説明

無線通信装置、及びそのキャリアセンス方法

【課題】キャリアセンスで、良質の空きチャネルを短時間で捜す。
【解決手段】アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換器22と、周波数変換回路22から出力された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させる複数のフィルタ23a,23bと、各フィルタ23a,23bを通過した信号の各レベルを検知するレベル検知器24a,24bと、各検知器24a,24bでの検知結果を格納するR01〜R04と、R01〜R04に連続する四つのチャネルの信号レベルが格納されると、連続する三つのチャネルの信号レベルから、中間のチャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル判定部72と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定され、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンスを行う無線通信装置、及びそのキャリアセンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンスを行う無線通信装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
この無線通信装置の受信機は、ローカル周波数を発振する局部発振器を備え、このローカル周波数を変えることで、予め設定されている複数のチャネルの信号を取得して、各チャネルの信号レベルを全て検知している。この受信機は、その後、特定のチャネルの信号のレベルが予め定められたレベルより低ければ、この特定のチャネルは空きチャネルであると判定し、さらに、この特定のチャネルの両隣のチャネルの信号のレベルが予め定められたレベルよりも低ければ、この特定のチャネルに対して隣接チャネル妨害が無いものとして、この特定のチャネルを良質の空きチャネルであるとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−196013号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、予め設定されている複数のチャネルの信号のレベルを全て検知した後に、いずれのチャネルが良質の空きシャネルであるか否かの判定を行っているため、特定のチャネルの信号レベルが検知された時点では、この特定のチャネルが良質の空きチャネルであっても、実際に、この特定のチャネルが良質の空きチャネルであるか否かの判定を行った時点では、この特定のチャネルが良質の空きシャネルではなくなる可能性が大きくなる、つまり誤判定の可能性が高くなるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、空きチャネルの誤判定の可能性を低下させることができる無線通信装置、及びそのキャリアセンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するための無線通信装置は、
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定され、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンスを行う無線通信装置において、
無線信号を受信するアンテナと、
周波数の異なる各種ローカル周波数の信号を発信する局部発振器と、
前記ローカル周波数の信号が入力し、前記アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換回路と、
前記周波数変換回路から出力された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタと、
前記フィルタを通過した信号の信号レベルを検知する信号レベル検知器と、
前記信号レベル検知器で検知された前記信号レベルに応じて、前記フィルタを通過した信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出器と、
前記フィルタを通過した信号を復調する復調器と、
を備え、
前記フィルタを複数備えていると共に、複数の該フィルタを通過した信号の信号レベルをそれぞれ検知する複数の信号レベル検知器を備え、前記復調器は、複数のフィルタのうちのいずれか一つのフィルタを通過した信号を復調する、ことを特徴とする。
【0008】
ここで、複数の前記フィルタでの通過周波数の帯域は、相互に、1チャネル分の帯域幅ずつズレ、複数の該フィルタからは、連続する複数のチャネルのそれぞれの帯域の周波数の信号を出力する、ことが好ましい。
【0009】
この場合、複数の前記信号レベル検知器毎に設けられ、各信号レベル検知器で検知された信号レベルが格納される第1レベル格納領域及び第2レベル格納領域と、
前記第1レベル格納領域及び第2レベル格納領域への信号レベルの格納を制御すると共に、前記局部発信器から発信する前記信号の前記ローカル周波数を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、各信号レベル検知器で検知された信号レベルを各第1レベル格納領域に格納した後、各第1レベル格納領域に格納された各信号レベルを各第2レベル格納領域に移し、複数の前記フィルタから、先に該フィルタを通過した信号が示すチャネルに対して該フィルタの数量分だけシフトしたチャネルを示す信号が通過するよう、前記局部発振器から発信する前記信号の前記ローカル周波数を変え、新たに各信号レベル検知器で検知された信号レベルを各第1レベル格納領域に格納し、
前記空きチャネル検知器は、各第1レベル格納領域及び各第2レベル格納領域に格納された信号レベルのうちから、連続する三つのチャネルを示す各信号の信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、ものであることが好ましい。
【0010】
この場合、前記空きチャネル検出器は、前記連続する三つのチャネルのうちの前記中間のチャネルが良質の空きチャネルではないと判定すると、各第1レベル格納領域及び各第2レベル格納領域に格納された信号レベルのうちから、該連続する三つのチャネルに含まれない一のチャネルを含む新たな連続する三つのチャネルを示す各信号の信号レベルを判断して、該新たな連続する三つのチャネルのうちの中間のチャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定する、ものであることが好ましい。
【0011】
前記問題点を解決するための他の無線通信装置は、
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定され、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンスを行う無線通信装置において、
無線信号を受信するアンテナと、
