説明

無線通信端末および通信方法

【課題】 利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑える。
【解決手段】 無線処理部403は、複数の通信方式に利用する変復調回路や通信プロトコルを有する。通信制御部404は、通信処理選択部405で選択される通信方式に従って待受移行処理を行い、待受け移行処理が成功するまで通信方式を切り替えながら、待受け移行処理を実行する。そして、待受け移行処理が成功すると、該待受け移行処理が完了するまでに要した時間に応じて発信リトライ回数を算出する。すなわち、待受け移行処理が完了するまでの時間が長くなるほど、発信リトライ回数を少なくする。通信制御部404は、発信処理において接続が失敗した場合には、算出された発信リトライ回数だけリトライを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話や携帯情報端末に代表される無線通信技術を利用した無線通信端末および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信方式には、TDMA、CDMA、W−CDMA、1xEV−DO、PHS、無線LAN、UWB、赤外無線等の様々な方式があり、これらの無線通信方式を複数搭載した携帯電話のサービスが拡大してきている。この場合、状況によって通信方式を選択的に切り替えて通信を行う必要がある。
【0003】
この複数の無線通信方式が搭載された場合のリトライ方法として、複数の変調回路を選択的に切替えて送信データの無線送受信速度に応じて、電波送受信の発信リトライ回数を変化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−247133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ノイズ、干渉、減衰などの影響を受ける電波状況では、端末からの送信電波がネットワークに届きにくいときや、ネットワークからの応答が端末に届きにくいときがある。この場合、待受け状態移行後、データ送受信に先立って行われる発信動作においても、ノイズ、干渉、減衰などの影響を受けて電波状況が悪いために通信発信に対してネットワークからの応答がない場合には、回線接続のために発信リトライが行われる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、無線送信速度の異なる変調回路を搭載の端末において、選択した無線送信速度(=通信方式)に応じて、言い換えると、接続完了後の送信エラー率に応じて、発信リトライ回数を変化させる技術である。したがって、データ送受信に先立って行われる発信動作における発信リトライ回数を変化させる技術ではない。ゆえに、従来技術では、発信動作時の発信リトライ回数は固定であるため、電波状況がノイズ、干渉、減衰などの影響を受ける環境では、接続に時間がかかり、さらに、その間、電波を出し続けるので電力も大量に消費してしまうという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決し、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができる無線通信端末および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、請求項1記載の発明による無線通信端末は、通信を行う通信手段と、前記通信手段による通信状況を取得する通信状況取得手段と、前記通信状況取得手段により取得された通信状況に基づいて、前記通信手段による発信動作に際して接続が失敗する場合に行う発信リトライの発信リトライ回数を算出する発信リトライ回数算出手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、好ましい態様として、例えば請求項2記載のように、請求項1記載の無線通信端末において、前記発信リトライ回数算出手段は、前記通信状況取得手段により取得された通信状況により、回線接続が確立するまでに要する時間が長いと示されるほど、発信リトライ回数を少なくするようにしてもよい。
【0009】
また、好ましい態様として、例えば請求項3記載のように、請求項1記載の無線通信端末において、前記通信手段による待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定する時間測定手段を具備し、前記発信リトライ回数算出手段は、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間に基づいて、前記通信手段による発信リトライ回数を算出するようにしてもよい。
【0010】
また、好ましい態様として、例えば請求項4記載のように、請求項3記載の無線通信端末において、前記発信リトライ回数算出手段は、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間が長いほど、発信リトライ回数を少なくするようにしてもよい。
【0011】
また、好ましい態様として、例えば請求項5記載のように、請求項4記載の無線通信端末において、前記発信リトライ回数算出手段は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で、選択されている通信方式の発信リトライ回数を算出するようにしてもよい。
【0012】
また、上記目的達成のため、請求項6記載の発明による無線通信端末は、複数の通信方式を選択的に切り替えて通信に用いる無線通信端末において、複数の通信方式が登録されている通信方式保存手段と、前記通信方式保存手段に登録されている複数の通信方式の中から所定の順番で通信に用いる通信方式を選択する通信方式選択手段と、前記通信方式選択手段により選択された通信方式で待受け移行動作を実行する待受け移行動作実行手段と、前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が失敗した場合には、前記通信方式選択手段により選択される通信方式を切り替える切替手段と、前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が成功した場合には、選択されている通信方式での待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定する時間測定手段と、前記時間測定手段で測定した待受け移行時間に基づいて、当該通信方式の発信リトライ回数を算出する発信リトライ回数算出手段と、選択されている通信方式を用いて発信動作を行う際に、接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数算出手段により算出された発信リトライ回数だけ発信リトライを行う発信動作実行手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
また、好ましい態様として、例えば請求項7記載のように、請求項6記載の無線通信端末において、前記通信方式切替手段は、前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間が所定のしきい値を超えた場合、該待受け移行動作が失敗したと判定するようにしてもよい。
