説明

無線通信ネットワークにおける基地局及びチャネル品質予測方法

MU-MIMOをサポートする無線通信ネットワークにおける移動局から基地局へのCQIデータ伝送に関する制御シグナリングオーバーヘッドを最小化するために、MU-MIMO処理を行っている間のCQIが、SU-MIMOのCQIデータ、移動局ジオメトリデータ、移動局PMI(プリコーディングマトリクスインデックス)データに基づいて推定される。より具体的には基地局は情報蓄積部を維持及び更新し、情報蓄積部は、SU-MIMO処理方法からMU-MIMO処理方法への切替に応じて、干渉プリコーダデータの学習した影響及びジオメトリデータとCQI値の劣化とを関連付ける。基地局はSU-MIMO処理方法からMU-MIMO処理方法へ切り替えた場合に、情報蓄積部に問い合わせ、CQIの劣化を予測し、関連する移動局各々に対する既知のスイッチング前SU-MIMO-CQIフィードバックデータから予測値を減算し、その移動局に対するスイッチング後MU-MIMO-CQIを予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信システムにおけるチャネル品質情報の送受信に関連する。特に、本発明は、IEEE802.16に基づくネットワーク等におけるマルチユーザ(MU)マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)又はMU-MIMO処理を行う通信ネットワークにおいて、チャネル品質インデックスを決定することに関連する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.16はIEEE(電気電子技術者協会)により規定されている一連のワイヤレスブロードバンドの標準仕様であり、これらの標準仕様は本願のリファレンスに含まれる。IEEE802.16eはデータを運ぶためにOFDMA(直交周波数分割多重アクセス)方式を使用する。このシステムは適応変調及び符号化方式を使用しており、チャネル品質が相対的に良かった場合には、効率的ではあるがロバスト性は低い符号化方式(例えば、64QAM(直交振幅変調方式))が使用され、単位時間当たりに送信可能なチャネル又はデータの数を最大化しようとする。しかしながら、チャネル品質状態が比較的貧弱であった場合、効率的ではないがロバスト性が高い変調及び符号化方式(例えば、BPSK(バイナリ位相シフトキーイング))が使用され、チャネル品質を向上させようとする(ただし、データ伝送レートが低くなることを犠牲にする)。チャネル上対に応じて、様々な如何なる数の変調方式が使用されてもよい。例えば、最良の状態の場合には64QAM変調式が使用され、最悪の状態の場合にはBPSK変調方式が使用されてもよい。チャネル状態が2つの両極端の間にあった場合、効率とロバスト性との間のトレードオフで決まる中間的な他の変調方式が使用される(例えば、16QAM、QPSK等)。
【0003】
IEEE802.16eは改善された誤り検出及び訂正処理を行うためにハイブリッド自動再送要求(HARQ)方式も使用する。
【0004】
IEEE802.16における他の特徴はMIMO処理である。MIMOは、ネットワーク内のトランシーバの各々が複数の送信及び/又は受信アンテナを有する方式であり、送信機が意図した方向の受信機方向に指向性ビームパターンを送信し或いはその逆を行うことで、送信機における電力を増やすことなく、意図する受信機での信号強度を改善しようとする。これは、チャネル間の干渉も減少させ、NLOS(見通し線外)特性も向上させる。
【0005】
シングルユーザMIMO(SU-MIMO)は、所与の任意の時点又は所与の任意の通信リソースにおいて唯1つの送信機及び受信機のみが通信するMIMO方式の使用法である。マルチユーザMIMO(MU-MIMO)は、送信機(例えば、基地局)がMIMO方式を用いて、2つの異なる信号を2つの異なる受信機へ同じ通信リソースを使って同時に送信する技術である。より具体的には、送信機は送信ビームについてビームフォーミングを行うことができるので、一方の受信機(例えば、移動局)に対してデータ/信号を仕向け、かつ他の受信機に対してデータ/信号を仕向けることができる。2つのビームは十分に異なった方向に向いていており、2つの受信機は送信機から十分に遠く離れているので、各々の受信機において、その受信機宛のデータ信号はその通信リソースユニット内にある他方の受信機宛のデータ/信号よりもかなり強く、2つの受信機は同じチャネルを共有できる。
【0006】
OFDMの場合、基地局及び移動局間のダウンリンク通信チャネルの各々は、ネットワークが利用可能な時間及び周波数全体の内、所定の範囲内のサブキャリア周波数と所定の範囲内のタイムスロット(例えば、フレーム中の一部)を実際に有することが、知られている。上述したように、MU-MIMOの場合、基地局はタイムスロット及び周波数が同じサブセット(一部分)の間に2つの(又はそれ以上の)移動局に送信を行う。すなわち、MU-MIMOの場合、基地局は同じサブセットのタイムスロット及び周波数で2つの異なる周波数チャネルを使用(サポート)している。本明細書において混乱を避けるために、「通信リソースユニット又は通信リソース単位」という用語はタイムスロット及び周波数の所与の一部分を示し、「通信チャネル」という用語は個々の移動局に対する個々のダウンリンクを示すものとする。
【0007】
MU-MIMOの動作をサポートするネットワークは、しばしば、呼の負荷が所定の閾値を超えるまではSU-MIMOで動作し、その後に呼の全部又は一部をMU-MIMOに切り替え、低品質化と共に同時接続個数を増やす。あるネットワークでは、SU-MIMOの動作からMU-MIMOの動作に切り替わる場合に、通信リソースが同じサイズ (すなわち、同数のキャリア周波数及び単位時間当たりの同数のタイムスロット)のまま維持され、2つ(又はそれ以上)の移動局で通信リソースが共有される。しかしながら、あるネットワークでは、MU-MIMO動作用の通信リソースユニットは、SU-MIMO通信リソースユニットとは異なるサイズを有し(例えば、より多数の周波数サブキャリア及び/又は単位時間当たり多数のタイムスロットを占め)、全体的な呼の容量は若干の増加と共に、MU-MIMO通信リソースユニットを共有する移動局に対する通信品質の劣化を減少させる。
【0008】