周波数の異なる各種ローカル周波数の信号を発信する局部発振器と、
前記ローカル周波数の信号が入力し、前記アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換器と、
前記周波数変換回路から出力された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタと、
前記フィルタを通過した信号の信号レベルを検知する信号レベル検知器と、
前記信号レベル検知器で検知された前記信号レベルに応じて、前記フィルタを通過した信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出器と、
を備え、
前記空きチャネル検出器は、
前記信号レベル検知器が、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルを検知すると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、検知した連続する三つのチャネルの信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、ことを特徴とする。
【0012】
この場合、前記空きチャネル検出器は、前記信号レベル検知器が、連続する四つチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルを検知すると、連続する三つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下ではないときに、該連続する四つのチャネルのうちの残っているチャネルを含む連続する三つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、ものであることが好ましい。
【0013】
また、前記他の無線通信装置は、
前記フィルタを複数備えていると共に、複数の該フィルタを通過した信号の信号レベルをそれぞれ検知する複数の信号レベル検知器を備え、複数の前記フィルタでの通過周波数の帯域は、相互に、1チャネル分の帯域幅ずつズレている、ことが好ましい。
【0014】
前記問題点を解決するためのキャリアセンス方法は、
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定されている無線通信装置で、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンス方法において、
周波数の異なる各種ローカル周波数を発振する発振工程と、
前記ローカル周波数が入力し、アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換工程と、
前記周波数変換工程で周波数が変えられた信号を複数に分岐する信号分岐工程と、
前記信号分岐工程で分岐されたそれぞれの信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタリング工程と、
前記信号分岐工程で分岐された各信号に対して前記フィルタリング工程が施されたそれぞれの信号の信号レベルを検知するレベル検知工程と、
前記レベル検知工程で検知された各信号レベルに応じて、前記フィルタリング工程が施された信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出工程と、
を実行し、
前記フィルタリング工程での通過周波数の帯域は、該フィルタリング工程が施された各信号相互で、1チャネル分の帯域幅ずつズレている、
ことを特徴とする。
【0015】
この場合、前記空きチャネル検出工程では、複数の前記レベル検知工程で、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、連続する三つのチャネルの信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、ことが好ましい。
【0016】
また、前記問題点を解決するための他のキャリアセンス方法は、
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定されている無線通信装置で、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンス方法において、
周波数の異なる各種ローカル周波数を発振する発振工程と、
前記ローカル周波数が入力し、アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換工程と、
前記周波数変換工程で周波数が変換された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタリング工程と、
前記フィルタリング工程が施された信号の信号レベルを検知するレベル検知工程と、
前記レベル検知工程で検知された各信号レベルに応じて、前記フィルタリング工程が施された信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出工程と、
を実行し、
前記空きチャネル検出工程では、
前記信号レベル検知工程で、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、連続する三つのチャネルの信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、周波数変換回路から出力された信号を複数に分岐して、それぞれの信号をフィルタリングし、それぞれの信号レベルを検知しているので、一回のキャリアセンシング動作で、複数のチャネルの信号レベルを検知でき、キャリアセンスに要する総合時間を短縮化できる。したがって、各チャネルの信号レベルに応じて、特定のチャネルが良質の空きチャネルであるか否かの判定に関して、誤判定の可能性を低下させることができる。
【0018】
また、他の発明では、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、連続する三つのチャネルの信号レベルに応じて、中間チャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定しているで、予め定められている複数のチャネルの全ての信号レベルを検知した後に、各チャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定するよりも、短時間で良質の空きチャネルを見つけ出す可能性が高まる。したがって、この他の発明でも、特定のチャネルが良質の空きチャネルであるか否かの誤判定の可能性を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る無線通信装置について、図面を用いて説明する。
【0020】
まず、図1〜図6を用いて、第1の実施形態の無線通信装置について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の無線通信装置は、TDMA−TDD(Time Division Multiple Access−Time Division Duplex)方式で通信を行うPHS(Personal Handy Phone System)基地局100である。