【0014】
また、好ましい態様として、例えば請求項8記載のように、請求項6記載の無線通信端末において、前記発信リトライ回数算出手段は、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間が長いほど、発信リトライ回数を少なくするようにしてもよい。
【0015】
また、好ましい態様として、例えば請求項9記載のように、請求項8記載の無線通信端末において、前記発信リトライ回数算出手段は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で、選択されている通信方式の発信リトライ回数を算出するようにしてもよい。
【0016】
また、好ましい態様として、例えば請求項10記載のように、請求項6記載の無線通信端末において、前記通信方式保存手段に登録されている複数の通信方式の中から通信に用いる通信方式を指定する通信方式指定手段を具備し、前記通信方式選択手段は、前記通信方式指定手段により指定された通信方式を、通信に用いる通信方式として選択するようにしてもよい。
【0017】
また、好ましい態様として、例えば請求項11記載のように、請求項6記載の無線通信端末において、通信種別を指示する機能指示手段を具備し、前記通信方式選択手段は、前記機能指示手段により指定された通信種別に対応する通信方式を、通信に用いる通信方式として選択するようにしてもよい。
【0018】
上記目的達成のため、請求項12記載の発明による通信方法は、所定の通信方式で通信を行う通信方法であって、発信動作に先立って通信状況を取得し、該通信状況に基づいて発信リトライ回数を算出し、発信動作を行う際に接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数だけ発信リトライを行うことを特徴とする。
【0019】
また、好ましい態様として、例えば請求項13記載のように、請求項12記載の通信方法において、前記発信リトライ回数は、前記取得された通信状況により、回線接続が確立するまでに要する時間が長いと示されるほど小さな値となるようにしてもよい。
【0020】
また、好ましい態様として、例えば請求項14記載のように、請求項12記載の通信方法において、待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該測定された待受け移行時間に基づいて、前記発信リトライ回数を算出するようにしてもよい。
【0021】
また、好ましい態様として、例えば請求項15記載のように、請求項14記載の通信方法において、前記発信リトライ回数は、前記測定された待受け移行時間が長いほど小さいな値となるようにしてもよい。
【0022】
また、好ましい態様として、例えば請求項16記載のように、請求項15記載の通信方法において、前記発信リトライ回数は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で算出されるようにしてもよい。
【0023】
また、上記目的達成のため、請求項17記載の発明による通信方法は、通信に用いる複数の通信方式を選択的に切り替えて通信を行う通信方法において、複数の通信方式の中から所定の順番で通信に用いる通信方式を選択し、該選択された通信方式で待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が失敗した場合には、通信方式を切り替えて、再度、待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が成功した場合には、選択されている通信方式での待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該測定した待受け移行時間に基づいて、当該通信方式の発信リトライ回数を算出し、選択されている通信方式を用いて発信動作を行う際に、接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数だけ発信リトライを行うことを特徴とする。
【0024】
また、好ましい態様として、例えば請求項18記載のように、請求項17記載の通信方法において、前記待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間が所定のしきい値を超えた場合、該待受け移行動作が失敗したと判定して通信方式を切り替えるようにしてもよい。
【0025】
また、好ましい態様として、例えば請求項19記載のように、請求項17記載の通信方法において、前記発信リトライ回数は、前記測定された待受け移行時間が長いほど小さな値となるようにしてもよい。
【0026】
また、好ましい態様として、例えば請求項20記載のように、請求項19記載の通信方法において、前記発信リトライ回数は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で算出されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、通信状況取得手段により、通信手段による通信状況を取得し、発信リトライ回数算出手段により、前記通信状況取得手段により取得された通信状況に基づいて、前記通信手段による発信動作に際して接続が失敗する場合に行う発信リトライの発信リトライ回数を算出するようにしたので、すなわち、通信状況に応じて発信リトライ回数を変えるようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0028】
また、請求項2記載の発明によれば、前記発信リトライ回数算出手段により、前記通信状況取得手段により取得された通信状況により、回線接続が確立するまでに要する時間が長いと示されるほど、発信リトライ回数を少なくするようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0029】
また、請求項3記載の発明によれば、時間測定手段により、前記通信手段による待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、前記発信リトライ回数算出手段により、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間に基づいて、前記通信手段による発信リトライ回数を算出するようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0030】
また、請求項4記載の発明によれば、前記発信リトライ回数算出手段により、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間が長いほど、発信リトライ回数を少なくするようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0031】
また、請求項5記載によれば、前記発信リトライ回数算出手段により、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で、選択されている通信方式の発信リトライ回数を算出するようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0032】