IEEE802.16ネットワークのような適応変調及び符号化(AMC)を行う無線通信ネットワークの場合、何れの変調及び符号化方式を使用するかを決定するのは典型的には基地局である。上述したようにそのような決定は、通常、チャネル(特に、下りリンクのチャネル)の品質の何らかの測定値に基づいている。基地局は、自身の下りリンクのチャネルの品質を直接的には測定できないので、例えば、移動局が下りリンクチャネルにおけるパイロットビット、受信したデータにおけるビットエラー訂正レート等を監視することで下りチャネル品質を決定し、そのチャネル品質データを制御チャネルで基地局に送信するように、移動局は設定される。例えば、IEEE802.16の場合、移動局はCQI(チャネル品質インデックス)と呼ばれるパラメータを基地局に送信する。コードブック方式のCQI及びサウンディング方式のCQIを含むIEEE802.16におけるCQIの生成及び送信を行うためのいくつかの方法がある。コードブック方式のCQIの場合、可能な限られた数のCQI値があり、各々のCQI値はチャネル状態に対応している。移動局及び基地局は双方共にそのコードブックを有し、コードブックはそれら可能なCQI値各々の意味を示す。移動局は、ほとんど帯域幅を要しないことを要求するCQI値を基地局に送信し、基地局はそのCQI値をコードブックに当てはめ、CQI値が意味する事柄を判定する。例えば、特に、基地局は符号化率1/2で16QAMの変調方式を使用すべきであることを、4であるCQI値が意味していることを、コードブックが明らかにしていてもよい。
【0009】
しかしながら、MU-MIMOモードの場合、移動局当たり多くのCQIデータを送信する必要がある。なぜなら、移動局は通信リソースユニットを共有する他の移動局に関する如何なる情報も持っていないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、MU-MIMOをサポートする無線通信ネットワークにおいて移動局から基地局へ送信するCQIデータに関する制御シグナリングオーバーヘッドを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施例による基地局は、
マルチユーザマルチインプットマルチアウトプット(MU-MIMO)方式を使用して複数の移動局と無線通信を行う無線通信システムにおける基地局であって、
送信機と、
受信機と、
複数のアンテナと、
第1の移動局がMU-MIMOの動作の際に通信リソースユニットを共有することになる他の移動局各々のプリコーディング方式及び各移動局のジオメトリと、シングルユーザMIMO方式及びマルチユーザMIMO方式の間における当該基地局及び各移動局間の通信チャネル品質の差分とを関連付ける情報ベースを維持する情報ベース回路と、
シングルユーザMIMO方式の移動局各々により選択されたプリコーディング方式と、移動局各々のシングルユーザMIMOチャネル品質データと、移動局各々のジオメトリデータとを判定する判定回路と、
第1の移動局が第1の通信リソースユニットを少なくとも1つの第2の移動局と共有するように、シングルユーザMIMO方式からマルチユーザMIMO方式へ前記第1の移動局を切り替えたことに応じて、前記情報ベースを用いて、前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々に対応する前記プリコーディング方式のデータ及びジオメトリデータを、前記第1の移動局及び前記第2の移動局についての予測されたチャネル品質劣化に対応付ける予測回路と
を有する基地局である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が使用される例示的なセルラ通信ネットワークを示すブロック図。
【図2】例示的なOFDM送信機アーキテクチャの論理的なブロック図である。
【図3】例示的なOFDM受信機アーキテクチャの論理的なブロック図である。
【図4】SU-MIMOからMU-MIMO処理への切り替えに伴うジオメトリ及びCQI劣化間の相関を示すグラフ。
【図5】本発明の特定の一実施例に従って動作する基地局のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
MU-MIMOをサポートする無線通信ネットワークにおいて移動局から基地局へ送信するCQIデータに関する制御シグナリングオーバーヘッドを最小化するために、MU-MIMOを行っている間のCQIは、SU-MIMOのCQIデータ、移動局ジオメトリデータ(移動局特性データ)及び移動局PMI(プリコーディングマトリックスインデックス)データに基づいて推定される。より具体的には基地局は情報蓄積部(knowledge pool)を維持及び更新し、情報蓄積部は、SU-MIMO処理方法からMU-MIMO処理方法への切替に応じて、干渉プリコーダデータの学習した影響及びジオメトリデータとCQI値の劣化とを関連づける。基地局がSU-MIMO処理方法からMU-MIMO処理方法へ切り替えた場合に、情報蓄積部に問い合わせ、CQIの劣化を予測し、関連する移動局各々に対する既知のスイッチング前SU-MIMO-CQIフィードバックデータから予測値を減算し、その移動局に対するスイッチング後MU-MIMO-CQIを予測する。
【0014】
これはCQI及びPMIフィードバックに関するオーバーヘッド通信量を大幅に節約する。なぜなら、MU-MIMOの場合、移動局は、MU-MIMO処理において通信リソースユニットを共有する他の移動局の識別子を知らないからである。知らない場合、各移動局は、様々な干渉する移動局に関する最良のCQI及び最悪のCQIのような多くのCQIデータ量を送信し、基地局がMU-MIMOチャネルにおけるチャネル品質を判定できるようにしなければならないからである。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明を使用する例示的なセルラ通信ネットワークの基本構成を示す。基地局コントローラ(BSC)10は、複数のセル12内の無線通信を制御し、複数のセルはそれぞれ関連する基地局(BS)14によりサービスが提供されている。場合によってはセルの各々が複数のセクタ13又はゾーン(図示せず)に更に分割されている。一般に、基地局14の各々は、基地局14に対応するセル14内に在圏する移動及び/又は無線端末(以下、移動局と言及する)16のOFDMによる通信を促す。基地局14に対する移動局16の移動又は運動は、チャネル状態の著しい変動を招く。図示されているように、基地局14及び移動局16の各々は通信に関する空間ダイバーシチを行うように複数のアンテナを有する。場合によっては、基地局14及び移動局16の間の通信を支援するために中継局15が設けられていてもよい。移動局16は、セル12、セクタ13、ゾーン(図示せず)、基地局14又は中継局15の内の任意のものから、他のセル12、セクタ13、ゾーン(図示せず)、基地局14又は中継局15へハンドオフしてもよい。場合によっては、基地局14は基幹(バックホール)ネットワーク11を介して互いに及び他のネットワーク(例えば、コアネットワークやインターネット(何れも図示せず))と通信してもよい。場合によっては、基地局コントローラ10は必要とされない。
【0016】
OFDM変調の場合、各通信リソースユニットの送信帯域(送信バンド)は複数の直交する搬送波に分割される。各搬送波は送信されるディジタルデータにより変調される。OFDM方式は送信帯域を複数のキャリアに分割するので、キャリア当たりの帯域幅は小さくなり、キャリア当たりの変調時間はシングルキャリア法の場合と比較して長い。複数のキャリアが並列的に送信されるので、所与の任意のキャリアにおけるディジタルデータ又はシンボルに関する伝送レートは、シングルキャリア法の場合より低い。