【0022】
このPHS基地局10は、アンテナ11と、アンテナ11で受信した電波から搬送波を除去して信号を取り出す一方で、信号を搬送波に載せてアンテナ11に送るRF(Radio Frequency)部20と、RF部20からの信号をTDMA信号に復調する復調部30と、復調部30からのTDMA信号を分解するTDMA/TDD処理部40と、TDMA/TDD処理部40からの信号を伸長復号化するADCPM(Adaptive Differential Pulse Code modulation)トランスコーデック部50と、ISDNインタフェース部60と、以上の各部を制御するプロセッサ70と、このプロセッサ70が処理を行う際等に使用するRAM80と、各種プログラムやデータ等が記憶されているROM90と、を備えている。
【0023】
なお、ここでは、図面を簡略化するために、変調部を描いていないが、実際には、このPHS基地局10は、変調部を備えている。したがって、ADCPMトランスコーデック部50は、前述したように、TDMA/TDD処理部40からの信号を伸長復号化すると共に、ISDNインタフェース部60からの音声信号やデータ信号を圧縮符号化する。さらに、TDMA/TDD処理部40は、前述したように、復調部30からのTDMA信号を分解すると共に、ADCPMトランスコーデック部50からの信号をTDMA信号に変換して、このTDMA信号を前述の変調部へ送る。この変調部は、TDMA信号を変調してRF部に渡す。RF部は、この変調されたTDMA信号を搬送波に載せて、アンテナ11からPHS端末に送る。
【0024】
RF部20は、アンテナ11で受信した無線信号を増幅する増幅器21と、ローカル周波数の信号を発信する局部発振器25と、ローカル周波数の信号が入力して、増幅器21からの無線信号の周波数を変える周波数変換器22と、周波数変換器22からの信号から特定周波数成分を除去する第1及び第2フィルタ23a,23bと、各フィルタ23,23bからの信号のレベルを検知する第1及び第2レベル検知器24a,24bと、を備えている。
【0025】
各フィルタ23a,23bは、後述の1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、その他の帯域の周波数成分を除去するフィルタである。また、第1フィルタ23aの通過帯域に対して、第2フィルタ23bの通過帯域は、1チャネル分の帯域幅分ズレている。第1フィルタ23aを通過した信号は、第1レベル検知器24aに入力し、この信号のレベルが検知さる。また、第2フィルタ23bを通過した信号は、第2レベル検知器24bに入力し、この信号のレベルが検知さる。なお、予め設定されている複数のチャネルのうちから、空きチャネルを捜すキャリアセンスの際には、各フィルタ23,23bからの信号がそれぞれ第1及び第2レベル検知器24a,24bに入力するが、実際に、PHS端末1と音声信号やデータ信号による無線通信を行う際には、第1フィルタ23aを通過した信号が復調部30に入力する。
【0026】
プロセッサ70は、第1及び第2レベル検知器24a,24bでの検知結果が一時的に格納されるレジスタ71と、このレジスタ71に格納されたレベル検知結果に基づいて特定のチャネルが良質の空きチャネルがあるか否かを判定する空きチャネル判定部と、レジスタ71へのレベル検知結果の格納制御や空きチャネル判定部72の動作制御等を行うキャリアセンス制御部73と、キャリアセンス制御部73からの指示に従って局部発信器25が発する信号のローカル周波数を設定する周波数設定部74と、図示されていない呼制御部とを有している。なお、以上の空きチャネル判定部72、キャリアセンス制御部73、周波数設定部74、呼制御部は、いずれも、ROM90に記憶されているプログラムをプロセッサ70が実行することで機能する。
【0027】
レジスタ71は、第1レベル検知器24aでの検知結果が格納されるR01,R03と、第2レベル検知器24bでの検知結果が格納されるR02,R04とがある。
【0028】
ISDNインタフェース60は、ISDN回線でPHS網に接続されている。図示されていない他のPHS基地局は、このPHS網にISDN回線で接続されている。このPHS網は、例えば、サーバシステムを介して、IP網等に接続されている。
【0029】
次に、このPHS基地局100が採用するTDMA−TDD方式について、図2を用いて簡単に説明する。
【0030】
このTDMA−TDD方式は、一つの搬送波上のディジタル信号を5ms毎のTDMAフレームに分割し、1つのTDMAフレームを、上り用に4スロット、下り用に4スロット割り当てる方式である。また、複数のTDMAフレームのうち、あるTDMAフレームでは、上り用の4スロットのうちの一つのスロット、及び下り用の4スロットのうちの一つのスロットを制御チャネル(以下、CCH(Control Channel)とする)スロットとし、残りを通信チャネル(以下、TCH(Traffic Channe1)とする)スロットとしている。1つのTDMAフレーム時間、つまり、TDMAフレーム周期は、前述したように、5msで、20TDMAフレーム毎にCCHスロットでのデータ送信が行われる。このCCHデータ送信の周期は、100ms(=5ms×20)で、CCH間欠送信周期と呼ばれている。なお、前述したTDMA信号とは、以上で説明したTDMAフレームの各スロット毎の信号のことである。
【0031】
次に、図5に示すフローチャートに従って、本実施形態のPHS基地局によるキャリアセンス処理について説明する。
【0032】
まず、キャリアセンス制御部73は、変数nを0に設定すると共に、チャネル数をこのPHS基地局100に与えられている数mに設定する(S1)。周波数設定部74は、キャリアセンス制御部73からの指示に従って、局部発振器25から発信する信号のローカル周波数をfsy(n)に設定する(S2)。この結果、ローカル周波数fsy(n)の信号が、局部発振器25から周波数変換器22へ発信される。
【0033】
このとき、周波数変換部22には、上りの空きスロットを利用してアンテナ11で受信した信号も入力する。こここで、アンテナ11で受信可能な信号の周波数を受信周波数frf(0)〜frf(m)(m:チャネル数)とし、周波数変換回路22から出力される信号の周波数を中間周波数fif(0)〜fif(m)とすると、各信号の周波数の関係は、以下の式(1)のようになる。
【0034】
中間周波数fif(0〜m)=受信周波数frf(0〜m)−ローカル周波数fsy(n)
m:チャネル数
n:整数で、0〜mチャネル番号のうちのいずれかのチャネル番号