また、請求項6記載の発明によれば、複数の通信方式を通信方式保存手段に登録しておき、通信方式選択手段により、登録されている複数の通信方式の中から所定の順番で通信に用いる通信方式を選択し、待受け移行動作実行手段により、選択された通信方式で待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が失敗した場合には、切替手段により、前記通信方式選択手段により選択される通信方式を切り替え、待受け移行動作が成功した場合には、時間測定手段により、選択されている通信方式での待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該待受け移行時間に基づいて、発信リトライ回数算出手段により、当該通信方式の発信リトライ回数を算出し、発信動作実行手段により、選択されている通信方式を用いて発信動作を行う際に、接続が失敗する場合、算出された発信リトライ回数だけ発信リトライを行うようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0033】
また、請求項7記載の発明によれば、前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間が所定のしきい値を超えた場合、前記通信方式切替手段により、該待受け移行動作が失敗したと判定するようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信方式を迅速に選択することができるので、利用可能なネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0034】
また、請求項8記載の発明によれば、前記発信リトライ回数算出手段により、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間が長いほど、発信リトライ回数を少なくするようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0035】
また、請求項9記載の発明によれば、前記発信リトライ回数算出手段により、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で、選択されている通信方式の発信リトライ回数を算出するようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0036】
また、請求項10記載の発明によれば、通信方式選択手段により、通信方式指定手段により指定された通信方式を、通信に用いる通信方式として選択するようにしたので、状況に応じて適切な通信方式を指定することができるという利点が得られる。
【0037】
また、請求項11記載によれば、通信方式選択手段は、機能指示手段により指定された通信種別に対応する通信方式を、通信に用いる通信方式として選択するようにしたので、通話、メール送受信、Webなどの機能に応じて適切な通信方式を選択することができるという利点が得られる。
【0038】
また、請求項12記載の発明によれば、発信動作に先立って通信状況を取得し、該通信状況に基づいて発信リトライ回数を算出し、発信動作を行う際に接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数だけ発信リトライを行うようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0039】
また、請求項13記載の発明によれば、前記発信リトライ回数を、前記取得された通信状況により、回線接続が確立するまでに要する時間が長いと示されるほど小さな値となるようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0040】
また、請求項14記載によれば、待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該測定された待受け移行時間に基づいて、前記発信リトライ回数を算出するようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0041】
また、請求項15記載の発明によれば、前記発信リトライ回数を、前記測定された待受け移行時間が長いほど小さいな値となるようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0042】
また、請求項16記載によれば、前記発信リトライ回数を、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で算出されるようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0043】
また、請求項17記載の発明によれば、複数の通信方式の中から所定の順番で通信に用いる通信方式を選択し、該選択された通信方式で待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が失敗した場合には、通信方式を切り替えて、再度、待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が成功した場合には、選択されている通信方式での待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該測定した待受け移行時間に基づいて、当該通信方式の発信リトライ回数を算出し、選択されている通信方式を用いて発信動作を行う際に、接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数だけ発信リトライを行うようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0044】
また、請求項18記載の発明によれば、前記待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間が所定のしきい値を超えた場合、該待受け移行動作が失敗したと判定して通信方式を切り替えるようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信方式を迅速に選択することができるので、利用可能なネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0045】
また、請求項19記載によれば、前記発信リトライ回数を、前記測定された待受け移行時間が長いほど小さな値となるようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【0046】