【0017】
OFDM変調は、送信される情報について、逆高速フーリエ変換(IFFT)の処理を適用する。復調の際、受信信号について、高速フーリエ変換(FFT)の処理を適用することで、送信された情報が復元される。実際には、IFFT及びFFTはそれぞれ適切なアルゴリズムを実行するディジタル信号処理によって行われる。従って、OFDM変調の特徴は、送信リソースユニット内の複数のバンドについて直交する搬送波が生成されることである。変調された信号は、各自のバンド(帯域)の中に収まることが可能な比較的遅い伝送レートを有するディジタル信号である。個々の搬送波はディジタル信号に個別的に直には変調されない。そうではなく、個々の搬送波はIFFTアルゴリズムによって一度に全部変調される。
【0018】
動作の際、OFDMが基地局から移動局への下り伝送に少なくとも使用されることが好ましい。基地局14にはn呼の送信アンテナが備わっており、移動局の各々にはm個の受信アンテナが備わっている。個々のアンテナは、適切なデュプレクサ又はスイッチを用いることで、受信だけでなく送信に使用されてもよい。
【0019】
図2を参照しながら、論理的なOFDM送信機アーキテクチャを説明する。先ず、基地局コントローラ10が、基地局14から中継局15を介して又は介さずに直接的に様々な移動局16へ送信が行われるように基地局14へデータを送信する。これらの基地局14は移動局に関連しているCQIを用いて送信するデータのスケジューリングを行うことに加えて、スケジューリング後のデータを送信する際の適切な変調及び符号化方式も選択する。CQIは、移動局16から直接的に受信してもよいし、移動局16から提供された情報に基づいて基地局14において決定されてもよい。何れにせよ、CQIは、OFDM周波数バンドの中でチャネル振幅(又は応答)がどの程度変化するかを示す関数である。
【0020】
ビットストリームであるスケジューリング後のデータ44は、データスクランブリング論理部46により、データのピーク対平均電力比が減少するようにスクランブルされる(並べ替えられる)。スクランブルデータについての巡回冗長検査(CRC)が判定され、CRC負荷論理部48によりスクランブルデータに付加される。
【0021】
チャネルエンコーダ論理部50によりチャネル符号化が行われ、データに対する冗長性を効率的に増やし、移動局16における復元及び誤り訂正能力を促す。更に、特定の移動局16に関するチャネル符号化はCQIに基づいている。一実施例では、チャネル符号化論理部は既知のターボ符号化方式を使用する。符号化されたデータはレートマッチング論理部52により処理され、符号化に関連するデータ伸張(data expansion)を補償する。
【0022】
ビットインタリーバ論理部54は、符号化されたデータのビットを規則的に又は組織的に(systematically)並べ替え、連続的なデータビットの欠落を最小化する。その結果の冗長的なデータビットは、マッピング論理部56により、選択されたベースバンド変調方式に依存して対応するシンボルに規則的又は組織的にマッピングされる(対応付けられる)。好ましくは、QAM又はQPSK変調が使用される。しかしながら、チャネル品質が特に貧弱であった場合、BPSK又はその他の高いロバスト性の変調方式が使用されてもよい。変調の度合いは、と口絵の移動局について判定されたCQIに基づいて選択されることが好ましい。シンボルインタリーバ論理部58により、シンボルは組織的又は規則的に並べ替えられ、周波数選択性フェージングに起因する周期的なデータ損失(送信信号のデータ損失)に対する耐性を更に高める。
【0023】
この段階において、ビットのグループ又は一群のビットが、振幅及び位相の配置図(コンステレーション)における場所を表すシンボルにマッピングされる(対応付けられる)。空間ダイバーシチが望まれる場合、新保るンブロックが時空間ブロック符号(STC)エンコーダ論理部60により処理され、STCエンコーダ論理部は、干渉に対する耐性の強化及び移動局16における復号化の容易性を図るように送信信号のシンボルを修正する。STCエンコーダ論理部60は到来して来る信号を処理し、基地局14の送信アンテナ数に対応するn個の出力を提供する。制御システム20及び/又はベースバンドプロセッサ22はSTC符号化を制御するマッピング制御信号を提供する。この段階において、n個の出力に関するシンボルは送信されるデータを表し、移動局16により復元できる。
【0024】
基地局が2つのアンテナ28を有していたとすると(すなわち、n=2)、STCエンコーダ論理部はシンボルのストリームを2つ出力する。従って、STCエンコーダ論理部60から出力されたシンボルストリームの各々は、対応するIFFTプロセッサ62に送られ、これらは理解を容易にするように別々に示されている。ここで説明されているもの単独で又は他のプロセッサと組み合わせて、そのようなディジタル信号処理を行うために1つ以上のプロセッサが使用されてもよいことを、当業者は認めるであろう。IFFTプロセッサ62は逆フーリエ変換を行うように個々のシンボルに適用されることが好ましい。IFFTプロセッサ62の出力は時間領域のシンボルを与える。時間領域のシンボルはフレームに分割され、それらはプレフィックス挿入論理部64によりプレフィックスに関連づけられる。結果の信号の各々はディジタル領域において中間周波数にアップコンバートされ、対応するディジタルアップコンバージョン(DUC)及びディジタル-アナログ(DA)変換回路66によりアナログ信号に変換される。結果の(アナログ)信号は所望のRF周波数において、同時に、変調され、増幅され、RF回路68及びアンテナ28を介して送信される。宛先の(意図されている)移動局16にとって既知のパイロット信号は、サブキャリアの中で分散していることに留意を要する。以下において説明する移動局はチャネル推定にパイロット信号を使用する。
【0025】
図3は、基地局14から直接的に又は中継局15を介して送信された信号を受信する移動局16における処理を示す。移動局16のアンテナ40各々に送信信号が到着すると、それぞれの信号は対応するRF回路70により復調され増幅される。簡明化のため、2つの受信機の半分である一方のみが詳細に図示及び説明される。アナログ-ディジタル(A/D)変換器及びダウンコンバージョン回路72は、ディジタル処理を行うためにアナログ信号をディジタル化及びダウンコンバージョンする。結果のディジタル化された信号は、受信信号レベルに基づいてRF回路70における振幅のゲインを制御するために、自動利得制御回路(AGC)74により使用される。
【0026】
