上にプロットすることができるため、基地局間の距離や設置場所の周辺地形などの確認が容易となる。
【0047】(実施の形態3)図5は、複局同時受信を実現するための基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、基地局装置3を例に示しているが、他の基地局装置2および4〜7も同一の構成を有している。
【0048】この基地局装置3は、無線送受信手段14と、無線送受信手段14からの受信方路および下位局が接続されている下位方路からの上りフレームのタイミングを同期させるためのフレーム同期比較手段17と、フレーム同期比較手段17によって遅延時間が制御される各ノード別に具備した遅延補正手段18と、無線送受信手段14からの受信方路および下位局からのフレームを選択して上位局に転送する方路選択手段16とを備えている。
【0049】次に、図6に示す説明図を参照しながら、本実施の形態による無線通信システムの複局同時受信のタイミング調整方法について説明する。なお、図中に示すA1〜A4、B1〜B4、C1〜C4は、図5に同一符号で示す位置の信号の発生タイミングを表している。
【0050】まず、本部局装置1で生成され各基地局装置iに同報される下りフレームA1は、無線送信遅延手段13で遅延され、無線送受信手段14から無線信号A2として送信される。また、フレームA1はリンク回線を通り下位局である基地局装置4、5にフレームB1、C1として到達する。
【0051】無線基地局4に到達したフレームB1は、無線送信遅延手段13で遅延され、無線送受信手段14から無線信号B2として送信される。無線基地局5に到達したフレームC1も、無線送信遅延手段13で遅延され、無線送受信手段14から無線信号C2として送信される。このとき、無線基地局3〜5の各無線送信遅延手段13の遅延時間を、前述のように設定しておくことにより、無線信号A2〜C2を複局同時送信することができる。
【0052】一方、複局同時送信が可能な状態で、任意の下りフレームが無線送受信手段14に到達した時点より一定時間後に上りフレーム同期信号を発生させる。この上りフレーム同期信号に含まれるフレーム番号は、任意の下りフレームに含まれるフレーム番号と対応させれば、各基地局で同一に設定できる。
【0053】次に、各基地局装置iに具備したフレーム同期比較手段17は、各下位方路から到達した上りフレームA3〜C3から同じフレーム番号を含むものを比較し、一番到着が遅い方路の上りフレームに合わせて他の上りフレームが揃うように遅延時間を算出する。
【0054】このように方路毎に算出した遅延時間を各々の方路に具備した遅延補正手段18に設定することにより、遅延補正手段18を通過した上りフレームA4〜C4のフレーム同期信号の位置が一致するようになる。通過した上りフレームA4〜C4は方路選択手段16により予め一定のルールで優先度が決められた方路の上りフレームが選択され、上位局に中継される。
【0055】このように動作することにより、最下位局から順に遅延補正手段18の遅延時間が決定し、上りフレームが合流する基地局装置において上りフレームのタイミングが揃えられるため、最後に本部局装置1の遅延補正手段18の設定が終わった時点で、複局同時受信が実現する。
【0056】また、複局同時受信が可能な状態において、受信した基地局装置が上りフレームに受信品質情報(受信入力レベルや同期ワードの相関値など)を付加し、基地局装置に具備した方路選択手段16が上りフレームに含まれる受信品質情報を比較して、受信品質の良い上りフレームを選択し、上位局に中継するようにしてもよい。
【0057】例えば、移動局装置9の送信波が基地局装置5と基地局装置6に受信され(それぞれ順にF2(9−5)、F2(9−6)と呼ぶ)、F2(9一6)の受信品質の方が良い場合、基地局装置3では基地局装置4からの上りフレームにはF2が含まれないため、F2(9−5)が上位局である基地局装置2に中継されるが、基地局装置2ではF2(9−6)とF2(9−5)の受信品質情報を比較し、F2(9−6)が本部局装置1に中継される。
【0058】このように方路選択手段16が上りフレームに含まれる受信品質情報を比較することにより、ある移動局装置からの送信波が複数の基地局装置で同時に受信された場合に、より受信品質の良い基地局装置で受信した上りフレームが自動的に選ばれるサイトダイバーシチが可能となる。
【0059】以上のように本実施の形態によれば、下り回線においては各基地局装置の無線送信タイミングをGPS時刻を参照して補正することで複局同時送信が可能となり、上り回線においては補正された無線送信タイミングに同期した上りフレームが基地局装置を経由して合流する毎に一番遅い上りフレームタイミングに揃えられた後に選択されることで、複局同時受信が可能となるものである。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は各基地局装置において本部局装置から一斉通知された遅延情報の最大値から自局の遅延時間を減じた値を自局の遅延時間と設定することにより、基地局装置間のタイミング調整を自動化し、本部局装置から送出された下りフレームを、この遅延時間分遅延させた後に無線送信することで全ての基地局装置から同時刻に送信する複局同時送信が可能な無線通信システムの基地局装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される無線通信システムの構成図