また、請求項20記載の発明によれば、前記発信リトライ回数を、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で算出するようにしたので、無駄な発信リトライを試みることがなくなり、利用可能な通信ネットワークにできるだけ迅速に接続することができ、電力消費を抑えることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では、通信状況(あるいは電波状況)の良し悪しについて言及しているが、該通信状況(あるいは電波状況)の良し悪しは、無線基地局と接続できるまでに要する時間の長短で判定している。すなわち、無線基地局と接続できるまでに要する時間が短いほど、通信状況が良好とし、ノイズ、干渉、減衰などの影響を受けて電波状況が悪く、無線基地局と接続できるまでに要する時間が長いほど、通信状況が悪い(あるいは不良)としている。
【0048】
A.第1実施形態
A−1.第1実施形態の構成
図1は、本発明の第1実施形態による無線通信端末の構成を示すブロック図である。図において、401は複数の通信方式を搭載し、本発明に必要となる機能を搭載した通信端末である。402は通信端末401が通信に利用する送受信のアンテナである。無線処理部403は、搭載した複数の通信方式に利用する変復調回路や通信プロトコルを有する回路部である。例えば、TDMAやCDMAや無線LANなどの変復調回路や通信プロトコルが搭載されている。
【0049】
携帯電話や携帯情報端末に代表される無線通信技術を利用した通信端末は、各所に配置された無線基地局を介して交換機に接続され、これにより通信ネットワークに接続されて他の端末等と音声通信やデータ通信を行うことができるようになっている。通信方式には、TDMA、CDMA、W−CDMA、1xEV−DO、PHS、無線LAN、UWB、赤外無線等、様々な方式があり、これらの無線通信方式を複数搭載した携帯電話のサービスも拡大してきている。この場合、状況によって通信方式を選択的に切り替えて通信を行う必要がある。そこで、所定の時間以内で通信が確立するまでの待受け状態にならなかった場合には、順次通信方式を切り替えるようになっている。
【0050】
通信制御部404は、無線処理部403を制御し、通信制御を行う回路部であり、後述する通信処理選択部405で選択される通信方式に従って、無線処理部403を制御して通信を切替え、待受移行処理を行い、発信処理を行う機能を含んでいる。通信制御部404は、これらの機能を実行するために、待受移行処理部404−1、発信処理部404−2、通信切替処理部404−3を備えている。
【0051】
待受移行処理部404−1は、基地局からの呼出の受信や発信を行うことができる待受け状態へ移行するまでの待受け移行処理を実行する。発信処理部404−2は、音声通信やデータ通信を行えるように、無線基地局との間でデータチャネルでの接続を確立する発信処理を実行する。通信切替処理部404−3は、待受け移行処理が失敗した場合に他の通信方式へ切り替える処理を実行する。
【0052】
通信処理選択部405は、ユーザインタフェース406からの指示に従い、通信処理選択する回路部である。該通信処理選択部405は、ユーザインタフェース406からの通信開始要求を受け取り、発信タイマ、待受けタイマを起動させ、通信制御部404における待受け処理が成功しない場合に順次切り替えられる通信方式を保持し、該通信方式での待受け時間に従って発信リトライ回数、発信リトライ残回数を算出する機能を含んでいる。通信処理選択部405は、これらの機能を実行するために、通信処理タイマ制御部405−1、発信通信方式保持部405−2、発信リトライ残回数保存部405−3を備えている。
【0053】
通信処理タイマ制御部405−1は、待受け処理に係る時間を計時する待受けタイマと、待受け移行処理および発信処理を含む全体の時間を計時する発信タイマとを制御する。発信通信方式保持部405−2は、図2に示すように、本発明に係る通信切替処理に利用する通信方式を所定の順番(優先順位)で保持する。この登録順番は、端末にあらかじめ設定されている場合や、ユーザが設定可能な場合、端末が自動的に受信電波強度を測定して自動設定する場合、GPSなどの位置情報を取得して、その位置情報から設定を構築する場合などが考えられる。図2に示す例では、通信方式に優先順位を設け、所定の時間以内で通信が確立するまでの待受け状態にならなかった場合には、優先順位に従って順次通信方式を切り替えるようになっている。図2に示す例では、CDMA、TDMA、無線LAN、…という順で優先順位が設定されている。
【0054】
発信リトライ残回数保存部405−3は、搭載されている複数の通信方式で利用可能な発信リトライ残回数を保持する。ユーザインタフェース406は、表示部やキー入力部を備え、ユーザが端末にコマンドを発生させ、設定値を変更するために使用される。
【0055】
なお、図1には、無線通信端末の構成として、本発明に係わる主要部しか示していないが、無線通信端末が携帯電話である場合には、当然、音声通信で必要なマイクやレシーバ、音声CODECなどが追加して設けられるものである。
【0056】
A−2.第1実施形態の動作
次に、上述した第1実施形態の動作について説明する。
(a)待受け移行処理および発信処理
ここで、図3は、本第1実施形態による無線通信端末401の動作を説明するためのフローチャートである。ユーザインタフェース406を介してユーザから通信開始要求(発信操作:音声発信やデータ通信発信)が発生すると(ステップS100)、発信タイマを作動させる(ステップS101)。ノイズ、干渉、減衰などの影響を受けて電波状況が悪く、無線基地局との接続で長時間電波を発信しなければならない場合、電源の消耗も激しくなってしまい、さらにその後接続不可となる場合が多い。このような事態を回避するために発信タイマを起動しておく。
【0057】
次に、端末が電波を捕捉して、発信動作に移行できる待受け状態に移行する時間を計時するための待受けタイマを作動させ(ステップS102)、図2に示す発信通信方式保持部の優先順位に従って通信方式を切替える(ステップS103)。初回では、最優先順位の通信方式が選択される。なお、ステップS103での通信方式の切替え時には、切替え後の通信方式において待受け状態への移行が完了するまでに掛かる時間を計測するための待受け移行時間計測タイマも作動させる。次に、選択された通信方式で電波を捕捉する待受け移行処理を実行する(ステップS104)。待受け移行処理では、図4に示すように、先ず、a)パイロットチャネル又はパイロット信号(pilot)の捕捉を行い、パイロットチャネルが捕捉できた場合は、次に、b)同期チャネル(Sync ch)の捕捉を行い、同期チャネルが捕捉できた場合は、次に、c)ページングチャネルでオーバーヘッド情報(OVHD)の捕捉を行い、捕捉したオーバーヘッド情報に基づいてページングチャネルを受信(監視)するためのパラメータを設定変更する。これにより、呼出や報知情報を受信することが出来るd)待受け状態が確立する。
【0058】
このとき、選択された通信方式で電波捕捉が成功し、待受け状態に移行できたかどうかを判定する(ステップS105)。そして、待受け状態に移行できなかった場合には、さらに待受けタイマが満了していないかをチェックする(ステップS106)。ここで、待受けタイマが満了していない場合には、ステップS103に戻り、優先順位に従って次の通信方式に切替え、再度、待受け状態に移行できるかを確認する。以下、待受け状態に移行できなかった場合には、待受けタイマが満了するまで、通信方式を切り替えながら待受け移行処理を繰り返す。