先ず、ディジタル化された信号は粗同期論理部78を含む同期論理部76に与えられ、これは、いくつかのOFDMシンボルをバッファリングし、2つの連続するOFDMシンボル間の自己相関を計算する。相関の最大値に対応する結果の時間インデックスはファイン(fine)同期サーチウィンドウを決定し、そのファイン同期サーチウィンドウは、ヘッダに基づいて正確なフレーム開始時点を判定するためにファイン同期論理部80により使用される。ファイン同期論理部80の出力はフレームアライメント論理部84によりフレーム捕捉を促す。以後のFFT処理が時間領域から周波数領域への正確な変換を行うように、適切なフレームの調整が重要である。ファイン同期アルゴリズムは、ヘッダにより搬送されてきた受信パイロット信号と既知のパイロットデータのローカルコピーとの間の相関に基づいている。フレーム調整捕捉が行われると、OFDMシンボルのプレフィックスはプレフィックス除去論理部86により除去され、結果のサンプルが周波数オフセット相関論理部88に与えられ、これは送信機及び受信機間で合致していない局部発振器により生じる周波数オフセットを補償する。好ましくは同期論理部76は周波数オフセット及びクロック推定論理部82を含み、これはヘッダに基づいて送信信号におけるそのような影響を推定し、それらの推定値を相関論理部88に与え、OFDMシンボルを適切に処理できるようにする。
【0027】
この段階において、時間領域のOFDMシンボルは、FFT処理論理部90を用いた周波数領域への変換の準備が整う。その結果は周波数領域のシンボルであり、処理論理部92により検出される。処理論理部92は、分散しているパイロット信号を分散パイロット抽出論理部94を用いて抽出し、抽出したパイロット信号に基づいてチャネル推定論理部96を用いてチャネル推定値を決定し、チャネル再構築論理部98を用いて全てのサブキャリアに対するチャネル応答を提供する。サブキャリア各々に対するチャネル応答を決定するために、パイロット信号は本質的には複数のパイロットシンボルであり、時間及び周波数双方向に既知のパターンでOFDMサブキャリア全体にわたってデータシンボルの中に分散している。
【0028】
処理論理部92は、受信したパイロットシンボルと、あるタイムスロットの或るサブキャリアの位置で予想されるパイロットシンボルとを比較し、パイロットシンボルが送信されたサブキャリアのチャネル応答を判定する。その結果は補間され、全てでない場合はほとんどの残りのサブキャリア(パイロットシンボルが提供されていたサブキャリア)についてのチャネル応答を推定する。実際の及び補間されたチャネル応答を用いて全体のチャネル応答が推定され、それはOFDMチャネルのサブキャリアの全部でない場合はほとんどのチャネル応答を含む。
【0029】
各受信経路のチャネル応答から導出された周波数領域シンボル及びチャネル再構築推定値は、STCデコーダ100に与えられる。STCデコーダ100は送信されたシンボルを復元するために、双方の受信経路においてSTC復号化を行う。チャネル再構築情報は、STCデコーダ100に等価情報を提供し、各々の周波数領域シンボルを処理する場合に伝送チャネルの影響を除去する。
【0030】
復元されたシンボルはシンボルデインタリーバ論理部102により元の順序に並べ替えられ、その順序は送信機のシンボルインタリーバ論理部58による処理に対応する。デインタリーブされたシンボルは、でマッピング論理部104を用いて対応するビットストリームに復調又はでマッピングされる。そのビットはデインタリーバ論理部106を用いてデインタリーブされ、これは送信機アーキテクチャにおけるビットデインタリーバ論理部54による処理に対応する。デインタリーブされたビットはレートでマッチング論理部108により処理され、チャネルデコーダ論理部110に与えられ、当初のスクランブルされたデータ及びCRCチェックサムを復元する。従って、CRC論理部112はCRCチェックサムを除去し、従来の方式でスクランブルされたデータを検査し、それをデスクランブル論理部114に与え、既知の基地局デスクランブルコードを用いてデスクランブルし、元の送信されたデータ116を復元する。
【0031】
データ116を復元するのと平行して、CQI又は基地局14がCQIを生成するのに最低限必要な情報が決定され、基地局14に送信される。上述したように、CQIは、搬送波対干渉比(CR)の関数であるだけでなく、OFDM周波数バンド内の様々なサブキャリアの中でチャネル応答が変化する程度の関数でもある。この例の場合、OFDM周波数バンドのサブキャリア各々のチャネルゲインは、チャネルゲインがOFDM周波数バンドの中で変化している程度を判定するために互いに比較される情報として送信するのに使用される。変化の程度を測定するために多数の方法が利用可能であるが、1つの方法は、送信データに使用されるOFDM周波数バンド全体の中での各サブキャリアのチャネルゲインの標準偏差を計算することである。
【0032】
図1-3は本発明の実施例を使用することが可能な通信システムの具体的な一例を示す。本発明の実施例は、上記の具体例とは異なるが本願で説明される実施形態と矛盾しない方法で動作するアーキテクチャを有する通信システムにより実現されてもよいことが、理解されるべきである。
【0033】
IEEE802.16、3GPPロングタームエボリューション(LTE)及びUMBを含む多くの無線通信システム及び標準仕様は、コードブック方式の閉ループ(CL)MIMOを採用又は少なくともサポートしており、上述したように、移動局がCQIデータの僅かな一部(small piece)を送信できるようにし、基地局はコードブックを用いてチャネル品質に関するロバストな情報に変換できる。
【0034】
上述したように、マルチユーザ(MU)MIMOはIEEE802.16、LTE及びUMBによりサポート(仕様)されている。MU-MIMOは、ネットワークが通信チャネル数を増やすことを可能にし、その通信チャネル数は、本質的には空間分割多重アクセス(SDMA)方式を利用して、2以上の移動局の間で1つのOFDM通信リソースユニットを共有することで、同時にサポートできる通信チャネル数である。
【0035】
コードブック方式のMU-MIMOの場合、移動局は各自のCQI及びプリコーダマトリクスインデックス(PMI)の値を基地局にフィードバックし、特に、基地局は(CQIに)対応する移動局との通信に使用する変調及び符号化方式を決定する。
【0036】
プリコーディング(precodig)とは、信号強度が受信機で最大になるように、送信アンテナ各々に与える信号のウェイトを適切に設定する複数の送信アンテナによるビームフォーミングの処理をいう。従ってPMIは、特定の何れかのプリコーディング方式を基地局に通知するための移動局が基地局に通知するデータセットであり、そのプリコーディング方式は、基地局から移動局への下り通信に基地局が使用することを移動局が希望しているものである。しかしながら、多くの通信ネットワークは、移動局からのプリコーディング方式の要求を基地局が無効(override)にし、基地局が自らプリコーディング方式を選択し、そのプリコーディング方式を移動局に通知し、移動局が基地局からのデータを正しく受信できるようにすることを許容している点に留意を要する。何れにせよ、移動局から基地局へ送信されるCQI及びPMIは双方共にチャネル品質を表している。