この式(1)からも理解できるように、周波数変換器22からの出力信号は、チャネルnの信号の受信周波数frf(n)に相当する中間周波数fif(n)の他に、中間周波数fif(0〜(n-1),(n+1)〜m)も含まれているため、この出力信号のレベルを直ちに検知したのでは、各チャネルの総合信号レベルRSSI(0〜m)が検知されるだけで、各チャネル毎の信号レベルを検知できない。そこで、本実施形態では、周波数変換器22の後段には、あるチャネル信号の中心周波数を通過中心周波数とし、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させるフィルタ23a,23bを設けている。具体的には、第1フィルタ23aの通過中心周波数f01(n)は、ローカル周波数fsy(n)のときに、fif(n)となる。また、第2フィルタ23bの通過中心周波数f02(n)は、ローカル周波数fsy(n)のときに、第1フィルタ23aの通過中心周波数f01(n)より1チャネル帯域分多いfif(n+1)となる。したがって、この場合、周波数変換器22からの出力信号のうち、チャネルnの周波数成分の信号が第1フィルタ23aを通過し、この信号のレベルRSSI(n)が第1レベル検知器24aで検知され、チャネル(n+1)の周波数成分の信号が第2フィルタ23bを通過し、この信号のレベルRSSI(n+1)が第2レベル検知器24bで検知される。すなわち、局部発振器25からローカル周波数fsy(n)の信号を発信すると、チャネルnの周波数成分の信号のレベルRSSI(n)と、チャネル(n+1)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+1)とが同時に検出される。なお、特定のチャネルの周波数成分の信号のレベルは、一般的に、RSSI(Receive Signal Strength Indicator)と呼ばれるので、ここでは、上記のように、チャネルnの周波数成分の信号レベルをRSSI(n)として表す。
【0035】
各レベル検知器24a,24bで検知された信号レベルRSSI(n),RSSI(n+1)は、RAM80内の信号レベル用バッファに格納された後、キャリアセンス制御部73により、レジスタ71のR01,R02に格納される(S3,S4)。
【0036】
キャリアセンス制御部73は、続いて、レジスタ71のR01に格納されている第1レベル検知器24aのレベル検知結果をR03に移し、R02に格納されている第2レベル検知器24bのレベル検知結果をR04に移す(S5)。そして、キャリアセンス制御部73は、変数nを(n+2)に変えて、周波数設定部74に対して、ローカル周波数fsy(n)にするよう指示する(S6)。この結果、この周波数設定部74により、局部発振器21から周波数変換器22へ、ローカル周波数fsy(n=n+2)の信号が発信される(S7)。このとき、周波数変換器22に、前述の場合と同様、受信周波数frf(0)〜frf(m)の信号が入力すると、周波数変換器22からの出力信号のうち、チャネル(n+2)の周波数成分の信号が第1フィルタ23aを通過し、この信号のレベルRSSI(n+2)が第1レベル検知器24aで検知され、チャネル(n+3)の周波数成分の信号が第2フィルタ23bを通過し、この信号のレベルRSSI(n+3)が第2レベル検知器24bで検知される。
【0037】
各レベル検知器24a,24bで検知された信号レベルは、前述のステップ3,4での処理と同様に、RAM80内の信号レベル用バッファに格納された後、キャリアセンス制御部73により、レジスタ71のR01,R02に格納される(S8,S9)。この結果、レジスタ71のR01,R02,R03,R04には、それぞれ、チャネル(n+2)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+2)、チャネル(n+3)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+3)、チャネルnの周波数成分の信号のレベルRSSI(n)、チャネル(n+1)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+1)が格納されることになる。なお、RSSI( )の()内のnの値は、ステップ6で定めた値ではなく、ステップ6の前段階で定めた値である。
【0038】
先の従来技術の欄で述べた特許文献1に記載の技術では、仮に、チャネル番号が0〜100の101チャネルがある場合、図6(a)に示すように、局部発振器からの出力信号の周波数をfsy(0)からfsy(100)まで、101チャネル分の101回シフトしなければ、0チャネルから100チャネルの各周波数成分の信号レベルRSSI(0)〜RSSI(100)を得られない。一方、本実施形態では、前述したように、一度に、2チャネル分の周波数成分の各信号レベルを検知できるので、図6(b)に示すように、局部発振器25からの出力信号の周波数をfsy(0)からfsy(100)まで、50回シフトすれば、0チャネルから100チャネルの各周波数成分の信号レベルRSSI(0)〜RSSI(100)を得ることができる。したがって、本実施形態では、キャリアセンスに要する周波数シフトの総合時間を短縮化することができる。
【0039】
前述したように、レジスタ71のR01,R02,R03,R04に、それぞれ、チャネル(n+2)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+2)、チャネル(n+3)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+3)、チャネルnの周波数成分の信号のレベルRSSI(n)、チャネル(n+1)の周波数成分の信号のレベルRSSI(n+1)が格納されると(S8、S9)、空きチャネル判定部72は、R04に信号レベルが格納されているチャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定する(S10)。なお、R04には、ステップ6の前の段階での変数nを基準にした場合、第(n+1)チャネルの周波数成分の信号のレベルRSSI(n+1)が格納されている。
【0040】
良質の空きチャネルであるか否かの判定(S10)では、図3に示すように、予め記憶されている第1閾値と、この第1閾値のレベルよりも低い第2閾値を用いる。第1閾値よりも信号レベルが高い場合には、該当チャネルは使用されていると状態で、第2閾値よりも信号レベルが低い場合には、該当チャネルは確実に使用されていない状態である。この2つの閾値により、信号レベルは、第2閾値以下のA状態と、第2閾値よりも高く且つ第1閾値以下のB状態と、第1閾値よりも高いC状態のいずれかの状態に分類できる。
【0041】