【0059】
そして、待受移行処理が成功せず、待受けタイマ満了してしまった場合には、発信タイマと待受けタイマをクリアして(ステップS107)、発信が失敗した旨を表示する等の発信失敗処理を行い(ステップS108)、発信を終了する。
【0060】
一方、いずれかの通信方式で待受け状態への移行が成功した場合には、発信リトライ回数算出処理を実行する(ステップS109)。発信リトライ回数算出処理では、待受け状態への移行が成功した通信方式において待受け状態へ移行するまでに要した時間に従って、すなわち、待受け移行時間計測タイマによって計測された時間に従って、選択された通信方式での発信処理における発信リトライ回数を算出する。発信リトライ回数算出処理では、待受け移行時間が短い場合には、良好な電波状況とみなして、選択した通信方式での発信リトライ回数を多くし、待受け移行時間が長い場合には、電波状況が悪いとみなして、その通信方式での発信リトライ回数を少なくする。
【0061】
なお、本第1実施形態では、後述する発信処理において、ノイズ、干渉、減衰などの影響を受けて電波状況が悪いなどの理由で発信に成功しなかった場合、ここで算出した発信リトライ回数だけ発信処理をリトライすることができるわけであるが、該発信リトライ回数だけリトライしても発信が成功しなかった場合には、通信方式を切り替えて再び待受け移行処理から実行するようになっている。つまり、通信方式を切り替えるたびに、その通信方式での発信リトライ回数を算出するようになっている。
【0062】
しかし、いくつもの通信方式を切り替えることになった場合、発信に成功するまでの全体としての発信リトライ回数が多くなり、ユーザが待たされることになる。
【0063】
そこで、本第1実施形態では、全体としての発信リトライ回数に制限を設けており、使用可能な発信リトライ回数を発信リトライ残回数として記憶しておき、該発信リトライ残回数を元に発信リトライ回数を通信方式毎に分配する方式を採用している。この発信リトライ回数算出に関しては、前回の発信処理における発信失敗理由を利用してもよい。なお、上記発信リトライ残回数を含む発信リトライ回数算出処理の詳細については後述する。
【0064】
発信リトライ回数が算出されると、この時点では、既に待受け状態にあるため、ここで待受けタイマをクリアする(ステップS110)。次に、選択した通信方式で発信処理を行う(ステップS111)。次に、発信処理が成功したかどうかを判定し(ステップS112)、発信処理に成功した場合には、発信タイマをクリアし(ステップS115)、通信を開始する(ステップS116)。
【0065】
なお、発信処理では、具体的には、図4に示すように、先ず、A)Origination Messageの無線基地局への送信を行い、無線基地局から応答があると、B)無線基地局からのデータチャネルの割り当てを待機し、無線基地局からデータチャネルの割り当てがあると、C)割り当てられたチャネルでのConnect(接続)を行う。これにより、D)データ通信が行える状態となる。なお、本実施例における上記発信処理の成功判定は、A)Origination Messageの基地局への送信に対する応答の有無により行う。また、通信の相手先データを送信するタイミングは、データ通信を開始する前であれば何時でもよい。通信の相手先データを送信するタイミングは、通常、各通信システムで規定されており、通信の相手先データをOrigination Messageの一部として送信するシステムも、通信の相手先データを接続されたデータチャネルで送信するシステムも存在する。従って、通信の相手先データは、各システムで規定されているタイミングで送信すればよい。
【0066】
一方、発信処理が成功しなかった場合には、発信リトライ回数が満了したか否かを判定し(ステップS113)、満了していなければ、ステップS111へ戻り、発信処理を再度行う。具体的には、図4に示すように、A)Origination Messageの基地局への送信を繰り返す。そして、発信リトライ回数が満了しても発信処理が成功しない場合には、発信タイマが満了したか否かを判定し(ステップS114)、発信タイマが満了していなければ、ステップS102に戻り、待受けタイマを再作動させるとともにステップS103で通信方式を切り替えて、上述した待受け移行処理から繰り返し実行する。
【0067】
また、発信処理が成功せず、かつ発信リトライ回数および発信タイマが満了になった場合には、発信タイマをクリアし(ステップS117)、発信が失敗した旨を表示する等の発信失敗処理を行う(ステップS118)。
【0068】
(b)発信リトライ回数算出処理
図5は、本第1実施形態による発信リトライ回数算出処理を説明するためのフローチャートである。まず、現在選択している通信方式でリトライできる発信リトライ残回数(N)をメモリ発信リトライ残回数保存部405−3から読込む(ステップS200)。発信リトライ残回数(N)には、初期値として、規定の全発信リトライ回数(NALL)が設定されている。
【0069】
次に、ステップS3の通信方式切替え時に作動された待受け移行時間計測タイマの計測時間、すなわち選択した通信方式での待受け状態になるまでに要した時間t(図4のa)〜d)までの時間)を読込む(ステップS201)。
【0070】
次に、上記時間t、発信リトライ回数を設定するための時間閾値T〜Tmax(但し、T<T1<…<Tmax)、発信リトライ残回数N、時間閾値T〜Tmaxに対応する発信リトライ回数補正値N〜Nmax(但し、N≦N≦…≦Nmax≦N≦NALL)に従って、選択した通信方式での発信リトライ回数nを算出する(ステップS202〜S208)。例えば、選択した通信方式での待受け状態になるまでに要した時間tが0≦t<Tの場合(ステップS202)には、選択した通信方式での発信リトライ回数nは、発信リトライ残回数Nと設定した補正値Nとから算出し、n=N−Nとなる。但し、N≦N≦…≦Nmax≦N≦NALLと設定してあるため、時間tが短い程、発信リトライ回数nが大きい値になる。
【0071】
なお、発信リトライ回数補正値N〜Nmaxは、時間tだけでなく電波強度を考慮して設定するのが望ましい。すなわち、電波強度が強い場合は、一般に、電波強度が弱い場合に比べて、通信状況は良いと考えられるので、選択した通信方式での待受け状態になるまでに要した時間tが同一であっても、電波強度が強い場合には、発信リトライ回数補正値を少なく設定して発信リトライ回数を多くし、電波強度が弱い場合には、発信リトライ回数補正値を少なく設定して発信リトライ回数を少なくするのが望ましい。なお、電波強度には、受信信号強度表示信号(RSSI)や、エネルギ強度を示すEc/Io、搬送波対干渉雑音電力比(C/I)などを利用することが考えられる。