【0037】
MU-MIMOの場合、基地局は、OFDM通信リソースユニットを共有する他の移動局又は通信局の身元又は正体(identity)を知らない。従って、移動局に何れの変調及び符号化方式を使用するかについての適切な判定を基地局が行うために、多数のCQIフィードバックが送信され、十分な情報を基地局に与える必要がある。例えば、この情報は、SU-MIMO及びMU-MIMOそれぞれに関する複数のCQI(例えば、SU-CQI、最良のMU-CQI、最悪のMU-CQI)を含んでもよく、おそらくは他の移動局との通信のための可能な様々なプリコーディング方式に関するMU-MIMOの複数の最良及び最悪の値を含む。(所与の移動局がMU-MIMOにおいてOFDM通信リソースユニットを共有する他の移動局又は通信局は、以後、干渉プリコーダ(interfering precoder)又はプリコーダと言及する場合がある)。CQI及びPMI制御データを送信するための制御シグナリングオーバーヘッドが増加することは望ましくない。
【0038】
本発明では、MU-MIMOモードに入る場合及びその最中において、多数のCQIフィードバックデータの送信を移動局に要求するのではなく、基地局は情報蓄積部(knowledge pool)を維持及び更新する情報蓄積回路を導入し、情報蓄積部は、移動局の特性情報又はジオメトリ情報(geometry information)と、予想されるCQIの劣化に対する干渉プリコーダの影響について学習した情報とを関連付ける。MU-MIMOのCQIを予想するために、予想されるCQIの劣化が、SU-MIMO動作の際に移動局から取得したCQIフィードバックデータと組み合わせられる。
【0039】
より具体的には、基地局の各々は情報蓄積部を保持し、情報蓄積部は、干渉プリコーダの情報及びユーザジオメトリ情報と、SU-MIMOのCQIフィードバックによる劣化とを対応付ける対応関係(マッピング関係)を有する。干渉プリコーダによる影響の情報は、SU-MIMO及びMU-MIMOの動作の最中に受信したHARQ(ハイブリッド自動再送要求)の統計情報から取得することができ、この点については後述する。
【0040】
ジオメトリ情報は、SNR(信号対雑音比)又はBER(ビットエラーレート)のようなチャネル品質を表す利用可能な任意の情報としてよい。非特許文献1に記載されている例の場合、ジオメトリ情報は、1つの移動局が受信する所望受信信号電力(PS)と、セル内の全ての干渉(PI)プラス雑音(PN)を高速フェージングに関して平均化したものとの比率である:
ジオメトリ(G因子又はGファクタ)=PS/(PI+PN)
図4は、SU-MIMOからMU-MIMOへの切り替える場合におけるジオメトリ及びCQI劣化の間の相関の具体例を表すグラフを示す。例えば、ジオメトリ因子が低かった場合(例えば、-20dB)、SU-MIMOからMU-MIMOの処理へ切り替える際の平均的なCQIの劣化は3dBである。ジオメトリが0dBであった場合、SU-MIMOからMU-MIMOへ切り替えると、平均的なCQIの劣化は4.5dBとなる。ジオメトリ因子が10dBであった場合、その切替により、平均的なCQIの劣化はほぼ6dBとなる。システムがSU-MIMOからMU-MIMOへ切り替わる場合に、移動局のジオメトリは、CQI劣化量という予想される影響を有することが分かる。
【0041】
様々な干渉プリコーダによるCQIへの影響は、SU-MIMOからMU-MIMOの処理へ切り替わった後の最初のOFDMフレームにおけるHARQ統計情報と、SU-MIMOからMU-MIMOの処理へ切り替わる前の最後のフレームのHARQ統計情報とを基地局が比較することで収集されてもよい。2つのフレームの間において自動再送要求(ARQ)が増えたこと(再送が増えたこと)は、一般に、干渉プリコーダに起因するCQI劣化に深く関連している(相関が高い)。
【0042】
動作の際、移動局の各々は、SU-MIMO処理の最中に、好ましいシングルユーザPMIデータ及び各自のCQIデータを基地局にフィードバックする。基地局がMU-MIMOの処理に移ることを予定した場合、基地局は2以上の移動局がMU-MIMOリソースユニットを共有するように組み合わせ、これら2以上の移動局のCQIを情報蓄積マッピング関係により予想されるように調整する。リソースユニットはOFDMサブキャリアとタイムスロットとの特定の組み合わせである。SU-MIMOの場合と同じユニットが使用されてもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
より具体的には、基地局内の回路は、セル内の移動局各々からSU-MIMOの場合のCQI(SU-MIMO-CQI)を受信し、受信したSU-MIMO-CQIを保存する。また、移動局各自が報告してきた好ましいシングルユーザPMIも受信及び保存する。そして、移動局は上記のG因子のようなジオメトリ情報を基地局に送信し、基地局が各移動局のジオメトリ情報を受信及び保存するようにする。ジオメトリ情報は、例えば、ネットワークエントリの際に判定されてもよいし、その後の他の適切な時点において(例えば、一定の期間経過の際に)及び/又は所定のイベントが発生した際に判定されてもよい。
【0044】
基地局がMU-MIMOの処理を開始することを決定する場合、基地局は、セルに在圏する全ての移動局のPMI及びCQIの情報を取得しており、その情報を用いてMU-MIMOリソースユニットにおいてどの移動局同士を組み合わせるかを決定する。この時点において、1つ以上の移動局と共にMU-MIMOモードに移行しつつある移動局の各々について、基地局の予測回路は、移動局の最近のジオメトリ情報及び他の移動局(移動局がOFDM通信リソースユニットを共有する移動局)から受信した最近のPMIを情報蓄積部に入力し、干渉プリコーダ情報及びジオメトリ情報の関数としてCQIの劣化予測を判定する。
【0045】
そして、基地局は或る移動局が最後に報告したSU-MIMO-CQIの値を取得し、それから予測CQI劣化量を減算し、その移動局に対して予想されたMU-MIMO-CQIを取得する。これは通信リソースユニットを共有する移動局各々について実行される。基地局のプリコーダ選択回路は、その後、予想されたCQIに基づいて、下りリンク送信用の変調及び符号化方式をCQIコードブックの中から選択する。選択的に、予想されたCQIは何らかの更なるオフセット又はそれに適用される補正因子を含んでいてもよい。
【0046】