ここでは、連続する三つのチャネルのうちの中間チャネルの信号のレベルがA状態で、中間チャネルの両隣のチャネルの信号のレベルがA又はB状態のとき、中間チャネルが良質の空きチャネルであると判定する。両隣のチャネルの信号のレベルがA又はB状態であることを良質空きチャネルの判定条件にしているのは、中間チャネルが隣接チャネル妨害を受けないためである。例えば、図3の例では、連続する三つのチャネルn,(n+1),(n+2)に着目すると、これらのチャネルのうちの中間チャネル(n+1)の信号のレベルはA状態で、且つ隣接チャネルn,(n+2)の信号レベルがB,A状態であるから、中間チャネル(n+1)は、良質の空きチャネルであると判定される。また、連続する三つのチャネル(n+1),(n+2),(n+3)に着目すると、これらのチャネルのうちの中間チャネル(n+2)の信号のレベルはA状態であるものの、隣接チャネル(n+1),(n+3)の信号レベルがA,C状態であるから、中間チャネル(n+2)は、良質の空きチャネルではないと判定される。なお、ここでは、2つの閾値を用いて、良質の空きチャネルであるか否かを判定するが、2つの閾値の中間の値を閾値とする一つの閾値を用いて、良質の空きチャネルであるか否かを判定してもよい。この場合、連続する三つのチャネルのの信号レベルが全て閾値以下であると、中間チャネルが良質の空きチャネルであると判定する。
【0042】
2つの閾値を用いて、良質の空きチャネルであるか否かの判定では、連続する三つのチャネルの各信号レベルの各種組み合わせのうち、いずれの組み合わせのときに良質の空きシャネルと判定できるかを知る必要がある。そこで、本実施形態では、図4に示すように、連続する三つのチャネルのうち、中間のチャネルが良質の空きチャネルになる、三つのチャネルの信号レベルの全ての組み合わせを判定表として、予めROM90に記憶している。この判定表では、R04に格納されているチャネル(n+1)を中間チャネルとしたきに、この中間チャネル(n+1)が良質の空きチャネルになる、連続する三つのチャネルの信号レベルの組み合わせと、R01に格納されているチャネル(n+2)を中間チャネルとしたきに、この中間チャネル(n+2)が良質の空きチャネルになる、連続する三つのチャネルの信号レベルの組み合わせとが示されている。
【0043】
空きチャネル判定部72は、R04に格納されている信号レベルのチャネル(n+1)が良質の空きチャネルであるか否かを判定する際(S10)、このチャネル(n+1)を中間チャネルとして、両隣のチャネルn及び(n+2)の信号レベルと、この中間チャネル(n+1)の信号レベルとが、それぞれ、前述のA,B,Cのうちのどの状態であるかを判断し、各チャネルの信号レベルの状態の組み合わせが前述の判定表に示されている組み合わせのうちの一つに該当するとき、この中間チャネル(n+1)を良質の空きチャネルであると判定する。
【0044】
空きチャネル判定部72が、ステップ10で、R04に格納されている信号レベルのチャネルが良質の空きチャネルではないと判定すると、ステップ16に進み、良質の空きチャネルであると判定すると、キャリアセンス制御部73は、変数nを(n−1)に変えて、周波数設定部74に対して、ローカル周波数fsy(n)にするよう指示する(S11)。この結果、この周波数設定部74により、局部発振器21から周波数変換器22へ、ローカル周波数fsy(n)の信号が発信される(S12)。
【0045】
ここで、ステップ11,12の段階での変数nについて簡単に説明する。変数nは、ステップ6で変数nがn+2になり、その後、ステップ11で変数nが(n−1)になっているので、ステップ6の前の段階での変数nを基準にすると、ステップ11で設定した変数nは(n+1)(=(n+2)−1)である。
【0046】
従って、ステップ12で、局部発振器21から発信される信号のローカル周波数fsy(n)は、ステップ6の前の段階での変数nを基準とすると、チャネル(n+1)に対応するローカル周波数fsy(n+1)である。このため、ステップ12で、局部発振器21から周波数変換器22へ、ローカル周波数fsy(n)の信号が発信されると、第1レベル検知器24aでは、ステップ10で良質の空きチャネルであると判定したチャネル(n+1)の信号レベルが再度検知される。この検知結果はRAM80に格納され、空きチャネル判定部72により、チャネル(n+1)が空きチャネルであるか否かが再度判定される。すなわち、ステップ10で良質の空きチャネルであると判定したチャネル(n+1)に関して、直前確認が行われる(S13)。
【0047】
この空きチャネルの直前確認の結果でも、チャネル(n+1)が空きチャネルであることが確認された場合、キャリアセンス制御部73は、このチャネル(n+1)が空きチャネルである旨のTDMA信号をTDMA/TDD処理部40に作成させる。TDMA/TDD処理部40により作成されたTDMA信号は、図示されていない変調部で変調された後、RF部20で搬送波に載せられて、アンテナ11から各PHS端末1,1へ発信される。つまり、各PHS端末1,1へ空きチャネルの割り当てが通知され(S15)、一連のキャリアセンス処理を終了する。また、ステップ14で、チャネル(n+1)が空きチャネルではないと確認されると、ステップ16に進む。
【0048】
ステップ10及びステップ14で、チャネル(n+1)が空きチャネルではないとされ、ステップ16に進むと、ここでは、空きチャネル判定部72が、R02に格納されている信号レベルのチャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定する。R02には、前述したように、ステップ6の前の段階での変数nを基準にして、チャネル(n+2)の信号レベルが格納されている。空きチャネル判定部72は、このステップ16でも、ステップ10と同様に、このチャネル(n+2)を中間チャネルとして、両隣のチャネル(n+1)及び(n+3)の信号レベルと、この中間チャネル(n+2)の信号レベルとが、それぞれ、前述のA,B,Cのうちのどの状態であるかを判断し、各チャネルの信号レベルの状態の組み合わせが前述の判定表に示されている組み合わせのうちの一つに該当するとき、この中間チャネル(n+2)を良質の空きチャネルであると判定する。
【0049】
チャネル(n+2)が良質の空きチャネルではないときには、ステップ20に進み、チャネル(n+2)が良質の空きチャネルであるときには、ステップ17に進んで、前述のステップ12〜14と同様に、チャネル(n+2)の信号レベルを再度検知するためのローカル周波数fsy(n)の設定(S17)、このチャネル(n+2)が空きチャネルであるか直前確認(S18)、チャネル(n+2)が空きチャネルであるか否かの判断(S19)が行われる。チャネル(n+2)が空きチャネルでないとされた場合、ステップ20に進み、空きチャネルであるとされた場合には、前述と同様に、各PHS端末1,1に空きチャネル割り当てを通知して(S15)、一連のキャリアセンス処理を終了する。
【0050】
ステップ16及びステップ19で、チャネル(n+2)が空きチャネルでないとされたると、キャリアセンス制御部73は、変数nが(m−1)であるか否かを判断し、変数nが(m−1)であると判断した場合、つまり、全てのチャネルのキャリアセンシングが終了したと判断した場合には、空きチャネルがない旨のTDMA信号をTDMA/TDD処理部40に作成させる。TDMA/TDD処理部40で作成されたこのTDMA信号は、図示されていない変調部で変調された後、RF部20で搬送波に載せられて、アンテナ11から各PHS端末1,1へ発信される。つまり、各PHS端末11,11へ空きチャネル無しが通知されて(S21)、一連のキャリアセンス処理を終了する。また、変数nが(m−1)ではないと判断した場合、つまり、全てのチャネルのキャリアセンシングが終了していないと判断した場合には、ステップ5に進み、レジスタ71のR01,R02に格納されているレベル検知結果をR03,R04に移し、変数nを(n+2)に変えて(S6)、新たなチャネルの信号レベルの検知を行う。