また、携帯電話や携帯情報端末などの無線通信端末は、何処でも使用できるものであるが、無線通信端末を自宅やオフィスのような特定の場所でのみ使用する人もいる。無線通信端末をこのような特定の場所でのみ使用する場合、各通信方式における通信環境の時間的変化は少ない。従って、このような使用状況においては、発信リトライ回数補正値N〜Nmaxを、前回の発信リトライ時の失敗理由なども考慮して設定するのが望ましい。例えば、時間tは短いのに接続ができなかったという接続失敗理由である場合には、発信リトライ回数補正値を増やして発信リトライ回数を減らすのが望ましい。また、良好な電波強度(電波強度が強い)にも関わらず、時間tが長い場合には、オーバーリーチが考えられるため、発信リトライ回数を減らすように発信リトライ回数補正値を設定するのが望ましい。このようにすることにより、過去に接続失敗した通信方式での発信リトライ回数やオーバーリーチとなっている可能性が高い通信方式での発信リトライ回数を減らすことができ、結果的に無駄な消費電力を抑えることができるとともに接続率を向上させることが可能となる。なお、これらの方法は、無線通信端末が常に同じ場所で使用される場合にのみ有効な方法であるので、これらの方法を採用する場合には、無線通信端末に、発信リトライ回数補正値の設定に前回の発信リトライ時の失敗理由などを反映させるか否かを切替え設定できるモードを設け、使用者が反映させるモードを選択した場合にのみ反映させる構成にするのが望ましい。
【0072】
次に、発信リトライ残回数Nを算出する(ステップS209)。発信リトライ残回数Nは、ステップS200で読込んだ発信リトライ残回数Nから、ステップS202〜S208で算出したこの通信方式での発信リトライ回数nを引いた値(N−n)で算出できる。そして、ステップS103で次に選択され得る通信方式のリトライのために、算出された発信リトライ残回数Nを発信リトライ残回数保存部405−3保存する(ステップS210)。
【0073】
上述した第1実施形態によれば、選択した通信方式において待受け動作に要する時間が短い程、発信リトライ回数を多くし、選択した通信方式において待受け動作に要する時間がかかった場合には、電波状況が悪いと判断し、その通信方式での発信動作を中止するか、リトライ動作回数を少なくするようにしたので、電波状況に応じて接続率を向上できるとともに、接続までの時間を制限できることで無駄な電力消費を抑制することが可能となる。
【0074】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。前述した第1実施形態では、待受け移行処理から発信処理が一連の処理であったが、本第2実施形態では、待受け画面までの待受け移行処理で待受け画面になった後に、ユーザの発信操作を行ったイベントとして発信処理を実行する場合について説明する。なお、無線通信端末の構成について図1と同様であるので説明を省略する。
【0075】
B−1.第2実施形態の動作
(a)待受け移行処理
図6は、本第2実施形態による待受け移行処理の動作を説明するためのフローチャートである。ユーザインタフェース406を介してユーザが電源をオンにすると(ステップS300)、待受けタイマを作動させ(ステップS301)、図2に示す発信通信方式保持部の優先順位に従って通信方式を切替える(ステップS302)。このとき、待受け移行時間計測タイマも作動させる。次に、選択された通信方式で電波を捕捉する待受け移行処理を実行する(ステップS303)。
【0076】
その後、選択された通信方式で電波捕捉が成功し、待受け状態に移行できたかどうかを判定する(ステップS304)。そして、待受け状態に移行できなかった場合には、さらに待受けタイマが満了していないかをチェックする(ステップS305)。ここで、待受けタイマが満了していない場合には、ステップS302に戻り、優先順位に従って次の通信方式に切替え、再度、待受け状態に移行できるかを確認する。以下、待受け状態に移行できなかった場合には、待受けタイマが満了するまで、通信方式を切り替えながら待受け移行処理を繰り返す。
【0077】
そして、待受移行処理が成功せず、待受けタイマ満了してしまった場合には、待受けタイマをクリアして(ステップS306)、電波が受信できない旨を表示する等の待受け失敗処理を行い(ステップS307)、当該処理を終了する。
【0078】
一方、いずれかの通信方式で待受け状態への移行が成功した場合には、発信リトライ回数算出処理を実行する(ステップS308)。該発信リトライ回数算出処理は、前述した第1実施形態と同様であり、待受け移行時間が短い場合には、良好な電波状況とみなして、選択した通信方式での発信リトライ回数を多くし、待受け移行時間が長い場合には、電波状況が悪いとみなして、その通信方式での発信リトライ回数を少なくする。
【0079】
次に、発信リトライ回数を保存し(ステップS309)、待受けタイマをクリアする(ステップS310)。そして、待受け画面を表示し(ステップS311)、この状態でユーザによる通信開始要求(発信操作:音声発信やデータ通信発信)を待機する。
【0080】
(b)発信処理
次に、図7は、本第2実施形態による発信処理の動作を説明するためのフローチャートである。上述した待受け画面において、ユーザインタフェース406を介してユーザから通信開始要求(発信操作:音声発信やデータ通信発信)が発生すると(ステップS400)、発信タイマを作動させる(ステップS401)。次に、上述した待受け移行処理で保存した発信リトライ回数を読み出し(ステップS402)、続いて、待受け移行処理で選択した現在の通信方式で発信処理を行う(ステップS403)。
【0081】
次に、発信処理が成功したかどうかを判定し(ステップS404)、発信処理に成功した場合には、発信タイマをクリアし(ステップS407)、通信を開始する(ステップS408)。
【0082】
一方、発信処理が成功しなかった場合には、発信リトライ回数が満了したか否かを判定し(ステップS405)、満了していなければ、発信タイマが満了したか否かを判定する(ステップS406)。そして、発信リトライ回数も発信タイマも満了していなければ、ステップS403に戻り、発信処理を繰り返し実行する。
【0083】
一方、発信処理が成功せず、発信リトライ回数もしくは発信タイマが満了になった場合には、発信タイマをクリアし(ステップS409)、発信が失敗した旨を表示する等の発信失敗処理を行い(ステップS410)、当該処理を終了する。
【0084】
上述した第2実施形態によれば、選択した通信方式において待受け動作に要する時間が短い程、発信リトライ回数を多くし、選択した通信方式において待受け動作に要する時間がかかった場合には、電波状況が悪いと判断し、その通信方式での発信動作を中止するか、リトライ動作回数を少なくするようにしたので、電波状況に応じて接続率を向上できるとともに、接続までの時間を制限できることで無駄な電力消費を抑制することが可能となる。
【0085】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態は、使用すべき通信方式をユーザにより選択可能としたことを特徴とする。無線通信端末の発信操作においては、ユーザが意識的にその場に合わせて通信方式を選択する状況がありうる。例えば、無線LANによる通信サービスが提供されているオフィスでは、他の通信方式で試みるより、直接、無線LANにより通信回線を確立して発信した方が効率的である。この場合、上述した実施形態で説明したような、発信通信方式保持部405−2に保持されている通信方式の優先順位に従う方法ではなく、使用すべき通信方式をユーザに選択させるようにした方が効率的である。