一実施例において、情報蓄積部は移動局各々について別々に維持されてもよい。或いは、複数の移動局に関するデータが1つの情報蓄積部内でまとめて維持することも可能であり、SU-MIMOモードからMU-MIMOモードへ切り替わる際に、複数の移動局に対する情報蓄積部の情報が、移動局各々のCQI劣化を予測するために使用されてもよい。更に、基地局の各々が自信の情報蓄積部を維持してもよいし、ネットワーク全体又はネットワークの何らかの一部分(例えば、BSC)が、複数の基地局/セル又はネットワーク全体にわたる各移動局の情報を収集してもよい。
【0047】
情報蓄積部が干渉プリコーダ情報及び/又はジオメトリ因子情報をCQI劣化に関連付ける方法は、本発明の原理に従って様々な形態をとり得る。単なる一例として、干渉プリコーダの変調方式と、SU-MIMO-CQIからMU-MIMO-CQIへの予想される劣化との関係(関数関係)が1つのテーブル内で保持され、ジオメトリ因子と予想されるCQI劣化との関係が別のテーブル内で保持され、各テーブルからの2つのCQI劣化の値又は数が互いに加算され、予想される全体的なCQI劣化値を求めてもよい。
【0048】
より複雑な実施例の場合、互いにCQIに影響を及ぼす干渉プリコーダの変調方式及びジオメトリ因子の何らかの相互関係における因子にアルゴリズムが使用されてもよい。
【0049】
図5は、本発明の特定の一実施例に従って動作する基地局のフローチャートを概念的に示す。フローチャートは、本発明に特徴的なプロセスを例示するための概念的なフローであり、多くの他の処理及びステップを含む基地局処理の実際の動作を表現しようとするものではないことが、理解されるべきである。更に、フローチャート内のある「ステップ」は、連続的に生じる処理を表し、或いは指定された時点で生じるわけではない割り込み型の処理を表す。すなわち、フローチャートにおける全体的なステップの順序は単なる一例に過ぎない。
【0050】
ステップ501において、基地局は情報蓄積部を継続的に保持及び更新し、情報蓄積部は干渉PMI及びジオメトリ情報をCQIの劣化に関連付ける。
【0051】
ステップ503において、基地局は、移動局各々から要求される好ましいPMIを受信及び保存し、その移動局は関連するセルに在圏しているSU-MIMOで動作している移動局である。このステップは実際には通常の動作状態における基地局により継続的に行われる。
【0052】
次に、ステップ505において、基地局は関連するセルに在圏する移動局各々からCQIを受信して保存する。このステップは、通常の動作プロトコルの一部として基地局において通常的に及び継続的に生じる処理である。
【0053】
次に、ステップ507において、基地局は移動局各々から受信したジオメトリ因子を読み取る。この処理は、通常の動作状態における基地局により継続的に実行される。
【0054】
次に、ステップS509において、基地局が1つ以上のOFDM通信リソースユニットと共にSU-MIMOモードからMU-MIMOモードへ切り替わることを決定した場合、フローはステップS511、513、515及び517の方へ進む。一方、基地局がMU-MIMOモードに切り替わることを決定しなかった場合、ステップ511ないし517は実行されない。その場合、基地局は通常のSU-MIMOモードの動作を継続するに過ぎず、図中、これは最初のステップ501へ戻るフローの分岐により示されている。
【0055】
呼処理の負荷が或る閾値未満であった場合、各チャネルにおいて最高の受信品質をもたらすように、基地局はSU-MIMOモードで動作するのが一般的である。しかしながら、負荷が閾値(例えば、利用可能なチャネル数)を越える場合、MU-MIMOモードに切り替わり、チャネル品質が低下する傾向はあるが、多くの呼の負荷に対するサービスを提供する。目下の例の場合、MU-MIMOモードにおいて、2つの移動局のみがMU-MIMOにおけるOFDM通信リソースを共有していると仮定する。
【0056】
従って、ステップ511において、基地局は、所与のOFDM通信リソースユニットを共有することになる双方の移動局のCQI、PMI及びジオメトリ因子を検査する。次に、ステップ513において、これらの移動局各々について、基地局は情報蓄積部に問い合わせを行い、(i)移動局のジオメトリ因子及び(2)他の移動局の干渉PMIの関数として予想されるCQIの劣化を判定する。次に、ステップ515において、基地局は、その予想されるCQI劣化量を、その移動局について最後に記録されたSU-MIMO-CQIから減算し、その移動局に対する新たなMU-MIMO-CQIを判定する。特に、基地局は、移動局各々について、予想されたMU-MIMO-CQIの関数として変調方式及び符号化方式を選択する。
【0057】
そして、ステップ517において、通信リソースニットを共有する移動局各々について、基地局は、MU-MIMOモードへ切り替えた後の最初のフレームにおけるHARQ情報と、最近のSU-MIMOフレームのHARQ情報とを比較し、移動局各々のCQIに関する他の移動局の干渉プリコーダの影響を推定し、それに応じて情報蓄積部における干渉プリコーダ情報を更新する。
【0058】
本発明はネットワークの基地局、中継局又は他のノードにおいて実現されてもよいことが理解されるであろう。本願において説明されたプロセスは、ネットワークの単独のノード内で完全に実行されてもよいし、或いは1つ以上の基地局及び基地局コントローラ(BSC)のような複数の異なるノードの間で分散して行われてもよい。更に本プロセスは任意のタイプの回路により実行されもよく、その回路は、プログラムされた汎用コンピュータ、ディジタル信号プロセッサ、組み合わせ論理回路、アナログ回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、ファームウェア、ハードウェア、ソフトウェア及びそれらの任意の組み合わせ等であるがこれらに限定されない。更に、本願において説明された多くのステップは、ネットワーク内の基地局又は他のノード内に通常存在する処理部により実行されてもよいことが、理解されるであろう。単なる一例として、本願で説明された様々なデータの送信及び受信は、無線ネットワークの様々なノードに既に存在している既存の送信機、受信機、データプロセッサ、アンテナ及びその他の処理部により実行され、これらはネットワークにおけるデータ及び制御信号の他の全ての通信を実行する。
【0059】
本発明は、本発明による処理を使用する際に、移動局に如何なる修正も要しない。しかしながら、本発明に従って処理を行うように他の移動局が簡易に修正されてもよい。
【0060】
本発明のいくつかの特定の実施例を説明してきたが、様々な代替例、修正例及び改善例が当業者により行われてもよい。そのような代替例、修正例及び改善例は本開示内容から明らかであり、明示的には説明されていなかったとしても本開示内容の一部に含まれることが意図されており、本発明の精神及び範囲内に含まれるように意図されている。従って上記の説明は単なる一例に過ぎず、限定を意味するものではない。本発明は添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定される。
【0061】