【0051】
以上のように、本実施形態では、連続する三つのチャネルの信号レベルが検知されると、さらに連続するチャネルの信号レベルが検知されるのを待たずに、中間チャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定しているので、仮に、この中間チャネルが良質の空きチャネルである場合には、予め定められている全てのチャネルの信号レベルを検知した後に、各チャネルが空きチャネルであるか否かを判定するよりも、極めて早いタイミングで良質の空きチャネルを探し出すことができる。なお、本実施形態では、連続する三つのチャネルの信号レベルを検知した時点で、実際には、連続する四つのチャネルの信号レベルを検知している。
【0052】
また、本実施形態では、良質空きチャネル判定に必要な最小限の回数のキャリアセンシングを実行することにより、連続する四つのチャネルの信号レベルが得られるため、連続する四つのチャネルのうちの連続する三つのチャネルの中間チャネルが良質空きチャネルでない場合でも、再度、キャリアセンシングを実行しなくても、他の連続する三つの連続するチャネルの中間チャネルが良質の空きチャネルであるか否かの判定を行うことができる。
【0053】
従って、本実施形態では、以上の2つの効果、さらに、前述した、キャリアセンスに要する周波数シフトの総合時間を短縮化することができるという効果により、良質の空きチャネルを探し出すまでの時間を極めて短縮化でき、良質の空きチャネルであるか否かの判定の誤りを少なくすることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1フィルタ23aの通過中心周波数と第2フィルタ23bの通過中心周波数とは、1チャネル帯域分ズレているが、必ずしも1チャネル帯域分ズレている必要はない。例えば、第1フィルタ23aの通過中心周波数と第2フィルタ23bの通過中心周波数とは、2チャネル帯域分ズレている場合には、図6(c)に示すように、ローカル周波数がfsy(n)のとき、第1レベル検知器24aの出力はRSSI(n)となり、第2レベル検知器24bの出力はRSSI(n+2)となる。続いて、ローカル周波数をfsy(n+1)にすると、第1レベル検知器24aの出力はRSSI(n+1)となり、第2レベル検知器24bの出力はRSSI(n+3)となる。この結果、二回のローカル周波数の発振で、以上の実施形態と同様に、連続する四つのチャネルの信号レベルRSSI(n),RSSI(n+2)、RSSI(n+1)、RSSI(n+3)を取得することができる。さらに、次のローカル周波数をfsy(n+4)、その次のローカル周波数をfsy(n+5)にすると、この二回のローカル周波数の発振で、連続する四つのチャネルの信号レベルRSSI(n+4),RSSI(n+6)、RSSI(n+5)、RSSI(n+7)を取得することができる。
【0055】
しかしながら、ローカル周波数fsy(n)を発振した後、次のローカル周波数の変数nは、先の変数nに1を加えたもの(n+1)であるのに対して、ローカル周波数fsy(n+1)を発振した後、次のローカル周波数の変数nは、先の変数nに3を加えたもの(n+4)になり、変数の管理が面倒になるという不具合がある。
【0056】
さらに、チャネル(n+3)を中間チャネルとした場合に、この中間チャネル(n+1)が良質の空きチャネルであるか否かの判定には、三つの連続するチャネルの信号レベルRSSI(n),RSSI(n+2)、RSSI(n+3)、RSSI(n+4)が必要となるため、3回分のローカル周波数の発振でのレベル検出結果を保持しておかなければならない。このため、レジスタの各領域の数量が6個=2個×3回必要になり、先の実施形態よりもレジスタの格納領域の数量を増やす必要がある。
【0057】
このように、第1フィルタ23aの通過中心周波数と第2フィルタ23bの通過中心周波数とを1チャネル帯域分ズラす必要はないが、先の実施形態のように、1チャネル帯域分ズレていないと、様々な不具合が生じる。
【0058】
次に、図7を用いて、第2の実施形態としての無線通信装置について説明する。
【0059】
本実施形態の無線通信装置も、第1の実施形態と同様に、PHS基地局100aである。
【0060】
本実施形態のPHS基地局100aも、第1の実施形態と同様に、アンテナ11とRF部20aと復調部30とTDMA/TDD処理部40とADCPMトランスコーデック部50とISDNインタフェース部60とプロセッサ70aとRAM80とROM90と、さらに、図示されていない変調部とを備えている。
【0061】
RF部20aの構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるが、周波数変換器22の後段に、三つのフィルタ23a,23b,23cが設けられていると共に、三つのレベル検知器24a,24b,24cが設けられている点で、第1の実施形態と異なる。第1フィルタ23aには、このフィルタ23aを通過した信号のレベルを検知する第1レベル検知器24aが接続され、第2フィルタ23bには、このフィルタ23bを通過した信号のレベルを検知する第2レベル検知器24bが接続され、第3フィルタ23cには、このフィルタ23cを通過した信号のレベルを検知する第3レベル検知器24ac接続されている。この実施形態でも、各フィルタ23a,23b,23cの通過中心周波数は、互いに、1チャネル分の帯域幅分ズレている。
【0062】
プロセッサ70aの構成も、基本的に第1の実施形態と同様であるが、各レベル検知器で検知された検知結果が格納されるレジスタ71aには、第1レベル検知器24aでの検知結果が格納されるR01,R04と、第2レベル検知器24bでの検知結果が格納されるR02,R05と、第3レベル検知器24cでの検知結果が格納されるR03、R06とがある。
【0063】
あるチャネルが良質の空きチャネルであるか否かの判定には、前述したように、三つの連続したチャネルの信号レベルが必要である。このため、一見すると、本実施形態では、一回のキャリアセンシングで、三つの連続するチャネルの信号レベルが検知されるので、三つのレベル検知器24a,24b,24cのそれぞれに2つの信号レベル格納領域を設ける必要が無いよう思われる。しかしながら、仮に、三つのレベル検知器24a,24b,24cのそれぞれに1つの信号レベル格納領域R01,R02,R03のみしか設けていない場合、第1レベル検知器24aで検知されたRSSI(n)がR01に格納され、第2レベル検知器24bで検知されたRSSI(n+1)がR02に格納され、第3レベル検知器24cで検知されたRSSI(n+2)がR03に格納され、R02に格納されているRSSI(n+1)のチャネル(n+1)が良質の空きチャネルであるか否かが判定された後、新たにキャリアセンシングを行って、第1レベル検知器24aで検知されたRSSI(n+3)がR01に格納され、第2レベル検知器24bで検知されたRSSI(n+4)がR02に格納され、第3レベル検知器24cで検知されたRSSI(n+5)がR03に格納されると、先に良質の空きチャネルであるか否かの判定を行ったチャネル(n+1)の隣接チャネル(n+2)、さらにその隣接チャネル(n+3)に関して、良質の空きチャネルであるか否かの判定を行うことができなくなってしまう。