【0086】
ここで、図8は、本第3実施形態による通信方式切替処理を説明するためのフローチャートである。なお、図3に対応する部分については省略する。まず、ユーザインタフェース406を介してユーザから通信開始要求(発信操作:音声発信やデータ通信発信)が発生すると(ステップS500)、発信通信方式保持部405−2に保持されている複数の通信方式の一覧を表示する(ステップS501)。次に、ユーザにより通信方式が選択されたか否か判断し(ステップS502)、一覧表示からいずれかの通信方式が選択されると、選択された通信方式を通信に用いる通信方式とする(ステップS503)。次に、発信タイマの作動を開始し(ステップS504)、以下、図3のステップS104の待受け処理以降へ進み、発信リトライ回数算出処理や発信処理などを行う。
【0087】
上述した第3実施形態によれば、通信を行う場所の状況に応じて、使用すべき通信方式をユーザにより選択可能としたので、より利便性を向上させることが可能となる。
【0088】
D.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本第4実施形態では、ユーザにより選択された機能、例えば、通話、メール送受信、Webアクセスなどに応じて、予め各機能に割り当てた通信方式を一意に選択することを特徴とする。本第4実施形態では、図9に示すように、発信通信方式保持部405−2に機能毎に通信方式を保持している。
【0089】
次に、図10は、本第4実施形態による通信方式切替処理を説明するためのフローチャートである。なお、図3に対応する部分については省略する。まず、ユーザインタフェース406を介してユーザから通信開始要求(発信操作:音声発信やデータ通信発信)が発生すると(ステップS600)、当該携帯端末が提供する機能(通話、メール、Webなど)の一覧を表示する(ステップS601)。次に、ユーザによりいずれかの機能が選択されたか否か判断し(ステップS602)、一覧表示からいずれかの機能が選択されると、選択された機能に対応する通信方式を通信に用いる通信方式とする(ステップS603)。次に、発信タイマの作動を開始し(ステップS604)、以下、図3のステップS104の待受け処理以降へ進み、発信リトライ回数算出処理や発信処理などを行う。
【0090】
上述した第4実施形態によれば、通信の機能に応じて、使用すべき通信方式が自動的に選択するようにしたので、より利便性を向上させることが可能となる。
【0091】
E.第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について説明する。前述した第1実施形態では、予め通信方式に優先順位が設定されており、該優先順位は固定であった。本第5実施形態では、過去の通信実績(成功したか否か)に応じて、該当通信方式の優先順位を変更するようにしたことを特徴とする。
【0092】
図11は、本第5実施形態による優先順位の変更処理を説明するための概念図である。発信通信方式保持部405−2に、当初、図11(a)に示すように、優先順位が高い順にCDMA、TDMA、無線LAN、…というように設定されているものとする。また、各通信方式には、前回の通信リトライ回数n1、n2、n3、…が記憶されている。通信終了後、通信リトライ回数n1、n2、n3のうち回数の多い通信方式、すなわち電波状況が良好であった通信方式を優先順位の上位に変更する。すなわち、図1(b)に示すように、優先順位「3」の無線LANの通信リトライ回数n3が、他の通信方式の通信リトライ回数n1、n2に比べて大きい値となると、該無線LANの優先順位を上げる。
【0093】
上述した第5実施形態によれば、次回の通信方式切替処理では、電波状況が良好であった通信方式、すなわち待受け移行が成功しやすい通信方式を最初に選択するようにしたので、電波状況に応じて接続率を向上できるとともに、接続までの時間を制限できることで無駄な電力消費を抑制することが可能となる。
【0094】
なお、上述した本発明の各実施の形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲を実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態による無線通信端末の構成を示すブロック図である。
【図2】本第1実施形態における発信通信方式の保持状態を説明するための概念図である。
【図3】本第1実施形態による無線通信端末401の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本第1実施形態による待受け移行処理および発信処理を説明するための概念図である。
【図5】本第1実施形態による発信リトライ回数算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態による待受け移行処理の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本第2実施形態による発信処理の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】本第3実施形態による通信方式切替処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4実施形態による発信通信方式の保持状態を説明するための概念図である。
【図10】本第4実施形態による通信方式切替処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第5実施形態による優先順位の変更処理を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0096】
401 通信端末
402 アンテナ
403 無線処理部(通信手段)
404 通信制御部(通信状況取得手段、発信リトライ回数算出手段、切替手段)
404−1 待受移行処理部(通信状況取得手段、待受け移行動作実行手段)
404−2 発信処理部(発信動作実行手段)
404−3 通信切替処理部(発信リトライ回数算出手段、切替手段)
405 通信処理選択部(通信方式選択手段)
405−1 通信処理タイマ制御部(時間測定手段)
405−2 発信通信方式保持部(通信方式保存手段)
405−3 発信リトライ残回数保存部
406 ユーザインタフェース(通信方式指定手段、機能指示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を行う通信手段と、
前記通信手段による通信状況を取得する通信状況取得手段と、
前記通信状況取得手段により取得された通信状況に基づいて、前記通信手段による発信動作に際して接続が失敗する場合に行う発信リトライの発信リトライ回数を算出する発信リトライ回数算出手段と
を具備することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記発信リトライ回数算出手段は、前記通信状況取得手段により取得された通信状況により、回線接続が確立するまでに要する時間が長いと示されるほど、発信リトライ回数を少なくすることを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記通信手段による待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定する時間測定手段を具備し、