本願は西暦2009年4月21日付けで出願された米国特許仮出願番号61/171,292号による優先的利益を享受し、その出願の内容全体が本願のリファレンスに組み入れられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0062】
【非特許文献1】Kumar, S,; Monghal, G.; Nin,J.; Ordas, I.; Pedersen, K.I.; Mogensen, P.E, Autonomous Inter Cell Interference Avoidance under Factional Load for Downlink Long Term Evolution, Vehicular Technology Conference, 2009, VTC Spring 2009, IEEE 69th, published 12 June 2009(ISSN 1550-2252; Print ISBN: 978-1-4244-2517-4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチユーザマルチインプットマルチアウトプット(MU-MIMO)方式を使用して複数の移動局と無線通信を行う無線通信システムにおける基地局であって、
送信機と、
受信機と、
複数のアンテナと、
第1の移動局がMU-MIMOの動作の際に通信リソースユニットを共有することになる他の移動局各々のプリコーディング方式及び各移動局のジオメトリと、シングルユーザMIMO方式及びマルチユーザMIMO方式の間における当該基地局及び各移動局間の通信チャネル品質の差分とを関連付ける情報ベースを維持する情報ベース回路と、
シングルユーザMIMO方式の移動局各々により選択されたプリコーディング方式と、移動局各々のシングルユーザMIMOチャネル品質データと、移動局各々のジオメトリデータとを判定する判定回路と、
第1の移動局が第1の通信リソースユニットを少なくとも1つの第2の移動局と共有するように、シングルユーザMIMO方式からマルチユーザMIMO方式へ前記第1の移動局を切り替えたことに応じて、前記情報ベースを用いて、前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々に対応する前記プリコーディング方式のデータ及びジオメトリデータを、前記第1の移動局及び前記第2の移動局についての予測されたチャネル品質劣化に対応付ける予測回路と
を有する基地局。
【請求項2】
MU-MIMO方式で動作している間に前記第1の通信リソースユニットを共有する各移動局について、前記予測回路は、前記情報蓄積部を利用して、前記第1の通信リソースユニットを共有する他の移動局各々の選択されたシングルユーザプリコーディング方式の干渉の影響(b)及び移動局のジオメトリ(a)に関し、シングルユーザMIMOからマルチユーザMIMOへの切り替えに起因するチャネル品質に対する予想される影響を判定する、請求項1記載の基地局。
【請求項3】
MU-MIMO方式において前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々のダウンリンク通信の変調方式を、移動局のシングルユーザMIMOチャネル品質データとチャネル品質における予想される各自の劣化との関数として選択するプリコーダ選択回路を更に有する、請求項2記載の基地局。
【請求項4】
当該基地局は、下り通信チャネルにおいて直交周波数多重アクセス方式を使用する、請求項1記載の基地局。
【請求項5】
前記チャネル品質の情報が、前記アンテナを通じて前記移動局から受信したチャネル品質インデックス(CQI)を含む、請求項4記載の基地局。
【請求項6】
前記情報ベース回路が、移動局各々の個別的な情報ベースを維持する、請求項1記載の基地局。
【請求項7】
前記情報ベース回路が、複数の移動局の集合的な情報ベースを維持する、請求項1記載の基地局。
【請求項8】
移動局各々の前記ジオメトリ情報が、前記移動局から前記アンテナを介して受信したジオメトリ因子を含む、請求項1記載の基地局。
【請求項9】
移動局各々の前記ジオメトリ情報が、ネットワークエントリの際に取得される、請求項1記載の基地局。
【請求項10】
当該基地局が通信している移動局からハイブリッド自動再送要求(HARQ)を受信する回路と、
(a)シングルユーザMIMO方式で動作している前記第1の移動局と通信している場合のHARQ統計情報と、特定のプリコーディング方式を用いる少なくとも1つの第2の移動局と通信リソースを共有するマルチユーザMIMO方式で動作している前記第1の移動局と通信している場合のHARQ統計情報とを比較することで、比較データを生成し、(b)該比較データを用いて、前記少なくとも1つの第2の移動局の特定のプリコーダ方式が前記第1の移動局のチャネル品質に及ぼす影響を推定する回路と
を更に有し、前記第1の移動局が通信リソースユニットを共有する前記少なくとも1つの第2の移動局のプリコーディング方式と通信チャネル品質との関連性に関する前記情報蓄積部のデータは、前記比較データから少なくとも部分的に生成される、請求項1記載の基地局。
【請求項11】
当該基地局が通信している移動局からハイブリッド自動再送要求(HARQ)を受信する回路と、
(a)シングルユーザMIMO方式で動作している前記第1の移動局と通信している場合のHARQ統計情報と、特定のプリコーディング方式を使用する少なくとも1つの第2の移動局と通信リソースユニットを共有するマルチユーザMIMO方式に切り替わった後の最初のフレームにおいて前記第1の移動局と通信している場合のHARQ統計情報とを比較することで、比較データを生成し、(b)該比較データを用いて、前記少なくとも1つの第2の移動局の特定のプリコーダ方式が前記第1の移動局のチャネル品質に及ぼす影響を推定する回路と
を更に有し、前記第1の移動局が通信リソースユニットを共有する前記少なくとも1つの第2の移動局のプリコーディング方式と通信チャネル品質との関連性に関する前記情報蓄積部のデータは、前記比較データから少なくとも部分的に生成される、請求項1記載の基地局。
【請求項12】
マルチユーザマルチインプットマルチアウトプット(MU-MIMO)方式を使用する無線通信ネットワークにおいて基地局及び移動局の間で下りリンクチャネル品質を予測する方法であって、
移動局各々のジオメトリ及び移動局の各々が通信リソースユニットを共有する少なくとも他の移動局各々のプリコーディング方式と、シングルユーザMIMO方式及びマルチユーザMIMO方式の間における前記基地局及び各移動局間の通信チャネル品質の差分とを関連付ける情報ベースを保持するステップと、
移動局各々により選択されたマルチユーザMIMO方式用のプリコーディング方式、移動局各々のシングルユーザMIMOのチャネル品質データ、及び各移動局のジオメトリデータを判定するステップと、