【0064】
このため、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、一つのレベル検知器に対して、その検知結果を格納する領域を二つも受けている。従って、フィルタと、このフィルタを通過した信号のレベルを検知するレベル検知器との組み合わせが、仮に、4以上ある場合でも、各組み合わせ毎に、レベル検知結果を格納する領域を二つ設ける必要がある。
【0065】
なお、本実施形態のキャリアセンス処理も、基本的に第1の実施形態と同様であるが、連続する三つのチャネルの各信号レベルが検知される関係で、一回のキャリアセンシング動作で、三つのチャネルが良質の空きチャネルであるか否かの判定を行うことができる点で、第1の実施形態と異なる。
【0066】
以上、本発明に係る無線通信装置の各種実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施形態のように、無線通信の基地局である必要はなく、キャリアセンス処理を行うものであれば、如何なる無線通信装置、例えば、無線通信端末にも適用できる。
【0067】
また、以上の実施形では、通信方式としてTDMA−TDD方式のPHSに本発明を適用したものであるが、周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定される通信方式であれば、如何なる通信方式でも本発明を適用できる。例えば、GSM(Global System for Mobile Communications)方式、PDC(Personal Digital Cellular)方式、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式に対しても本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る第1の実施形態における無線通信装置の構成図である。
【図2】PHSにおけるTDMA−TDD方式を説明するための説明図である。
【図3】本発明に係る第1の実施形態における良質の空きチャネルであるか否かの判定のための判定表の構成を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態における各レベル検知器の出力と各閾値との関係を示す説明図である。
【図5】本発明に係る第1の実施形態におけるキャリアセンス処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】ローカル周波数と信号レベルとの関係を示す説明図で、同図(a)は従来のローカル周波数と信号レベルとの関係を示し、同図(b)は第1の実施形態のローカル周波数と信号レベルとの関係を示し、同図(c)は変形例のローカル周波数と信号レベルとの関係を示す。
【図7】本発明に係る第2の実施形態における無線通信装置の構成図である。
【符号の説明】
【0069】
1:PHS端末、11:アンテナ、20,20a:RF部、22:周波数変換器、23a,23b,23c:フィルタ、24a,24b,24c:レベル検知器、25:局部発振器、30:復調部、40:TDMA/TDD処理部、50:ADPCMトランスコーデック部、60:ISDNインタフェース、70,70a:プロセッサ、71:レジスタ、72:空きチャネル判定部、73:キャリアセンス制御部、74:周波数設定部、100,100a:PHS基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定され、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンスを行う無線通信装置において、
無線信号を受信するアンテナと、
周波数の異なる各種ローカル周波数の信号を発信する局部発振器と、
前記ローカル周波数の信号が入力し、前記アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換回路と、
前記周波数変換回路から出力された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタと、
前記フィルタを通過した信号の信号レベルを検知する信号レベル検知器と、
前記信号レベル検知器で検知された前記信号レベルに応じて、前記フィルタを通過した信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出器と、
前記フィルタを通過した信号を復調する復調器と、
を備え、
前記フィルタを複数備えていると共に、複数の該フィルタを通過した信号の信号レベルをそれぞれ検知する複数の信号レベル検知器を備え、前記復調器は、複数のフィルタのうちのいずれか一つのフィルタを通過した信号を復調する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
複数の前記フィルタでの通過周波数の帯域は、相互に、1チャネル分の帯域幅ずつズレ、複数の該フィルタからは、連続する複数のチャネルのそれぞれの帯域の周波数の信号を出力する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信装置において、
複数の前記信号レベル検知器毎に設けられ、各信号レベル検知器で検知された信号レベルが格納される第1レベル格納領域及び第2レベル格納領域と、
前記第1レベル格納領域及び第2レベル格納領域への信号レベルの格納を制御すると共に、前記局部発信器から発信する前記信号の前記ローカル周波数を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
各信号レベル検知器で検知された信号レベルを各第1レベル格納領域に格納した後、各第1レベル格納領域に格納された各信号レベルを各第2レベル格納領域に移し、
複数の前記フィルタから、先に該フィルタを通過した信号が示すチャネルに対して該フィルタの数量分だけシフトしたチャネルを示す信号が通過するよう、前記局部発振器から発信する前記信号の前記ローカル周波数を変え、
新たに各信号レベル検知器で検知された信号レベルを各第1レベル格納領域に格納し、
前記空きチャネル検知器は、
各第1レベル格納領域及び各第2レベル格納領域に格納された信号レベルのうちから、連続する三つのチャネルを示す各信号の信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置において、
前記空きチャネル検出器は、