前記発信リトライ回数算出手段は、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間に基づいて、前記通信手段による発信リトライ回数を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記発信リトライ回数算出手段は、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間が長いほど、発信リトライ回数を少なくすることを特徴とする請求項3記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記発信リトライ回数算出手段は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で、選択されている通信方式の発信リトライ回数を算出することを特徴とする請求項4記載の無線通信端末。
【請求項6】
複数の通信方式を選択的に切り替えて通信に用いる無線通信端末において、
複数の通信方式が登録されている通信方式保存手段と、
前記通信方式保存手段に登録されている複数の通信方式の中から所定の順番で通信に用いる通信方式を選択する通信方式選択手段と、
前記通信方式選択手段により選択された通信方式で待受け移行動作を実行する待受け移行動作実行手段と、
前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が失敗した場合には、前記通信方式選択手段により選択される通信方式を切り替える切替手段と、
前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が成功した場合には、選択されている通信方式での待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定する時間測定手段と、
前記時間測定手段で測定した待受け移行時間に基づいて、当該通信方式の発信リトライ回数を算出する発信リトライ回数算出手段と、
選択されている通信方式を用いて発信動作を行う際に、接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数算出手段により算出された発信リトライ回数だけ発信リトライを行う発信動作実行手段と
を具備することを特徴とする無線通信端末。
【請求項7】
前記通信方式切替手段は、前記待受け移行動作手段による待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間が所定のしきい値を超えた場合、該待受け移行動作が失敗したと判定することを特徴とする請求項6記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記発信リトライ回数算出手段は、前記時間測定手段により測定された待受け移行時間が長いほど、発信リトライ回数を少なくすることを特徴とする請求項6記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記発信リトライ回数算出手段は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で、選択されている通信方式の発信リトライ回数を算出することを特徴とする請求項8記載の無線通信端末。
【請求項10】
前記通信方式保存手段に登録されている複数の通信方式の中から通信に用いる通信方式を指定する通信方式指定手段を具備し、
前記通信方式選択手段は、前記通信方式指定手段により指定された通信方式を、通信に用いる通信方式として選択することを特徴とする請求項6記載の無線通信端末。
【請求項11】
通信種別を指示する機能指示手段を具備し、
前記通信方式選択手段は、前記機能指示手段により指定された通信種別に対応する通信方式を、通信に用いる通信方式として選択することを特徴とする請求項6記載の無線通信端末。
【請求項12】
所定の通信方式で通信を行う通信方法であって、
発信動作に先立って通信状況を取得し、該通信状況に基づいて発信リトライ回数を算出し、発信動作を行う際に接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数だけ発信リトライを行うことを特徴とする通信方法。
【請求項13】
前記発信リトライ回数は、前記取得された通信状況により、回線接続が確立するまでに要する時間が長いと示されるほど小さな値となることを特徴とする請求項12記載の通信方法。
【請求項14】
待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該測定された待受け移行時間に基づいて、前記発信リトライ回数を算出することを特徴とする請求項12記載の通信方法。
【請求項15】
前記発信リトライ回数は、前記測定された待受け移行時間が長いほど小さいな値となることを特徴とする請求項14記載の通信方法。
【請求項16】
前記発信リトライ回数は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で算出されることを特徴とする請求項15記載の通信方法。
【請求項17】
通信に用いる複数の通信方式を選択的に切り替えて通信を行う通信方法において、
複数の通信方式の中から所定の順番で通信に用いる通信方式を選択し、該選択された通信方式で待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が失敗した場合には、通信方式を切り替えて、再度、待受け移行動作を実行し、該待受け移行動作が成功した場合には、選択されている通信方式での待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間を測定し、該測定した待受け移行時間に基づいて、当該通信方式の発信リトライ回数を算出し、選択されている通信方式を用いて発信動作を行う際に、接続が失敗する場合、前記発信リトライ回数だけ発信リトライを行うことを特徴とする通信方法。
【請求項18】
前記待受け移行動作が完了するまでの待受け移行時間が所定のしきい値を超えた場合、該待受け移行動作が失敗したと判定して通信方式を切り替えることを特徴とする請求項17記載の通信方法。
【請求項19】
前記発信リトライ回数は、前記測定された待受け移行時間が長いほど小さな値となることを特徴とする請求項17記載の通信方法。
【請求項20】
前記発信リトライ回数は、予め設定された全発信リトライ回数の範囲内で算出されることを特徴とする請求項19記載の通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−42313(P2006−42313A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154191(P2005−154191)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】