シングルユーザMIMO方式から、第1の移動局が少なくとも1つの第2の移動局と第1の通信リソースユニットを共有するマルチユーザMIMO方式へ前記第1の移動局が切り替わったことに応答して、情報ベースを利用して、前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々に対応する前記プリコーディング方式のデータ及び前記ジオメトリデータと、前記第1の移動局及び前記第2の移動局各々の予想されたチャネル品質の劣化とを対応付けるステップと、
前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々の下りリンク通信の変調方式を、チャネル品質の予想された劣化及び前記シングルユーザMIMOチャネルの品質データの関数として選択するステップと
を有する方法。
【請求項13】
MU-MIMO方式で動作している間に前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々について、情報蓄積部を用いて、(a)前記移動局の前記ジオメトリ及び(b)前記第1の通信リソースユニットを共有する他の移動局各々に選択されたプリコーディング方式による干渉の影響に関し、シングルユーザMIMOからマルチユーザMIMOに切り替わった際に生じるチャネル品質の影響を予測する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記選択するステップにおいて、前記対応する移動局のシングルユーザMIMO及びのチャネル品質の関数として、前記変調方式を選択する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記基地局が下りリンク通信チャネルに直交周波数多重アクセス方式を使用し、前記チャネル品質情報が前記移動局により測定されたチャネル品質インデックス(CQI)を含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
シングルユーザMIMO方式で動作している前記第1の移動局及び前記基地局間の通信に関するHARQ統計情報と、特定のプリコーディング方式を使用する少なくとも1つの第2の移動局と通信リソースユニットを共有するマルチユーザMIMO方式における前記基地局及び前記第1の移動局間の通信に関するHARQ統計情報とを比較することで、比較データを生成するステップと、
該比較データを用いて、前記少なくとも1つの第2の移動局の特定のプリコーダ方式が前記第1の移動局のチャネル品質に及ぼす影響を推定するステップと
を更に有し、前記第1の移動局が通信リソースユニットを共有する前記少なくとも1つの第2の移動局のプリコーディング方式と通信チャネル品質との関連性に関する情報蓄積部のデータは、前記比較データから少なくとも部分的に生成される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
無線通信ネットワークにおける基地局及び移動局間の下りリンクのチャネル品質を推定する方法であって、マルチユーザマルチインプットマルチアウトプット(MU-MIMO)方式において、前記無線通信ネットワークは、直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)変調方式を使用し、下りリンク通信チャネルにおいてシングルユーザMIMO(SU-MIMO)及びMU-MIMO通信プロトコルの双方で動作することが可能であり、当該方法は、
第1の移動局が通信リソースを共有する少なくとも第2の移動局のプリコーディング方式及び移動局のジオメトリと、SU-MIMO方式及びMU-MIMO方式の間における前記基地局及び各移動局間の下りリンクの通信チャネル品質の差分とを関連づける情報ベースを保持するステップと、
マルチユーザMIMO方式用に各移動局により選択されたプリコーディング方式、各移動局のシングルユーザMIMOのCQI、及び各移動局のジオメトリデータを判定するステップと、
シングルユーザMIMO方式から、第1の移動局が少なくとも1つの第2の移動局と第1の通信リソースユニットを共有するマルチユーザMIMO方式へ前記第1の移動局が切り替わったことに応答して、情報ベースを利用して、前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々に対応する前記プリコーディング方式のデータ及び前記ジオメトリデータと、前記第1の移動局及び前記第2の移動局各々の予想されたチャネル品質の劣化とを対応付けるステップと
を有する方法。
【請求項18】
MU-MIMO方式で動作している間に前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々について、情報蓄積部を用いて、(a)前記移動局の前記ジオメトリ及び(b)前記第1の通信リソースユニットを共有する他の移動局各々に選択されたプリコーディング方式による干渉の影響に関し、シングルユーザMIMOからマルチユーザMIMOに切り替わった際に生じるチャネル品質の影響を予測する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
MU-MIMO方式で動作している間の前記第1の通信リソースユニットを共有する移動局各々に対して、前記移動局のSU-MIMO-CQI及びチャネル品質の予想される劣化の関数として、第1の通信リソースユニットの下りリンク通信の変調方式を選択する、請求項12記載の方法。
【請求項20】
シングルユーザMIMO方式で動作している前記第1の移動局及び前記基地局の間の通信に関するHARQ統計情報と、特定のプリコーディング方式を用いる少なくとも1つの第2の移動局と通信リソースを共有するマルチユーザMIMO方式で動作している前記第1の移動局及び前記基地局間の通信に関するHARQ統計情報とを比較することで、比較データを生成するステップと、
該比較データを用いて、前記少なくとも1つの第2の移動局の特定のプリコーダ方式が前記第1の移動局のチャネル品質に及ぼす影響を推定するステップと
を更に有し、前記第1の移動局が通信リソースユニットを共有する前記少なくとも1つの第2の移動局のプリコーディング方式とCQIとの関連性に関する情報蓄積部のデータは、前記比較データから少なくとも部分的に生成される、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−524481(P2012−524481A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506302(P2012−506302)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000639
【国際公開番号】WO2010/121385
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511225310)ロックスター ビーアイディーシーオー,エルピー (26)
【Fターム(参考)】