前記連続する三つのチャネルのうちの前記中間のチャネルが良質の空きチャネルではないと判定すると、各第1レベル格納領域及び各第2レベル格納領域に格納された信号レベルのうちから、該連続する三つのチャネルに含まれない一のチャネルを含む新たな連続する三つのチャネルを示す各信号の信号レベルを判断して、該新たな連続する三つのチャネルのうちの中間のチャネルが良質の空きチャネルであるか否かを判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定され、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンスを行う無線通信装置において、
無線信号を受信するアンテナと、
周波数の異なる各種ローカル周波数の信号を発信する局部発振器と、
前記ローカル周波数の信号が入力し、前記アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換器と、
前記周波数変換回路から出力された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタと、
前記フィルタを通過した信号の信号レベルを検知する信号レベル検知器と、
前記信号レベル検知器で検知された前記信号レベルに応じて、前記フィルタを通過した信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出器と、
を備え、
前記空きチャネル検出器は、
前記信号レベル検知器が、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルを検知すると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、検知した連続する三つのチャネルの信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信装置において、
前記空きチャネル検出器は、
前記信号レベル検知器が、連続する四つチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルを検知すると、連続する三つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下ではないときに、該連続する四つのチャネルのうちの残っているチャネルを含む連続する三つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項5及び6のいずれか一項に記載の無線通信装置において、
前記フィルタを複数備えていると共に、複数の該フィルタを通過した信号の信号レベルをそれぞれ検知する複数の信号レベル検知器を備え、
複数の前記フィルタでの通過周波数の帯域は、相互に、1チャネル分の帯域幅ずつズレている、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一項に記載の無線通信装置において、
前記予め定められた信号レベルとしての第1の信号レベルのほかに、該第1の信号レベルよりも低い第2の信号レベルが予め設定されており、
前記空きチャネル検出器は、
前記連続する三つのチャネルの各信号のそれぞれの信号レベルのうち、前記中間のチャネルの信号の信号レベルが前記第2の信号レベルよりも低く、該中間チャネルの両側のチャネルの信号の信号レベルが前記第1の信号レベルよりも低いときに、該中間のチャネルは良質のチャネルであると判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定されている無線通信装置で、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンス方法において、
周波数の異なる各種ローカル周波数を発振する発振工程と、
前記ローカル周波数が入力し、アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換工程と、
前記周波数変換工程で周波数が変えられた信号を複数に分岐する信号分岐工程と、
前記信号分岐工程で分岐されたそれぞれの信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタリング工程と、
前記信号分岐工程で分岐された各信号に対して前記フィルタリング工程が施されたそれぞれの信号の信号レベルを検知するレベル検知工程と、
前記レベル検知工程で検知された各信号レベルに応じて、前記フィルタリング工程が施された信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出工程と、
を実行し、
前記フィルタリング工程での通過周波数の帯域は、該フィルタリング工程が施された各信号相互で、1チャネル分の帯域幅ずつズレている、
ことを特徴とするキャリアセンス方法。
【請求項10】
請求項9に記載のキャリアセンス方法において、
前記空きチャネル検出工程では、複数の前記レベル検知工程で、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、連続する三つのチャネルの信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、
ことを特徴とするキャリアセンス方法。
【請求項11】
周波数の違いにより互いに異なる複数のチャネルが設定されている無線通信装置で、複数のチャネルのうちの空きチャネルを捜すキャリアセンス方法において、
周波数の異なる各種ローカル周波数を発振する発振工程と、
前記ローカル周波数が入力し、アンテナで受信した無線信号の周波数を変える周波数変換工程と、
前記周波数変換工程で周波数が変換された信号から、1チャネル分の帯域幅の周波数成分を通過させ、不要周波数成分を除去するフィルタリング工程と、
前記フィルタリング工程が施された信号の信号レベルを検知するレベル検知工程と、
前記レベル検知工程で検知された各信号レベルに応じて、前記フィルタリング工程が施された信号が示すチャネルが空きチャネルであるか否かを判定する空きチャネル検出工程と、
を実行し、
前記空きチャネル検出工程では、
前記信号レベル検知工程で、連続する三つ又は四つのチャネルのそれぞれの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されると、さらに連続するチャネルの帯域周波数の信号の信号レベルが検知されるのを待たずに、連続する三つのチャネルの信号レベルが予め定められた信号レベル以下であるか否かを判断し、各信号レベルの該予め定められた信号レベル以下であるときに、中間のチャネルが良質の空きチャネルであると判定する、
ことを特徴とするキャリアセンス方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−72193(P2008−72193A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246740(P2006−246740)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】