【図2】図1に示す基地局装置の構成図
【図3】複局同時送信のためのタイミング調整方法を示す説明図
【図4】遅延情報に自局IDを付加して上位局へ送信する無線通信システムの構成図
【図5】図1に示す基地局装置の構成図
【図6】複局同時受信のためのタイミング調整方法を示す説明図
【符号の説明】
1 本部局装置
2、3、4、5、6、7 基地局装置
8、9 移動局装置
10 GPS衛星装置
11 GPS受信手段
12 無線送信タイミング算出手段
13 無線送信遅延手段
14 無線送受信手段
15 スイッチ手段
16 方路選択手段
17 フレーム同期比較手段
18 遅延補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、前記本部局装置と前記基地局装置は、前記無線通信システム全てに対し同時刻を認識できる信号を受信する基準信号受信手段と、無線送信タイミング算出手段と、無線送信遅延手段と、無線送信手段とを備え、前記無線送信タイミング算出手段は、前記基準信号受信手段から得られた基準信号と前記本部局装置から送出される下りフレームの到達時間の差を測定して本部局装置へ通知し、前記本部局装置から報知される前記時間差の最大値以上の一定値から前記測定した時間差を減じた値を前記送信遅延手段における遅延時間とすることで、前記無線送信手段が複局同時送信を行うことを特徴とする無線通信システムの基地局装置。
【請求項2】 本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、前記基地局装置は、移動局装置からの電波を受信する無線受信手段と、前記無線送受信手段からの受信方路および下位局が接続されている下位方路からの上りフレームを各方路別に遅延制御する遅延補正手段と、前記各方路からの上りフレームタイミングを同期させるために前記遅延補正手段の遅延時間を制御するフレーム同期比較手段と、前記遅延補正手段で遅延した前記各方路のフレームを選択して上位局に転送する方路選択手段とを備え、前記移動局装置の送信波が前記複数の基地局装置で同時に受信された場合に、その複数の上りフレームが下位方路のある前記基地局装置において合流時にタイミングを揃えることで複局同時受信を行うことを特徴とする無線通信システムの基地局装置。
【請求項3】 本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、前記複数の基地局装置はそれぞれ任意の基準時刻と下りフレーム到着時刻との時間差を測定し、前記複数の基地局装置のなかで下位方路のない基地局装置は測定した時間差を遅延情報として前記本部局装置に通知し、前記本部局装置は前記通知された遅延情報のなかの最大値を前記複数の基地局装置へ報知し、前記複数の基地局装置は報知された前記遅延情報の最大値から自局で測定した時間差を減じた値を無線送信遅延時間としてそれぞれ設定し、前記複数の基地局装置は前記本部局装置から送出されたフレームを前記無線送信遅延時間分遅延させた後に送信することで複局同時送信を行うことを特徴とする無線通信システムのタイミング調整方法。
【請求項4】 前記下位方路のない基地局装置が前記本部局装置に前記遅延情報を通知する際に、前記遅延情報に自局の基地局IDを付加して上位方路に転送し、下位方路を有する前記基地局装置は前記下位方路のない基地局装置から基地局ID付き遅延情報を受けると、これらに自局の基地局IDを付加して上位方路に転送することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システムのタイミング調整方法。
【請求項5】 前記複数の基地局装置はGPSから得られた位置情報を前記自局の基地局IDと共に前記遅延情報に付加して前記本部局装置へ転送し、前記本部局装置は地図データと照合することにより、地理的な位置関係も含めた接続状態図を構築することを特徴とする請求項4に記載の無線通信システムのタイミング調整方法。
【請求項6】 本部局装置とツリー状に接続された複数の基地局装置間で一定周期のフレーム単位でディジタル信号を伝送する無線通信システムにおいて、下位方路を有する基地局装置は各下位方路および自局の無線受信手段で受信した上りフレームタイミングおよびそのフレーム番号を比較し、同一のフレーム番号のフレームタイミングが一致するように各下位方路に設けた遅延補正手段を調整し、任意または予め優先度を定めた方路の上りフレームを選択して上位局に中継することで複局同時受信を行うことを特徴とする無線通信システムのタイミング調整方法。
【請求項7】 前記下位方路からの上りフレームと前記自局の無線受信手段で受信したフレームとを比較して選択する際に、回線品質が最良と推定された方路の上りフレームを上位局に中継することを特徴とする請求項6に記載の無線通信システムのタイミング調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−27534(P2002−27534A)
【公開日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−206110(P2000−206110)
【出願日】平成12年7月7日(2000.7.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】